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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】アンチキャビテーション油圧回路
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20220105BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20220105BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F15B11/02 W
F15B11/00 D
E02F9/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017129477
(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2019011835
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-06-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】矢田部 倫章
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-204922(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0071784(KR,A)
【文献】特開2005-121074(JP,A)
【文献】特開2002-039108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0300381(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B11/00-11/22;21/14
E02F 3/42- 3/43; 3/84- 3/85; 9/20- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータに接続される第1給排路及び第2給排路であって、一方から前記油圧アクチュエータに作動油が供給され、前記油圧アクチュエータから他方に作動油が排出される第1給排路及び第2給排路と、
前記第1給排路が第1連絡路を介して接続され、前記第2給排路が第2連絡路を介して接続され、前記第1連絡路からの作動油の圧力及び前記第2連絡路からの作動油の圧力に応じてスライド位置が定まるアンチキャビテーションスプールを有するアンチキャビテーション弁と、を備え、
前記アンチキャビテーション弁は、
前記アンチキャビテーションスプールが少なくとも中立位置及びストロークエンド位置に位置する場合には、前記第1連絡路と前記第2連絡路との間の連通を遮断する連絡路遮断状態をとり、
前記アンチキャビテーションスプールが前記中立位置と前記ストロークエンド位置との間の少なくとも一部に位置する場合には、前記第1連絡路と前記第2連絡路とを連通させる連絡路連通状態をとるアンチキャビテーション油圧回路。
【請求項2】
前記第1給排路及び前記第2給排路を含む第1ブロック体と、
前記第1ブロック体に取り付けられ、前記アンチキャビテーション弁を含む第2ブロック体と、を備える請求項1に記載のアンチキャビテーション油圧回路。
【請求項3】
前記第1給排路と前記油圧アクチュエータとの間に設けられる第1中継路と、
前記第2給排路と前記油圧アクチュエータとの間に設けられる第2中継路と、
前記第1給排路内の作動油の圧力と前記第1中継路内の作動油の圧力との差圧に応じて作動する第1チェック弁であって、前記第1給排路から前記第1中継路に向かう作動油の通過を許容する一方で前記第1中継路から前記第1給排路に向かう作動油の通過を許容しない第1チェック弁と、
前記第2給排路内の作動油の圧力と前記第2中継路内の作動油の圧力との差圧に応じて作動する第2チェック弁であって、前記第2給排路から前記第2中継路に向かう作動油の通過を許容する一方で前記第2中継路から前記第2給排路に向かう作動油の通過を許容しない第2チェック弁と、を更に備える請求項1又は2に記載のアンチキャビテーション油圧回路。
【請求項4】
前記第1給排路及び前記第2給排路に接続され、前記第1給排路からの作動油の圧力及び前記第2給排路からの作動油の圧力に応じてスライド位置が定まるカウンターバランススプールを有するカウンターバランス弁であって、前記カウンターバランススプールのスライド位置に応じて、前記油圧アクチュエータに対する前記第1給排路の接続状態及び前記油圧アクチュエータに対する前記第2給排路の接続状態を変えるカウンターバランス弁を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のアンチキャビテーション油圧回路。
【請求項5】
前記カウンターバランス弁は、前記カウンターバランススプールを中立位置に配置するように前記カウンターバランススプールに弾性力を付与する第1弾性体を更に有し、
前記アンチキャビテーション弁は、前記アンチキャビテーションスプールを中立位置に配置するように前記アンチキャビテーションスプールに弾性力を付与する第2弾性体を更に有し、
