IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中日本高速道路株式会社の特許一覧 ▶ 神鋼建材工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-防護柵システム 図1
  • 特許-防護柵システム 図2
  • 特許-防護柵システム 図3
  • 特許-防護柵システム 図4
  • 特許-防護柵システム 図5
  • 特許-防護柵システム 図6
  • 特許-防護柵システム 図7
  • 特許-防護柵システム 図8
  • 特許-防護柵システム 図9
  • 特許-防護柵システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】防護柵システム
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
E01F15/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018049094
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019157582
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】神鋼建材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 篤徳
(72)【発明者】
【氏名】石井 麻貴
(72)【発明者】
【氏名】仲岡 重治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】柴田 公茂
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特許第6014782(JP,B1)
【文献】特開2014-118746(JP,A)
【文献】特開2014-77230(JP,A)
【文献】実開昭57-31321(JP,U)
【文献】特開2007-16410(JP,A)
【文献】米国特許第4330106(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の長手方向にそれぞれ延び、その長手方向について道路に沿うようにそれぞれ配置されるとともに前記道路に沿って並んで配置される複数の可動防護柵と、
前記複数の可動防護柵のそれぞれをその設置位置で地面に固定する固定状態と当該固定を解除して前記可動防護柵の前記地面上での移動を許容する固定解除状態とにそれぞれ切り換えられることが可能な複数の固定装置と、
前記複数の可動防護柵のうち互いに隣り合う可動防護柵同士を接続するための複数の接続装置と、を備え、
前記複数の接続装置のそれぞれは、互いに隣り合う可動防護柵にそれぞれ固定される防護柵側部材と、互いに隣り合う可動防護柵にそれぞれ固定されている前記防護柵側部材同士を接続するための接続具と、を有し、
前記防護柵側部材のそれぞれは、上下方向に延び且つ少なくとも上向きに開放された挿入孔を有し、
前記接続具は、互いに隣り合う可動防護柵にそれぞれ固定されている前記防護柵側部材の前記挿入孔にそれぞれ上方から挿入されることが可能な第1挿入部及び第2挿入部と、当該第1挿入部及び当該第2挿入部を相互に連結する相互連結部と、を有する、防護柵システム。
【請求項2】
前記複数の可動防護柵のそれぞれは、地面上を移動することが可能な少なくとも1つの基部と、前記長手方向に並ぶ複数の位置で前記基部から立直するように当該基部に固定される複数の支柱と、前記長手方向と直交する前記可動防護柵の幅方向について前記複数の支柱の両側に配置されて当該複数の支柱にそれぞれ固定されることにより当該複数の支柱同士を連結する一対のガードレールと、を備え、
前記一対のガードレールの前記長手方向の両端部はそれぞれ当該長手方向の両外側に位置する前記支柱よりもさらに当該長手方向に突出する外側突出部を有し、
前記防護柵側部材は、前記幅方向について前記ガードレールの前記外側突出部の内側に位置して当該外側突出部に固定されるガードレール側部材であり、
前記挿入孔は、前記ガードレール側部材に設けられ、
前記接続具は、互いに隣り合う可動防護柵の外側突出部にそれぞれ固定されている前記ガードレール側部材同士を接続する、請求項1に記載の防護柵システム。
【請求項3】
前記複数の接続装置のそれぞれは、前記ガードレール側部材として、前記一対のガードレールの外側突出部同士を前記幅方向に連結するように当該一対のガードレールの外側突出部にそれぞれ固定される梁型連結部材を含む、請求項2に記載の防護柵システム。
【請求項4】
前記複数の接続装置のそれぞれは、前記ガードレール側部材として、上側ガードレール側部材と、当該上側ガードレール側部材の下方に位置する下側ガードレール側部材と、を含み、
前記第1及び第2挿入部のうちの少なくとも第1挿入部は、前記上側ガードレール側部材を貫通して前記下側ガードレール側部材の前記挿入孔に挿入されることが可能な長さを有し、
前記上側ガードレール側部材の挿入孔は、前記第1挿入部の挿通を許容するように当該上側ガードレール側部材を貫通する貫通孔である、請求項2又は3に記載の防護柵システム。
【請求項5】
任意の可動防護柵の前記道路に面する前記ガードレールは、前記外側突出部として前記道路上を走行する車両の進行方向の前側を向く前側突出部を有し、
前記任意の可動防護柵に対して前記進行方向の前側に隣接する可動防護柵の前記道路に面する前記ガードレールは、前記外側突出部として前記進行方向の後側を向く後側突出部を有し、
前記前側突出部は、前記後側突出部と前記長手方向にオーバーラップし且つ前記後側突出部の前記幅方向の外側に位置する、請求項2~4のいずれか1項に記載の防護柵システム。
【請求項6】
前記第2挿入部は、その挿入方向について前記第1挿入部よりも短い、請求項1~5のいずれか1項に記載の防護柵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に沿って設置される複数の可動防護柵を備えた防護柵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に沿って設置される防護柵として、例えば道路の中央分離帯や車道と歩道との間の境界等に設置される様々な防護柵が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、地面上を移動することが可能な可動防護柵が開示されている。当該可動防護柵は、通常の使用時には道路の中央分離帯等に設置されるが、緊急時にはその設置場所から移動することが可能である。具体的に、この防護柵は、道路上を移動することが可能であって上下方向に延びる筒状の支柱をそれぞれ有する複数の可動側部材と、当該複数の可動側部材の支柱を横切る方向に延びるとともにそれらの支柱を繋ぐビームと、地面に固定された複数の固定管と、上下方向に移動可能に各可動側部材の支柱内に収容された複数の連結部材とを備えている。
【0004】
前記複数の連結部材は、それぞれ、可動側部材の支柱内の空間と固定管内の空間とに跨って配置されてその可動側部材の支柱と固定管とを連結する第1の高さ位置と、可動側部材の支柱内の空間に挿入された状態で固定管内の空間から上方に離脱する第2の高さ位置との間で上下方向に移動可能となっている。また、防護柵は、各連結部材をそれぞれ第2の高さ位置で保持する保持部を有する。
【0005】
前記防護柵の通常の使用時には、その設置場所において各連結部材を第1の高さ位置に配置してその各連結部材により各可動側部材の支柱と各固定管とを連結することで可動側部材が移動しないように固定する。一方、緊急時には、各連結部材を第2の高さ位置に引き上げてその各連結部材を保持部により当該第2の高さ位置で保持することによって、当該各連結部材による各可動側部材の支柱と各固定管との連結を解除する。これにより、各可動側部材を移動できるようにし、それによって防護柵をその設置場所から移動できるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6014782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、前記のような可動防護柵は道路に沿って並ぶ複数の位置にそれぞれ配置され、当該道路に沿って連続する防護柵システムを構築する。この防護柵システムにおいては、そのうちの任意の防護柵に車両が衝突した場合に当該防護柵が他の防護柵から大きく逸脱するのを防ぐように、互いに隣り合う防護柵同士が接続されることが好ましい。換言すれば、当該防護柵同士の相互接続は、任意の防護柵に車両が衝突した場合に当該車両を道路から逸脱させずに道路内に戻すような誘導を確実に行うことを可能にする。
