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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】加熱コイル及び加熱方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/10 20060101AFI20220105BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H05B6/10 381
H05B6/36 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017129844
(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2019012667
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 智一
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-039479(JP,A)
【文献】特開2005-011625(JP,A)
【文献】特開2005-235653(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168639(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/10
H05B 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを誘導加熱する加熱コイルであって、
電源に接続されるリード部と、
前記リード部に取り付けられる少なくとも一つの加熱部と、
を備え、
前記加熱部は、
互いに平行に延び且つ延在方向の一方の第1端部同士が接続される一対の導体を含み、前記ワークの表面に沿って配置される表側導体部と、
互いに平行に延び且つ延在方向の一方の第1端部同士が接続される一対の導体を含み、前記ワークの裏面に沿って配置される裏側導体部と、
前記表側導体部の前記一対の導体から選ばれる一方の第2導体の第2端部、及び前記裏側導体部の前記一対の導体から選ばれる一方の第3導体の第2端部に着脱可能に接続され、前記表側導体部と前記裏側導体部とを連結する連結導体と、
を有し、
前記表側導体部の前記一対の導体のうち他方の第1導体の第2端部、及び前記裏側導体部の前記一対の導体のうち他方の第4導体の第2端部が、着脱可能に前記リード部に取り付けられ
前記第1導体の第1端部と前記第2導体の第1端部とが着脱可能に接続され、且つ前記第2導体の第1端部における接続箇所が、前記第2導体の延在方向に変更可能とされており、前記第2導体の第1端部における接続箇所の変更に対応して、前記第1導体が、前記第2導体の延在方向にスライド可能に前記リード部に取り付けられ、
前記第3導体の第1端部と前記第4導体の第1端部とが着脱可能に接続され、且つ前記第3導体の第1端部における接続箇所が、前記第3導体の延在方向に変更可能とされており、前記第3導体の第1端部における接続箇所の変更に対応して、前記第4導体が、前記第3導体の延在方向にスライド可能に前記リード部に取り付けられている、
加熱コイル。
【請求項2】
請求項1記載の加熱コイルであって、
前記表側導体部は、前記第1導体の前記第2端部と前記リード部との間に着脱可能に固定される導電性のスペーサをさらに含む加熱コイル。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加熱コイルであって、
前記裏側導体部は、前記第4導体の前記第2端部と前記リード部との間に着脱可能に固定される導電性のスペーサをさらに含む加熱コイル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載の加熱コイルであって、
前記第2導体の前記第1端部には、前記第2導体の延在方向に間隔をあけて、複数の第1導体接続部が設けられており、
前記第1導体の前記第1端部は、前記複数の第1導体接続部から選ばれる一つの第1導体接続部に着脱可能に接続され、
前記第1導体の前記第2端部は、前記第1導体の延在方向にスライド可能に前記リード部に取り付けられる加熱コイル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載の加熱コイルであって、
前記第3導体の前記第1端部には、前記第3導体の延在方向に間隔をあけて、複数の第4導体接続部が設けられており、
前記第4導体の前記第1端部は、前記複数の第4導体接続部から選ばれる一つの第4導体接続部に着脱可能に接続され、
前記第4導体の前記第2端部は、前記第4導体の延在方向にスライド可能に前記リード部に取り付けられる加熱コイル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の加熱コイルであって、
複数の前記加熱部を備え、
前記複数の加熱部は、前記導体の前記延在方向に対して直交方向に間隔をあけて配置され、前記リード部に取り付けられる加熱コイル。
【請求項7】
請求項6記載の加熱コイルであって、
前記複数の加熱部は、前記直交方向に所定ピッチで位置可変に、前記リード部に取り付けられる加熱コイル。
【請求項8】
請求項6又は7記載の加熱コイルであって、
前記複数の加熱部それぞれの前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体、及び前記第4導体の位置関係が、当該複数の加熱部間で同一である加熱コイル。
【請求項9】
請求項6又は7記載の加熱コイルであって、
前記複数の加熱部のうち隣り合う二つの加熱部それぞれの前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体、及び前記第4導体の位置関係が、当該二つの加熱部間で対称である加熱コイル。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項記載の加熱コイルを用いて板状のワークを誘導加熱する加熱方法であって、
