(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】電気電子機器収納用箱の筐体とユニット間の防水構造
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20220104BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H05K7/20 G
(21)【出願番号】P 2017093790
(22)【出願日】2017-05-10
【審査請求日】2020-03-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 陵二
(72)【発明者】
【氏名】澤井 浩司
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059664(JP,A)
【文献】特開2003-064962(JP,A)
【文献】特開2003-101256(JP,A)
【文献】特開2001-326475(JP,A)
【文献】特開2014-126130(JP,A)
【文献】特開2017-067273(JP,A)
【文献】特開2004-059038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
H05K 7/20
H02G 3/08
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された電気電子機器収納用箱の筐体と、開口部を覆うように取り付けられるユニットと、を備え、
開口部の周囲には筐体とユニットの間に内側パッキンと外側パッキンが配置されており、
前記内側パッキンと外側パッキンは間に空隙を設けるように同一面上に配置されており、
前記ユニットのベース部は、内側パッキンと当接する部位の高さ位置と、外側パッキンと当接する高さ位置が異なり、
ユニットに対する反発力が内側パッキンと外側パッキンで互いに異なる電気電子機器収納用箱の筐体とユニット間の防水構造。
【請求項2】
筐体とユニットを固定する固定ねじを、内側パッキン及び外側パッキンよりも内側に配置し、
ユニットに対する反発力は、内側パッキンよりも外側パッキンの方が弱い請求項1に記載の電気電子機器収納用箱の筐体とユニット間の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子機器収納用箱の筐体とユニット間の防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、筐体の開口部にユニットを取り付ける際、開口部の周辺にパッキンを介在させて防水を行うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、このような筐体は屋外に設置されることが多い。筐体が屋外に設置された場合、開口部周辺に備えられたパッキンは外気に曝されやすいため、経年劣化により防水性能が損なわれやすかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明の課題は、パッキンの経年劣化を抑制しつつ、防水性能を高めることが可能な構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため開口部が形成された電気電子機器収納用箱の筐体と、開口部を覆うように取り付けられるユニットと、を備え、開口部の周囲には筐体とユニットの間に内側パッキンと外側パッキンが配置されており、ユニットに対する反発力が内側パッキンと外側パッキンで互いに異なる電気電子機器収納用箱の筐体とユニット間の防水構造とする。
【0007】
筐体とユニットを固定する固定ねじを、内側パッキン及び外側パッキンよりも内側に配置し、ユニットに対する反発力は、内側パッキンよりも外側パッキンの方が弱い構成とすることが好ましい。
【0008】
内側パッキンと外側パッキンとの間に空隙を設けて配置した構成とすることが好ましい。
【0009】
ユニットのベース部は、内側パッキンと当接する部位の高さ位置と、外側パッキンと当接する高さ位置が異なる構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、パッキンの経年劣化を抑制しつつ、防水性能を高めることが可能な構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】ユニットを筐体に取り付けた状態を示した断面図である。
【
図4】複数の部材で枠体が構成された内側パッキン及び外側パッキンの例を示した図である。
