(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/15 20060101AFI20220105BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220105BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20220105BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B41J2/15
B41J2/01 307
B41J2/205
B41J2/21
(21)【出願番号】P 2018012228
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
【審査官】四垂 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-058717(JP,A)
【文献】特開2000-229424(JP,A)
【文献】特開2016-135577(JP,A)
【文献】特開2009-292102(JP,A)
【文献】特開平11-058716(JP,A)
【文献】特開2005-088486(JP,A)
【文献】特開2004-009527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体へインクを吐出する複数のインクジェットヘッドと、
前記媒体に対して相対的に予め設定された主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部と
を備え、
前記主走査方向へ1個以上のインクジェットヘッドが並ぶ列をヘッド列と定義した場合、前記複数のインクジェットヘッドは、前記副走査方向における位置がずれた複数の前記ヘッド列が形成されるように配設され、
前記複数のインクジェットヘッドとして、少なくとも、
混色により減法混色法での色の表現が原理的に可能になる基本色である1次色用のインクジェットヘッドと、
複数の前記1次色の混色により原理的に得られる色である2次色用のインクジェットヘッドと
を備え、
前記2次色用のインクジェットヘッドとして、少なくとも、レッド色又はブルー色のいずれかの色について、相対的に濃い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである濃インク用ヘッドと、相対的に薄い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである淡インク用ヘッドとを備え、
前記レッド色又はブルー色のいずれかの色について、前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとは、異なる前記ヘッド列に配設され
、
前記複数のインクジェットヘッドのいずれかとして、黒色のインクを吐出するインクジェットヘッドである黒色用ヘッドを備え、
前記黒色用ヘッドとして、前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとを備え、
黒色用の前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとは、同じ前記ヘッド列に配設されることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記2次色用のインクジェットヘッドとして、少なくとも、レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれについて、前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとを備え、
レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれについて、同じ色用の前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとは、異なる前記ヘッド列に配設されることを特徴とする請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項3】
レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記濃インク用ヘッドは、同じ前記ヘッド列に配設され、
レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記淡インク用ヘッドは、同じ前記ヘッド列に配設されることを特徴とする請求項
2に記載の印刷装置。
【請求項4】
少なくともいずれかの前記1次色用のインクジェットヘッドは、レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記濃インク用ヘッドと同じ前記ヘッド列、又は、レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記淡インク用ヘッドと同じ前記ヘッド列に配設されることを特徴とする請求項
3に記載の印刷装置。
【請求項5】
媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体へインクを吐出する複数のインクジェットヘッドと、
前記媒体に対して相対的に予め設定された主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部と
を備え、
前記主走査方向へ1個以上のインクジェットヘッドが並ぶ列をヘッド列と定義した場合、前記複数のインクジェットヘッドは、前記副走査方向における位置がずれた複数の前記ヘッド列が形成されるように配設され、
前記複数のインクジェットヘッドとして、少なくとも、
混色により減法混色法での色の表現が原理的に可能になる基本色である1次色用のインクジェットヘッドと、
複数の前記1次色の混色により原理的に得られる色である2次色用のインクジェットヘッドと
を備え、
前記2次色用のインクジェットヘッドとして、少なくとも、レッド色又はブルー色のいずれかの色について、相対的に濃い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである濃インク用ヘッドと、相対的に薄い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである淡インク用ヘッドとを備え、
前記レッド色又はブルー色のいずれかの色について、前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとは、異なる前記ヘッド列に配設され、
前記2次色用のインクジェットヘッドとして、少なくとも、レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれについて、前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとを備え、
レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれについて、同じ色用の前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとは、異なる前記ヘッド列に配設され、
レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記濃インク用ヘッドは、同じ前記ヘッド列に配設され、
レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記淡インク用ヘッドは、同じ前記ヘッド列に配設され、
少なくともいずれかの前記1次色用のインクジェットヘッドは、レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記濃インク用ヘッドと同じ前記ヘッド列、又は、レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記淡インク用ヘッドと同じ前記ヘッド列に配設され、
全ての前記1次色用のインクジェットヘッドが、レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記濃インク用ヘッドと同じ前記ヘッド列、又は、レッド色、グリーン色、及びブルー色のそれぞれの色用の前記淡インク用ヘッドと同じ前記ヘッド列に配設されることを特徴
とする印刷装置。
【請求項6】
前記複数のインクジェットヘッドは、4以下の列数の複数の前記ヘッド列に分けて配設されることを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体へインクを吐出する複数のインクジェットヘッドと、
前記媒体に対して相対的に予め設定された主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部と
を備え、
前記主走査方向へ1個以上のインクジェットヘッドが並ぶ列をヘッド列と定義した場合、前記複数のインクジェットヘッドは、前記副走査方向における位置がずれた複数の前記ヘッド列が形成されるように配設され、
前記複数のインクジェットヘッドとして、少なくとも、
混色により減法混色法での色の表現が原理的に可能になる基本色である1次色用のインクジェットヘッドと、
複数の前記1次色の混色により原理的に得られる色である2次色用のインクジェットヘッドと
を備え、
前記2次色用のインクジェットヘッドとして、少なくとも、レッド色又はブルー色のいずれかの色について、相対的に濃い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである濃インク用ヘッドと、相対的に薄い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである淡インク用ヘッドとを備え、
前記レッド色又はブルー色のいずれかの色について、前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとは、異なる前記ヘッド列に配設され、
前記1次色用のインクジェットヘッドとして、互いに異なる色の前記1次色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドを備え、かつ、それぞれの色用の前記1次色用のインクジェットヘッドとして、1種類の濃度のインク用のインクジェットヘッドのみを備えることを特徴
とする印刷装置。
【請求項8】
1回の主走査動作において前記媒体の各位置に吐出されるインクの量の合計を主走査時インク量と定義し、印刷の解像度に応じて設定されるインクの吐出位置の全てに1回のインクの吐出を行った場合の前記主走査時インク量を100%の前記主走査時インク量と定義した場合、前記複数のインクジェットヘッドは、複数の前記ヘッド列が形成されるように配設されることにより、最大の前記主走査時インク量が100%以下になるように、前記媒体へインクを吐出することを特徴とする請求項1から
7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
少なくともいずれかの前記1次色用のインクジェットヘッドは、吐出するインクの容量として少なくとも2種類の容量を設定可能なインクジェットヘッドであることを特徴とする請求項1から
8のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項10】
媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、
前記媒体へインクを吐出する複数のインクジェットヘッドに、
前記媒体に対して相対的に予め設定された主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを行わせ、
前記主走査方向へ1個以上のインクジェットヘッドが並ぶ列をヘッド列と定義した場合、前記複数のインクジェットヘッドは、前記副走査方向における位置がずれた複数の前記ヘッド列が形成されるように配設され、
前記複数のインクジェットヘッドとして、少なくとも、
混色により減法混色法での色の表現が原理的に可能になる基本色である1次色用のインクジェットヘッドと、
複数の前記1次色の混色により原理的に得られる色である2次色用のインクジェットヘッドと
を用い、
