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特許6991696水はけに優れたオーバルリングヘアブラシ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】水はけに優れたオーバルリングヘアブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 15/00 20060101AFI20220104BHJP
   A46B 5/00 20060101ALI20220104BHJP
   A46B 5/02 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A46B15/00 G
A46B5/00 A
A46B5/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021169835
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2021-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】池内 紅
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼多 杏子
(72)【発明者】
【氏名】栗林 輝佳
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳
【審査官】関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】実公昭41-010824(JP,Y1)
【文献】特開2019-141194(JP,A)
【文献】実開平03-102928(JP,U)
【文献】特開平08-289816(JP,A)
【文献】米国特許第06006395(US,A)
【文献】国際公開第2008/143131(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0342335(US,A1)
【文献】特開2015-002817(JP,A)
【文献】特開2009-201570(JP,A)
【文献】特開2003-033225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00-17/08
A46D 1/00-99/00
A61C 17/22
A61C 17/24
A61C 17/26
A61C 17/28
A61C 17/30
A61C 17/32
A61C 17/34
A61C 17/36
A61C 17/38
A61C 17/40
A45D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濡れた髪を梳かすためのオーバルリングヘアブラシであって、
両端に設けられた半円状部の間に2本の直線状部が設けられた長円環状のブラシ台と、
前記ブラシ台の下面から突出した複数の錐体状突起と、を有し、
前記直線状部は、短手方向に沿った断面が長円形状であり、
前記ブラシ台は、長手方向及び前記短手方向のそれぞれに沿った側面視で上側に凸となるよう湾曲し、
複数の前記錐体状突起は、前記ブラシ台の前記下面側から下側に向かって互いに平行に延びるとともに、それぞれ同じ高さを有することで、複数の前記錐体状突起の先端により形成される仮想面が前記ブラシ台の前記下面と平行な面を形成しており、
前記ブラシ台は、中央に形成された長円形状の貫通孔から前記長手方向に連続するよう形成され、かつ前記下側から上側に向かって形成された溝部を有しており、
前記ブラシ台及び前記錐体状突起は弾性を有する素材で一体形成されており
記ブラシ台から延設された把持部を有さず、
前記ブラシ台の前記短手方向に沿った側面視での前記ブラシ台の前記下面の曲率半径が150mm以上400mm以下である、
水はけに優れたオーバルリングヘアブラシ。
【請求項2】
前記ブラシ台は、平面視において、外周から前記貫通孔までの距離が等しくなるよう前記貫通孔が形成されている、
請求項1に記載の水はけに優れたオーバルリングヘアブラシ。
【請求項3】
前記ブラシ台は、平面視において、前記長手方向の長さが、前記短手方向の長さの2.0倍以上3.0倍以下である、
請求項1または2に記載の水はけに優れたオーバルリングヘアブラシ。
【請求項4】