前記第2弾性体の弾性率は、前記第1弾性体の弾性率よりも小さい請求項4に記載のアンチキャビテーション油圧回路。
【請求項6】
前記第1給排路から前記アンチキャビテーションスプールに向かう作動油にもたらす抵抗よりも、前記アンチキャビテーションスプールから前記第1給排路に向かう作動油にもたらす抵抗の方が大きい第1スローリターンチェック弁と、
前記第2給排路から前記アンチキャビテーションスプールに向かう作動油にもたらす抵抗よりも、前記アンチキャビテーションスプールから前記第2給排路に向かう作動油にもたらす抵抗の方が大きい第2スローリターンチェック弁と、を更に備える請求項1~5のいずれか一項に記載のアンチキャビテーション油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧モータ等の油圧アクチュエータに接続されるアンチキャビテーション油圧回路に関し、特に油圧アクチュエータの停止操作時に発生しうるキャビテーションを低減するアンチキャビテーション油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用や旋回用の油圧モータに作動油を供給するための油圧回路として、目的に応じた様々な回路が提案されている。例えば、油圧モータの停止時に発生するキャビテーションは、不快な異音や振動を伴うため、可能な限り抑制されることが好ましい。特許文献1及び特許文献2は、そのようなキャビテーションの発生を防止することを目的とした油圧回路を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-214901号公報
【文献】特開2006-17263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2が開示する上述の油圧回路は、必ずしも簡素な構成を有してはおらず、また必ずしも十分なキャビテーション抑制効果を得ることができなかった。
【0005】
例えば特許文献1の油圧回路では、2つのメイン回路の各々に戻り回路が接続され、各戻り回路にチェック弁が設けられ、これらの戻り回路の中間点にバイパス回路が接続され、当該バイパス回路に対しては2つの分岐通路が選択的に開閉される。この特許文献1の油圧回路は、ポンプ停止作動時に戻り側のメイン回路の作動油を供給側のメイン回路に供給することでキャビテーションの発生を防いでいるが、回路構成が複雑であるとともに、様々な箇所にチェック弁を設置する必要もある。そのため、特許文献1の油圧回路はコストが高くなりやすい。
【0006】
また特許文献2の油圧回路では、油圧モータのブレーキ時に、カウンターバランス弁を介して吸い込み側給排路と油圧モータとを接続することにより、吸い込み側給排路から油圧モータへの油の吸い込み性能が向上されている。しかしながらこの吸い込み側給排路は、油圧モータのブレーキ時には油の供給が停止若しくは低減されている。したがって特許文献2の油圧回路では、必ずしも十分な油量を油圧モータに供給することができず、キャビテーションを十分に抑制できない場合もあった。
【0007】
上述のように、簡素な構成を有し且つキャビテーション抑制効果の高い油圧回路は従来提案されておらず、低コスト化の面でも更なる改善の余地があった。さらにニーズの多様化に伴い、多少コストが増大してもキャビテーションを効果的に低減可能な油圧回路を望むユーザがいる一方で、キャビテーション低減機能を省いてコストを抑えた油圧回路を望むユーザもいる。これらの要望のいずれにも応えることが可能なように、既存の回路に対し、キャビテーション低減機能を必要に応じて簡単に付加できるようにすることも望まれている。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、簡素な構成によってキャビテーションを効果的に低減できる油圧回路を提供することを目的の一つとする。また、既存の回路に対して簡単にキャビテーション低減機能を付加できる油圧回路を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、油圧アクチュエータに接続される第1給排路及び第2給排路であって、一方から油圧アクチュエータに作動油が供給され、油圧アクチュエータから他方に作動油が排出される第1給排路及び第2給排路と、第1給排路が第1連絡路を介して接続され、第2給排路が第2連絡路を介して接続され、第1給排路からの作動油の圧力及び第2給排路からの作動油の圧力に応じてスライド位置が定まるアンチキャビテーションスプールを有するアンチキャビテーション弁と、を備え、アンチキャビテーション弁は、アンチキャビテーションスプールが中立位置とストロークエンド位置との間の少なくとも一部に位置する場合には、前記第1連絡路と前記第2連絡路とを連通させる連絡路連通状態をとるアンチキャビテーション油圧回路に関する。
【0010】
アンチキャビテーション油圧回路は、第1給排路及び第2給排路を含む第1ブロック体と、第1ブロック体に取り付けられ、アンチキャビテーション弁を含む第2ブロック体と、を備えてもよい。
【0011】
