IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特許6991747二重給電交流機の制御装置および制御方法
<>
  • 特許-二重給電交流機の制御装置および制御方法 図1
  • 特許-二重給電交流機の制御装置および制御方法 図2
  • 特許-二重給電交流機の制御装置および制御方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】二重給電交流機の制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20220105BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20220105BHJP
   H02H 7/06 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H02P9/00 B
H02P9/00 E
H02P9/04 A
H02H7/06 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017115164
(22)【出願日】2017-06-12
(65)【公開番号】P2018050446
(43)【公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2016180822
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】北森 勇太朗
(72)【発明者】
【氏名】楠 清志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆太
(72)【発明者】
【氏名】影山 隆久
(72)【発明者】
【氏名】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】石月 照之
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-028398(JP,A)
【文献】特開平11-206196(JP,A)
【文献】特開2008-079383(JP,A)
【文献】特開平07-067393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
H02P 9/04
H02H 7/06
H02P 101/10
H02P 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線が開閉手段を介して電気回路に接続される二重給電交流機と、前記二重給電交流機の二次巻線に可変周波数の電流を供給する電力変換手段と、前記電力変換手段の電圧もしくは電流を制御する電力変換制御手段と、を有する発電システムに適用される二重給電交流機の制御装置であって、
前記二重給電交流機の二次側の二次電流を計測する二次電流計測手段と、
前記二重給電交流機の一次側に過電流が流れて前記二重給電交流機の一次側および二次側に過渡直流成分が重畳した場合に前記二次電流計測手段により計測された二次電流に重畳される直流成分または低周波成分を計測する直流成分計測手段と、
前記直流成分計測手段により計測された直流成分または低周波成分に応じて前記電力変換制御手段に対する直流通電指令または低周波通電指令の信号を発生する直流指令値発生手段と、
前記直流指令値発生手段が発生する直流通電指令または低周波通電指令の信号を出力または停止する切替え手段と
を備え、
前記切替え手段は、前記直流成分計測手段が前記二次電流に重畳される直流成分または低周波成分を計測した場合に前記直流指令値発生手段が発生する直流通電指令または低周波通電指令の信号を、前記二重給電交流機の一次側の電気回路の故障が検出されたとき又は前記二重給電交流機の二次側の電気回路の各相を短絡させる短絡器の短絡動作後の復帰が検出されたときに、前記電力変換制御手段に出力し、
前記電力変換制御手段は、出力された前記直流通電指令または低周波通電指令の信号に応じた指令を前記電力変換手段に出力し、前記電力変換手段は、前記電力変換制御手段からの指令に応じた直流または低周波電流を前記二重給電交流機の二次巻線に流すことを特徴とする二重給電交流機の制御装置。
【請求項2】
前記二重給電交流機の二次側に過電圧が発生した際に二次側の電気回路の各相を短絡する短絡手段と、