【0008】
しかしながら、前記特許文献1には、隣り合う防護柵同士が着脱容易でかつ任意の防護柵をその前後に隣り合う防護柵から迅速に離脱可能に隣り合う防護柵同士を接続するための手段については何ら開示されていない。例えば、任意の防護柵のガードレールの端部とこれに隣接する防護柵のガードレールの端部とを重ねてボルト等で締結することによって隣り合う防護柵同士を接続する場合があるが、当該ガードレール同士の締結及びその締結の解除には多大な手間を要する。そして、この締結の解除に多大な手間がかかることにより、任意の防護柵をその前後に隣り合う防護柵から離脱させるのに多くの時間がかかることになり、緊急時に当該任意の防護柵を迅速に離脱させることが困難になる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、道路上に沿って並ぶように配置される複数の可動防護柵を備えた防護柵システムであって、互いに隣り合う可動防護柵同士が着脱容易でかつ任意の可動防護柵をその前後に隣り合う可動防護柵から迅速に離脱させることが可能となるように隣り合う可動防護柵同士を接続することが可能なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により提供される防護柵システムは、特定の長手方向にそれぞれ延び、その長手方向について道路に沿うようにそれぞれ配置されるとともに前記道路に沿って並んで配置される複数の可動防護柵と、前記複数の可動防護柵のそれぞれをその設置位置で地面に固定する固定状態と当該固定を解除して前記可動防護柵の前記地面上での移動を許容する固定解除状態とにそれぞれ切り換えられることが可能な複数の固定装置と、前記複数の可動防護柵のうち互いに隣り合う可動防護柵同士を接続するための複数の接続装置と、を備える。前記複数の接続装置のそれぞれは、互いに隣り合う可動防護柵にそれぞれ固定される防護柵側部材と、互いに隣り合う可動防護柵にそれぞれ固定されている前記防護柵側部材同士を接続するための接続具と、を有する。前記防護柵側部材のそれぞれは、上下方向に延び且つ少なくとも上向きに開放された挿入孔を有し、前記接続具は、互いに隣り合う可動防護柵にそれぞれ固定されている前記防護柵側部材の前記挿入孔にそれぞれ上方から挿入されることが可能な第1挿入部及び第2挿入部と、当該第1挿入部及び当該第2挿入部を相互に連結する相互連結部と、を有する。
【0011】
この防護柵システムによれば、任意の可動防護柵に対応する特定の固定装置を固定解除状態にしてその可動防護柵を所定の設置場所まで移動させ、その設置場所で前記特定の固定装置を固定状態に切り換えることにより、当該可動防護柵を当該設置場所に固定することができる。さらに、互いに隣り合う可動防護柵のそれぞれに固定されている防護柵側部材の挿入孔に共通の接続具の第1及び第2挿入部をそれぞれ上から挿入するだけの簡単な操作で、当該接続具を介して当該防護柵側部材同士を接続することができ、これにより、互いに隣接する可動防護柵同士を容易に接続することができる。また、このような上下方向に沿った挿入孔への第1及び第2挿入部の挿入による接続は、当該上下方向に直交する方向すなわち水平方向への互いに隣接する可動防護柵同士の相対変位を高い強度で規制することが可能である。
【0012】
一方、前記可動防護柵同士の接続の解除は、前記防護柵側部材の挿入孔から前記接続具の第1及び第2挿入部を上方に抜き取ることにより容易に行うことが可能である。そして、接続が解除された可動防護柵に対応する固定装置を固定解除状態に切り換えることにより、その接続が解除された可動防護柵を当該可動防護柵の設置場所から移動させることができる。また、前記挿入孔から上方への前記接続具の第1及び第2挿入部の抜き取りは、即座に行うことが可能であり、例えば互いに隣り合う可動防護柵同士がボルト等で締結されることによって接続されている場合にその締結を解除する作業に比べて遥かに短時間で行うことができる。このため、任意の可動防護柵をその前後に隣り合う可動防護柵から迅速に離脱させることが可能である。
【0013】
前記複数の可動防護柵のそれぞれは、地面上を移動することが可能な少なくとも1つの基部と、前記長手方向に並ぶ複数の位置で前記基部から立直するように当該基部に固定される複数の支柱と、前記長手方向と直交する前記可動防護柵の幅方向について前記複数の支柱の両側に配置されて当該複数の支柱にそれぞれ固定されることにより当該複数の支柱同士を連結する一対のガードレールと、を備え、前記一対のガードレールの前記長手方向の両端部はそれぞれ当該長手方向の両外側に位置する前記支柱よりもさらに当該長手方向に突出する外側突出部を有し、前記防護柵側部材は、前記幅方向について前記ガードレールの前記外側突出部の内側に位置して当該外側突出部に固定されるガードレール側部材であり、前記挿入孔は、前記ガードレール側部材に設けられ、前記接続具は、互いに隣り合う可動防護柵の外側突出部にそれぞれ固定されている前記ガードレール側部材同士を接続してもよい。
【0014】
前記複数の接続装置のそれぞれは、前記ガードレール側部材として、前記一対のガードレールの外側突出部同士を前記幅方向に連結するように当該一対のガードレールの外側突出部にそれぞれ固定される梁型連結部材を含むことが好ましい。当該梁型連結部材は、前記一対のガードレールの外側突出部同士を相互連結することにより当該外側突出部の剛性を飛躍的に高めた状態で、互いに隣接する可動防護柵の外側突出部同士が接続されることを可能にする。
【0015】
前記複数の接続装置のそれぞれは、前記ガードレール側部材として、上側ガードレール側部材と、当該上側ガードレール側部材の下方に位置する下側ガードレール側部材と、を含み、前記第1及び第2挿入部のうちの少なくとも第1挿入部は、前記上側ガードレール側部材を貫通して前記下側ガードレール側部材の前記挿入孔に挿入されることが可能な長さを有し、前記上側ガードレール側部材の挿入孔は、前記第1挿入部の挿通を許容するように当該上側ガードレール側部材を貫通する貫通孔であることが、好ましい。このように前記第1挿入部が前記上側ガードレール側部材を貫通した状態で前記下側ガードレール側部材の挿入孔に挿入されることは、前記接続具がより高い強度で可動防護柵同士を接続することを可能にする。
【0016】
任意の可動防護柵の前記道路に面する前記ガードレールは、前記外側突出部として前記道路上を走行する車両の進行方向の前側を向く前側突出部を有し、前記任意の可動防護柵に対して前記進行方向の前側に隣接する可動防護柵の前記道路に面する前記ガードレールは、前記外側突出部として前記進行方向の後側を向く後側突出部を有し、前記前側突出部は、前記後側突出部と前記長手方向にオーバーラップし且つ前記後側突出部の前記幅方向の外側に位置することが好ましい。こうすれば、隣接する可動防護柵のガードレールを隙間なく連続させることが可能である。しかも、前記道路に面するガードレールの前記後側突出部は道路上の車両の走行方向と逆向きに突出するものであるが、この後側突出部が道路上の車両の走行方向の前側を向く前側突出部によって覆われるから、道路上を走行する車両がその走行方向と逆向きに突出する前記後側突出部に突き当たるのを防ぐことができる。
【0017】
前記第2挿入部は、その挿入方向について前記第1挿入部よりも短いことが、好ましい。このことは、前記第1挿入部が前記ガードレール側部材の前記挿入孔から完全には抜けていなくても前記第2挿入部が前記ガードレール側部材の前記挿入孔から抜けた時点で可動防護柵同士の接続を解除することを可能にし、接続解除作業の効率を高めることを可能にする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、道路上に沿って並ぶように配置される複数の可動防護柵を備えた防護柵システムであって、互いに隣り合う可動防護柵同士が着脱容易でかつ任意の可動防護柵をその前後に隣り合う可動防護柵から迅速に離脱させることが可能となるように隣り合う可動防護柵同士を接続することが可能なものが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による防護柵システムの正面図である。