前記1次色用のインクジェットヘッドとして、互いに異なる色の前記1次色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドを用い、かつ、それぞれの色用の前記1次色用のインクジェットヘッドとして、1種類の濃度のインク用のインクジェットヘッドのみを用い、
前記2次色用のインクジェットヘッドとして、少なくとも、レッド色又はブルー色のいずれかの色について、相対的に濃い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである濃インク用ヘッドと、相対的に薄い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである淡インク用ヘッドとを用い、
前記レッド色又はブルー色のいずれかの色について、前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとは、異なる前記ヘッド列に配設されることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタが広く用いられている。また、インクジェットプリンタ用のインクとして、シアン色やマゼンタ色について、通常の濃度のインクよりも色の濃度の薄い淡インク(ライトインク)を用いる構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット方式でカラー印刷を行う方法として、従来から、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C色)、及びブラック(K)色の4色のインク(基本4色インク)を用いる方法(4色分版方式)が広く用いられている。また、近年、YMCKの4色に加え、レッド(R)色、グリーン(G)色、及びブルー(B)色の3色を加えた7色のインクで印刷を行う方法(7色分版方式)等も検討されている。この場合、RGBの各色のインクを用いることにより、高精彩な印刷をより適切に行うことができる。また、複数色のインクを混色させることなくRGBの各色を表現できるため、印刷対象の媒体(メディア)の各位置に着弾させるインクの量(着弾量)を低減させることも可能になる。また、この場合、滲みが発生しにくくなるため、高速な印刷をより適切に行うこと等も可能になる。
【0005】
しかし、RGBの各色のインク等を用いて印刷を行う構成については、まだ十分に検討されていない事項も多く残っている。そのため、従来、RGBの各色のインク等を用いる場合に関し、より適切な構成で印刷を行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、例えば7色分版方式等のように、減法混色法での基本色となる1次色のインクに加えて2次色のインクを用いる場合に関し、鋭意研究を行った。この場合、1次色とは、例えば、YMCの各色のことである。また、2次色とは、例えば、RGBの各色のような、複数の1次色の混色により原理的に得られる色のことである。
【0007】
また、この鋭意研究により、本願の発明者は、2次色を用いることで印刷結果において粒状感(粒状性、粒子化)が目立ちやすくなる場合があることを見出した。また、この現象に関し、2次色のインクのドットが1次色のインクのドットと比べて暗く見えることが原因であると考えた。より具体的に、減法混色法の基本色である1次色のインクは、所定の波長範囲の光を吸収する性質を有している。また、上記のように、2次色とは、複数の1次色の混色により原理的に得られる色である。そして、この場合、2次色のインクが光を吸収する波長範囲は、混色されるそれぞれの1次色が光を吸収する波長範囲を合わせた範囲になると考えられる。また、その結果、2次色のインクのドットが反射する光の量は、1次色のインクのドットが反射する光と比べて、少なくなる。また、この場合、反射する光が少なくなることにより、2次色のインクのドットは、1次色のインクのドットと比べて明度が低く、暗く見えることになる。
【0008】
そこで、本願の発明者は、2次色のインクについて、通常の色の濃度のインクである濃インク(濃色インク)に加え、濃インクと比べて色が薄いインクである淡インク(淡色インク)を用いることを考えた。このように構成すれば、例えば、薄い色を表現する部分について淡インクを用いて印刷を行うことで、粒状感が目立つことを適切に防ぐことができる。また、本願の発明者は、この場合において、2次色のインクのうち、R色やB色について、特に粒状感が目立ちやすくなることを見出した。そのため、本願の発明者は、少なくともR色又はB色のいずれかについて、淡インクを用いることを考えた。
【0009】
しかし、この場合、単に淡インクを用いると、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が過剰になる場合がある。また、その結果、滲みが発生しやすくなり、高速な印刷を行うことが難しくなる場合がある。これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、R色やB色等の2次色用の淡インクを単に用いるのではなく、濃インク用のインクジェットヘッド(濃インク用ヘッド)と淡インク用のインクジェットヘッド(淡インク用ヘッド)とについて、各回の主走査動作時にインクを吐出する領域がずれるように、副走査方向における位置をずらして配設することを考えた。このように構成すれば、例えば、2次色用の淡インクを用いる場合にも、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が過剰になることを適切に防ぐことができる。
【0010】
また、本願の発明者は、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、前記媒体へインクを吐出する複数のインクジェットヘッドと、前記媒体に対して相対的に予め設定された主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部とを備え、前記主走査方向へ1個以上のインクジェットヘッドが並ぶ列をヘッド列と定義した場合、前記複数のインクジェットヘッドは、前記副走査方向における位置がずれた複数の前記ヘッド列が形成されるように配設され、前記複数のインクジェットヘッドとして、少なくとも、混色により減法混色法での色の表現が原理的に可能になる基本色である1次色用のインクジェットヘッドと、複数の前記1次色の混色により原理的に得られる色である2次色用のインクジェットヘッドとを備え、前記2次色用のインクジェットヘッドとして、少なくとも、レッド色又はブルー色のいずれかの色について、相対的に濃い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである濃インク用ヘッドと、相対的に薄い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである淡インク用ヘッドとを備え、前記レッド色又はブルー色のいずれかの色について、前記濃インク用ヘッドと、前記淡インク用ヘッドとは、異なる前記ヘッド列に配設される。
【0011】
このように構成した場合、1次色及び2次色のインクを用いて印刷を行うことにより、例えば、高精彩な印刷をより適切に行うことができる。また、この場合、レッド(R)色又はブルー(B)色の少なくともいずれかについて淡インクを用いることにより、粒状感が目立つことを適切に防ぐことができる。更には、2次色用の淡インク用ヘッドについて、同色の濃インク用ヘッドと異なるヘッド列に配設することで、副走査方向における位置をずらして適切に配設することができる。また、これにより、例えば、2次色用の淡インクを用いる場合にも、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が過剰になることを適切に防ぐことができる。また、この場合、インクの合計量を低減することにより、例えば、インクの滲みを発生しにくくすることができる。また、インクの滲みを発生しにくくすることで、例えば、高速な印刷をより適切に行うことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、高精彩かつ高速な印刷をより適切に行うことができる。
【0012】
ここで、濃インクについて、相対的に濃い色とは、同じ色用の淡インクよりも濃い色のことである。また、淡インクについて、相対的に薄い色とは、同じ色用の淡インクよりも薄い色のことである。また、この構成において、複数のインクジェットヘッドのそれぞれが吐出するインクとしては、例えば、蒸発乾燥型のインクを好適に用いることができる。蒸発乾燥型のインクとは、例えば、媒体に定着させるために溶媒を蒸発させるインクのことである。この場合、各色のインクは、例えば、色材及び溶媒を含む。また、印刷装置は、インクを乾燥させるための乾燥手段(例えば、ヒータ等)を更に備えることが好ましい。また、この場合、乾燥手段について、インクを定着させる定着手段の一例と考えることができる。
【0013】
また、この構成において、それぞれのヘッド列におけるインクジェットヘッドは、例えば、他のヘッド列におけるインクジェットヘッドと副走査方向における位置が重ならないように配設される。また、2次色用の淡インク用ヘッドとしては、例えば、R色及びB色の両方の淡インク用ヘッドを備えることがより好ましい。また、この構成において、1次色のインクとしては、例えば、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、及びシアン(C色)の各色のインクを好適に用いることができる。また、2次色のインクとしては、レッド(R)色、グリーン(G)色、及びブルー(B)色の各色のインクを好適に用いることができる。また、この場合、2次色について、例えば、2種類の1次色を混色させた色等と考えることもできる。また、この構成において、印刷装置は、例えば、少なくとも7色のインクを用いる7色分版方式での印刷を行う。この場合、印刷装置は、黒色のインクを吐出するインクジェットヘッドである黒色用ヘッドを更に備える。また、この場合、黒色のインクについて、3次色のインクと考えることができる。
【0014】
また、黒色のインクを用いて印刷を行う場合において、黒色のインクのドットは、他の色のインクと比べ、粒状感が目立つ原因に特になりやすい。そのため、黒色のインクを用いる場合、黒色用ヘッドとしても、濃インク用ヘッド及び淡インク用ヘッドを備えることが好ましい。このように構成すれば、例えば、印刷結果において粒状感が目立つことを適切に防ぐことができる。また、黒色のインクについて淡インクを用いる場合、通常、黒色の濃インクと淡インクとを媒体上の同じ位置に吐出することは少ない。そのため、黒色のインク用の濃インク用ヘッド及び淡インク用ヘッドについては、同じヘッド列に配設したとしても、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が過剰になることは生じにくい。そのため、黒色のインク用の濃インク用ヘッド及び淡インク用ヘッドについては、同じヘッド列に配設してもよい。
【0015】
また、粒状感が目立つことを適切に防ぎつつ高精彩な印刷をより適切に行うためには、全ての2次色について淡インクを用いることが好ましい。この場合、印刷装置は、例えば、2次色用のインクジェットヘッドとして、少なくとも、RGBの各色について、濃インク用ヘッド及び淡インク用ヘッドを備える。また、この場合、同色の濃インク用ヘッド及び淡インク用ヘッドについて、異なるヘッド列に配設することが好ましい。より具体的に、この場合、RGBの各色について、同じ色用の濃インク用ヘッドと、淡インク用ヘッドとを異なるヘッド列に配設することが考えられる。このように構成すれば、例えば、滲みの発生や粒状感が目立つこと等を防ぎつつ、高精彩な印刷をより適切に行うことができる。
【0016】
また、この場合、2次色用の濃インク用ヘッドを1つのヘッド列に配設して、2次色用の淡インク用ヘッドを他の1つのヘッド列に配設すること等が考えられる。より具体的に、この場合、例えば、RGBの各色用の濃インク用ヘッドは、同じヘッド列に配設される。また、RGBの各色用の淡インク用ヘッドは、濃インク用ヘッドとは別の同じヘッド列に配設される。このように構成すれば、例えば、ヘッド列が多くなりすぎることを防ぎつつ、2次色用のインクジェットヘッドを適切に配設することができる。
【0017】