前記短絡手段が動作もしくは復帰したことを検出する短絡動作/復帰判定手段と
を更に備え、
前記切替え手段は、前記短絡動作/復帰判定手段が前記短絡手段の短絡動作を検出した後に復帰を検出したときに、前記直流指令値発生手段が発生する直流通電指令または低周波通電指令の信号を前記電力変換制御手段に出力することを特徴とする請求項1に記載の二重給電交流機の制御装置。
【請求項3】
前記直流成分計測手段は、前記二次電流計測手段により計測される二次電流の各相の一定期間の移動平均を算出する処理を繰り返す移動平均演算手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の二重給電交流機の制御装置。
【請求項4】
前記直流成分計測手段は、前記移動平均演算手段により算出される各相の移動平均の情報に極性の情報を含めて出力する極性判別手段を含むことを特徴とする請求項3に記載の二重給電交流機の制御装置。
【請求項5】
前記直流成分計測手段は、前記二次電流計測手段により計測された二次電流の直流成分のみまたは低周波成分のみを通過させるローパスフィルタを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の二重給電交流機の制御装置。
【請求項6】
一次巻線が開閉手段を介して電気回路に接続される二重給電交流機と、前記二重給電交流機の二次巻線に可変周波数の電流を供給する電力変換手段と、前記電力変換手段の電圧もしくは電流を制御する電力変換制御手段と、を有する発電システムに適用される二重給電交流機の制御方法であって、
二次電流計測手段により、前記二重給電交流機の二次側の二次電流を計測し、
直流成分計測手段により、前記二重給電交流機の一次側に過電流が流れて前記二重給電交流機の一次側および二次側に過渡直流成分が重畳した場合に前記二次電流計測手段により計測された二次電流に重畳される直流成分または低周波成分を計測し、
直流指令値発生手段により、前記直流成分計測手段により計測された直流成分または低周波成分に応じて前記電力変換制御手段に直流通電指令または低周波通電指令の信号を発生し、
切替え手段により、前記直流成分計測手段が前記二次電流に重畳される直流成分または低周波成分を計測した場合に前記直流指令値発生手段が発生する直流通電指令または低周波通電指令の信号を、前記二重給電交流機の一次側の電気回路の故障が検出されたとき又は前記二重給電交流機の二次側の電気回路の各相を短絡させる短絡器の短絡動作後の復帰が検出されたときに、前記電力変換制御手段に出力し、
前記電力変換制御手段により、出力された前記直流通電指令または低周波通電指令の信号に応じた指令を前記電力変換手段に出力し、前記電力変換手段により、前記電力変換制御手段からの指令に応じた直流または低周波電流を前記二重給電交流機の二次巻線に流す
ことを特徴とする二重給電交流機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二重給電交流機の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一次側が主要変圧器を介して電力系統に接続され、二次側が周波数変換器(交流励磁装置)に接続された二重給電交流機において、電力系統もしくは電気回路で、短絡や地絡等の電気故障が発生した場合、二重給電交流機の一次側の電圧低下、直流成分重畳、過電流等の過渡現象が発生し、二次側に過電圧が生じる。このとき、二重給電交流機の一次側では、直流成分の重畳により、遮断器開放時に一次電流がゼロクロスしない零ミスと呼ばれる現象が起こることがある。零ミスの問題を解決するための技術はいくつか提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2816020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
零ミスが生じると、遮断器が電流を遮断することができず、遮断器が損傷するばかりか、電気故障の除去ができず、電力系統の運転を継続できなくなったり、主要変圧器や二重給電交流機等を損傷したりする可能性がある。そのため、零ミスが生じないように、迅速に二重給電交流機の一次電流をゼロクロスさせることが求められる。
【0005】
