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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/20 20060101AFI20220104BHJP
   F16D 3/12 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B62D1/20
F16D3/12 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017229951
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019098849
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】関口 暢
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-261424(JP,A)
【文献】特開2004-322688(JP,A)
【文献】米国特許第05460574(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16- 1/20,
7/08, 7/09,
7/16, 7/18,
7/20, 7/22
F16D 3/06, 3/12
F16C 3/00- 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心に回転可能なインナシャフトと、このインナシャフトの一部を覆い前記インナシャフトと共に回転可能なアウタシャフトと、を有するステアリング装置において、
前記インナシャフト、及び、前記アウタシャフトは、前記軸線に沿って相対的に移動可能に設けられ、
前記インナシャフトは、前記軸線上に設けられた軸心部と、この軸心部の外周に設けられた第1当接部と、前記軸心部の外周に設けられると共に前記第1当接部とは硬さの異なる第2当接部と、を有し、
前記第2当接部は、前記軸線の延びる方向に沿って、前記第1当接部に隣接して設けられ、
前記軸心部のうち前記第1当接部及び前記第2当接部が設けられた当接部支持部は、前記軸線に垂直な断面を基準として、非円形状を呈し、
前記アウタシャフトは、前記第1当接部又は前記第2当接部のいずれかにのみ当接すると共に、当接している当接部との間でのみトルクを伝達可能なトルク伝達部を有している、ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記トルク伝達部は、前記インナシャフトに向かって突出することにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記トルク伝達部は、前記第1当接部及び前記第2当接部の外周形状に沿って配置され、
前記アウタシャフトの前記トルク伝達部に隣接する部位の内周面は、円形状を呈することを特徴とする請求項1記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記第1当接部は、素材にゴムが用いられ、
前記第2当接部は、素材に樹脂が用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記当接部支持部は、前記軸線に垂直な断面を基準として、略X字状に形成され、
前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記当接部支持部の外周に沿った形状を呈することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記アウタシャフトは、略筒状に形成された第1筒部と、この第1筒部の端部に連結された略筒状の第2筒部と、を有し、
前記第1筒部は、前記軸線方向を基準として、前記トルク伝達部を挟むように前記内周面が円形状の部位が2箇所に形成され、
前記第2筒部は、前記トルク伝達部を有し、
2つの前記トルク伝達部と、2箇所の前記内周面が円形状の部位と、が交互に並んでいることを特徴とする請求項2記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールの操舵トルクを車輪に伝達するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員は、ステアリングホイールを操舵することにより、車両を操作する。ステアリングホイールの操舵力は、ステアリング装置を介して車輪に伝達される。車輪が左右に転舵されることにより、車両は、進行する方向が決められる。このようなステアリング装置として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、ステアリング装置は、車体に固定されたステアリングコラムと、このステアリングコラムに支持されていると共に上端にステアリングホイールが固定されたメインシャフトと、このメインシャフトの下端に軸継手を介して接続されたインタミディエイトシャフトと、このインタミディエイトシャフトの下端に軸継手を介して接続されたギヤボックスと、を備えている。