また、この場合において、よりコンパクトにインクジェットヘッドを配設することを考えると、1次色用のインクジェットヘッドについて、いずれかの2次色用のインクジェットヘッドと同じヘッド列に配設することも考えられる。より具体的に、この場合、少なくともいずれかの1次色用のインクジェットヘッドについて、RGBの各色用の濃インク用ヘッドと同じヘッド列に配設することが考えられる。また、少なくともいずれかの1次色用のインクジェットヘッドについて、RGBの各色用の淡インク用ヘッドと同じヘッド列に配設してもよい。また、この場合、全ての1次色用のインクジェットヘッドについて、RGBの各色用の濃インク用ヘッド又はRGBの各色用の淡インク用ヘッドと同じヘッド列に配設してもよい。これらのように構成すれば、例えば、多数のインクジェットヘッドを用いる場合にも、よりコンパクトにインクジェットヘッドを配設することができる。
【0018】
また、この場合、印刷装置が備える複数のインクジェットヘッドについて、4以下の列数の複数のヘッド列に分けて配設することが好ましい。印刷装置が備える複数のインクジェットヘッドとは、例えば、印刷装置において印刷に用いる全てのインクジェットヘッドのことである。また、ヘッド列の列数については、3列以下にすることがより好ましい。このように構成すれば、例えば、ヘッド列の列数が多くなりすぎることを適切に防ぐことができる。
【0019】
また、粒状感が目立つことをより確実に防ぐためには、印刷に使用する全ての色のインクについて、濃インク及び淡インクを用いることが好ましい。しかし、この場合、インクジェットヘッドの個数が多くなりすぎ、印刷装置の大型化やコストの増大を招くこと等も考えられる。これに対し、上記においても説明をしたように、印刷結果における粒状感は、2次色を用いることで特に目立ちやすくなると考えられる。そのため、インクジェットヘッドの個数が多くなりすぎることを防ぐためには、例えば、1次色については、淡インク及び濃インクを用いるのではなく、1種類の濃度のインク(例えば濃インク)のみを用いることも考えられる。より具体的に、この場合、印刷装置は、1次色用のインクジェットヘッドとして、例えば、互いに異なる色の1次色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドを備える。また、それぞれの色用の1次色用のインクジェットヘッドとして、1種類の濃度のインク用のインクジェットヘッドのみを備える。
【0020】
また、複数のインクジェットヘッドの好ましい配置については、例えば、媒体上に吐出されるインクの量と関連付けて考えることもできる。例えば、1回の主走査動作において媒体の各位置に吐出されるインクの量の合計を主走査時インク量と定義し、印刷の解像度に応じて設定されるインクの吐出位置の全てに1回のインクの吐出を行った場合の主走査時インク量を100%の主走査時インク量と定義した場合、複数のインクジェットヘッドについて、例えば、複数のヘッド列が形成されるように配設されることにより、最大の主走査時インク量を低減することが考えられる。また、この場合、最大の主走査時インク量が100%以下になるように複数のインクジェットヘッドを配設することが好ましい。このように構成すれば、例えば、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が過剰になることを適切に防ぐことができる。
【0021】
また、粒状感が目立つことを防ぐためには、淡インクを用いる方法の他に、インクジェットヘッドから吐出するインクの容量を可変にして、小さなサイズのインクのドットを形成すること等も考えられる。そのため、この構成においても、少なくとも一部の色用のインクジェットヘッドとして、吐出するインクの容量として少なくとも2種類の容量を設定可能なインクジェットヘッド(吐出容量可変ヘッド)を用いてもよい。より具体的には、例えば、少なくともいずれかの1次色用のインクジェットヘッドとして、吐出容量可変ヘッドを用いることが考えられる。また、この場合、例えば、淡インクを用いない色用のインクジェットヘッドについて、吐出容量可変ヘッドにすること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッドの個数が多くなりすぎることを防ぎつつ、粒状感が目立つことを適切に防ぐことができる。
【0022】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する印刷方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、例えば、高精彩な印刷をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す図である。
図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、ヘッド部12の構成の一例を示す。
図1(c)は、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドの構成の一例を示す。
【
図6】複数の色のインクの混色により表現される色の例について説明をする図である。
【
図7】媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量について説明をする図である。
【
図8】色の濃度がより低い淡インクを用いる場合の最大着弾インク量について説明をする図である。
【
図9】色の濃度がより低い淡インクを用いる場合の最大着弾インク量について説明をする図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。
図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。本例において、印刷装置10は、印刷対象の媒体(メディア)50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、プラテン14、主走査駆動部16、副走査駆動部18、ヒータ20、及び制御部30を備える。また、本例において、印刷装置10は、7色のインクを用いて、媒体50に対し、フルカラーの印刷を行う。また、以下に説明をする点を除き、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷装置10は、図示した要部の構成以外に、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を更に有してよい。
【0026】
ヘッド部12は、媒体50に対して複数色のインクを吐出する部分であり、複数のインクジェットヘッドを有する。また、本例において、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドのそれぞれが吐出するインクとしては、蒸発乾燥型のインクを用いる。蒸発乾燥型のインクとは、例えば、媒体に定着させるために溶媒を蒸発させるインクのことである。この場合、各色のインクは、例えば、色材及び溶媒を含む。また、ヘッド部12のより具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。プラテン14は、媒体50を支持する台状部材であり、ヘッド部12と対向する位置において上面に媒体50を載置する。また、これにより、プラテン14は、ヘッド部12と対向させた状態で媒体50を支持する。
【0027】
主走査駆動部16は、ヘッド部12に主走査動作を行わせる駆動部である。この場合、ヘッド部12に主走査動作を行わせるとは、ヘッド部12が有する複数のインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることである。主走査動作とは、例えば、媒体50に対して相対的に予め設定された主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。また、本例において、主走査方向は、図中に示すY方向と平行な方向である。主走査駆動部16は、例えば、主走査方向における媒体50の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。また、主走査駆動部16は、主走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、媒体50の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせてもよい。
【0028】
副走査駆動部18は、ヘッド部12に副走査動作を行わせる駆動部である。この場合、ヘッド部12に副走査動作を行わせるとは、ヘッド部12が有する複数のインクジェットヘッドに副走査動作を行わせることである。副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体50に対して相対的に移動する動作のことである。また、本例において、副走査方向は、図中に示すX方向と平行な方向である。副走査駆動部18は、例えば、主走査動作の合間にヘッド部12に副走査動作を行わせることで、媒体50においてヘッド部12と対向する領域を順次変更する。また、副走査動作については、例えば、ヘッド部12に対して相対的に媒体50を送る送り動作等と考えることもできる。副走査駆動部18は、例えば、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、媒体50の側を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。この場合、例えば、ローラ等を用いて副走査方向と平行な搬送方向へ媒体50を搬送すること等が考えられる。また、副走査駆動部18は、副走査方向における媒体50の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせてもよい。
【0029】
ヒータ20は、媒体50を加熱する加熱手段であり、プラテン14内に配設されることにより、ヘッド部12と対向する位置又はその近辺において媒体50を加熱する。また、これにより、媒体50に付着したインク中の溶媒を蒸発させて、インクを媒体50に定着させる。また、この場合、ヒータ20については、インクを乾燥させるための乾燥手段の一例と考えることができる。
【0030】
尚、乾燥手段としては、例えば、ヒータ20以外の構成を用いること等も考えられる。例えば、インクとして、紫外線等のエネルギー線の照射により発熱するインク等を用いる場合、エネルギー線を照射する照射部と乾燥手段として用いることが考えられる。この場合、エネルギー線の照射により発熱するインクとは、例えば、エネルギー線の照射によりインク自身が発熱することで、少なくとも滲みが発生しない粘度にまでインクの粘度が高まるインクのことである。また、エネルギー線の照射部は、例えば、ヘッド部12内に配設されて、媒体50への着弾の直後のインクに対し、エネルギー線を照射する。また、このようなインクについては、例えば、エネルギー線の照射により瞬間的に乾燥する瞬間乾燥型のインク等と考えることができる。この場合、エネルギー線の照射部は、エネルギー線を照射することで、インクの温度について、例えば、インク中の溶媒の沸点の80%以上の温度にまで上昇させる。また、エネルギー線の照射部は、エネルギー線を照射することで、インク中の溶媒を沸騰させてもよい。また、このような瞬間乾燥型のインクとしては、例えば、エネルギー線を吸収する吸収剤(例えば、紫外線吸収剤等)を含むインク等を好適に用いることができる。また、エネルギー線として紫外線を用いる場合、このようなインクについては、例えば、紫外線の照射により瞬間的に乾燥するインク(UV瞬間乾燥型インク)等と考えることができる。また、ヒータ20やエネルギー線の照射部については、例えば、媒体50にインクを定着させるための定着手段の一例と考えることもできる。また、印刷装置10において、インクとしては、例えば、蒸発乾燥型のインク以外のインク(例えば、紫外線硬化型インク等)を用いること等も考えられる。この場合、印刷装置10は、使用するインクの種類に応じた定着手段を備えることが好ましい。
【0031】
制御部30は、例えば印刷装置10のCPUであり、印刷装置10の各部の動作を制御する。本例によれば、例えば、媒体50に対して適切に印刷を行うことができる。
【0032】
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。
図1(b)は、ヘッド部12の構成の一例を示す。
