(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
H01R 33/76 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
H01R33/76 502C
(21)【出願番号】P 2017160008
(22)【出願日】2017-08-23
【審査請求日】2020-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】506154029
【氏名又は名称】センサータ テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 英樹
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-135214(JP,A)
【文献】特開平05-217643(JP,A)
【文献】特開2003-178848(JP,A)
【文献】特開2009-036679(JP,A)
【文献】特表平11-512229(JP,A)
【文献】特開2016-192307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0077804(US,A1)
【文献】国際公開第2009/084085(WO,A1)
【文献】特開2012-054207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
33/00-33/975
24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に表面実装可能なソケットであって、
板状の導電性材料から構成される複数のコンタクトであって、各コンタクトは、半導体装置の端子に接触可能な接点部と、当該接点部に接続された係止部と、当該係止部から延在し、かつ基板表面に形成された導電性領域に接触可能な基板側接点部とを含み、
当該基板側接点部は、前記係止部に接続された弾性変形部と、当該弾性変形部に接続された湾曲部とを含む、複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトの係止部を保持する保持部材と、
前記保持部材に対向するように配置され、前記保持部材から突出したコンタクトの基板側接点部を挿入する貫通孔が複数形成されたガイド部材とを有し、
前記ガイド部材は、前記保持部材に接近または離間する方向に移動可能であ
り、
前記ガイド部材を前記保持部材に接近する方向に移動させたとき、前記基板側接点部が前記基板から軸方向および軸方向から傾斜した方向の力を受けることで、前記湾曲部が前記弾性変形部の支点を中心に前記導電領域を摺動するように回転移動する、ソケット。
【請求項2】
前記基板側接点部
の前記湾曲部は、軸方向に力を受けたとき、軸方向に移動するとともに当該軸方向と垂直方向に移動する、請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記コンタクトはさらに、
前記接点部と前記係止部との間に形成された別の弾性変形部を含み、
前記別の弾性変形部が撓むことにより前記接点部と半導体装置の端子間に一定の接圧が与えられる、請求項1に記載のソケット。
【請求項4】
前記基板は、前記導電領域に形成されたスルーホールを含み、前記基板側接点部
の前記湾曲部は、前記基板のスルーホールの径よりも大きい、請求項1ないし
3いずれか1つに記載のソケット。
【請求項5】
前記ガイド部材が前記保持部材から離間された状態にあるとき、前記基板側接点部の
前記湾曲部の中心は、前記基板のスルーホールの中心からオフセットされ
、前記湾曲部が前記スルーホールのエッジ部に接触し、
前記ガイド部材が前記保持部材に接近する方向に移動させたとき、前記湾曲部が前記スルーホールのエッジ部とワイピングする、請求項1ないし
4いずれか1つに記載のソケット。
【請求項6】
前記基板側接点部の
前記湾曲部の曲率半径は、前記基板のスルーホールの半径よりも大きい、請求項1ないし
5いずれか1つに記載のソケット。
【請求項7】
前記基板側接点部
の前記湾曲部は、
前記基板のスルーホールの直径よりも相対的に幅の狭い部分を含む、請求項1ないし
6いずれか1つに記載のソケット。
【請求項8】
前記基板側接点部の表面をメッキする材料は、前記基板のスルーホールまたはスルーホールの基板表面をメッキする材料と同等もしくはそれよりも柔らかい材料が選択される、請求項1に記載のソケット。
【請求項9】
前記基板側接点部は、Agメッキであり、前記基板のスルーホールはAuメッキである、請求項
8に記載のソケット。
【請求項10】
ソケットはさらに、前記ガイド部材を前記保持部材から離間する方向に付勢するバネ手段を含む、請求項1に記載のソケット。
【請求項11】
請求項1ないし
