(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】列車制御システム
(51)【国際特許分類】
B61L 3/08 20060101AFI20220105BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B61L3/08 A
H04L1/00 A
(21)【出願番号】P 2017173430
(22)【出願日】2017-09-08
【審査請求日】2020-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勝紀
(72)【発明者】
【氏名】松宮 英史
(72)【発明者】
【氏名】波多野 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】乾 賢一
(72)【発明者】
【氏名】落合 英生
(72)【発明者】
【氏名】川島 一晃
(72)【発明者】
【氏名】成毛 真一
(72)【発明者】
【氏名】元村 友洋
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-146965(JP,A)
【文献】特開2003-011821(JP,A)
【文献】特開2000-252965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 3/08
H04L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上装置と車上装置間で電文をデジタル伝送して列車の制御を行う列車制御システムであって、
前記地上装置は、電文を作成し、CRC符号を付加した送信信号を伝送路経由で軌道回路へ送信し、作成した電文と前記送信信号中の電文が不一致の場合、前記伝送路を一時的に遮断し、
所定時間待機後に前記送信信号を再伝送し、当該送信信号の誤りを検出したときには予備の送信機に切り替え、
前記車上装置は、前記軌道回路上の無信号を検出した場合に、受信した直前の電文を破棄する、列車制御システム。
【請求項2】
前記車上装置は、前記軌道回路から前記送信信号を受信し、CRC符号を用いて電文の誤りを検出する、請求項1に記載の列車制御システム。
【請求項3】
前記車上装置で前記軌道回路から前記送信信号を受信した場合に、電文の採用を所定時間待機し、待機中に前記軌道回路の無信号を検出しない場合に、受信した電文を採用する、請求項2に記載の列車制御システム。
【請求項4】
前記送信信号の再伝送は、同期ビットを付けて電文の先頭ビットから送信するものである、請求項
1に記載の列車制御システム。
【請求項5】
前記送信機から前記軌道回路への伝送路の遮断は、前記送信機から前記軌道回路への伝送路にリレーを設け、当該リレーで伝送路を切断するものである、請求項1に記載の列車制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上装置と車上装置間で電文をデジタル伝送して列車の制御を行う列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動列車制御装置(ATC:Automatic Train Control)における電文のデジタル伝送では、地上装置から送信される電文にCRC(Cyclic Redundancy Check)符号を付け、車上装置側でCRC検定を行ってエラー電文を排除している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来は、電文を信号作成用の論理ブロックで作成していたが、コスト削減や省スペース化のために、送信機を共通予備とし、送信機側でATC信号を作成して送信することが検討されている。上記論理ブロックはフェールセーフな構成であり、生成した電文を内部で検証することで、誤った電文が出力されないようになっている。しかしながら、送信機は1架に10台以上あり、コストを抑えるためにノンフェールセーフな機器としているため、例えば、一度送信した電文を何度も繰り返し送信するなど、誤った電文を送信する可能性がある。
【0005】
