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  • 特許-藻類抑制剤、および、藻類抑制方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】藻類抑制剤、および、藻類抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 41/06 20060101AFI20220105BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20220105BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20220105BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A01N41/06 Z
A01N59/00 C
A01P13/00
C02F1/50 510D
C02F1/50 520K
C02F1/50 531L
C02F1/50 532J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017197774
(22)【出願日】2017-10-11
(65)【公開番号】P2019069924
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000101042
【氏名又は名称】アクアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅代
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 英進
(72)【発明者】
【氏名】神澤 啓
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104094935(CN,A)
【文献】特開2000-167565(JP,A)
【文献】特開2014-196266(JP,A)
【文献】特開昭60-129182(JP,A)
【文献】特開2005-131534(JP,A)
【文献】特開2002-060798(JP,A)
【文献】特開2013-158669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0013878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 41/06
A01N 59/00
A01P 13/00
C02F 1/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロラミンTおよびクロラミンBから選択される少なくとも1種の酸化性物質と、臭素化合物の少なくとも1種と、を含有し、かつ、
前記臭素化合物が臭化ナトリウム、臭化カリウム、および、臭化リチウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする藻類抑制剤。
【請求項2】
前記酸化性物質の含有量が1質量%以上15質量%以下であり、前記臭素化合物の含有量が0.5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の藻類抑制剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の藻類抑制剤を水系に添加することを特徴とする藻類抑制方法。
【請求項4】
前記水系中の結合残留塩素濃度を、0.1mg/L以上100mg/L以下とすることを特徴とする請求項3に記載の藻類抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放循環冷却水系、工業用工程水系などの各種の水系での藻類抑制剤、および、藻類抑制方法に関し、藻類、特に粒状緑藻を効果的に抑制することができる藻類抑制剤、および、藻類抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開放循環冷却水系、工業用工程水系などの各種の水系において、細菌類や真菌類、藻類などの微生物が原因で、さまざまな障害が発生する。たとえば、開放循環式冷却水系においては、ズーグレア状細菌、糸状細菌、鉄バクテリア、イオウ細菌、硝化細菌、硫酸塩還元菌などの細菌類、ミズカビ、アオカビなどの真菌類、藍藻、緑藻、珪藻などの藻類が増殖し、これらの微生物を主体とし、土砂などの無機物や塵挨などが混ざりあって形成される軟泥状のスライムやスラッジが発生する。スライムやスラッジは、熱交換効率の低下や通水の悪化をもたらすばかりでなく、機器、配管などの局部腐食の原因となる。
【0003】
このような技術のうち、ハロゲン系酸化物による処理は特許文献1~4に開示されており、本出願人も特許文献5で水系水における酸化性スライムコントロール剤組成物を提案している。
【0004】
この特許文献5により提案された組成物は、スライムコントロール性能を示す酸化性物質としてクロラミンTおよびクロラミンBから選択される少なくとも1種と、アゾール系化合物とを配合し、pHを10以上とするものであり、保管時や屋外などでの使用時にも酸化性物質の濃度が長期間維持される組成物となっている。しかしながら、この組成物には細菌類、真菌類、藍藻、および、糸状性の緑藻に対する抑制効果はあるが、粒状緑藻に対する効果が低いと云う問題があることが判った。
【0005】
