IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長川 歩の特許一覧 ▶ 高井 直輝の特許一覧 ▶ 桑野 太雅の特許一覧 ▶ 詫間 千耀の特許一覧 ▶ 土井 彩乃の特許一覧

<>
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図1
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図2
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図3
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図4
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図5
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図6
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図7
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図8
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図9
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図10
  • 特許-飛沫感染予防教育システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】飛沫感染予防教育システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20220104BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20220104BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
G01N27/12 K
G01N27/22 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021068000
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2021-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521154947
【氏名又は名称】長川 歩
(73)【特許権者】
【識別番号】521156240
【氏名又は名称】高井 直輝
(73)【特許権者】
【識別番号】521156295
【氏名又は名称】桑野 太雅
(73)【特許権者】
【識別番号】521156309
【氏名又は名称】詫間 千耀
(73)【特許権者】
【識別番号】521156310
【氏名又は名称】土井 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】長川 歩
(72)【発明者】
【氏名】高井 直輝
(72)【発明者】
【氏名】桑野 太雅
(72)【発明者】
【氏名】詫間 千耀
(72)【発明者】
【氏名】土井 彩乃
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017265(JP,A)
【文献】特開2021-003181(JP,A)
【文献】特開2020-067939(JP,A)
【文献】特開2019-083395(JP,A)
【文献】特開2018-084975(JP,A)
【文献】国際公開第2017/216056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61B 5/00- 5/398
G09B 1/00- 9/ 56
G09B17/00-19/ 26
G06Q10/00-10/ 10
G06Q30/00-30/ 08
G06Q50/00-50/ 20
G06Q50/26-99/ 00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の咳やくしゃみに伴う呼気全体の広がりを観測する複数の呼気観測用センサと、
呼気観測用センサから取得した水分変化量データに基づき仮想病原体分布を作成するソフトウェアと、
作成した仮想病原体分布を現実世界の映像または画像と合成し表示する手段と、を備えており
前記呼気観測用センサは、セルロースナノファイバー製の基板上にセルロースナノファイバー及び銀及びシリコンからなる回路素子によって構成されていることを特徴とする飛沫感染予防教育システム。
【請求項2】