図2】本発明の一実施形態による防護柵システムの上面図である。
図3】防護柵システムを構成する可動防護柵の上面図である。
図4図1中のIV-IV線に沿った可動防護柵の断面図である。
図5】防護柵システムのうちの隣り合う可動防護柵同士の接続箇所近傍を第1ガードレールを部分的に破断させて示す正面図である。
図6図5中のVI-VI線に沿った可動防護柵システムの断面図である。
図7】防護柵システムのうちの隣り合う可動防護柵同士の接続箇所近傍の上面図である。
図8】防護柵システムにおいて隣り合う可動防護柵同士を接続する接続具の正面図である。
図9図6に示した断面のうち上側の第1ガードレールと上側梁型連結部材と上側ガードレール側部材と下側ガードレール側部材との結合箇所近傍を接続具を取り外した状態で拡大して部分的に示す図である。
図10】防護柵システムを構成する複数の可動防護柵のうちの特定の可動防護柵とその前後に隣り合う可動防護柵との接続を解除して当該特定の可動防護柵をその前後に隣り合う可動防護柵から離脱させるときの過程を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本発明の一実施形態による防護柵システム1は、複数の可動防護柵2(図1参照)と、複数の固定装置3(図1参照)と、複数の接続装置4(図2参照)と、を備える。この防護柵システム1は、例えば、高速道路やその他の道路の中央分離帯などに設置される。この防護柵システム1は、中央分離帯に設置される場合にはその中央分離帯の両側の道路間を仕切り、一方の道路から反対車線の道路への車両の進入を防止する。また、緊急時には中央分離帯に設置された防護柵システム1からその防護柵システム1を構成するいずれかの可動防護柵2を移動させることにより、車両が一方の道路から反対車線の道路へUターンもしくは進入するためのスペースを確保することが可能となっている。以下、本実施形態の防護柵システム1について詳しく説明する。
【0022】
複数の可動防護柵2は、それぞれ特定の長手方向に延び、その長手方向について道路に沿うようにそれぞれ配置されるとともに道路に沿って並んで配置される。防護柵システム1が中央分離帯に設置される場合には、複数の可動防護柵2は、中央分離帯の両側の道路に沿って並んで配置され、一方の道路とその反対車線の道路との間を仕切る。各可動防護柵2は、後述の転動体22の転動部材が地面G上を転動することにより地面G上を移動可能である。各可動防護柵2は、複数の基部6と、複数の支柱8と、第1ガードレール10と、第2ガードレール12(図2参照)と、複数のガードレール連結部材13とを備える。
【0023】
複数の基部6は、可動防護柵2のベースとなる部分であり、それぞれ、地面G上を移動可能に構成されている。本実施形態では、各可動防護柵2は、2つの基部6を有する。各基部6は、図4に示すように、ベースプレート20と、複数の転動体22とを有する。
【0024】
ベースプレート20は、略水平に配置された平板である。このベースプレート20は、当該ベースプレート20を上下方向(当該ベースプレート20の板厚方向)に貫通する貫通孔を有する。
【0025】
複数の転動体22は、地面Gに沿って当該地面G上を転動可能に構成されており、基部6が地面G上を移動できるようにするためのものである。この複数の転動体22は、それぞれベースプレート20に取り付けられている。当該転動体22は、いわゆるキャスタである。本実施形態では、各基部6は、4つの転動体22を有する。4つの転動体22は、ベースプレート20の貫通孔の両側に分かれて2つずつ配置されている。この4つの転動体22は、ベースプレート20から下向きに突出しており、地面Gに接触してベースプレート20を下から支える。この4つの転動体22のそれぞれは、地面Gに接してその地面G上を転動する車輪等の転動部材22aと、ベースプレート20に取り付けられていて前記転動部材22aが任意の方向に回転可能となるように当該転動部材22aを保持する保持部22bとを有する。
【0026】
前記保持部22bは、ベースプレート20に固定された部分と、前記転動部材22aを保持する部分とを有する。この転動部材22aを保持する部分は、ベースプレート20に固定された部分に対して垂直軸回りに旋回可能に結合されている。この転動部材22aを保持する部分が垂直軸回りに旋回することにより、前記転動部材22aが向きを変えて地面G上を任意の方向へ転動することが可能となっている。そして、このような転動体22の機能により、可動防護柵2は、地面G上において垂直軸回りに回転することが可能であるとともに、地面Gに沿って当該地面G上を任意の方向へ自在に移動することが可能となっている。
【0027】
複数の支柱8は、図1に示すように、可動防護柵2の長手方向に並ぶ複数の位置で複数の基部6のそれぞれから立直するようにそれらの基部6に固定されている。本実施形態では、各可動防護柵2は、2つの支柱8を有する。各支柱8は、円筒状であり、各基部6のベースプレート20(図4参照)の貫通孔に挿入されてベースプレート20を貫通するとともにそのベースプレート20から上方へ延びる姿勢で当該ベースプレート20に固定されている。
【0028】
第1ガードレール10と第2ガードレール12は、図2及び図3に示すように、可動防護柵2の長手方向と直交する当該可動防護柵2の幅方向について前記複数の支柱8の両側に配置されてそれら複数の支柱8にガードレール連結部材13を介してそれぞれ固定されることにより当該複数の支柱8同士を連結するものである。この第1ガードレール10と第2ガードレール12は、本発明における一対のガードレールの一例である。
【0029】
第1ガードレール10は、縦方向の断面が波形をなす薄板からなり、可動防護柵2の長手方向に沿って延びている。第1ガードレール10は、防護柵システム1を挟んでその両側に位置する道路のうちの一方の道路に面している。以下、この第1ガードレール10が面する一方の道路を第1道路と称し、防護柵システム1を挟んで前記第1道路と反対の道路を第2道路と称する。各可動防護柵2は、第1ガードレール10として、上下に並んで配置された2つの第1ガードレール10を有する(図4参照)。
【0030】
各第1ガードレール10は、上下に並んで配置されてそれぞれ第1道路側へ凸状となるように湾曲した上側山部10a及び下側山部10bと、その上側山部10aと下側山部10bとの間でそれらを繋ぎ、第2道路側へ凸状となるように湾曲した谷部10cとを有する。
【0031】
また、図3に示すように、可動防護柵2の長手方向における上下の第1ガードレール10の両端部は、それぞれ、外側突出部10dを有する。この外側突出部10dは、可動防護柵2において前記長手方向の両外側に位置する支柱8よりもさらに前記長手方向に突出する部分である。
【0032】
また、各第1ガードレール10の前記両端部の外側突出部10dのうち第1道路上を走行する車両の進行方向の前側に位置する一方の外側突出部10dの対応する支柱8からの前記長手方向外側への突出長さは、前記第1道路上を走行する車両の進行方向に対して後側に位置する他方の外側突出部10dの対応する支柱8からの前記長手方向外側への突出長さよりも大きい。そして、各可動防護柵2の前記一方の外側突出部10dは、図2及び図7に示すように、その可動防護柵2に対して前記第1道路上における前記車両の進行方向の前側に隣り合う可動防護柵2の前記他方の外側突出部10dの第1道路側を向く面に重なっている。この構成により、隣り合う可動防護柵2の第1ガードレール10同士の接続箇所の剛性が高まるとともに、前記第1道路上を走行する車両がその第1道路上を外れて第1ガードレール10に衝突したときに隣接する第1ガードレール10同士の継ぎ目において大きな抵抗力を受けることなく、その車両の進行方向前側へ流れるように当該車両を誘導することが可能になる。
【0033】