【0004】
ステアリングホイールを操舵することにより、ギヤボックスを介してタイロッドが左右に変位し、これにより車輪が転舵される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-322688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ステアリングホイールを操舵する際に乗員に伝わる感覚は、乗員によって好みが異なる。例えば、路面の凹凸等の感覚がより伝わるようなものを好む乗員もいるし、逆に、路面の凹凸等の感覚が伝わりにくいものを好む乗員もいる。ステアリングホイールを操舵した際に乗員に伝わる感覚を選択することができれば、より多くの乗員が快適に運転を行うことができ、好ましい。
【0007】
本発明は、操舵フィーリングを選択することができるステアリング装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1による発明によれば、軸線を中心に回転可能なインナシャフトと、このインナシャフトの一部を覆い前記インナシャフトと共に回転可能なアウタシャフトと、を有するステアリング装置において、
前記インナシャフト、及び、前記アウタシャフトは、前記軸線に沿って相対的に移動可能に設けられ、
前記インナシャフトは、前記軸線上に設けられた軸心部と、この軸心部の外周に設けられた第1当接部と、前記軸心部の外周に設けられると共に前記第1当接部とは硬さの異なる第2当接部と、を有し、
前記第2当接部は、前記軸線の延びる方向に沿って、前記第1当接部に隣接して設けられ、
前記軸心部のうち前記第1当接部及び前記第2当接部が設けられた当接部支持部は、前記軸線に垂直な断面を基準として、非円形状を呈し、
前記アウタシャフトは、前記第1当接部又は前記第2当接部のいずれかにのみ当接すると共に、当接している当接部との間でのみトルクを伝達可能なトルク伝達部を有している、ことを特徴とするステアリング装置が提供される。
【0009】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記トルク伝達部は、前記インナシャフトに向かって突出することにより形成されている。
【0010】
請求項3に記載のごとく、好ましくは、前記トルク伝達部は、前記第1当接部及び前記第2当接部の外周形状に沿って配置され、
前記アウタシャフトの前記トルク伝達部に隣接する部位の内周面は、円形状を呈する。
【0011】
請求項4に記載のごとく、好ましくは、前記第1当接部は、素材にゴムが用いられ、
前記第2当接部は、素材に樹脂が用いられる。
【0012】
請求項5に記載のごとく、好ましくは、前記当接部支持部は、前記軸線に垂直な断面を基準として、略X字状に形成され、
前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記当接部支持部の外周に沿った形状を呈する。
【0013】
請求項6に記載のごとく、好ましくは、前記アウタシャフトは、略筒状に形成された第1筒部と、この第1筒部の端部に連結された略筒状の第2筒部と、を有し、
前記第1筒部は、前記軸線方向を基準として、前記トルク伝達部を挟むように前記内周面が円形状の部位が2箇所に形成され、
前記第2筒部は、前記トルク伝達部を有し、
2つの前記トルク伝達部と、2箇所の前記内周面が円形状の部位と、が交互に並んでいる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、第1当接部又は第2当接部のいずれかにのみ当接すると共に、当接している当接部との間でのみトルクを伝達可能なトルク伝達部を有している。アウタシャフト及びインナシャフトは、相対的に移動可能に設けられている。アウタシャフト又はインナシャフトを移動させることにより、トルク伝達部を第1当接部又は第2当接部のいずれかに当接させる。このとき、当接している方の当接部のみがトルク伝達部との間でトルクを伝達可能である。即ち、当接していない方の当接部は、トルク伝達部との間でトルクを伝達することができない。そして、第1当接部及び第2当接部は、それぞれ硬さが異なる。第1当接部を介してトルクを伝達させた場合と、第2当接部を介してトルクを伝達させた場合とにおいて、ステアリングホイールを操作した際に乗員に伝わる感覚が異なる。これらの感覚の選択は、アウタシャフトとインナシャフトとを相対的に移動させることによって行うことができる。操舵フィーリングを選択することができるステアリング装置を提供することができる。