前記ブラシ台の前記長手方向に沿った側面視での前記ブラシ台の前記下面の曲率半径が150mm以上400mm以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の水はけに優れたオーバルリングヘアブラシ。
【請求項5】
前記ブラシ台は、前記短手方向の長さが40mm以上70mm以下であり、前記長手方向の長さが100mm以上180mm以下である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の水はけに優れたオーバルリングヘアブラシ。
【請求項6】
前記錐体状突起のそれぞれは、底部の径が2.5mm以上3.5mm以下、高さが15.0mm以上25.0mm以下、先端から0.1mm底部側の位置での径が0.8mm以上2.0mm以下の円錐体である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水はけに優れたオーバルリングヘアブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、水はけに優れたオーバルリングヘアブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
髪を洗った後や泳いだ後、濡れた髪を乾かす前に髪を梳かす場面がある。このような場面では髪が水を含んで重くなっていることなどから、一般的な櫛またはブラシでは髪を梳かすときにブラシに付着した水を取り除くのが困難になったり、髪を梳かしづらくなったりすることがある。そのため、濡れ髪を梳かすのに適したブラシが求められていた。このような濡れ髪を梳かすためのブラシとして、例えば特許文献1及び2のようなブラシがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実登3160887号公報
【文献】実開平05-068406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示されたブラシでは、いずれも複数部材で構成されているため、構成部品の内側などに水が残存して濡れたままの状態が継続する。そのため、使用中にはブラシに水分が残存してしまって髪の水分を除去しづらかったり、使用後にはブラシを衛生的に保ちづらかったりする不都合があった。これら以外の濡れ髪に使用可能なブラシでも、本体の水分を容易に除去しやすい形状になったブラシがなく、濡れ髪に使用するのに適したブラシが求められていた。
【0005】
また、洗髪時の頭皮のマッサージに用いられるシャンプーブラシがあるが、これらは濡れ髪に用いるものであるとはいえ、頭皮をマッサージしたり洗ったりすることを目的とするものであるため、髪を梳かすことを主目的とするブラシとしては長さが不足しており、一度に梳かすことができる髪の量が少ないなどの不都合があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決可能な、水はけに優れたブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような手段を提供する。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記する場合があるが、本発明の各構成要素はこれらの具体的な構成に限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0008】
本発明の一の手段は、
濡れた髪を梳かすためのヘアブラシ(1)であって、
両端に設けられた半円状部の間に2本の直線状部が設けられた長円環状のブラシ台(2)と、
前記ブラシ台の下面から突出した複数の錐体状突起(3)と、を有する。
前記直線状部は、短手方向に沿った断面が長円形状であり、
前記ブラシ台は、長手方向及び前記短手方向のそれぞれに沿った側面視で上側に凸となるよう湾曲し、
複数の前記錐体状突起は、前記ブラシ台の前記下面側から下側に向かって互いに平行に延びるとともに、それぞれ同じ高さを有することで、複数の前記錐体状突起の先端により形成される仮想面が前記ブラシ台の前記下面と平行な面を形成しており、
前記ブラシ台は、中央に形成された長円形状の貫通孔から前記長手方向に連続するよう形成され、かつ前記下側から上側に向かって形成された溝部を有しており、
前記ブラシ台及び前記錐体状突起は弾性を有する素材で一体形成されており、