10いずれか1つに記載のソケットと、当該ソケットが表面実装された基板とを含む実装装置。
【請求項12】
前記実装装置は、テスト用の装置である、請求項
11に記載のソケット。
【請求項13】
前記基板側接点部は、前記基板のスルーホールのエッジ部分と多重接触する、請求項
11または12に記載の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Sized Package)、またはLGA(Land Grid Array)等の半導体装置を実装するソケットに関し、特に、ソケットを回路基板に実装するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ソケットは、半導体装置と回路基板等を電気的に接続するためのインターフェースとして広く用いられている。例えば、特許文献1に示されるソケット10は、
図1に示すように、ベース部材20、ベース部材20に対して接近しまたは離れる方向に往復動可能なカバー部材30、ベース部材20に植え込まれる複数のコンタクト40、コンタクト40の他端の位置を規制するコンタクト規制部材50、コンタクト規制部材50に対して往復動可能なアダプター60、BGAの表面を押圧するラッチ部材70を有している。アダプター60がコンタクト規制部材50に向けて移動されたとき、アダプター60に載置されたBGAデバイスの半田ボール11がアダプター60の各貫通孔65から突出する各コンタクトの他端42とそれぞれ接続する。コンタクト40は、
図2に示すように、一端41と他端42の間に湾曲された弾性変形部44を含み、弾性変形部44により弾性力を生じさせている。また、特許文献2に示されるソケット10Aは、ラッチ部材70の垂直方向の移動をガイドするためのガイド機構78を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3566691号
【文献】特許第4868413号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置のバーンイン等のテストを行う場合、先ず、ソケットが回路基板上に実装され、次いで、半導体装置がソケットに実装される。
図4に、スルーホールタイプのソケット10Bを例示する。ベース部材20に中央の開口内にコンタクト規制部材50が取り付けられる。コンタクト規制部材50には、複数の貫通孔が形成され、コンタクト40のストレート形状の一方の端部がコンタクト規制部材50の貫通孔を介してソケット10Bの底部から外部へ延在する。また、ベース部材20の各コーナーにはポスト部材42が設けられ、ポスト部材42が回路基板の位置決め用の穴に挿入され、両者が位置決めされる。
図5に示すように、回路基板90のスルーホール92内にコンタクト40の一端が挿入され、コンタクト40がはんだ92によって回路基板の導電ランドまたは配線パターンに電気的に接続される。
【0005】
ソケット10Bを回路基板90にはんだ付けするため、ソケット10Bが故障した際の交換に手間がかかるという課題がある。その対策としてプローブピンを用いた表面実装タイプのソケットを利用する方法があるが、そのタイプのソケットは、はんだ付けタイプと比較して高価である。また、この表面実装タイプのソケットは、
図6に示すように、プローブピン96を回路基板90のスルーホール内に形成されたAuメッキパッド98を接続するが、パッド98上に異物や汚れが付着していると接触不良になりやすいという課題がある。さらに、スルーホールタイプのソケットと表面実装タイプのソケットは、それぞれ専用の基板を必要とするため、回路基板を共用することはできない。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決し、ワイピング機能を備えた表面実装可能なソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るソケットは、基板に表面実装可能なものであって、導電性材料から構成される複数のコンタクトであって、各コンタクトは、半導体装置の端子に接触可能な接点部と、当該接点部に接続された係止部と、当該係止部から延在し、かつ基板表面に形成された導電性領域に接触可能な基板側接点部とを含む、複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトの係止部を保持する保持部材と、前記保持部材に対向するように配置され、前記保持部材から突出したコンタクトの基板側接点部を挿入する貫通孔が複数形成されたガイド部材とを有し、前記ガイド部材は、前記保持部材に接近または離間する方向に移動可能である。
【0008】