第2ガードレール12は、第1ガードレール10と同様のものであり、可動防護柵2の長手方向に沿って延びている。第2ガードレール12は、防護柵システム1を挟んで前記第1道路と反対側に位置する第2道路に面している。すなわち、第2ガードレール12は、第1ガードレール10が面する道路の反対車線の道路に面している。可動防護柵2は、第2ガードレール12として、上下に並んで配置された2つの第2ガードレール12を有する。この上下の各第2ガードレール12は、前記した上下の各第1ガードレール10と同様に構成されている。
【0034】
具体的に、各第2ガードレール12は、上下に並んで配置されてそれぞれ第2道路側へ凸状となるように湾曲した上側山部12a及び下側山部12bと、その上側山部12aと下側山部12bとの間でそれらを繋ぎ、第1道路側へ凸状となるように湾曲した谷部12cとを有する。また、可動防護柵2の長手方向における上下の第2ガードレール12の両端部は、それぞれ、第1ガードレール10の外側突出部10dと同様に構成された外側突出部12dを有する。
【0035】
複数のガードレール連結部材13は、図3及び図4に示すように、上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12との間及び下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12との間にそれぞれ介在している。上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12との間に介在するガードレール連結部材13は、その上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12とを可動防護柵2の幅方向に連結するとともにそれらのガードレールを支柱8に連結する。また、下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12との間に介在するガードレール連結部材13は、その下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12とを可動防護柵2の幅方向に連結するとともにそれらのガードレールを支柱8に連結する。以下、上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12との間に介在するガードレール連結部材13を上側のガードレール連結部材13と称し、下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12との間に介在するガードレール連結部材13を下側のガードレール連結部材13と称する。
【0036】
上側のガードレール連結部材13は、可動防護柵2において各支柱8に対して2つずつ付設されている。各支柱8に付設された2つの上側のガードレール連結部材13は、その支柱8の上半部を可動防護柵2の長手方向における両側から挟み込むように配置されている。上側のガードレール連結部材13は、可動防護柵2の幅方向に延びている。上側のガードレール連結部材13の長手方向の一端部は上側の第1ガードレール10に締結されて固定され、他端部は上側の第2ガードレール12に締結されて固定され、その一端部と他端部との間に位置する当該上側のガードレール連結部材13の中間部分は支柱8の上半部の外周面に溶接されて固定されている。このように上側のガードレール連結部材13の各部分が上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12と支柱8に固定されることによって、それらのガードレール10,12と支柱8が当該上側のガードレール連結部材13を介して連結されている。
【0037】
下側のガードレール連結部材13は、可動防護柵2において各支柱8に対して2つずつ付設されている。各支柱8に付設された2つの下側のガードレール連結部材13は、その支柱8の下半部を可動防護柵2の長手方向における両側から挟み込むように配置されている。この下側のガードレール連結部材13は、上側のガードレール連結部材13の下方に配置されてその上側のガードレール連結部材13と平行に延びている。この下側のガードレール連結部材13の長手方向の一端部は下側の第1ガードレール10に締結されて固定され、他端部は下側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。また、下側のガードレール連結部材13の長手方向の中間部分の下部は、基部6のベースプレート20に締結されて固定されている。すなわち、この下側のガードレール連結部材13は、基部6を介して支柱8に固定されている。なお、下側のガードレール連結部材13は、溶接によってベースプレート20に固定されてもよい。下側のガードレール連結部材13の各部分が前記のように下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12と支柱8に固定されることによって、それらのガードレール10,12と支柱8が当該下側のガードレール連結部材13を介して連結されている。
【0038】
以上のように第1ガードレール10と第2ガードレール12が上下の多くのガードレール連結部材13によって相互に連結されることにより、可動防護柵2の剛性が高められている。
【0039】
複数の固定装置3(図1参照)は、各可動防護柵2が設置位置に配置されたときにその設置位置で当該可動防護柵2を固定するためのものである。この複数の固定装置3は、複数の可動防護柵2のそれぞれに対応して設けられている。そして、この複数の固定装置3は、それぞれ、対応する可動防護柵2をその設置位置で地面Gに固定する固定状態と当該固定を解除してその可動防護柵2の地面G上での移動を許容する固定解除状態とに切り換えられることが可能に構成されている。具体的には、複数の固定装置3は、それぞれ、前記固定状態では対応する可動防護柵2の対応する基部6をその設置位置で地面Gに固定し、前記固定解除状態では対応する基部6の固定を解除してその基部6の地面G上での移動を許容する。
【0040】
複数の固定装置3は、防護柵システム1の設置場所において間隔をあけて並ぶように設置されている。この複数の固定装置3の隣り合うもの同士の間の間隔は、複数の可動防護柵2が並んで設置された状態でそれらの可動防護柵2の支柱8間の間隔に対応するように設定されている。各固定装置3は、固定管30と、挿入管32とを有する。
【0041】
固定管30は、対応する基部6の設置位置において、その基部6に固定された支柱8が配置される位置の真下の位置で地面Gに埋め込まれて固定されながら当該固定管30の内側に挿入管32を挿入可能な空間を確保している。この固定管30は、中空円筒状であり、上下方向に延びる姿勢で設置され、当該固定管30の上端の位置が地面Gの位置と略一致するように配置されている。当該固定管30の上端は、開口している。
【0042】
挿入管32は、図4及び図5に示すように、固定装置3の前記固定状態において支柱8内の空間と固定管30内の空間とに跨るようにそれらの空間に挿入されて支柱8と固定管30とを相互に連結し、それによって支柱8及び当該支柱8に固定された基部6を地面Gに固定するものである。この挿入管32は、固定装置3の前記固定解除状態では、固定管30内の空間及び支柱8内の空間から上方へ引き抜かれて基部6の地面Gに対する固定を解除し、その基部6の地面G上での移動を許容する。
【0043】
挿入管32は、支柱8内の空間及び固定管30内の空間に挿入される円筒状の挿入管本体32aと、その挿入管本体32aの上端からその径方向外側へ突出するようにその上端に取り付けられた鍔部32bと、挿入管本体32aの上端に取り付けられた把手32cとを有する。前記鍔部32bは、支柱8の外径よりも大きい外径を有しており、前記固定状態において支柱8の上端に当接し、それによって挿入管32を当該挿入管32が支柱8と固定管30とを相互に連結する高さ位置(図4参照)で保持する。また、前記把手32cは、支柱8内の空間及び固定管30内の空間に挿入管32を挿脱する作業の際に作業者によって把持される部分である。
【0044】
前記複数の接続装置4(図2参照)は、並んで設置された複数の可動防護柵2のうち互いに隣り合う可動防護柵2同士を接続するためのものである。複数の接続装置4のそれぞれは、複数のガードレール側部材40と、2つの接続具50とを有する。