前記ヘアブラシの全体を水中に沈めた状態から前記下面側を上にして水平に引き上げた際に前記ヘアブラシに残存する水の量を測定する試験における平面視での単位投影面積あたりの残存水量が6.0×10-4g/mm2以下であり、
前記ブラシ台から延設された把持部を有さない構成とする。
【0009】
上記構成のヘアブラシは、ブラシ台を長円環状、すなわちオーバルリング形状にすることで、ブラシ台の中央に形成された貫通孔から水分が流れ出る構成としている。また、ブラシ台の直線状部の断面を長円形状とし、使用時に上側に凸になるよう湾曲させた形状とすることで、ヘアブラシから水分が流れ落ちやすい構成としている。さらに、このように使用者の頭の形状に近い湾曲形状を有する構成とすることで、髪を梳かしやすくなる。また、ブラシ台が湾曲しているにもかかわらず、複数の錐体状突起がこの湾曲形状に合わせて内側に向かうような構成ではなく、互いに平行に延びる構成としている。この構成により、使用時に、水分を含んだ髪が湾曲形状の内側に集まって水分が落ちづらくなることを避け、髪の間にある程度の隙間を設けながら梳かすことができるようになり、髪を梳かしやすく、かつ髪の水分を落としやすくなっている。また、使用後には、溝部にフック状の保持具のフック部分を挿入し、吊った状態で保持可能な構成としており、使用後の保持状態では、ヘアブラシに付着した水分を効果的に除去することができる。
【0010】
ただし、必ずしも使用後に上記のように吊った状態で保持する必要はなく、ヘアブラシの円錐体状突起を上に向け、ブラシ台の上面が載置面に接するように置いたり、またはその逆に、円錐体状突起を下に向け、円錐体状突起の先端が載置面に接するように置いたりしても、効果的に水分を除去できる。中央に貫通孔が形成され、ブラシ台の直線状部の断面が長円形状であり、さらに上側に凸になるよう湾曲させた形状となっていることで、ブラシ台の表面の水はけがよく、水分がとどまりにくい構成となっている。
【0011】
また、ブラシ台と錐体状突起とが一体形成され複数部材を用いていないため、使用時及び使用後において、部材の連結部分等に水分が残存することを抑制できる。さらに、上記所定のヘアブラシに残存する水の量を測定する試験で一定以上の性能を有する構成としているため、濡れた髪を梳かすためのヘアブラシとして十分な性能が得られる構成となる。また、ブラシ台から延設された把持部を有さない構成であるため、使用者はブラシ台の短手方向を把持して使用することとなる。これにより、使用者の力が髪に伝わりやすくなるため、水分を含んだ重い濡れた髪であっても快適に梳かしやすい構成となっている。
【0012】
上記ヘアブラシにおいて、好ましくは、
前記ブラシ台は、平面視において、外周から前記貫通孔までの距離が等しくなるよう前記貫通孔が形成される。
【0013】
上記ヘアブラシにおいて、好ましくは、
前記ブラシ台は、平面視において、前記長手方向の長さが、前記短手方向の長さの2.0倍以上3.0倍以下である。
【0014】
上記ヘアブラシにおいて、好ましくは、
前記ブラシ台の前記長手方向に沿った側面視での前記ブラシ台の前記下面の曲率半径が150mm以上400mm以下である。
【0015】
上記ヘアブラシにおいて、好ましくは、
前記ブラシ台は、前記短手方向の長さが40mm以上70mm以下であり、前記長手方向の長さが100mm以上180mm以下である。
【0016】
上記ヘアブラシにおいて、好ましくは、
前記錐体状突起のそれぞれは、底部の径が2.5mm以上3.5mm以下、高さが15.0mm以上25.0mm以下、先端から0.1mm底部側の位置での径が0.8mm以上2.0mm以下の円錐体である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態のヘアブラシの斜視図である。
図2図2は、実施形態のヘアブラシの平面図である。
図3図3は、実施形態のヘアブラシを、短手方向に沿った長手方向の延長線から見た側面図である。
図4図4は、実施形態のヘアブラシの、長手方向に沿った短手方向の延長線から見た側面図である。
図5図5は、実施形態のヘアブラシのA-Aの位置における断面図である。
図6図6は、実施形態のヘアブラシのB-Bの位置における断面図である。
図7図7は、実施形態における円錐体状突起の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一形態のヘアブラシは、長円環状、すなわちオーバルリング形状とし、水はけに優れ、濡れ髪を梳かすことに特に適した構成としている点を特徴としている。