アンチキャビテーション油圧回路は、第1給排路と油圧アクチュエータとの間に設けられる第1中継路と、第2給排路と油圧アクチュエータとの間に設けられる第2中継路と、第1給排路内の作動油の圧力と第1中継路内の作動油の圧力との差圧に応じて作動する第1チェック弁であって、第1給排路から第1中継路に向かう作動油の通過を許容する一方で第1中継路から第1給排路に向かう作動油の通過を許容しない第1チェック弁と、第2給排路内の作動油の圧力と第2中継路内の作動油の圧力との差圧に応じて作動する第2チェック弁であって、第2給排路から第2中継路に向かう作動油の通過を許容する一方で第2中継路から第2給排路に向かう作動油の通過を許容しない第2チェック弁と、を更に備えてもよい。
【0012】
アンチキャビテーション油圧回路は、第1給排路及び第2給排路に接続され、第1給排路からの作動油の圧力及び第2給排路からの作動油の圧力に応じてスライド位置が定まるカウンターバランススプールを有するカウンターバランス弁であって、カウンターバランススプールのスライド位置に応じて、油圧アクチュエータに対する第1給排路の接続状態及び油圧アクチュエータに対する第2給排路の接続状態を変えるカウンターバランス弁を更に備えてもよい。
【0013】
カウンターバランス弁は、カウンターバランススプールを中立位置に配置するようにカウンターバランススプールに弾性力を付与する第1弾性体を更に有し、アンチキャビテーション弁は、アンチキャビテーションスプールを中立位置に配置するようにアンチキャビテーションスプールに弾性力を付与する第2弾性体を更に有し、第2弾性体の弾性率は、第1弾性体の弾性率よりも小さくてもよい。
【0014】
アンチキャビテーション油圧回路は、第1給排路からアンチキャビテーションスプールに向かう作動油にもたらす抵抗よりも、アンチキャビテーションスプールから第1給排路に向かう作動油にもたらす抵抗の方が大きい第1スローリターンチェック弁と、第2給排路からアンチキャビテーションスプールに向かう作動油にもたらす抵抗よりも、アンチキャビテーションスプールから第2給排路に向かう作動油にもたらす抵抗の方が大きい第2スローリターンチェック弁と、を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡素な構成によってキャビテーションを効果的に低減できる。また第1ブロック体に取り付けられる第2ブロック体にアンチキャビテーション弁を含ませることによって、第1ブロック体に含まれる回路に対してキャビテーションを低減する機能を簡単に付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るアンチキャビテーション油圧回路の断面状態を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るアンチキャビテーション油圧回路の断面状態を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るアンチキャビテーション油圧回路の断面状態を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るアンチキャビテーション油圧回路の断面状態を示す図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る油圧回路の一例を示す回路図である。
図6図6は、本発明の一変形例に係るアンチキャビテーション油圧回路を含む油圧回路の一例を示す回路図である。
図7図7は、第1給排路内の作動油の圧力と第2給排路内の作動油の圧力との差ΔPと、アンチキャビテーション弁の状態と、の関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面に示される要素には、理解を容易にするために、サイズ及び縮尺等が実際のそれらと異なって示されている要素が含まれうる。
【0018】
以下に説明する油圧回路は、例えば建設機械に対して適用可能であり、走行用油圧モータ及び旋回用油圧モータの停止操作時に発生しうるキャビテーションを効果的に低減できる。ただし、以下の油圧回路を適用可能な装置は特に限定されず、油圧モータ等の油圧アクチュエータを用いる任意の装置においてキャビテーションの低減が望まれる場合に、以下の油圧回路を好適に用いることが可能である。
【0019】
図1図4は、本発明の一実施形態に係るアンチキャビテーション油圧回路10の断面状態を示す図であり、アンチキャビテーション油圧回路10及び油圧モータ15の接続状態を簡略的に示す。
【0020】
[構成]
アンチキャビテーション油圧回路10は、第1給排路21、第2給排路22、カウンターバランス弁40及びアンチキャビテーション弁50を備える。第1給排路21、第2給排路22、及びカウンターバランス弁40は第1ブロック体11に含まれる一方で、アンチキャビテーション弁50は第2ブロック体12に含まれる。第2ブロック体12は、ネジ等の任意の固定具(図示省略)を介し、第1ブロック体11に固定的に取り付けられる。
【0021】
第1給排路21及び第2給排路22は、油圧モータ15に接続され、一方から油圧モータ15に作動油が供給され、他方に油圧モータ15からの作動油が排出され、油圧モータ15の正転駆動又は逆転駆動が行われる。図1図4には、第1給排路21が油圧ポンプPに接続され、第2給排路22が排出タンクTに接続され、第1給排路21から油圧モータ15に作動油が供給されるとともに油圧モータ15から第2給排路22に作動油が排出されて、油圧モータ15の正転駆動が行われる場合のアンチキャビテーション油圧回路10の状態が示されている。