ここで、本発明において粒状緑藻とは、クロレラやスフェロキスチスのような球形の細胞を有する緑藻類を云う。このような球状形態の緑藻類は強い薬剤耐性を有する傾向にあり、従来の殺菌剤で処理している水系でしばしば繁殖して問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭64-15200号公報
【文献】特開2000-140857号公報
【文献】特表2003-503323号公報
【文献】特表平11-506139号公報
【文献】特開2014-196266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決する、すなわち、藻類、特に粒状緑藻の発生や繁殖を効果的に防止することができる藻類抑制剤、および、藻類抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の藻類抑制剤は、上記の課題を解決するために、クロラミンTおよびクロラミンBから選択される少なくとも1種の酸化性物質と、臭素化合物の少なくとも1種と、を含有し、かつ、前記臭素化合物が臭化ナトリウム、臭化カリウム、および、臭化リチウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の藻類抑制剤は、上記の構成に加え、前記酸化性物質の含有量が1質量%以上15質量%以下であり、前記臭素化合物の含有量が0.5質量%以上30質量%以下である構成とすることができる。
【0011】
本発明の藻類抑制方法は、上記いずれかの藻類抑制剤を水系に添加する構成とすることができる。
【0012】
また、本発明の藻類抑制方法は、上記の構成に加え、前記水系中の結合残留塩素濃度を、0.1mg/L以上100mg/L以下とする構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の藻類抑制剤は、クロラミンTおよびクロラミンBから選択される少なくとも1種の酸化性物質と、臭素化合物の少なくとも1種と、を含有し、かつ、前記臭素化合物が臭化ナトリウム、臭化カリウム、および、臭化リチウムから選択される少なくとも1種である構成により、水系に適用することで、藍藻類、珪藻類はもちろん、緑藻類、特に従来の藻類抑制剤では繁殖を抑えることが困難であった粒状緑藻の発生や繁殖も効果的に防止し、かつ、貯蔵安定性に優れた藻類抑制剤とすることができる。
【0014】
また、酸化性物質の含有量を1質量%以上15質量%以下、臭素化合物の含有量を0.5質量%以上30質量%以下とすることで、藻類の抑制効果をより安定して得ることができる。
【0016】
また、本発明の藻類抑制方法は、藻類抑制の対象の水系に上記の藻類抑制剤を添加することで、高い藻類抑制効果が得られる。この際、水系中の結合残留塩素濃度を0.1mg/L以上100mg/L以下とすることにより、水系内の金属材料の腐食リスクを低く抑えながら、藻類、特に粒状緑藻に対する抑制効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例2の模擬試験の結果を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の藻類抑制剤、および、藻類抑制方法について説明する。
本発明で酸化性物質として用いるクロラミンTは、IUPAC名がNークロロー4ーメチルベンゼンスルホンアミドであり、クロラミンBは、IUPAC名がNークロロベンゼンスルホンアミドのことである。これらは通常、ナトリウム塩の水和物として市販されているが、水に溶けて酸化力を示し、藻類抑制効果が得られるものであれば、塩の種類を問わず本発明に含まれる。このような塩として、ナトリウム塩のほかに、リチウム塩、カリウム塩等が挙げられる。クロラミンTおよびクロラミンBは、水中で結合残留塩素として酸化力を示し、各種藻類の殺滅、増殖抑制に寄与する。市販のクロラミンTおよびクロラミンBを水系に添加した場合、いずれも固形分としての水系への添加濃度に対して約4分の1の濃度の結合塩素が水中に検出されるようになる。すなわち、酸化力の消費、分解を無視した場合、クロラミンTやクロラミンBの4mg/L(リットル)水溶液の示す結合残留塩素濃度は1mg/Lである。
【0019】
本発明の藻類抑制剤は、クロラミンTおよびクロラミンBから選択される少なくとも1種の酸化性物質を含有する。酸化性物質としてクロラミンTやクロラミンBを用いることで、次亜塩素酸ナトリウム等と比較して貯蔵安定性が格段に向上する。好ましい酸化性物質は、入手しやすさの点でクロラミンTである。
【0020】
本発明の藻類抑制剤中のクロラミンTおよびクロラミンBから選択される少なくとも1種の酸化性物質の含有量は、通常は概略0.5質量%以上、20質量%以下程度であるが、1質量%以上15質量%以下とするのが、製剤が安定で、長期間放置しても析出物等が発生しない点で好ましい。
【0021】
本発明の藻類抑制剤は、臭素化合物を含有する。臭素化合物を含有することで、クロラミンTおよびクロラミンBから選択される少なくとも1種の酸化性物質のみを添加した場合と比較して、藻類抑制効果が格段に向上する。
【0022】
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウムおよび臭化アンモニウム等が挙げられる。これらのうち、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウムを用いるのが貯蔵安定性の点で好ましく、臭化カリウムを用いると特に貯蔵安定性に優れた製剤が可能となる。
【0023】
