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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】移動体の移動支援連携システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20220104BHJP
   B66B 17/20 20060101ALI20220104BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220104BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20220104BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20220104BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B17/20 Z
G05D1/02 T
G16Y20/20
G16Y10/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020170901
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2021-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】酒造 孝
(72)【発明者】
【氏名】荘司 洋三
(72)【発明者】
【氏名】中内 清秀
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151267(JP,A)
【文献】特開2010-105788(JP,A)
【文献】特開2008-162758(JP,A)
【文献】特開2002-302353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52,13/00-13/30,17/20
G05D 1/00-1/12
G16Y 10/40,20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の目的地への移動を連携して支援する移動体の移動支援連携システムにおいて、
上記目的地への経路上に設けられてなると共に移動体の移動を支援するために必要なボタンを押圧可能な機構を有する第1IoTデバイスを備え、
上記第1IoTデバイスは、
中距離無線通信を介して無線信号を受信した上記移動体が、自らと近距離無線通信が実現可能となる領域に到達した場合には、上記移動体が移動を継続するにあたり希望する支援に関する希望支援情報を近距離無線通信を介して受信し、受信した希望支援情報に応じて上記ボタンを押圧した後、既定時間後に自動的に離す操作をするとともに、
上記第1IoTデバイスは、
上記移動体から中距離無線通信を介して無線信号を受信した場合には、自らと近距離無線通信が実現可能となる領域を指定する指定情報を上記中距離無線通信を介して上記移動体へ送信し、
上記指定情報を受信した上記移動体が上記領域に到達した場合には、上記移動体が移動を継続するにあたり希望する支援に関する希望支援情報を近距離無線通信を介して受信すること
を特徴とする移動体の移動支援連携システム。
【請求項2】
上記第1IoTデバイスは、エレベータの外部に設けられてなると共に昇降方向を指定するための昇降指定ボタンを押圧可能な機構を有し、目的地の階に応じた昇降方向が含まれた希望支援情報を上記移動体から近距離無線通信を介して受信した場合には、受信した希望支援情報に応じた昇降方向の上記昇降指定ボタンを押圧すること
を特徴とする請求項記載の移動体の移動支援連携システム。
【請求項3】
エレベータの内部に設けられてなると共に行き先の階を指定するための行先指定ボタンを押圧可能な機構を有する第2IoTデバイスを更に備え、
上記第2IoTデバイスは、エレベータ内に移動してきた上記移動体から目的地の階に応じた希望支援情報を近距離無線通信を介して受信した場合には、受信した希望支援情報に応じた階の上記行先指定ボタンを押圧すること
を特徴とする請求項記載の移動体の移動支援連携システム。
【請求項4】
上記第1IoTデバイスは、上記エレベータ内の停止位置に関する停止位置情報を上記近距離無線通信又は中距離無線通信を介して上記移動体へ送信し、
上記移動体は、受信した上記停止位置情報に基づいて上記エレベータ内において指定された停止位置に停止すること
を特徴とする請求項又は記載の移動体の移動支援連携システム。
【請求項5】
上記第2IoTデバイスは、各階の地図情報を予め記憶する記憶部を有し、上記移動体から希望支援情報を受信した場合には、当該希望支援情報に応じた階の地図情報を上記記憶部から読み出し、これを上記移動体へ上記近距離無線通信を介して送信すること
を特徴とする請求項記載の移動体の移動支援連携システム。
【請求項6】
上記第2IoTデバイス又は上記移動体は、エレベータが昇降を停止した階において開扉した場合、当該階において昇降指定ボタンを押圧可能な他の第1IoTデバイスから発信されるビーコンを近距離無線通信又は中距離無線通信を介して受信し、受信したビーコンを介してその停止した階を認識すること
を特徴とする請求項又は記載の移動体の移動支援連携システム。
【請求項7】
移動体の目的地への移動を連携して支援する移動体の移動支援連携システムにおいて、
上記目的地への経路上に設けられてなると共に移動体の移動を支援するために必要なボタンを押圧可能な機構を有する第1IoTデバイスを備え、
上記第1IoTデバイスは、
中距離無線通信を介して受信した上記移動体の現在位置に関する現在位置情報と上記目的地に関する目的地位置情報に基づいて、自らと近距離無線通信が実現可能となる領域を指定する指定情報を上記中距離無線通信を介して上記移動体へ送信し、
上記指定情報を受信した上記移動体が上記領域に到達した場合には、受信した目的地位置情報に応じて上記ボタンを押圧すること
を特徴とする移動体の移動支援連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
移動体の目的地への移動を連携して支援する移動体の移動支援連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年における人手不足に基づく人件費の高騰に伴い、駅やオフィス、学校、病院等の構内において、自律移動ロボット等で構成される移動体により物の搬送を代替させる考えが浸透しつつある。特にこのような構内は高層化されていたり、地下に向けて多層化されている場合が多いことから、自律移動ロボットによる同一階のみの搬送に終始するのではなく、エレベータを利用した移動にも十分に対応できるようにする必要がある。
【0003】
このようなエレベータと連携しつつ移動体を構内の目的地へ移動させるためには、インターネット等を始めとする公衆通信網を利用し、エレベータを管理する管理会社の中央制御コンピュータにアクセスし、エレベータを制御する必要がある。
【0004】