前記ワークの表面及び裏面と平行、且つ前記加熱コイルの前記加熱部の前記表側導体部及び前記裏側導体部それぞれの一対の導体の延在方向と直交する方向に、前記加熱コイルと前記ワークとを相対的に前後に揺動させながら前記ワークを誘導加熱する加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークを誘導加熱する加熱コイル及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板状のワークの誘導加熱に用いられる加熱コイルとして、ソレノイド方式の加熱コイルと、トランスバース方式の加熱コイルと、が知られている。
【0003】
ソレノイド方式の加熱コイルは、ワークの表面に対して略平行な交番磁界を発生させる。この交番磁界によってワークに誘起される誘導電流は、ワークの幅方向の両端部間をワークの断面内で周回するように流れる。
【0004】
一方、トランスバース方式の加熱コイルは、ワークの表面に対して略垂直な交番磁界を発生させ、この交番磁界によってワークに誘起される誘導電流は、ワークの幅方向の両端部間をワークの表面に沿って周回するように流れる。
【0005】
一般に、上記の誘導電流の流れかたの相違に起因して、ソレノイド方式の加熱コイルによって誘導加熱されたワークの温度プロファイルは比較的均一となり、一方、トランスバース方式の加熱コイルによって誘導加熱されたワークの温度プロファイルは、ワークの幅方向の両端部の温度が相対的に上昇する。
【0006】
特許文献1に記載された加熱コイルは、トランスバース方式の加熱コイルであり、ワークの表面に沿って配置され且つワークの幅方向にワークを横断して配置される一対の導体と、一対の導体の一端部同士を連結するクランプとを備え、一対の導体とクランプとによって、電流経路となるループを形成している。そして、一方の導体が他方の導体に対してワークの幅方向に移動可能となっており、ワークの幅に応じて、幅方向のループの長さが変更されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公平7-7704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ワークの形状は様々であり、ワークの加熱に求められる温度プロファイルも様々である。通常、ワーク毎に加熱コイルの試作が繰り返され、所望の温度プロファイルが達成されるが、試作にコストが嵩む。特許文献1に記載された加熱コイルでは、電流経路となるループの長さがワークの幅に応じて変更可能であるが、得られる温度プロファイルは、トランスバース方式の加熱コイルによって得られる温度プロファイルの域を出ない。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、ワークの温度プロファイルを変更可能な加熱コイル及び加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の加熱コイルは、板状のワークを誘導加熱する加熱コイルであって、電源に接続されるリード部と、上記リード部に取り付けられる少なくとも一つの加熱部と、を備え、上記加熱部は、互いに平行に延び且つ延在方向の一方の第1端部同士が接続される一対の導体を含み、上記ワークの表面に沿って配置される表側導体部と、互いに平行に延び且つ延在方向の一方の第1端部同士が接続される一対の導体を含み、上記ワークの裏面に沿って配置される裏側導体部と、上記表側導体部の上記一対の導体から選ばれる一方の第2導体の第2端部、及び上記裏側導体部の上記一対の導体から選ばれる一方の第3導体の第2端部に着脱可能に接続され、上記表側導体部と上記裏側導体部とを連結する連結導体と、を有し、上記表側導体部の上記一対の導体のうち他方の第1導体の第2端部、及び上記裏側導体部の上記一対の導体のうち他方の第4導体の第2端部が、着脱可能に上記リード部に取り付けられる。
【0011】
また、本発明の一態様の加熱方法は、上記加熱コイルを用いて板状のワークを誘導加熱する加熱方法であって、上記ワークの表面及び裏面と平行、且つ上記加熱コイルの上記加熱部の上記表側導体部及び上記裏側導体部それぞれの一対の導体の延在方向と直交する方向に、上記加熱コイルと上記ワークとを相対的に前後に揺動させながら上記ワークを誘導加熱する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワークの加熱温度プロファイルを変更可能な加熱コイル及び加熱方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態を説明するための、加熱コイルの一例の平面図である。
図2図1の加熱コイルの側面図である。
図3図1の加熱コイルの模式図である。
図4図1の加熱コイルが発生させる交番磁界の一例の模式図である。
図5図1の加熱コイルによって誘導加熱されたワークの温度プロファイルの一例のグラフである。
図6図1の加熱コイルの調整例を示す平面図である。
図7図1の加熱コイルの調整例を示す側面図である。
図8図1の加熱部の導体が入れ替えられた加熱コイルの平面図である。
図9図8の加熱コイルの側面図である。
図10図8の加熱コイルの模式図である。
図11図8の加熱コイルが発生させる交番磁界の一例の模式図である。
図12図8の加熱コイルによって誘導加熱されたワークの温度プロファイルの一例のグラフである。
図13】本発明の実施形態を説明するための、加熱コイルの他の例の平面図である。
図14図13の加熱コイルの模式図である。
図15図13の加熱コイルが発生させる交番磁界の一例の模式図である。
図16図13の加熱コイルによって誘導加熱されたワークの温度プロファイルの一例のグラフである。
図17図13の一部の加熱部の導体が入れ替えられた加熱コイルの模式図である。