零ミスの問題を解決するための技術はいくつか提案されているが、電気故障発生後、迅速に二重給電交流機の一次電流をゼロクロスさせる有効な手法は提案されていない。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、二重給電交流機の一次電流を迅速にゼロクロスさせることを可能にする二重給電交流機の制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、一次巻線が開閉手段を介して電気回路に接続される二重給電交流機と、二重給電交流機の二次巻線に可変周波数の電流を供給する電力変換手段と、電力変換手段の電圧もしくは電流を制御する電力変換制御手段と、を有する発電システムに適用される二重給電交流機の制御装置が提供される。二重給電交流機の制御装置は、前記二重給電交流機の二次側の二次電流を計測する二次電流計測手段と、前記二重給電交流機の一次側に過電流が流れて前記二重給電交流機の一次側および二次側に過渡直流成分が重畳した場合に前記二次電流計測手段により計測された二次電流に重畳される直流成分または低周波成分を計測する直流成分計測手段と、前記直流成分計測手段により計測された直流成分または低周波成分に応じて前記電力変換制御手段に対する直流通電指令または低周波通電指令の信号を発生する直流指令値発生手段と、前記直流指令値発生手段が発生する直流通電指令または低周波通電指令の信号を出力または停止する切替え手段とを備え、前記切替え手段は、前記直流成分計測手段が前記二次電流に重畳される直流成分または低周波成分を計測した場合に前記直流指令値発生手段が発生する直流通電指令または低周波通電指令の信号を、前記二重給電交流機の一次側の電気回路の故障が検出されたとき又は前記二重給電交流機の二次側の電気回路の各相を短絡させる短絡器の短絡動作後の復帰が検出されたときに、前記電力変換制御手段に出力し、前記電力変換制御手段は、出力された前記直流通電指令または低周波通電指令の信号に応じた指令を前記電力変換手段に出力し、前記電力変換手段は、前記電力変換制御手段からの指令に応じた直流または低周波電流を前記二重給電交流機の二次巻線に流す
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二重給電交流機の一次電流を迅速にゼロクロスさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る発電システムの構成の一例を示す図。
図2図1中の直流成分計測機能6の回路構成の一例を示す図。
図3】第2の実施形態に係る発電システムの構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
最初に、第1の実施形態について説明する。
(構成)
図1は、第1の実施形態に係る発電システムの構成の一例を示す図である。
【0012】
図1に示す発電システムは、例えば揚水発電所に設置される可変速揚水発電システムであり、電力系統Sに電気的に接続される。
【0013】
発電システムは、基本的な構成要素として、例えばポンプ水車101に連結される発電電動機である二重給電交流機1(以下、「発電電動機1」と称す。)、コンバータ2Aおよびインバータ2Bを有する電力変換器2、主要変圧器102、系統側遮断器103、並列用遮断器104、励磁用変圧器105、励磁用遮断器106、調速機107、サーボモータ108、角度検出器KA、計器用変成器VT、変流器CT、CT5A、系統故障検出機能DTなどの機器類を備えている。
【0014】
また、発電システムは、コンバータ制御部3Aおよびインバータ制御部3Bを有する電力変換制御部3、無効電力制御部111、有効電力制御部112、発電電動機電圧制御部113、通常運転時インバータ電圧指令値演算部114、調速機制御部115、コンバータ電圧指令値演算部116、発電電動機一次電流交流化制御演算部120、演算部A1、A2などの各種の制御機能を備えている。
【0015】
演算部A1は、発電電動機1の一次側の主要変圧器102と並列用遮断器104との間の電気回路に設置された計器用変成器VTを通じて検出される電圧と、発電電動機1の一次側の主要変圧器102と並列用遮断器104との間の電気回路に設置された変流器CTを通じて検出される電流とに基づき、有効電力、無効電力を演算する機能である。
【0016】
演算部A2は、発電電動機1の一次側の主要変圧器102と並列用遮断器104との間の電気回路に設置された計器用変成器VTを通じて検出される電圧と、励磁用遮断器106の下流に設置された変流器CTを通じて検出される電流とに基づき、有効電力、無効電力を演算する機能である。
