(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ケーソンの曳航管理方法
(51)【国際特許分類】
E02D 23/02 20060101AFI20220127BHJP
E02D 23/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
E02D23/02 B
E02D23/00 Z
(21)【出願番号】P 2018100342
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2020-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000155034
【氏名又は名称】株式会社本間組
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠
(72)【発明者】
【氏名】平池 智広
(72)【発明者】
【氏名】小崎 孝一
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-115485(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047826(WO,A1)
【文献】特開2001-227947(JP,A)
【文献】特開平11-245887(JP,A)
【文献】特公昭47-018456(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/02
E02D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶により海上を移送するケーソンに設けられ該ケーソンの傾斜角度及び傾斜方向を測定する傾斜測定手段と、この傾斜測定手段の測定データにより前記ケーソンの傾斜を表示する表示モニタとを
備えたケーソン用傾斜測定表示装置を
用いたケーソンの曳航管理
方法において、
前記表示モニタは、所定の傾斜角度を表示する所定角度表示円と、前記測定データにより前記ケーソンの傾斜角度及び傾斜方向を示す傾斜指示部とを備え、
前記船舶が引船及び起重機船であり、
前記ケーソンは、底板の四方に前後外壁及び左右外壁が設けられていると共に、前後方向が左右方向より長く形成され、
前記ケーソンを該ケーソンの前方
の前記引船
により曳航し、
前記起重機船の前部に緩衝部材を設け
、前記緩衝部材の前に前記ケーソン
を配置
し、前記ケーソンの前記前外壁と前記左右外壁の外面に大回しロープを配置すると共に、この大回しロープの両端部を前記
起重機船の前部の左右に連結して前記緩衝部材の前に前記ケーソン
を取り付け
、
前記起重機船の起重機本体によ
り保持吊枠
を使用して前記ケーソンを吊った状態で曳航
し、前記保持吊枠の枠体は、左右方向の前後枠部と前後方向の左右枠部とを備え、前記枠体の前後左右の4箇所の角部側から索条を垂設
し、各索条の下端
を前記ケーソンに連結
し、
前記引船及び前記起重機船に前記表示モニタを配置
し、この表示モニタが表示する前記ケーソンの傾斜を確認しながら前記ケーソンが安定した姿勢を保つように前記引船及び前記起重機船の速度を調整することを特徴とするケーソンの曳航管理
方法。
【請求項2】
前記表示モニタは、前記ケーソンの傾斜角度の許容角度範囲が設定可能に設けられると共に、前記所定角度表示円より小さい前記許容角度範囲を表示することを特徴とする請求項1記載のケーソンの曳航管理
方法。
【請求項3】
前記ケーソンの傾斜角度を数値で表示する傾斜角度数値表示部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のケーソンの曳航管理
方法。
【請求項4】
前記ケーソンの傾斜角度が前記許容角度範囲以上になると報知することを特徴とする請求項2記載のケーソンの曳航管理
方法。
【請求項5】
前記表示モニタには、航路区域が表示され、前記ケーソンが航路区域から逸脱すると警報表示することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のケーソンの曳航管理
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソンの曳航管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、ケーソンの如き浮体に配設された給排水用ポンプと、浮体内の水位センサと、浮体吊上げワイヤに介装された張力センサと、前記各センサの検出信号を入力して前記給排水ポンプに浮体の姿勢制御用信号を送る制御装置とよりなることを特徴とする浮体の自動姿勢制御装置(例えば特許文献1)がある。
【0003】
