(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】造形装置及び造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/35 20170101AFI20220105BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20220105BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20220105BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20220105BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20220105BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20220105BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20220105BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220105BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220105BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20220105BHJP
【FI】
B29C64/35
B29C64/112
B29C64/188
B29C64/209
B29C64/218
B29C64/236
B29C64/264
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
(21)【出願番号】P 2017221350
(22)【出願日】2017-11-16
【審査請求日】2020-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】八角 邦夫
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050386(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176119(US,A1)
【文献】特開2006-240056(JP,A)
【文献】特開2017-109317(JP,A)
【文献】特開2006-205742(JP,A)
【文献】特開2013-049137(JP,A)
【文献】特開2016-153212(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067929(US,A1)
【文献】特開2004-144983(JP,A)
【文献】特開2015-182428(JP,A)
【文献】特開2017-001381(JP,A)
【文献】特開平08-132593(JP,A)
【文献】特開2005-331836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00- 8/00
B33Y 10/00-40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形の材料で形成された層を予め設定された積層方向へ積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、
前記材料を吐出する吐出ヘッドと、
造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる駆動部であり、前記積層方向と直交する面内の方向への前記走査動作を前記吐出ヘッドに行わせることにより、前記層を前記吐出ヘッドに形成させる走査駆動部と、
前記層の表面に接触して前記材料をかき取ることにより前記表面を平坦化する平坦化部材と、
前記平坦化部材によってかき取られた前記材料を前記平坦化部材から除去する付着材料除去部と
を備え、
前記平坦化部材は、造形中の前記造形物における前記層の表面に対して接触しつつ回転することで前記層を平坦化する平坦化ローラであり、
前記付着材料除去部は
、前記材料を前記平坦化部材からかき取ることなく、前記平坦化部材から前記材料を除去する
ものであり、
空気を吸引するポンプと、
前記平坦化部材の表面にある前記材料を吸引する吸引ノズルと、
前記ポンプが空気を吸引することで内部が減圧される吸引容器と、
加圧した気体を前記平坦化部材の表面に吹き付けることで前記平坦化部材の表面にある前記材料を移動させる気体吹付部と
を有し、
前記吸引容器は、前記内部が減圧されることで、前記吸引ノズルを介して、前記平坦化部材の表面にある前記材料を吸引し、
前記付着材料除去部は、前記吸引容器によって前記平坦化部材の表面にある前記材料を吸引することで、前記平坦化部材の表面にある前記材料を前記平坦化部材に対して離間した位置から吸引して、前記平坦化部材の表面から前記材料を除去し、
前記吸引ノズルは、前記平坦化部材の回転方向において前記気体吹付部よりも上流側に配設されており、前記気体吹付部が吹き付ける気体により移動した前記材料を吸引して、前記吸引容器へ送ることを特徴とする造形装置。
【請求項2】
紫外線を発生する紫外線光源を更に備え、
前記吐出ヘッドは、前記材料として、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インクを吐出し、
前記平坦化部材は、前記紫外線光源からの紫外線の照射によって硬化する前の前記材料の一部をかき取ることで、前記材料の層を平坦化することを特徴とする請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
前記ポンプは、前記吸引容器内を減圧すると共に、吸引した空気を加圧し、
前記気体吹付部は、前記ポンプにより加圧された空気を前記平坦化部材の表面に吹き付けることを特徴とする請求項
1又は2に記載の造形装置。
【請求項4】
前記気体吹付部は、前記平坦化部材に対して離間した位置から加圧した気体を前記平坦化
部材の表面に吹き付け
、気体の吹き付けにより前記平坦化部材の表面にある前記材料を移動
させることを特徴とする請求項
1から3のいずれかに記載の造形装置。
【請求項5】
前記付着材料除去部は
、前記材料の粘度を低下させる液体である低粘度化液体を前記平坦化部材に対して離間した位置から前記平坦化部材の表面へ供給する液体供給部を
更に有することを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の造形装置。
【請求項6】
造形の材料で形成された層を予め設定された積層方向へ積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、
前記材料を吐出する吐出ヘッドと、
造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる駆動部であり、前記積層方向と直交する面内の方向への前記走査動作を前記吐出ヘッドに行わせることにより、前記層を前記吐出ヘッドに形成させる走査駆動部と、
前記層の表面に接触して前記材料をかき取ることにより前記表面を平坦化する平坦化部材と、
前記平坦化部材によってかき取られた前記材料を前記平坦化部材から除去する付着材料除去部と
を備え、
前記付着材料除去部は、前記材料を除去する流体を流出又は流入させることで前記平坦化部材に付着している前記材料を除去可能にする前記流体の流路を形成する流路形成部を有し、前記流路形成部が流出又は流入させる前記流体を用いることで、前記材料を前記平坦化部材からかき取ることなく、前記平坦化部材から前記材料を除去するものであり、
前記平坦化部材は、前記層を平坦化する平坦化ローラであり、
前記平坦化ローラにおいて造形中の前記造形物と接触する部分から離間した位置に前記付着材料除去部の位置を維持するギャップ維持機構部を更に備え、
前記平坦化ローラは、
前記造形中の前記造形物と接触する部分である造形物接触部と、
前記造形中の前記造形物と接触しないように前記造形物接触部から段差を設けた部分である段差部と
を有し、
前記ギャップ維持機構部は、前記付着材料除去部の位置の調整に用いるローラであるギャップ調整用ローラを有し、
前記付着材料除去部の位置は、前記ギャップ調整用ローラの回転の中心の位置に応じて決まり、
前記ギャップ調整用ローラは、前記平坦化ローラにおける前記段差部に接触しつつ回転することにより、前記平坦化ローラにおいて造形中の前記造形物と接触する部分から離間した位置に前記付着材料除去部の位置を維持することを特徴
とする造形装置。
【請求項7】
造形の材料で形成された層を予め設定された積層方向へ積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、
前記材料を吐出する吐出ヘッドと、
造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる駆動部であり、前記積層方向と直交する面内の方向への前記走査動作を前記吐出ヘッドに行わせることにより、前記層を前記吐出ヘッドに形成させる走査駆動部と、
前記層の表面に接触して前記材料をかき取ることにより前記表面を平坦化する平坦化部材と、
前記平坦化部材によってかき取られた前記材料を前記平坦化部材から除去する付着材料除去部と
、
紫外線を発生する紫外線光源と
を備え、
前記吐出ヘッドは、前記材料として、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インクを吐出し、
前記平坦化部材は、前記紫外線光源からの紫外線の照射によって硬化する前の前記材料の一部をかき取ることで、前記材料の層を平坦化し、
前記付着材料除去部は、前記平坦化部材の表面にある前記材料を前記平坦化部材に対して離間した位置から吸引することにより、前記