ある実施態様では、前記基板側接点部は、軸方向に力を受けたとき、軸方向に移動するとともに当該軸方向と垂直方向に移動する。ある実施態様では、前記基板側接点部は、回転移動する。ある実施態様では、前記基板側接点部は、前記係止部に接続された弾性変形部と、当該弾性変形部に接続された湾曲部とを含む。ある実施態様では、前記基板側接点部は、前記弾性変形部を支点に回転移動する。ある実施態様では、前記基板側接点部は、前記基板のスルーホールの径よりも大きい。ある実施態様では、前記基板側接点部の中心は、前記基板のスルーホールの中心からオフセットされている。ある実施態様では、前記基板側接点部の曲率半径は、前記基板のスルーホールの半径よりも大きい。ある実施態様では、前記基板側接点部は、相対的に幅の狭い部分を含む。ある実施態様では、前記基板側接点部の表面をメッキする材料は、前記基板のスルーホールまたはスルーホールの基板表面をメッキする材料と同等、もしくは柔らかい材料が選択される。ある実施態様では、前記基板側接点部は、Agメッキであり、前記基板のスルーホールはAuメッキである。ある実施態様では、ソケットはさらに、前記ガイド部材を前記保持部材から離間する方向に付勢するバネ手段を含む。
【0009】
本発明に係る実装装置は、上記構成のソケットと、当該ソケットが表面実装された基板とを含む。ある実施態様では、前記実装装置は、テスト用の装置である。ある実施態様では、前記基板側接点部は、前記基板のスルーホールのエッジ部分と多重接触する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既存のスルーホールタイプの基板に表面実装タイプのソケットを提供することができる。既存のスルーホールタイプソケットとほぼ同等の部品構成であるため、プローブピンタイプの表面実装用ソケットと比較して安価である。さらに基板側接点部を基板のスルーホールからオフセットさせ、基板側接点部が水平方向に移動させることで基板側接点部がスルーホールのエッジ部分とワイピングすることが可能になり、異物等による接触不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(A)は、従来のソケットの平面図、
図1(B)は、そのX-X線断面を示す図である。
【
図2】
図2(A)は、従来のソケットのコンタクトの平面図、
図2(B)は、コンタクトの側面図である。
【
図3】従来の他のソケットの構成を示す断面図である。
【
図4】従来のスルーホールタイプのソケットの概略構成を示す断面図である。
【
図5】ソケットのコンタクトが回路基板のスルーホール内にはんだ付けされる様子を示す断面図である。
【
図6】従来のプローブピンによる回路基板のパッドとの接続方法を説明する図である。
【
図7】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの上方から見た斜視図である。
【
図8】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの分解斜視図である。
【
図9】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの下方から見た斜視図である。
【
図10】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの分解斜視図である。
【
図11】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットと基板との接続を説明する図である。
【
図12】本発明の実施例に係る表面実装タイプのソケットの概略構成を示す断面図である。
【
図12A】
図12(A)は、ベース部材の平面図、
図12(B)は、ベース部材の一部断面を含む側面図である。
【
図13】本発明の実施例に係るコンタクトの例示であり、
図13(A)は、コンタクトの正面図、
図13(B)は、コンタクトの側面図、
図13(C)は、基板側コンタクトの拡大図、
図13(D)は、基板側コンタクトと基板のスルーホールとの関係を説明する図である。
【
図14】本発明の実施例に係るストッパー部材の平面図である。
【
図14A】本発明の実施例に係るガイド部材の平面図である。
【
図15】
図15(A)は、ソケットを基板上に取り付けた状態を示す概略断面図、
図15(B)は、ソケットを基板に押し付けたときの状態を示す概略断面図である。
【
図16】基板側接点部のワイピング動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図7ないし