【0022】
第1接続ポート23及び第2接続ポート24の各々に接続されるメイン回路(油路)は図示しないコントロール切換弁に接続されており、当該コントロール切換弁によって、油圧ポンプP及び排出タンクTに対する第1給排路21及び第2給排路22の接続態様を変えることができる。すなわちユーザにより操作可能なコントロール切換弁によって、アンチキャビテーション油圧回路10より上流側の油路構成を、油圧ポンプPを第1給排路21に接続しつつ排出タンクTを第2給排路22に接続する正転駆動モード、又は、油圧ポンプPを第2給排路22に接続しつつ排出タンクTを第1給排路21に接続する逆転駆動モードに切り換えることができる。
【0023】
カウンターバランス弁40は、第1給排路21及び第2給排路22に接続されており、第1給排路21からの作動油の圧力及び第2給排路22からの作動油の圧力に応じて軸方向Daに関するスライド位置が定まる第1スプール(カウンターバランススプール)41を有する。第1スプール41には複数の切欠部(ノッチ)42及び複数のランド部43が形成されており、第1スプール41のスライド位置に応じて、油圧モータ15に対する第1給排路21の接続状態及び第2給排路22の接続状態が変わる。第1スプール41の両端部は、第1スプリングチャンバ46a、46bに収容された第1スプリング47a、47bから、軸方向Daに弾性力を受ける。第1スプリングチャンバ46a、46bはそれぞれ、第1スプール41の切欠部42に形成された固定絞り部44及び第1スプール41の内部に形成された貫通路45を介し、第1給排路21及び第2給排路22に連通する。第1スプリング47a、47bは第1スプール41を中立位置に配置するように弾性力を第1スプール41に付与するのに対し、第1スプリングチャンバ46a、46b内に流入した作動油は第1スプール41をストロークエンド位置に向けて移動させるように油圧を第1スプール41に作用させる。したがって第1スプール41のスライド位置は、第1給排路21から第1スプリングチャンバ46aに流入した作動油の圧力及び第1スプリング47aの弾性力と、第2給排路22から第1スプリングチャンバ46bに流入した作動油の圧力及び第1スプリング47bの弾性力と、に応じて決まる。
【0024】
アンチキャビテーション弁50は、カウンターバランス弁40及び第1連絡路61を介して第1給排路21に接続されるとともに、カウンターバランス弁40及び第2連絡路62を介して第2給排路22に接続されており、第1給排路21及び第2給排路22からの作動油の圧力に応じてスライド位置が定まる第2スプール(アンチキャビテーションスプール)51を有する。第1連絡路61及び第2連絡路62の各々は、第1ブロック体11及び第2ブロック体12に形成された孔部によって構成され、第1スプール41がスライド自在に配置されるスプール孔と、第2スプール51がスライド自在に配置されるスプール孔とをつなぐ。また第1連絡路61及び第2連絡路62は、対応の固定絞り部54にそれぞれ連通している。
【0025】
第2スプール51には複数の切欠部52及び複数のランド部53が形成されている。アンチキャビテーション弁50は、第2スプール51のスライド位置に応じて、第1連絡路61と第2連絡路62との間の連通をランド部53によって遮断する連絡路遮断状態及び第1連絡路61と第2連絡路62とを切欠部52を介して連通させる連絡路連通状態のうちのいずれかの状態をとる。第2スプール51の両端部は、第2スプリングチャンバ56a、56bに収容された第2スプリング57a、57bから、軸方向Daに弾性力を受ける。第2スプリングチャンバ56a、56bはそれぞれ、第2ブロック体12に形成された固定絞り部54を介し、第1連絡路61及び第2連絡路62に連通する。第2スプリング57a、57bは第2スプール51を中立位置に配置するように第2スプール51に弾性力を付与するのに対し、第2スプリングチャンバ56a、56b内に流入した作動油は第2スプール51をストロークエンド位置に向けて移動させるように第2スプール51に油圧を作用させる。したがって第2スプール51のスライド位置は、第1給排路21からカウンターバランス弁40、第1連絡路61及び固定絞り部54を介して第2スプリングチャンバ56aに流入した作動油の圧力及び第2スプリング57aの弾性力と、第2給排路22からカウンターバランス弁40、第2連絡路62及び固定絞り部54を介して第2スプリングチャンバ56bに流入した作動油の圧力及び第2スプリング57bの弾性力と、に応じて決まる。
【0026】
なお、第1スプール41の複数の切欠部42(特に固定絞り部44が形成された複数の切欠部42)は、第1スプール41のスライド位置にかかわらず、第1給排路21と第1連絡路61との間及び第2給排路22と第2連絡路62との間に配置される。したがって第1スプール41のスライド位置によらず、第1給排路21内の作動油及び第2給排路22内の作動油は、固定絞り部44、貫通路45及び第1スプリングチャンバ46a、46bに流入して第1スプール41に作用し、また切欠部42、第1連絡路61、第2連絡路62、固定絞り部54及び第2スプリングチャンバ56a、56bに流入して第2スプール51に作用する。