【0045】
ガードレール側部材40は、互いに隣り合う可動防護柵2にそれぞれ固定される防護柵側部材の一例であり、可動防護柵2の幅方向について第1ガードレール10の外側突出部10dと第2ガードレール12の外側突出部12dの内側に位置してそれらの外側突出部10d,12dに固定されるものである。本実施形態では、各接続装置4は、このガードレール側部材40として、2つの上側梁型連結部材42と、2つの下側梁型連結部材44(図5及び図6参照)と、8つの上側ガードレール側部材46と、8つの下側ガードレール側部材48(図5及び図6参照)と、を有する。
【0046】
前記2つの上側梁型連結部材42は、それぞれ、互いに隣り合う可動防護柵2の端部に設けられている。この上側梁型連結部材42は、それが設けられた可動防護柵2の端部において、上側の第1ガードレール10の外側突出部10dと上側の第2ガードレール12の外側突出部12dとを可動防護柵2の幅方向に連結するようにそれらのガードレール10,12の外側突出部10d,12dにそれぞれ固定されるものである。
【0047】
具体的に、上側梁型連結部材42は、縦板部52と、上板部54と、下板部56と、第1固定部58と、第2固定部60とを有する。
【0048】
縦板部52は、可動防護柵2の幅方向に延びる板状をなし、その板面が上下方向に沿うように配置されている。この縦板部52の第1道路側の端部は、上側の第1ガードレール10の外側突出部10dの谷部10cを受け入れるように切り欠かれた形状をなしている。また、縦板部52の第2道路側の端部は、上側の第2ガードレール12の外側突出部12dの谷部12cを受け入れるように切り欠かれた形状をなしている。
【0049】
上板部54は、上側梁型連結部材42の上面を構成する板状の部分であり、縦板部52の上縁に繋がっている。上板部54は、縦板部52の上縁に沿って可動防護柵2の幅方向に延びている。上板部54は、縦板部52に対して垂直に配置されている。すなわち、上板部54は、略水平に配置されている。この上板部54の第1道路側の端部は、上側の第1ガードレール10の外側突出部10d、具体的にはその外側突出部10dの上側山部10aの背面(第2道路側を向く面)に接触している。また、この上板部54の第2道路側の端部は、上側の第2ガードレール12の外側突出部12d、具体的にはその外側突出部12dの上側山部12aの背面(第1道路側を向く面)に接触している。
【0050】
下板部56は、上側梁型連結部材42の下面を構成する板状の部分であり、縦板部52の下縁に繋がっている。下板部56は、縦板部52の下縁に沿って可動防護柵2の幅方向に延びている。当該下板部56は、縦板部52に対して垂直で前記上板部54と平行に配置されている。当該下板部56の第1道路側の端部は、上側の第1ガードレール10の外側突出部10d、具体的にはその外側突出部10dの下側山部10bの背面(第2道路側を向く面)に接触している。また、この下板部56の第2道路側の端部は、上側の第2ガードレール12の外側突出部12d、具体的にはその外側突出部12dの下側山部12bの背面(第1道路側を向く面)に接触している。
【0051】
また、上側梁型連結部材42は、前記上板部54に設けられた2つの挿入孔61及び前記下板部56に設けられた2つの挿入孔62を有する(図6及び図9参照)。上板部54の2つの挿入孔61は、当該上板部54の第1道路側の端部近傍と第2道路側の端部近傍とにそれぞれ設けられ、下板部56の2つの挿入孔62は、当該下板部56の第1道路側の端部近傍と第2道路側の端部近傍とにそれぞれ設けられている。これらの挿入孔61,62は、それぞれ、上下方向に延び且つ上下両向きに開放されている。これらの挿入孔61,62は、接続具50の後述の第1挿入部64又は第2挿入部66の挿通を許容する貫通孔となっている。上板部54の第1道路側の端部近傍に設けられた挿入孔61と下板部56の第1道路側の端部近傍に設けられた挿入孔62は上下方向から見て互いに重なるように配置され、上板部54の第2道路側の端部近傍に設けられた挿入孔61と下板部56の第2道路側の端部近傍に設けられた挿入孔62は上下方向から見て互いに重なるように配置されている。また、各挿入孔61,62は、可動防護柵2の長手方向に延びる長孔である。
【0052】
第1固定部58は、上側の第1ガードレール10の外側突出部10dに固定される部分である。第1固定部58は、縦板部52の第1道路側の端縁に繋がる板状の小片からなり、上板部54と下板部56との間に配置されている。第1固定部58は、縦板部52、上板部54及び下板部56に対して垂直に配置され、外側突出部10dの谷部10cの背面に接触した状態でその谷部10cにボルトとナットで締結されている。
【0053】
第2固定部60は、上側の第2ガードレール12の外側突出部12dに固定される部分である。第2固定部60は、第1固定部58と同様の板状の小片からなる。この第2固定部60は、縦板部52の第2道路側の端縁に繋がっており、上板部54と下板部56との間に配置されている。第2固定部60は、縦板部52、上板部54及び下板部56に対して垂直に配置され、外側突出部12dの谷部12cの背面に接触した状態でその谷部12cにボルトとナットで締結されている。
【0054】
前記2つの下側梁型連結部材44は、それぞれ、互いに隣り合う可動防護柵2の端部に設けられている。この下側梁型連結部材44は、それが設けられた可動防護柵2の端部において、下側の第1ガードレール10の外側突出部10dと下側の第2ガードレール12の外側突出部12dとを可動防護柵2の幅方向に連結するようにそれらのガードレール10,12の外側突出部10d,12dにそれぞれ固定されるものである。この下側梁型連結部材44は、前記上側梁型連結部材42と同様に構成されている。
【0055】
この下側梁型連結部材44は、前記上側梁型連結部42の上板部54に設けられた2つの挿入孔61と同様に当該下側梁型連結部材44の上板部の第1道路側の端部近傍と第2道路側の端部近傍とにそれぞれ設けられた2つの挿入孔61と、前記上側梁型連結部42の下板部56に設けられた2つの挿入孔62と同様に当該下側梁型連結部材44の下板部の第1道路側の端部近傍と第2道路側の端部近傍とにそれぞれ設けられた2つの挿入孔62とを有する。当該下側梁型連結部材44の上板部の第1道路側の端部近傍に設けられた挿入孔61と当該下側梁型連結部材44の下板部の第1道路側の端部近傍に設けられた挿入孔62は、上下方向から見て、上側梁型連結部材42の上板部54の第1道路側の端部近傍に設けられた挿入孔61及び上側梁型連結部材42の下板部56の第1道路側の端部近傍に設けられた挿入孔62と重なるように配置されている。また、当該下側梁型連結部材44の上板部の第2道路側の端部近傍に設けられた挿入孔61と当該下側梁型連結部材44の下板部の第2道路側の端部近傍に設けられた挿入孔62は、上下方向から見て、上側梁型連結部材42の上板部54の第2道路側の端部近傍に設けられた挿入孔61及び上側梁型連結部材42の下板部56の第2道路側の端部近傍に設けられた挿入孔62と重なるように配置されている。
【0056】
前記8つの上側ガードレール側部材46のうちの4つの上側ガードレール側部材46は、互いに隣り合う可動防護柵2のうちの一方の可動防護柵2の端部に設けられ、残り4つの上側ガードレール側部材46は、他方の可動防護柵2の端部に設けられている。前記一方の可動防護柵2の端部に設けられた4つの上側ガードレール側部材46は、それぞれ、当該一方の可動防護柵2の端部に設けられた上側梁型連結部材42の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の上方と、当該一方の可動防護柵2の端部に設けられた下側梁型連結部材44の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の上方とに配置され、近接する第1ガードレール10の外側突出部10d又は第2ガードレール12の外側突出部12dに固定されている。また、前記他方の可動防護柵2の端部に設けられた4つの上側ガードレール側部材46は、それぞれ、当該他方の可動防護柵2の端部に設けられた上側梁型連結部材42の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の上方と、当該他方の可動防護柵2の端部に設けられた下側梁型連結部材44の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の上方とに配置され、近接する第1ガードレール10の外側突出部10d又は第2ガードレール12の外側突出部12dに固定されている。