【0015】
特に、操舵フィーリングを機械的な簡便な構成によって選択可能とした。安価なステアリング装置でありながら、操舵フィーリングを適宜選択することができ、好ましい。
【0016】
請求項2に係る発明では、トルク伝達部は、インナシャフトに向かって突出することにより形成されている。簡便な形状によって、各当接部に当接する部位と当接しない部位とを分けることができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、トルク伝達部は、第1当接部及び第2当接部の外周形状に沿って配置されている。トルク伝達部と、これに当接している当接部との間でより確実にトルクを伝達することができる。
【0018】
加えて、アウタシャフトのトルク伝達部に隣接する部位の内周面は、円形状を呈する。簡便な形状によって、各当接部に当接する部位と当接しない部位とを分けることができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、第1当接部は、素材にゴムが用いられ、第2当接部は、素材に樹脂が用いられる。特に、操舵フィーリングを変化させることができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、当接部支持部は、軸線に垂直な断面を基準として、略X字状に形成され、第1当接部及び第2当接部は、当接部支持部の外周に沿った形状を呈する。これにより、第1当接部、及び、第2当接部は、軸線に垂直な断面を基準として略X字状に形成されている。これにより、軸線方向への移動を許容しつつ、トルクを確実に伝達することができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、第1筒部は、軸線方向を基準として、トルク伝達部を挟むように内周面が円形状の部位が2箇所に形成され、第2筒部は、トルク伝達部を有する。2つの筒部によって構成することにより、型抜きを可能にしつつ、トルク伝達部を複数有するアウタシャフトとすることができる。トルク伝達部が複数形成されることにより、トルクの伝達が確実に行われると共に、操舵フィーリングの違いが運転者により伝わるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例によるステアリング装置の斜視図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図1に示されたステアリング装置の断面図である。
図4図1に示されたステアリング装置の分解斜視図である。
図5図3の5-5線断面図である。
図6図3の6-6線断面図である。
図7図2に示されたロック機構の作用について説明する図である。
図8図1に示されたステアリング装置の作用について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
<実施例>
【0024】
図1を参照する。ステアリング装置10は、車両の前部に搭載される。ステアリング装置10は、車体に固定された支持部材11と、この支持部材11によって支持されたロック機構12と、このロック機構12によって支持されたステアリングコラム13と、このステアリングコラム13に回転可能に支持されたアッパーシャフト14と、このアッパーシャフト14の後端且つ上端に固定されたステアリングホイール15と、ステアリングコラム13に連結されたインターミディエイトシャフト20と、を有する。
【0025】
なお、説明中、前後とは車両の進行方向を基準として前後、左右とは車両の乗員を基準として左右を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Upは上、Dnは下、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右を示している。
【0026】
ロック機構12は、ロック状態においてステアリングコラム13の軸線方向(前後方向)への移動を規制し、アンロック状態においてステアリングコラム13の軸線方向への移動を許容する。
【0027】
ロック機構12は、ステアリングホイール15の前後位置を調整可能な、周知のテレスコピック機構を流用することができる。