従来においては、例えば、特許文献1において、エレベータを遠隔制御するシステムが開示されている。この特許文献1の開示技術によれば、エレベータグループを中央制御コンピュータとモデムリンクによりモニタリングするものである。中央制御コンピュータは、あるエレベータグループを選択する。この選択されたエレベータグループは、そのグループ内における運行や問題点、警報に関する各事象についてデジタルデータを生成し、これを発信する。エレベータグループと中央制御コンピュータが互いに連携して通信できるようにするために、上述したモニタリングと通信に用いるハードウェアインタフェースも実装されている。
【0005】
ところで、移動体の移動と連携しつつこのような中央制御コンピュータを介したエレベータの遠隔制御を実現するためには、実に膨大な情報通信を経る必要がある。この情報通信において、情報の遅延や損失の問題が生じる場合が多く、また情報のハッキングを防止するためにこれを暗号化する必要もあり、膨大なコストがかかる。特に情報の遅延の問題は、移動体の移動に対してタイムリーにエレベータを昇降させることができなくなることから、移動体を利用した物流サービスの提供時間にも影響が及んでしまう。
【0006】
また、中央制御コンピュータを介したエレベータの遠隔制御方法によって、移動支援連携システムを構築する上では、当該エレベータを移動体と他の利用者との間で共用するケースが必然的に生じる。かかる場合には、移動体がエレベータに搭乗するためには、エレベータを遠隔制御下において必要階への停止、開扉、そして目的地階への移動の指定を行うことになる。この移動体がエレベータを利用する間、一般の利用者はエレベータに搭乗することができなくなる場合があり、或いは利用者自身の所望の階への移動を待たされる場合が出てくる。このため、移動体の目的地への移動をエレベータによりタイムリーに連携する上で、エレベータを利用する利用者に不便をきたさないように上手く共存する必要があった。
【0007】
また、遠隔制御によって、上述した必要階への停止、開扉、そして目的地階への移動の指定機能を持たないエレベータの場合には、このような遠隔制御が可能となるようにシステム改修を行う必要があり、これには通常膨大な改築費と時間を要するという問題がある。このため、既存のエレベータに対して何ら改良を強いることなく、移動体の目的地への移動をエレベータにより連携できるシステムが従来より望まれていた。
【0008】
これに加えて、これらの遠隔制御は、あくまでエレベータ管理会社が保有する中央制御コンピュータが主体となり実現するものである。このため、遠隔制御方式は、各エレベータ管理会社間において様々な方式が採用されており、業界標準化を行う上で大きな障壁となってしまうという問題点もあった。更には、中央制御コンピュータが主体となる遠隔制御では、その中央制御コンピュータ自体がハッキング等によって乗っ取られる危険性も考慮しなければならない。このため、このような中央制御コンピュータを介することなく移動体の目的地への移動をエレベータにより連携できるシステムが従来より望まれていた。
【0009】
このため公衆通信網を利用したエレベータの遠隔制御を行うことなく、移動体の目的地への移動をエレベータによりタイムリーに連携できるシステムが従来より望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第3973648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、公衆通信網を利用したエレベータの遠隔制御を行うことなく、移動体の目的地への移動をエレベータによりタイムリーに連携して支援する移動体の移動支援連携システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る移動体の移動支援連携システムは、移動体の目的地への移動を連携して支援する移動体の移動支援連携システムにおいて、上記目的地への経路上に設けられてなると共に移動体の移動を支援するために必要なボタンを押圧可能な機構を有する第1IoTデバイスを備え、上記第1IoTデバイスは、中距離無線通信を介して無線信号を受信した上記移動体が、自らと近距離無線通信が実現可能となる領域に到達した場合には、上記移動体が移動を継続するにあたり希望する支援に関する希望支援情報を近距離無線通信を介して受信し、受信した希望支援情報に応じて上記ボタンを押圧した後、既定時間後に自動的に離す操作をするとともに、上記第1IoTデバイスは、上記移動体から中距離無線通信を介して無線信号を受信した場合には、自らと近距離無線通信が実現可能となる領域を指定する指定情報を上記中距離無線通信を介して上記移動体へ送信し、上記指定情報を受信した上記移動体が上記領域に到達した場合には、上記移動体が移動を継続するにあたり希望する支援に関する希望支援情報を近距離無線通信を介して受信することを特徴とする。
【0014】
発明に係る移動体の移動支援連携システムは、第発明において、上記第1IoTデバイスは、エレベータの外部に設けられてなると共に昇降方向を指定するための昇降指定ボタンを押圧可能な機構を有し、目的地の階に応じた昇降方向が含まれた希望支援情報を上記移動体から近距離無線通信を介して受信した場合には、受信した希望支援情報に応じた昇降方向の上記昇降指定ボタンを押圧することを特徴とする。
【0015】
発明に係る移動体の移動支援連携システムは、第発明において、エレベータの内部に設けられてなると共に行き先の階を指定するための行先指定ボタンを押圧可能な機構を有する第2IoTデバイスを更に備え、上記第2IoTデバイスは、エレベータ内に移動してきた上記移動体から目的地の階に応じた希望支援情報を近距離無線通信を介して受信した場合には、受信した希望支援情報に応じた階の上記行先指定ボタンを押圧することを特徴とする。
【0016】
発明に係る移動体の移動支援連携システムは、第発明又は第発明において、上記第1IoTデバイスは、上記エレベータ内の停止位置に関する停止位置情報を上記近距離無線通信又は中距離無線通信を介して上記移動体へ送信し、上記移動体は、受信した上記停止位置情報に基づいて上記エレベータ内において指定された停止位置に停止することを特徴とする。
【0017】
発明に係る移動体の移動支援連携システムは、第発明において、上記第2IoTデバイスは、各階の地図情報を予め記憶する記憶部を有し、上記移動体から希望支援情報を受信した場合には、当該希望支援情報に応じた階の地図情報を上記記憶部から読み出し、これを上記移動体へ上記近距離無線通信を介して送信することを特徴とする。
【0018】
発明に係る移動体の移動支援連携システムは、第発明又は第発明において、上記第2IoTデバイス又は上記移動体は、エレベータが昇降を停止した階において開扉した場合、当該階において昇降指定ボタンを押圧可能な他の第1IoTデバイスから発信されるビーコンを近距離無線通信又は中距離無線通信を介して受信し、受信したビーコンを介してその停止した階を認識することを特徴とする。
【0019】