本発明の藻類抑制剤の臭素化合物の含有量は、通常は概略0.2質量%以上35質量%以下程度であるが、0.5質量%以上30質量%以下とするのが、製剤が安定で、長期間放置しても析出物等が発生しない点で好ましい。
【0024】
本発明の藻類抑制剤の製造方法は、特に限定されない。たとえば、あらかじめ臭素化合物の少なくとも1種、および、必要によりその他の添加剤を加えた水溶液に、クロラミンTおよびクロラミンBから選択される少なくとも1種の酸化性物質を添加混合する方法や、酸化性物質の水溶液に臭素化合物を添加混合する方法が挙げられる。
【0025】
本発明の藻類抑制剤は、製造の容易性や酸化性物質の安定性を確保するために組成物のpHを9.5以上とするのが好ましい。より好ましい組成物のpHは10以上であり、さらに好ましくは11.5以上、13.5未満である。組成物のpH調整に用いるpH調整剤としては、一般的なアルカリ剤が使用でき、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が好適に使用される。
【0026】
本発明の藻類抑制方法は、クロラミンTおよびクロラミンBから選択される少なくとも1種の酸化性物質と、臭素化合物の少なくとも1種類と、を含有する、本発明の藻類抑制剤を藻類抑制対象の水系に添加する方法である。ここで、これら酸化性物質と臭素化合物とを別々に添加した場合には本発明の効果を得ることはできない。
【0027】
本発明の藻類柳制方法では、水系中の結合残留塩素濃度が0.1mg/L以上100mg/L以下となるように本発明の藻類抑制剤の添加量を調整することが好ましい。すなわち、結合残留塩素濃度が0.1mg/L未満だと十分な藻類抑制効果を得にくく、100mg/Lを超えて添加すると、酸化性物質による水系内の金属材料の腐食リスクが高まるので好ましくない。より好ましい結合塩素濃度は、0.2mg/L以上10mg/L以下である。なお、水系中の結合残留塩素濃度の測定は、常法に従って行えばよく、たとえば、JIS K0101 1998の28項に記載された方法を採用することができる。
【0028】
本発明の藻類抑制剤には、本発明の効果が妨げられない範囲で、さらにその特性を改良するなどの目的で、従来から水処理用途で使用されている公知の防食剤、スケール防止剤、クロラミンTおよびクロラミンB以外のスライムコントロール剤を適宜配合することができ、その場合も本発明に含まれる。
【0029】
本発明の藻類抑制剤に配合可能な防食剤としては、アゾール系化合物が好適である。アゾール系化合物としては、たとえば、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、テトラゾールなどの単環式アゾール系化合物、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトメチルベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、インダゾール、プリン、イミダゾチアゾール、ピラゾロオキサゾールなどの縮合多環式アゾール系化合物などや、さらにアゾール系化合物の中で塩を形成する化合物にあってはそれらの塩などを挙げることができる。これらのアゾール系化合物は、1種のみを配合しても、2種以上を組み合わせて配合しても構わない。好ましいアゾール系化合物は、酸化性物質の分解抑制効果が高い点で、ベンゾトリアゾールあるいはトリルトリアゾールである。
【0030】
本発明の藻類抑制剤に配合可能なアゾール系化合物以外の防食剤としては、たとえば、リン酸またはその塩、ピロリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸等の重合リン酸またはその塩、亜鉛塩、モリブデン酸またはその塩、タングステン酸またはその塩、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、フィチン酸、號珀酸、乳酸等の有機カルボン酸またはその塩等を挙げることができる。
【0031】
本発明の藻類抑制剤に配合可能なスケール防止剤としては、たとえば、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸やこれらの水溶性塩などのホスホン酸類、アクリル酸系、マレイン酸系、メタクリル酸系、スルホン酸系、イタコン酸系、または、イソブチレン系の各重合体やこれらの共重合体等のポリマー類、アクリル酸系重合体の次亜リン酸付加物等のホスフィノカルボン酸類、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のアミノカルボン酸系化合物等を挙げることができる。この中で、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸またはその水溶性塩、マレイン酸、アクリル酸アルキル、ビニルアセテートの三元共重合体、ポリアクリル酸の次亜リン酸付加物、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体の次亜リン酸付加物から選択される少なくとも1種のスケール防止剤を配合すると、配合したスケール防止剤による酸化性物質の分解がほとんどないので好ましい。
【0032】