【0027】
アンチキャビテーション油圧回路10は、更に第1中継路31、第2中継路32、第1チェック弁65及び第2チェック弁66を備える。第1中継路31は、第1給排路21と油圧モータ15との間に設けられ、第2中継路32は、第2給排路22と油圧モータ15との間に設けられている。第1中継路31には、第1連通油路37を介して油圧モータ15に連通する第1連通口35が設けられ、第2中継路32には、第2連通油路38を介して油圧モータ15に連通する第2連通口36が設けられている。第1チェック弁65は、第1給排路21と第1中継路31との間の第1チェック貫通路26を、第1給排路21内の作動油の圧力と第1中継路31内の作動油の圧力との差圧に応じて開閉し、第1給排路21から第1中継路31に向かう作動油の通過を許容する一方で、第1中継路31から第1給排路21に向かう作動油の通過を許容しない。第2チェック弁66は、第2給排路22と第2中継路32との間の第2チェック貫通路27を、第2給排路22内の作動油の圧力と第2中継路32内の作動油の圧力との差圧に応じて開閉し、第2給排路22から第2中継路32に向かう作動油の通過を許容する一方で第2中継路32から第2給排路22に向かう作動油の通過を許容しない。
【0028】
上述の構成を有するアンチキャビテーション弁50は、第2スプール51が少なくとも中立位置及びストロークエンド位置に位置する場合には第1給排路21と第2給排路22との間の連通を遮断する連絡路遮断状態をとり、中立位置とストロークエンド位置との間の少なくとも一部に位置する場合には第1給排路21と第2給排路22とを連通させる連絡路連通状態をとる。したがって、第2スプール51が中立位置からストロークエンド位置に移動する間及びストロークエンド位置から中立位置に移動する間の各々において、第1給排路21と第2給排路22とが互いに連通される連絡路連通状態が存在する。
【0029】
なおここでいう中立位置とは、例えばスプールに作動油から力が加わっていない状態、或いは、スプールに対して第1給排路21内の作動油から加えられる力と第2給排路22内の作動油から加えられる力とが等しい状態でスプールが配置される位置であり、両端部に配置されたスプリングの弾性力によって定まる位置である。またストロークエンド位置とは、スプールがスライド可能な位置のうち、軸方向Daに関して最も端の位置(図1における左右の端位置)である。
【0030】
油圧モータ15の停止動作の初期には、油圧モータ15は慣性によって回転動作を継続し、バキューム作用を発揮して第1給排路21から作動油を吸い込もうとする一方で、油圧ポンプPから第1給排路21への作動油の供給は停止又は低減される。そのため、油圧モータ15が吸い込もうとする作動油の量と、第1給排路21から油圧モータ15に供給できる作動油の量との間に不均衡が生じる。この不均衡によって、油圧モータ15の停止動作時にはキャビテーションが発生しうる。上述の本実施形態のアンチキャビテーション油圧回路10では、油圧モータ15の停止動作の初期において第2スプール51がストロークエンド位置から中立位置に移動する間の少なくとも一部において、アンチキャビテーション弁50は上述の連絡路連通状態をとる。これにより、油圧モータ15から一旦排出された作動油が第1給排路21に導かれて油圧モータ15に再度供給可能となるため、上述の不均衡が抑制され、キャビテーションを有効に低減することができる。
【0031】
[作動]
以下、カウンターバランス弁40及びアンチキャビテーション弁50の具体的な作動について説明する。
【0032】
第1給排路21及び第2給排路22に対する作動油の供給が停止している場合、図1に示すように、第1スプール41及び第2スプール51は中立位置に配置される。この場合、第1給排路21と第2給排路22との間の油路(すなわちカウンターバランス弁40のスプール孔及びアンチキャビテーション弁50のスプール孔)は第1スプール41のランド部43及び第2スプール51のランド部53によって遮断される。また第1給排路21と第1中継路31との間の油路及び第2給排路22と第2中継路32との間の油路の各々(すなわちカウンターバランス弁40のスプール孔)も第1スプール41のランド部43によって遮断される。また第1チェック弁65が第1チェック貫通路26を遮断し、第2チェック弁66が第2チェック貫通路27を遮断する。そのため、油圧モータ15における作動油の供給及び排出は行われず、油圧モータ15は停止状態に置かれる。
【0033】
一方、図示しないコントロール切換弁によって第1給排路21が油圧ポンプPに連通され第2給排路22が排出タンクTに連通されると、油圧ポンプPからの作動油が第1給排路21に供給され、第1給排路21内の作動油の圧力が増大する。これにより図2及び図3に示すように、第1チェック弁65が第1チェック貫通路26を開き、第1給排路21から第1中継路31、第1連通口35及び第1連通油路37を介して油圧モータ15に作動油が供給される。また第1給排路21から固定絞り部44及び貫通路45を介して第1スプリングチャンバ46aに流入した作動油の圧力が増大し、また第1給排路21から切欠部42、第1連絡路61及び固定絞り部54介して第2スプリングチャンバ56aに流入した作動油の圧力が増大する。これにより、第1スプール41及び第2スプール51が一方のストロークエンド位置(図2の右側のストロークエンド位置)に向かって移動する。このとき図2及び図3に示すように、第1スプール41の切欠部42を介して第2中継路32が第2給排路22と連通し、油圧モータ15から第2連通油路38、第2連通口36、第2中継路32及び切欠部42を介して第2給排路22に作動油が排出される。このようにして油圧モータ15は正転駆動される。