【0019】
以下、本発明の一形態のヘアブラシについて、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態及び実施例はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。また、一例としてヘアブラシの寸法を記載しているが、この寸法に限定されるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0020】
本実施形態のヘアブラシ1は、図示されるように、ブラシ台2と、ブラシ台2から突出した複数の円錐体状突起3とを含んで構成される。ブラシ台2と円錐体状突起3とを含むヘアブラシ1は、弾性を有する素材で一体形成される。ヘアブラシ1を形成する素材は、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の弾性を有する樹脂が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本明細書では便宜上、ブラシ台2において円錐体状突起3が形成された面を下面といい、この下面の反対側の面を上面という。同様に、このブラシ台2の下面から円錐体状突起3が延びる方向を下側といい、その逆方向を上側といい、下側及び上側の方向をあわせて上下方向という。上下方向を指して、ブラシ台2の厚さ方向ということがある。この上下方向に対して垂直方向であって、平面視でブラシ台2の延びる方向を長手方向という。上下方向及び長手方向に対して垂直な方向であって、平面視でブラシ台2の幅方向にあたる方向を短手方向という。
【0022】
ブラシ台2は、図2の平面図に示されるように、平面視で、両端に設けられた半円状部2a及び2bの間に2本の直線状部2c及び2dが設けられた長円環状に形成される。ブラシ台2において、平面視でブラシ台2の中央を含む位置には、ブラシ台2の外周の長円形状に類似する長円形状の貫通孔4が形成される。貫通孔4は、どの位置においても、ブラシ台2の外周からの距離が等しくなるよう形成される。
【0023】
直線状部2c及び2dは、半円状部2a及び2bを繋ぐよう設けられる。直線状部2c及び2dはそれぞれ、平面視で、長手方向に延在する矩形状である。図5の断面図に示されるように、直線状部2c及び2dは、短手方向に沿って側面から見た断面が長円形状である。また、半円状部2a及び2bにおいても、外周縁部分と内周縁部分とが、断面視で半円状に湾曲している。言い換えると、ブラシ台2の外周縁部分及び内周縁部分は、半円状に湾曲した形状となっている。ただし、ブラシ台2の内周縁部分のうち後述の溝部5が設けられた部分は、他の部分とは異なる形状で湾曲した形状になっている。このように直線状部2c及び2dの断面が長円形状であることで、ブラシ台2の上面または下面に付着した水分が、直線状部2cまたは2dの両端の半円状に湾曲する部分から流れ落ちやすくなり、水はけ性能を高めた構成となっている。
【0024】
本明細書では、ブラシ台2の長円環状を指してオーバルリング形状といい、ブラシ台2がオーバルリング形状のブラシ1を指してオーバルリングブラシということがある。ただし、長円環状及びオーバルリング形状は、上記のように両端に設けられた半円状部2a及び2bを直線状に繋ぐ形状または楕円状を外周とし、その中央に貫通孔4を有する形状を厳密に指すものではなく、本発明の機能を損なわない程度に上記形状を変形させた形状を含む。同様に、本明細書で長円形または長円形状とは、両端に設けられた半円状部を直線状に繋ぐ形状を厳密に指すものではなく、本発明の機能を損なわない程度にこの形状を変形させた形状を含む。
【0025】
ブラシ台2は、図3の側面図に示されるように、短手方向に沿った、長手方向の延長線から見た側面視で、上側に凸となるよう湾曲している。また、ブラシ台2は、図4の側面図に示されるように、長手方向に沿った、短手方向の延長線から見た側面視で、上側に凸となるよう湾曲している。このような湾曲形状も、ヘアブラシ1の水はけ性能を高めることに繋がっている。
【0026】