前記呼気観測用センサは、呼気観測部を含む無線発信回路を備え、呼気観測部が取得した水分量データを無線発信回路から発信することを特徴とする請求項1記載の飛沫感染予防教育システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の咳や会話に伴う飛沫感染予防教育システムに関し、複数の呼気観測用センサを用いて呼気による水分変化量を測定し、呼気観測用センサに内蔵された無線発信回路を用いて水分変化量データを無線発信し、それらのデータをもとに仮想病原体分布を作成し、AR技術を用いて仮想病原体分布を現実世界の映像と合成しディスプレイに表示する、飛沫感染リスクがマスクの有無や風などの環境要因によって大きく変化することを体験者が直感的に理解可能な飛沫感染予防教育システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2019年末のウイルス検出に端を発するCOVID-19による感染拡大により提唱された、ウイルスと人類が共存していく「新しい生活様式」において、咳や会話に伴う飛沫感染を予防することは重要である。具体的な対策例としては身体的距離の確保やマスクの着用、定期的な換気は周囲へのウイルス拡散を抑える効果があり、飛沫感染予防に有効であることがスーパーコンピューターを用いたシミュレーションによって示されている。しかし、このシミュレーションは設定された条件下での計算結果を仮想空間に示すのみであり、直感的に理解できない。また、これらはCOVID-19に限らず、インフルエンザをはじめとした様々な伝染病にも共通することであり、直感的に理解可能な飛沫感染予防教育が必要とされている。
【0003】
本発明では、セルロースナノファイバーによる各種技術を用いている。セルロースナノファイバーで回路素子および配線基板を作成する技術は既に開発されている。セルロースナノファイバー製の回路素子および配線基板はセルロースや最小限の金属と鉱物でできているため、数か月で土壌に分解されていく低環境負荷のセンサデバイスを開発することが可能である。例えば、セルロースナノファイバーの吸水特性を用いて、空気中の水分としての湿度を測定可能な湿度センサが存在する(特許文献1)。また、大阪大学ではセルロースナノファイバーで作成した土に還る無線発信デバイスの開発に成功している。このデバイスはセルロースナノファイバー製の基板上に、受動素子や導線をセルロースナノファイバーと印刷した銀で、増幅器をシリコン半導体で構成している。これにより最小限の金属と鉱物を含む植物素材で出来たデバイスとなっている(非特許文献1)。
【0004】
従来の技術として、仮想現実シミュレーションを用いて、医療環境内などでの病原体拡散を最小限に抑えるために、個人の手洗いなどの感染制御行動の促進要因または阻害要因を特定する感染管理ソリューションの開発のための仮想現実ツール(特許文献2)が存在している。
【0005】
また従来の技術として、模擬咳気発生装置と模擬咳気流発生装置を用いて、人間の咳やくしゃみによる飛沫の飛散状態を模擬し、降下した模擬飛沫の付着した面積を測定することで感染リスク評価を行う、病原体の接触感染リスク評価装置、そのプログラム及び接触感染リスク評価システム(特許文献3)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-066427
【文献】特表2011-502300
【文献】特開2014-137754
【非特許文献】
【0007】
【文献】Takaaki Kasuga,外4名,““Return to the Soil”Nanopaper Sensor Device for Hyperdense Sensor Networks“,ACS Appl.Mater.Interfaces(オンライン),(米),2019,11,p.43488-43493
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の仮想現実ツールでは、医療環境などの、空調や人の出入りが管理された特定の空間内を対象としており、使用範囲が限定されている。加えて、体表に付着した病原体による接触感染リスクのみ評価可能であり、人間の咳や会話に伴う飛沫感染リスクを評価することが困難である、などの問題点が存在した。
【0009】
また、特許文献3の接触感染リスク評価システムでは、測定に使用する飛沫は、人間の咳やくしゃみを模擬したものであり、個々人により異なる飛沫量の違いを再現できず、直感的な理解を促すには不十分である。加えて、病原体は飛沫のみならず、肉眼では検出不可なエアロゾルなどの微細粒子にも含まれるため、降下した飛沫のみを測定するだけでは飛沫感染リスクを評価するには不十分である、などの問題点が存在した。
【0010】
本発明は、人間の咳や会話に伴う呼気に対して、飛沫及びエアロゾルなどの微細粒子の量を、複数の呼気観測用センサによる水分変化量データから評価し、それらのデータをもとに仮想病原体分布を作成し、AR技術を用いて現実世界の映像と合成しディスプレイに表示し、これらの動作を室内外問わず使用可能な簡素な構成で実現し、測定後の呼気観測用センサを簡便に処理することで、体験者が感染リスクを心配することなく、かつ直感的に理解可能な飛沫感染予防教育システムの実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、複数の呼気観測用センサを用いて呼気による水分変化量を測定することで、人間の咳や会話に伴う肉眼では検出不可なエアロゾルなどの微細粒子も含めた呼気全体の広がりを観測可能とし、より詳細に仮想病原体分布を作成可能であると考えた。
