(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】箱形カットアウトの中間碍子及び箱形カットアウト
(51)【国際特許分類】
H01H 85/20 20060101AFI20220105BHJP
H01H 85/22 20060101ALI20220105BHJP
H01H 85/58 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H01H85/20 C
H01H85/22
H01H85/58
(21)【出願番号】P 2018067994
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小寺 克昌
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】山森 教平
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-069839(JP,U)
【文献】特開平05-101767(JP,A)
【文献】実開昭54-079941(JP,U)
【文献】特開平01-267003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形カットアウトの上面に設けられる取付ボルトに取り付けられるとともに、取付金具に取り付けられる中間碍子であって、
絶縁部材と、
前記絶縁部材を貫通する棒状の取付部材と、を備え、
前記取付部材の一端に前記取付ボルトが取り付けられ、前記取付部材の他端に前記取付金具が取り付けられ、
前記絶縁部材の下端面は、前記箱形カットアウトの上面と接触する
箱形カットアウトの中間碍子。
【請求項2】
前記取付部材の軸方向と直交する方向に延出し、前記絶縁部材の外面に設置される平板を備える
請求項1に記載の箱形カットアウトの中間碍子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の箱形カットアウトの中間碍子を備え、
前記中間碍子の前記取付部材は、前記取付ボルトに螺着されている
箱形カットアウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱形カットアウトの中間碍子及び箱形カットアウトに関する。
【背景技術】
【0002】
過負荷電流や短絡電流、雷サージに対して変圧器を保護する箱形カットアウトが変圧器の一次側に設置されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の箱形カットアウトは、中間碍子を介して支持されることにより絶縁距離を長くして絶縁性能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、
図4に示すように、箱形カットアウト10の中間碍子120は、上端が腕金取付金具1に取り付けられ、下端が取付金具2に取り付けられている。中間碍子120の上端部及び下端部に取付ボルト121が固定されている。箱形カットアウト10は、取付ボルト17を取付金具2に嵌挿し、取付ボルト17をナット18で固定することで取付金具2に取り付けられている。中間碍子120は、箱形カットアウト10を支持するだけの強度を満たす質量となっている。このため、箱形カットアウトの中間碍子の質量の低減が求められている。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中間碍子の質量を低減することのできる箱形カットアウトの中間碍子及び箱形カットアウトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する箱形カットアウトの中間碍子は、箱形カットアウトの上面に設けられる取付ボルトに取り付けられるとともに、取付金具に取り付けられる中間碍子であって、絶縁部材と、前記絶縁部材を貫通する棒状の取付部材と、を備え、前記取付部材の一端に前記取付ボルトが取り付けられ、前記取付部材の他端に前記取付金具が取り付けられ、前記絶縁部材の下端面は、前記箱形カットアウトの上面と接触する。
【0007】
上記構成によれば、取付部材により箱形カットアウトの取付ボルトに取り付けることができるため、絶縁部材に箱形カットアウトを保持する強度を持たせなくてもよい。よって、中間碍子の質量を低減することができる。また、絶縁部材の下端面と箱形カットアウトの上面とが接触することで、箱形カットアウトの取付ボルトが取付部材と絶縁部材とに覆われるため、箱形カットアウトの取付ボルトを絶縁することができる。
