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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】液晶表示装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20220104BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALI20220104BHJP
   G02F 1/1362 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G02F1/1337
G02F1/1343
G02F1/1362
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017042323
(22)【出願日】2017-03-07
(65)【公開番号】P2018146817
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】安達 勲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 治
(72)【発明者】
【氏名】河村 丞治
(72)【発明者】
【氏名】前田 強
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-170263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0055860(US,A1)
【文献】特開2015-176104(JP,A)
【文献】特開2015-179100(JP,A)
【文献】特開2010-122572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/1343
G02F 1/1362
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層を挟んで対向する第1基板及び第2基板と、
前記液晶層の前記第2基板の側の液晶分子を相対的に強いアンカリングエネルギーで配向させると共に、前記液晶層の前記第1基板の側の液晶分子を相対的に弱いアンカリングエネルギーで配向させる配向膜と、
前記第1基板に設けられた駆動電極と、
前記第2基板に設けられた補助電極と、
を備え、
前記駆動電極に電圧を印加して前記液晶層の面と平行な横電界を生成することで表示を制御する液晶表示装置であって、前記駆動電極の電圧をOFFする際に前記補助電極の電圧をONし、
前記配向膜の前記第1基板の側の前記駆動電極間におけるアンカリングエネルギーが、前記配向膜の前記駆動電極の直上におけるアンカリングエネルギーよりも大きい
液晶表示装置。
【請求項2】
液晶層を挟んで対向する第1基板及び第2基板と、
前記液晶層の前記第2基板の側の液晶分子を相対的に強いアンカリングエネルギーで配向させると共に、前記液晶層の前記第1基板の側の液晶分子を相対的に弱いアンカリングエネルギーで配向させる配向膜と、
前記第1基板に設けられた駆動電極と、
前記第2基板に設けられた補助電極と、
を備え、
前記駆動電極に電圧を印加して前記液晶層の面と平行な横電界を生成することで表示を制御する液晶表示装置であって、前記駆動電極の電圧をOFFする際に前記補助電極の電圧をONし、
前記補助電極は、平面視において矩形状をしており、
前記駆動電極の電圧をOFFする際に、前記駆動電極と前記補助電極の間に電圧を印加して前記液晶層の面と垂直な縦電界を生成することで、液晶分子を前記液晶層に対して垂直に配向させる液晶表示装置。
【請求項3】
前記補助電極は、平面視において線状又は櫛歯形状をしており、
前記駆動電極の電圧をOFFする際に、複数の前記補助電極間に電圧を印加して前記液晶層の面と平行な横電界を生成することで、液晶分子を前記配向膜の配向方向に配向させる
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記駆動電極と前記補助電極とは、前記駆動電極の電圧をONしたときに前記液晶層の液晶分子が回転する角度と等しい傾きで、平面視において互いに交差している
請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶層の液晶分子はポジ型であり、
前記補助電極は、前記駆動電極の電圧をOFFする際に、前記配向膜の配向方向と平行な成分を有する電界を生成する
請求項3又は4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶層の液晶分子はネガ型であり、