また、コンクリートケーソンには、該コンクリートケーソンを水面に浮かべた際の傾斜を監視する傾斜計を設置し、該傾斜計により所定時間内において所定間隔毎に計測した計測値の移動平均値が所定の設定角度以上である時に、前記コンピュータにより該コンクリートケーソンの水平度を保たせる為の各隔室内の水位レベルを計算し、その計算された水位レベルを設定値として前記注水ポンプ及び/又は排水ポンプを作動させてコンクリートケーソンの水平度を自動的に回復させるようにしたコンクリートケーソンの曳航時安全制御装置(例えば特許文献2)がある。
【0004】
また、水に浮かべたケーソンの内部へ注水してケーソンを沈設する際、ケーソンの傾斜角を取得する傾斜角取得手段と、各々の前記区画の水位を取得する水位取得手段と、前記傾斜角取得手段によって取得された傾斜角が閾値を越えた場合に、前記水位取得手段によって取得された水位の分布の傾向を特定する傾向特定手段と、前記傾向特定手段によって特定された傾向に基づいて、前記傾斜角を小さくするために各々の前記区画に注水する水量、各々の前記区画に注水する時間の長さ、又は、各々の前記区画に注水する単位時間当たりの水量のうち、少なくとも1つのパラメータを決定する決定手段と、前記決定手段によって決定されたパラメータに従って各々の前記区画に注水を行うように注水ポンプを制御する注水制御手段とを備える注水制御装置(例えば特許文献3)がある。
【0005】
前記特許文献1では、張力センサにより測定した浮上吊上げワイヤの張力によりケーソン内の区画の水位を制御し、また、特許文献2及び3では傾斜計によりケーソンの傾斜を計測し、その計測値によりポンプの駆動を制御することにより水平度を保持するものであり、これら従来技術のものはいずれも、ケーソンの傾斜の計測値を、ケーソンを移送する船舶の操舵に用いるものではなかった。
【0006】
また、ケーソンを吊り下げるためのクレーンを有する作業船を用いて、海洋等の水域の所定位置に上記ケーソンを設置する際に、これを支援するケーソン施工支援システムであって、ケーソンの傾斜角を計測するケーソン傾斜計を用いてケーソンの傾斜等の姿勢のデータをサーバに入力し、入力されたこれらのデータをモニタリングパソコンに表示するケーソン施工支援システム(例えば特許文献4)も提案されている。
【0007】
ところで、船舶安全航行ネットワークシステム(例えば特許文献5)では、表示装置上に、自船舶を基準として、他の船舶の位置に、指標(矢印)を配置して表示し、さらに、各指標に近接してその船舶の移動速度を表示し、この表示により、自船舶の乗組員は、自船舶の近隣の他船舶が、どこに位置して、どの方向にいくらの速度で航行しているかを判別でき、これにより、乗組員は、他船舶との衝突の可能性を事前に推定し易くなる。
【0008】
また、前記船舶安全航行ネットワークシステムでは、地上デジタル放送受信機に受信された最新の航行情報に基づき、警報境界を示し、この警報境界は、自船舶の位置を中心とする円であり、その半径は、乗組員により任意に設定され、制御部は、警報境界内に他船舶が進入するか否かを検知し、進入すると検知した場合には、警報装置に警報を発信させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-177086号公報
【文献】特開2009-299413号公報
【文献】特開2013-253469号公報
【文献】特開2000-8389号公報
【文献】特開2010-92245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献4のケーソン施工支援システムも、ケーソンの沈設の際には、ケーソンの傾きを確認することができるが、仮に、ケーソンを曳航する船舶において、単に傾斜等の姿勢のデータを確認できたとても、ケーソンを安定した姿勢で曳航することは難しい。
【0011】
ところで、引船でケーソンを曳航する場合、波や風の影響によりケーソンが傾き、曳航する場所が浅瀬で、その傾きが大きくなると、ケーソンの底部が水底に接触する虞もある。
【0012】
特に、引船の場合、曳航速度によってはケーソンが前傾する虞があり、また、細長形状のケーソンではうねりや接近船舶の航跡波により左右に傾き易いから、周囲の船舶との接近を避ける必要がある。
【0013】
また、工事船舶では、水上で止まって作業をする場合があるから、工事中に他の船舶が接近するとすぐに退避行動に移ることが難しく、他の船舶が知らずに接近する虞もある。
【0014】
そして、上記船舶安全航行ネットワークシステムでは、乗組員により警報境界の半径を任意に設定することができるため、他船が接近するまでの時間を任意に設定して報知することができるが、円形の警報境界では、工事現場の範囲が堤防などで長い形状の場合やその他で多角形などの場合、最長部分の中央を中心とした円の範囲となるため、必要以上に広範囲になったり、警戒が不必要な部分が含まれたりするため、使い難い面がある。
【0015】