図11は、本発明の実施例に係る表面実装可能なソケットの概略構成を示す斜視図である。本実施例に係るソケットは、BGA等の半導体装置(半導体パッケージまたはICチップ)と基板との間の電気的な接続を提供する複数のコンタクト110と、コンタクト110の基板側の端部を整列、保持するストッパー部材120と、ストッパー部材120を位置決め固定し、かつコンタクト110のIC側の端部を整列、保持するベース部材130と、ベース部材130に対して接近または離間する方向に移動可能であり、かつコイルバネによりベース部材から離間する方向に付勢されたカバー部材140と、半導体装置の上面を押圧し、半導体装置の端子をコンタクトに接触させるラッチ部材150と、カバー部材140の動きに連動してラッチ部材150を回転駆動させるリンク部材160と、半導体装置を載置し、かつ半導体装置の端子にコンタクト110の端部が接触するようにコンタクト110の端部をガイドするフローティング/アダプター部材170と、コンタクト110の基板側の端部を整列するガイド部材180と、ソケットと基板をネジ止めする際に雌ネジとなるインサートナット190から成る。
【0013】
ソケットのカバー部材140、ラッチ部材150、リンク部材160およびフローティング/アダプター部材170の構成および動作は、特許文献1、2等に開示されたものであり、これらの詳細な説明は省略する。また、本実施例のソケットは、BGA等の半導体装置を装着できる構成であればよく、必ずしもカバー部材140、ラッチ部材150、リンク部材160およびフローティング/アダプター部材170を備えることは要しない。
【0014】
図12は、本実施例のソケットの概略構成を示す断面図である。本実施例のソケット100は、基板に表面実装可能なインターフェース構造を備え、これにより、既存のスルーホールタイプの基板への実装も可能になる。スルーホールタイプの基板は、通常、
図5に示すように、ソケットのコンタクトをスルーホール内へ挿入させるが、本実施例のインターフェース構造は、スルーホール内へコンタクトを実質的に挿入させることなく、スルーホールを含む基板表面の導電領域との接触を可能にする。
【0015】
同図に示すように、本実施例のソケット100では、基板への表面実装を可能にするためのインターフェース構造として、複数のコンタクト110と、ベース部材130の中央の開口内に取り付けられたストッパー部材120と、ストッパー部材120の下方に取り付けられたリードガイド部材180とを包含する。
【0016】
図12Aに、ベース部材130の平面図と、ベース部材130の一部断面を含む側面図を示す。ベース部材130の内部には、複数のコンタクト110を整列、保持するための複数の隔壁によって仕切られた複数の空間が形成され、その表面には、その複数の空間と繋がる複数の開口部134が形成される。開口部134は、幅広部分134Aと、当該幅広部分134から直交する方向に延在する延在部分134Bとを含む。コンタクト110がベース部材130内に保持されたとき、コンタクト110の先端部は開口部134の幅広部分134Aから突出するように構成される。
【0017】
図13(A)に、コンタクトの拡大された正面図、
図13(B)に、コンタクトの側面図、
図13(C)に、基板側コンタクトの拡大図、
図13(D)に、基板側コンタクトと基板のスルーホールとの関係を示す。本実施例のコンタクト110は、例えば、ベリリム銅、銅合金等の導電性金属材料からなる板材をスタンピングしもしくはエッチング等を行い所望の形状を得る。コンタクト110は、概ね軸方向に延在し、かつその一方の端部が半導体装置の端子に接続する接点部112を構成する。接点部112は、半導体装置(例えば、BGA装置)の底面に形成されたボール端子に接触する先端部112Aと、軸方向から側方に突出する突出部112Bとを含む。先端部112Aは、ベース部材130の開口部134の幅広部分134Aを通過し、通過した後に延在部分134Bの方向に倒すことで、突出部112Bが延在部分134Bの溝で上方向を固定し、コンタクト110にプリロードが与えられる。ベース部材130上にはフローティング/アダプター部材170が配置され、フローティング/アダプター部材170に形成された貫通孔がベース部材130の開口部134の位置に整合される。ベース部材130の表面から突出した接点部112は、フローティング/アダプター部材170の貫通孔内に収容される。フローティング/アダプター部材170が半導体装置を介してラッチ部材150によって下方に押圧されると、接点部112が貫通孔内をガイドされ、フローティング/アダプター部材170の表面から突出する。カバー部材140は、スプリングコイル142によってベース部材130から離間する方向に付勢され、フローティング/アダプター部材170は、リンク部材160を介してカバー部材140およびラッチ部材150と連動し、カバー部材140が降下されるとき、ラッチ部材150が開き、フローティング/アダプター部材170が上昇し、カバー部材140が上昇するとき、ラッチ部材150が閉じ、フローティング/アダプター部材170が下降する。
【0018】