前記補助電極は、前記駆動電極の電圧をOFFする際に、前記配向膜の配向方向と垂直な成分を有する電界を前記液晶層の面内に生成する
請求項3又は4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記相対的に弱いアンカリングエネルギーが、10-5(J/m)以下である
請求項1からのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記相対的に強いアンカリングエネルギーが、10-4(J/m)以上である
請求項1からのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記駆動電極とは異なる配線層に形成された矩形状の共通電極を前記第1基板に有し、
前記駆動電極と前記共通電極との間に電圧を印加して表示を制御する
請求項1からのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記駆動電極は、平面視において線状又は櫛歯形状をしており、
複数の前記駆動電極間に電圧を印加して表示を制御する
請求項1からのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記補助電極は、ITOを主材料とする
請求項1から10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記第1基板及び前記第2基板は、ガラス基板である
請求項1から11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
液晶層を挟んで対向する第1基板及び第2基板と、
前記液晶層の前記第2基板の側の液晶分子を相対的に強いアンカリングエネルギーで配向させると共に、前記液晶層の前記第1基板の側の液晶分子を相対的に弱いアンカリングエネルギーで配向させる配向膜と、
前記第1基板に設けられた駆動電極と、
前記第2基板に設けられた補助電極と、
を備え、前記配向膜の前記第1基板の側の前記駆動電極間におけるアンカリングエネルギーが、前記配向膜の前記駆動電極の直上におけるアンカリングエネルギーよりも大きく、前記駆動電極に電圧を印加して前記液晶層の面と平行な横電界を生成することで表示を制御する液晶表示装置の制御方法であって、前記駆動電極の電圧をOFFする際に前記補助電極の電圧をONするステップを有する
液晶表示装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル面と平行な横電界を生成して表示を制御する液晶表示装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの表示方式として、ガラス基板に設けた駆動電極に電圧を印加して、液晶層と平行な横電界を生成することにより表示を制御するIPS(In-Plane Switching)方式が知られている。IPS方式では、液晶パネルの視野角方向によらず液晶分子の見かけの屈折率楕円体が概ね同じ形状となるため視野角特性に優れる。
【0003】
しかし、IPS方式では、電界を生成するための駆動電極の直上における電界の横成分が小さくなるため、駆動電極の直上において液晶分子の動作性が低くなってしまう。この結果、駆動電極の電圧をONしたときの白表示における表示の明るさが不足するという課題があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、液晶分子を配向させる配向膜のアンカリングエネルギー(Anchoring Energy)を小さくして液晶分子の配向規制力を弱くしている。これにより、電界の横成分が小さい場合でも液晶分子が動作するため、駆動電極の直上においても十分な明るさを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-271390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液晶パネルの配向膜のアンカリングエネルギーは、液晶パネルの駆動電極がOFFであるときの黒表示における液晶分子を配向させるための復元力を提供している。したがって、特許文献1のように、配向膜のアンカリングエネルギーを小さくすると、液晶パネルの駆動電極をOFFしたときの液晶表示の応答性が低下してしまう。
【0007】