発明に係る移動体の移動支援連携システムは、移動体の目的地への移動を連携して支援する移動体の移動支援連携システムにおいて、上記目的地への経路上に設けられてなると共に移動体の移動を支援するために必要なボタンを押圧可能な機構を有する第1IoTデバイスを備え、上記第1IoTデバイスは、中距離無線通信を介して受信した上記移動体の現在位置に関する現在位置情報と上記目的地に関する目的地位置情報に基づいて、自らと近距離無線通信が実現可能となる領域を指定する指定情報を上記中距離無線通信を介して上記移動体へ送信し、上記指定情報を受信した上記移動体が上記領域に到達した場合には、受信した目的地位置情報に応じて上記ボタンを押圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明を適用した移動支援連携システムは、移動体の目的地への移動をエレベータによりタイムリーに連携して支援することができる。このとき、エレベータそのものを中央制御コンピュータを利用して制御するのではなく、あくまでエレベータに対しては昇降指定ボタン、行先指定ボタンを押圧する通常の動作のみ担わせ、この昇降指定ボタン、行先指定ボタンの操作を第1IoTデバイス、第2IoTデバイスにより実行することで実現することができる。これにより、エレベータそのものを中央制御コンピュータを利用して制御する必要がなくなり、これにアクセスするために公衆通信網を介して膨大な情報の送受信も必要なくなり、情報の遅延や損失の問題が生じこともなくなる。また情報のハッキングを防止するためにこれを暗号化する必要もなくなることからコスト削減につながる。
【0021】
しかも本発明においては、移動体との間の通信を、中距離無線通信、近距離無線通信等のような局所的に行われる無線通信のみにより実現することができ、インターネット回線のような公衆通信網を特段使用することはない。このため、情報のハッキングの問題も特段発生することはなく、また情報の遅延も生じないため、移動体2の移動に対してタイムリーにエレベータを昇降させることができる。また本発明は、エレベータ管理会社が保有する中央制御コンピュータが主体になるものではないため、遠隔制御方式がそのエレベータ管理会社毎にまちまちになることがなくなり、統一した業界標準化を進める上でも好適なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明を適用した移動支援連携システムの全体システム構成を示す図である。
図2図2は、本発明を適用した移動支援連携システムにおける移動体のブロック構成を示す図である。
図3図3は、本発明を適用した移動支援連携システムにおける移動指令発信装置3のブロック構成例を示す図である。
図4図4は、第1IoTデバイス、第2IoTデバイスのブロック構成図である。
図5図5は、押圧部の外形の形状を示す図である。
図6図6は、移動支援連携システムの動作全体の流れを示す図である。
図7図7は、図6に示す動作フローにおけるステップS11~ステップS15までの詳細なアルゴリズムを示すフローチャートである。
図8図8は、図6に示す動作フローにおけるステップS16の詳細なアルゴリズムを示すフローチャートである。
図9図9は、図6に示す動作フローにおけるステップS17の詳細なアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した移動体の移動支援連携システムについて図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0024】
図1は、本発明を適用した移動支援連携システム1の全体システム構成を示している。この移動支援連携システム1は、駅やビル、マンション、学校、老人ホーム、病院等の構内において、自律移動ロボット等で構成される移動体により物の搬送を行うシステムである。移動支援連携システム1は、移動体2と、移動指令発信装置3と、構内に設置されたエレベータ9の外部に設けられてなる第1IoTデバイス4a、4bと、エレベータ9の内部に設けられてなる第2IoTデバイス5とを備えている。
【0025】
移動体2は、自律的な走行機能を持つロボットで構成されている。この移動体2は、物を収容可能な図示しない収容部を備えていてもよく、これにより物を搬送するロボットとして構成することができる。移動体2は、ロボットで構成される以外に、例えば自律的な走行機能を持つ車椅子で構成されていてもよい。かかる場合には、移動体2に、高齢者や身体障害者が座るための図示しない椅子を設けておくこととなる。また、移動体2は、このような自律的な走行機能を持つロボットや車椅子に限定されるものでは無く、スマートフォンやウェアラブル端末、タブレット端末、携帯電話機、モバイル型パーソナルコンピュータ等の各種デバイスを保持する人間も含まれる。また移動体2は、各種デバイスを保持する人間以外に、その人間が乗車する非自律走行型の移動体でもよく、例えば車両であってもよい。
【0026】
図2は、移動体2のブロック構成を示している。移動体2は、MPU(Micro Processor Unit)21と、このMPU21にそれぞれ接続されたGPS(Global Positioning System)22、障害物検出センサ23、中距離無線通信部24、近距離無線通信部25と、モーター駆動機器26とを備えている。
【0027】
MPU21は、移動体2内の各構成要素を制御するためのいわゆる中央制御ユニットである。MPU21に接続されているGPS22、障害物検出センサ23、中距離無線通信部24、近距離無線通信部25と、モーター駆動機器26は、何れもこのMPU21により制御に基づいて動作する。MPU21に対してそれぞれ接続されているメモリには、移動体2を制御するために必要なプログラム等が格納されている。
【0028】
GPS22は、地球を周回している人工衛星の電波を受信し、位置、距離、時刻等を計算することにより、現在の移動体2の位置を測位する機能を備えている。GPS22は、測位した移動体2の現在位置に関する現在位置情報をMPU21へ送信する。
【0029】
障害物検出センサ23は、例えばレーザーレーダー(ライダー)やカメラセンサー等により構成されてなり、自らライダーの場合にはレーザーを発光し、反射光の遅延を観測することで周辺障害物との距離を測りMPU21へ送信する。
【0030】
中距離無線通信部24は、構内の各所や第1IoTデバイス4a、4bと、第2IoTデバイス5との間で中距離の無線通信を行う。この中距離無線通信部24は、この中距離の無線通信を行う規格の一つとして、Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)のような既に普及している無線通信規格に準拠したものを利用してもよい。Wi-SUNは、無線通信規格の一つであるが、特に2.4GHz帯や5.0GHz帯をもちいるWi-Fiと異なり、サブギガヘルツ帯と呼ばれる920MHz前後の周波数帯の電波を利用する。Wi-SUNは、Wi-Fiと比べると、通信速度は遅いものの、通信距離は長く、障害物にも強くてつながりやすく、しかも低消費電力という利点がある。このため本発明において、この中距離無線通信部24を介して行う中距離無線通信は、このWi-SUNを利用する場合を例にとり説明をするが、このWi-SUNの規格以外を利用してもよいことは勿論である。中距離無線通信部24は、MPU21から送られてきた情報を中距離無線通信の規格に基づいて、無線信号に変換して送信する。また中距離無線通信部24は、受信した無線信号を電気信号に変換し、これをMPU21へ送る。
【0031】