図1(c)は、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドの構成の一例を示す。上記においても説明をしたように、本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドを有する。また、より具体的に、本例において、ヘッド部12は、キャリッジ100及び複数のインクジェットヘッド102を有する。キャリッジ100は、複数のインクジェットヘッド102を保持する保持部材であり、図中に示すように、複数のインクジェットヘッド102を並べて保持する。また、
図1(b)においては、ヘッド部12が有する複数のインクジェットヘッド102について、図中に102Y~102Lbと示すように、それぞれのインクジェットヘッド102が吐出するインクの色を示す記号を付して図示している。
【0033】
また、この場合、ヘッド部12における各インクジェットヘッド102としては、同一のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。この場合、インクジェットヘッドが同一であるとは、例えば、インクジェットヘッドの設計上の構造が同一であることである。また、より具体的に、インクジェットヘッドが同一であるとは、例えば、インクジェットヘッドの型番が同一であることである。また、この場合、インクジェットヘッド102としては、例えば
図1(c)に示すように、副走査方向へ複数のノズルが並ぶインクジェットヘッドを用いることが考えられる。副走査方向へ複数のノズルが並ぶとは、例えば、印刷装置10に取り付けられた状態で副走査方向へ複数のノズルが並ぶことである。
【0034】
また、本例において、ヘッド部12は、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(K)色、レッド(R)色、グリーン(G)色、及びブルー(B)色の互いに異なる7色用の複数のインクジェットヘッドを有する。また、これらの色のうち、K色及びRGBの各色について、色の濃さが互いに異なる複数のインクジェットヘッドを有する。より具体的に、
図1(b)に示す構成において、インクジェットヘッド102Yは、Y色用のインクジェットヘッド102である。インクジェットヘッド102Mは、M色用のインクジェットヘッド102である。インクジェットヘッド102Cは、C色用のインクジェットヘッド102である。インクジェットヘッド102Kは、K色用のインクジェットヘッド102である。インクジェットヘッド102Rは、R色用のインクジェットヘッド102である。インクジェットヘッド102Gは、G色用のインクジェットヘッド102である。インクジェットヘッド102Bは、B色用のインクジェットヘッド102である。また、これらのインクジェットヘッド102については、例えば、標準の色の濃さのインクである濃インクを吐出するインクジェットヘッド102と考えることができる。また、上記においても説明をしたように、本例において、ヘッド部12は、K色及びRGBの各色について、色の濃さが互いに異なる複数のインクジェットヘッドを有する。そして、この場合、インクジェットヘッド102K、インクジェットヘッド102R、インクジェットヘッド102G、及びインクジェットヘッド102Rについては、各色について相対的に濃い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである濃インク用ヘッドの一例と考えることができる。
【0035】
また、インクジェットヘッド102Lk、インクジェットヘッド102Lr、インクジェットヘッド102Lg、及びインクジェットヘッド102Lkは、同じ色の濃インクよりも薄い色のインクである淡インク(ライトインク、低濃度インク)を吐出するインクジェットヘッド102である。また、インクジェットヘッド102Lk、インクジェットヘッド102Lr、インクジェットヘッド102Lg、及びインクジェットヘッド102Lkについては、各色について相対的に薄い色のインクを吐出するインクジェットヘッドである淡インク用ヘッドの一例と考えることができる。より具体的に、この場合、インクジェットヘッド102Lkは、K色の淡インク用のインクジェットヘッド102である。インクジェットヘッド102Lrは、R色の淡インク用のインクジェットヘッド102である。インクジェットヘッド102Lgは、G色の淡インク用のインクジェットヘッド102である。また、インクジェットヘッド102Lbは、B色の淡インク用のインクジェットヘッド102である。
【0036】
ここで、濃インクと淡インクとの関係について、同じ色であるとは、例えば、実質的に同じ色なことである。また、実質的に同じ色であるとは、例えば、印刷に求められる品質等に応じて、同じ色と扱える範囲の色であることである。また、同じ色と扱える範囲とは、例えば、印刷時に行う分版の処理等において、同じ色として扱える範囲のことである。また、濃インクについて、相対的に濃い色とは、同じ色用の淡インクよりも濃い色のことである。また、淡インクについて、相対的に薄い色とは、同じ色用の淡インクよりも薄い色のことである。また、本例において、印刷装置10は、複数色のインクを用いることで、減法混色法により、様々な色を表現する。そして、この場合、YMCの各色は、例えば、減法混色法での基本色である1次色の一例である。また、1次色については、例えば、混色により減法混色法での色の表現が原理的に可能になる基本色等と考えることもできる。また、インクジェットヘッド102Y、インクジェットヘッド102M、及びインクジェットヘッド102Cは、1次色用のインクジェットヘッド102の一例である。また、この場合、インクジェットヘッド102Y、インクジェットヘッド102M、及びインクジェットヘッド102Cについて、例えば、互いに異なる色の1次色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドと考えることができる。また、本例においては、1次色のインクとして、淡インクは用いず、濃インクを用いる。そのため、本例の構成については、それぞれの色の1次色用のインクジェットヘッド102として1種類の濃度のインク用のインクジェットヘッド102のみを用いる構成等と考えることができる。
【0037】
また、本例において、RGBの各色は、複数の1次色の混色により原理的に得られる色である2次色の一例である。この場合、混色により原理的に得られる色とは、例えば、色空間上で考える混色の原理上で得られる色のことである。また、2次色については、2種類の1次色を混色させた色等と考えることもできる。また、より具体的に、本例において、RGBの各色は、2種類の1次色の中間の色になっている。また、RGBの各色のインクについては、例えば、1次色用のインクを実際に混ぜるのではなく、RGBの各色用の色材(顔料等)を用いることでそれぞれの色への調整を行う。また、本例において、インクジェットヘッド102R、インクジェットヘッド102G、インクジェットヘッド102B、インクジェットヘッド102Lr、インクジェットヘッド102Lg、及びインクジェットヘッド102Lbは、2次色用のインクジェットヘッド102の一例である。また、本例において用いるインクの色のうち、K色については、3次色と考えることができる。また、インクジェットヘッド102K及びインクジェットヘッド102Lkは、黒色用ヘッドの一例である。本例によれば、例えば、1次色、2次色、及ぶ3次色の各色を含む7色のインクを用いる7色分版方式での印刷を行うことにより、高精彩な印刷を適切に行うことができる。7色分版方式とは、例えば、7色以上のインクを用いて印刷を行う方式のことである。
【0038】
また、本例においては、更に、K色及びRGBの各色について濃インクに加えて淡インクを用いることで、粒状感が目立つことを適切に防ぐことができる。より具体的、減法混色法では、媒体50上に形成した各色のインクのドットにおいて一部の波長範囲の光を吸収することにより、様々な色を表現する。そして、この場合、2次色のインクが光を吸収する波長範囲は、混色されるそれぞれの1次色が光を吸収する波長範囲を合わせた範囲になると考えられる。また、その結果、2次色のインクのドットが反射する光の量は、1次色のインクのドットが反射する光と比べて、少なくなる。また、同様にして、3次色である黒色のインクのドットが反射する光の量は、1次色や2次色のインクのドットが反射する光と比べて、更に少なくなる。そして、この場合、反射する光が少なくなることにより、2次色や3次色のインクのドットは、1次色のインクのドットと比べて明度が低くなり、暗く見えることになる。また、7色分版方式で印刷を行う場合、複数の1次色のインクのドットの代わりに1つの2次色のインクのドットを形成することで、ドットの密度が少なくなること等も考えられる。また、その結果、個々のインクのドットが目立ちやすくなる場合もある。そして、これらの要因により、7色分版方式での印刷を行う場合において、単に2次色や3次色のインクを用いると、粒状感が目立ちやすくなるおそれがある。これに対し、本例においては、2次色及び3次色の各色について淡インクを用いることで、粒状感が目立つことを適切に防ぐことができる。
【0039】
ここで、淡インクを用いて粒状感が目立つことをより確実に防ぐためには、印刷に使用する全ての色のインクについて、濃インク及び淡インクを用いることが好ましい。そして、この場合、2次色及び3次色のみではなく、1次色についても、淡インクを用いればよいようにも思われる。しかし、この場合、ヘッド部12が有するインクジェットヘッド102の数が多くなり過ぎ、ヘッド部12が大型化し過ぎることが考えられる。また、インクジェットヘッド102の数の増加やヘッド部12の大型化により、装置のコストが大きく上昇すること等も考えられる。これに対し、上記においても説明をしたように、印刷結果における粒状感は、2次色や3次色を用いることで特に目立ちやすくなると考えられる。そのため、本例においては、1次色については淡インク及び濃インクを用いるのではなく、1種類の濃度のインク(濃インク)のみを用い、2次色及び3次色についてのみ濃インク及び淡インクを用いている。そのため、本例によれば、例えば、インクジェットヘッドの個数が多くなりすぎることを防ぎ、ヘッド部12の過度な大型化やコストの上昇を抑えることができる。また、これにより、例えば、7色分版方式で印刷を行う場合において、粒状感が目立つことをより適切に防ぐことができる。また、この場合において、K色のインクのドットは、他の色のインクと比べ、特に、粒状感が目立つ原因になりやすい。これに対し、本例においては、K色について淡インクを用いることにより、印刷結果において粒状感が目立つことをより適切に防ぐことができる。
【0040】
また、淡インクを用いる場合、同じ濃さを表現するために必要なインクの量について、濃インクのみを用いる場合よりも多くなることが考えられる。そのため、単に淡インクを用いると、媒体50上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が多くなることも考えられる。また、その結果、インクの合計量が過剰になり、インクの滲み等が発生しやすくなる場合もある。より具体的に、この場合、インクが滲みやすくなることで、例えば受像層が形成されていない媒体を用いると、高い品質での印刷を行うことが難しくなると考えられる。また、その結果、例えば、紙、布、プラスチックフィルム等の媒体50を使用することが難しくなる場合がある。また、この点に関し、例えばソルベントインクを用いる場合であれば、受像層の形成(コート)がされていない塩化ビニルのフィルム等を媒体として用いる場合にも、プリントヒータでの加熱を行うことで、印刷が可能になる場合もある。しかし、この場合も、使用可能になるのは、インクの溶媒に対する接触角が大きくなる特性の塩化ビニルのフィルム等のみであり、使用可能な媒体50が極めて限定されることになる。そのため、例えばポリエステルやプロピレン等の媒体50を用いる場合には、滲みの問題が大きくなり、通常、高品質の印刷を行うことは困難になる。また、塩化ビニルのフィルムを用いる場合にも、媒体50上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が多くなると、滲みの問題が大きくなると考えられる。また、滲みの問題以外にも、使用するインクや媒体50の種類等によっては、媒体50が膨潤して、カールやコックリング等の問題が生じる場合もある。より具体的に、例えば、インクの溶媒の主成分が水であるインクを用いる場合等において、紙や布地等の媒体50を用いると、媒体50が膨潤することで、カールやコックリング等の問題が生じやすくなる。
【0041】