このため、特許文献1では、液晶表示の明るさは向上するものの、動画表示において残像が発生する等の課題があった。そこで、本発明では、液晶表示の応答性と明るさとを両立し得る液晶表示装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、液晶層を挟んで対向する第1基板及び第2基板と、液晶層の第2基板の側の液晶分子を相対的に強いアンカリングエネルギーで配向させると共に、液晶層の第1基板の側の液晶分子を相対的に弱いアンカリングエネルギーで配向させる配向膜と、第1基板に設けられた駆動電極と、第2基板に設けられた補助電極と、を備え、駆動電極に電圧を印加して液晶層の面と平行な横電界を生成することで表示を制御する液晶表示装置であって、駆動電極の電圧をOFFする際に補助電極の電圧をONする液晶表示装置が提供される。
【0009】
また、本発明の別の観点によれば、液晶層を挟んで対向する第1基板及び第2基板と、液晶層の第2基板の側の液晶分子を相対的に強いアンカリングエネルギーで配向させると共に、液晶層の第1基板の側の液晶分子を相対的に弱いアンカリングエネルギーで配向させる配向膜と、第1基板に設けられた駆動電極と、第2基板に設けられた補助電極と、を備え、駆動電極に電圧を印加して液晶層の面と平行な横電界を生成することで表示を制御する液晶表示装置の制御方法であって、駆動電極の電圧をOFFする際に補助電極の電圧をONするステップを有する液晶表示装置の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液晶表示の応答性と明るさとを両立し得る液晶表示装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る液晶表示装置の構成を模式的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る液晶表示装置において補助電極をONしたときの液晶配向を模式的に示す図である。
図3】第1実施形態に係る液晶表示装置における液晶表示の応答特性を示す図である。
図4】第2実施形態に係る液晶表示装置の構成を模式的に示す図である。
図5】第2実施形態に係る液晶表示装置における駆動電極及び補助電極のレイアウトを模式的に示す図である。
図6】第2実施形態に係る液晶表示装置における液晶表示の応答特性を示す図である。
図7】第3実施形態に係る液晶表示装置の構成を模式的に示す図である。
図8】第3実施形態に係る液晶表示装置における配向膜の配向方向、及び偏光板の偏光方向を示す図である。
図9】第4実施形態に係る液晶表示装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、各図において同一、又は相当する機能を有するものは、同一符号を付し、その説明を省略又は簡潔にすることもある。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る液晶表示装置について、図1図3を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る液晶表示装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態の液晶表示装置は、液晶パネル1及びバックライトユニット2を備えて構成される。液晶パネル1とバックライトユニット2の間には、光拡散シートやプリズムシート等を配置してもよい。
【0014】
液晶パネル1は、液晶層11を挟んで対向する一対の基板12a、12bを備えている。基板12a、12bとしては、典型的にはガラス基板が用いられるが、ポリイミドなどのフレキシブル基材であってもよい。基板12a、12bのうち、バックライトユニット2の側の基板12aには、複数の駆動電極10aが設けられている。また、表示面側の基板12bの全面には、矩形の補助電極10bが設けられている。
【0015】
液晶表示装置の不図示の制御部は、複数の駆動電極10a間に電圧を印加して液晶層11の面と平行な横電界を生成する。これにより、液晶分子の向きを液晶層11の面内で変化させて液晶表示装置の表示を制御する。また、制御部は、駆動電極10a間の電圧をOFFして液晶分子の向きを黒表示の配向に戻す際に、補助電極10bに電圧を印加する。これにより、液晶パネル1の駆動電極10aをOFFしたときの液晶表示の応答性を向上させている。具体的な補助電極10bの制御方法については、後で図2を用いて説明する。
【0016】
液晶パネル1には、基板12a、12bを外側から挟み込むように、偏光板14a、14bがそれぞれ配置されている。偏光板14a、14bの偏光軸24a、24bは、駆動電極10aの電圧がOFFであるときにバックライトユニット2からの光が遮断され、駆動電極10aの電圧がONであるときにバックライトユニット2からの光が通過するように配置されている。例えば、図1に示す偏光軸24a、24bは互いに直交している。
【0017】