図18図17の加熱コイルが発生させる交番磁界の一例の模式図である。
図19】本発明の実施形態を説明するための、加熱コイルの他の例の模式図である。
図20図19の加熱コイルが発生させる交番磁界の一例の模式図である。
図21図19の加熱コイルによって誘導加熱されたワークの温度プロファイルの一例のグラフである。
図22図19の一部の加熱部の導体が入れ替えられた加熱コイルの模式図である。
図23図22の加熱コイルが発生させる交番磁界の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図3は、本発明の実施形態を説明するための、加熱コイルの一例を示す。
【0015】
図1から図3に示す加熱コイル1は、板状のワークWの誘導加熱に用いられる加熱コイルである。加熱コイル1は、交流電源2に接続される一対のリード部3、4と、一対のリード部3、4に取り付けられる加熱部5Aとを備える。そして、加熱部5Aは、ワークWの表面に沿って配置される表側導体部10と、ワークWの裏面に沿って配置される裏側導体部11と、表側導体部10と裏側導体部11とを連結する連結導体40とを有する。
【0016】
表側導体部10は、一対の導体20、21を含む。一対の導体20、21は、ワークWの幅方向に延びて配置されている。そして、導体20の延在方向の両端部のうち、ワークWの幅方向の一方の端部Wa側に配置されている第1端部20aと、導体21の延在方向の両端部のうち、ワークWの端部Wa側に配置されている第1端部21aとは互いに接続されている。
【0017】
裏側導体部11は、一対の導体30、31を含む。一対の導体30、31は、ワークWの幅方向に延びて配置されている。そして、導体30の延在方向の両端部のうち、ワークWの端部Wa側に配置されている第1端部30aと、導体31の延在方向の両端部のうち、ワークWの端部Wa側に配置されている第1端部31aとは互いに接続されている。
【0018】
連結導体40は、表側導体部10の一対の導体から選ばれる一方の導体の、ワークWの端部Wb側に配置されている第2端部と、裏側導体部11の一対の導体から選ばれる一方の導体の、ワークWの端部Wb側に配置されている第2端部とに接続され、これら二つの導体を互いに連結する。以下では、表側導体部10の一対の導体のうち連結導体40が接続される一方の導体を第2導体といい、他方の導体を第1導体という。また、裏側導体部11の一対の導体のうち連結導体40が接続される一方の導体を第3導体といい、他方の導体を第4導体という。
【0019】
本例では、連結導体40は、表側導体部10の導体21の第2端部21b及び裏側導体部11の導体31の第2端部31bの各端部に接続され、導体21と導体31とを連結している。したがって、表側導体部10の導体20が第1導体であり、表側導体部10の導体21が第2導体であり、裏側導体部11の導体31が第3導体であり、裏側導体部11の導体30が第4導体である。そして、第1導体20の第2端部20bがリード部3に取り付けられ、第4導体30の第2端部30bがリード部4に取り付けられている。
【0020】
表側導体部10の第2導体21は、第1端部21aから第2端部21bに亘って直線状に形成されている。この第2導体21に対して、表側導体部10の第1導体20の第2端部20bが平行に配置され、第1導体20の第1端部20aは、第2端部20bに対して略直角に曲げられており、第1導体20は、全体として略L字状に形成されている。この第1導体20の第1端部20aと第2導体21の第1端部21aとが互いに接続されてなる表側導体部10は、電流経路となる略U字状のループを形成する。
【0021】
リード部3に取り付けられる表側導体部10の第1導体20の第2端部20bには、スリット50が形成されたタブ51が設けられている。スリット50にボルト52が挿し込まれ、このボルト52によってタブ51がリード部3に締結されることにより、第1導体20はリード部3に着脱可能に取り付けられている。
【0022】
また、裏側導体部11の第3導体31は、第1端部31aから第2端部31bに亘って直線状に形成されている。この第3導体31に対して、裏側導体部11の第4導体30の第2端部30bが平行に配置され、第4導体30の第1端部30aは、第2端部30bに対して略直角に曲げられており、第4導体30は、全体として略L字状に形成されている。第3導体31の第1端部31aと第4導体30の第1端部30aとが互いに接続されてなる裏側導体部11もまた、電流経路となる略U字状のループを形成する。
【0023】
リード部4に取り付けられる裏側導体部11の第4導体30の第2端部30bには、スリット60が形成されたタブ61が設けられている。スリット60にボルト62が挿し込まれ、このボルト62によってタブ61がリード部4に締結されることにより、第4導体30はリード部4に着脱可能に取り付けられている。
【0024】
そして、リード部3に取り付けられる表側導体部10の第1導体20と、連結導体40に接続される裏側導体部11の第3導体31とが、ワークWを挟んで対向して配置されており、連結導体40に接続される表側導体部10の第2導体21と、リード部4に取り付けられる裏側導体部11の第4導体30とが、ワークWを挟んで対向して配置されている。
【0025】
第1導体20、第2導体21、第3導体31、第4導体30の以上の位置関係において、連結導体40は、略S字状に形成され、表側導体部10の第2導体21の第2端部21b及び裏側導体部11の第3導体31の第2端部31bの各端部に着脱可能に接続され、第2導体21と第3導体31とを分離可能に連結している。
【0026】
第2導体21の第2端部21bにはボルト70が設けられており、連結導体40の一方の端部がボルト70によって第2導体21の第2端部21bに締結されることにより、連結導体40は第2導体21の第2端部21bに着脱可能に接続されている。同様に、第3導体31の第2端部31bにはボルト71が設けられており、連結導体40の他方の端部がボルト71によって第3導体31の第2端部31bに締結されることにより、連結導体40は第3導体31の第2端部31bに着脱可能に接続されている。