この課題は、送信機をフェールセーフ化することで解決できるが、1架に10台以上もある送信機をフェールセーフ化するとコストの増大や機器の複雑化を招く。また、電文を受ける車上装置側に複数電文照合を採用するロジック構成を搭載しても良いが、高速鉄道のATCでは1電文が約1.5秒と長く、例えば2電文照合すると3秒も必要になり、電文照合期間に電車が長距離を進んでしまう。このため、高速鉄道用のATCでは1電文で対応したい、という要求がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、送信機を用いて電文を作成して送信する構成において、地上装置側から誤った電文が送信されるのを抑制し、且つ車上装置側で誤った電文が採用されるのを抑制できる列車制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る列車制御システムは、地上装置と車上装置間で電文をデジタル伝送して列車の制御を行う列車制御システムであって、前記地上装置は、電文を作成し、CRC符号を付加した送信信号を伝送路経由で軌道回路へ送信し、作成した電文と前記送信信号中の電文が不一致の場合、前記伝送路を一時的に遮断し、所定時間待機後に前記送信信号を再伝送し、当該送信信号の誤りを検出したときには予備の送信機に切り替え、前記車上装置は、前記軌道回路上の無信号を検出した場合に、受信した直前の電文を破棄する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地上装置側と車上装置側でフィードバックチェックとCRC検定により二重に電文のチェックを行うので、送信機を用いて電文の少なくとも一部を作成して送信する構成において、地上装置側から誤った電文が送信されるのを抑制し、且つ車上装置側で誤った電文が採用されるのを抑制できる。また、誤りを検出したときには、送信機から軌道回路への伝送路を遮断して待機させ、無信号状態の期間を検知したときに、車上装置側で受信した電文を破棄することで、軌道回路の接続区間において電文連結による誤作動の可能性も回避できる。
【0009】
このように、電文を送信する側と受信する側の両方でデータ伝送の信頼性を高めることができるので、ノンフェールセーフな送信機を用いて電文を作成して送信することができ、コストの増大や機器の複雑化を抑制できる。また、複数電文照合を採用するロジック構成を搭載する必要もなく、1電文のデジタル伝送により高速に列車の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る列車制御システムの概略構成図である。
【
図2】
図1に示した列車制御システムにおける地上装置と車上装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】共通予備方式の地上装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】ATC信号の電文構成の一例を示す模式図である。
【
図5】地上装置の動作について説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図5に続く地上装置の動作について説明するためのフローチャートである。
【
図7】車上装置の動作について説明するためのフローチャートである。
【
図8】送信機から送信される電文を示しており、電文に重大なエラーがあった場合の動作を示す模式図である。
【
図9】送信機から送信される電文を示しており、電文に軽微なエラーがあった場合の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る列車制御システムの概略構成を示している。地上装置1は、電文を生成する論理ブロック2と、この論理ブロック2の出力に基づいてATC信号を生成し、増幅して出力する送信機(常用)3と、送信機3の故障時に切り替えて使用される送信機(予備)4とを備えている。地上装置1は、送信機3から軌道回路12へ送信する電文(ATC信号)を、CRC符号の前でフィードバックしてチェック(LD照査)し、送信すべきATC信号と一致するときには送信を継続し、不一致のときには送信を停止するようになっている。
【0012】
列車10が走行する軌道11は、複数の区間1T,2T,3T,…に区画されている。区間1T,2T,3T,…の境界部分は絶縁されており、各境界部分はインピーダンスボンドF1b,F2a,F2b,F3a,…によって結合されている。区間1Tと2Tの境界部分はインピーダンスボンドF1b,F2aによって結合され、区間2Tと3Tの境界部分はインピーダンスボンドF2b,F3aによって結合される。インピーダンスボンドF1b,F2a,F2b,F3a,…は、軌道11に流れる電車電流と軌道信号による信号電流とを振り分ける機能を有する。