近距離無線通信部25は、構内の各所や第1IoTデバイス4a、4bと、第2IoTデバイス5との間で近距離の無線通信を行う。この近距離無線通信部25は、この近距離の無線通信を行う規格の一つとして、BluetoothやBLE(Bluetooth Low Energy)を利用してもよい。BLEは、近距離無線通信技術Bluetoothの拡張仕様の一つであり、極低電力かつ低コストで通信が可能な規格である。このため本発明において、この近距離無線通信部25を介して行う近距離無線通信は、このBLEを利用する場合を例にとり説明をするが、このBLEの規格以外を利用してもよいことは勿論である。近距離無線通信部25は、MPU21から送られてきた情報を近距離無線通信の規格に基づいて、無線信号に変換して送信する。また近距離無線通信部25は、受信した無線信号を電気信号に変換し、これをMPU21へ送る。
【0032】
モーター駆動機器26は、図示しない車輪を駆動させるためのモーターを有している。具体的な移動開始、移動停止に加え、移動方向についてはMPU21から指示される。モーター駆動機器26は、このMPU21からの指示を受けてモーターを駆動させることにより、移動体2を移動させる。
【0033】
移動指令発信装置3は、移動体2に対して、目的地への移動を指示するための移動指令を発信するためのデバイスである。この移動指令発信装置3からの移動指令を受けて移動体2による目的地への移動が開始されることとなる。移動指令発信装置3は、同じ構内にある目的地に設けられていてもよく、目的地において移動体2により物を搬送してもらいたい場合に、移動指令を発信するようにしてもよい。また移動指令発信装置3は、特にこの目的地に配設される場合に限定されるものではなく、構内の各箇所に設けられるものであってもよい。
【0034】
図3は、移動指令発信装置3のブロック構成例を示している。移動指令発信装置3は、MPU31と、このMPU31にそれぞれ接続されたGPS32、中距離無線通信部34とを備えている。
【0035】
MPU31は、移動指令発信装置3内の各構成要素を制御するためのいわゆる中央制御ユニットである。MPU31に接続されているGPS32、中距離無線通信部34は、何れもこのMPU31により制御に基づいて動作する。MPU31に対してそれぞれ接続されているメモリには、移動指令発信装置3を制御するために必要なプログラム等が格納されている。
【0036】
GPS32は、現在の移動指令発信装置3の位置を測位する機能を備えている。このGPS32は、測位した移動指令発信装置3の現在位置に関する現在位置情報をMPU31へ送信する。
【0037】
中距離無線通信部34は、構内の各所や移動体2との間で中距離の無線通信を行う。この中距離無線通信部34は、この中距離の無線通信を行う規格の一つとして、上述と同様にWi-SUNを利用してもよい。中距離無線通信部34は、MPU31から送られてきた情報を中距離無線通信の規格に基づいて、無線信号に変換して送信する。また中距離無線通信部44は、受信した無線信号を電気信号に変換し、これをMPU31へ送る。
【0038】
図4は、第1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5のブロック構成を示している。第1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5は、MPU41と、このMPU41にそれぞれ接続されたGPS42、センサ43、中距離無線通信部44、近距離無線通信部45と、モーター駆動機器46とを備えている。
【0039】
MPU41は、第1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5内の各構成要素を制御するためのいわゆる中央制御ユニットである。MPU41に接続されているGPS42、センサ43、中距離無線通信部44、近距離無線通信部45と、モーター駆動機器46は、何れもこのMPU41により制御に基づいて動作する。MPU41に対してそれぞれ接続されているメモリには、第1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5を制御するために必要なプログラム等が格納されている。
【0040】
GPS42は、現在の第1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5の位置を測位する機能を備えている。このGPS42は、測位した第1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5の現在位置に関する現在位置情報をMPU41へ送信する。
【0041】
センサ43は、加速度を検出する加速度センサ、又は照度を検出する照度センサで構成される。またセンサ43は、人感センサとして機能する赤外線センサや、混雑度などを検出するためのカメラセンサーなどを併せ搭載してもよい。特にエレベータ9内に設けられる第2IoTデバイス5は、センサ43により、加速度を検出することで、現在エレベータ9が昇降しているのか、あるいは停止しているのかを検出することができ、また昇降速度や昇降方向も検出することができる。また第2IoTデバイス5は、センサ43により、現在エレベータ9がいずれのフロアに位置しているか、昇降しているのか、あるいは各階に停止しているのかを検出することができる。例えば第2IoTデバイス5が押下可能なボタンの輝度を照度センサで確認することで、該当ボタンのフロアが行き先として指定されているか、及び特定フロアへの到達と同時に消灯したかの検出が実現可能となる。センサ43は、このような検出した情報を逐次MPU41へ送信する。
【0042】
中距離無線通信部44は、構内の各所や移動体2との間で中距離の無線通信を行う。この中距離無線通信部44は、この中距離の無線通信を行う規格の一つとして、上述と同様にWi-SUNを利用してもよいが、これに限定されるものでは無く、他のいかなる通信方式を利用するようにしてもよい。中距離無線通信部44は、MPU41から送られてきた情報を中距離無線通信の規格に基づいて、無線信号に変換して送信する。また中距離無線通信部44は、受信した無線信号を電気信号に変換し、これをMPU41へ送る。
【0043】
近距離無線通信部45は、構内の各所や移動体2との間で近距離の無線通信を行う。この近距離無線通信部45は、この近距離の無線通信を行う規格の一つとして、上述と同様にBluetoothやBLE(Bluetooth Low Energy)を利用してもよい。近距離無線通信部45は、MPU41から送られてきた情報を近距離無線通信の規格に基づいて、無線信号に変換して送信する。また近距離無線通信部45は、受信した無線信号を電気信号に変換し、これをMPU41へ送る。
【0044】
モーター駆動機器46は、押圧部50を駆動させるための駆動機器で構成されており、モーターやシリンダ等の駆動機構で構成されている。モーター駆動機器46は、MPU41による指示の下、モーターやシリンダ等の駆動機構を制御することで、押圧部50、51によりボタンを押圧させることが可能となる。
【0045】
押圧部50、51は、モーター駆動機器46による制御の下で、エレベータ9を昇降を指示するボタンを押圧するための器具である。図5は、押圧部50、51の外形の形状を示している。押圧部50、51は、ちょうど人間の指先に似せた形状とされていてもよく、金属製、木製、プラスチック製等で構成されている。
【0046】