これに対し、本例においては、
図1(b)に示すように、複数のヘッド列202a、bに分けてヘッド部12におけるインクジェットヘッド102を配設することにより、インクの合計量の最大値を適切に低減している。また、これにより、インクの滲み等の問題が発生することを適切に防いでいる。より具体的に、この場合、ヘッド列202a、bとは、主走査方向へ1個以上のインクジェットヘッド102が並ぶ列のことである。また、本例において、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッド102は、副走査方向における位置がずれた2つのヘッド列202a、bが形成されるように配設される。また、これにより、それぞれのヘッド列におけるインクジェットヘッド102は、他のヘッド列におけるインクジェットヘッド102と副走査方向における位置が重ならないように配設される。より具体的に、本例のヘッド部12においては、2次色の淡インク以外のインク用のインクジェットヘッド102が1つのヘッド列202aに並べて配設される。また、2次色の淡インク用のインクジェットヘッド102は、ヘッド列202aとは別の1つのヘッド列202bに並べて配設される。これにより、本例において、2次色であるRGBの各色について、濃インク用のインクジェットヘッド102(インクジェットヘッド102R、インクジェットヘッド102G、及びインクジェットヘッド102bのそれぞれ)と、淡インク用のインクジェットヘッド102(インクジェットヘッド102Lr、インクジェットヘッド102Lg、及びインクジェットヘッド102bのそれぞれ)は、異なるヘッド列に配設されることになる。
【0042】
また、上記においても説明をしたように、淡インクを用いる場合において、単に淡インクを用いるのみであると、媒体50上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が過剰になり、インクの滲み等の問題が発生しやすくなることが考えられる。これに対し、本例においては、2次色であるRGBの各色について、同じ色の濃インク用のインクジェットヘッド102と淡インク用のインクジェットヘッド102とを異なるヘッド列に配設することにより、淡インク用のインクジェットヘッド102と、濃インク用のインクジェットヘッド102とについて、副走査方向における位置が重ならないように、副走査方向における位置をずらして配設している。また、これにより、例えば、各回の主走査動作時において、淡インク用のインクジェットヘッド102がインクを吐出する領域と、濃インク用のインクジェットヘッド102がインクを吐出する領域とを異ならせている。そして、この場合、後に更に詳しく説明をするように、1回の主走査動作において媒体50の各位置へ吐出するインクの量について、適切に低減することが可能になる。そのため、本例によれば、例えば、淡インクを用いる場合においても、媒体50上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が過剰になることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、インクの滲み等の問題が発生することを適切に防ぐことができる。更には、この場合、インクの滲みを発生しにくくすることで、例えば、高速な印刷をより適切に行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、高精彩かつ高速な印刷をより適切に行うことができる。
【0043】
また、本例において、3次色であるK色用のインクジェットヘッド102については、濃インク用のインクジェットヘッド102K及び淡インク用のインクジェットヘッド102Lkについて、同じヘッド列202aに配設している。これは、K色のインクの場合、通常、濃インクと淡インクとを媒体50上の同じ位置に吐出することが少ないためである。そのため、インクジェットヘッド102K及びインクジェットヘッド102Lkについては、同じヘッド列に配設したとしても、媒体50上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が過剰になることは生じにくい。また、ヘッド部12の構成の変形例においては、インクジェットヘッド102Lkについても、インクジェットヘッド102Kと別のヘッド列に配設してもよい。
【0044】
また、上記においても説明をしたように、本例において、2次色の淡インク以外のインク用のインクジェットヘッド102は、1つのヘッド列202aに並べて配設されている。また、この構成については、例えば、1次色用のインクジェットヘッド102と2次色用のインクジェットヘッド102とを同じヘッド列202aに配設した構成と考えることもできる。このように構成すれば、例えば、7色分版方式において多数のインクジェットヘッド102を用いる場合にも、コンパクトかつ適切に複数のインクジェットヘッド102を配設することができる。また、このような構成については、例えば、1次色用のインクジェットヘッドインクジェットヘッド102をいずれかの2次色用のインクジェットヘッド102と同じヘッド列に配設する構成等と考えることもできる。また、この場合、少なくともいずれかの1次色用のインクジェットヘッド102をRGBの各色用の濃インク用のインクジェットヘッド102と同じヘッド列に配設する構成等と考えることもできる。また、この場合、本例のように、全ての1次色用のインクジェットヘッド102について、RGBの各色用の濃インク用のインクジェットヘッド102と同じヘッド列に配設することが好ましい。このように構成すれば、例えば、多数のインクジェットヘッドを用いる場合にも、よりコンパクトにインクジェットヘッドを配設することができる。また、ヘッド部12の構成の変形例においては、例えば、少なくともいずれかの1次色用のインクジェットヘッド102について、RGBの各色用の淡インク用のインクジェットヘッド102と同じヘッド列に配設すること等も考えられる。この場合も、全ての1次色用のインクジェットヘッド102について、RGBの各色用の淡インク用のインクジェットヘッド102と同じヘッド列に配設することが好ましい。
【0045】
また、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッド102の配置については、
図1(b)に示した構成に限らず、様々に変形を行うことが可能である。そして、この場合、複数のインクジェットヘッド102の好ましい配置については、例えば、媒体50上に吐出されるインクの量と関連付けて考えることができる。より具体的に、例えば、1回の主走査動作において媒体50の各位置に吐出されるインクの量の合計を主走査時インク量と定義し、印刷の解像度に応じて設定されるインクの吐出位置の全てに1回のインクの吐出を行った場合の主走査時インク量を100%の主走査時インク量と定義した場合、複数のインクジェットヘッド102について、例えば、複数のヘッド列が形成されるように配設することで、最大の主走査時インク量を低減することが考えられる。また、この場合、最大の主走査時インク量が100%以下になるように複数のインクジェットヘッド102を配設することが好ましい。このように構成すれば、例えば、媒体50上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が過剰になることを適切に防ぐことができる。
【0046】
続いて、ヘッド部12の構成の変形例等について、説明をする。先ず、説明の便宜上、
図1(b)に示した構成のヘッド部12や好ましい変形例以外の構成(例えば従来の構成)等も含めて、様々なヘッド部12の構成の例を示す。
図2~5は、様々なヘッド部12の構成の例を示す。また、これらのうち、
図2及び
図3は、2次色の淡インクを用いない場合のヘッド部12の構成の例である。また、
図4及び
図5は、2次色の淡インクを用いる場合のヘッド部12の構成の例である。そして、この場合、
図4及び
図5に示す各構成について、好ましいヘッド部12の構成の例と考えることができる。また、後に更に詳しく説明をするように、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量やヘッド部12におけるヘッド列の列数等に着目した場合、
図5に示す各構成について、ヘッド列の列数を抑えつつインクの合計量を適切に低減できる構成と考えることができる。そのため、
図5に示す各構成については、特に好ましいヘッド部12の構成の例と考えることができる。尚、
図2~5においては、図示の便宜上、キャリッジ100(
図1参照)を省略して、ヘッド部12が有する各色のインクジェットヘッド102の配置を模式的に示している。また、以下に説明をする点を除き、
図2~5に示す各構成のヘッド部12は、
図1(b)に示すヘッド部12と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0047】
また、
図2は、YMCKの4色のインクを用いる場合について、図中に符号H1~H4を付して示す4種類のヘッド部12の構成の例を示す。また、
図2に示すヘッド部12の構成については、例えば、4色分版方式用の構成の例と考えることもできる。また、より具体的に、符号H1を付して示す構成は、YMCKの各色用のインクジェットヘッド102を主走査方向へ一列に並べる構成である。この構成については、例えば、従来の一般的な構成(従来のヘッド配置)に対応する構成と考えることができる。また、符号H2を付して示す構成は、YMCKの各色用のインクジェットヘッド102について、副走査方向における位置をずらして配置する構成である。このような構成のヘッド部12を用いた場合、媒体の各位置に対し、異なる回の主走査動作でインクを吐出することになる。そのため、この構成については、例えば、媒体の各位置へ各色のインクを順次吐出する色順次方式の構成と考えることができる。
【0048】
また、符号H3及びH4を付して示す構成は、符号H1及びH2を付して示す構成に対し、M色、C色、及びK色の淡インク用のインクジェットヘッド102を追加した構成である。また、これらの構成については、例えば、淡インク用のインクジェットヘッド102を追加した4色分版方式の構成(+淡色4色分版方式)の構成の例と考えることができる。また、図中において、インクジェットヘッド102Lmは、M色の淡インク用のインクジェットヘッド102である。インクジェットヘッド102Lcは、C色の淡インク用のインクジェットヘッド102である。また、符号H3を付して示す構成は、全てのインクジェットヘッド102を主走査方向へ並べて配設する構成である。この構成については、例えば、全てのインクジェットヘッド102を1つのヘッド列に配設する構成と考えることもできる。また、符号H4を付して示す構成は、全てのインクジェットヘッド102について、副走査方向における位置をずらして配設する構成である。この構成については、例えば、全てのインクジェットヘッド102を互いに異なるヘッド列に配設する構成(完全色順次配置)と考えることもできる。
【0049】
図3は、YMCKRGBの7色のインクを用いる場合について、図中に符号H5~H8を付して示す4種類のヘッド部12の構成の例を示す。また、
図3に示すヘッド部12の構成については、例えば、7色分版方式用の構成の例と考えることもできる。また、
図3に示す各構成については、例えば、2次色について淡インクを用いない場合の7色分版方式用の構成の例と考えることもできる。また、より具体的に、符号H5を付して示す構成は、YMCKRGBの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102を主走査方向へ一列に並べる構成である。符号H6を付して示す構成は、YMCKの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102を1つのヘッド列に配設し、RGBの各色の濃インク用インクジェットヘッド102を他の1つのヘッド列に配設する構成である。符号H7を付して示す構成は、YMCの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102を1つのヘッド列に配設し、RGBの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102を他の1つのヘッド列に配設し、K色の濃インク用のインクジェットヘッド102を更に他のヘッド列に配設する構成である。また、符号H8を付して示す構成は、符号H5を付して示す構成に対し、更に、M色、C色、及びK色の淡インク色用のインクジェットヘッド102を追加して、全てのインクジェットヘッド102を1つのヘッド列に配設する構成である。この構成については、例えば、淡インク用のインクジェットヘッド102を追加した7色分版方式の構成(+淡色7色分版方式)の構成の例と考えることもできる。また、この構成については、例えば、従来のヘッド配置のままで淡インク用のインクジェットヘッド102を追加した構成等と考えることもできる。