【0013】
送信機3から送信されたATC信号は、矢印a1~a6で示すように、送信リレー5、保安器6、ケーブル7、保安器8をそれぞれ介して軌道11の区間2Tに形成される軌道回路12に伝送される。そして、この軌道回路12に伝送されたATC信号が、列車10に搭載された車上装置で受信されて、当該列車10の制御が行われる。送信リレー5を遮断すると、送信機3から軌道回路12への伝送路が切断される。
【0014】
同様に、予備の送信機4から送信されたATC信号も、送信リレー14、保安器6、ケーブル7、保安器8をそれぞれ介して軌道11の区間2Tに形成される軌道回路12に伝送される。
なお、送信リレー5と接地点間には、送信機3から出力されたATC信号を軌道回路12に印加しないときのダミー抵抗13が接続されている。また、送信リレー14と接地点間には、送信機4から出力されたATC信号を軌道回路12に印加しないときのダミー抵抗15が接続されている。
【0015】
図2は、
図1に示した列車制御システムにおける地上装置1と車上装置40の構成例を示しており、要部を抽出して詳細に示している。地上装置1の論理ブロック(論理部)2は、電文作成部21、メモリ部22、復調器23、電文解読部24、電文整合判定部25、送信リレー制御部26及び低下検知部27などを備えている。また、送信機(送信出力部)3は、ATC信号作成部31と信号増幅部32を備えている。
【0016】
電文作成部21で作成された電文は、メモリ部22に供給されて記憶されるとともに、送信機3のATC信号作成部31に供給されてATC信号の作成に用いられる。ATC信号作成部31で作成されたATC信号は、信号増幅部32で増幅され、送信リレー5を介して軌道回路12に出力される。また、信号増幅部32で増幅されたATC信号は、論理ブロック2にフィードバックされる。このATC信号は、復調器23で復調され、電文解読部24で解読された後、メモリ部22に供給されて記憶される。また、信号増幅部32で増幅されたATC信号は、低下検知部27に供給されてレベルの低下が監視される。
【0017】
メモリ部22に記憶された電文、すなわち電文作成部21で作成された電文と電文解読部24で解読されたATC信号(送信信号)は、電文整合判定部25でCRC符号の直前までの整合性が判定される。この電文整合判定部25の判定結果に基づき、送信リレー制御部26により送信リレー5が制御される。
なお、図示を省略したが、予備の送信機4も送信機3と同様な構成になっており、送信機3の故障や誤作動時に切り替えて使用されるようになっている。
【0018】
一方、車上装置40は、受信コイル41、バンドパスフィルタ(BPF)42、レベル判定部43、低下検知部44、復調器45、電文解読照合部46、メモリ部47、タイマ部48、採用電文部49及び速度制御部50などを備えている。受信コイル41で軌道回路12からATC信号(電文)を受信すると、バンドパスフィルタ42に供給されてATC信号以外の周波数成分が除去される。このバンドパスフィルタ42の出力レベルは、レベル判定部43で監視される。低下検知部44でレベルの低下が検知されると、メモリ部47に記憶される。
【0019】
また、バンドパスフィルタ42の出力は、復調器45で復調され、電文解読照合部46で解読と照合が実行される。解読及び照合結果はメモリ部47に記憶され、電文受信後、タイマ部48に指定されている時間だけ採用を待つ。タイマ部48に指定されている時間が経過すると、メモリ部47に記憶された出力レベルの低下と、解読及び照合結果が採用電文部49に入力されて電文が採用され、この採用電文部49の出力が速度制御部50に供給されて列車10の速度制御が実行される。
【0020】
図3は、共通予備方式(N+2)の地上装置1の構成例を示すブロック図である。この地上装置1は、1系論理部2aと2系論理部2bを備えており、これら1系論理部2aと2系論理部2bに対して、共通の送信出力部3a,3b及び予備の送信出力部4a,4bが設けられている。1系論理部2aには受信入力部9a-1~9a-10、2系論理部2bには受信入力部9b-1~9b-10がそれぞれ設けられている。すなわち、送信出力部が10トラックに対して、予備が2台で合計12台設けられており、10軌道対応の構成である。
なお、