第1IoTデバイス4における押圧部50は、図5(a)に示すように、昇降方向を指定するための昇降指定ボタン60a、60bのいずれかを押圧可能な構成とされている。押圧部50は、各昇降指定ボタン60a、60b毎に配設されおり、上階への移動が指示された場合には、昇降指定ボタン60aを押圧する押圧部50aを駆動させ、下階への移動が指示された場合には、昇降指定ボタン60bを押圧する押圧部50bを駆動させるようにしてもよい。また、これ以外に何れの昇降指定ボタン60a、60bを押圧可能な1本の押圧部50を配設しておき、上階への移動又は下階への移動がそれぞれ指示された場合に、押圧部50が各昇降指定ボタン60a、60bまで自律的に延伸し、押圧を行うようにしてもよい。押圧部50は、昇降指定ボタン60a、60bを押圧した後、既定時間後に自動的に離す操作を行う。
【0047】
第2IoTデバイス4における押圧部51は、図5(b)に示すように、行き先の階を指定するための行先指定ボタン61a、61b、61c、・・・を押圧可能な構成とされている。押圧部51は、各行き先の階を指定する行先指定ボタン61a、61b、61c、・・・毎に配設されており、行き先の階が指示された場合には、その階の行先指定ボタン61a、61b、61c、・・・に配設された押圧部51を駆動させるようにしてもよい。また、これ以外に何れの行先指定ボタン61a、61b、61c、・・・を押圧可能な1本の押圧部51を配設しておき、行き先の階が指示された場合には、押圧部51が各行先指定ボタン61a、61b、61c、・・・まで自律的に延伸し、押圧を行うようにしてもよい。押圧部51は、行先指定ボタン61a、61b、61c、・・・を押圧した後、既定時間後に自動的に離す操作を行う。
【0048】
次に、本発明を適用した移動支援連携システム1の動作について説明をする。図6は、この移動支援連携システム1の動作全体の流れを示している。
【0049】
この動作においては、スタート位置の位置情報(Xs、Ys、Zs)にある移動体2が位置情報(Xg、Yg、Zg)にある目的地からの要請を受け、目的地へと移動する場合を例にとり説明をする。この目的地の位置(Xs、Ys、Zs)、とスタート位置(Xg、Yg、Zg)は、互いに同一の構内に位置し、かつ互いに異なる階に位置する場合を例にとり説明をする。
【0050】
先ずステップS11では、目的地において必要な物があるとき、目的地に設置された移動指令発信装置3により、移動指令を発信する。かかる場合には、移動指令発信装置3における中距離無線通信部34を介して移動指令を送信する。移動指令には、目的地の位置情報(Xg、Yg、Zg)に加え、搬送を希望する物品に関する情報が含まれていてもよい。目的地の位置情報(Xg、Yg、Zg)は、GPS32を介して取得するか、ないしは既知の情報をつかってもよい。この移動指令は、ビーコン化してもよく、このビーコンを中距離無線通信により多方面に発信するようにしてもよい。上述したようにビーコン化されて配信された移動指令が一の移動体2により受信された場合にステップS12に移行する。
【0051】
ステップS12では、移動体2における中距離無線通信部24を介して移動指令が受信された結果、目的地の位置情報(Xg、Yg、Zg)に加え、搬送を希望する物品を移動体2自身が認識することが可能となる。そして、移動体2は、この移動指令を受けて、現在の自身の位置情報(Xs、Ys、Zs)を応答情報に含め、これを中距離無線通信部24を介して中距離無線通信により移動指令発信装置3へ送信する。移動体2の現在の位置情報は、GPS22を介して取得する、もしくは既知の待機場所情報を用いてもよい。この応答情報には、現在の位置情報に加えて、希望している物品を届けることができるか否か、目的地への到着可能性等の情報も含めてもよい。
【0052】
ステップS13では、移動指令発信装置3が移動体2から送信されてきた応答情報を中距離無線通信部34を介して受信する。ちなみに、上述した移動指令が含まれているビーコンを複数の移動体2が受信し、複数の移動体2から応答情報を受信した場合には、これらのうち所望の一の移動体2を、移動指令発信装置3が選択するか、上記複数の移動体2の中から既定の選定アルゴリズムに基づいて自動的に選択されるようにしてもよい。このとき、移動指令発信装置3は、移動指令に含まれる各移動体2の位置情報を参照し、目的地の位置情報(Xg、Yg、Zg)に最も近い移動体2を選択するようにしてもよい。移動指令発信装置3は、この選択した一の移動体2に対して、依頼指示を中距離無線通信を介して送信する。このステップS13において送信する依頼指示には、目的地の位置情報(Xg、Yg、Zg)に加え、目的地への移動を依頼する旨の指示が含まれている。依頼指示には、実際に目的地側において希望する物品の搬送を依頼する旨の情報も含められていてもよい。この依頼指示を移動体2により受信された場合にステップS14に移行する。
【0053】
ステップS14では、移動体2がこの依頼指示に含まれる目的地の位置情報(Xg、Yg、Zg)に基づき、その目的地へ向けて移動を開始する。かかる場合には、MPU21による制御の下で、モーター駆動機器26を制御することで目的地へと進行方向を指示し、移動していくことになる。移動体2は、この目的地の位置情報(Xg、Yg、Zg)を受信した段階で、現在の自身の位置情報(Xs、Ys、Zs)と照らし合わせることが可能となり、またこの照らし合わせの結果、目的地が現在位置と同一階ではなく、別の階にあることも認識することが可能となる。かかる場合において、移動体2は、中距離無線通信部24を介してフロア移動情報要求を発信する。このフロア移動情報要求には、GPS22を介して取得した現在の位置情報(Xs、Ys、Zs)を含めておくか、もしくは階を特定する固有のBLEビーコン情報を得るなどして認識している現在階の情報を含めてもよい。
【0054】
ステップS15では、第1IoTデバイス4aが中距離無線通信を介してこの移動体2からのフロア移動情報要求を受信する。第1IoTデバイス4aは、このフロア移動情報要求に含まれる位置情報に基づいて、自身が設けられているエレベータ9を利用する可能性があるか否かを判断する。その結果、第1IoTデバイス4aは、自身が設けられているエレベータ9を利用する可能性がある旨を判断した場合、中距離無線通信部44を利用し、中距離無線通信を介してフロア移動誘導指令を移動体2へ送信する。仮に第1IoTデバイス4aが移動体2の現在位置の同一階にある場合は、自身が設けられているエレベータ9を利用する可能性がある旨を判断するようにしてもよい。
【0055】
このフロア移動誘導指令には、GPS41を介して取得した、ないしは事前に設定された第1IoTデバイス4aの自らの設置位置情報(X1、Y1、Zs)もしくは、自らと近距離無線通信が実現可能となる位置(X1、Y1、Zs、D1)を指定する指定情報を含めておく。ちなみに、この指定情報は、自らと近距離無線通信が実現可能となる位置(X1、Y1、Zs、D1)に限定されるものではなく、その位置よりも広がりがある領域を指定するものであってもよい。また指定情報としては、その第1IoTデバイス4aの近傍にあるエレベータ9を特定する名称情報、いずれの階への移動を可能とするエレベータ9なのか、業務用や一般人用か等のようなエレベータ9の属性、更にはエレベータ9内のサイズ等の情報、そして、移動体2が備える近距離無線システムによってそのエレベータ9の呼出ボタンの操作可能となる停止位置や姿勢情報等の情報も含まれていてもよい。
【0056】