【0057】
具体的に、上側梁型連結部材42の第1道路側の端部の上方に配置された上側ガードレール側部材46は、上側の第1ガードレール10の外側突出部10dの上側山部10aに固定されている。また、上側梁型連結部材42の第2道路側の端部の上方に配置された上側ガードレール側部材46は、上側の第2ガードレール12の外側突出部12dの上側山部12aに固定されている。また、下側梁型連結部材44の第1道路側の端部の上方に配置された上側ガードレール側部材46は、下側の第1ガードレール10の外側突出部10dの上側山部10aに固定されている。また、下側梁型連結部材44の第2道路側の端部の上方に配置された上側ガードレール側部材46は、下側の第2ガードレール12の外側突出部12dの上側山部12aに固定されている。
【0058】
各上側ガードレール側部材46は、板材を曲げ加工することによって形成された部材であり、取付部46aとそれに繋がる延出部46bとを一体的に有する。取付部46aは、前記上側山部10a又は12aに固定される部分であり、その上側山部10a又は12aの背面に概ね沿うように曲折した形状を有する。この取付部46aは、上側山部10a又は12aの上端部近傍にボルトとナットで締結される。延出部46bは、平板状をなし、取付部46aが前記上側山部10a又は12aに締結された状態で上側梁型連結部材42の上板部54又は下側梁型連結部材44の上板部に沿って取付部46aの下端から可動防護柵2の幅方向内側へ延びる。各上側ガードレール側部材46は、その延出部46bに設けられた挿入孔46cを有する。この挿入孔46cは、上下方向に延び且つ上下両向きに開放されている。この挿入孔46cは、接続具50の第1挿入部64又は第2挿入部66の挿通を許容する貫通孔となっている。第1ガードレール10の外側突出部10dに固定された上側ガードレール側部材46の挿入孔46cは、上下方向から見て、上側梁型連結部材42の第1道路側の挿入孔61,62及び下側梁型連結部材44の第1道路側の挿入孔61,62と重なるように配置されている。また、この挿入孔46cは、可動防護柵2の長手方向に延びる長孔である。
【0059】
前記8つの下側ガードレール側部材48は、上側梁型連結部材42又は下側梁型連結部材44を挟んで前記8つの上側ガードレール側部材46の対応するものの下方にそれぞれ位置している。具体的に、前記8つの下側ガードレール側部材48のうちの4つの下側ガードレール側部材48は、互いに隣り合う可動防護柵2のうちの一方の可動防護柵2の端部に設けられ、残り4つの下側ガードレール側部材48は、他方の可動防護柵2の端部に設けられている。前記一方の可動防護柵2の端部に設けられた4つの下側ガードレール側部材48は、それぞれ、当該一方の可動防護柵2の端部に設けられた上側梁型連結部材42の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の下方と、当該一方の可動防護柵2の端部に設けられた下側梁型連結部材44の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の下方とに配置され、近接する第1ガードレール10の外側突出部10d又は第2ガードレール12の外側突出部12dに固定されている。また、前記他方の可動防護柵2の端部に設けられた4つの下側ガードレール側部材48は、それぞれ、当該他方の可動防護柵2の端部に設けられた上側梁型連結部材42の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の下方と、当該他方の可動防護柵2の端部に設けられた下側梁型連結部材44の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の下方とに配置され、近接する第1ガードレール10の外側突出部10d又は第2ガードレール12の外側突出部12dに固定されている。
【0060】
より具体的に、上側梁型連結部材42の第1道路側の端部の下方に配置された下側ガードレール側部材48は、上側の第1ガードレール10の外側突出部10dの下側山部10bに固定されている。また、上側梁型連結部材42の第2道路側の端部の下方に配置された下側ガードレール側部材48は、上側の第2ガードレール12の外側突出部12dの下側山部12bに固定されている。また、下側梁型連結部材44の第1の端部の下方に配置された下側ガードレール側部材48は、下側の第1ガードレール10の外側突出部10dの下側山部10bに固定されている。また、下側梁型連結部材44の第2道路側の端部の下方に配置された下側ガードレール側部材48は、下側の第2ガードレール12の外側突出部12dの下側山部12bに固定されている。
【0061】
各下側ガードレール側部材48は、前記上側ガードレール側部材46と同様に構成され、前記上側ガードレール側部材46の取付部46a及び延出部46bと同様の取付部48a及び延出部48bを有する。各下側ガードレール側部材48は、前記上側ガードレール側部材46と上下対称となる姿勢で配置され、前記上側山部10a又は12aに対する前記上側ガードレール側部材46の取付部46aの取付形態と同様の形態で当該下側ガードレール側部材48の取付部48aが前記下側山部10b又は12bに取り付けられている。また、各下側ガードレール側部材48は、前記上側ガードレール側部材46の延出部46bに設けられた挿入孔46cと同様に延出部48bに設けられた挿入孔48cを有する。この挿入孔48cは、可動防護柵2の長手方向に延びる長孔である。
【0062】
前記2つの接続具50は、互いに隣り合う可動防護柵2のうちの一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定されているガードレール側部材40(上側梁型連結部材42、下側梁型連結部材44、上側ガードレール側部材46及び下側ガードレール側部材48)と、他方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定されているガードレール側部材40(上側梁型連結部材42、下側梁型連結部材44、上側ガードレール側部材46及び下側ガードレール側部材48)とを相互に接続するためのものである。この2つの接続具50のうちの一方の接続具50は、可動防護柵2の幅方向において第1ガードレール10の外側突出部10dの内側でその外側突出部10dに近接した位置に配置され、他方の接続具50は、可動防護柵2の幅方向において第2ガードレール12の外側突出部12dの内側でその外側突出部12dに近接した位置に配置されている。
【0063】
各接続具50は、図8に示すように、第1挿入部64と、第2挿入部66と、相互連結部68と、離反阻止部69と、一対の把手70と、を有する。
【0064】
第1挿入部64は、直線的に延びる棒状のピンであり、前記一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定された上側梁型連結部材42の挿入孔61,62、下側梁型連結部材44の挿入孔61,62、上側ガードレール側部材46の挿入孔46c及び下側ガードレール側部材48の挿入孔48cに上方から挿入されることが可能に構成されている。
【0065】
具体的には、この第1挿入部64は、各挿入孔61,62,46c,48cに挿入可能な外径を有し、上側梁型連結部材42の上方に位置する上側ガードレール側部材46の延出部46bから下側梁型連結部材44の下方に位置する下側ガードレール側部材48の延出部48bまでの上下方向の距離よりも大きい長さを有する。第1挿入部64は、接続具50が前記一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定されたガードレール側部材40と他方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定されたガードレール側部材40とを相互に接続するときに、前記一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定されたガードレール側部材40の挿入孔61,62,46c,48cに挿入されてそのガードレール側部材40を上下方向に貫通して延びる。