本発明は上記した問題点に鑑み、移送中にケーソンを安定した姿勢に保つことができるケーソンの曳航管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、船舶により海上を移送するケーソンに設けられ該ケーソンの傾斜角度及び傾斜方向を測定する傾斜測定手段と、この傾斜測定手段の測定データにより前記ケーソンの傾斜を表示する表示モニタとを備えたケーソン用傾斜測定表示装置を用いたケーソンの曳航管理方法において、前記表示モニタは、所定の傾斜角度を表示する所定角度表示円と、前記測定データにより前記ケーソンの傾斜角度及び傾斜方向を示す傾斜指示部とを備え、前記船舶が引船及び起重機船であり、前記ケーソンは、底板の四方に前後外壁及び左右外壁が設けられていると共に、前後方向が左右方向より長く形成され、前記ケーソンを該ケーソンの前方の前記引船により曳航し、前記起重機船の前部に緩衝部材を設け、前記緩衝部材の前に前記ケーソンを配置し、前記ケーソンの前記前外壁と前記左右外壁の外面に大回しロープを配置すると共に、この大回しロープの両端部を前記起重機船の前部の左右に連結して前記緩衝部材の前に前記ケーソンを取り付け、前記起重機船の起重機本体により保持吊枠を使用して前記ケーソンを吊った状態で曳航し、前記保持吊枠の枠体は、左右方向の前後枠部と前後方向の左右枠部とを備え、前記枠体の前後左右の4箇所の角部側から索条を垂設し、各索条の下端を前記ケーソンに連結し、前記引船及び前記起重機船に前記表示モニタを配置し、この表示モニタが表示する前記ケーソンの傾斜を確認しながら前記ケーソンが安定した姿勢を保つように前記引船及び前記起重機船の速度を調整することを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明は、前記表示モニタは、前記ケーソンの傾斜角度の許容角度範囲が設定可能に設けられると共に、前記所定角度表示円より小さい前記許容角度範囲を表示することを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る発明は、前記ケーソンの傾斜角度を数値で表示する傾斜角度数値表示部を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る発明は、前記ケーソンの傾斜角度が前記許容角度範囲以上になると報知することを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る発明は、前記表示モニタには、航路区域が表示され、前記ケーソンが航路区域から逸脱すると警報表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の構成によれば、傾斜指示部の移動によりケーソンの傾斜を直感的に把握することができるため、操船者により移送中にケーソンが安定した姿勢を保つように船舶の速度を調整することができる。また、緩衝部材を用いたから、ケーソンを傷付けることがなく、さらに、保持吊枠を使用することにより、ケーソンを均一に吊ることができる。
【0022】
請求項2の構成によれば、移送するケーソンに対応した許容傾斜角度で許容角度表示部を表示することができる。
【0023】
請求項3の構成によれば、傾斜角度を数値で確認することができる。
【0024】
請求項4の構成によれば、傾斜角度が許容角度以上になったことが判り、すぐに対応することができる。
【0025】
請求項5の構成によれば、ケーソンの傾斜角によりケーソンが安定した姿勢を保つように曳航速度を調整し、且つ、航路区域を逸脱しないように曳航することにより、水底に接触する虞のある浅瀬などを避けて曳航することができる。
【0026】
また、請求項1の構成によれば、細長形状で左右に傾斜し易いケーソンを、引船と起重機船とで前後から挟み、起重機船で吊った状態で、ケーソンの傾斜角を確認しながら引船と起重機船を航行することにより、ケーソンを安定した姿勢で移送することができる。この場合、引船と起重機船の速度・針路を調整してケーソンの傾斜や針路を管理し、例えば、ケーソンが前傾姿勢になった場合には曳航速度を遅くするなどして調整する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施例1を示す運航管理システムの全体説明図である。
【
図2】同上、表示モニタの運航管理システムを示す画面の図である。
【
図3】同上、表示モニタの船舶の行き会いを示す画面の図である。
【
図4】同上、表示モニタの警戒区域を示す画面の図である。
【
図5】同上、表示モニタの設定時間設定表示部を示す画面の図である。
【
図6】同上、表示モニタの警戒区域設定表示部を示す画面の図である。
【
図7】同上、表示モニタの航路区域設定表示部を示す画面の図である。
【
図11】同上、
ケーソンの水上移送を示す斜視図である。
【
図13】同上、水上移送中の
ケーソンの斜視図である。
【
図14】同上、表示モニタの傾斜情報表示部を示す画面の図である。
【
図15】同上、表示モニタの傾斜情報表示部を一部非表示にした画面の図である。
【
図16】同上、表示モニタの傾斜計設定表示部を示す画面の図である。
【
図17】同上、運航管理システムの画面の図である。
【
図18】本発明の実施例2を示す表示モニタの運航管理システムの画面の図である。
【
図19】同上、表示モニタの船舶の行き会いを示す画面の図である。
【
図20】本発明の実施例3を示す運航管理システムの画面の図である。