第1IoTデバイス4は、これらのフロア移動誘導指令を定期発信するようにてもよいが、移動体によるリクエストがあった段階で発信してもよいし、あくまで、周波数の利用効率の観点から、フロア移動情報要求を受けた場合のみ返信するようにしてもよい。なお、このステップS15において、第1IoTデバイス4aは、移動体2から単なる無線信号を受信することができた場合であっても、同様にフロア移動誘導指令を出すようにしてもよい。
【0057】
但し、その領域に関しても同様に第1IoTデバイス4aとの間で少なくとも近距離無線通信が可能となることが前提となる。このようなフロア移動誘導指令を受信した移動体2は、そのフロア移動誘導指令に含まれる位置(X1、Y1、Zs、D1)に向けて移動をする。
【0058】
なお、このときフロア移動情報要求を受信した第1IoTデバイス4aが複数存在する場合、移動体2は、複数の第1IoTデバイス4aからフロア移動誘導指令を受信する場合がある。かかる場合には、それぞれの第1IoTデバイス4aから送られてきたフロア移動誘導指令に含まれる位置(X1、Y1、Zs、D1)を比較し、移動体2の現在位置から最も近い第1IoTデバイス4aを選択するようにしてもよいし、移動体2の現在位置以外に目的地の位置情報も参照した上で、第1IoTデバイス4aを選択するようにしてもよい。また第1IoTデバイスから受信したエレベータ内の混雑状況等、各種センサー情報を参照したうえで選択するようにしてもよい。移動体2は、かかる場合も同様に、その選択した第1IoTデバイス4aから送られてきたフロア移動誘導指令に含まれる位置(X1、Y1、Zs、D1)に向けて移動をする。
【0059】
なお、移動体2は、第1IoTデバイス4aから送られてきたフロア移動誘導指令に含まれる位置(X1、Y1、Zs、D1)に向けて移動する場合に限定されるものではない。この位置(X1、Y1、Zs、D1)は、予め図示しないクラウド上のサーバーに登録、管理して起き、移動体2は、、第1IoTデバイス4aからフロア移動誘導指令を受信する代わりに、この図示しないクラウド上のサーバーから、目的地に従ったエレベータ9の位置や、その近傍に設けられた第1IoTデバイス4と近距離無線通信が可能な位置が通知されるものであってもよい。この通知された位置に向けて移動体2が移動していくことになる。このとき移動体2は、第1IoTデバイス4と近距離無線通信が可能な位置携帯電話回線等を利用してサーバーに都度問い合わせるようにしてもよい。
【0060】
移動体2は、このフロア移動誘導指令に含まれる位置(X1、Y1、Zs、D1)まで移動を完了させた後、ステップS16へ移行し、第1IoTデバイス4aとの間で近距離無線通信を開始する。かかる場合には移動体2は、近距離無線通信部25を介して、また第1IoTデバイス4aは、近距離無線通信部45を介して互いに近距離無線通信を行う。この近距離無線通信を介して移動体2は、目的地の階に応じた昇降方向が含まれた希望支援情報を第1IoTデバイス4aへ送信する。第1IoTデバイス4aは、この希望支援情報を受信し、モーター駆動機器46を制御することにより、押圧部50により昇降指定ボタン60a、60bを押圧させる。これにより、エレベータ9は、第1IoTデバイス4aが設けられている階まで昇降した上で開扉する。移動体2は、エレベータ9の開扉を認識し、エレベータ9内に移動する。エレベータ9内において移動体2が停止した後、ステップS17へ移行する。なお、エレベータ9内において移動体2が停止する際には、第1IoTデバイス4a又は第2IoTデバイス5は、移動体2に対して、具体的なエレベータ9内の停止位置(X2、Y2、Z2、D2)までも指定してもよい。
【0061】
ステップS17において、移動体2は、エレベータ9内に設置された第2IoTデバイス5との間で近距離無線通信を開始する。かかる場合には移動体2は、近距離無線通信部25を介して、また第2IoTデバイス4aは、近距離無線通信部45を介して互いに近距離無線通信を行う。この近距離無線通信を介して移動体2は、目的地の階に応じた希望支援情報を第2IoTデバイス5へ送信する。第2IoTデバイス5は、この希望支援情報を受信し、モーター駆動機器46を制御することにより、押圧部51により行き先の階を指定するための行先指定ボタン61a、61b、61c、・・・を押圧させる。これによりエレベータ9は、行き先の階まで昇降した上で開扉する。移動体2は、エレベータ9の開扉を認識し、エレベータ9を出て、目的地の位置情報(Xg、Yg、Zg)に基づいて、目的地に向けて移動を開始する。目的地に移動体2が到着することで、所望の物品の搬送が実現されることとなる。
【0062】
次に、本発明を適用した移動支援連携システム1において更なる詳細な動作アルゴリズムについて説明をする。
【0063】
図7に示すフローチャートは、図6に示す動作フローにおけるステップS11~ステップS15までの詳細なアルゴリズムを示している。
【0064】
先ずステップS111において、移動指令発信装置3は、GPS32により取得した目的地の位置情報と、目的地が存在する階の地図情報を利用し、これらを移動指令に含めて中距離無線通信を介して移動体2へ発信する(ステップS11)。
【0065】
移動体2は、ステップS112において、この移動指令を中距離無線通信を介して受信する。
【0066】
移動体2は、ステップS113において、目的地が、現在位置と同一階であるか否かを判別する。その結果、同一階であれば、ステップS14へ移行し、同一階でなければステップS141へ移行する。
【0067】
ステップS114に移行した場合、移動体2は、目的地の位置情報(Xg、Yg、Zg)に向けて移動を開始する。同一階における移動であることから、同一階の配置を示す地図情報も利用し、特にそのまま問題なく目的地に到着することとなる(ステップS115)。
【0068】
また、ステップS141に移行した場合、移動体2は、中距離無線通信部24を介してフロア移動情報要求を発信する。第1IoTデバイス4aは、このフロア移動情報要求を中距離無線通信を介して受信した場合(ステップS142)、同一階内における移動ではなく、階を跨いだ移動になることを把握することができる。かかる場合には、この第1IoTデバイス4aは、自らと近距離無線通信が実現可能となる位置(X1、Y1、Zs、D1)を指定する指定情報を含めたフロア移動誘導指令を送信する(ステップS151)。この指定情報では、第1IoTデバイス4aが設けられている階の地図情報を含めてもよい。
【0069】
移動体2は、このフロア移動誘導指令を中距離無線通信を介して受信し(S152)、指定情報に含まれている位置(X1、Y1、Zs、D1)と地図情報を利用し移動する(ステップS153)。
【0070】
図8に示すフローチャートは、図6に示す動作フローにおけるステップS16の詳細なアルゴリズムを示している。
【0071】
移動体2は、フロア移動誘導指令における指定情報において指定された位置(X1、Y1、Zs、D1)まで到達することで、第1IoTデバイス4aとの間で近距離無線通信が可能な位置に到達したこととなる。
【0072】
次に、ステップS161に移行し、移動体2は、第1IoTデバイス4aとの間で近距離無線通信リンクを確立する(ステップS16)。
【0073】