液晶パネル1の基板12a、12bと液晶層11との間には、それぞれ配向膜13a、13bが配置されている。配向膜13a、13bは、駆動電極10aの電圧がOFFであるときの黒表示における液晶分子を、所定の方向に配向させるための復元力を提供している。例えば、図1に示す配向膜13a、13bの配向方向23a、23bは、共にバックライトユニット2の側の偏光板14aの偏光軸24aと平行となっている。
【0018】
液晶パネル1の基板12bと配向膜13bとの間にはカラーフィルタ15が配置されている。カラーフィルタ15は、バックライトユニット2から照明される光のうちR(赤)/G(緑)/B(青)の3原色の波長域の光を通過させる。
【0019】
バックライトユニット2は、液晶パネル1を背面から照射する。例えば、図1に示すバックライトユニット2は、エッジライト方式のバックライトであり、LED素子を有するLED光源22を導光板21の端部に備えている。LED光源22は、導光板21を介して液晶パネル1に光を供給する。
【0020】
このように、図1に示す本実施形態の液晶パネル1は、基本的には、液晶層11の面と平行な横電界を生成し、液晶分子を液晶層11の面内で回転させて表示を制御するIPS方式の液晶表示装置である。但し、本実施形態の液晶パネル1は、バックライトユニット2の側の配向膜13aのアンカリングエネルギーを10-5(J/m)と相対的に小さくして、配向膜13aによる配向規制力を弱くしている。一方で、表示面側の配向膜13bのアンカリングエネルギーを10-4(J/m)と相対的に大きくして、配向膜13bによる配向規制力を強くしている。なお、アンカリングエネルギーの大きさはこれらの値に限定されない。バックライトユニット2の側の配向膜13aのアンカリングエネルギーは10-5(J/m)以下であればよく、表示面側の配向膜13bのアンカリングエネルギーは10-4(J/m)以上であればよい。
【0021】
本実施形態では、配向膜13aのアンカリングエネルギーが非常に小さいため、バックライトユニット2の側の配向膜13aによる配向規制力は、実際上ゼロとみなすことができる。このため、バックライトユニット2の側の液晶分子の配向は、配向膜13aよりも、配向膜13bによって規制される。本実施形態では、配向膜13aにラビング処理がなされていないが、バックライトユニット2の側の液晶分子は、表示面側の配向膜13bによる配向規制力によって配向膜13bの配向方向23bと同じ方向に配向している。
【0022】
これにより、横電界が小さい場合でも、駆動電極10aの直上の液晶分子が横電界に対して応答しやすくなるため、駆動電極10aの直上においても十分な明るさを確保することができる。しかし、前述のように、配向膜13aのアンカリングエネルギーを小さくすると、液晶パネル1の駆動電極10aをOFFしたときの液晶表示の応答性が低下してしまう。
【0023】
そこで、本実施形態の液晶パネル1は、駆動電極10aをOFFしたときの液晶表示の応答性を向上させるための補助電極10bを、表示面側の基板12bに設けている。図2は、第1実施形態に係る液晶表示装置において補助電極10bをONしたときの液晶配向を模式的に示す図である。
【0024】
補助電極10bは、駆動電極10aの電圧をOFFするタイミングでONされる。これにより、図2に示すように、補助電極10bと駆動電極10aとの間に縦電界が生成される。この結果、図1に示す白表示において複数の駆動電極10a間に生成された電界と平行となるように配向していた液晶分子は、縦電界によって強制的に液晶層11の面と垂直な方向に向きを変える。その後、補助電極10bに印加された電圧がOFFされると、液晶層11の面と垂直に配向していた液晶分子は、徐々に黒表示の配向状態へと戻る。
【0025】
図2に示すような、液晶の状態が白表示から黒表示に遷移している中間状態においては、液晶分子が液晶層11の面と垂直に配向しているので、バックライトユニット2から照明される光の偏光状態は液晶層11を通過する際に変化しない。このため、バックライトユニット2からの光は、互いに直交する偏光板14a、14bの偏光軸24a、24bによって遮断される。すなわち、図2に示す中間状態においては、液晶パネル1は実質的に黒表示となっている。したがって、液晶パネル1の駆動電極10aをOFFする際に、補助電極10bに電圧を印加することで、液晶表示の黒表示の応答性を向上させることができる。
【0026】
ところで、図2に示す駆動電極10a直上以外の領域では、補助電極10bと駆動電極10aとの間に生成される縦電界が小さくなってしまっている。そこで、駆動電極10a直上以外の領域では、配向膜13aのアンカリングエネルギーを大きいままにしてもよい。これにより、駆動電極10a直上以外の領域では、補助電極10bによって生成される縦電界が小さくても、配向膜13aの配向規制力によって液晶分子を黒表示の配向状態へ戻すことができる。