コンタクト110はさらに、接点部112に接続された概ねU字側に曲げられた弾性変形部114を含む。弾性変形部114が撓むことにより接点部112と半導体装置の端子間に一定の接圧が与えられる。コンタクト110はさらに、弾性変形部114から軸方向に延在する係止部116を含む。係止部116は、後述するストッパー部材120よって固定される。1つの例では、係止部116は、幅を広くした幅広部を含み、さらに幅広部からほぼ直角に折り曲げられた折り曲げ部116Aと、折り曲げ部116Aから下方に延在する幅広部分116Bとを含む。
【0019】
係止部116にはさらに、基板側の電極等の導電領域に接触する基板側コンタクト118が接続される。基板側コンタクト118は、軸方向から幾分突出した突出部118Aと、突出部118Aとは反対方向に突出し、概ねV字型に折り曲げられた弾性変形部118Bと、弾性変形部118に接続され、基板に接触する基板側接点部118Cとを含む。基板側接点部118Cは、係止部116とほぼ同じ軸方向に延在する延在部118C1を含み、延在部118C1がほぼ180度折り返された形状を有する。基板側接点部118Cを圧縮する方向に荷重が加わったとき、基板側接点部118Cは、弾性変形部118の屈曲部fを支点に回転移動する。
【0020】
ベース130には、複数のコンタクト110を整列、保持するように複数の隔壁によって仕切られた複数の空間が形成され、この空間が閉じられるようにストッパー部材120がベース部材130の底部側から取り付けられる。
図14は、ストッパー部材120の平面図である。ストッパー部材120は、概ね矩形状の面を提供する本体部122と、本体部122の側部に形成された複数の脚部124とを含む。複数の脚部124は、ベース部材130の取り付け穴に挿入され、ストッパー部材120をベース部材130に固定する。
【0021】
本体部122には、複数の細長い溝126が2次元状に形成される。細長い溝126の短手方向の幅は、コンタクト110の幅よりも幾分だけ大きく、この短手方向の幅によってコンタクト110の短手方向の移動が規制される。また、複数の細長い溝126に沿うように複数の係止用溝128が形成され、複数の基板側コンタクト118が細長い溝126内に挿入されたとき、係止部116の幅広部分116Bが係止用溝128に係止される。この例では、1つの細長い溝126内に4つもしくは5つのコンタクトが整列され、それ故、1つの細長い溝126に沿って4つもしくは5つの係止用溝128が形成される。
【0022】
細長い溝126が本体部122を貫通する深さは一定であり、この深さは、基板側コンタクト118の弾性変形部118Bの軸方向の長さに概ね等しい。それ故、ストッパー部材120の底面からは、基板側コンタクト118の基板側接点部118Cが突出する。
【0023】
ストッパー部材120と対向するようにガイド部材180がベース部材130に取り付けられる。
図14Aは、ガイド部材180の平面図である。同図に示すように、ガイド部材180は、矩形状の面を提供する本体部181と、本体部181の側部に形成された複数の脚部182とを含む。複数の脚部182の各々の先端にはフックが形成され、フックは、ベース部材130の側壁に形成されたフック132と係合することができる(
図12を参照)。好ましい例では、ガイド部材180は、スプリングコイル136(
図15には、スプリングコイル136を示すため別の断面が一部示されている)によってベース部材130から離間する方向に付勢されており、ガイド部材180は、ベース部材130に対して接近または離間する方向に移動することができる。脚部182がベース部材のフック132に係止される状態にあるとき、ガイド部材180がストッパー部材120から最も離れた位置にあり、両者の間には一定の間隔が形成される。
【0024】
ガイド部材180の本体部181には、ストッパー部材120の細長い溝126と整合する位置に複数の貫通孔184が形成される。1つの例では、貫通孔184は、
図12に示すように、ガイド部材180の表面から底面に向けて径が徐々に狭くなるような矩形状の部分184Aと、矩形状の部分184Aから一定の内径でストレートに延びる矩形状の部分184Bとを含む。ストッパー部材120の底面から突出した基板接点部118Cは、貫通孔184内に挿入され、ガイド部材180がベース部材130から最も離れた位置にあるとき、基板側接点部118Cの先端がガイド部材180の底面とほぼ等しい位置にあるか、あるいは底面よりも幾分だけ突出している。
【0025】
基板側接点部118Cは、
図13(D)に示すように、弾性変形部118Bに接続され、その先端が円形状またはU字状に折り曲げられている。湾曲形状を近似するため、基板側接点部118Cの曲率中心をC、曲率半径をr、基板210のスルーホール214の直径をDとしたとき、2r<Dの関係にある。基板表面および/またはスルーホール214の内壁にメッキ212が形成されている場合には、直径Dは、メッキ212の膜厚を除く内径である。基板接点部118Cに概ね軸方向の力が印加されると、弾性変形部118Bの屈曲部fがさらに折れ曲がり、基板側接点部118Cが屈曲部fを支点に回転移動する。基板側接点部118Cと弾性変形部118Bとの接続部の幅を狭くすることで、基板側接点部118Cが接続部を支点にさらに弾性的に回転できるようにしても良い。さらに、基板側接点部118Cの曲率中心Cは、基板210のスルーホール214の中心からオフセットされるように配置される。