【
図5】一つの部材で枠体が構成された内側パッキン及び外側パッキンの例を示した図である。ただし、各々のパッキンは繋ぎ部を備えている。
【
図6】天井板とベース部間の距離を、内側パッキンが位置する部位と外側パッキンが位置する部位で異なる長さとした例を示した図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1及び
図3に示されていることから理解されるように、本実施形態では、開口部21が形成された電気電子機器収納用箱の筐体2と、開口部21を覆うように取り付けられるユニット1とを備えている。また、開口部21の周囲には筐体2とユニット1の間には、内側パッキン31と、この内側パッキン31の外周を囲うように、内側パッキン31よりも外側に位置する外側パッキン32が配置されている。そして、ユニット1に対する反発力が内側パッキン31と外側パッキン32で互いに異なるようにすることで、電気電子機器収納用箱の筐体2とユニット1間の防水構造を形成している。このため、外側パッキン32が劣化しても、内側パッキン31により防水性能を保つことができ、パッキンの経年劣化を抑制しつつ、防水性能を高めることが可能な構造を提供することが可能となる。
【0013】
本実施形態のユニット1は換気扇ユニットとして説明する。本実施形態の換気扇ユニットは、換気扇12を固定する部材でケース状に形成したベース部13を備えている。このベース部13には通気口14が四方の辺に形成されている。
図3に示す例においては、通気口14にフィルタ91を取り付けており、筐体2内の汚損を抑制している。また、四方の通気口14を覆うように取り付けられるフード15を備えている。このフード15は、ベース部13に対して着脱可能となるように構成されている。より具体的にはフード15はベース部13に対してねじ等を用いて固定されている。
【0014】
ベース部13の底部には開口16を形成している。また換気扇12は、この開口16内に差し込まれるようにして取り付けられる。ベース部13の裏面側には、筐体2に設けられた開口部21の四辺を挟止するための押さえ板17が備えられている。この押さえ板17は、固定ねじ18の締め付けにより、ベース部13と押さえ板17で天井板22を挟止して固定するものである。
【0015】
ベース部13と天井板22との間には内側パッキン31と外側パッキン32が介在している。本実施形態では、内側パッキン31と外側パッキン32の各々は、枠体状に形成されており、開口部21を囲うように配置されている。なお、各々のパッキンは一連で形成するものであっても良いし、複数のパッキンを組み合わせて枠体状にするものであっても良い。複数のパッキンを組み合わせて使用する場合、
図4に示すように、内外のパッキンの繋ぎ部93をそれぞれ反対側に設けた構成とすれば、パッキンの繋ぎ部93を少なくできるとともに、水の浸入を効果的に防止することができる。
図5に示すように内側パッキン31と外側パッキン32が各々一つの部材で構成されていても、繋ぎ部93を備える場合がある。この場合も内外のパッキンの繋ぎ部93をそれぞれ反対側に設けた構成とすれば、水の浸入を効果的に防止することができる。
【0016】
本実施形態では、筐体2とユニット1を固定する固定ねじ18を、内側パッキン31及び外側パッキン32よりも内側に配置している。より具体的には、内側パッキン31の内側に換気扇ユニットを天井板22へ固定するために用いる固定ねじ18を配置している。また、内側パッキン31及び外側パッキン32がもたらすユニット1に対する反発力は、内側パッキン31よりも外側パッキン32の方が弱くなるように構成されている。このため、内側パッキン31及び外側パッキン32には、固定ねじ18を通すための加工が不要となり、水の浸入を効果的に防止することができる。
【0017】
本実施形態では、外側パッキン32は柔らかい部材で反発力が低い部材としている。また、内側パッキン31は硬い部材で反発力が高い部材としている。反発力が高いパッキンは天井板22とベース部13に押し付けようとする力により防水性能を高めることができるが、天井板22を押し付ける力も大きくなり、天井板22が変形しようとする。しかし、このパッキンを筐体2とユニット1を固定する固定ねじ18の近辺に配置すれば、パッキンから生じる天井板22を押し付けようとする力を固定ねじ18で吸収することが可能となる。そこで本実施形態では、筐体2とユニット1を固定する固定ねじ18を、反発力が高い部材で形成した内側パッキン31の近傍に配置している。このようにすることにより、内側パッキン31側を反発力が高い部材で形成しても、天井板22の変形を防止しつつ固定できる。