平坦化部材の表面から前記材料を除去する
ものであり、
前記平坦化部材の表面にある前記材料を吸引する吸引ノズルと、
加圧した気体を前記平坦化部材の表面に吹き付けることで前記平坦化部材の表面にある前記材料を移動させる気体吹付部と
を有し、
前記吸引ノズルは、前記気体吹付部が吹き付ける気体により移動した前記材料を吸引することを特徴とする造形装置。
【請求項8】
造形の材料で形成された層を予め設定された積層方向へ積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、
前記材料を吐出する吐出ヘッドと、
造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる駆動部であり、前記積層方向と直交する面内の方向への前記走査動作を前記吐出ヘッドに行わせることにより、前記層を前記吐出ヘッドに形成させる走査駆動部と、
前記層の表面に接触して前記材料をかき取ることにより前記表面を平坦化する平坦化部材と、
前記平坦化部材によってかき取られた前記材料を前記平坦化部材から除去する付着材料除去部と
、
紫外線を発生する紫外線光源と
を備え、
前記吐出ヘッドは、前記材料として、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インクを吐出し、
前記平坦化部材は、前記紫外線光源からの紫外線の照射によって硬化する前の前記材料の一部をかき取ることで、前記材料の層を平坦化し、
前記付着材料除去部は、前記平坦化部材に対して離間した位置から加圧した気体を前記平坦化部材の表面に吹き付ける気体吹付部を有し、
前記気体吹付部は、気体の吹き付けにより前記平坦化部材の表面にある前記材料を移動させることにより、前記平坦化部材の表面から前記材料を除去することを特徴とする造形装置。
【請求項9】
造形の材料で形成された層を予め設定された積層方向へ積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、
前記材料を吐出する吐出ヘッドと、
造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる駆動部であり、前記積層方向と直交する面内の方向への前記走査動作を前記吐出ヘッドに行わせることにより、前記層を前記吐出ヘッドに形成させる走査駆動部と、
前記層の表面に接触して前記材料をかき取ることにより前記表面を平坦化する平坦化部材と、
前記平坦化部材によってかき取られた前記材料を前記平坦化部材から除去する付着材料除去部と
、
紫外線を発生する紫外線光源と
を備え、
前記吐出ヘッドは、前記材料として、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インクを吐出し、
前記平坦化部材は、前記層を平坦化する平坦化ローラであり、前記紫外線光源からの紫外線の照射によって硬化する前の前記材料の一部をかき取ることで、前記材料の層を平坦化し、
前記付着材料除去部は、前記材料の粘度を低下させる液体である低粘度化液体を前記平坦化部材に対して離間した位置から前記平坦化部材の表面へ供給する液体供給部を有することを特徴とする造形装置。
【請求項10】
立体的な造形物を造形する造形方法であって、
請求項1から
9のいずれかに記載の造形装置を用いて造形を行うことを特徴とする造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置及び造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層造形法で造形物を造形する場合、それぞれのインクの層について、造形の解像度に応じて設定される厚さで適切に層を形成することが望ましい。そして、この場合、それぞれのインクの層の形成時に、平坦化ローラを用いてインクの層を平坦化することが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、所定の条件に応じて硬化するインク(例えば、紫外線硬化型インク等)を造形の材料として用い、硬化前のインクの一部を平坦化ローラでかき取ることにより、インクの層を平坦化する。
【0005】
また、このようにしてインクの層を平坦化する場合、平坦化ローラの表面に付着したインクについて、適宜除去をする必要がある。そのため、この場合、例えばブレード等を用いて、平坦化ローラの表面に付着したインクを除去することが考えられる。しかし、この場合、平坦化ローラとブレード等とが物理的に接触することで様々な問題が生じるおそれがある。例えば、平坦化ローラやブレードとしては、金属の部材を用いることが考えられる。そして、この場合、平坦化の動作を行うことで、平坦化ローラやブレードが摩耗することになる。また、その結果、ブレード等の定期交換が必要になる。また、このように平坦化ローラとブレードとが接触する場合、平坦化ローラの表面に傷がつくことも考えられる。そして、この場合、傷の影響により、造形物の形状に意図しないスジ等が発生するおそれがある。そのため、造形物の造形時においては、造形の材料の層の平坦化をより適切に行うことが望ましい。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる造形装置及び造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、造形の材料の層を平坦化する方法について、鋭意研究を行った。そして、ブレード等を用いる方法で生じる課題を解決するために、平坦化ローラの表面に付着したインクの除去について、平坦化ローラに対して非接触の状態で行うことを考えた。平坦化ローラに対して非接触の状態とは、例えば、平坦化ローラの表面に固体の部材を接触させない状態のことである。また、この場合、様々な構成で流体を流すことで平坦化ローラの表面に付着したインクの除去を行うことを考えた。そして、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、造形の材料で形成された層を予め設定された積層方向へ積層することで立体的な造形物を造形する造形装置であって、前記材料を吐出する吐出ヘッドと、造形中の前記造形物に対して相対的に移動する走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる駆動部であり、前記積層方向と直交する面内の方向への前記走査動作を前記吐出ヘッドに行わせることにより、前記層を前記吐出ヘッドに形成させる走査駆動部と、前記層の表面に接触して前記材料をかき取ることにより前記表面を平坦化する平坦化部材と、前記平坦化部材によってかき取られた前記材料を前記平坦化部材から除去する付着材料除去部とを備え、前記付着材料除去部は、前記材料を除去する流体を流出又は流入させることで前記平坦化部材に付着している前記材料を除去可能にする前記流体の流路を形成する流路形成部を有し、前記流路形成部が流出又は流入させる前記流体を用いることで、前記材料を前記平坦化部材からかき取ることなく、前記平坦化部材から前記材料を除去する。
【0008】
この構成において、平坦化部材としては、例えば、平坦化ローラを用いることができる。この場合、平坦化部材から材料を除去するとは、例えば、平坦化ローラの表面に付着している材料を除去することである。また、平坦化ローラの表面とは、例えば、平坦化ローラにおいて造形中の造形物と接触する部分のことである。また、造形の材料としては、例えば、吐出時に液体であり、その後に所定の条件に応じて硬化する材料(例えば、紫外線硬化型インク等)を用いる。この場合、例えば、各層の形成時において、液体の状態(未硬化)の材料の一部を平坦化ローラでかき取ることにより、層の平坦化を行う。
【0009】
また、この構成において、材料を平坦化部材からかき取ることなく、平坦化部材から材料を除去するとは、例えば、かき取りに用いるための固体の部材を平坦化部材に接触させずに、平坦化部材に付着している材料を除去することである。また、平坦化部材として平坦化ローラを用いる場合、固体の部材を平坦化部材に接触させないとは、例えば、平坦化ローラの表面に固体の部材を接触させないことである。また、平坦化ローラの表面に固体の部材を接触させないとは、例えば、平坦化ローラの表面に付着した造形の材料(インク等)の除去のために必要な固体の部材について、平坦化ローラの表面に接触させないことである。そのため、平坦化ローラの表面に付着した造形の材料の除去以外の目的で用いる固体の部材については、必要に応じて、平坦化ローラの表面に接触させてもよい。
【0010】
また、付着材料除去部については、例えば、平坦化部材から離間した位置に配設することで、平坦化部材の表面と接触しない状態を保たせる。この場合、付着材料除去部の位置とは、付着材料除去部を構成する固体の部材の位置のことである。このように構成すれば、例えば、平坦化部材に対して他の固体の部材を接触させずに、平坦化部材に付着した造形の材料の除去を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、造形の材料の層の平坦化をより適切に行うことができる。
【0011】
また、平坦化部材に付着した造形の材料を除去する具体的な方法としては、例えば、ポンプ等を用いて造形の材料を吸引する方法等が考えられる。この場合、付着材料除去部は、例えば、平坦化ローラの表面にある材料を平坦化ローラに対して離間した位置から吸引することにより、平坦化ローラの表面から造形の材料を除去する。このように構成すれば、例えば、平坦化ローラに対して非接触の状態で、平坦化ローラの表面から造形の材料を適切に除去できる。また、この場合、ポンプで吸引する動作について、流体を流す動作と考えることができる。また、ポンプについて、流路形成部の一例と考えることができる。また、この場合、例えばポンプの吸引動作について、流体の流路を形成する動作の一例と考えることができる。
【0012】