貫通孔4から長手方向に延長された位置には、貫通孔4から連続するよう形成され、下側から上側に向かって形成された溝部5が設けられる。言い換えると、この溝部5の位置ではブラシ台2の上下方向の長さが短く、すなわち厚さが薄くなっている。図6の断面図は、溝部5を含む、図2のB-Bの位置におけるヘアブラシ1の断面図である。溝部5は、使用後のヘアブラシ1を吊って保持する保持具のフック部分を挿入可能な形状となっている。溝部5に保持具のフック部分を挿入し、ヘアブラシ1を吊った状態で保持することで、ヘアブラシ1に付着した水分を効果的に除去することができる。これにより、ヘアブラシ1を乾燥させた衛生的な状態に保持することができる。
【0027】
発明者らは、本実施形態のヘアブラシ1の最適な寸法を決定するにあたって、異なる寸法のヘアブラシ1を複数準備し、20~40代の女性30名を対象とする使用テストを行った。その結果、ヘアブラシ1を以下のような寸法とした。
【0028】
ブラシ台2の短手方向の長さL1は、好ましくは40mm以上70mm以下であり、より好ましくは51mm以上63mm以下であり、例えば57mmである。ブラシ台2の長手方向の長さL2は、好ましくは100mm以上180mm以下であり、より好ましくは130mm以上159mm以下であり、例えば144mmである。ブラシ台2の上下方向の長さ、すなわち厚さは、好ましくは5mm以上20mm以下、より好ましくは7mm以上15mm以下であり、例えば10mmである。
【0029】
なお、ブラシ台2は、平面視において、長手方向の長さL2の長さが短手方向L1の長さに対して、好ましくは2.0倍以上3.0倍以下、より好ましくは2.3倍以上2.9倍以下の長さにすることが好ましい。ブラシ台2をこのような寸法及び寸法比にすることで、ブラシ台2の短手方向を使用者が把持して使用するのに適した形状となる。
【0030】
貫通孔4の短手方向の長さL3は、好ましくは4.0mm以上8.0mm以下であり、より好ましくは5.4mm以上6.5mm以下であり、例えば5.9mmである。貫通孔4の長手方向の長さL4は、好ましくは70mm以上120mm以下であり、より好ましくは85mm以上104mm以下であり、例えば94.3mmである。このような寸法とすることで、貫通孔4から水が流れ落ちやすい形状となる。なお、貫通孔4の配置や大きさは、ブラシ台2の強度、使用時のブラシ台2の剛性、水の流れやすさ、及び通気性のよさなどを考慮し、いずれも良好な状態になるように決定している。
【0031】
溝部5の長手方向の長さL5は、好ましくは10mm以上18mm、より好ましくは11mm以上15mm以下である。溝部5の短手方向の長さは、貫通孔4の短手方向の長さと同じである。このような寸法とすることで、ヘアブラシ1を吊って保持する保持具のフック部分を挿入しやすい形状となる。
【0032】
ブラシ台2の、長手方向に沿った、短手方向の延長線から見た(図3の方向から見た)側面視での曲率半径は、下面で好ましくは150mm以上400mm以下、より好ましくは208mm以上255mm以下、例えば232mmであり、上面で好ましくは150mm以上400mm以下、より好ましくは230mm以上281mm以下、例えば255mmである。また、ブラシ台2の、短手方向に沿った、長手方向の延長線から見た(図4の方向から見た)側面視での曲率半径は、下面で好ましくは150mm以上400mm以下、より好ましくは208mm以上255mm以下、例えば232mmであり、上面で好ましくは150mm以上400mm以下、より好ましくは230mm以上281mm以下、例えば255mmである。このような寸法とすることで、ヘアブラシ1が使用者の頭の形に近い形状となる。
【0033】
円錐体状突起3は、円錐状であって、ブラシ台2の下面側から下側に向かって延びるよう形成される。円錐体状突起3は、直線状部2c及び2dのそれぞれに、長手方向に延びる直線状に3列に配列される。この3列に配列された円錐体状突起3は同じ間隔で配置されるが、最内側の列と再外側の列とは長手方向において同じ位置に円錐体状突起3が配置され、これらに挟まれた列では、長手方向において最内側及び再外側の列の円錐体状突起3の間の位置に、円錐体状突起3が配置される。直線状部2c及び2dに配置された円錐体状突起3は、隣接する他の円錐体状突起3との距離が等しくなる。円錐体状突起3は、半円状部2a及び2bにも配列される。これらの円錐体状突起3は、直線状部2c及び2dに配列された円錐体状突起3の列の延長線上などに配置される。複数の円錐体状突起3は、ブラシ台2の下面側に互いに平行に延びるとともに、それぞれが同じ高さを有する。そのため、これらの円錐体状突起3の先端により形成される仮想面は、ブラシ台2の下面と平行な面を形成している。
【0034】