また、呼気観測用センサに内蔵された無線発信回路を用いてデータの授受を行うことで、システム構成に必要な機器や配線の量を削減でき、室内外問わず使用可能な簡素な構成で実現できると考えた。
加えて、セルロースナノファイバーによる各種技術を用いた呼気観測用センサを用いることで、従来のセンサデバイスでは不可能であった大量生産、使い捨てが可能であると考えた。一回の観測毎に呼気観測センサを交換することで、消毒作業が不要となり、体験者は感染リスクを心配することなく本発明を使用可能である。使用済みの呼気観測用センサはセルロースと最小限の金属と鉱物で構成されており、数か月で土壌に分解される。
さらに、AR技術を用いて仮想病原体分布を現実世界の映像または画像と合成しディスプレイに表示することで、マスクの有無や風などの環境要因によって病原体分布が大きく変化することを視覚的かつ直感的に確認可能となり、教育効果が得られると考えた。
【0012】
本発明は、複数の呼気観測用センサを用いて呼気の広がりによる水分変化量を測定する手段と、呼気観測用センサに内蔵された無線発信回路を用いて水分変化量データを無線発信する手段と、無線通信用アンテナを用いて水分変化量データを収集する手段と、無線通信により収集した水分変化量データをもとに仮想病原体分布を作成する手段と、AR技術を用いて仮想病原体分布を現実世界の映像と合成しディスプレイに表示する手段と、を備えたことを特徴とする飛沫感染予防教育システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の呼気観測用センサを用いて呼気による水分変化量を測定することで、人間の咳や会話に伴う呼気の広がりを測定でき、より詳細に仮想病原体分布を作成可能である。また、測定に使用した呼気観測用センサはセルロースと最小限の金属や鉱物で構成されており、数か月で土壌に分解されるため、呼気観測用センサを取替えるだけで清潔な状態が保たれ、測定する度に消毒作業を行う必要がない。さらに、AR技術を用いて仮想病原体分布を現実世界の映像と合成しディスプレイに表示することで、マスクの有無や風などの環境要因によって病原体分布が大きく変化することを視覚的に確認可能である。以上により、本発明を使用することにより、体験者は感染リスクを心配することなく、自分自身の咳や会話に伴う病原体拡散の様子を直感的に理解可能であり、飛沫感染の予防教育効果は大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の構成図
図2】呼気観測用センサの配置図
図3】呼気観測用センサの構成図
図4】無線発信回路例
図5】無線発信回路の印刷例
図6】セルロースナノファイバー製コンデンサの静電容量の変化の様子
図7】セルロースナノファイバー製コンデンサの静電容量の0.2秒ごとの変化量
図8】仮想病原体分布の作成例
図9】仮想病原体分布の可視化例
図10】遮蔽物が存在する場合の仮想病原体分布の可視化例
図11】本発明の使用手順
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態および実施例に記載した内容に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の構成図である。本発明は、図1に示すように、呼気観測用センサ1A~1F、無線通信用アンテナ2、ADコンバーター3、コンピュータ4、ディスプレイ5、専用ARマーカー6、USBカメラ7、クリップスタンド8、電源供給用バッテリー9で構成される。無線通信用アンテナ2はADコンバーター3に接続されており、ADコンバーター3、ディスプレイ5、USBカメラ7はコンピュータ4に接続されている。クリップスタンド8は呼気観測用センサ1A~1Fと接続するための電極を備えており、呼気観測用センサ1A~1Fを付け、各クリップスタンド8を電源供給用バッテリー9に接続することで、呼気観測用センサ1A~1Fを使用可能である。また、専用ARマーカー6は体験者10の口または顎の近くになるように固定し、USBカメラ7に映るように向きを調整する。
【0017】
図2に、呼気観測用センサ1A~1Fの配置図を示す。図2に示すように、呼気観測用センサ1A~1Fを、体験者10を中心とした放射状にクリップスタンド8でそれぞれ固定する。前述のとおり、専用ARマーカー6は体験者10の口または顎の近くになるように固定するが、体験者10の飛沫で汚れないよう位置を工夫する。
なお、呼気観測用センサ1A~1Fの数は、使用場所や規模に応じて任意で決定可能とする。
【0018】
図3は、呼気観測用センサ1A~1Fの構成図である。図3に示すように、呼気観測用センサ1A~1Fは長方形のセルロースナノファイバー基板11、呼気観測部13を含む無線発信回路12、電極接続部14によって構成される。セルロースナノファイバー基板11上に、呼気観測部13を含む無線発信回路12、電極接続部14が印刷されており、それぞれ導線で接続されている。クリップスタンド8と電極接続用導線14を接続することで使用する。