【0028】
図2を参照する。支持部材11は、ステアリングコラム13の側方に沿って下方に延びる左右の側壁部11a、11aを有している。
【0029】
図2のロック機構12は、ロック状態にある。ロック機構12は、左右の側壁部11a、11aを貫通し左右の側壁部11a、11aを締め付け可能な締め付けボルト12aと、この締め付けボルト12aの一端が締結され右の側壁部11aに固定されたナット12bと、締め付けボルト12aの他端に設けられたカム部材12cと、このカム部材12cに固定され操作者が操作可能な操作レバー12dと、を有する。
【0030】
ステアリングコラム13は、左右の側壁部11a、11aに挟まれていると共にロック機構12のアンロック時に前後方向に移動可能な可動ブラケット13aを有している。
【0031】
可動ブラケット13aには、締め付けボルト12aが貫通し、前後に長い長円形状を呈するテレスコ調整用穴13b、13bが空けられている。
【0032】
図1を参照する。ステアリングホイール15は、乗員が操作することにより、回転する。ステアリングホイール15を回転させた際のトルクは、ステアリングコラム13及びインターミディエイトシャフト20を介して、車輪側へ伝達される。即ち、ステアリングホイール15、ステアリングコラム13、及び、インターミディエイトシャフト20は、それぞれの軸線を中心に回転可能に設けられている。
【0033】
図3を参照する。インターミディエイトシャフト20は、アッパーシャフト14(図1参照)に連結された軸継手21と、この軸継手21に連結され軸継手21と共に回転可能なアウタシャフト30と、このアウタシャフト30の内部に設けられアウタシャフト30と共に回転可能なインナシャフト40と、を有する。
【0034】
アウタシャフト30は、軸継手21が差し込まれた差し込み穴31aを有する固定板部31と、この固定板部31にボルト32及びナット33を介して固定された第1筒部34と、この第1筒部34にボルト35及びナット36を介して固定された第2筒部37と、を有する。
【0035】
第1筒部34は、両端にフランジが形成されている筒状の部材である。第1筒部34の略中央には、インナシャフト40に向かって突出したトルク伝達部34aが形成されている。
【0036】
トルク伝達部34aの形成されている部位に隣接する部位34b、34cは、軸線CLに垂直な断面を基準として円形状に形成されている。このトルク伝達部34aに隣接する部位34b、34cは、トルク伝達部34aを挟むように2箇所に形成されている。
【0037】
第2筒部37は、内周の略全体に亘って、インナシャフト40に向かって突出したトルク伝達部37aが形成されている。
【0038】
以上から明らかなように、アウタシャフト30の内面には、2つのトルク伝達部34a、37aと、2箇所の円形状の部位34b、34cと、が交互に並んでいる。換言すれば、トルク伝達が可能な部位と、トルク伝達しない部位とが交互に並んでいる。
【0039】
図4を併せて参照する。インナシャフト40は、軸線CL上に設けられた軸心部50と、この軸心部50の外周に2つ設けられた第1当接部42と、この第1当接部42に並べて軸心部50の外周に2つ設けられると共に第1当接部42とは硬さの異なる第2当接部43と、この第2当接部43の端部に接触し第2当接部43が軸心部50から外れることを防止するO字状のワッシャ44と、このワッシャ44を軸心部50に固定するビス45と、を有している。
【0040】
軸心部50は、軸線CLに垂直な断面を基準として略X字状に形成され外周に第1当接部42及び第2当接部43が取り付けられた当接部支持部51と、この当接部支持部51の端部に一体的に形成され径方向に広がる当接部抜け止め部52と、この当接部抜け止め部52から軸線CLに沿って延び車輪側の部材に接続されるインナシャフト接続部53と、このインナシャフト接続部53の端部に固定された軸継手54(図1参照)と、を有する。
【0041】
当接部抜け止め部52は、第2当接部43の端部に当接し、第2当接部43が軸心部50から抜けることを防止している。なお、径方向へ突出する当接部抜け止め部52を用いない場合には、ワッシャを用いて抜け止めとしても良い。
【0042】
第1当接部42、及び、第2当接部43は、少なくとも1つずつ配置される。第1当接部42、及び、第2当接部43は、それぞれ同じ形状に形成されている。第1当接部42、及び、第2当接部43は、第1当接部42から配置することもできるし、第2当接部43から配置することもできる。即ち、第1当接部42と、第2当接部43とは、図に示されるのと逆の順序で配置されてもよい。この場合、当接部抜け止め部52には、第1当接部42が当接する。