【0027】
さらに本例では、表側導体部10の第1導体20の第1端部20aと第2導体21の第1端部21aとが着脱可能に接続され、且つ第2導体21の第1端部21aにおける接続箇所が、第2導体21の延在方向、すなわちワークWの幅方向に変更可能とされている。そして、第2導体21の第1端部21aにおける接続箇所の変更に対応して、第1導体20が、ワークWの幅方向にスライド可能にリード部3に取り付けられている。これにより、表側導体部10が形成する電流経路としてのループの長さL1が、ワークWの幅方向に可変となっている。
【0028】
具体的には、第2導体21の第1端部21aには、複数のボルト(第1導体接続部)53が設けられており、複数のボルト53から選択される一つのボルト53によって第1導体20の第1端部20aが第2導体21の第1端部21aに締結されることにより、第1導体20の第1端部20aと第2導体21の第1端部21aとは着脱可能に互いに接続されている。そして、第1導体20の第1端部20aを締結するボルト53が変更されることにより、第2導体21の第1端部21aにおける接続箇所が、第2導体21の延在方向、すなわちワークWの幅方向に変更される。また、第1導体20の第2端部20bに設けられているタブ51のスリット50が、第2端部20bの延在方向、すなわちワークWの幅方向に延びて形成されていることにより、第1導体20は、ワークWの幅方向にスライド可能にリード部3に取り付けられている。
【0029】
同様に、裏側導体部11の第3導体31の第1端部31aと第4導体30の第1端部30aもまた着脱可能に接続され、且つ第3導体31の第1端部31aにおける接続箇所が、第3導体31の延在方向、すなわちワークWの幅方向に変更可能とされている。そして、第3導体31の第1端部31aにおける接続箇所の変更に対応して、第4導体30が、ワークWの幅方向にスライド可能にリード部4に取り付けられている。これにより、裏側導体部11が形成する電流経路としてのループの長さL2が、ワークWの幅方向に可変となる。
【0030】
具体的には、第3導体31の第1端部31aには、複数のボルト(第4導体接続部)63が設けられており、複数のボルト63から選択される一つのボルト63によって第4導体30の第1端部30aが第3導体31の第1端部31aに締結されることにより、第3導体31の第1端部31aと第4導体30の第1端部30aとは着脱可能に互いに接続されている。そして、第4導体30の第1端部30aを締結するボルト63が変更されることにより、第3導体31の第1端部31aにおける接続箇所が、第3導体31の延在方向、すなわちワークWの幅方向に変更される。また、第4導体30の第2端部30bに設けられているタブ61のスリット60が、第2端部30bの延在方向、すなわちワークWの幅方向に延びて形成されていることにより、第4導体30は、ワークWの幅方向にスライド可能にリード部4に取り付けられている。
【0031】
第1導体20、第2導体21、第3導体31、第4導体30、及び連結導体40の各導体は、銅等の金属材料からなる筒材からなる。各導体の内部は、冷却媒体が流通される流路とされるが、本例では、各導体が互いに着脱可能に接続されるため、各導体の内部の流路は導体毎に独立して構成されている。このため、各導体には、冷却媒体の供給口及び排出口(いずれも不図示)が設けられている。
【0032】
図4は、第1導体20、第2導体21、第3導体31、第4導体30、及び連結導体40の導体セットによって構成される加熱部5Aが発生させる交番磁界の一例を示し、図5は、図4の交番磁界によって誘導加熱されたワークWの温度プロファイルの一例を示す。なお、図5において、温度はグレースケールで示されており、暗い程に温度が高いものとする。
【0033】
第1導体20、第2導体21、第3導体31、第4導体30の上記の位置関係において、加熱部5Aは、磁束線がワークWの表面及び裏面に対して略垂直に交わる交番磁界Φ1を発生させる。この交番磁界Φ1によってワークWに誘起される誘導電流I1は、第1導体20、第2導体21、第3導体31、及び第4導体30に沿って、ワークWの表面及び裏面を周回するように流れる。すなわち、加熱部5Aはトランスバース方式の加熱部と言うことができる。この加熱部5Aによって誘導加熱されたワークWの温度プロファイルは、幅方向の両端部Wa、Wbの温度が幅方向の中央部の温度に比べて高いものとなる。
【0034】
図5に示した温度プロファイルは、加熱部5AとワークWとの位置関係が固定の場合の温度プロファイルであるが、ワークWの長手方向、換言すれば、ワークWの表面及び裏面と平行、且つ加熱部5Aの第1導体20、第2導体21、第3導体31、第4導体30の延在方向と直交する方向に加熱コイル1(加熱部5A)とワークWとを相対的に前後に揺動させながらワークWを誘導加熱してもよい。この場合に、上記温度プロファイルにて加熱される加熱域が、揺動ストロークに応じて、ワークWの長手方向に拡大される。
【0035】
なお、本例では、上記のとおり、表側導体部10の第2導体21の第1端部21aにおける第1導体20との接続箇所がワークWの幅方向に変更可能とされ、且つ第1導体20がワークWの幅方向にスライド可能にリード部3に取り付けられている。同様に、裏側導体部11の第3導体31の第1端部31aにおける第4導体30との接続箇所がワークWの幅方向に変更可能とされ、且つ第4導体30がワークWの幅方向にスライド可能にリード部4に取り付けられている。これにより、図6に示すように、表側導体部10が形成する電流経路としてのループの長さL1及び裏側導体部11が形成する電流経路としてのループの長さL2をワークWの幅に合わせて変更でき、加熱コイル1を種々の幅のワークWに対して適用可能である。
【0036】