円錐体状突起3は、従来の一般的なブラシと比較して太めに形成されている。特に、円錐体状突起3の底部、すなわち根本近傍の位置が太く形成されている。このように円錐体状突起3を太めの構成にすることで、水分を含んで重くなった濡れ髪によって円錐体状突起3が大きく曲がって梳かす機能が損なわれることなく、髪の抵抗に抗いながら濡れ髪を梳かしやすい構成となっている。
【0035】
図7に示されるように、円錐体状突起3の底部、すなわちブラシ台2の下面との連結部近傍の位置3bにおける直径L11は、好ましくは2.5mm以上3.5mm以下、より好ましくは2.7mm以上3.3mm以下である。円錐体状突起3の、先端から0.1mm底部側の位置3aでの直径L12は、好ましくは0.8mm以上2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上1.4mm以下である。円錐体状突起3の高さL13は、好ましくは15.0mm以上25.0mm以下、より好ましくは16.0mm以上20.0mm以下である。円錐体状突起3の中心を含む断面において母線のなす角度は、角度変化点3cで変化しており、先端側3dの角度θ1よりも底部側3eの角度θ2の方が大きくなっている。角度変化点3cにおける直径L14は、好ましくは1.8mm以上3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以上2.5mm以下である。先端側3dの角度θ1は好ましくは4.0°以上6.0°以下、底部側3eの角度θ2は好ましくは6.0°以上9.0°以上である。このように円錐体状突起3の底部側3eにおいて母線がなす角度が、先端側3dにおいて母線がなす角度より大きくなっている。このような円錐体状突起3を有する構成とすることで、重い濡れ髪をさらに梳かしやすい構成となっている。
【0036】
なお、円錐体状突起3は、断面が厳密な円形となる構成に限定されるものではなく、断面が楕円形であったり、卵型のような形状であったりしてもよい。また、円錐体状突起3に代えて、三角錐体状などの多角錐体状のような、円錐体以外の錐体形状の突起を有する構成としてもよい。
【0037】
図示するように、ヘアブラシ1は、ブラシ台2から延設された把持部を有さない構成である。よって、使用者がヘアブラシ1を使用する際には、ブラシ台2の短手方向を把持して使用することとなる。濡れ髪を梳かす際は、乾いた髪を梳かす際と比較して抵抗が大きくなるため、強い力が必要になる。ブラシ台2から延設された把持部がある場合には、使用者は主に把持部を把持して髪を梳かすことになるが、この場合には把持する部分と円錐体状突起3との間に距離が生じ、把持部に作用するモーメントが大きくなって使用者の負担が大きくなる。一方、使用者がブラシ台2を直接把持して使用すると、把持部に作用するモーメントが大きくなることを抑制し、使用者の負担を大きくすることなく使いやすくなる。ヘアブラシ1は、水分を含んで重くなった髪を梳かすことを主目的とするものであるが、このように使用者がブラシ台2を直接把持して使用することとなるため、濡れ髪を快適に梳かしやすくなっている。
【0038】
[水はけ性能試験]
上記のように、ヘアブラシ1は水はけに優れた構成としているが、ヘアブラシ1に水分が残存する量を示す水はけ性能試験を、以下の要領で行った。
【0039】
まず、ヘアブラシ1の全体を、下面側、すなわち円錐体状突起3が延びる方向を上にして完全に水に沈める。そして、ヘアブラシ1が完全に水に沈んだ状態から、水平を保ったまま水中からゆっくり持ち上げ、ヘアブラシ1の全体が水から抜け出た状態とする。そしてこのような水平状態を保ったまま30秒間保持し、その後ヘアブラシ1全体の重さを測り、予め計測しておいたヘアブラシ1の重さを差し引く。これによって、ヘアブラシ1に付着するなどして残存した水の重さを測定可能となる。ここでは、上記試験を複数回行った際の重さの平均を残存水量として測定した。また、この測定結果である残存水量を、ヘアブラシ1を平面視で見たときの投影面積で割って、単位投影面積あたり残存水量を測定した。ただし、投影面積の計算では、ヘアブラシ1の内側に形成された貫通孔4の投影面積を除かないものとした。
【0040】
上記の水はけ性能試験を、投影面積が約7500mm2のヘアブラシ1について行ったところ、残存水量が1.8gであった。すなわち、単位投影面積あたりの残存水量が2.4×10-4g/mm2となった。
【0041】