【0066】
第2挿入部66は、直線的に延びる棒状のピンであり、前記他方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定された上側梁型連結部材42の挿入孔61,62、上側梁型連結部材42の上方に位置する上側ガードレール側部材46の挿入孔46c、上側梁型連結部材42の下方に位置する下側ガードレール側部材48の挿入孔48c、下側梁型連結部材44の上板部に設けられた挿入孔61,62及び下側梁型連結部材44の上方に位置する上側ガードレール側部材46の挿入孔46cに上方から挿入されることが可能に構成されている。
【0067】
具体的には、この第2挿入部66は、各挿入孔61,62,46c,48cに挿入可能な外径を有し、上側梁型連結部材42の上方に位置する上側ガードレール側部材46の延出部46aから下側梁型連結部材44の上板部までの上下方向の距離よりも大きい長さを有する。第2挿入部66は、前記第1挿入部64との間に間隔をあけて前記第1挿入部64と平行に配置されている。第2挿入部66は、挿入孔61,62,46c,48cへの挿入方向について第1挿入部64よりも短い。このため、当該第2挿入部66の下端は、第1挿入部64の下端よりも上側に位置する。
【0068】
第2挿入部66は、接続具50が前記一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定されたガードレール側部材40と他方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定されたガードレール側部材40とを相互に接続するときに、前記他方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定されたガードレール側部材40の挿入孔61,62,46c,48cに挿入されて上下方向に延びる。
【0069】
また、前記のように挿入孔61,62,46c,48cがそれぞれ可動防護柵2の長手方向に延びる長孔であることにより、可動防護柵2の長手方向に沿う方向について当該可動防護柵2の設置位置が多少ずれたり、地面Gの傾斜により可動防護柵2の長手方向における一方側が他方側よりも高くなるように可動防護柵2が傾いて設置されてそれらの挿入孔61,62,46c,48cの位置が完全には揃わなかったりした場合であっても、その長孔が延びる範囲内で第1挿入部64又は第2挿入部66がそれらの挿入孔61,62,46c,48cに挿入されることが許容される。
【0070】
接続具50は、第1道路と第2道路のうち当該接続具50から近い方の道路上を走行する車両の進行方向に対して後側に第1挿入部64が位置するとともに前側に第2挿入部66が位置する姿勢でガードレール側部材40に装着される。従って、第1ガードレール10に近接した位置に配置される一方の接続具50と第2ガードレール12に近接した位置に配置される他方の接続具50とは、第1挿入部64と第2挿入部66の位置が互いに逆となる姿勢で配置される。
【0071】
相互連結部68は、第1挿入部64と第2挿入部66を相互に連結するものである。この相互連結部68は、細長い板材からなり、第1及び第2挿入部64,66に対して垂直に配置されてそれらの第1及び第2挿入部64,66が並ぶ方向に延びている。当該相互連結部68に第1及び第2挿入部64,66の各々の一端部(上端部)が固定され、それによって、第1挿入部64と第2挿入部66が当該相互連結部68を介して連結されている。
【0072】
離反阻止部69は、防護柵システム1の長手方向について前記一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dと前記他方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dとが互いに離反するのを阻止するように前記一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定された上側梁型連結部材42と前記他方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定された上側梁型連結部材42とを互いに拘束するものである。具体的には、この離反阻止部69は、相互連結部68と一体的に設けられ、相互連結部68の長手方向の両端部からそれぞれその相互連結部68に対して垂直に曲げ起こされた一対の板状の部分である。この離反阻止部69の一対の板状の部分がそれぞれ前記一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定された上側梁型連結部材42の上板部54と前記他方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定された上側梁型連結部材42の上板部54の互いに反対側を向く縁部に当接することにより、それらの上側梁型連結部材42が互いに拘束される。
【0073】
一対の把手70は、作業者が第1及び第2挿入部64,66を対応する挿入孔61,62,46c,48cに挿脱する作業を行うときに把持する部分である。この一対の把手70は、それぞれ、相互連結部68の上面のうち第1挿入部64上の位置と第2挿入部66上の位置とに設けられている。
【0074】
本実施形態による防護柵システム1では、それぞれの可動防護柵2について、所定の設置場所まで当該可動防護柵2を移動させ、その設置場所で当該可動防護柵2に対応する固定装置3を固定状態に切り換えることにより、当該可動防護柵2を当該設置場所に固定することができる。具体的には、可動防護柵2を設置場所まで移動させた後、その可動防護柵2に対応する固定装置3の挿入管32を支柱8の上方からその支柱8内の空間に挿入するとともに地面Gに埋設された固定管30内の空間に挿入して当該挿入管32を支柱8内の空間と固定管30内の空間に跨るように配置することにより、可動防護柵2を当該設置場所に固定することができる。
【0075】
さらに、本実施形態による防護柵システム1では、互いに隣り合う可動防護柵2のそれぞれの外側突出部10d,12dに固定されているガードレール側部材40の挿入孔61,62,46c,48cに共通の接続具50の第1及び第2挿入部64,66をそれぞれ上から挿入するだけの簡単な操作で、当該接続具50を介して当該ガードレール側部材40同士を接続することができ、これにより、互いに隣接する可動防護柵2同士を容易に接続することができる。また、このような上下方向に沿った挿入孔61,62,46c,48cへの第1及び第2挿入部64,66の挿入による接続は、当該上下方向に直交する方向すなわち水平方向への互いに隣接する可動防護柵2同士の相対変位を高い強度で規制することが可能である。
【0076】
一方、可動防護柵2同士の接続の解除は、ガードレール側部材40の挿入孔61,62,46c,48cから接続具50の第1及び第2挿入部64,66を上方に抜き取ることにより容易に行うことが可能である。そして、接続が解除された可動防護柵2に対応する固定装置3を固定解除状態に切り換えることにより、具体的には対応する固定装置3の挿入管32を固定管30内の空間及び支柱8内の空間から上方へ引き抜くことにより、前記接続が解除された可動防護柵2をその設置場所から移動させることができる。また、前記挿入孔61,62,46c,48cから上方への接続具50の第1及び第2挿入部64,66の抜き取りは、即座に行うことが可能であり、例えば互いに隣り合う可動防護柵同士がボルト等で締結されることによって接続されている場合にその締結を解除する作業に比べて遥かに短時間で行うことができる。このため、緊急時に任意の可動防護柵2をその前後に隣り合う可動防護柵2から迅速に離脱させることができ、車両が第1及び第2道路のうちの一方の道路から反対車線の他方の道路へUターンもしくは進入するためのスペースを迅速に確保することができる。
【0077】