また、この場合、付着材料除去部としては、例えば、ポンプ及び吸引容器を有する構成を用いることが考えられる。この場合、ポンプとしては、例えば、空気(エア)を吸引するポンプを用いることが考えられる。また、吸引容器としては、例えば、ポンプが空気を吸引することで内部が減圧される容器を用いることが考えられる。また、吸引容器は、例えば、内部が減圧されることで平坦化部材に付着している材料を吸引する。このように構成した場合、ポンプで直接的に造形の材料を吸引するのではなく、ポンプでは空気を吸引して、それによって生じる減圧環境を利用して、造形の材料を吸引することができる。そして、この場合、例えば、造形の材料を直接的にポンプで吸引する場合と比べ、ポンプをより安定に使用することができる。また、これにより、例えば、ポンプの故障等を抑え、ポンプの寿命を適切に長期化することができる。
【0013】
また、ポンプ等を用いて造形の材料を吸引する場合、平坦化ローラの表面への空気の吹き付けを行いつつ、吸引を行うこと等も考えられる。この場合、付着材料除去部として、例えば、吸引ノズル及び気体吹付部を更に有する構成を用いることが考えられる。吸引ノズルとは、例えば、平坦化ローラの表面にある造形の材料を吸引するノズルのことである。また、気体吹付部は、例えば、加圧した気体(圧縮空気等)を平坦化ローラの表面に吹き付けることで平坦化ローラの表面にある造形の材料を移動させる構成である。また、この場合、気体吹付部は、平坦化ローラに対して離間した位置から空気を吹き付けることにより、例えばエアナイフ等のようにして、平坦化ローラの表面から造形の材料を引きはがすように、造形の材料を移動させる。そして、吸引ノズルは、例えば、気体吹付部が吹き付ける気体により移動した造形の材料を吸引して、吸引容器へ送る。このように構成すれば、例えば、造形の材料の吸引をより効率的かつ適切に行うことができる。
【0014】
また、気体吹付部においては、例えば、ポンプにより加圧された空気を平坦化ローラの表面に吹き付けることが考えられる。この場合、ポンプは、例えば、吸引容器内を減圧すると共に、吸引した空気を加圧する。このように構成すれば、例えば、気体吹付部により空気を吹き付ける力と、吸引ノズルでの吸引の力とについて、容易かつ適切にバランスをとることができる。また、この場合、1つのポンプを吸引と空気の吹き出しとに用いることで、付着材料除去部の構成を簡素化することもできる。
【0015】
また、気体吹付部については、必ずしも造形の材料を吸引する構成においてではなく、吸引を行わない構成で用いること等も考えられる。この場合、例えば、気体吹付部で気体の吹き付けを行うことで、平坦化ローラの表面にある材料を移動させる。また、この場合、例えば、所定の回収位置や回収経路へ造形の材料を移動させることで、平坦化ローラの表面から造形の材料を除去することが考えられる。このように構成した場合も、例えば、平坦化ローラの表面から造形の材料を適切に除去できる。また、この場合、空気を吹き付ける動作について、流体を流す動作と考えることができる。また、気体吹付部について、流路形成部の一例と考えることができる。また、この場合、例えば気体吹付部が空気を吹き付ける動作について、流体の流路を形成する動作の一例と考えることができる。
【0016】
また、平坦化部材から造形の材料を除去するために行う流体を流す動作としては、例えば、平坦化部材の表面に造形の材料以外の液体を供給する動作等も考えられる。また、この場合、例えば、造形の材料の粘度を低下させる液体である低粘度化液体等を用いることが考えられる。より具体的に、この場合、付着材料除去部として、例えば、液体供給部を有する構成を用いる。また、液体供給部は、例えば、平坦化部材に対して離間した位置から、低粘度化液体を平坦化部材の表面へ供給する。低粘度化液体としては、例えば、造形の材料の特性に合わせたクリーニング液等を好適に用いることができる。このように構成した場合、低粘度化液体により造形の材料の粘度を低下させることにより、造形の材料の除去をより容易に行うことが可能になる。そのため、このように構成した場合も、例えば、平坦化ローラの表面から造形の材料を適切に除去できる。また、この場合、低粘度化液体を供給する動作について、流体を流す動作と考えることができる。また、液体供給部について、流路形成部の一例と考えることができる。また、この場合、例えば液体供給部がクリーニング液を供給する動作について、流体の流路を形成する動作の一例と考えることができる。
【0017】
また、平坦化部材として平坦化ローラを用いる場合に、平坦化ローラの表面に付着したインクの除去について、平坦化ローラに対して付着材料除去部を接触させずに行うためには、例えば、平坦化ローラにおいて造形中の造形物と接触する部分から離間した位置に付着材料除去部の位置を維持するギャップ維持機構部等を更に用いることが考えられる。この場合、平坦化ローラとしては、例えば、造形物接触部及び段差部を有するローラを用いる。造形物接触部とは、例えば、造形中の造形物と接触する部分である。また、段差部とは、例えば、造形中の造形物と接触しないように造形物接触部から段差を設けた部分である。そして、ギャップ維持機構部としては、例えば、付着材料除去部の位置の調整に用いるローラであるギャップ調整用ローラを有する構成を用いる。この場合、付着材料除去部の位置は、例えば、ギャップ調整用ローラの回転の中心の位置に応じて決まる。そして、ギャップ調整用ローラは、例えば、平坦化ローラにおける段差部に接触しつつ回転することにより、平坦化ローラにおいて造形中の造形物と接触する部分から離間した位置に付着材料除去部の位置を維持する。このように構成すれば、例えば、付着材料除去部の位置を適切に維持することができる。
【0018】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する造形方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。また、この造形方法について、例えば、造形物の製造方法と考えることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えば、造形の材料の層の平坦化をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す図である。
図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、造形装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。
【
図2】比較構成の平坦化部106について説明をする図である。
図2(a)は、比較構成における平坦化部106の要部の構成の一例を示す。
図2(b)は、平坦化部106の全体の構成の一例を示す。
【
図3】本例における平坦化部106について説明をする図である。
図3(a)は、本例における平坦化部106の要部の構成の一例を示す。
図3(b)は、平坦化部106の全体の構成の一例を示す。
【
図4】平坦化部106の変形例について説明をする図である。
図4(a)は、本変形例における平坦化部106の構成の一例を示す。
図4(b)は、吸引ノズル406の先端付近を拡大して示す。
【
図5】ギャップ維持機構206について説明をする図である。
図5(a)、(b)は、平坦化部106におけるギャップ維持機構206付近の構成の一例を示す。
【
図6】吹付ノズル420の特徴について更に詳しく説明をする図である。
図6(a)、(b)は、吹付ノズル420の詳細な構成の一例を示す。
図6(c)、(d)は、吹付ノズル420による空気の吹き付けの効果について説明をする図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。
図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、造形装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。
【0022】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0023】
本例において、造形装置10は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)である。この場合、積層造形法とは、例えば、造形の材料で形成された層を予め設定された積層方向へ積層することで立体的な造形物50を造形する方法のことである。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。また、本例において、造形装置10は、ヘッド部12、造形台14、走査駆動部16、及び制御部20を備える。
【0024】
ヘッド部12は、造形物50の材料を吐出する部分である。また、本例において、造形物50の材料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、機能性の液体のことである。また、本例において、インクについては、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体等と考えることもできる。この場合、インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式でインクの液滴を吐出する吐出ヘッドのことである。また、より具体的に、ヘッド部12は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。紫外線硬化型インクは、吐出時に液体であり、その後に所定の条件に応じて硬化する材料の一例である。
【0025】
また、ヘッド部12は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。これにより、ヘッド部12は、造形物50の周囲に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。また、サポート層52については、例えば、オーバーハング形状を有する造形物50を造形する場合等の造形時に、オーバーハング形状の部分の下に形成される積層構造物等と考えることもできる。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。