図3において、1TSCR,2TSCR,SCR_S1,SCR_S2は送信リレー(SCRリレー)であり、DLはダミー抵抗である。
【0021】
図4は、送信機3から出力されるATC信号の電文構成(1フレーム)の一例を示す模式図である。本例では、9ビットのスタートフラグの後に、6ビットのデータと1ビットのフラグが交互に繰り返されており、最後にCRC符号が付加されている。軌道回路ID(15bit)は、(1)線区コード(2bit)、(2)区間コード(6bit)及び(3)軌道回路コード(7bit)で表される。また、(4)経路コード(5bit)と(5)開通区間数(5bit)が含まれている。これらのデータがスタートフラグに続いて伝送される。
【0022】
次に、上記のような構成の列車制御システムにおいて、
図5乃至
図7のフローチャートと、
図8及び
図9の模式図により動作を説明する。
図5及び
図6は、地上装置の動作について説明するためのフローチャートである。まず、論理ブロック2の電文作成部21で電文を作成する(ステップS1)。作成した電文は、メモリ部22に供給して記憶するとともに、送信機3のATC信号作成部31に供給してATC信号を作成し、このATC信号を信号増幅部32で増幅する(ステップS2)。信号増幅部32で増幅したATC信号は、送信リレー5を介して軌道回路12に出力するとともに、フィードバックチェック(LD照査)のために復調器23に入力する(ステップS3)。
【0023】
次に、ATC信号を復調器23で復調し(ステップS4)、電文解読部24で解読した後(ステップS5)、解読したATC信号をメモリ部22に記憶する(ステップS6)。そして、電文整合判定部25でCRC符号の直前のビットか否か判定し(ステップS7)、そうであればCRC符号の直前のビットまで電文の整合性をチェックする(ステップS8)。続いて、整合性があるか否か判定し(ステップS9)、整合性がある場合には送信を継続する(ステップS10)。
ステップS7で直前のビットでないと判定された場合には、CRC符号の直前のビットになるまでステップS1~S6の動作を繰り返す。
【0024】
ステップS9で整合性がないと判定、すなわち誤りを検出したときには、送信機3から軌道回路12への伝送路を遮断する(ステップS11)。具体的には、送信リレー5をオフさせるか、送信機3の出力を停止させてATC信号を1フレーム送信する前に停止させる(
図8参照)。その後、伝送路の遮断を所定時間、例えば300ms継続してから復帰させる(ステップS12)。
【0025】
次に、
図9に示すように、地上装置1側と車上装置40側で同期を取るための同期ビットを付けた後、電文2を再送する。再送用の電文2は、電文1と同じもので、論理ブロック2の電文作成部21で作成する(ステップS13)。この再送用の電文2は、必ずしも電文1と同じ必要はなく、再送用の電文を送るのと同じタイミングで電文作成部21にある最新の電文を採用しても良い。作成した電文は、メモリ部22に供給して記憶するとともに、送信機3のATC信号作成部31に供給してATC信号を作成し、このATC信号を信号増幅部32で増幅する(ステップS14)。信号増幅部32で増幅したATC信号は、送信リレー5を介して軌道回路12に出力するとともに、フィードバックチェックのために復調器23に入力する(ステップS15)。
【0026】
次に、ATC信号を復調器23で復調し(ステップS16)、電文解読部24で解読した後(ステップS17)、解読したATC信号をメモリ部22に記憶する(ステップS18)。そして、電文整合判定部25でCRC符号の直前のビットか否か判定し(ステップS19)、そうであればCRC符号の直前のビットまで電文の整合性をチェックする(ステップS20)。続いて、整合性があるか否か判定し(ステップS21)、整合性がある場合には送信を継続する(ステップS22)。
ステップS19で直前のビットでないと判定された場合には、CRC符号の直前のビットになるまでステップS13~S18の動作を繰り返す。
【0027】
ステップS21で整合性がないと判定されたときには、重大なエラーがあるので予備の送信機4に切り替え(ステップS23)、ステップS1に戻って予備の送信機4で同様な電文作成動作を行う。