また、本実施形態による防護柵システム1では、複数の接続装置4のそれぞれは、ガードレール側部材40として、第1及び第2ガードレール10,12の外側突出部10d,12d同士を可動防護柵2の幅方向に連結するようにそれらの外側突出部10d,12dにそれぞれ固定される上側及び下側梁型連結部材42,44を含む。この上側及び下側梁型連結部材42,44は、第1及び第2ガードレール10,12の外側突出部10d,12d同士を相互連結することにより当該外側突出部10d,12dの剛性を飛躍的に高めた状態で、互いに隣接する可動防護柵2のうちの一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dと他方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dとが相互に接続されることを可能にする。
【0078】
また、本実施形態による防護柵システム1では、接続具50の第1挿入部64が上側ガードレール側部材46、上側梁型連結部材42及び下側梁型連結部材44を貫通した状態で下側ガードレール側部材48の挿入孔48cに挿入される。このことは、接続具50がより高い強度で隣り合う可動防護柵2同士を接続することを可能にする。
【0079】
また、本実施形態による防護柵システム1では、任意の防護柵2の第1ガードレール10は、第1道路上を走行する車両の進行方向の前側を向く外側突出部10dを有し、この任意の防護柵2に対して前記車両の進行方向の前側に隣接する可動防護柵2の第1ガードレール10は前記車両の進行方向の後側を向く外側突出部10dを有する。そして、前記任意の可動防護柵2の前側を向く外側突出部10dは、その任意の防護柵2に対して前記進行方向の前側に隣接する可動防護柵2の後側を向く外側突出部10dと可動防護柵2の長手方向にオーバーラップし且つ前記後側を向く外側突出部10dに対して可動防護柵2の幅方向外側に位置する。このため、隣接する可動防護柵2の第1ガードレール10を隙間なく連続させることが可能である。しかも、前記後側を向く外側突出部10dは第1道路上の車両の走行方向と逆向きに突出するものであるが、この外側突出部10dが第1道路上の車両の走行方向の前側を向く外側突出部10dによって覆われるから、第1道路上を走行する車両がその走行方向と逆向きに突出する外側突出部10dに突き当たるのを防ぐことができる。
【0080】
また、第2ガードレール12の外側突出部12dも第1ガードレール10の外側突出部10dと同様に構成されており、そのため、隣接する可動防護柵2の第2ガードレール12を隙間なく連続させることができるとともに、第2道路上を走行する車両がその走行方向と逆向きに突出する外側突出部12dに突き当たるのを防ぐことができる。
【0081】
また、本実施形態による防護柵システム1では、接続具50の第2挿入部66は、その挿入方向について第1挿入部64よりも短い。このことは、第1挿入部64がガードレール側部材40の挿入孔61,62,46c,48cの全てから抜けていなくても第2挿入部66がガードレール側部材40の挿入孔61,62,46c,48cから抜けた時点で可動防護柵2同士の接続を解除することを可能にし、接続解除作業の効率を高めることを可能にする。
【0082】
また、前記のように接続を解除した後、接続具50は、図10に示すように、隣り合う可動防護柵2のいずれか一方に装着しておくことが、当該接続具50の紛失を防ぐ観点から好ましい。この際、第1挿入部64と第2挿入部66のうちの一方を一方の可動防護柵2の外側突出部10d,12dに固定されたガードレール側部材40の挿入孔61,62,46c,48cに挿入しておき、他方をその一方の可動防護柵2において隣接する一対のガードレール連結部材13同士の間に挿し込むことによって当該接続具50を当該一方の可動防護柵2に装着しておくことが可能である。
【0083】
本発明による防護柵システムは、前記のような構成のものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による防護柵システムに以下のような構成を採用可能である。
【0084】
前記実施形態では、可動防護柵が上下に並んだ2つの第1ガードレール及び上下に並んだ2つの第2ガードレールを有しているが、可動防護柵は単一の第1ガードレール及び単一の第2ガードレールのみを有するものでもよい。
【0085】
また、隣り合う可動防護柵同士を接続する接続装置は、ガードレール側部材として梁型連結部材のみを有していてもよい。すなわち、上側ガードレール側部材及び下側ガードレール側部材を省略してもよい。また、逆に、接続装置は、ガードレール側部材として上側ガードレール側部材及び下側ガードレール側部材のみを有していてもよい。すなわち、梁型連結部材を省略してもよい。
【0086】
また、接続装置の防護柵側部材は、ガードレールの外側突出部に固定されたガードレール側部材に必ずしも限定されず、隣り合う可動防護柵にそれぞれ固定されるものであればその可動防護柵のどのような部位に固定されたものであってもよい。例えば、防護柵側部材は、可動防護柵の基部や支柱に直接固定されたものであってもよい。あるいは、防護柵側部材として、支柱と第1ガードレールと第2ガードレールとを連結しているガードレール連結部材を利用することも可能である。
【0087】
また、本発明における可動防護柵の「可動」とは、その移動形態や移動手段については問わず、何らかの方法で移動可能であればよいことを意味する。従って、可動防護柵は、前記実施形態で示した転動体により地面上を移動可能な防護柵に必ずしも限定されない。例えば、本発明における可動防護柵は、転動体を備えておらず、設置場所の地面上に載置されることによって設置されるようなものであってもよく、また、地面に沿って引きずったり押したり、また、地面から持ち上げたりすることによって当該地面上を移動可能な防護柵であってもよい。
【0088】
また、各可動防護柵をその設置位置で固定するための固定装置は、前記実施形態で示した構成のものに必ずしも限定されない。例えば、固定装置は、その挿入管が固定管内の空間及び支柱内の空間から上方へ抜脱されることによって固定解除状態となるようなものに限らず、挿入管が固定管内に落とし込まれて支柱内の空間から下方に離脱することによって固定解除状態になるものであってもよい。あるいは、固定装置は、挿入管及び固定管からなるものでなくてもよく、可動防護柵をその設置位置で地面に固定する固定状態とその固定を解除して可動防護柵の地面上での移動を許容する固定解除状態とに切り換えられることが可能なものであればどのようなものでも採用可能である。
【0089】
例えば、可動防護柵が持ち上げられて設置位置の地面上に載置されることによって設置され、また、その設置位置から持ち上げられて移動されるものである場合に、固定装置は、設置位置の地面から上方へ突出するように設置された突出部材と、可動防護柵に設けられて前記突出部材に上方から外嵌可能な嵌合部材とを有するものであってもよい。このような固定装置は、前記嵌合部材が前記突出部材に外嵌することによって可動防護柵を固定する固定状態となる一方、前記嵌合部材が前記突出部材から上方へ離脱することによって固定解除状態となる。すなわち、可動防護柵を設置位置の地面上に設置するときには、持ち上げた可動防護柵を前記嵌合部材が前記突出部材に上方から外嵌するように降ろすことにより固定装置を固定状態にして当該可動防護柵をその設置位置で固定する。一方、前記嵌合部材が前記突出部材から上方へ離脱するように可動防護柵を設置位置の地面上から持ち上げることにより固定装置を固定解除状態にして当該可動防護柵をその設置位置から移動可能とする。
【符号の説明】
【0090】
1 防護柵システム
2 可動防護柵
3 固定装置
4 接続装置
6 基部
8 支柱
10 第1ガードレール(ガードレール)
12 第2ガードレール(ガードレール)
10d、12d 外側突出部
40 ガードレール側部材(防護柵側部材)
42 上側梁型連結部材
44 下側梁型連結部材
46 上側ガードレール側部材
48 下側ガードレール側部材
50 接続具
61、62、46c、48c 挿入孔
64 第1挿入部
66 第2挿入部
68 相互連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10