また、図7に示すように、リード部3と、リード部3に着脱可能に取り付けられる第1導体20との間、及び/又はリード部4と、リード部4に着脱可能に取り付けられる第4導体30との間に、導電性のスペーサ12を介在させることによって、表側導体部10と裏側導体部11との間隔Gを、ワークWの厚みに応じて変更でき、併せて表側導体部10と裏側導体部11との間隔Gに応じた長さの連結導体40を用いることにより、加熱コイル1を種々の厚みのワークWに対して適用可能である。
【0037】
図8から図10は、加熱部の導体が入れ替えられた加熱コイル1を示す。
【0038】
図8から図10に示す加熱コイル1の加熱部5Bは、一対の導体20、21を含む表側導体部10と、一対の導体32、33を含む裏側導体部11と、表側導体部10と裏側導体部11とを連結する連結導体41とを備える。すなわち、図7及び図8に示す加熱部5Bは、図1及び図2に示した加熱部5Aに対して、裏側導体部11を構成する一対の導体と、表側導体部10と裏側導体部11とを連結する連結導体とが入れ替えられている。
【0039】
裏側導体部11の一対の導体32、33は、ワークの幅方向に延びて配置されている。そして、導体32の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部32aと、導体33の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部33aとは、互いに着脱可能に接続されている。
【0040】
連結導体41は、表側導体部10の導体21の第2端部21bと、裏側導体部11の導体33の第2端部33bとに着脱可能に接続され、導体21と導体33とを分離可能に連結している。したがって、加熱部5Bにおいては、表側導体部10の導体20が第1導体であり、表側導体部10の導体21が第2導体であり、裏側導体部11の導体33が第3導体であり、裏側導体部11の導体32が第4導体である。第1導体20の第2端部20bは、リード部3に着脱可能に取り付けられ、また、第4導体32の第2端部32bは、リード部4に着脱可能に取り付けられている。
【0041】
裏側導体部11の第3導体33は、第1端部33aから第2端部33bに亘って直線状に形成されている。この第3導体33に対して、裏側導体部11の第4導体32の第2端部32bが平行に配置され、第4導体32の第1端部32aは、第2端部32bに対して略直角に曲げられており、第4導体32は、全体として略L字状に形成されている。第3導体33の第1端部33aと第4導体32の第1端部32aとが互いに接続されてなる裏側導体部11は、電流経路となる略U字状のループを形成する。
【0042】
そして、リード部3に取り付けられる表側導体部10の第1導体20と、リード部4に取り付けられる裏側導体部11の第4導体32とが、ワークWを挟んで対向して配置されており、連結導体41に接続される表側導体部10の第2導体21と、連結導体41に接続される裏側導体部11の第3導体33とが、ワークWを挟んで対向して配置されている。
【0043】
第1導体20、第2導体21、第3導体33、第4導体32の以上の位置関係において、連結導体41は、直線状に形成され、表側導体部10の第2導体21の第2端部21bと、裏側導体部11の第3導体33の第2端部33bとを連結している。
【0044】
図11は、第1導体20、第2導体21、第3導体33、第4導体32、及び連結導体41の導体セットによって構成される加熱部5Bが発生させる交番磁界の一例を示し、図12は、図11の交番磁界によって誘導加熱されたワークWの温度プロファイルの一例を示す。
【0045】
第1導体20、第2導体21、第3導体33、第4導体32の上記の位置関係において、加熱部5Bは、磁束線がワークWの長手方向に垂直な断面に対して略垂直に交わる交番磁界Φ2を発生させ、この交番磁界Φ2によってワークWに誘起される誘導電流I2は、第1導体20、第2導体21、第3導体33、第4導体32に沿って、ワークWの断面を周回するように流れる。すなわち、加熱部5Bはソレノイド方式の加熱部と言うことができる。この加熱部5Bによって誘導加熱されたワークWの温度プロファイルは、図5に示した温度プロファイルに比べて、ワークWの幅方向に均一化されたものとなる。
【0046】
図12に示した温度プロファイルは、加熱部5BとワークWとの位置関係が固定の場合の温度プロファイルであるが、ワークWの長手方向に加熱コイル1(加熱部5B)とワークWとを相対的に前後に揺動させながらワークWを誘導加熱してもよい。この場合に、上記温度プロファイルにて加熱される加熱域が、揺動ストロークに応じて、ワークWの長手方向に拡大される。
【0047】
なお、加熱部5Bにおいても、図1から図3に示した加熱部5Aと同様にして、表側導体部10が形成する電流経路としてのループの長さL1及び裏側導体部11が形成する電流経路としてのループの長さL2を、ワークWの幅に合わせて変更でき、また、導電性のスペーサ12(図7参照)を用いて、表側導体部10と裏側導体部11との間隔Gを、ワークWの厚みに合わせて変更できる。
【0048】
このように、ワークWの表面に沿う電流経路としての略U字状のループを形成している表側導体部10の一対の導体から選ばれる一方の第2導体21と、ワークWの裏面に沿う電流経路としての略U字状のループを形成している裏側導体部11の一対の導体から選ばれる一方の第3導体31(33)とを連結導体40(41)によって分離可能に連結し、且つ、表側導体部10の一対の導体のうち他方の第1導体20を着脱可能にリード部3に取り付け、裏側導体部11の一対の導体のうち他方の第4導体30(32)を、着脱可能にリード部4に取り付けることにより、加熱部の構成をトランスバース方式の加熱部5Aとソレノイド方式の加熱部5Bとで容易に変更することができる。これにより、ワークWの温度プロファイルを変更でき、所望の温度プロファイルを達成する加熱コイルの試作コストを低減できる。
【0049】
図13及び図14は、本発明の実施形態を説明するための、加熱コイルの他の例を示す。
【0050】