【0026】
造形台14は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台14は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部16に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0027】
走査駆動部16は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部12に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台14に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部12に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部16は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部12に行わせる。
【0028】
主走査動作とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、走査駆動部16は、主走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。また、走査駆動部16は、例えば、主走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、例えば造形台14を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
【0029】
副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作である。本例において、走査駆動部16は、主走査動作の合間に、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部16は、副走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせてもよい。
【0030】
また、本例において、主走査動作及び副走査動作は、積層方向と直交する面内の方向への走査動作の一例である。走査駆動部16は、ヘッド部12に主走査動作及び副走査動作を行わせることにより、積層造形法において積層されるそれぞれのインクの層をヘッド部12に形成させる。また、走査駆動部16は、例えば、それぞれのインクの層を形成する毎に、ヘッド部12に積層方向走査を行わせる。
【0031】
積層方向走査とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部12を移動させる動作のことである。また、走査駆動部16は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部12に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例の積層方向走査において、走査駆動部16は、積層方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させる。走査駆動部16は、積層方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させてもよい。
【0032】
制御部20は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、造形装置10における造形の動作を制御する。より具体的に、制御部20は、例えば造形すべき造形物50の形状情報や、カラー情報等に基づき、造形装置10の各部を制御する。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
【0033】
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドと、複数の紫外線光源104と、平坦化部106の一部とを有する。この場合、ヘッド部12が平坦化部106の一部を有するとは、平坦化部106における一部の構成がヘッド部12に配設されることである。また、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドとして、
図1(b)に示すように、インクジェットヘッド102s、インクジェットヘッド102w、インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102k、及びインクジェットヘッド102tを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッドは、造形台14と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0034】
また、これらのインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド102sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。インクジェットヘッド102wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。本例において、白色のインクは、光反射性のインクの一例であり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102kは、着色された造形物50の造形時に用いられる着色用のインクジェットヘッドである。より具体的に、インクジェットヘッド102yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、この場合、YMCKの各色は、減法混色法によるフルカラー表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、インクジェットヘッド102tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。
【0035】
複数の紫外線光源104は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源104のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源104としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源104として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。
【0036】
平坦化部106は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための構成(平坦化手段)であり、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。また、上記においても説明をしたように、本例において、ヘッド部12には、平坦化部106の一部のみが配設されている。より具体的に、本例において、平坦化部106は、平坦化ローラ及びインク除去部を有する。平坦化ローラは、インクの層を平坦化するためのローラである。また、インク除去部は、インクの層の平坦化時に平坦化ローラの表面に付着するインクを除去するための構成である。そして、この場合、平坦化ローラと、インク除去部の一部とが、ヘッド部12に配設される。また、インク除去部の他の部分は、ヘッド部12の外に配設される。平坦化部106の具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0037】
以上のような構成のヘッド部12を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。また、ヘッド部12の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部12は、着色用のインクジェットヘッドとして、上記以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0038】
続いて、平坦化部106の具体的な構成について、更に詳しく説明をする。また、説明の便宜上、先ず、本例における平坦化部106とは異なる構成の平坦化部106(以下、比較構成という)について、説明をする。
【0039】
図2は、比較構成の平坦化部106について説明をする図である。
図2(a)は、比較構成における平坦化部106の要部の構成の一例を示す図であり、平坦化部106においてヘッド部12に配設される部分の構成の一例を示す。
図2(b)は、ヘッド部12の外に配設される部分も含めて、平坦化部106の全体の構成の一例を示す。比較構成において、平坦化部106は、平坦化ローラ202及びインク除去部204を有する。また、インク除去部204は、ブレード302、受け皿304、インク吸引口306、インク吸引経路308、ポンプ310、及び回収容器312を有する。
【0040】
また、この構成において、平坦化ローラ202は、例えば図中に示すように、その表面が造形中の造形物50と接触するように回転する。また、これにより、硬化前(未硬化)の液体の状態のインクの一部をかき取り、インクの層を平坦化する。また、より具体的に、この場合、それぞれのインクの層の形成時において、予め設定された1層分の厚さtよりも厚さが大きくなるように、インクを吐出する。そして、例えば図中にΔと示すような1層分の厚さtを超える部分のインクをかき取ることで、インクの層を平坦化しつつ、所定の厚さに調整されたインクの層を形成する。また、平坦化ローラ202での平坦化を行った後に、紫外線光源104(