本発明の藻類抑制剤に配合可能なスライムコントロール剤としては、たとえば、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系化合物、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール等のブロモニトロアルコール系化合物、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド等のアルデヒド系化合物、過酸化水素、ヒドラジン、ピリチオン系化合物、ジチオール系化合物、メチレンビスチオシアネート等のチオシアネート系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、四級ホスホニウム塩系化合物、ピリジニウム塩系化合物、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロライド]、ポリ(2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)などのヨーネンポリマー等のカチオン系化合物等を挙げることができる。
【0033】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の藻類抑制剤、および、藻類抑制方法は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0034】
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の藻類抑制剤、および、藻類抑制方法を適宜改変することができる。このような改変によってもなお、本発明の藻類抑制剤、および、藻類抑制方法の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
【実施例
【0035】
以下に、本発明の藻類抑制剤、および、藻類抑制方法の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0036】
《実施例1》
つくば市水道水を脱イオン処理した純水と稼働中の冷却塔設備の冷却水とを9:1の割合で混合し、さらに硝酸ナトリウムを0.1g/L、および、リン酸水素2カリウムを0.01g/Lとなるようにそれぞれ添加し、溶解させて試験水とした。この試験水をそれぞれ1000mLずつ、開放容器に分注し、それぞれに表1に示す添加量となるように各薬品を添加した。
【0037】
このとき、処理5~11および14では、それぞれ表2に示す藻類抑制剤を調整した後に、その藻類抑制剤を試験水に添加して試験を行い、処理15ではクロラミンTおよび臭化カリウムを、処理16ではクロラミンBおよび臭化ナトリウムを、および、処理17ではクロラミンBおよび臭化カリウムを、それぞれ別々に試験水に添加した。
【0038】
なお、表1および表2中、クロラミンTはN-クロロ-4-メチルベンゼンスルホンアミドナトリウム水和物、クロラミンBはN-クロロベンゼンスルホンアミドナトリウム水和物、NaClOは5%次亜塩素酸ナトリウム溶液、BTはベンゾトリアゾール、KBrは臭化カリウム、NaBrは臭化ナトリウムをそれぞれ示す。
【0039】
薬品の添加後、各試験水を日が当たる屋外に放置し、3日後、7日後、および、14日後に藻の発生状況を確認した。結果を表1に併せて示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1より、本発明の実施例である処理5~11では試験開始14日後も藻類の発生が抑制されるのに対し、本発明の構成を有しない処理1~4、および、処理12~17では十分な抑制効果が得られないことが理解される。なお、発生した藻類を顕微鏡で観察したところ、球状形態の緑藻類(粒状緑藻)であることが確認された。
【0043】
《実施例2》
6~8月の10週間、日に当たる屋外に設置された冷却塔の模擬試験装置(水量は60L。ポンプにより水が循環)を2台用いて試験を行った。一方の試験装置では実施例2としてクロラミンTを8質量%および臭化カリウムを3質量%それぞれ含有する藻類抑制剤を添加して、結合残留塩素濃度を2mg/Lに維持しながら運転し、他方の試験装置では比較例としてクロラミンT濃度が10質量%の溶液を冷却水に添加して、結合残留塩素濃度を2.5mg/Lに維持しながら運転した。
【0044】
このとき、試験装置の上部に設置した不織布上に発生した藻の状況を確認した。結果を図1に示す。図1での黒色部分および背景より濃い灰色部分が発生した粒状緑藻であり、実施例2では運転開始から10週間後であっても粒状緑藻の発生はほとんどなく、抑制されているのに対して、比較例では試験開始から5週間後にはすでに粒状緑藻が発生し、その後増加していることが理解される。
【0045】
《実施例3》
神奈川県内のビルの日の当たる屋上で稼働中の冷却塔において、4~5月の2箇月間、冷却水中の結合残留塩素濃度が0.2mg/L以上1.0mg/L以下の範囲(JIS K0101 1998に準拠して測定)に維持されるように冷却水にクロラミンTを8質量%含む水溶液(製剤1、pH:12)を添加して運転を行った。その後引き続き、6~11月の6箇月間、冷却水中の結合残留塩素濃度が0.2mg/L以上1.0mg/Lの範囲に維持されるように冷却水に実施例1の処理5で用いた製剤(製剤2、pH:12)を添加して運転を行った。これら処理での水系内の藻の発生状況を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
クロラミンTの単独の製剤1(比較例)を使用した場合、薬品処理を行っていなかった時に付着していた藍藻類、糸状性の緑藻については抑制効果が得られたが、粒状緑藻に対しては十分な抑制効果が得られなかった。これに対して製剤2(本発明)での処理を開始したところ、粒状緑藻類含む藻類の発生は著しく抑制され、処理開始から6か月後もその抑制効果が持続していた。
図1