図13及び図14に示す加熱コイル101は、板状のワークWの誘導加熱に用いられる加熱コイルである。加熱コイル101は、交流電源2に接続される一対のリード部103、104と、一対のリード部103、104に取り付けられる複数の加熱部とを備え、図示の例では、4つの加熱部5AがワークWの長手方向に間隔をあけて配置され、リード部103、104にそれぞれ取り付けられている。すなわち、4つの加熱部それぞれの第1導体、第2導体、第3導体、及び第4導体の位置関係が、これら4つの加熱部間で同一となっている。
【0051】
本例では、リード部103には、ワークWの長手方向に所定ピッチで間隔をあけて複数のタップ孔55が設けられている。同様に、リード部104には、ワークWの長手方向に所定ピッチで間隔をあけて複数のタップ孔65が設けられている。各加熱部5Aの第1導体20をリード部103に締結するボルト52が、複数のタップ孔55から選択される適宜な一つのタップ孔55に固定され、各加熱部5Aの第4導体30をリード部104に締結するボルト62が、複数のタップ孔65から選択される適宜な一つのタップ孔65に固定されることにより、各加熱部5Aは、所定ピッチで位置可変に、リード部103、104に取り付けられる。
【0052】
図15は、4つの加熱部5AがワークWの長手方向に並ぶ加熱コイル101か発生させる交番磁界の一例を示し、図16は、図15の交番磁界によって誘導加熱されたワークWの温度プロファイルの一例を示す。
【0053】
各加熱部5Aは、上記のとおり、磁束線がワークWの表面及び裏面に対して略垂直に交わる交番磁界Φ1を発生させ、この交番磁界Φ1によってワークWに誘起される誘導電流は、各加熱部5Aの第1導体20、第2導体21、第3導体31、第4導体30に沿って、ワークWの表面及び裏面を周回するように流れる。
【0054】
ここで、4つの加熱部がいずれも加熱部5Aであり、隣り合う2つの加熱部5Aそれぞれの第1導体、第2導体、第3導体、及び第4導体の位置関係が、これら2つの加熱部間で同じである。このため、隣り合う二つの加熱部5Aの間に位置するワークWの領域Wcでは、一方の加熱部5Aの交番磁界Φ1によって誘起される誘導電流と、他方の加熱部5Aの交番磁界Φ1によって誘起される誘導電流とが、任意の時点で、互いに逆向きとなって打ち消し合う。したがって、ワークWは、各加熱部5Aと対向している局所領域のみ誘導加熱される。
【0055】
図17は、一部の加熱部の導体が入れ替えられた加熱コイル101を示す。
【0056】
図17に示す加熱コイル101は、4つの加熱部がワークWの長手方向に間隔をあけて配置され、リード部103、104にそれぞれ取り付けられており、4つの加熱部として、加熱部5Aと、加熱部5Cとが交互に配置されている。
【0057】
加熱部5Cは、一対の導体22、23を含む表側導体部10と、一対の導体32、33を含む裏側導体部11と、表側導体部10と裏側導体部11とを連結する連結導体42とを備える。すなわち、加熱部5Cは、加熱部5Aに対して、表側導体部10を構成する一対の導体と、裏側導体部11を構成する一対の導体と、表側導体部10と裏側導体部11とを連結する連結導体とが入れ替えられている。
【0058】
表側導体部10の一対の導体22、23は、ワークの幅方向に延びて配置されている。そして、導体22の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部22aと、導体23の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部23aとは、互いに着脱可能に接続されている。
【0059】
裏側導体部11の一対の導体32、33は、ワークの幅方向に延びて配置されている。そして、導体32の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部32aと、導体33の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部33aとは、互いに着脱可能に接続されている。
【0060】
連結導体42は、表側導体部10の導体23の第2端部23bと、裏側導体部11の導体33の第2端部33bとに着脱可能に接続され、導体23と導体33とを分離可能に連結している。したがって、加熱部5Bにおいては、表側導体部10の導体22が第1導体であり、表側導体部10の導体23が第2導体であり、裏側導体部11の導体33が第3導体であり、裏側導体部11の導体32が第4導体である。第1導体22の第2端部22bは、リード部103に着脱可能に取り付けられ、また、第4導体32の第2端部32bは、リード部104に着脱可能に取り付けられている。
【0061】
表側導体部10の第2導体23は、第1端部23aから第2端部23bに亘って直線状に形成されている。この第2導体23に対して、表側導体部10の第1導体22の第2端部22bが平行に配置され、第1導体22の第1端部22aは、第2端部22bに対して略直角に曲げられており、第1導体22は、全体として略L字状に形成されている。この第1導体22の第1端部22aと第2導体23の第1端部23aとが互いに接続されてなる表側導体部10は、電流経路となる略U字状のループを形成する。
【0062】
裏側導体部11の第3導体33は、第1端部33aから第2端部33bに亘って直線状に形成されている。この第3導体33に対して、裏側導体部11の第4導体32の第2端部32bが平行に配置され、第4導体32の第1端部32aは、第2端部32bに対して略直角に曲げられており、第4導体32は、全体として略L字状に形成されている。第3導体33の第1端部33aと第4導体32の第1端部32aとが互いに接続されてなる裏側導体部11は、電流経路となる略U字状のループを形成する。
【0063】
そして、リード部103に取り付けられる表側導体部10の第1導体22と、連結導体42に接続される裏側導体部11の第3導体33とが、ワークWを挟んで対向して配置されており、連結導体42に接続される表側導体部10の第2導体23と、リード部104に取り付けられる裏側導体部11の第4導体32とが、ワークWを挟んで対向して配置されている。