図1参照)により紫外線を照射して、インクを硬化させる。
【0041】
また、この場合、インクの層の平坦化時に平坦化ローラ202の表面に付着するインクについては、インク除去部204により、平坦化ローラ202の表面からの除去を行う。また、より具体的に、比較構成の平坦化部106においては、ブレード302を平坦化ローラ202の表面と接触させることで、平坦化ローラ202の表面に付着したインクをはぎ取る。そして、はぎ取ったインクを一旦受け皿304に貯め、受け皿304に貯まったインクについては、インク吸引口306及びインク吸引経路308を介して、ポンプ310により吸引する。また、ポンプ310は、下流側の回収容器312へ吸引したインクを送る。回収容器312は、内部の空気を排気可能なように構成されており、ポンプ310から送られるインクの量に応じて適宜排気を行うことにより、内部にインクを貯留する。このように構成すれば、平坦化ローラ202の表面からのインクの除去を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、平坦化ローラ202を用いて行うインクの層の平坦化を適切に行うことができる。
【0042】
しかし、比較構成の平坦化部106においては、ブレード302を用いることに関連して、様々な問題が生じることも考えられる。例えば、この場合、上記においても説明をしたように、平坦化ローラ202とブレード302との接触により、ブレード302や平坦化ローラ202が摩耗する問題が生じることになる。より具体的に、平坦化ローラ202やブレード302としては、例えば金属の部材を用いることが考えられる。そして、この場合、例えばブレード302等を定期的に交換することが必要になる。また、この場合、ブレード302との接触により、平坦化ローラ202の表面に傷がつくおそれもある。そして、平坦化ローラ202の表面に傷がついた場合、その傷の影響で造形物50に意図しないスジ等が発生する場合がある。
【0043】
また、ブレード302を用いる構成の場合、平坦化ローラ202の表面のインクについて、ブレード302によりはぎ取ることにより、インクをかき落とす。そして、この場合、かき落としたインクは、自重により受け皿304に落下して、受け皿304に貯まることになる。また、受け皿304に貯まったインクについては、インク吸引口306等を介してポンプ310で吸い取ることになる。しかし、この場合、例えば、受け皿304内でインクが固化することや、ゴミ等の堆積物の影響でインク吸引口306が詰まり、適切に吸引ができなくなるおそれがある。また、ブレード302を用いる構成の場合、ブレード302の先端の位置については、平坦化ローラ202の周に沿った一定の範囲(90°の範囲)に合わせることが必要である。そのため、受け皿304の高さ等にも制限が生じ、受け皿304の容量を十分に大きくすることが難しくなる場合もある。そして、この場合、例えばインク吸引口306の詰まり等でブレード302からのインクの吸引が十分に行えなくなると、受け皿304からインクが溢れ、造形物50の上にインクが漏れること等も考えられる。
【0044】
これに対し、本例においては、平坦化ローラ202と接触させるブレード302等を用いず、いわば、平坦化ローラ202に対して非接触の状態で、平坦化ローラ202の表面からのインクの除去を行う。以下、本例における平坦化部106の構成について、更に詳しく説明をする。この場合、本例における平坦化部106とは、例えば、
図1を用いて説明をした造形装置10(
図1参照)において用いる平坦化部106のことである。
【0045】
図3は、本例における平坦化部106について説明をする図である。
図3(a)は、本例における平坦化部106の要部の構成の一例を示す図であり、平坦化部106においてヘッド部12(
図1参照)に配設される部分の構成の一例を示す。
図3(b)は、ヘッド部12の外に配設される部分も含めて、平坦化部106の全体の構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、
図3において、
図2と同じ符号を付した構成は、
図2における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0046】
本例において、平坦化部106は、平坦化ローラ202及びインク除去部204を有する。また、インク除去部204は、クリーニングノズル402、クリーニング液タンク404、吸引ノズル406、インク吸引経路408、バルブ410、回収容器412、フィルタ414、及びポンプ416を有する。また、これらのうち、平坦化ローラ202、クリーニングノズル402、及び吸引ノズル406は、ヘッド部12に配設される。また、その他の構成は、ヘッド部12の外に配設される。
【0047】
平坦化ローラ202は、インクの層を平坦化するためのローラである。平坦化ローラ202は、例えば
図2を用いて説明をした平坦化ローラ202と同一又は同様にして、硬化前のインクの一部をかき取ることで、インクの層を平坦化する。また、本例において、インク除去部204は、付着材料除去部の一例であり、
図2に示した平坦化部106とは異なる構成により、平坦化ローラ202の表面に固体の部材を接触させることなく、平坦化ローラ202の表面からインクを除去する。また、平坦化ローラ202は、インクの層の表面を平坦化する平坦化部材の一例であり、インクの層の表面に接触してインクをかき取ることによりインクの層を平坦化する。また、この場合、インク除去部204は、平坦化ローラ202によってインクの層からかき取られたインクを平坦化ローラ202の表面から除去する。
【0048】
また、より具体的に、本例のインク除去部204の構成のうち、クリーニングノズル402は、液体供給部及びクリーニング液供給部材の一例であり、平坦化ローラ202の表面からのインクの除去を容易にするための液体であるクリーニング液を平坦化ローラ202の表面へ供給する。この場合、平坦化ローラ202の表面からのインクの除去を容易にするとは、例えば、インクの粘度を低下させることである。また、この場合、クリーニング液については、例えば、平坦化ローラ202の周面をクリーニングするための液体等と考えることができる。また、本例において、クリーニング液は、インクの粘度を低下させる低粘度化液体等の一例である。
【0049】
また、クリーニングノズル402は、クリーニング液を、平坦化ローラ202の表面においてインクが除去される前の領域へ供給する。この場合、平坦化ローラ202の表面においてインクが除去される前の領域とは、例えば、図中に示すように、平坦化ローラ202の回転方向において、インクがかき取られる位置から、吸引ノズル406と対向する位置までの間の領域のことである。この範囲の領域へクリーニング液を供給することにより、平坦化ローラ202に付着しているインクの粘度を適切に低下させることができる。また、これにより、例えば、平坦化ローラ202の表面からのインクの除去をより容易にすることができる。
【0050】
また、本例において、クリーニングノズル402は、平坦化ローラ202に対して離間した位置から、平坦化ローラ202の表面へ、クリーニング液を供給する。この場合、造形に使用するインクの特性に合わせたクリーニング液を用いることが好ましい。また、クリーニング液としては、無色の液体を用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、クリーニング液の色が造形物50に影響を与えることを適切に防ぐことができる。また、より具体的に、クリーニング液としては、例えば、クリアインク等を好適に用いることができる。この場合、例えば、インクジェットヘッド102t(
図1参照)から吐出するクリアインクと同じインクをクリーニング液として用いることができる。また、クリアインク以外にも、例えば、造形に使用するインクの溶媒成分(溶剤等)と同一又は同様の成分の液体等をクリーニング液として用いることが考えられる。また、インクの特性に応じて、インクの成分等とは別に、例えば、エタノールやIPA等の各種のアルコール等をクリーニング液として用いること等も考えられる。また、本例において、クリーニングノズル402は、クリーニング液を、クリーニング液タンク404から受け取る。クリーニング液タンク404は、クリーニングノズル402へクリーニング液を供給するタンクである。
【0051】
また、本例の平坦化部106においては、クリーニング液の供給により粘度が低下したインクについて、吸引ノズル406を用いて吸引する。吸引ノズル406は、平坦化ローラ202に近接した位置に配設される吸引部材の一例であり、平坦化ローラ202に接触しないように平坦化ローラ202から離間した位置において平坦化ローラ202の表面と対向するように配設されており、平坦化ローラ202の表面(ローラ面上)にあるインクを吸引することにより、平坦化ローラ202の表面からインクを除去する。また、この場合、吸引ノズル406としては、例えば
図3(b)に示すように、平坦化ローラ202の全幅の範囲と対向して、全幅に対して同時にインクを吸引する構成を用いる。このように構成すれば、例えば、平坦化ローラ202の表面のインクをより適切に除去できる。また、この場合、吸引ノズル406としては、例えば、長手方向の長さが平坦化ローラ202の幅以上のスリット状の開口部を有するノズル等を好適に用いることができる。また、本例において、吸引ノズル406は、インク吸引経路408及びバルブ410を介して回収容器412と接続されており、回収容器412内の圧力が減圧されることにより、インクの吸引を行う。
【0052】
インク吸引経路408は、吸引ノズル406が吸引したインクをヘッド部12の外へ送る経路であり、吸引ノズル406とバルブ410とを接続する。バルブ410は、インク吸引経路408と回収容器412との間に配設される電磁バルブであり、制御部20(