【0034】
なお図2及び図3に示す状態では、第2スプール51が右側のストロークエンド位置に配置されており、第1連絡路61と第2連絡路62との間の油路(すなわちアンチキャビテーション弁50のスプール孔)が第2スプール51のランド部53によって遮断されている。この状態では、油圧モータ15を経ることなく第1連絡路61及び第2連絡路62を介して第1給排路21から第2給排路22に直接的に作動油が流出することはなく、油圧モータ15をエネルギー効率良く駆動することができる。
【0035】
ただし、第2スプール51が中立位置からストロークエンド位置に移動する途中において、第1連絡路61及び第2連絡路62が第2スプール51の切欠部52を介して相互に連通し、油圧モータ15を経ることなく第1給排路21から第2給排路22に直接的に作動油が流出する状態が存在する。その状態が維持される時間をできる限り短くするために、アンチキャビテーション弁50の第2スプリング57a、57bのばね定数(弾性率)を十分に小さく設定して第2スプリング57a、57bから第2スプール51に加えられる弾性力を低く抑えることが好ましい。この場合、第1給排路21における作動油の圧力の上昇に応じて、第2スプール51を中立位置からストロークエンド位置にごくわずかな時間で到達させることが可能であり、作動油の第1給排路21から第2給排路22への直接的な流出によるエネルギーロスを実質的に無視できる程度にまで低減することも可能である。加えて、第2スプリング57a、57bのばね定数が非常に小さい場合、第2スプリング57a、57bが第2スプール51を中立位置に戻す力が弱くなる。そのような第2スプリング57a、57bの低復元力(低弾性力)と固定絞り部54の絞り効果とが相俟って、第2スプール51をストロークエンド位置から中立位置に向けてゆっくりと戻すことができ、キャビテーション低減効果を長時間にわたって得ることができる。
【0036】
本実施形態では、アンチキャビテーション弁50の第2スプリング57a、57b(第2弾性体)の弾性率(例えばばね定数)は、カウンターバランス弁40の第1スプリング47a、47b(第1弾性体)の弾性率よりも小さく設定される。この場合、図2に示すように、第1スプール41がストロークエンド位置に至る前に第2スプール51が先行してストロークエンド位置に到達し、そこからある時間経過した後に、図3に示すように第1スプール41もストロークエンド位置に到達する。
【0037】
一方、図示しないコントロール切換弁によって油圧モータ15の停止操作が行われた場合、第1スプール41及び第2スプール51はストロークエンド位置から中立位置に向かって(図4の左側に向かって)徐々に移動し、最終的には図1に示す中立位置に配置され、油圧モータ15における作動油の供給及び排出が停止する。すなわち油圧モータ15の停止操作時には、油圧ポンプPから第1給排路21への作動油の供給が停止されるが、第1給排路21内の作動油の圧力は時間をかけて徐々に低下する。そのため、第1スプール41及び第2スプール51は、第1給排路21内の作動油の圧力の低下及び第1スプリング47a、47b及び第2スプリング57a、57bからの弾性力に応じて、ストロークエンド位置から中立位置に向かって徐々に移動する。このようにして第2スプール51がストロークエンド位置から中立位置に戻る間の途中において、第1連絡路61及び第2連絡路62は第2スプール51の切欠部52を介して互いに連通され、第2連絡路62から第1連絡路61に作動油が送られて、キャビテーションが低減される。
【0038】
すなわち油圧モータ15の停止操作後も暫くの間は、油圧モータ15は慣性によって減速されながらも回転を続行し、第1給排路21から油を吸い込み続けようとする。その一方で、油圧モータ15から排出された作動油は、連通路面積が徐々に小さくなる第1スプール41の切欠部42を介して第2中継路32から第2給排路22及び第2連絡路62へ流入する。第2連絡路62に流入した作動油は、アンチキャビテーション弁50の第2スプール51の切欠部52を介して第1連絡路61に流入し、その後、カウンターバランス弁40の切欠部42を介して第1給排路21に流入する。これにより油圧モータ15が第1給排路21から吸い込もうとする作動油の量と、第1給排路21から油圧モータ15に供給できる作動油の量との間の不均衡を抑え、キャビテーションを低減することができる。
【0039】
なお、上述の説明は主として正転駆動モードに関するものであるが、当業者であれば、逆転駆動モードの場合にも同様の作用効果がもたらされうることを理解できる。すなわち、油圧ポンプPからの作動油が第2給排路22に供給されるとともに第1給排路21からの作動油が排出タンクTに排出される場合、作動油の流れ、油圧モータ15の回転方向、カウンターバランス弁40及びアンチキャビテーション弁50の作動方向、及び第1チェック貫通路26及び第2チェック貫通路27の挙動が、上述の正転駆動モードとは逆になるが、基本的には正転駆動モードと同様の挙動が示される。