【0050】
図4は、YMCKRGBの7色のインクを用いる場合について、図中に符号H9及びH10を付して示す2種類のヘッド部12の構成の例を示す。また、
図4に示すヘッド部12の構成についても、例えば、淡インク用のインクジェットヘッド102を追加した7色分版方式の構成(+淡色7色分版方式)の構成の例と考えることができる。また、より具体的に、
図4に示すヘッド部12の構成は、Y色以外の全ての色について、淡インク用のインクジェットヘッド102を用いている。また、符号H9を付して示す構成は、YMCKの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102と、K色の淡インク色用のインクジェットヘッド102とを1つのヘッド列に配設し、RGBの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102を他の1つのヘッド列に配設し、M色及びC色の淡インク用のインクジェットヘッド102を更に他の1つのヘッド列に配設し、RGBの各色の淡インク用のインクジェットヘッド102を更に他の1つのヘッド列に配設する構成である。また、符号H10を付して示す構成は、YMCKの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102を1つのヘッド列に配設し、RGBの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102を他の1つのヘッド列に配設し、M色及びC色の淡インク用のインクジェットヘッド102を更に他の1つのヘッド列に配設し、RGBの各色の淡インク用のインクジェットヘッド102を更に他の1つのヘッド列に配設し、K色の淡インク用のインクジェットヘッド102を更に他の1つのヘッド列に配設する構成である。
【0051】
図5は、YMCKRGBの7色のインクを用いる場合について、図中に符号H11~H13を付して示す3種類のヘッド部12の構成の例を示す。また、
図7に示すヘッド部12の構成についても、例えば、淡インク用のインクジェットヘッド102を追加した7色分版方式の構成(+淡色7色分版方式)の構成の例と考えることができる。また、
図5に示すヘッド部12の構成のうち、符号H11を付して示す構成は、Y色以外の全ての色について、淡インク用のインクジェットヘッド102を用いている。より具体的に、この構成は、YMCKRGBの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102と、K色の淡インク用のインクジェットヘッド102とを1つのヘッド列に配設し、M色及びC色の淡インク用のインクジェットヘッド102を他の1つのヘッド列に配設し、RGBの各色の淡インク用のインクジェットヘッド102を更に他の1つのヘッド列に配設する構成である。
【0052】
また、符号H12及びH13を付して示す構成では、1次色の淡インク用のインクジェットヘッド102は用いずに、2次色及び3次色の各色のみに、淡インク用のインクジェットヘッド102を用いている。より具体的に、符号H12を付して示す構成は、YMCKRGBの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102と、K色の淡インク用のインクジェットヘッド102とを1つのヘッド列に配設し、RGBの各色の淡インク用のインクジェットヘッド102を他の1つのヘッド列に配設する構成である。この構成については、例えば、YMCRGB及びKの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102と、K色の淡インク(Lk)用のインクジェットヘッド102とが主走査方向に並べて同じY軸上に配置され、RGBの各色の淡インク(Lr、Lg、及びLb)用のインクジェットヘッド102について、副走査方向へ平行にずらした位置で主走査方向に並べて同じY軸上に配置されている構成等と考えることもできる。また、符号H13を付して示す構成は、YMCKRGBの各色の濃インク用のインクジェットヘッド102を1つのヘッド列に配設し、RGBの各色の淡インク用のインクジェットヘッド102を他の1つのヘッド列に配設し、K色の淡インク用のインクジェットヘッド102を更に他の1つのヘッド列に配設する構成である。また、以下において説明する事項から理解できるように、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量と、ヘッド部12におけるヘッド列の列数とに着目すると、H11~13のヘッド配置については、例えば、ヘッド列の列数を抑えつつインクの合計量を適切に低減できる構成と考えることができる。また、これらのうち、特に、H12及びH13のヘッド配置については、より少ない数のインクジェットヘッド102で高品質かつ高速な印刷を行う得る構成と考えることができる。
【0053】
続いて、
図2~5に示したヘッド部12の各構成について、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量の例を説明する。
図6は、複数の色のインクの混色により表現される色の例について説明をする図であり、図中の例A~Fとして示す6種類の色について、YMCの3色のインクのみを用いて表現する場合の各色のインクの量(各色のインクの量の比率)を示す。また、図中に示す例A~Fについては、減法混色法での基本3原色であるYMCの各色のインク量の組み合わせ例(サンプルデータ)と考えることもできる。
【0054】
減法混色法で色の表現を行う場合、原理的には、1次色であるYMCの3色のみを用いて、フルカラーの表現が可能である。また、この場合、例えば図中の例A~Fのように、各色のインクの比率を異ならせて混色させることにより、様々な色を表現することが可能である。しかし、実際のインクにおいては、インクに色を付与する色材(顔料等)が光を吸収する波長範囲等の影響により、YMC以外の色(中間色)について、高精彩な色の表現が難しくなる場合がある。これに対し、7色分版方式で印刷を行う場合、2次色であるRGBの各色のインクや、3次色であるK色のインクを用いることにより、中間色やK色について、より高精彩な色の表現が可能になる。また、この場合、1次色の複数色のインクを混色させる代わりに2次色や3次色のインクを用いることで、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量を低減することも可能になる。より具体的に、7色分版方式で印刷を行う場合、以下の関係式に従い、YMCの各色のインクの代わりにRGBの各色のインクやK色のインクを行うように、変換を行うことができる。
αR=αY+αM 式(1)
βG=βC+βY 式(2)
γB=γM+γY 式(3)
δK=δY+δM+δC 式(4)
【0055】
また、これらの式のうち、式(1)は、2つの1次色であるY色及びM色の等量のインクを2次色であるR色の等量のインクに置き換えることを示している。また、式(2)、(3)は、G色及びB色について、2つの1次色のインクを同様に置き換えることを示している。このような変換を行うことにより、同じ色を表現するためのインクの量は、変換後において、変換前の一次色のインクの合計(総量)の半分になる。また、式(4)は、3つの1次色であるY色、M色、及びC色の等量のインクを3次色であるK色の等量のインクに置き換えることを示している。このような変換を行うことにより、同じ色を表現するためのインクの量は、変換後において、変換前の一次色のインクの合計(総量)の3分の1になる。
【0056】
このような変換式から理解できるように、7色分版方式で印刷を行う場合、1次色のみで印刷を行う場合や、4色分版方式で印刷を行う場合と比べ、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量を低減することができる。しかし、この場合、インクの量が低減されることにより、媒体上に形成されるインクのドットの密度(着弾ドット密度)も小さくなり、画像の粒状感が目立ちやすくなる。また、上記においても説明をしたように、2次色のインクのドットは1次色のインクのドットと比べて暗く見えるため、7色分版方式で印刷を行う場合、この点でも、粒状感が目立ちやすくなる。また、その結果、画像における中間調の部分が粗い印象になり、印刷結果の画質が低下する場合がある。これに対し、画像の粒状感が目立つこと防ぐためには、上記においても説明をしたように、RGBの各色及びK色や、必要に応じてM色及びC色について、淡インクを用いることが考えられる。淡インクを用いることにより、例えば、中間調の階調再現性を高めることや、印刷される画像の粒状感を低減することができる。また、これにより、例えば、印刷される画質を向上することが可能になる。また、この場合、上記の各式で示す条件に対応するような、濃インクの濃度Nの半分であるN/2の濃度の淡インクを用いることが考えられる。
【0057】
しかし、上記においても説明をしたように、淡インクを用いる場合、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量が多くなる場合もある。また、この点に関し、媒体50上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量については、使用するインクの色数、淡インクの使用の有無、及びインクジェットヘッド102の並び方等によって変化すると考えることができる。そのため、淡インクを加えて7色分版方式で印刷を行う場合には、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量について、過剰にならないようにインクジェットヘッド102を配設することが望ましい。そこで、以下、
図2~5を用いて説明をしたヘッド部12の各構成と、
図6に例A~Fとして示す色とを対応付けて、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量の例について説明をする。
【0058】
図7は、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量について説明をする図である。また、説明の便宜上、
図7では、
図2~5を用いて説明をしたヘッド部12の各構成(各種ヘッド配置)のうち、符号H1~H12を付して説明をした構成について、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量を示している。また、この場合、媒体上の単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量とは、例A~Fのそれぞれに対応する色を表現する場合において、1回の主走査動作(パス)で媒体上の各位置に対して吐出するインクの量の平均(平均インク量)である。また、この平均は、16×16画素のマトリクスの範囲での平均のインクの量である。また、この場合、
図7に示す表の内容について、例えば、ヘッド配置(ヘッド配列)とパス当たりの最大インク量との関係を示す表と考えることができる。また、この表については、例えば、ヘッドの配置と、単位面積あたりに着弾するインク量との関係を示す表と考えることもできる。
【0059】
また、インクの量については、全ての画素の位置(ドット位置)に1色のインクを1回吐出する場合の濃度を100%としている。また、同じ色の濃インク及び淡インクについて、濃インクの色の濃度Nに対し、淡インクの色の濃度Lnは1/2、すなわち、Ln=(N/2)になっている。また、濃インク及び淡インクの使い方については、同じ画素の位置に同色の濃インクと淡インクとを吐出しないように、排他的にしている。また、例Fのように、YMCの3色を100%ずつ混ぜる色の場合(表中に*を付して示している箇所の場合)、淡インクは用いず、濃インクのみを用いることとしている。また、より具体的に、表中でK色の100%と示す場合については、淡インク(Lk)を用いず、濃インク(K)のみで100%の印刷を行うことで、インク量を低減している。また、他の色(RGBの各色等)についても、100%のインク量については、濃インクのみを用いて印刷を行うことで、インク量を低減している。