【0018】
一方、固定ねじ18から離れる外側パッキン32は柔らかい部材で形成している。柔らかい部材で形成された外側パッキン32は、ベース部13の固定面や天井板22への追従性が良いため、天井板22または、ベース部13と外側パッキン32の隙間を小さくでき、防水性を高めることができる。
【0019】
パッキンの保持方法としては、天井板22に設けられた開口16の周縁に孔を設け、その孔にねじを通過させて固定するものでも良いが、本実施形態では、押さえ板17を用いることで、パッキンを面で挟止しつつ固定する固定構造である。このようにすれば、内側パッキン31に対して比較的広範囲に荷重を均一に加えることができ、パッキンと天井板22の間に隙間が生じることを抑制できる。なお、内側パッキン31に均一の荷重を加える為に、反発力が高いパッキンを略全て覆うように押さえ板17を設けることが好ましい。また、本実施形態の押さえ板17は略コ字状としており、締め付け時に生じる押さえ板17の変形をコ字状の腕部で防止している。勿論、外側パッキン32を覆うように押さえ板17を設けることにより、より効果的に防水性能を高めることが可能である。
【0020】
パッキンはベース部13に対して固定される。本実施形態では、ベース部13の端部を折り曲げて形成した当接片61がベース部13の四方に設けられており、この当接片61の内側の空間にパッキンを配置している。このため、当接片61によって外側パッキン32が外気に触れることを抑制することができる。また、押さえ板17を締め付けて、ある程度パッキンを押し潰すと、天井板22と当接片61が当接する。したがって、必要以上にパッキンを押し潰すことを回避できる。なお、パッキンを押し潰し続けると弾性変形量が少なくなり、防水できなくなる恐れもあるが、当接片61を形成することによりパッキンが過度に押し潰されることを防止できる。なお、本実施形態のパッキンは天井板22の開口部21周辺に貼り付けるものでも良い。
【0021】
ところで、内側パッキン31と外側パッキン32は空隙95を設けて配置することが好ましい。内側パッキン31と外側パッキン32は密着させて形成しても良いが、内側パッキン31と外側パッキン32の配置時に、互いに密着させておくと、ベース部13から圧縮力が働いた場合、内側パッキン31と外側パッキン32が対向する面側には変形できず、垂直方向に力を逃がそうとする場合がある。この場合、状況によっては、その逃がした力が天井板22やベース部13を変形させる虞もある。そこで、本実施形態では、内側パッキン31と外側パッキン32の配置時に、内側パッキン31と外側パッキン32との間に空隙95を設けている。このようにすると、ベース部13から圧縮力が働いた場合でも、内側パッキン31と外側パッキン32の間にパッキンが変形できるスペースが生じる。したがって、天井板22やベース部13を変形させる力が発生することが抑制され、防水に対する信頼性を向上できる。
【0022】
内側パッキン31と外側パッキン32の反発力を異ならせるには、パッキンをそれぞれ異なる材質とすることが考えられる。また、各々のパッキンが同一面上に配置されている場合、各々のパッキンとベース部13との当接面の高さ位置を変えることにより同種類のパッキンであっても反発力を異なるものとすることもできる。この場合、ベース部13の高さが低いほうがパッキンの反発力が高くなり、ベース部13の高さが高いほうがパッキンの反発力が低くなる。このように、ベース部13とパッキンとの当接高さ位置を異ならせるだけでも反発力を異ならせるようにすることができる。そこで、
図6に示す例では、ユニット1のベース部13は、内側パッキン31と当接する部位の高さ位置と、外側パッキン32と当接する高さ位置が異なるように構成している。なお、パッキンの圧縮率が高いと天井板22に向けた弾性力が高くなる。
【0023】
以上、一つの実施形態を中心に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えばパッキンは繋ぎ部が無い一続きのパッキンとすることもできる。
【0024】
また、パッキンは略四角形状とする必要は無く、開口部の形状に合わせて、略円形状などにすることも可能である。
【0025】
また、ユニットは換気扇ユニットである必要性は無い。例えば、筐体内に搭載される電気機器の冷却を行う冷却装置や、フード部材などにすることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ユニット
2 筐体
13 ベース部
18 固定ねじ
21 開口部
31 内側パッキン
32 外側パッキン
95 空隙