一方で、従来構成のブラシで上記の水はけ性能試験を行ったところ、単位投影面積あたりの残存水量が12.3×10-4g/mm2となった。また、ヘアブラシ1と類似形状であって貫通孔4を設けないブラシで上記の水はけ性能試験を行ったところ、単位投影面積あたりの残存水量が8.8×10-4g/mm2となった。
【0042】
発明者らが種々の実験を行ったところ、上記水はけ性能試験による単位投影面積あたりの残存水量を6.0×10-4g/mm2以下とすることで、十分な水はけ性能が得られることが判った。また、この単位投影面積あたりの残存水量を、より好ましくは4.0×10-4g/mm2以下、さらに好ましくは3.0×10-4g/mm2以下にすることでさらに優れた水はけ性能を有する構成となることが判った。
【0043】
[ヘアブラシ1の特徴]
本実施形態のヘアブラシ1は、以下のような特徴を有する。
【0044】
ヘアブラシ1は、ブラシ台2を長円環状、すなわちオーバルリング形状の構成とすることで、ブラシ台2の中央に形成された貫通孔4から水分が流れ出る構成としている。
【0045】
また、ブラシ台2の直線状部2c及び2dの断面を長円形状とし、使用時に上側に凸になるような湾曲させた形状とすることで、ヘアブラシから水分が流れ落ちやすい構成としている。さらに、このように使用者の頭の形状に近い湾曲形状を有する構成とすることで、髪を梳かしやすくなる。
【0046】
また、ブラシ台2が湾曲しているにもかかわらず、複数の円錐体状突起3がこの湾曲形状に合わせて内側に向かうような構成ではなく、互いに平行に延びる構成としている。この構成により、使用時に、水分を含んだ髪が湾曲形状の内側に集まって水分が落ちづらくなることを避け、髪の間にある程度の隙間を設けながら梳かすことができるようになり、髪を梳かしやすく、かつ髪の水分を落としやすくなっている。
【0047】
また、使用後には、溝部5にフック状の保持具のフック部分を挿入し、吊った状態で保持可能な構成としており、使用後の保持状態では、ヘアブラシ1に付着した水分を効果的に除去することができる。
【0048】
また、ブラシ台2と円錐体状突起3とが一体形成され複数部材を用いていないため、使用時及び使用後において、部材の連結部分等に水分が残存することを抑制できる。
【0049】
さらに、上記所定のヘアブラシ1に残存する水の量を測定する試験で一定以上の性能を有する構成としているため、濡れた髪を梳かすためのヘアブラシとして十分な性能が得られる構成となる。
【0050】
また、ブラシ台2から延設された把持部を有さない構成であるため、使用者はブラシ台2の短手方向を把持して使用することとなる。これにより、使用者の力が髪に伝わりやすくなるため、水分を含んだ重い濡れた髪であっても快適に梳かしやすい構成となっている。
【0051】
また、ヘアブラシ1は、使用者がブラシ台2を直接把持することを想定した構成としているため、ブラシ台2の長手方向の両端を半円状とし、手のひらの母指球や小指球がこれらの部分に当たる場合でもフィットしやすい構成となっている。またブラシ台2の長手方向の中央領域を直線状にすることで、髪を梳かす際に指の力がブラシ台2に作用しやすいようになっている
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の水はけに優れたオーバルリングヘアブラシは、特に濡れた髪を梳かすためのヘアブラとして好適に適用される。
【符号の説明】
【0053】
1…ヘアブラシ
2…ブラシ台
2a、2b…半円状部
2c、2d…直線状部
3…円錐体状突起
4…貫通孔
5…溝部
【要約】
【課題】濡れた髪を梳かすのに適した、水はけ性能に優れたヘアブラシを提供する。
【解決手段】本発明の水はけに優れたオーバルリングヘアブラシは、以下のような構成とする。両端に設けられた半円状部の間に2本の直線状部が設けられた長円環状のブラシ台と、複数の錐体状突起とを有し、直線状部は、短手方向に沿った断面が長円形状である。ブラシ台は、上側に凸となるよう湾曲する。複数の錐体状突起は互いに平行に延びるとともに、それぞれ同じ高さを有することで、先端により形成される仮想面がブラシ台の下面と平行な面を形成する。貫通孔から長手方向に連続するよう形成された溝部を有する。ブラシ台及び錐体状突起は弾性を有する素材で一体形成されている。一定以上の優れた水はけ性能を有する。ブラシ台から延設された把持部を有さない構成とする。
【選択図】図1
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