呼気観測用センサ1A~1Fが備える各要素は、セルロースナノファイバー製の基板並びにセルロースナノファイバーおよび最小限の金属や鉱物からなる回路素子によって作成することで、使用後に交換し、再利用のため消毒する必要がないセンサデバイスが実現できる。非特許文献1より、セルロースナノファイバー製の基板並びにセルロースナノファイバーおよび最小限の金属や鉱物からなる回路素子は、40日間で95%が土に分解される。
【0019】
図4は、無線発信回路12の回路例である。図4に示す例ではコイルおよびコンデンサから構成されるLC発振回路を備えており、発振された信号をトランジスタで増幅し無線発信を行う。コンデンサが呼気観測部13に該当する。
【0020】
図5は、図4に示した無線発信回路12の印刷例である。非特許文献1のように、セルロースナノファイバー製の基板上に、導線や受動素子(抵抗、コイル、コンデンサ)をセルロースナノファイバーと印刷した銀で、増幅器をシリコン半導体で構成する。これにより平面状に回路設計が可能となる。また、最小限の金属と鉱物を含む植物素材で構成されたデバイスとなっている。
【0021】
呼気観測部13のセルロースナノファイバー製コンデンサは誘電層内にセルロースナノファイバーを用いており、セルロースナノファイバーは一般的な紙と同様に吸湿性をもっているために、咳に伴う飛沫などの水分によって静電容量が大きく変化するという性質がある。静電容量の変化量データを呼気による水分変化量データとみなすことで、呼気のセンサとして用いることが可能である。
【0022】
図6は、咳によるセルロースナノファイバー製コンデンサの静電容量の変化の様子を示したものである。静電容量が1300pFのセルロースナノファイバー製コンデンサに、20cmの距離から咳をした。点線が咳のタイミングである。図6に示すように、咳をした瞬間に静電容量が大きく増加するが、以降はその値が徐々に元に戻る。
図7は、静電容量の変化の様子を0.2秒ごとの変化量として示したものである。図7に示すように、通常時はノイズによる変化はあるものの静電容量の変化量は50pF未満で保たれており、咳をするとその呼気により静電容量が50pF以上変化する。
静電容量の変化により無線発信回路12の発信周波数が変化し、変化した周波数が無線通信用アンテナ2を用いてADコンバーター3に入力される。受信した周波数から呼気観測部13のセルロースナノファイバー製コンデンサの変化した静電容量が逆算される。ノイズによる静電容量の最大変化量を閾値とし、閾値以上の変化量を検出した際には、その変化量データを呼気による水分変化量とする。ただし、静電容量の変化の様子は、使用するセルロースナノファイバー製コンデンサの静電容量、大きさ、気温などによって変化するため、用途によって適宜変更する必要がある。
また、各呼気観測用センサ1A~1Fが発信するデータを区別するため、無線発信回路12内を構成する素子値を変更することで発振周波数を変えておき、それぞれに対応したチャンネルをあらかじめ準備しておく必要がある。
【0023】
また、特許文献1で開示されている感湿材としてセルロースナノファイバーを用いた湿度センサも利用可能であると考える。この感湿材は湿度に応じて電気抵抗が変化する。この抵抗値の変化を呼気による水分変化量として用いてもよい。
【0024】
無線通信用アンテナ2が受信した水分変化量データまたは静電容量の変化量データはアナログデータである。そこで、ADコンバーター3がそれらのアナログデータをデジタルデータに変換し、コンピュータ4に入力する。
コンピュータ4では、水分変化量データまたは静電容量の変化量データに閾値を設け、閾値以上の変化量に応じた数の仮想病原体15を配置することで仮想病原体分布を作成する。閾値以上の変化量に段階的な指標を設け、指標に応じた仮想病原体15の数もあらかじめ決定しておき、それらを各呼気観測用センサ1A~1Fと体験者10の間に、乱数モデルに従って水平・垂直方向に配置することで仮想病原体分布を作成する専用ソフトウェアをコンピュータ4に搭載する。
図8に示す仮想病原体分布の作成例と、前述したセルロースナノファイバー製コンデンサの静電容量の変化量データの例を用いて説明する。例えば、閾値を50pF未満とし、静電容量の変化量が50pFの場合に、呼気観測用センサ1A~1Fと体験者10の間に仮想病原体15を1個配置することとする。また、50pF以上は10pF増加する度に仮想病原体15を1個ずつ増加させることとする。さらに、図8内の呼気観測用センサ1A、1Fの静電容量の変化量が50pF、呼気観測用センサ1B、1Eの静電容量の変化量が100pF、呼気観測用センサ1C、1Dの静電容量の変化量が150pFとすると、図8に示すような仮想病原体分布を作成する。呼気観測用センサ1A、1Fと体験者10の間にはそれぞれ仮想病原体15が1個ずつ、呼気観測用センサ1B、1Eと体験者10の間にはそれぞれ6個ずつ、呼気観測用センサ1C、1Dと体験者10の間にはそれぞれ11個ずつ、ランダムに配置する。