次にステップS163に移行し、移動体2は、第1IoTデバイス4aに対して、近距離無線通信を介して、目的地の階に応じた昇降方向が含まれた希望支援情報を第1IoTデバイス4aへ送信する。第1IoTデバイス4aは、この希望支援情報を近距離無線通信を介して受信する(ステップS164)。
【0074】
この希望支援情報を受信した第1IoTデバイス4aは、モーター駆動機器46を制御することにより、押圧部50により昇降指定ボタン60a、60bを押圧させる。これにより、エレベータ9は、第1IoTデバイス4aが設けられている階まで昇降した上で開扉する(ステップS166)。
【0075】
移動体2は、障害物検出センサ23によりエレベータ9が開扉したことを検出し、モーター駆動機器26を制御することで、エレベータ9内に乗り込む(ステップS165)。
【0076】
図9に示すフローチャートは、図6に示す動作フローにおけるステップS17の詳細なアルゴリズムを示している。
【0077】
ステップS171において、第2IoTデバイス5は、センサ43を介して照度を検出する。この検出した照度を介してエレベータ9が開扉しているか否かを判別する。また、ステップS172において、第2IoTデバイス5は、加速度をセンサ43を介して検出することにより、エレベータ9の上昇、下降を検出する。またセンサ43によって得られたエレベータ9が現時点において止まっている、或いは移動している階を移動体2に対して近距離無線通信のビーコンを介して伝達する。
【0078】
このように、本発明を適用した移動支援連携システム1は、移動体2の目的地への移動をエレベータ9によりタイムリーに連携して支援することができる。このとき、エレベータ9そのものを中央制御コンピュータを利用して制御するのではなく、あくまでエレベータ9に対しては昇降指定ボタン60、行先指定ボタン61を押圧する通常の動作のみ担わせ、この昇降指定ボタン60、行先指定ボタン61の操作を第1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5により実行することで実現することができる。これにより、、エレベータ9そのものを中央制御コンピュータを利用して制御する必要がなくなり、これにアクセスするために公衆通信網を介して膨大な情報の送受信も必要なくなり、情報の遅延や損失の問題が生じこともなくなる。また情報のハッキングを防止するためにこれを暗号化する必要もなくなることからコスト削減につながる。
【0079】
しかも本発明においては、移動体2との間の通信を、中距離無線通信、近距離無線通信等のような局所的に行われる無線通信のみにより実現することができ、インターネット回線のような公衆通信網を特段使用することはない。このため、情報のハッキングの問題も特段発生することはなく、また情報の遅延も生じないため、移動体2の移動に対してタイムリーにエレベータを昇降させることができる。また本発明は、エレベータ管理会社が保有する中央制御コンピュータが主体になるものではないため、遠隔制御方式がそのエレベータ管理会社毎にまちまちになることがなくなり、統一した業界標準化を進める上でも好適なものとなっている。
【0080】
なお、移動体2が人間である場合には、上述した中距離無線通信、近距離無線通信は、人間が保持するデバイスを介して行う。デバイスは、近距離無線通信又は中距離無線通信を介して送信されてくるフロア移動誘導指令をナビゲーション画面上に表示し、そのナビゲーション画面を視認した人間は、その指定された位置へ移動することで同様の処理動作を実現することが可能となる。このとき、デバイスは、フロア移動誘導指令を画面上に表示する代わりに、音声で通知するようにしてもよく、音声を聴いた人間がこれに基づいて指定された箇所へ移動することが可能となる。
【0081】
また、移動体2としての人間が保持するデバイスにおいて、新型コロナウィルスを始めとする各種ウィルス感染の有無に関するデータが格納されていた場合には、これを上述した近距離無線通信又は中距離無線通信を介して配信することができる。デバイス側において、新型コロナウィルス接触確認アプリが実装されていれば、その接触確認を通じてウィルス感染の有無に関するデータを取得することができる。デバイスは、近距離無線通信又は中距離無線通信を介して、上述した第1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5に、各種ウィルス感染の有無に関するデータを送信し、必要に応じて中距離無線通信のマルチホップ機能を活用しながら、これを配信する。これにより、各種ウィルスの感染者の情報を瞬時に広域において情報共有することが可能となる。また、各種ウィルス感染者に関する情報を取得した1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5は、その各種ウィルス感染者である移動体2の移動を支援するための昇降指定ボタン60、行先指定ボタン61の押圧動作に反映させてもよい。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。エレベータ9の開扉の認識を以下の方法に基づいて実行してもよい。
【0083】
エレベータ9内に設けられた第2IoTデバイス5は、常時、或いは所定間隔で近距離無線通信帯域を利用しビーコンを発信している。エレベータ9が昇降してきて開扉したとき、そのエレベータ9内の第2IoTデバイス5から発せられたビーコンが近距離無線通信を介して、その外部にある第1IoTデバイス4aや移動体2により受信される。このビーコンの受信を通じて、第1IoTデバイス4aや移動体2は、そのエレベータ9が開扉しているからこそ受信できたビーコンを通じて、逆にそのエレベータ9の開扉していることを判別することが可能となる。
【0084】
また、エレベータ9内にある第2IoTデバイス4や、エレベータ9内に移動した移動体2も同様にエレベータ9の開扉や現在何階に位置しているかを判別することができる。かかる判別を行うためには、各階に設置されている第1IoTデバイス4bが常時、或いは所定間隔で近距離無線通信帯域を利用しビーコンを発信している。エレベータ9が昇降してきて開扉したとき、第1IoTデバイス4bから発せられたビーコンは、そのエレベータ9内の第2IoTデバイス4や、移動体2により受信される。このビーコンの受信を通じて、第2IoTデバイス4や、移動体2は、そのエレベータ9が開扉しているからこそ受信できたビーコンを通じて、逆にそのエレベータ9の開扉していることを判別することが可能となる。また、そのビーコンに階に関する情報を含めておくことで、現在エレベータ9が何階で停止しているかも判別することが可能となる。第1IoTデバイス4bから発せられたビーコンが特定の階からの発信であることがIDを介して認識するようにしてもよいが、これに限定されるものでは無い。ケースに応じて、複数階からビーコンを受信する場合もあれば、同一階であっても複数のエレベータ9毎に設置されている他のIoTデバイス4bからのビーコンを受信する場合もある。かかる場合には、観測時間あたりの受信数が最も多いビーコンを発信した第1IoTデバイス4からの情報を真の情報として認識するようにしてもよい。
【0085】