【0008】
上記箱形カットアウトの中間碍子について、前記取付部材の軸方向と直交する方向に延出し、前記絶縁部材の外面に設置される平板を備えることが好ましい。
上記構成によれば、取付部材の軸方向と直交する方向における絶縁部材の外面の沿面距離を長くすることができ、中間碍子の絶縁性能を高めることができる。
【0009】
上記課題を解決する箱形カットアウトは、上記の中間碍子を備え、前記中間碍子の前記取付部材は、前記取付ボルトに螺着されている。
上記構成によれば、取付部材により箱形カットアウトの取付ボルトに取り付けることができるため、絶縁部材に箱形カットアウトを保持する強度を持たせなくてもよい。よって、中間碍子の質量を低減することができる。また、中間碍子が箱形カットアウトの取付ボルトに予め取り付けられているので、中間碍子の取付部材を取付金具に取り付けるだけで、中間碍子と箱形カットアウトとを設置することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中間碍子の質量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】箱形カットアウト及び中間碍子の一実施形態の概略構成を示す図。
【
図2】同実施形態の箱形カットアウト及び中間碍子の概略構成を示す部分断面図。
【
図3】同実施形態の中間碍子の概略構成を示す断面図。
【
図4】従来の箱形カットアウト及び中間碍子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1~
図3を参照して、箱形カットアウトの中間碍子及び箱形カットアウトの一実施形態について説明する。
図1に示すように、電柱等に固定される腕金取付金具1には、螺子31とナット32とによって取付金具2が固定されている。取付金具2は、V字状の金属板である。取付金具2の一端部には腕金取付金具1が固定され、取付金具2の他端部には中間碍子20を介して箱形カットアウト10が固定されている。
【0013】
箱形カットアウト10は、磁器製であって、箱状の本体11と、本体11の開口部を閉じる蓋12とを備えている。蓋12は、ピン13によって本体11に対して回動可能に連結されている。本体11の側面には、上部電線挿入孔14と下部電線挿入孔15とが設けられている。箱形カットアウト10の内部には、図示しない内部電極が2個設けられている。上部電線挿入孔14と下部電線挿入孔15とから挿入された電線がそれぞれの内部電極に接続される。これら内部電極は、蓋12に装着された図示しないヒューズ筒によって接続されている。このため、箱形カットアウト10は、蓋12の開閉により負荷開閉が行われる。
【0014】
図2に示すように、箱形カットアウト10の上面16には、取付ボルト17が設けられている。箱形カットアウト10の上面16の略中央には、取付ボルト17を固定する挿入孔16Aが設けられている。取付ボルト17は、挿入孔16Aに挿入され、固着用合金を流し込むことで挿入孔16Aに固定されている。中間碍子20は、箱形カットアウト10の上面16に設けられる取付ボルト17に取り付けられるとともに、取付金具2に取り付けられている。
【0015】
中間碍子20は、外形が円筒状の絶縁部材21を備えている。絶縁部材21は、取付金具2と箱形カットアウト10との沿面距離を確保する部材である。絶縁部材21は、樹脂製であるため、磁器製と比較して軽量である。また、絶縁部材21が樹脂製であるため、磁器製の箱形カットアウト10との密着特性が磁器製と比較して高くなる。
【0016】
図3に示すように、絶縁部材21の中央には、有底円筒状の凹部21Aが設けられている。凹部21Aの底部には、貫通孔21Bが設けられている。絶縁部材21は、凹部21Aの開口部から径方向に延出している。凹部21Aの周囲には、凹部21Aよりも径が大きく、且つ径の異なる円筒状の襞21Cが3個設けられている。なお、襞21Cの数は、3個に限らず、2個や4個以上であってもよい。襞21Cは、箱形カットアウト10側へ延出している。
【0017】
中間碍子20は、取付ボルト17と取付金具2とに取り付けられる棒状の取付部材22を備えている。取付部材22は、金属製である。取付部材22は、絶縁部材21を貫通する。取付部材22の一端である下端には、雌螺子22Aが形成されている。取付ボルト17は、取付部材22の下端の雌螺子22Aに螺着される。取付部材22の他端である上端には、雌螺子22Bが形成されている。ボルト26が取付金具2に挿通されて、取付部材22の上端の雌螺子22Bに取り付けられる。なお、取付部材22は、金属製に限らず、繊維強化プラスチック(FRP)等の樹脂であってもよい。