【0017】
無効電力制御部111は、入力部T1より入力される無効電力指令値と演算部A1により演算される無効電力との差に基づき、発電システムから電力系統に供給する無効電力の制御目標値を演算して出力する機能である。
【0018】
有効電力制御部112は、演算部A1により演算される有効電力、入力部T2より入力される有効電力指令値、入力部T3より入力される落差測定値、および、サーボモータ108からのガイドベーン開度帰還信号に基づき、有効電力、回転速度、およびガイドベーンGの開度の各制御目標値を演算する機能である。
【0019】
発電電動機電圧制御部113は、発電電動機1の一次側の並列用遮断器104と発電電動機1との間の電気回路に設置された計器用変成器VTを通じて検出される電圧に基づき、無効電力制御部111からの無効電力の制御目標値または入力部T4より入力される電圧増減指令に従って、発電電動機電圧の制御目標値を演算して出力する機能である。
【0020】
通常運転時インバータ電圧指令値演算部114は、発電電動機1の一次側の主要変圧器102と並列用遮断器104との間の電気回路に設置された計器用変成器VTを通じて検出される電圧に基づき、周波数を演算して出力するとともに、有効電力制御部112により演算される回転速度の制御目標値、角度検出器KAから出力される発電電動機1の角度信号、および発電電動機1の二次側の電気回路に設置された変流器CT5Aにより検出される電流に基づき、発電電動機電圧制御部113からの発電電動機電圧の制御目標値に従って、インバータ制御部3Bおよびインバータ2Bを通じて発電電動機1の二次電流を制御し、発電電動機1の電圧、有効電力および回転速度を制御する機能である。
【0021】
通常運転時インバータ電圧指令値演算部114は、発電電動機1の一次側の主要変圧器102と並列用遮断器104との間の電気回路に設置された計器用変成器VTを通じて検出される電圧から周波数を演算して演算結果を調速機制御部115へ出力する周波数演算機能aと、角度検出器KAから出力される発電電動機1の角度信号を入力する角度信号入力機能bと、その角度信号から角速度を演算する角速度演算機能cと、有効電力制御部112からの制御信号(回転速度・ガイドベーン開度の目標値)と角速度との差分を演算して出力する演算機能dと、その差分に応じたすべり周波数制御信号を生成するすべり周波数制御機能eと、発電電動機1の二次側の電気回路に設置された変流器CT5Aにより検出される電流に基づきリセット制御信号を生成するリセット制御機能f(但し、本実施形態では使用しない。)と、変流器CT5Aにより検出される電流の三相二相変換を行う三相二相変換機能gと、すべり周波数制御信号またはリセット制御信号と三相二相変換後の信号との差分を演算して出力する演算機能hと、発電電動機電圧制御部113からの制御信号(発電電動機電圧の制御目標値)と三相二相変換後の信号との差分を演算して出力する演算機能jと、演算機能hの演算結果に応じた制御信号を出力する制御機能kと、演算機能jの演算結果に応じた制御信号を出力する制御機能mと、制御機能kからの制御信号および制御機能mからの制御信号を入力して二相三相変換を行う二相三相変換機能nと、二相三相変換後の制御信号に応じたインバータ電圧指令値を演算してインバータ制御部3Bへ出力するインバータ電圧指令値演算機能pとを含む。
【0022】
調速機制御部115は、通常運転時インバータ電圧指令値演算部114の周波数演算機能aにより演算される周波数、およびサーボモータ108からのガイドベーン開度帰還信号に基づき、有効電力制御部112からの信号(有効電力の制御目標値およびガイドベーンGの開度の制御目標値)に従って、調速機107を通じてサーボモータ108を制御し、ガイドベーンGの開度を制御する機能である。
【0023】
コンバータ電圧指令値演算部116は、演算部A2により演算される無効電力、直流電圧検出機能2Cからの直流電圧信号、および励磁用変圧器105の下流に設置された変流器CTを通じて検出される電流に基づき、コンバータ電圧指令値を演算してコンバータ制御部3Aに送ることにより、コンバータ2Aの無効電力および直流電圧を制御するする機能である。
【0024】
電力変換制御部3は、コンバータ制御部3Aおよびインバータ制御部3Bを備えている。コンバータ制御部3Aは、コンバータ電圧指令値演算部116から出力されるコンバータ電圧指令値に従って電力変換器2のコンバータ2Aを制御する機能である。インバータ制御部3Bは、通常運転時インバータ電圧指令値演算部114から出力されるインバータ電圧指令値に従ってインバータ2Bを制御する機能である。