エレベータ9内に設けられた第2IoTデバイス5は、常時、或いは所定間隔で近距離無線通信帯域を利用しビーコンを発信している。エレベータ9が昇降してきて開扉したとき、そのエレベータ9内の第2IoTデバイス5から発せられたビーコンが近距離無線通信を介して、その外部にある第1IoTデバイス4aや移動体2により受信される。このビーコンの受信を通じて、第1IoTデバイス4aや移動体2は、そのエレベータ9が開扉しているからこそ受信できたビーコンを通じて、逆にそのエレベータ9の開扉していることを判別することが可能となる。
【0086】
また、エレベータ9内にある第2IoTデバイス4や、エレベータ9内に移動した移動体2も同様にエレベータ9の開扉や現在何階に位置しているかを判別することができる。かかる判別を行うためには、各階に設置されている第1IoTデバイス4bが常時、或いは所定間隔で近距離無線通信帯域を利用しビーコンを発信している。エレベータ9が昇降してきて開扉したとき、第1IoTデバイス4bから発せられたビーコンは、そのエレベータ9内の第2IoTデバイス4や、移動体2により受信される。このビーコンの受信を通じて、第2IoTデバイス4や、移動体2は、そのエレベータ9が開扉しているからこそ受信できたビーコンを通じて、逆にそのエレベータ9の開扉していることを判別することが可能となる。また、そのビーコンに階に関する情報を含めておくことで、現在エレベータ9が何階で停止しているかも判別することが可能となる。
【0087】
また、移動体2は、上述した位置情報に加え、各階の地図情報に基づいて移動する。このとき、各階の地図情報は、各階にある第1IoTデバイス4が保有するようにしてもよい。仮に第1IoTデバイス4が2階にあるのであれば、同じ階(2階)の地図情報を自らに実装されたメモリ等の記憶部において保有している。そして、第1IoTデバイス4は、自ら保有している地図情報、同一階にある移動体2に近距離無線通信を介して配信するようにしてもよい。
【0088】
上述した図6に示す例の場合、移動体2は、第1IoTデバイス4aからは、その第1IoTデバイス4aが設けられている階の地図情報を受信することができる。また、移動体2は、エレベータ9により、第1IoTデバイス4bが設けられている階に移動した場合、当該第1IoTデバイス4bから当該階の地図情報を受信することが可能となる。
【0089】
また地図情報の配信は、上述した実施の形態に限定されるものでは無く、一の第1IoTデバイス4が全ての階の地図情報を保有しているようにしてもよい。そして、その一の第1IoTデバイス4の近傍で移動体2がエレベータ9が来るのを待っているときに、各階の地図情報を配信するようにしてもよい。
【0090】
また、本発明によれば第2IoTデバイス5により、エレベータ9内の情報を取得し、これ基づいた処理動作を実現してもよい。エレベータ9内の情報としてはエレベータ9内の混雑度が考えられる。この混雑度については、第2IoTデバイス5に設けられた図示しないカメラにより、エレベータ9内を撮像し、撮像した画像を周知のディープラーニング技術等を活用することで混雑度を導出してもよい。また、第2IoTデバイス5のセンサ43が赤外線による近接センサで構成することで、エレベータ9に搭乗している人の距離を測定することで混雑度を導出するようにしてもよい。更に第2IoTデバイス4の加速度センサを通じてエレベータ9がどの頻度で昇降しているかを判別することで混雑度を導出するようにしてもよい。エレベータ9が頻繁に昇降するのであれば、その分混雑度が高いものと判断することができ、エレベータ9の昇降頻度が低い場合はその分混雑度も低いものと判断することができる。また移動体2に設けられた障害物検出センサ23を介して赤外線を利用し、エレベータ9に搭乗している人の距離を判別することで混雑度を導き出すようにしてもよい。
【0091】
このような混雑度を導出した場合には、第2IoTデバイス5は、移動体2に近距離無線通信を介してこの混雑度を通知する。混雑度が通知された移動体2は、混雑度に応じてエレベータ9内での停止位置を変更したりするようにしてもよい。
【0092】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。第1IoTデバイス4は、エレベータ9の昇降ボタンを押圧することで、移動体2の移動を支援する機能を有するものであるが、これに限定されるものではない。目的地への経路上に設けられてなると共に移動体2の移動を支援するために必要なボタンを押圧可能な機構を有するものであればいかなるもので構成されていてもよい。移動体2の移動を支援するために必要なボタンとしては、横断歩道等に設けられる歩行者用の押しボタンが考えられる。この押しボタンを押すことで、信号を切り替えることができ、あるいは音楽を流すことで、移動を支援することができる。かかる場合には、移動体2は、ロボットで構成される以外に、自律移動が可能な車いすで構成してもよく、車いすに座っている高齢者や身体障害者を搬送することが可能となる。
【0093】
また本発明は、移動体2から第1IoTデバイス4に対して、都度希望支援情報を近距離無線通信を介して送信することは必須ではない。第1IoTデバイス4は、中距離無線通信を介し、移動体2の現在位置に関する現在位置情報と目的地に関する目的地位置情報を受信することができれば、自らが移動体2の移動経路上にあるか否かに加え、移動体2の移動支援をどのように行えばよいかを理解することができる。仮に第1IoTデバイス4aが2階に位置しており、移動体2の現在位置情報が2階であり、目的地位置情報が3階であれば、第1IoTデバイス4aはエレベータ9の昇降ボタンにつき、上階への移動を指示するボタンを押圧することが可能となる。第2IoTデバイス5も同様の動作を実施するようにしてもよい。
【0094】
このとき、第1IoTデバイス4は、自らが移動体2の移動経路上にある場合には、移動体2の到着を待つことなく前もって移動支援(ボタンの押圧等)を行うようにしてもよいことは勿論である。
【0095】
なお、第1IoTデバイス4、第2IoTデバイス5は、近距離無線通信による全ての無線通信を、中距離無線通信に代替させて行うようにしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
1 移動支援連携システム
2 移動体
3 移動指令発信装置
4 第1IoTデバイス
5 第2IoTデバイス
9 エレベータ
23 障害物検出センサ
24 中距離無線通信部
25 近距離無線通信部
26 モーター駆動機器
34 中距離無線通信部
43 センサ
44 中距離無線通信部
45 近距離無線通信部
46 モーター駆動機器
50、51 押圧部
60 昇降指定ボタン
61 行先指定ボタン
【要約】
【課題】ユーザ端末とゲートウェイ局との間で双方向通信を同一の周波数帯を効率よく共用させる。
【解決手段】移動体2の目的地への移動を連携して支援する上で、目的地への経路上に設けられてなると共に移動体2の移動を支援するために必要なボタンを押圧可能な機構を有する第1IoTデバイス4を備え、第1IoTデバイス4は、中距離無線通信を介して無線信号を受信した移動体2が、自らと近距離無線通信が実現可能となる領域に到達した場合には、移動体2が移動を継続するにあたり希望する支援に関する希望支援情報をを近距離無線通信を介して受信し、受信した希望支援情報に応じてボタンを押圧した後、既定時間後に自動的に離す操作をすることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9