【0043】
第1当接部42は、例えば、クロロプレンゴム(CR)によって構成されたスリーブであり、当接部支持部51の外周に沿って略X字状に形成されている。
【0044】
第2当接部43は、例えば、POM樹脂(ポリアセタール)等の樹脂によって構成されたスリーブであり、当接部支持部51の外周に沿って略X字状に形成されている。
【0045】
図5及び図6を参照する。トルク伝達部37aは、第1当接部42及び第2当接部43の外周形状に沿って配置されている。即ち、軸線CLに垂直な断面視において、略X字状を呈する第1当接部42及び第2当接部43に対して、トルク伝達部37aは、略X字の穴状に形成されている。第1筒部34に形成されたトルク伝達部34aも同様である。
【0046】
トルク伝達部37aは、第1当接部42にのみ当接し、第2当接部43には当接していない。図3を参照する。第1筒部34に形成されたトルク伝達部34aも同様に、第1当接部42にのみ当接し、第2当接部43には当接していない。
【0047】
以下に、ステアリング装置10の作用について説明する。
【0048】
ステアリングホイール15(図1参照)を操舵した際に発生するトルクは、トルク伝達部34a、37aから第1当接部42のみに伝達される。逆に、路面の凹凸等から車輪に入力されたエネルギは、第1当接部42を介してトルク伝達部34a、37aに伝わり、ステアリングホイール15を握る乗員に伝わる。第1当接部42を介して伝わる操舵フィーリングは、振動が少なく、操作が軽く感じられる。
【0049】
本発明によれば、ステアリングホイール15に伝わる操舵フィーリングを変えることができる。図1及び図2を参照する。操舵フィーリングを変える際には、操作者は、ロック機構12の操作レバー12dを回す。
【0050】
図2及び図7を参照する。操作レバー12dを回すことにより、カム部材12cの幅がW1からW2へ小さくなる。カム部材12c及びナット12bによって締め付けられていた側壁部11a、11aは、カム部材12cの幅が狭まった分、広がる。側壁部11a、11aによる挟み込む力が弱まる。テレスコ調整用穴13bは、前後方向に長い長円形状であるため、テレスコ調整用穴13bの長さ分だけ、可動ブラケット13aを前後方向に移動させることができる。つまり、図2に示された状態から操作レバー12dを回すことにより、ロック機構12がロック状態からアンロック状態に切り替えられる。
【0051】
図1を参照する。アンロック状態では、ステアリングホイール15を前後に動かすことにより、ステアリングコラム13及びアウタシャフト30が前後方向に変位する。インナシャフト40は、変位しない。
【0052】
図に示す状態から、後方にアウタシャフト30を変位させることにより、操舵フィーリングを変更することができる。変位させる量は、第1当接部42又は第2当接部43の軸線方向の長さ分であり、例えば、0.5~3cmである。アウタシャフト30を変位させたら、操作レバー12dを回し、ロック機構12をロック状態に戻す。これにより、ステアリングコラム13及びアウタシャフト30は、前後方向に変位不能となる。
【0053】
図8を参照する。アウタシャフト30を後方に変位させることにより、トルク伝達部34a、37aは、第2当接部43に当接する。この場合、アウタシャフト30のトルクは、第2当接部43に伝達され、第1当接部42には伝達されない。トルクの反力は、アウタシャフト30を介してステアリングホイール15(図1参照)に伝達される。第2当接部43を介して伝わる操舵フィーリングは、路面振動を感じることができると共に、操舵に対する応答が速く感じられる。
【0054】
第1当接部42(例えば、ゴム)及び第2当接部43(例えば、硬質樹脂)には、それぞれ異なる素材が採用されているため、トルク伝達部34a、37aの当接している部位によって操舵フィーリングが変化する。
【0055】
本発明によるステアリング装置10の効果を以下に説明する。
【0056】
図3を参照する。第1当接部42又は第2当接部43のいずれかにのみ当接すると共に、当接している当接部(図では、第1当接部42)との間でのみトルクを伝達可能なトルク伝達部34a、37aを有している。アウタシャフト30及びインナシャフト40は、相対的に移動可能に設けられている。
【0057】