【0027】
図3は、第1実施形態に係る液晶表示装置における液晶表示の応答特性を示す図である。光透過特性T1は、本実施形態の液晶表示装置を用いて測定した液晶表示の応答特性の実測値を示している。一方、光透過特性T2は、比較用として補助電極10bを用いない構成において測定した液晶表示の応答特性の実測値を示している。
【0028】
光透過特性T1の測定では、時刻1000(ms)において、隣接する駆動電極10a間に電圧を印加して液晶表示を白表示とした。その後、時刻2000(ms)において、駆動電極10aの電圧をOFFすると同時に、補助電極10bの電圧をONした。一方、光透過特性T2の測定では、時刻1000(ms)において、同様に、隣接する駆動電極10a間に電圧を印加して液晶表示を白表示とした。その後、時刻2000(ms)において、補助電極10b用いずに駆動電極10aの電圧をOFFとした。なお、図3に示す光透過特性T1、T2は、液晶表示の白表示の定常状態における光透過率が100%となるように光透過率が規格化されている。
【0029】
図3を見ると、補助電極10bを用いて測定した光透過特性T1は、補助電極10bを用いずに測定した光透過特性T2と比較して、駆動電極10aの電圧をOFFする際の光透過率の立下りが急峻となって液晶表示の応答特性が向上していることが分かる。具体的には、光透過特性T2では、駆動電極10aの電圧をOFFする際に液晶パネル1の透過率が90%から10%までに減少するまでの時間が254.19(ms)であったのに対し、光透過特性T1では40.81(ms)であった。すなわち、補助電極10bを有することで、駆動電極10a間の電圧をOFFする際の黒表示の応答速度が、概ね6倍に向上した。
【0030】
以上のように、本実施形態の液晶表示装置は、液晶層の第2基板の側の液晶分子を相対的に強いアンカリングエネルギーで配向させると共に、液晶層の第1基板の側の液晶分子を相対的に弱いアンカリングエネルギーで配向させている。そして、駆動電極の電圧をOFFする際に補助電極の電圧をONしている。このような構成により、液晶表示の応答性と明るさとを両立し得る液晶表示装置及びその制御方法を提供することができる。
【0031】
また、本実施形態の液晶表示装置では、補助電極が平面視において矩形状をしており、駆動電極の電圧をOFFする際に、駆動電極と補助電極の間に電圧を印加して液晶層の面と垂直な縦電界を生成することで、液晶分子を液晶層に対して垂直に配向させている。このような構成は、従来のIPS方式の液晶表示装置に矩形状の補助電極を設けるだけで実現できるため、液晶表示装置を簡素な構成とすることができる。
【0032】
また、配向膜の第1基板の側の駆動電極間におけるアンカリングエネルギーを、配向膜の駆動電極の直上におけるアンカリングエネルギーよりも大きくしてもよい。このような構成により、液晶表示の応答性を更に改善することができる。なお、アンカリングエネルギーを小さくする配向膜の領域の若干の位置ずれは問題なく、第1基板に形成された駆動電極の直上の液晶分子の配向規制力が相対的に弱くなってさえいればよい。
【0033】
また、図1及び図2では、表示面側の基板12bの全面に矩形の補助電極10bを設けたが、補助電極10bは、液晶パネル1の画素毎に設けてもよいし、複数の画素を単位とするドメイン毎に設けてもよい。或いは、表示面側の基板12bの全面に、単一の補助電極10bを設けてもよい。また、図2では、補助電極10bから駆動電極10aに向かう電界を生成したが、逆に駆動電極10aから補助電極10bに向かう電界を生成してもよい。この場合でも同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、以上の説明では、複数の駆動電極10aを同じ配線層に形成したが、例えば後の第4実施形態で説明するように、SiNxやSiOx等によって互いに絶縁された異なる配線層に、複数の駆動電極10aを別々に形成してもよい。
【0035】
また、本実施形態では、駆動電極10a及び補助電極10bの主材料として、85%の高い光透過率を有するIZO(indium zinc oxide)を採用したが、これに限定されない。駆動電極10a及び補助電極10bは高い光透過率を有する導体膜であればよい。IZOの代わりに、例えばITO(Indium tin oxide、T=88%)、AZO(aluminum doped zinc oxide、T=92%)を用いることが可能である。あるいは、GZO(gallium doped zinc oxide、T=92%)、ATO(antimony tin oxide、T=87%)等を用いてもよい。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る液晶表示装置について、図4図6を用いて説明する。図4は、第2実施形態に係る液晶表示装置の構成を模式的に示す図である。図4に示す液晶表示装置は、補助電極10bの構造が先の第1実施形態と異なっている。その他の構成については概ね第1実施形態と同じであるため説明は省略する。