【0060】
また、ヘッド部12の各構成に関し、
図2において符号H1を付して示したヘッド部12の構成(以下、H1のヘッド配置という。また、
図2~5において符号H2以降の符号を付して示したヘッド部12の構成についても、同様に、H2のヘッド配置等という)の場合、4色分版方式で印刷を行うことにより、YMCKの各色について、単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量は、4色に分版されて、表中に示す値になる。この場合、単位面積に対して単位時間に吐出するインクの合計量とは、単位面積に対して単位時間に着弾するインクの合計量のことである。また、より具体的に、表中に示すインク量は、最大の主走査時インク量に対応するインクの量である最大着弾インク量である。また、最大着弾インク量については、例えば、単位面積当たりに着弾する最大のインクの量(総インク量)と考えることもできる。そして、この場合、最大着弾インク量は、例Aに対応する結果において、160%になる。また、K色のみで100%の印刷を行う例F以外の他の例に対応する結果でも、全て、最大着弾インク量が100%を超えることになる。そして、この場合、媒体50上において近接して着弾するインクの量が多くなるため、滲みが発生しやすくなり、高速な印刷を行うことが難しくなると考えられる。
【0061】
これに対し、H2のヘッド配置のように、色順次方式で印刷を行う場合、表中に示すように、最大着弾インク量を低減することができる。しかし、後に詳しく説明をするように、7色分版方式や、淡インクを用いた7色分版方式で色順次方式の構成を採用すると、副走査方向におけるヘッド部12の幅が大きくなり過ぎると考えられる。また、H3及びH4のヘッド配置のように、M色、C色、及びK色の淡インク用を用いる場合、例えばH1及びH2のヘッド配置を用いる場合と比べ、粒状感を低減することができる。しかし、これらの場合も、例えば7色分版方式で印刷を行う場合と比べると、高精彩な印刷を行うことは難しい。更に、表中に示すように、H3のヘッド配置を用いる場合には、最大着弾インク量が極めて多くなる。また、H4のヘッド配置を用いる場合、副走査方向におけるヘッド部の幅が更に大きくなるという問題が生じる。
【0062】
ここで、インクジェット方式で印刷を行う場合、最大着弾インク量が100%を超えると、滲みが特に発生しやすくなると考えられる。より具体的に、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせるシリアルタイプのインクジェットプリンタでは、通常、16パス程度(例えば、8~32パス程度)のマルチパス方式で印刷を行う。また、この場合、パス数を多くすることで、1回の主走査動作において同じ位置へ吐出するインクの量を低減することが可能になる。また、この場合、例えばインクの受像層を有する媒体を用いるのであれば、最大着弾インク量が多くなったとしても、滲みの発生を抑えることができる。しかし、受像層が形成されていない媒体(例えば、紙、布、又はポリエステルフィルム等)を用いる場合、最大着弾インク量が100%を超えると、例えば通常の印刷速度で印刷を行う場合でも、滲み等が生じやすくなる。また、その結果、例えば、高速な印刷を行うことが難しくなると考えられる。また、最大着弾インク量が100%を超える場合、受像層を有する媒体を用いたとしても、高速な印刷を行うと、滲みが発生しやすくなると考えられる。そして、この点に関し、H1のヘッド配置では、4色の濃インクのみを用いた結果で、最大着弾インク量は、160%に達している。また、淡インクを用いるH3のヘッド配置では、最大着弾インク量は、240%に達している。そのため、これらのヘッド配置を用いる場合、受像層が形成されていない媒体を用いる場合や、高速な印刷を行う場合には、滲みの問題が大きくなり、高い品質の印刷を適切に行うことが難しくなると考えられる。
【0063】
また、滲みの発生を抑えるためには、例えば高温でインクを乾燥させるヒータを用いる方法や、インクを凝集させる凝集剤等を用いること等も考えられる。しかし、この場合、使用可能な媒体やインクの構成が限定されることになる。その結果、例えば受像層が形成されていない媒体に対してシリアル方式で直接的かつ高速に印刷を行う構成(高速機)等では、印刷を行うことが難しくなる場合もある。また、上記においても説明をしたように、H2及びH4のヘッド配置を用いる場合には、最大着弾インク量を抑えることもできる。しかし、これらの場合、上記のように、副走査方向におけるヘッド部12の幅が大きくなるという問題が生じる。また、その結果、印刷装置の大型化等の問題が生じることになる。特に、H4のヘッド配置の場合、このような問題が顕著になると考えられる。
【0064】
これに対し、例えばH5~H12等のヘッド配置を用いる場合、7色分版方式を用いることにより、高精彩な印刷をより適切に行うことができる。また、複数の1次色のインクを用いる代わりに2次色のインクを用いることにより、最大着弾インク量を低減することも可能になる。また、これにより、例えば、印刷の速度を高速化した場合等にも、滲みの発生をより適切に抑えることができる。より具体的には、例えば、H5のヘッド配置のように、1つのヘッド列に全てのインクジェットヘッドを配設する場合でも、例A~Fの全てにおいて、最大着弾インク量は、100%以下になる。そして、この場合、最大着弾インク量が小さくなることで、滲みが生じ難くなると考えられる。また、その結果、例えばポリエステルのフィルム等のような滲みが発生しやすい媒体を用いる場合にも、滲みを抑えて適切に印刷を行うことが可能になる。また、この場合、滲みが発生しにくくなるために、高速な印刷をより適切に行うことも可能になる。また、7色分版方式で印刷を行う場合において、例えばH6及びH7のヘッド配置のように、複数のヘッド列に分けて複数のインクジェットヘッドを配設した場合、表中に示すように、最大着弾インク量を更に低減することができる。
【0065】
しかし、H5~H7のヘッド配置のように、単に7色のインクを用いる単純な7色分版方式で印刷を行う場合、上記においても説明をしたように、1次色と比べて暗く見える2次色のインクのドットが形成され、2次色の出現頻度が増加するため、画像の粒状感が目立ちやすくなる。また、この場合、複数の1次色を2次色に変換することで媒体上に形成されるインクのドットの数(画素数)が少なくなることでも、粒状感が目立ちやすくなる。これに対し、H8~H12のヘッド配置の場合、少なくともいずれかに色について、淡インク用のインクジェットヘッドを用いている。そして、この場合、淡インクを用いることにより、通常、粒状感を目立ち難くすることができる。また、階調再現性を高めること等も可能になる。
【0066】
しかし、淡インクを用いる場合、ヘッド配置によっては、7色分版方式で印刷を行う場合にも、最大着弾インク量が過剰になる場合がある。例えば、H8のヘッド配置のように、1つのヘッド列に全てのインクジェットヘッドを配設した場合、例Dにおいて、最大着弾インク量は、200%にまで大きく増加することになる。また、その結果、滲みの問題が顕著になり、高速に印刷を行う場合(例えば、高速モードでの印刷時等)等には、高品質な印刷を行うことが難しくなる場合がある。また、この場合、2次色用の淡インクを使用しない構成になるため、2次色のインクのドットの影響で粒状感が目立つことも考えられる。
【0067】
これに対し、H9~H12のヘッド配置の場合、2次色について、淡インク用のインクジェットヘッドを用いている。また、より具体的に、これらのヘッド配置においては、少なくとも、2次色であるRGBの各色及び3次色であるK色について、淡インク用のインクジェットヘッドを用いている。このように構成すれば、例えば、RGBの各色及びK色の濃インクのドットの出現頻度が大幅に少なくなることで、粒状感が目立つことを適切に防ぐことができる。また、この場合、7色分版方式で印刷を行うことにより、1次色(例えばM色及びC色)の濃インクのドットについても、出現頻度を適切に低減することができる。また、淡インクを用いることで、例えば、高い階調表現で高精彩な印刷をより適切に行うことができる。また、H9~H12のヘッド配置では、更に、同色の濃インク用のインクジェットヘッドと淡インク用のインクジェットヘッドとが異なるヘッド列に含まれるように、複数のインクジェットヘッドを配設している。また、この場合において、少なくとも一部のヘッド列に複数のインクジェットヘッドを並べることで、ヘッド列の列数が多くなり過ぎることを防いでいる。また、その結果、H9~H12にヘッド配置の場合、表中に示すように、例A~Fの全てにおいて、最大着弾インク量は、100%以下になる。そのため、これらのように構成すれば、例えば、滲み等を適切に抑えつつ、2次色について淡インク用のインクジェットヘッドを追加した7色分版方式(+淡色7色分版方式)での印刷をより適切に行うことができる。
【0068】
また、H9~H12のヘッド配置の場合、複数のヘッド列に分けて複数のインクジェットヘッドを並べることで、1つのヘッド列に全てのインクジェットヘッドを並べる場合と比べ、副走査方向におけるヘッド部の幅が大きくなっているといえる。しかし、淡色用のインクを用いて7色分版方式で印刷を行う場合、必要なインクジェットヘッドの数が多くなるため、ヘッド部のサイズがある程度大きくなることについては、避けられないともいえる。そして、この場合、複数のヘッド列に分けて複数のインクジェットヘッドを並べることについても、妥当な構成と考えることができる。但し、この場合も、ヘッド列の列数については、多くなりすぎないことが好ましい。より具体的に、ヘッド列の列数については、5列以下にすることが好ましい。ヘッド列の列数は、好ましくは4列以下、更に好ましくは3列以下である。また、この場合、ヘッド列の列数とは、例えば、印刷装置が備える複数のインクジェットヘッドを含むヘッド列の列数のことである。また、印刷装置が備える複数のインクジェットヘッドとは、例えば、印刷装置において印刷に用いる全てのインクジェットヘッドのことである。
【0069】
また、上記においても説明をしたように、淡色用のインクを用いて7色分版方式で印刷を行う場合において、最大着弾インク量が過剰になることを防ぐためには、同色の濃インク用のインクジェットヘッドと淡インク用のインクジェットヘッドとが異なるヘッド列に含まれるように構成することが好ましい。そのため、ヘッド列の列数については、2列以上にすることが好ましい。また、より具体的に、この場合、例えば、H12のヘッド配置を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、ヘッド列の数を最小(2列)にしつつ、最大着弾インク量を100%以下に抑えることができる。また、これにより、例えば、淡色用のインクを用いて7色分版方式での印刷を行う場合において、印刷速度をより適切に高速化することができる。
【0070】
また、
図5等を用いて上記において説明をしたように、H12のヘッド配置では、1次色であるM色及びC色については淡色用のインクジェットヘッドを用いず、粒状感への影響が大きくなる2次色及び3次色の各色についてのみ、淡色用のインクジェットヘッドを用いている。そのため、このヘッド配置については、2次色及び3次色のみについて淡色用のインクジェットヘッドを用いることで、ヘッド部を小型化していると考えることもできる。そのため、H12のヘッド配置については、例えば、ヘッド部の小型化、印刷に高速化、及び印刷の品質(画質)向上に最も適した構成と考えることもできる。また、
図7の表では説明を省略したが、H13のヘッド配置についても、同様にしてヘッド部を小型化していると考えることもできる。また、この場合も、最大着弾インク量について、H12のヘッド配置等と同様に、100%以下にすることができる。そのため、このように構成した場合も、例えば、ヘッド列が多くなりすぎることを防ぎつつ、2次色用のインクジェットヘッドを適切に配設することができる。
【0071】
また、上記においては、主に、淡インクの色の濃度を濃インクの1/2(Ln=N/2)とした場合に関し、例A~Fに対応する最大着弾インク量等を説明した。しかし、印刷結果における粒状感は、印刷される色の濃度(プリント濃度)が低い場合に特に目立つ。そのため、粒状感をより確実に抑えるためには、淡インクの色の濃度について、濃インクの1/2よりも低くすること等も考えられる。