1度作成した仮想病原体分布はコンピュータ4またはその他の記憶機器に保存され、いつでも確認可能とする。
【0025】
図9に、仮想病原体分布の可視化例を示す。図8を用いて説明したような条件を基に作成した仮想病原体分布を、USBカメラ7が映す画像または映像にAR(拡張現実)技術を用いて合成し、ディスプレイ5上などに表示することで可視化する。専用ARマーカー6の位置を基準として、作成した仮想病原体分布を表示する。
AR技術を用いることで、仮想病原体分布を立体的に確認可能となり、病原体拡散の様子をより直感的に学習可能となる。
また、仮想病原体15の色や大きさを変更する、あるいはアニメーション効果を付加することで視覚効果を高め、より直感的に病原体分布の様子を確認可能となる。
【0026】
図10に、遮蔽物が存在する場合の病原体分布の可視化例を示す。アクリル板などの遮蔽物が存在すると、呼気の広がりの様子は大きく変化する。そのため、遮蔽物の有無による病原体分布の違いを表現し、直感的に理解させることは重要である。例えば、図10に示すように、仮想遮蔽物15A、15Bの形状を、それぞれ対応した仮想遮蔽物専用マーカー16A、16Bに登録しておく。USBカメラ6が仮想遮蔽物専用マーカー16A,16Bを認識した際に、図10に示すようなそれぞれの仮想遮蔽物15A、15Bの形状に応じた遮蔽効果を表現する。このとき、仮想遮蔽物専用マーカー16A、16Bと専用ARマーカー6をそれぞれ区別するために、全て異なるデザインのものを用いることとする。
【0027】
図11に、本発明の使用手順を示す。
本発明は、測定を行う使用者は1名ずつとし、それ以外の使用者はディスプレイ5などに表示した病原体分布を確認する、という使用形態をとることとする。以下、測定を行う使用者を特別に代表者と呼称する。
まず、使用者は各機器を図1および図2を用いて説明したようなことに注意して設置し、専用ソフトウェアを起動する。
次いで、放射状に固定した呼気観測用センサ1A~1Fの中心に代表者の口または顎の位置を調整する。
次いで、各無線通信用アンテナ2が、各呼気観測用センサ1A~1Fから水分変化データまたは静電容量の変化データを受信していることを確認する。また、その変化値が閾値未満であることを確認する。適切でない場合には、再接続または閾値の変更を行う。
次いで、代表者が呼気観測用センサ1A~1Fに向けて咳またはくしゃみをする。
次いで、仮想病原体分布が正しく作成されたかどうかをディスプレイ5などで確認する。正しく作成されない場合には、もう一度代表者が咳またはくしゃみをする。
次いで、作成した仮想病原体分布を保存する。
次いで、呼気観測用センサ1A~1Fをクリップスタンド8から取り外し、新しいものと交換する。
以降、代表者のマスク着用や測定場所の変更などを行う度に以上の動作を繰り返し、様々な条件での仮想病原体分布を作成する。
【0028】
本発明の使用形態において、各呼気観測用センサ1A~1FとADコンバーター3を有線にて接続する手段を用いてもよい。
【0029】
なお、仮想病原体分布を作成する手段を持つ専用ソフトウェアの搭載先はコンピュータ4に限定されず、例えばノートパソコンにソフトウェアを搭載し、そのノートパソコンのディスプレイに仮想病原体分布を表示する、という手段を用いることも可能である。
【0030】
また、仮想病原体分布の表示手段はAR技術に限定されず、例えばVR(仮想現実)技術やMR(複合現実)技術を用いることも可能である。ただし、これらの技術は一部の人に健康影響を及ぼす可能性があるため、使用者の年齢などに応じて適切に使用しなければならない。
【符号の説明】
【0031】
1A~1F 呼気観測用センサA~F
2 無線通信用アンテナ
3 ADコンバーター
4 コンピュータ
5 ディスプレイ
6 専用ARマーカー
7 USBカメラ
8 クリップスタンド
9 電源供給用バッテリー
10 体験者
11 セルロースナノファイバー基板
12 無線発信回路
13 呼気観測部
14 電極接続用導線
15 仮想病原体
16A、16B 仮想遮蔽物A、B
17A、17B 仮想遮蔽物専用マーカーA、B
【要約】      (修正有)
【課題】病原体分布を作成する飛沫感染予防教育システム
【解決手段】飛沫感染予防教育システムは、複数の呼気観測用センサを用いて呼気による湿度変化量を測定することで、人間の咳や会話に伴う肉眼では検出不可なエアロゾルなどの微細粒子も含めた呼気全体の動きを観測可能とし、また、呼気観測用センサに内蔵された無線発信回路を用いてデータの授受を行うことで、システム構成に必要な機器や配線の量を削減し、室内外問わず使用可能な簡素な構成を特徴とする。さらに、AR(拡張現実)技術を用いて病原体分布を現実世界の映像または画像と合成しディスプレイに表示することで、マスクの有無や風などの環境要因によって病原体分布が大きく変化することを視覚的かつ直感的に確認可能となり、加えて、大量生産可能で、数ヶ月で土壌に分解されるため使用後の消毒作業が必要ない呼気観測用センサを用いることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11