【0026】
次に、本実施例のソケットを基板へ取り付けるときの動作について説明する。始めに、ベース部材130の底面のコーナーから突出するロケーションピン200をガイドにして、ピン200を基板210の位置決め用の穴に挿入し、ソケット100を基板210上に取り付ける。
図15(A)は、この状態を示している。次に、ソケット100を基板210に押し付けつつ、基板裏面側よりソケットをネジ220で固定する(
図11参照)。
【0027】
ソケット100を基板210へ押し付ける過程で、基板側コンタクト118の基板側接点部118Cが基板表面の導電領域をワイピングしながら導電領域と接触する。
図16(A)は、ソケット100が基板210上に取り付けられたときの基板側接点部118Cの初期位置を示している。つまり、
図15(A)に示すように、ソケット100を基板210対して押圧する前の状態であり、ガイド部材180がベース部材130から最も離れた位置にあるとき、基板側接点部118Cの曲率中心Cは、基板210のスルーホール214の中心C1からオフセットされており、基板側接点部118Cがスルーホール214のエッジ部に接触する。
【0028】
次に、ソケット100を基板210に向けて押し付けると、スプリングコイル136の弾性に抗してガイド部材180がベース部材130に接近する方向に移動する。同時に、基板側接点部118Cは、基板表面から軸方向の力を受け、かつオフセットされたことによりスルーホールのエッジから軸方向から傾斜した方向の力を受けるため、基板側接点部118Cが弾性変形部118Bの支点fを中心に基板表面を摺動するように回転移動し、その水平方向の移動により、基板側接点部118Cがスルーホール214のエッジ部WPとワイピング動作を行う(
図16(B)を参照)。そして、上記したように、ネジ220によってソケット100と基板210とが固定される。ソケット100の表面実装後は通常のソケットと同じ取り扱い方により、バーンインテスト等が行われる。
【0029】
本実施例のソケットは、以下の特徴を備えることで、従来の課題であった異物による接触不良の問題を防ぐことができる。
a.基板側接点部がスルーホールのエッジ部に2~4点の多点で接触しワイピングを伴う。
b.基板側接点部の先端の初期位置は、スルーホールに対してオフセットさせている。
c.基板側接点部の曲率半径rは、基板のスルーホールの半径より大きく、ばね部と同一面にある。
d.上記と直交する方向はスルーホール径より小さい(細い)。
e.IC側と基板側のばね部が独立して可動する。
また、既存のスルーホールタイプの基板にソケットを表面実装させることが可能である。さらにソケットが故障した際には、容易に交換が可能であり、バーンインボードのメンテナンスが容易になる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、基板側接点部118Cの表面が、基板210のスルーホール214の内壁および/またはその表面をメッキする材料(
図13(B)のメッキ212を参照)と同じかそれよりも柔らかい材料でメッキされる。例えば、基板側接点部118Cは、Agメッキであり、基板210のスルーホール214はAgメッキまたはAuメッキである。これにより、基板側のメッキが摩耗するのを防ぎ、基板の耐用回数を増加させることができる。
【0031】
なお、ソケットが搭載される基板は、単層配線構造の基板または多層配線構造の基板いずれであってもよい。また、基板のスルーホールに形成される導電領域の形状や材料は特に限定されるものではなく、要は、基板側接点部118Cが基板のスルーホールに接触したときに、同時に導電領域と電気的に接続できる構成であればよい。
【0032】
また、ソケットに実装される半導体装置は、特に限定されない。上記実施例では、半田ボールが形成されたBGAパッケージを対象としたが、これ以外の表面実装用の半導体パッケージ(半導体装置)であってよい。また、端子の形状は、球状に限らず、半円状、円錐状、矩形状等のバンプであってもよい。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
100:ソケット
110:コンタクト
112:接点部
114:弾性変形部
116:係止部
118:基板側コンタクト
118A:突出部
118B:弾性変形部
118C:基板側接点部
120:ストッパー部材
130:ベース部材
140:カバー部材
180:ガイド部材
210:基板
214:スルーホール