図1参照)の制御に応じて開閉することにより、回収容器412と吸引ノズル406との間の経路を開閉する。また、この場合、バルブ410は、回収容器412と吸引ノズル406との間の経路を開閉することにより、吸引ノズル406にインクを吸引させるタイミングを制御する。この場合、吸引ノズル406にインクを吸引させるタイミングを制御するとは、例えば、平坦化ローラ202でインクの層の平坦化を行う平坦化時に吸引ノズル406にインクを吸引させ、平坦化時以外のタイミングではインクの吸引をさせない非吸引の状態になるように制御を行うことである。また、この場合、造形を開始する前に回収容器412内を減圧しておき、バルブ410を開くことで直ちにインクの吸引が可能になるように準備をしておくことが好ましい。また、この場合、例えば、造形の動作の開始に合わせてバルブ410を開くことで、吸引ノズル406によるインクの吸引を開始することが考えられる。
【0053】
また、回収容器412は、インク吸引経路408及びバルブ410を介して吸引ノズル406と接続されることにより、吸引ノズル406が吸引したインクを受け取り、貯留する。また、これにより、回収容器412は、回収したインクを捕集する容器(廃液捕集ビン)として機能する。また、本例において、回収容器412は、吸引容器の一例でもあり、ポンプ416によって空気を吸引することで内部が減圧された状態で吸引ノズル406とつながることで、吸引ノズル406にインクを吸引させる。この場合、回収容器412について、内部が減圧されることで平坦化ローラ202の表面にある材料を吸引していると考えることができる。また、本例において、回収容器412は、フィルタ414を介して、ポンプ416と接続されている。
【0054】
フィルタ414は、回収容器412とポンプ416との間において空気を通過させるフィルタであり、回収容器412から吸引ノズル406へ流れる空気中に含まれるインクをトラップする。ポンプ416は、回収容器412内を減圧するためのポンプであり、フィルタ414を介して回収容器412内の空気を吸引することにより、回収容器412内を減圧する。また、この場合、ポンプ416は、例えば、吸引した空気を、大気中へ排気する。このように構成すれば、例えば、回収容器412内を適切に減圧することができる。また、これにより、例えば、吸引ノズル406でのインクの吸引を適切に行うことができる。
【0055】
ここで、本例においては、上記のように、ポンプ416で空気を吸引して、回収容器412内を減圧することで、吸引ノズル406でのインクの吸引を行っている。これに対し、吸引ノズル406でインクを吸引することのみを考えた場合、吸引ノズル406とポンプとを直接に接続して、インク自体をポンプで吸引すればよいようにも思われる。しかし、インクのような液体を直接的にポンプで吸引した場合、ポンプの故障が生じやすくなることやポンプの寿命が短くなること等も考えられる。これに対し、本例においては、ポンプ416では空気を吸引して、それによって生じる回収容器412での減圧環境を利用して、インクを吸引している。そのため、本例によれば、例えば、ポンプ416をより安定に使用することができる。また、これにより、例えば、ポンプ416の故障等を抑え、ポンプ416の寿命を適切に長期化することができる。
【0056】
また、本例のようにしてポンプ416を用いる場合、上記においても説明をしたように、バルブ410の開閉によりインクを吸引するタイミングを制御できる。そのため、ポンプ416については、例えば、吸引ノズル406でのインクの吸引を行わないタイミングも含め、動作をオンの状態にしておくことが考えられる。また、例えばより精密な制御を行うことが求められる場合等には、例えば、回収容器412内の圧力を圧力センサにより検出して、回収容器412内の圧力(負圧)が一定の範囲になるようにポンプ416のオン・オフの制御を行ってもよい。また、本例において、ポンプ416については、例えば、吸引ノズル406に負圧を供給する減圧手段等と考えることもできる。
【0057】
以上のような構成のインク除去部204を用いることにより、本例によれば、平坦化ローラ202に対して離間した位置に設けた吸引ノズル406によりインクを吸引することができる。また、これにより、例えば、平坦化ローラ202に対して他の固体の部材を接触させずに、平坦化ローラ202の表面に付着したインクの除去を適切に行うことができる。この場合、平坦化ローラ202の表面に固体の部材を接触させないとは、例えば、平坦化ローラ202の表面に付着したインクの除去のために必要な固体の部材について、平坦化ローラ202の表面に接触させないことである。そのため、平坦化ローラ202の表面に付着したインクの除去以外の目的で用いる固体の部材については、必要に応じて、平坦化ローラ202の表面に接触させてもよい。また、平坦化ローラ202の表面に固体の部材を接触させない状態については、例えば、平坦化ローラ202から離間した位置にインク除去部204を配設した状態等と考えることもできる。この場合、インク除去部204の位置とは、例えば、インク除去部204を構成する固体の部材の位置のことである。
【0058】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、単にインクを吸引ノズル406で吸引するのではなく、クリーニングノズル402を用いてクリーニング液を供給することで、吸引によるインクの除去をより容易にしている。この場合、例えば、クリーニングノズル402により定期的に平坦化ローラ202の表面へクリーニング液を滴下する。そして、平坦化ローラ202を回転させつつ吸引ノズル406での吸引を行うことで、インクと共に、クリーニング液を吸引する。このように構成すれば、例えば、平坦化ローラ202を洗浄しつつ、インクの除去を適切に行うことができる。
【0059】
また、本例のインク除去部204の動作については、例えば、流体を流すことで平坦化ローラ202の表面からインクを除去する動作等と考えることもできる。この場合、流体を流すとは、例えば、インク以外の流体を流すことである。また、より具体的に、本例においては、例えば、ポンプ416で空気を吸引する動作について、流体を流す動作の一例と考えることができる。また、ポンプ416について、流路形成部の一例と考えることができる。この場合、流路形成部とは、例えば、インクを除去する流体を流出又は流入させることで平坦化ローラ202に付着しているインクを除去可能にする流体の流路を形成する構成のことである。インクを除去する流体とは、例えば、インクを除去するために用いる流体のことである。また、本例においては、例えば、ポンプ416の吸引動作について、流体の流路を形成する動作の一例と考えることができる。また、インク除去部204の動作については、例えば、流路形成部が流出又は流入させる流体を用いることで、インクを平坦化ローラ202からかき取ることなく、平坦化ローラ202からインクを除去する動作等と考えることができる。
【0060】
また、本例においては、例えば、クリーニングノズル402によりクリーニング液を供給する動作についても、流体を流す動作の例と考えることもできる。この場合、クリーニングノズル402についても、流路形成部の一例と考えることができる。また、この場合、例えば、クリーニングノズル402がクリーニング液を供給する動作についても、流体の流路を形成する動作の一例と考えることができる。
【0061】
また、インク除去部204の具体的な構成や動作については、上記に説明をした構成や動作に限らず、様々に変更が可能である。例えば、
図3に示した構成において、インク除去部204は、2個のクリーニングノズル402を有する。しかし、クリーニングノズル402の数は、1個又は3個以上であってもよい。また、使用するインクの特徴や、造形に求められる品質等によっては、クリーニング液を用いずに、平坦化ローラ202の表面からのインクの除去を行ってもよい。
【0062】
また、吸引ノズル406によりインクを吸引する位置についても、平坦化ローラ202に付着しているインクを適切に吸引できる範囲で、適宜変更が可能である。また、この場合、平坦化ローラ202の中心よりもインクを吸引する位置が高くなるように、平坦化ローラ202の上半分の領域でインクを吸引することが特に好ましい。また、インクの吸引の漏れを防ぐためには、例えば、平坦化ローラ202の回転方向に沿って複数の吸引ノズル406を配設してもよい。この場合、複数の吸引ノズル406のそれぞれの吸引力については、同程度の調整することが考えられる。また、複数の吸引ノズル406のそれぞれの吸引力については、互いに異ならせてもよい。また、吸引ノズル406の先端等での詰まりを防ぐためには、例えば、インクの吸引が不要なタイミング等に、逆方向へ空気を噴出させてもよい。この場合、例えば3方弁等を用いて、吸引ノズル406とポンプ416との接続の仕方を一時的に変更すること等が考えられる。
【0063】
続いて、平坦化部106の構成の変形例等について、更に詳しく説明をする。
図4は、平坦化部106の変形例について説明をする図である。
図4(a)は、本変形例における平坦化部106の構成の一例を示す。
図4(b)は、吸引ノズル406の先端付近を拡大して示す図である。尚、以下に説明をする点を除き、
図4において、
図1~3と同じ符号を付した構成は、
図1~3における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0064】
本変形例においても、平坦化部106は、平坦化ローラ202及びインク除去部204を有する。平坦化ローラ202は、
図3に示した構成における平坦化ローラ202と同一又は同様にして、インクの層を平坦化する。また、本変形例において、インク除去部204は、吸引ノズル406、インク吸引経路408、回収容器412、フィルタ414、ポンプ416、吹付ノズル420、及び空気供給経路422を有する。これらの構成のうち、吸引ノズル406、インク吸引経路408、回収容器412、フィルタ414、及びポンプ416は、平坦化ローラ202の表面に付着しているインクを吸引により除去するための構成である。これらの構成は、
図3において同じ符号を付した構成と同一又は同様に動作をすることで、平坦化ローラ202の表面からのインクの除去を行う。