【0025】
発電電動機一次電流交流化制御演算部120は、短絡検出機能(電気故障検出手段)4、直流成分計測機能6、直流指令値発生機能7、および切替え機能8Bを備えている。
【0026】
短絡検出機能(電気故障検出手段)4は、電力系統Sに接続される電気回路もしくは発電電動機1の一次側の電気的諸量(例えば電流または電圧など)を計測し、電力系統S及び/又は当該電気回路の電気故障を検出する。
【0027】
直流成分計測機能6は、変流器CT5Aにより計測された二次電流の直流成分または低周波成分(発電電動機1のすべり周波数成分またはすべり周波数に近い周波数成分)を計測する。
【0028】
直流指令値発生機能7は、直流成分計測機能6により計測された直流成分または低周波成分に応じて電力変換制御部3に直流通電指令または低周波通電指令の信号を発生する。
【0029】
切替え機能8Bは、直流指令値発生機能7の信号を出力または停止する。この切替え機能8Bは、所定の条件が成立したとき、例えば短絡検出機能(電気故障検出手段)4が発電電動機1の一次側の電気回路の短絡などの故障を検出したときに、直流指令値発生機能7の信号を電力変換制御部3に出力する。
【0030】
ここで、直流成分計測機能6の回路構成の一例を図2に示す。図2に示される直流成分計測機能6は、変流器CT5Aにより計測される二次電流の各相の一定期間の移動平均を算出する処理を繰り返す移動平均演算部6Aと、移動平均演算部6Aにより算出される各相の移動平均の情報に極性の情報を含めて出力する極性判別部6Bとを備えている。
【0031】
なお、直流指令値発生機能7の回路構成は、図2の例に限定されるものではない。例えば、移動平均演算部6Aおよび極性判別部6Bの代わりに、変流器CT5Aにより計測された二次電流の直流成分のみまたは低周波成分のみを通過させるローパスフィルタを採用してもよい。
【0032】
(作用)
例えば、電力系統で短絡故障や地絡故障が発生すると、発電電動機1の一次電圧が低下し、過電流が流れるとともに、主要変圧器102、発電電動機1の一次および二次に過渡直流成分が重畳する。
【0033】
系統故障検出機能DTは、系統故障を検出し、遮断器103に開指令を出す。短絡検出機能4は、発電電動機一次電圧低下を検出し、切替え機能8Bに入指令を出力する。直流成分計測機能6は、発電電動機二次電流に含まれる直流成分を計測し、直流指令値発生機能7に直流成分計測値を出力する。直流指令値発生機能7は、直流成分計測値に応じて発電電動機二次電流の直流化に適した各相のインバータ制御指令を演算し、インバータ制御部3に出力する。インバータ2Bは、インバータ制御部3からの指令に応じて各相のスイッチング素子を入切し、発電電動機二次巻線に直流または低周波電流を流す。
【0034】
(効果)
本実施形態によれば、発電電動機二次電流に含まれる直流成分を計測し、直流成分計測値に応じて、インバータ電圧制御指令値を演算し、発電電動機二次巻線の直流または低周波電流を制御するので、迅速に主要変圧器および発電電動機1の一次電流および二次電流を零クロスさせ、零ミスを防ぐことができる。
【0035】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
(構成)
図3は、第2の実施形態に係る発電システムの構成の一例を示す図である。なお、第1の実施形態(図1)と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0036】
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、二次側の電気回路の各相に短絡器9および変流器CT5Bを設け、さらに、発電電動機一次電流交流化制御演算部120の代わりに発電電動機一次電流交流化制御演算部120’を設けた点である。発電電動機一次電流交流化制御演算部120’は、前述の短絡検出機能(電気故障検出手段)4を備える代わりに、短絡器動作/復帰判定機能10を備えている。また、通常運転時インバータ電圧指令値演算部114には、さらに、切替え機能8C、8Dが備えられる。
【0037】
短絡器9は、発電電動機1の二次側に過電圧が発生した際に二次側の電気回路(三相交流回路)の相間を短絡させる機能を有する。
【0038】