【0040】
[回路図]
図5は、本発明の一実施形態に係る油圧回路90の一例を示す回路図である。なお図5は、主として図1~4に示すアンチキャビテーション油圧回路10の作用面を反映した状態を示しており、図5に示すアンチキャビテーション油圧回路10と図1~4に示すアンチキャビテーション油圧回路10とは必ずしも構造的に一致するものではない。
【0041】
図5は、カウンターバランス弁40の第1スプール41及びアンチキャビテーション弁50の第2スプール51が中立位置(図1参照)に配置されている状態を示し、カウンターバランス弁40では符合「40b」で示されるブロックが選択され、アンチキャビテーション弁50では符合「50c」で示されるブロックが選択されている。
【0042】
一方、第1スプール41が中立位置以外のスライド位置に配置される場合、正転駆動モードでは符合「40a」で示されるブロックが選択され、逆転駆動モードでは符合「40c」で示されるブロックが選択される。またアンチキャビテーション弁50では、正転駆動モードにおいて第2スプール51がストロークエンド位置に配置されている場合には符合「50a」で示されるブロックが選択され、正転駆動モードにおいて第2スプール51がストロークエンド位置と中立位置との間に配置されている場合(特に上述の連絡路連通状態の間)は符合「50b」で示されるブロックが選択され、逆転駆動モードにおいて第2スプール51がストロークエンド位置に配置されている場合には符合「50e」で示されるブロックが選択され、逆転駆動モードにおいて第2スプール51がストロークエンド位置と中立位置との間に配置されている場合(特に上述の連絡路連通状態の間)は符合「50d」で示されるブロックが選択される。
【0043】
なお図5に示す油圧回路90は、上述のアンチキャビテーション油圧回路10に加えて、高圧選択弁91、ブレーキ装置92、切換弁93及び切換シリンダ94を更に備える。高圧選択弁91は、第1給排路21及び第2給排路22のうちの高圧側油路を選択して切換弁93に向けて作動油を流す。切換弁93は、パイロット圧源Pからのパイロット圧油に応じて油路の切り換えを行い、高圧選択弁91からの作動油の切換シリンダ94への供給の有無を切り換える。切換シリンダ94は、切換弁93からの作動油の供給の有無に応じて油圧モータ15を高速度モード又は低速度モードに切り換える。また油圧モータ15の停止時のブレーキ装置92が油圧モータ15に接続されている。また油圧モータ15はドレーンD1、D2に接続されている。
【0044】
以上説明したように本実施形態によれば、簡素な構成を有するアンチキャビテーション弁50によってキャビテーションを効果的に低減できる。また、第1給排路21、第2給排路22及びカウンターバランス弁40が第1ブロック体11に形成される一方で、アンチキャビテーション弁50が第2ブロック体12に形成される。そのため、第1連絡路61及び第2連絡路62を形成する等の比較的簡単な加工を第1ブロック体11に加え、第1ブロック体11に対して第2ブロック体12を取り付けるだけで、第1ブロック体11に含まれる油圧回路に対してキャビテーション低減機能を付加することができる。したがってユーザは、油圧回路の製造工程において、第1ブロック体11に含まれる油圧回路に対してキャビテーション低減機能を付加するか否かを簡単に選択することが可能である。
【0045】
[第1変形例]
図6は、本発明の一変形例に係るアンチキャビテーション油圧回路10を含む油圧回路90の一例を示す回路図である。本変形例の油圧回路90は、上述の図5に示す油圧回路90と基本的に同じ回路構成を有するが、固定絞り部54の代わりに第1スローリターンチェック弁71及び第2スローリターンチェック弁72が設けられている。第1スローリターンチェック弁71は、第1給排路21から第2スプール51に向かう作動油にもたらす抵抗よりも、第2スプール51から第1給排路21に向かう作動油にもたらす抵抗の方が大きい。一方、第2スローリターンチェック弁72は、第2給排路22から第2スプール51に向かう作動油にもたらす抵抗よりも、第2スプール51から第2給排路22に向かう作動油にもたらす抵抗の方が大きい。
【0046】
本変形例によれば、第2スプール51を中立位置からストロークエンド位置に移動させる場合には、第1スローリターンチェック弁71及び第2スローリターンチェック弁72によって作動油にもたらされる抵抗が比較的小さいため、第2スプール51は素早く移動する。一方、第2スプール51をストロークエンド位置から中立位置に移動させる場合には、第1スローリターンチェック弁71及び第2スローリターンチェック弁72によって作動油にもたらされる抵抗が比較的大きいため、第2スプール51はゆっくりと移動する。この構成を有するアンチキャビテーション油圧回路10によれば、連絡路連通状態における第1給排路21及び第2給排路22の相互間の直接的な連通によるエネルギーロスを低減しつつ、キャビテーションの低減の効果を長時間にわたって確保することができる。
【0047】