【0018】
取付部材22の下端には、縮径した縮径部22Cが設けられている。この縮径部22Cが絶縁部材21の貫通孔21Bに嵌合している。絶縁部材21の下端面21Dと取付部材22の下端面とは同一面となっている。
【0019】
絶縁部材21の下端面21Dは、箱形カットアウト10の上面16と接触する。中間碍子20は、絶縁部材21と箱形カットアウト10との間に設置されるシール部材23を備えている。シール部材23は、樹脂製の断面方形のパッキンである。シール部材23は、箱形カットアウト10の上面16と絶縁部材21の下端面21Dとの間に設けられている(
図2参照)。また、シール部材23は、箱形カットアウト10の上面16と取付部材22の下端面との間に設けられている(
図2参照)。このため、箱形カットアウト10の取付ボルト17の周囲を密封して絶縁している。なお、シール部材23の断面は、円形であってもよい。
【0020】
中間碍子20は、取付部材22の軸方向と直交する方向に延出する平板24を備えている。平板24は、絶縁部材21の凹部21Aの外面21Eに設置される。絶縁部材21の凹部21Aの下端部には、縮径部21Fが設けられている。平板24は、絶縁部材21の縮径部21Fに係合し、凹部21Aの外面21Eに接触している。平板24は、絶縁部材21の下端部とシール部材23とを覆っている。
【0021】
次に、
図2を参照して、箱形カットアウト10の中間碍子20の取り付けについて説明する。
まず、中間碍子20は、箱形カットアウト10の取付ボルト17に取り付けられる。すなわち、箱形カットアウト10の取付ボルト17に中間碍子20の取付部材22の下端部の雌螺子22Aを螺着することで、中間碍子20が箱形カットアウト10に固定される。このとき、中間碍子20の絶縁部材21と箱形カットアウト10の上面との間は、シール部材23によって密着される。なお、箱形カットアウト10には、中間碍子20を予め取り付けられていても、腕金取付金具1に取り付ける際に中間碍子20を取り付けてもよい。なお、箱形カットアウト10の取付ボルト17は、従来ではナット18によって取付金具2を固定した部材である(
図4参照)。
【0022】
次に、取付金具2を螺子31とナット32とによって腕金取付金具1に固定する。
次に、取付金具2にボルト26を貫通し、中間碍子20の取付部材22の上端部の雌螺子22Bに螺着することで、取付金具2に中間碍子20を固定する。
【0023】
次に、
図1~
図3を参照して、上記のように構成された箱形カットアウト10の中間碍子20の作用について説明する。
箱形カットアウト10の内部電極に電圧が発生したときには、箱形カットアウト10の表面を漏洩電流が流れる。そして、箱形カットアウト10の表面から平板24の表面に流れ、平板24から絶縁部材21の表面及び襞21Cに流れ、絶縁部材21の表面から取付部材22に流れ、取付部材22から取付金具2に流れて腕金取付金具1に至る。このように箱形カットアウト10から腕金取付金具1までの沿面距離が確保されているため、箱形カットアウト10の内部電極に流れる漏洩電流が腕金取付金具1に到達する電流を抑制することができる。
【0024】
中間碍子20の取付部材22が取付金具2と箱形カットアウト10とに取り付けられて、中間碍子20が箱形カットアウト10を支持している。このため、絶縁部材21に箱形カットアウト10を支持するための強度が不要となり、絶縁部材21を樹脂製とすることが可能となった。よって、絶縁部材21を軽量化することが可能となり、ひいては中間碍子20の質量を低減することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)取付部材22により箱形カットアウト10の取付ボルト17に取り付けることができるため、絶縁部材21に箱形カットアウト10を保持する強度を持たせなくてもよい。よって、中間碍子20の質量を低減することができる。
【0026】
(2)絶縁部材21の下端面と箱形カットアウト10の上面とが接触することで、箱形カットアウト10の取付ボルト17が取付部材22と絶縁部材21とに覆われるため、箱形カットアウト10の取付ボルト17を絶縁することができる。
【0027】
(3)絶縁部材21に襞21Cを設けたため、絶縁部材21の沿面距離を長くすることができ、中間碍子20の絶縁性能を高めることができる。