【0037】
先の第1実施形態では、図1に示したように表示面側の基板12bの全面に矩形の補助電極10bを設けた。そして、駆動電極10aの電圧をOFFする際に、補助電極10bの電圧をONして、駆動電極10aと補助電極10bとの間に縦電界を生成した。これに対し、本実施形態では、図4に示すように、表示面側の基板12bに複数の線状又は櫛歯形状の補助電極10bを設ける。そして、駆動電極10aの電圧をOFFする際に、補助電極10b間に横電界を生成する。これにより、第1実施形態と同様に、液晶表示の黒表示の応答性を向上させる。
【0038】
図5は、第2実施形態に係る液晶表示装置における駆動電極10a及び補助電極10bのレイアウトを模式的に示す図である。図4では、駆動電極10aと補助電極10bとが、互いに平行に対向しているように見えたが、実際には、図5に示すように、補助電極10bと駆動電極10aとは、平面視において45度の傾きを有して互いに交差している。このとき、駆動電極10aは、駆動電極10aの電圧がOFFであるときの黒表示における液晶層11の配向方向23aと平行になるように配置されている。また、補助電極10bは、駆動電極10aの電圧がONであるときの白表示における液晶層11の液晶分子の配向方向23cと平行になるように配置されている。すなわち、駆動電極10aと補助電極10bとは、駆動電極10aの電圧をONしたときに液晶層11の液晶分子が回転する角度と等しい傾きで、平面視において互いに交差している。
【0039】
補助電極10bは、駆動電極10aの電圧をOFFするタイミングでONされる。これにより、図4に示すように、複数の補助電極10b間に配向膜13aの配向方向23aと平行な成分を有する横電界が生成される。この結果、白表示において複数の駆動電極10a間に生成された電界と平行となるように配向していた液晶分子は、複数の補助電極10b間に生成された横電界によって強制的に黒表示における液晶層11の配向方向23aに戻される。したがって、第1実施形態と同様に、液晶パネル1の駆動電極10aをOFFする際に、補助電極10bに電圧を印加することで、液晶表示の応答性を向上させることができる。
【0040】
図6は、第2実施形態に係る液晶表示装置における液晶表示の応答特性を示す図である。光透過特性T1は、本実施形態の液晶表示装置を用いて測定した液晶表示の応答特性の実測値を示している。一方、光透過特性T2は、比較用として補助電極10bを用いない構成において測定した液晶表示の応答特性の実測値を示している。図6に示す応答特性の測定は、図3に示した応答特性の測定と同じ方法及び同じ条件で行った。
【0041】
図6を見ると、補助電極10bを用いて測定した光透過特性T1は、補助電極10bを用いずに測定した光透過特性T2と比較して、駆動電極10aの電圧をOFFする際の光透過率の立下りが急峻となって液晶表示の応答特性が向上していることが分かる。具体的には、光透過特性T2では、駆動電極10aの電圧をOFFする際に液晶パネル1の透過率が90%から10%までに減少するまでの時間が254.19(ms)であったのに対し、光透過特性T1では125.77(ms)であった。すなわち、補助電極10bを有することで、先の第1実施形態と比較して液晶表示の応答特性の改善は少ないものの、駆動電極10a間の電圧をOFFする際の黒表示の応答速度が、概ね2倍に向上した。
【0042】
以上のように、本実施形態の液晶表示装置では、補助電極が平面視において線状又は櫛歯形状をしている。そして、駆動電極の電圧をOFFする際に、複数の補助電極間に電圧を印加して液晶層の面と平行な横電界を生成することで、液晶分子を配向膜の配向方向に配向させている。このような構成によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る液晶表示装置について、図7図8を用いて説明する。図7は、第3実施形態に係る液晶表示装置の構成を模式的に示す図である。先の第2実施形態では液晶分子がポジ型である場合の液晶表示装置の構成について説明した。これに対し、本実施形態では、液晶分子がネガ型である場合の液晶表示装置の構成について説明する。その他の構成については第2実施形態と基本的に同じであるため、以下では、第2実施形態と異なる部分について説明する。
【0044】