図8を併せて参照する。アウタシャフト30を移動させることにより、トルク伝達部34a、37aを第1当接部42又は第2当接部43のいずれかに当接させる。このとき、当接している方の当接部(図3では、第1当接部42、図8では、第2当接部43)のみがトルク伝達部34a、37aとの間でトルクを伝達可能である。即ち、当接していない方の当接部(図3では、第2当接部43、図8では、第1当接部42)は、トルク伝達部34a、37aとの間でトルクを伝達することができない。そして、第1当接部42及び第2当接部43は、それぞれ硬さが異なる。第1当接部42を介してトルクを伝達させた場合と、第2当接部43を介してトルクを伝達させた場合とにおいて、ステアリングホイール15(図1参照)を操作した際に乗員に伝わる感覚が異なる。これらの感覚の選択は、アウタシャフト30とインナシャフト40とを相対的に移動させることによって行うことができる。操舵フィーリングを選択することができるステアリング装置10を提供することができる。
【0058】
特に、操舵フィーリングを機械的な簡便な構成によって選択可能とした。安価なステアリング装置10でありながら、操舵フィーリングを適宜選択することができ、好ましい。
【0059】
図5及び図6を参照する。トルク伝達部34a、37aは、インナシャフト40に向かって突出し、アウタシャフト30のトルク伝達部34aに隣接する部位34b、34cの内周面は、円形状を呈する。インナシャフト40に向かって突出するトルク伝達部34a、37aに対して、これに隣接する部位34b、34cは、円形状を呈している。簡便な形状によって、各当接部42、43に当接する部位と当接しない部位とを分けることができる。
【0060】
さらに、トルク伝達部34a、37aは、第1当接部42及び第2当接部43の外周形状に沿って配置されている。トルク伝達部34a、37aと、これに当接している当接部(第1当接部42)との間でより確実にトルクを伝達することができる。
【0061】
第1当接部42は、素材にゴムが用いられ、第2当接部43は、素材に樹脂が用いられる。特に、操舵フィーリングを変化させることができる。
【0062】
当接部支持部51は、軸線CLに垂直な断面を基準として、略X字状に形成され、第1当接部42及び第2当接部43は、当接部支持部51の外周に沿った形状を呈する。これにより、第1当接部42、及び、第2当接部43は、軸線CLに垂直な断面を基準として略X字状に形成されている。これにより、軸線方向への移動を許容しつつ、トルクを確実に伝達することができる。
【0063】
図3を参照する。第1筒部34は、軸線方向を基準として、トルク伝達部34aを挟むように内周面が円形状の部位34b、34cが2箇所に形成され、第2筒部37は、トルク伝達部37aを有する。2つの筒部34、37によって構成することにより、型抜きを可能にしつつ、トルク伝達部34a、37aを複数有するアウタシャフト30とすることができる。トルク伝達部34a、37aが複数形成されることにより、トルクの伝達が確実に行われると共に、操舵フィーリングの違いが運転者により伝わるようになる。
【0064】
尚、本発明によるステアリング装置は、インターミディエイトシャフトを例に説明したが、ステアリングシャフト等であっても適用可能であり、これらの形式のものに限られるものではない。
【0065】
さらに、インナシャフト及びアウタシャフトの位置は、実施例において説明したのとは逆であってもよい。つまり、インナシャフトがステアリングホイール側に設けられ、アウタシャフトが車輪側に設けられてもよい。
【0066】
加えて、インナシャフト及びアウタシャフトの位置によっては、インナシャフトが前後方向に移動し、アウタシャフトは、移動しない、という構成や、インナシャフト及びアウタシャフトの両方が移動する、という構成を採用することもできる。即ち、インナシャフト及びアウタシャフトが軸線に沿って相対的に移動可能であれば良い。
【0067】
第1当接部及び第2当接部の形状は、軸心部に沿った形状に限られない。軸線に垂直な断面を基準として方形状に形成された軸心部に対して、第1当接部及び第2当接部の外形は、軸線に垂直な断面を基準としてX字状であってもよい。
【0068】
加えて、当接部支持部は、軸線に垂直な断面を基準として、略X字状である場合のみならず、矩形状や楕円状であっても良い。即ち、円形状を除いた、非円形状であれば良い。
【0069】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のステアリング装置は、乗用車両に好適である。
【符号の説明】
【0071】
10…ステアリング装置
30…アウタシャフト
34…第1筒部
34a、37a…トルク伝達部
34b、34c…隣接する部位
37…第2筒部
40…インナシャフト
42…第1当接部
43…第2当接部
50…軸心部
51…当接部支持部
CL…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8