【0065】
また、インク除去部204の構成のうち、吹付ノズル420及び空気供給経路422は、吸引ノズル406等を用いて行うインクの吸引をより適切に行うための構成である。また、これらのうち、吹付ノズル420は、気体吹付部の一例であり、加圧した気体(圧縮空気等)を平坦化ローラ202の表面に吹き付けることで、平坦化ローラ202の表面にあるインクを移動させる。また、より具体的に、本変形例において、吹付ノズル420は、例えば公知のエアナイフ等のように圧縮空気を吹き付けるノズルであり、平坦化ローラ202に対して離間した位置から空気を吹き付けることにより、例えば
図4(b)に示すように、平坦化ローラ202の表面(外周面)からインクを引きはがすようにして、インクを移動させる。また、この場合、吹付ノズル420は、吸引ノズル406による吸引位置の付近にインクを集めるように、平坦化ローラ202の表面のインクを移動させる。そして、この場合、吸引ノズル406は、例えば
図4(b)に示すように、吹付ノズル420が吹き付ける空気により移動したインクを吸引することになる。そのため、本変形例によれば、平坦化ローラ202の表面への空気の吹き付けを行いつつインクの吸引を行うことにより、吸引ノズル406によるインクの吸引をより効率的かつ適切に行うことができる。
【0066】
また、本変形例において、吹付ノズル420は、空気供給経路422を介してポンプ416と接続されており、ポンプ416により加圧された圧縮空気を平坦化ローラ202の表面に吹き付ける。この場合、空気供給経路422は、ポンプ416と吹付ノズル420とをつなぐ空気の流路である。また、ポンプ416は、回収容器412内を減圧すると共に、吸引した空気を加圧する。そして、加圧した空気を、空気供給経路422を介して吹付ノズル420へ供給する。このように構成すれば、例えば、ポンプ416の排気力を利用して吹付ノズル420による空気の吹き付けを行うことができる。また、これにより、例えば、吹付ノズル420により空気を吹き付ける力と、吸引ノズル406での吸引の力とについて、容易かつ適切にバランスをとることができる。また、この場合、1つのポンプ416を吸引と空気の吹き出しとに用いることで、インク除去部204の構成を適切に簡素化することもできる。
【0067】
また、吹付ノズル420については、平坦化ローラ202及び吸引ノズル406に近接した位置に配設することが好ましい。この場合、吸引ノズル406及び吹付ノズル420について、例えば図中に示すように、平坦化ローラ202の回転方向に沿って並ぶように配置することが好ましい。また、この場合、平坦化ローラ202の回転方向において、吸引ノズル406が上流側になり、吹付ノズル420が下流側になるように、吸引ノズル406及び吹付ノズル420を配設することが好ましい。このように構成すれば、例えば、平坦化ローラ202の表面のインクをより確実に除去することができる。また、本変形例においては、ポンプ416で空気を吸引する動作や、吹付ノズル420により空気を吹き付ける動作について、流体を流す動作の一例と考えることができる。そのため、本変形例においても、インク除去部204の動作について、流体を流すことで平坦化ローラ202の表面からインクを除去する動作等と考えることができる。また、この場合、吹付ノズル420について、流路形成部の一例と考えることができる。また、この場合、吹付ノズル420により空気を吹き付ける動作について、流体の流路を形成する動作の一例と考えることができる。
【0068】
また、本変形例のインク除去部204のより具体的な動作に関しては、例えば、造形物の造形時において、平坦化ローラ202の状態に関わらず、ポンプ416をオンにしておくことが考えられる。このように構成すれば、例えば、空気の吹き付けの動作やインクの吸引の動作について、立ち上がりに遅れが生じることを適切に防ぐことができる。また、この場合、例えば、造形装置10(
図1参照)での造形の動作時にはポンプ416を常時オンにておき、造形装置10の待機時等にはポンプ416をオフにすること等が考えられる。また、本変形例においても、例えば、回収容器412の内部を減圧することで、回収容器412を吸引容器として機能させてもよい。この場合、回収容器412について、圧力ダンパとして機能させると考えることもできる。また、この場合、例えば、回収容器412の内部に圧力センサを配置して、回収容器412内の圧力を圧力センサにより検出することで、回収容器412内の圧力(負圧)が一定の範囲になるようにポンプ416のオン・オフの制御を行う。また、この場合、例えば
図3に示したインク除去部204の構成と同様に、回収容器412と吸引ノズル406との間にバルブを更に配設することがより好ましい。
【0069】
また、上記において説明をしたように、本変形例において、吹付ノズル420は、空気を吹き付けることにより、平坦化ローラ202の表面からインクを引きはがすようにして、インクを移動させる。そのため、吹付ノズル420については、例えば、平坦化ローラ202の表面(周面)に付着したインクを分離する分離部材等と考えることもできる。また、この場合、ポンプ416については、例えば、分離部材に正圧を供給する加圧発生手段等と考えることもできる。
【0070】
また、インク除去部204の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、更に様々な変形を更に行ってもよい。例えば、上記においては、吹付ノズル420により空気を吹き付ける力と、吸引ノズル406での吸引の力とについて、主に、同程度に調整する場合の構成を説明した。しかし、インク除去部204の構成の更なる変形例においては、吹付ノズル420により空気を吹き付ける力と、吸引ノズル406での吸引の力とを意図的に異ならせてもよい。また、この場合、例えば、吹付ノズル420により空気を吹き付ける力について、吸引ノズル406での吸引の力よりも弱くすること等が考えられる。
【0071】
また、上記においては、主に、空気等の気体を吹付ノズル420により吹き付ける構成を説明した。しかし、インク除去部204の構成の更なる変形例においては、気体ではなく、液体を吹付ノズル420により吹き付けること等も考えられる。また、この場合、例えば、吹付ノズル420によりクリーニング液を吹き付けること等が考えられる。このように構成した場合も、吹付ノズル420を用いて、平坦化ローラ202上のインクを適切に移動させることができる。また、これにより、例えば、吸引ノズル406によるインクの吸引をより適切に行うことができる。また、この場合、クリーニング液を吹き付けることにより、吸引ノズル406の表面からのインクの除去をより確実に行うこと等も可能になる。また、この場合、吸引ノズル406について、クリーニングノズルを兼ねた構成と考えることもできる。また、インク除去部204の更なる変形例においては、吹付ノズル420の他に、クリーニングノズルを更に有してもよい。この場合、クリーニングノズルについては、例えば、
図3に示した構成におけるクリーニングノズル402と同一又は同様に配設することが考えられる。
【0072】
続いて、平坦化ローラ202とインク除去部204との位置関係について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、
図3や
図4を用いて説明をしたインク除去部204においては、平坦化ローラ202の表面に固体の部材を接触させることなく、平坦化ローラ202の表面からインクを除去する。しかし、この場合、例えば吸引ノズル406等と平坦化ローラ202との間の距離(ギャップ)が大きくなりすぎると、高い精度でインクを除去することが難しくなるおそれがある。そのため、吸引ノズル406の先端と、平坦化ローラ202の外周面との間のギャップについては、例えば、10~100μm程度にすることが好ましい。また、この場合、この範囲内で、ギャップが小さいほど好ましいと考えられる。また、このような狭いギャップを保つためには、ギャップを維持するための機構(ギャップ維持機構)を用いることが考えられる。
【0073】
図5は、ギャップ維持機構206について説明をする図であり、ギャップ維持機構206を用いる場合の平坦化部106の構成の一例を示す。
図5(a)、(b)は、平坦化部106におけるギャップ維持機構206付近の構成について、副走査方向及び主走査方向のそれぞれと平行な方向から見た構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、
図5において、
図1~4と同じ符号を付した構成は、
図1~4における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0074】
本変形例において、平坦化部106は、平坦化ローラ202及びインク除去部204に加え、ギャップ維持機構206を更に有する。ギャップ維持機構206は、平坦化ローラ202において造形中の造形物と接触する部分から離間した位置にインク除去部204の位置を維持する機構である。また、本変形例において、平坦化ローラ202としては、外周面に段差を有するローラを用いる。より具体的に、平坦化ローラ202は、図中に示すように、造形物接触部502及び段差部504を有する。造形物接触部502は、平坦化ローラ202において造形中の造形物と接触する部分である。また、造形物接触部502については、例えば、平坦化ローラ202の最外周を構成する部分等と考えることもできる。段差部504は、平坦化ローラ202の外周面において造形物接触部502の側方に形成された段差状の領域である。また、段差部504については、例えば、造形中の造形物と接触しないように造形物接触部502から段差を設けた部分等と考えることもできる。また、図示は省略しているが、本変形例において、段差部504は、例えば、造形物接触部502の両側(副走査方向における両側)に形成されている。
【0075】