先の第2実施形態では、液晶層11の液晶分子がポジ型であったため、液晶分子(の長軸)は生成された電界と平行となるように向きを変えた。これに対し、本実施形態では、液晶層11の液晶分子がネガ型であるため、液晶分子(の長軸)は生成された電界と垂直となるように向きを変える。そこで、本実施形態では、このようなネガ型の液晶分子の特性に合わせて、配向膜13a、13bの配向方向23a、23b、及び、偏光板14a、14bの偏光軸24a、24bを、図7に示すように変更している。
【0045】
図8は、本実施形態の液晶表示装置における配向方向23a、23b及び偏光軸24a、24bと、先の第2実施形態の液晶表示装置における配向方向23a、23b及び偏光軸24a、24bの違いをまとめた表である。図8に示す実施例1は、本実施形態のネガ型液晶を用いた液晶表示装置における偏光板14a、14bの偏光軸24a、24b、及び配向膜13a、13bの配向方向23a、23bを示している。一方、図8に示す実施例2は、先の第2実施形態のポジ型液晶を用いた液晶表示装置における偏光板14a、14bの偏光軸24a、24b、及び配向膜13a、13bの配向方向23a、23bを示している。
【0046】
図8に示すように、液晶層11の液晶分子のポジ/ネガ型が異なる場合でも、偏光板14a、14bの偏光軸24a、24b、及び、配向膜13a、13bの配向方向23a、23bを調整することで、先の第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、前述のように、本実施形態では、配向膜13aのアンカリングエネルギーが非常に小さいため、バックライトユニット2の側の配向膜13aによる配向規制力は、実際上ゼロとみなすことができる。このため、バックライトユニット2の側の液晶分子の配向は、配向膜13aよりも、配向膜13bによって規制される。本実施形態では、配向膜13aにラビング処理がなされていないが、バックライトユニット2の側の液晶分子は、表示面側の配向膜13bによる配向規制力によって配向膜13bの配向方向23bと同じ方向に配向している。
【0048】
以上のように、本実施形態の液晶表示装置では、液晶層の液晶分子がネガ型であり、補助電極は、駆動電極の電圧をOFFする際に、配向膜の配向方向と垂直な成分を有する電界を液晶層の面内に生成する。このような構成によっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る液晶表示装置について、図9を用いて説明する。図9は、第4実施形態に係る液晶表示装置の構成を模式的に示す図である。図9に示す液晶表示装置は、駆動電極10aの構造が先の第1実施形態と異なっている。その他の構成については概ね第1実施形態と同じであるため説明は省略する。
【0050】
先の第1実施形態では、図1に示したように、複数の線状又は櫛歯形状の駆動電極10aを基板12aに設けた。そして、複数の駆動電極10a間に電圧を印加して横電界を生成して表示を制御した。これに対し、本実施形態では、図9に示すように、駆動電極10aが形成された配線層とは異なる配線層に、矩形状の共通電極10cを設けている。そして、駆動電極10aと共通電極10cとの間に電圧を印加して表示を制御する。
【0051】
このような構成によれば、図9に示すように、駆動電極10aに近づくほど共通電極10cまでの距離が短くなって横電界が強くなるので、駆動電極10aの直上付近の液晶分子の動作性をより向上させることができる。したがって、このような駆動電極10a及び共通電極10cと、補助電極10bとを組み合わせて制御することで、駆動電極10aの電圧をONする際とOFFする際の両方の液晶表示の応答性を向上させることができる。
【0052】
以上のように、本実施形態の液晶表示装置では、駆動電極とは異なる配線層に形成された矩形状の共通電極を第1基板に有し、駆動電極と共通電極との間に電圧を印加して表示を制御している。このような構成によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができると共に、駆動電極の電圧をONする際の液晶表示の応答性についても向上させることができる。
【0053】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上述の各実施形態は、組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 :液晶パネル
2 :バックライトユニット
10a :駆動電極
10b :補助電極
10c :共通電極
11 :液晶層
12a、12b :基板
13a、13b :配向膜
14a、14b :偏光板
15 :カラーフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9