短絡器動作/復帰判定機能10は、短絡器9が動作していること(短絡し、短絡器9に電流が流れていること)、もしくは、復帰したこと(電気的に開路し、短絡器9に電流が流れていないこと)を検出する機能である。
【0039】
切替え機能8Bは、短絡動作/復帰判定機能10が短絡器9の短絡動作を検出した後に復帰を検出したときに、直流指令値発生機能7の信号を電力変換制御部3に出力する。
【0040】
(作用)
例えば、電力系統で短絡故障や地絡故障が発生すると、発電電動機1の一次電圧が低下し、過電流が流れるとともに、主要変圧器、発電電動機1の一次および二次に過渡直流成分が重畳する。また、発電電動機一次側の過渡現象、過渡直流成分により、発電電動機二次側に過電圧が発生する。
【0041】
系統故障検出機能DTは、系統故障を検出し、遮断器103に開指令を出す。短絡器9は、発電電動機二次側に過電圧が発生すると、二次側の電気回路を短絡し、発電電動機1および電力変換器2を過電圧から保護する。短絡器9が動作中は、発電電動機二次電流は、短絡器9に流れるため、発電電動機二次電流を制御することができない。そのため、短絡器9が動作した後、インバータ制御部3Bは、通常運転時インバータ電圧指令値演算部114の制御指令値に従い、短絡器9の電流をインバータ2Bに移行させ、短絡器9の電流をゼロに絞り、短絡器9を復帰させる。短絡器9が復帰すると、インバータ2Bにより、発電電動機二次電流の制御が可能になる。
【0042】
短絡器動作/復帰判定機能10は、直流電圧検出機能2Cからの直流電圧信号を入力し、短絡器9の動作を判定する。また、変流器CT5Bからの電流を計測し、短絡器9の復帰を判定する。短絡器動作前および短絡器動作中は、切替え機能8Aが「入」、切替え機能8Bが「切」の状態であり、また、切替え機能8Cのすべり周波数制御信号側が「入」、リセット制御信号側が「切」、切替え機能8Dが「入」の状態である。短絡器動作/復帰判定機能10は、短絡器が動作した後に復帰したと判定すると、切替え機能8Aおよび切替え機能8Bに切替え指令を出し、切替え機能8Aを「切」、切替え機能8Bを「入」の状態にし、また、切替え機能8Cのリセット制御信号側を「入」、すべり周波数制御信号側を「切」、切替え機能8Dを「切」の状態にする。
【0043】
直流成分計測機能6は、発電電動機二次電流に含まれる直流成分を計測し、直流指令値発生機能7に直流成分計測値を出力する。直流指令値発生機能7は、直流成分計測値に応じて発電電動機二次電流の直流化に適したインバータ制御指令を演算し、インバータ制御部3に出力する。インバータ2Bは、インバータ制御部3からの指令値に応じて各相のスイッチング素子を入切し、発電電動機二次巻線に直流または低周波電流を流す。
【0044】
(効果)
本実施形態によれば、発電電動機二次電流に含まれる直流成分を計測し、直流成分計測値に応じて、短絡器9が復帰した直後に、インバータ制御指令を演算し、発電電動機二次巻線の直流または低周波電流を制御するので、迅速に主要変圧器および発電電動機1の一次電流および二次電流を零クロスさせ、零ミスを防ぐことができる。
【0045】
以上詳述したように、各実施形態によれば、二重給電交流機の一次電流を迅速にゼロクロスさせることが可能となる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0047】
上述の例では、検出量、計測量、制御量が電流または電圧の例について説明したが、電流の代わりに電圧、磁束等の電気的諸量を用いても良いし、電圧の代わりに電流、磁束等の電気的諸量を用いても良い。
【符号の説明】
【0048】
1…二重給電交流機、2…電力変換器、2A…コンバータ、2B…インバータ、3…電力変換制御部、2C…直流電圧検出機能、3A…コンバータ制御部、3B…インバータ制御部、4…並列用遮断器、8A、8B、8C、8D…切替え機能、101…ポンプ水車、102…主要変圧器、103…系統側遮断器、105…励磁用変圧器、106…励磁用遮断器、107…調速機、108…サーボモータ、111…無効電力制御部、112…有効電力制御部、113…発電電動機電圧制御部、114…通常運転時インバータ電圧指令値演算部、115…調速機制御部、116…コンバータ電圧指令値演算部、120,120’…発電電動機一次電流交流化制御演算部、KA…角度検出器、PT…計器用変成器、CT、CT5A、CT5B…変流器、DT…系統故障検出機能、G…ガイドベーン。
図1
図2
図3