また、本変形例において、ギャップ維持機構206は、複数のギャップ調整用ローラ512及び複数のピン514を有する。この場合、ギャップ調整用ローラ512は、インク除去部204の位置の調整に用いられるローラである。また、それぞれのギャップ調整用ローラ512の中心の位置は、例えば図中に示すように、ピン514により、インク除去部204に対して固定される。また、複数のギャップ調整用ローラ512のそれぞれは、副走査方向におけるインク除去部204の一方側及び他方側のそれぞれにおいて、外周面が段差部504と接触するように配設される。このように構成した場合、インク除去部204の位置は、例えば、ギャップ調整用ローラ512の回転の中心の位置に応じて決まることになる。
【0076】
また、この場合、インクの層の平坦化時に平坦化ローラ202が回転すると、ギャップ調整用ローラ512は、平坦化ローラ202における段差部504に接触しつつ回転する。そして、この場合、ギャップ調整用ローラ512において、ピン514により支持される中心の位置は、一定の位置に保たれる。そして、この場合、インク除去部204の位置は、平坦化ローラ202において造形中の造形物と接触する部分である造形物接触部502から離間した位置に維持されることになる。そのため、本変形例によれば、例えば、インク除去部204の位置を適切に維持することができる。また、これにより、例えば、インク除去部204における吸引ノズル406や吹付ノズル420の位置を適切に調整することができる。また、この場合、段差部504を有する平坦化ローラ202を用いることにより、例えば、平坦化ローラ202においてギャップ調整用ローラ512が接触する領域にインクが付着することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、平坦化ローラ202に付着したインクの影響等によりインク除去部204の位置の調整の誤差等が生じることを適切に防ぐことができる。
【0077】
尚、造形に求められる精度等によっては、例えば、段差部504を有さない平坦化ローラ202を用いること等も考えられる。この場合、ギャップ調整用ローラ512について、例えば、平坦化ローラ202の外周面と接するように配設することが考えられる。このような場合も、求められる精度等に応じて、インク除去部204の位置を適切に調整できる。また、本変形例のように、ギャップ調整用ローラ512等を用いる場合、平坦化ローラ202に対し、固体の部材であるギャップ調整用ローラ512が接触することになる。しかし、この場合、ギャップ調整用ローラ512については、インク除去部204の位置調整に用いる部材であり、平坦化ローラ202の表面に付着したインクの除去のために直接的に必要な固体の部材ではないと考えることができる。この場合、インクの除去のために直接的に必要な固体の部材とは、例えば、インクの除去時にインクに接触する部材のことである。また、インクの除去のために直接的に必要な固体の部材については、例えば、他の固体の部材を介さずに平坦化ローラ202の表面に付着したインクを移動させる固体の部材等と考えることもできる。
【0078】
続いて、吹付ノズル420を有するインク除去部204を用いる場合に関し、吹付ノズル420に関する補足説明や、更なる変形例の説明等を行う。
図6は、吹付ノズル420の特徴について更に詳しく説明をする図である。また、
図6に示した吹付ノズル420は、例えば、
図4等を用いて説明をしたインク除去部204における吹付ノズル420である。
【0079】
図6(a)、(b)は、吹付ノズル420の詳細な構成の一例を示す。上記においても説明をしたように、吹付ノズル420は、例えばエアナイフ等のように圧縮空気を吹き付けるノズルである。そして、この場合、吹付ノズル420としては、例えば
図6(a)に示すように、スリット状の吹出口602を有するノズル等を好適に用いることができる。この場合、吹付ノズル420は、例えば、図中に示すように、1つの吹出口602を有する。また、吹付ノズル420としては、例えば、複数の吹出口602を有する構成を用いることも考えられる。この場合、吹付ノズル420は、吹付ノズル420の長手方向へ並ぶ複数の吹出口602を有する。このように構成した場合も、十分に小さな間隔で複数の吹出口602を並べることにより、エアナイフ等のような圧縮空気の吹き付けを適切に行うことができる。
【0080】
図6(c)、(d)は、吹付ノズル420による空気の吹き付けの効果について説明をする図である。上記のような構成の吹付ノズル420を用いた場合、平坦化ローラ202の表面に圧縮空気を吹き付けることで、平坦化ローラ202上のインクを移動させることができる。また、この場合、平坦化ローラ202上のインクが移動することで、平坦化ローラ202上に、図中に示すように、境界612、未除去領域614、及び除去済領域616が形成されることになる。この場合、境界612は、未除去領域614と除去済領域616との境界である。未除去領域614は、平坦化ローラ202上においてインクが残っている領域である。また、除去済領域616は、吹付ノズル420による空気の吹き付けによりインクが移動することで平坦化ローラ202上においてインクが除去されている領域である。
【0081】
また、この場合、境界612の形状は、例えば、吹付ノズル420における吹出口602の構成に応じて決まることになる。より具体的に、例えば、
図6(a)に示すような直線的なスリット状の吹出口602を有する吹付ノズル420を用いる場合や、
図6(b)に示すような直線上に複数の吹出口602が並ぶ吹付ノズル420を用いる場合、未除去領域614と除去済領域616との境界612は、例えば
図6(c)に示すように、直線状になる。また、吹付ノズル420の構成の変形例においては、例えば
図6(a)、(b)等に示す構成ではなく、直線的以外のスリット状の吹出口602を有する吹付ノズル420や直線以外の線上に複数の吹出口602が並ぶ吹付ノズル420を用いること等も考えられる。そして、この場合、未除去領域614と除去済領域616との境界612は、例えば
図6(d)に示すように、非直線状になる。また、より具体的に、
図6(d)においては、平坦化ローラ202の回転方向において中央部分が最も上流側になり、両端が最も下流側になるような折れ線状の境界612が形成される場合の例を図示している。
【0082】
ここで、インク除去部204の様々な変形例に関し、上記においては、吹付ノズル420について、主に、インクの吸引を行う吸引ノズル406(
図3参照)と組み合わせて用いる場合について、説明をした。しかし、インク除去部204の構成の更なる変形例においては、例えば、吸引ノズル406によるインクの吸引を行わない構成において、吹付ノズル420を用いること等も考えられる。この場合も、吹付ノズル420は、例えば、圧縮空気等の吹き付けを行うことで、平坦化ローラ202の表面にあるインクを移動させる。また、この場合、吸引ノズル406を用いる代わりに、例えば、所定の回収位置や回収経路へインクを移動させることで、平坦化ローラ202の表面からインクを除去することが考えられる。より具体的に、例えば、
図6(d)に示すように空気の吹き付けを行う場合、境界612の両端から平坦化ローラ202の外側へインクを流出させて、インクを回収すること等も考えられる。このように構成した場合も、平坦化ローラ202の表面に付着した造形の材料の除去を適切に行うことができる。
【0083】
また、上記においては、主に、インクを吸引することで平坦化ローラ202の表面に固体の部材を接触させずにインクの除去を行う場合の構成や動作について、説明をした。しかし、例えば吸引ノズル406によるインクの吸引を行わない構成において、吹付ノズル420を用いる場合等には、気体の吹きつけを行うことで、インクの除去が容易になっていると考えることもできる。そして、この場合、例えばブレード等を用いるとしても、ブレードを強い力で平坦化ローラ202に接触させることなく、平坦化ローラ202の表面からのインクの除去を行うことが可能になる。また、これにより、例えば、従来の構成においてブレード等を用いる場合に生じる問題の発生を適切に抑えることができる。そのため、吸引ノズル406によるインクの吸引を行わない構成において、吹付ノズル420を用いる場合には、ブレード等を用いてインクの除去を行うこと等も考えられる。また、上記においては、クリーニング液を用いる構成についても、主に、インクの吸引を行う吸引ノズル406と組み合わせる場合の構成を説明した。しかし、クリーニング液を用いる場合も、例えばブレード等を用いるとしても、ブレードを強い力で平坦化ローラ202に接触させることなく、平坦化ローラ202の表面からのインクの除去を容易に行うことが可能になる。そのため、クリーニング液を用いる場合についても、例えば、吸引ノズル406によるインクの吸引を行わない構成において、ブレード等を用いてインクの除去を行うこと等も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、例えば造形装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0085】
10・・・造形装置、12・・・ヘッド部、14・・・造形台、16・・・走査駆動部、20・・・制御部、50・・・造形物、52・・・サポート層、102・・・インクジェットヘッド、104・・・紫外線光源、106・・・平坦化部、152・・・層、202・・・平坦化ローラ、204・・・インク除去部、206・・・ギャップ維持機構、302・・・ブレード、304・・・受け皿、306・・・インク吸引口、308・・・インク吸引経路、310・・・ポンプ、312・・・回収容器、402・・・クリーニングノズル、404・・・クリーニング液タンク、406・・・吸引ノズル、408・・・インク吸引経路、410・・・バルブ、412・・・回収容器、414・・・フィルタ、416・・・ポンプ、420・・・吹付ノズル、422・・・空気供給経路、502・・・造形物接触部、504・・・段差部、512・・・ギャップ調整用ローラ、514・・・ピン、602・・・吹出口、612・・・境界、614・・・未除去領域、616・・・除去済領域