(4)中間碍子20に平板24を設けたため、取付部材22の軸方向と直交する方向における絶縁部材21の外面の沿面距離を長くすることができ、中間碍子20の絶縁性能を高めることができる。
【0028】
(5)シール部材23によって絶縁部材21と箱形カットアウト10との間を密閉することで絶縁部材21と箱形カットアウト10との間を絶縁することができる。ひいては、絶縁部材21を貫通する取付部材22と箱形カットアウト10との間を絶縁することができる。また、絶縁部材21が弾性体でないときに、絶縁部材21と箱形カットアウト10との接触面との間にシール部材23を設置して、絶縁部材21と箱形カットアウト10とで圧縮することで密閉して絶縁することができる。
【0029】
(6)中間碍子20が箱形カットアウト10の取付ボルト17に予め取り付けられていれば、中間碍子20の取付部材22を取付金具に取り付けるだけで、中間碍子20と箱形カットアウト10とを設置することができる。
【0030】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記構成において、シール部材23を省略した構成を採用してもよい。
・上記構成において、平板24を省略した構成を採用してもよい。
【0031】
・上記実施形態では、絶縁部材21に箱形カットアウト10側へ延出する襞21Cを設けたが、絶縁部材21に軸方向と直交する方向へ延出する襞を設けてもよい。すなわち、絶縁部材21の沿面距離を長くすることができる襞を絶縁部材21に設ければよい。
【0032】
・上記実施形態では、樹脂製の絶縁部材21としたが、磁器製の絶縁部材21としてもよい。このような場合であっても、取付部材22が取付金具2と取付ボルト17とに取り付けられるため、絶縁部材21の強度を低減することができ、これに伴い絶縁部材21の質量を低減することができる。
【0033】
・上記実施形態では、絶縁部材21をシール部材23を介して箱形カットアウト10の上面16と接触させたが、取付ボルト17を絶縁することができれば、絶縁部材21が箱形カットアウト10の上面16と接触していなくてもよい。
【0034】
・上記実施形態では、取付金具2をV字状としたが、取付金具2をL字としてもよいし、取付金具2を90度よりも大きい角度で折り曲げられた形状としてもよい。
・上記実施形態では、中間碍子20を取付金具2を介して腕金取付金具1に取り付けたが、絶縁距離を確保できれば、取付金具2を腕金取付金具1に取り付けず、中間碍子20を腕金取付金具1に直接取り付けてもよい。
【0035】
・上記構成において、中間碍子20は、箱形カットアウト10に取り付けた状態で箱形カットアウト10とともに流通してもよいし、箱形カットアウト10とは別体で単独で流通してもよい。例えば、
図4に示した従来の中間碍子120を外して、取付金具2を腕金取付金具1に固定して、取付金具2と箱形カットアウト10との間に中間碍子20を設置してもよい。
【0036】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)前記絶縁部材は、襞を備える箱形カットアウトの中間碍子。
上記構成によれば、絶縁部材の沿面距離を長くすることができ、中間碍子の絶縁性能を高めることができる。
【0037】
(ロ)前記絶縁部材と前記箱形カットアウトとの間に設けられるシール部材を備える箱形カットアウトの中間碍子。
上記構成によれば、シール部材によって絶縁部材と箱形カットアウトとの間を密閉することで絶縁部材と箱形カットアウトとの間を絶縁することができる。ひいては、絶縁部材を貫通する取付部材と箱形カットアウトとの間を絶縁することができる。また、絶縁部材が弾性体ではないときに、絶縁部材と箱形カットアウトとの間にシール部材を設置して、絶縁部材と箱形カットアウトとで圧縮することで密閉して絶縁することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…腕金取付金具、2…取付金具、10…箱形カットアウト、11…本体、12…蓋、13…ピン、14…上部電線挿入孔、15…下部電線挿入孔、16…上面、16A…挿入孔、17…取付ボルト、20…中間碍子、21…絶縁部材、21A…凹部、21B…貫通孔、21C…襞、21D…下端面、21E…外面、21F…縮径部、22…取付部材、22A…第1取付部、22B…第2取付部、22C…縮径部、23…シール部材、24…平板、26…ボルト、31…螺子、32…ナット。