【0064】
第1導体22、第2導体23、第3導体33、第4導体32の以上の位置関係において、連結導体42は、略S字状に形成され、表側導体部10の第2導体23の第2端部23b及び裏側導体部11の第3導体33の第2端部33bの各端部に着脱可能に接続され、第2導体23と第3導体33とを分離可能に連結している。
【0065】
さらに、加熱部5Cの第1導体22、第2導体23、第3導体33、第4導体32の位置関係は、隣り合う加熱部5Aの第1導体20、第2導体21、第3導体31、第4導体30の位置関係に対して対称となっている。換言すれば、加熱部5Aの電流経路と、加熱部5Cの電流経路とは対称となっている。
【0066】
図18は、加熱部5Aと加熱部5CとがワークWの長手方向に交互に並ぶ加熱コイル101か発生させる交番磁界の一例を示す。
【0067】
加熱部5Aは、上記のとおり、磁束線がワークWの表面及び裏面に対して略垂直に交わる交番磁界Φ1を発生させ、この交番磁界Φ1によってワークWに誘起される誘導電流は、各加熱部5Aの第1導体20、第2導体21、第3導体31、第4導体30に沿って、ワークWの表面及び裏面を周回するように流れる。
【0068】
加熱部5Cもまた、磁束線がワークWの表面及び裏面に対して略垂直に交わる交番磁界Φ3を発生させ、この交番磁界Φ3によってワークWに誘起される誘導電流は、加熱部5Cの第1導体22、第2導体23、第3導体33、第4導体32に沿って、ワークWの表面及び裏面を周回するように流れる。
【0069】
さらに、隣り合う加熱部5Aと加熱部5Cそれぞれの第1導体、第2導体、第3導体、及び第4導体の位置関係が、これら2つの加熱部間で対称であることから、隣り合う二つの加熱部5A、5Cの間に位置するワークWの領域Wcでは、加熱部5Aの交番磁界Φ1によって誘起される誘導電流と、加熱部5Cの交番磁界Φ3によって誘起される誘導電流とが、任意の時点で、互いに同じ向きとなって強めあう。
【0070】
各加熱部5A、5Cは、所定ピッチで位置可変に、リード部103、104に取り付けられていることから、各加熱部5Aの交番磁界Φ1と、加熱部5Cの交番磁界Φ3とが合成される程に、隣り合う2つの加熱部5A、5Cの間隔を接近させることにより、隣り合う二つの加熱部5A、5Cの間に位置するワークWの領域Wcにも十分な誘導電流が流れる。
【0071】
これにより、ワークWは、各加熱部5A、5Cと対向している局所領域が誘導加熱されるとともに、隣り合う2つの加熱部5A、5Cの間に位置する領域Wcもまた誘導加熱され、図16に示した温度プロファイルとは異なる温度プロファイルが得られる。
【0072】
図13及び図14に示した加熱コイル101及び図17に示した加熱コイル101についても、ワークWの長手方向に加熱コイル101とワークWとを相対的に前後に揺動させながらワークWを誘導加熱してもよい。
【0073】
図19は、本発明の実施形態を説明するための、加熱コイルの他の例を示す。
【0074】
図19に示す加熱コイル201は、板状のワークWの誘導加熱に用いられる加熱コイルである。加熱コイル201は、交流電源2に接続される一対のリード部203、204と、一対のリード部203、204に取り付けられる複数の加熱部とを備え、図示の例では、4つの加熱部5BがワークWの長手方向に間隔をあけて配置され、リード部203、204にそれぞれ取り付けられている。すなわち、4つの加熱部それぞれの第1導体、第2導体、第3導体、及び第4導体の位置関係が、これら4つの加熱部間で同一となっている。なお、本例において、各加熱部5Bは、所定ピッチで位置可変に、リード部203、204に取り付けられている。
【0075】
図20は、4つの加熱部5BがワークWの長手方向に並ぶ加熱コイル201か発生させる交番磁界の一例を示し、図21は、図20の交番磁界によって誘導加熱されたワークWの温度プロファイルの一例を示す。
【0076】
各加熱部5Bは、上記のとおり、磁束線がワークWの長手方向に垂直な断面に対して略垂直に交わる交番磁界Φ2を発生させ、この交番磁界Φ2によってワークWに誘起される誘導電流は、第1導体20、第2導体21、第3導体33、第4導体32に沿って、ワークWの断面を周回するように流れる。
【0077】
ここで、4つの加熱部がいずれも加熱部5Bであり、隣り合う2つの加熱部5Bそれぞれの第1導体、第2導体、第3導体、及び第4導体の位置関係が、これら2つの加熱部間で同じである。このため、隣り合う二つの加熱部5Bの間に位置するワークWの領域Wcでは、一方の加熱部5Bの交番磁界Φ2によって誘起される誘導電流と、他方の加熱部5Bの交番磁界Φ2によって誘起される誘導電流とが、任意の時点で互いに逆向きとなって打ち消し合う。したがって、ワークWは、各加熱部5Bと対向している局所領域のみ誘導加熱される。
【0078】
図22は、一部の加熱部の導体が入れ替えられた加熱コイル201を示す。
【0079】
図22に示す加熱コイル201は、4つの加熱部がワークWの長手方向に間隔をあけて配置され、リード部203、204にそれぞれ取り付けられており、4つの加熱部として、加熱部5Bと、加熱部5Dとが交互に配置されている。
【0080】
加熱部5Dは、一対の導体22、23を含む表側導体部10と、一対の導体30、31を含む裏側導体部11と、表側導体部10と裏側導体部11とを連結する連結導体41とを備える。すなわち、加熱部5Dは、加熱部5Bに対して、表側導体部10を構成する一対の導体と、裏側導体部11を構成する一対の導体とが入れ替えられている。
【0081】
表側導体部10の一対の導体22、23は、ワークの幅方向に延びて配置されている。そして、導体22の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部22aと、導体23の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部23aとは、互いに着脱可能に接続されている。