上述したように、電文2もスタートフラグからCRCの直前まで受信した時点で送信信号と比較し、1ビットでもエラーがあった場合は送信機3を予備の送信機4に切り替える。1ビットだけのエラーは、一過性のノイズなどでもありえるので、常用の送信機3の送信を一度停止させるが、再度常用の送信機3を稼動させることとする。これにより、一過性のノイズなどにより1ビットだけのエラーとなった場合には、予備の送信機4に切り替わらずに常用の送信機3で稼動を続けることが出来る。
【0028】
図7は、車上装置40の動作について説明するためのフローチャートである。車上装置40は、受信コイル41で軌道回路12から電文(ATC信号)を受信すると(ステップS31)、バンドパスフィルタ42に供給してATC信号以外の周波数成分を除去し、レベル判定部43でバンドパスフィルタ42の出力レベルを監視するとともに、復調器45で電文を復調する(ステップS32)。レベルの低下が低下検知部44で検知されると、メモリ部47にレベル低下を検知したことを記憶する。また、復調器45で復調した電文を電文解読照合部46で解読し(ステップS33)、メモリ部47に解読した電文を記憶する(ステップS34)。
【0029】
電文受信後、タイマ部48で指定している時間(例えば400ms)だけ電文の採用を待ち、この期間に無信号があるか否かを監視する(ステップS35)。そして、無信号を検知したか否か判定し(ステップS36)、無信号を検知しない場合には電文を採用し(ステップS37)、無信号を検知した場合にはエラーが含まれているので、メモリ部47に記憶した電文を破棄する(ステップS38)。ステップS35においては、無信号があるか否かを監視する例を示したが、地上装置1側では、車上装置40側で無信号を検知できる所定時間(例えば300ms)の無信号期間を設定することで、送信中の信号の影響を受け難くでき、より確実な監視が可能となる。そして、ステップS31に戻って、軌道回路12から次の電文を受信する。
【0030】
本発明によれば、地上装置1側の送信電文を全て(1フレーム)送信する前に、CRC符号の直前で、地上装置1側から送信している信号のフィードバックチェックを行い、フレームのスタートフラグからCRC符号の直前まで受信した時点で送信信号と比較し、1ビットでもエラーがあった場合には送信リレー5を300ms間遮断させる(論理ブロック2から送信機3間のデータ伝送も停止指示)。これにより、地上装置1側からエラー電文(誤った電文)が送信されるのを抑制し、車上装置40側で誤った電文が採用される確率を低減することができる。また、CRC符号の直前で、電文内容の整合性を確認することにより、CRC検定をすり抜ける恐れがある2ビット以上誤った電文の送信を1フレーム全て送る前に停止させることが可能である。従って、ノンフェールセーフな送信機3を用いることができ、コストの増大や機器の複雑化を招くことなく送信機でATC信号を作成して送信することができる。
【0031】
更に、車上装置40側ではCRC検定を行うので、電文を地上装置1と車上装置40で二重チェックすることができる。しかも、誤りを検出したときには、送信機3から軌道回路12への伝送路を遮断して待機させ、無信号状態の期間を検知したときに、車上装置40側で受信した電文を破棄することで、軌道回路12の接続区間で、列車10が隣接する軌道回路間を跨いでいるときの電文連結による誤作動の可能性も回避できる。よって、車上装置40側で複数電文照合を採用する必要がなく、1電文をデジタル伝送して列車10の制御を高速に行うことができる。しかも、エラーが発生した場合には、電文を再伝送し、CRC検定で再度エラーを検出した場合には、予備の送信機4に切り替えることで、誤った電文の伝送をより低減できる。
【0032】
以上の実施形態で説明された回路構成や動作手順等については、本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものに過ぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…地上装置、2…論理ブロック、3…送信機(常用)、4…送信機(予備)、5,14…送信リレー、6,8…保安器、7…ケーブル、10…列車、11…軌道、12…軌道回路、13,15…ダミー抵抗、21…電文作成部、22,47…メモリ部、23,45…復調器、24…電文解読部、25…電文整合判定部、26…送信リレー制御部、27,44…低下検知部、31…ATC信号作成部、32…信号増幅部、40…車上装置、41…受信コイル、42…バンドパスフィルタ、43…レベル判定部、46…電文解読照合部、48…タイマ部、49…採用電文部、50…速度制御部