なお第1スローリターンチェック弁71及び第2スローリターンチェック弁72の具体的な構成は特に限定されず、既知のスローリターンチェック弁を用いることも可能である。また第1スローリターンチェック弁71及び第2スローリターンチェック弁72の設置位置も特に限定されず、第1給排路21から第2スプール51(例えば第2スプリングチャンバ56a)に至る油路のうちの適当な箇所に第1スローリターンチェック弁71を配置することが可能であり、また第2給排路22から第2スプール51(例えば第2スプリングチャンバ56b)に至る油路のうちの適当な箇所に第2スローリターンチェック弁72を配置することが可能である。
【0048】
[他の変形例]
例えば、第1スプール41の切欠部42及びランド部43の位置、幅及び形状等や、第2スプール51の切欠部52及びランド部53の位置、幅及び形状等は、適宜変更が可能である。特に第2スプール51の切欠部52及びランド部53の位置、幅及び形状等を変えることによって、第1連絡路61と第2連絡路62との間の連通の状態(すなわち第1給排路21と第2給排路22との間の連通の状態)の調整も可能である。またカウンターバランス弁40の第1スプリング47a、47bの弾性特性、及びアンチキャビテーション弁50の第2スプリング57a、57bの弾性特性を調整することも可能である。
【0049】
図7は、第1給排路21内の作動油の圧力P1と第2給排路22内の作動油の圧力P2との差ΔP(=P1-P2)と、アンチキャビテーション弁50の状態との関係を示す概念図である。図7の横軸はΔPを示し、「0」で示される位置(すなわち中立位置)よりも右側はΔPが正の値(+)であることを示し、「0」で示される位置よりも左側はΔPが負の値(-)であることを示す。図7に示すように、ΔPが正であり第1の差圧値d1よりも大きい場合、アンチキャビテーション弁50は連絡路遮断状態をとる。またΔPが正であり第1の差圧値d1以下であって第2の差圧値d2よりも大きい場合、アンチキャビテーション弁50は連絡路連通状態をとる。またΔPが負であり第4の差圧値d4よりも小さい場合、アンチキャビテーション弁50は連絡路遮断状態をとる。またΔPが負であり第4の差圧値d4以上であって第3の差圧値d3よりも小さい場合、アンチキャビテーション弁50は連絡路連通状態をとる。そして、ΔPが第2の差圧値d2以下であって第3の差圧値d3以上の場合、アンチキャビテーション弁50は連絡路遮断状態をとる。
【0050】
図7に示す第1~第4の差圧値d1~d4の具体的な数値は、第2スプール51の形状や第2スプリング57a、57bのばね定数を調整することによって、適宜設定可能である。例えば、第2の差圧値d2の絶対値を第3の差圧値d3の絶対値と同じ又は異なるように設定することが可能であり、特に第2の差圧値d2及び第3の差圧値d3を「0」若しくはその近傍の値に設定することも可能である。また第1の差圧値d1の絶対値を第4の差圧値d4の絶対値と同じ又は異なるように設定することも可能である。
【0051】
上述の構成要素以外の構成要素を含む形態も、本発明の実施形態に含まれうる。また、上述の構成要素のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれうる。また、本発明のある実施形態に含まれる一部の構成要素と、本発明の他の実施形態に含まれる一部の構成要素とを含む形態も、本発明の実施形態に含まれうる。したがって、上述の実施形態及び変形例、及び上述以外の本発明の実施形態の各々に含まれる構成要素同士が組み合わされてもよく、そのような組み合わせに係る形態も本発明の実施形態に含まれうる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果が発揮されうる。このように、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲、明細書、要約書及び図面に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…アンチキャビテーション油圧回路、11…第1ブロック体、12…第2ブロック体、15…油圧モータ、21…第1給排路、22…第2給排路、23…第1接続ポート、24…第2接続ポート、26…第1チェック貫通路、27…第2チェック貫通路、31…第1中継路、32…第2中継路、35…第1連通口、36…第2連通口、37…第1連通油路、38…第2連通油路、40…カウンターバランス弁、41…第1スプール、42…切欠部、43…ランド部、44…固定絞り部、45…貫通路、46a…第1スプリングチャンバ、46b…第1スプリングチャンバ、47a…第1スプリング、47b…第1スプリング、50…アンチキャビテーション弁、51…第2スプール、52…切欠部、53…ランド部、54…固定絞り部、56a…第2スプリングチャンバ、56b…第2スプリングチャンバ、57a…第2スプリング、57b…第2スプリング、61…第1連絡路、62…第2連絡路、65…第1チェック弁、66…第2チェック弁、71…第1スローリターンチェック弁、72…第2スローリターンチェック弁、90…油圧回路、91…高圧選択弁、92…ブレーキ装置、93…切換弁、94…切換シリンダ、P…油圧ポンプ、T…排出タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7