【0082】
裏側導体部11の一対の導体30、31は、ワークの幅方向に延びて配置されている。そして、導体30の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部30aと、導体31の延在方向の両端部のうち、ワークの端部Wa側に配置されている第1端部31aとは、互いに着脱可能に接続されている。
【0083】
連結導体41は、表側導体部10の導体23の第2端部23bと、裏側導体部11の導体31の第2端部31bとに着脱可能に接続され、導体23と導体31とを分離可能に連結している。したがって、加熱部5Dにおいて、表側導体部10の導体22が第1導体であり、表側導体部10の導体23が第2導体であり、裏側導体部11の導体31が第3導体であり、裏側導体部11の導体30が第4導体である。第1導体22の第2端部22bは、リード部203に着脱可能に取り付けられ、また、第4導体30の第2端部30bは、リード部204に着脱可能に取り付けられている。
【0084】
そして、リード部203に取り付けられる表側導体部10の第1導体22と、リード部204に取り付けられる裏側導体部11の第4導体30とが、ワークWを挟んで対向して配置されており、連結導体41に接続される表側導体部10の第2導体23と、連結導体41に接続される裏側導体部11の第3導体31とが、ワークWを挟んで対向して配置されている。
【0085】
第1導体22、第2導体23、第3導体31、第4導体30の以上の位置関係において、連結導体41は、直線状に形成され、表側導体部10の第2導体23の第2端部23bと、裏側導体部11の第3導体31の第2端部31bとを連結している。
【0086】
さらに、加熱部5Dの第1導体22、第2導体23、第3導体31、第4導体30の位置関係は、隣り合う加熱部5Bの第1導体20、第2導体21、第3導体33、第4導体32の位置関係に対して対称となっている。換言すれば、加熱部5Bの電流経路と、加熱部5Dの電流経路とは対称となっている。
【0087】
図23は、加熱部5Bと加熱部5DとがワークWの長手方向に交互に並ぶ加熱コイル201か発生させる交番磁界の一例を示す。
【0088】
加熱部5Bは、上記のとおり、磁束線がワークWの長手方向に垂直な断面に対して略垂直に交わる交番磁界Φ2を発生させ、この交番磁界Φ2によってワークWに誘起される誘導電流は、第1導体20、第2導体21、第3導体33、第4導体32に沿って、ワークWの断面を周回するように流れる。
【0089】
加熱部5Dもまた、磁束線がワークWの長手方向に垂直な断面に対して略垂直に交わる交番磁界Φ4を発生させ、この交番磁界Φ4によってワークWに誘起される誘導電流は、第1導体22、第2導体23、第3導体31、第4導体30に沿って、ワークWの断面を周回するように流れる。
【0090】
さらに、隣り合う加熱部5Bと加熱部5Dそれぞれの第1導体、第2導体、第3導体、及び第4導体の位置関係が、これら2つの加熱部間で対称であることから、隣り合う2つの加熱部5B、5Dの間に位置するワークWの領域Wcでは、加熱部5Bの交番磁界Φ2によって誘起される誘導電流と、加熱部5Dの交番磁界Φ4によって誘起される誘導電流とが、任意の時点で、互いに同じ向きとなって強めあう。
【0091】
各加熱部5B、5Dは、所定ピッチで位置可変に、リード部203、204に取り付けられていることから、加熱部5Bの交番磁界Φ2と、加熱部5Dの交番磁界Φ4とが合成される程に、隣り合う2つの加熱部5B、5Dの間隔を狭めることにより、隣り合う二つの加熱部5B、5Dの間に位置するワークWの領域Wcにも十分な誘導電流を流すことが可能となる。
【0092】
これにより、ワークWは、各加熱部5B、5Dと対向している局所領域が誘導加熱されるとともに、隣り合う2つの加熱部5B、5Dの間に位置する領域Wcもまた誘導加熱され、図21に示した温度プロファイルとは異なる温度プロファイルが得られる。
【0093】
図19に示した加熱コイル201及び図22に示した加熱コイル201についても、ワークWの長手方向に加熱コイル201とワークWとを相対的に前後に揺動させながらワークWを誘導加熱してもよい。
【0094】
このように、隣り合う2つの加熱部の方式(トランスバース方式又はソレノイド方式)が同じであっても、加熱部それぞれの前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体、及び前記第4導体の位置関係を、これら2つの加熱部間で同一とするか又は対称とするかによって、ワークWの温度プロファイルを変更でき、所望の温度プロファイルを達成する加熱コイルの試作コストを低減できる。
【0095】
なお、加熱コイル101ではトランスバース方式の加熱部5A、5Bを用い、加熱コイル201ではソレノイド方式の加熱部5C,5Dを用いたが、一つの加熱コイルにおいて、トランスバース方式の加熱部5A、5Bと、ソレノイド方式の加熱部5C、5Dを混在させてもよく、これにより、さらに多様なワークWの温度プロファイルを得ることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 加熱コイル
2 交流電源
3 リード部
4 リード部
5A 加熱部
5B 加熱部
5C 加熱部
5D 加熱部
10 表側導体部
11 裏側導体部
12 スペーサ
20~23 導体
30~33 導体
40~42 連結導体
50 スリット
51 タブ
52 ボルト
53 ボルト(第1導体接続部)
55 タップ孔
60 スリット
61 タブ
62 ボルト
63 ボルト(第4導体接続部)
65 タップ孔
70 ボルト
71 ボルト
101 加熱コイル
201 加熱コイル
W ワーク
Φ1~Φ4 交番磁界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23