【0072】
図8及び
図9は、色の濃度がより低い淡インクを用いる場合の最大着弾インク量について説明をする図であり、淡インクの色の濃度を濃インクの1/2よりも低くした場合について、
図7と同様の事項を示す。また、より具体的に、
図8は、淡インクの色の濃度Lnを濃インクの色の濃度Nの1/3にした場合(Ln=N/3の場合)について、
図7と同様の事項を示す。また、
図9は、淡インクの色の濃度Lnを濃インクの色の濃度Nの1/4にした場合(Ln=N/4の場合)について、
図7と同様の事項を示す。図中の表からわかるように、淡インクの色の濃度をより小さくした場合にも、例えば2次色の淡インク用のインクジェットヘッドを用いる構成において、同色の濃インク用のインクジェットヘッドと淡インク用のインクジェットヘッドとが異なるヘッド列に含まれるようなヘッド配置を用いることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0073】
尚、図示及び説明の便宜上、
図8及び
図9については、H1~H11のヘッド配置のみについて、例A~Fに対応する最大着弾インク量等を示している。また、上記の説明から明らかなように、H12及びH13を用いる場合においても、2次色の淡インク用のインクジェットヘッドを用いつつ、最大着弾インク量が過剰になることを適切に防ぐことができる。また、
図8及び
図9に示した結果においては、H9~H11等のように複数のヘッド列に分けてインクジェットヘッドを配設する場合にも、例A~Fの一部に対応する結果において、最大着弾インク量が100%を超えている。しかし、この場合も、同色の濃インク用のインクジェットヘッドと淡インク用のインクジェットヘッドとが異なるヘッド列に含まれるようなヘッド配置を用いることで、例えばH8のヘッド配置を用いる場合と比べ、大幅に最大着弾インク量を低減することが可能になる。そのため、色の濃度が濃インクの1/2未満となるような色の薄い淡インクを用いる場合には、一部の例に対応する最大着弾インク量が100%を超えるとしても、H9~H13等のヘッド配置を用いることが好ましいといえる。また、淡インクの色の濃度について、より一般化して考えた場合、例えば、濃インクの色の濃度の1/5~1/2程度の間に選ぶことが好ましいと考えられる。このように構成すれば、例えば、粒状感が目立つことを防ぎつつ、高い階調表現で高精彩な印刷をより適切に行うことができる。
【0074】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明を行う。上記においても説明をしたように、7色分版方式で印刷を行う場合、例えば、2次色であるRGBの各色のインクを用いることで、高精彩な印刷を適切に行うことができる。また、この場合において、2次色の各色や3次色であるK色について淡インクを用いることで、中間調の階調再現性を高めることや、印刷される画像の粒状感を低減することが可能になる。更には、この場合において、同じ色の濃インク用のインクジェットヘッド102と淡インク用のインクジェットヘッド102とを異なるヘッド列に配設することにより、最大着弾インク量を低減して、滲みの発生を適切に抑えることができる。
【0075】
また、この場合、ヘッド部の具体的な構成としては、例えば、
図4及び
図5に示したH9~H13のヘッド配置を用いることが好ましい。また、ヘッド部を小型化する観点で考えた場合、H11~H13のヘッド配置を用いることが特に好ましい。また、この場合、これらのヘッド配置については、例えば、淡インクを用いて7色分版方式で印刷を行う場合にも滲みの発生や粒状感を抑えてきめ細かな高精彩な印刷を行うことが可能になり、中間調での再現性の向上、高精彩な印刷(高画質化)、及び高速印刷等の性能を同時に得ることができるヘッド配置等と考えることができる。また、この場合、高速化、ヘッド部の小型化、及び高画質化等の観点に関し、主目的等に応じて、例えばH9~H13の中から好ましいヘッド配置を選択することが考えられる。また、この場合、例えば、H11~H13のヘッド配置については、使用する淡インクの種類を選択することでヘッド配置を最適化した構成等と考えることもできる。
【0076】
また、この場合、滲みが発生しにくくなるため、様々な種類の媒体を用いることも可能になる。より具体的に、媒体としては、例えば、布、紙、不敷布、プラスチックフィルム、セラミック、ガラス、陶器、金属等の様々な媒体を用いることができる。また、この場合、例えば、受像層が形成されていない媒体等であっても、好適に用いることができる。また、7色分版方式で印刷を行う効果については、例えば、2次色及び3次色のインクを用いることでインクの使用量を低減して、印刷のランニングコストを低減できること等も考えることができる。
【0077】
また、上記においても説明をしたような滲みが発生しにくい構成は、特に、滲みが発生しやすいインクや媒体を用いてインクジェット方式で印刷を行う用途に適していると考えることができる。また、この場合、より具体的に、例えば、布地の媒体への印刷を行うテキスタイルプリンタや、各種の産業用途のプリンタ等に好適に応用することができる。また、淡インクを用いて7色分版方式で印刷を行う動作については、例えば、ユーザによるモードの指定に応じて実行してもよい。この場合、ユーザの指示を受け付けることで、例えば印刷装置において、ソフトウェア又はハードウェアにより、濃インク及び淡インクのそれぞれを使用するか否かや、分版方式について、切り替えを行うことが考えられる。
【0078】
また、上記の各構成において、使用するインクについては、特に制限されず、インクジェットヘッドで吐出可能な様々なインクを用いることができる。より具体的に、インクとしては、例えば、色材として水性染料を用いる水性染料インクや、色材として顔料を用いる顔料インク等を好適に用いることができる。また、インクの基本的な特徴や定着のさせ方等に関し、例えば、ラテックスインク、ソルベントインク、UV硬化インク、溶媒希釈UVインク、瞬間乾燥型のインク等を用いることも考えられる。この場合、溶媒希釈UVインクとは、例えば、溶媒(有機溶剤等)で希釈したUV硬化インク(例えば、ソルベントUVインク)のことである。
【0079】
また、
図1に関連して上記においても説明をしたように、印刷装置においては、使用するインクや媒体の特徴に応じたインクの定着手段を用いることが考えられる。より具体的に、インクの定着手段としては、例えば、例えば
図1を用いて説明をしたように、ヒータを用いることが考えられる。また、ヒータとしては、例えば、インクジェットヘッドと対向する位置で媒体を加熱するプリントヒータ等を好適に用いることができる。また、インクの定着手段としては、例えば、媒体の搬送方向においてインクジェットヘッドよりも下流側でインクを乾燥させる後加熱乾燥用の構成や、UV瞬間乾燥型インク等の瞬間乾燥型のインクへエネルギー線(紫外線等)を照射する構成を用いることも考えられる。また、例えば、赤外線の照射によりインクを乾燥させる構成、紫外線の照射によりインクを硬化させる構成、又は電子ビームの照射によりインクを硬化させる構成等を用いることも考えられる。また、インクや媒体の特徴に応じて、各種の前処理(前乾燥等)や後処理等を行ってもよい。また、媒体としては、上記においても説明をしたように、受像層が形成されていない媒体等を好適に用いることができる。また、このような媒体に限らず、例えば、受像層が形成されている媒体や、滲み防止のための前処理を行った媒体(前処理層を形成した媒体)等を用いることも可能である。
【0080】
続いて、印刷装置やヘッド部の構成の更なる変形例等について、説明をする。上記においても説明をしたように、淡インクを用いて7色分版方式で印刷を行う場合において、粒状感が目立つことを適切に防ぎつつ高精彩な印刷をより適切に行うためには、全ての2次色について淡インクを用いることが好ましい。しかし、使用するインクジェットヘッドの数を少なくするためには、上記のように、例えば、2次色であるRGBの各色、及び3次色であるK色についてのみ、淡インクを用いることが考えられる。また、この点に関し、使用するインクジェットヘッドの数をより少なくするためには、2次色に関し、一部の色のみに淡インクを用いてもよい。
【0081】
より具体的に、7色分版方式で用いる7色のインクについて、見た目の明るさは、明るい方から順番に、Y色、M色、C色、G色、R色、B色、及びK色の順番になる。また、その結果、粒状感の目立ちやすさは、この逆の順番になる。また、その結果、7色のうち、K色、B色、及びR色について、特に粒状感が目立ちやすくなる。そのため、2次色に関し、一部の色のみに淡インクを用いる場合、例えば、R色又はB色のいずれかの色について、淡インク用のインクジェットヘッドを用いることが考えられる。また、この場合、例えば、R色及びB色の両方の色について、淡インク用のインクジェットヘッドを用いることが好ましい。また、一部の2次色に加え、3次色であるK色についても淡インクを用いることが好ましい。このように構成すれば、より少ない数のインクジェットヘッドを用いて、粒状感が目立つことを適切に防ぐことができる。
【0082】
また、求められる印刷の品質等によっては、より多くのインクジェットヘッドを用いることも考えられる。より具体的に、上記においては、主に、淡インクの色の濃さ(淡色濃度)を1種類の濃度のみにした場合について、ヘッド配置の例等を説明した。しかし、より高品質な印刷を行うためには、例えば、同じ色に対し、明度の低い淡インクとして、色の濃さが互いに異なる複数種類のインクを用いてもよい。この場合、2次色であるRGBの各色や、3次色であるK色での淡色濃度について、2段階又はそれ以上にすることが考えられる。
【0083】
また、7色分版方式で印刷を行う場合において、YMCKRGBの7色以外の色のインクを更に用いてもよい。この場合、例えば、メタリック色や白色等の特色のインクを更に用いることが考えられる。また、この場合、特色用のインクジェットヘッドについては、上記の7色のインク用のインクジェットヘッドとは別のヘッド列に配設することが考えられる。また、特色の使用の頻度や、同じ回の主走査動作で他の色のインクと同じ位置へインクを吐出する確率(同時プリントの確率)等によっては、1次色、2次色、又は3次色用のインクジェットヘッドと同じヘッド列に並べて配設してもよい。
【0084】
また、粒状感が目立つことを防ぐためには、淡インクを用いる方法の他に、インクジェットヘッドから吐出するインクの容量を可変にして、小さなサイズのインクのドットを形成すること等も考えられる。そのため、上記において説明をした各構成においても、例えば、少なくとも一部の色用のインクジェットヘッドについて、吐出容量可変ヘッドを用いて、吐出するインクの容量を可変にすることが考えられる。この場合、吐出容量可変ヘッドとは、例えば、吐出するインクの容量として少なくとも2種類の容量を設定可能なインクジェットヘッド(多値ヘッド、バリアブルヘッド)のことである。また、吐出容量可変ヘッドについては、例えば、画像の印刷時に複数種類の容量でインクを吐出するインクジェットヘッド等と考えることもできる。また、より具体的に、この場合、例えば、少なくともいずれかの1次色用のインクジェットヘッドとして、吐出容量可変ヘッドを用いることが考えられる。また、この場合、例えば、淡インクを用いない色用のインクジェットヘッドについて、吐出容量可変ヘッドにすること等が考えられる。例えば、2次色及び3次色については淡インクを用い、1次色には淡インクを用いない場合、2次色及び3次色については吐出容量可変ヘッドを用いず、1次色のみについて吐出容量可変ヘッドを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッドの個数が多くなりすぎることを防ぎつつ、粒状感が目立つことをより適切に防ぐことができる。また、印刷装置の構成の更なる変形例においては、例えば、全ての色用のインクジェットヘッドとして、吐出容量可変ヘッドを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、例えば印刷装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
10・・・印刷装置、12・・・ヘッド部、14・・・プラテン、16・・・主走査駆動部、18・・・副走査駆動部、20・・・ヒータ、30・・・制御部、50・・・媒体、100・・・キャリッジ、102・・・インクジェットヘッド、202・・・ヘッド列