【
図21】本発明の実施例4を示す表示モニタの傾斜情報表示部を示す画面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する
【実施例1】
【0029】
以下、本発明のケーソン用傾斜測定表示装置を用いたケーソンの曳航管理方法を、添付図面を参照して説明する。
【0030】
図1~
図17は、本発明の実施例1を示し、工事船舶運航管理システムは、主局船たる起重機船1にAIS機器2を搭載し、この起重機船1は、前記AIS機器2により、AIS機器3を搭載したAIS搭載対象船舶4からAIS情報を取得し、この対象船舶4のAIS情報に基づく船舶情報(船舶データ)と、AIS機器を搭載しないAIS非搭載対象船舶5の船舶情報と、起重機船1の船舶情報(船舶データ)とをインターネット回線によりサーバ7に集める。
【0031】
尚、AIS非搭載対象船舶5は、工事船舶と異なるプレジャーボート等の小型船舶や、サーバ7に船舶情報(船舶データ)を送らない他の工事船舶などが例示される。また、サーバ7は、工事船舶を管理する会社の陸上の事務所などに配置することができる。
【0032】
そして、起重機船1及び複数の従局船6が工事船舶であり、言い換えると、これら複数の工事船舶のなかでAIS機器2を搭載した船舶が主局船である。尚、主局船は主局となる船であり、従局船6は従局となる船である。
【0033】
前記AIS非搭載対象船舶5の船舶情報には、船体を特定する情報のほかに位置情報、速力情報、針路情報などの船舶情報が含まれている。
【0034】
前記AIS搭載対象船舶4からのAIS情報には、船名情報のほかに位置情報、速力情報、針路情報などの船舶情報が含まれている。尚、工事船舶の船名情報は、サーバ7や工事船舶に搭載した後述するパソコンに記憶されている。
【0035】
また、起重機船1及び従局船6はGNSS受信器8を搭載し、このGNSS受信器8で得られた起重機船1及び従局船6の船舶情報をインターネット回線を通じてサーバ7に送る。尚、この例では、GNSS受信器8はDGPS方式のものを用いており、海上保安庁が放送するDGPSの位置補正データを受信するためのビーコン受信機(図示せず)を備え、前記位置補正データにより位置データを補正している。
【0036】
前記起重機船1は、前記AIS機器2,前記GNSS受信器8,自動追尾式のレーダー装置11,カメラたるWebカメラ12,パソコン13及び表示モニタ14を備える。尚、起重機船1のパソコン13にサーバ機能を有するものを用いることにより、サーバ7の替わりに起重機船1のパソコン13をサーバとして用いてもよく、この場合、陸上のサーバ7が不要となる。
【0037】
前記従局船6は、前記GNSS受信器8,パソコン16及び表示モニタ17を備える。また、前記主局船としては、起重機船1が例示され、従局船6としては、引船,監視船及び交通船などが例示され、この例では、複数の従局船6の中で監視船にWebカメラ18を搭載している。そして、Webカメラ18は自船及び周囲の工事船舶を撮像してその画像を表示モニタ14,17の画面に表示する。
【0038】
AIS非搭載対象船舶5の船舶情報たる位置情報等を得るため、起重機船1は前記レーダー装置11を備え、このレーダー装置11によりAIS非搭載対象船舶5の船舶情報を取得する。前記レーダー装置11で、起重機船1の自船位置を基準にして距離と方位が設定された後、緯度、経度の情報に変換され、船舶情報が得られる。尚、起重機船1の位置などを含む起重機船1の船舶情報(船舶データ)は、該起重機船1に搭載したGNSS受信器8により得られる。
【0039】
前記レーダー装置11には、レーダー装置11が生成したレーダー映像を利用して他の船舶等の物標との衝突を予防する自動衝突予防援助装置(以下、ARPA装置ともいう。)15を備える。
【0040】
前記サーバ7はインターネット回線を通じて、起重機船1及び複数の従局船6とそれぞれ通信ネットワークが構築されている。前記各パソコン13,16は、インターネット回線と接続可能な情報端末であり、起重機船1及び従局船6からの情報を送信する情報送信手段として機能する。起重機船1に搭載したパソコン13は、起重機船1に搭乗する作業員の操作によって作業開始および終了、その他の作業情報をインターネット回線を通じてサーバ7に送信する。
【0041】
また、パソコン13,16の操作に関係なく、工事船舶のパソコン13,16は、船舶情報等をインターネット回線を通じてサーバ7に定期的に送信する。サーバ7では、それらの船舶情報を集約して定期的に起重機船1のパソコン13にインターネット回線を通じて送信する。
【0042】
このようにサーバ7では、受信した起重機船1,AIS搭載船である対象船舶4,非AIS搭載船である対象船舶5及び従局船6の船舶情報を集約した集約情報を、起重機船1に送信し、この集約情報を起重機船1のパソコン13が処理し、集約情報を従局船6に定期的に送信する。
【0043】
尚、サーバ7は、起重機船1及び従局船6から発信される情報を、インターネット回線を通じて受信し、受信した情報をデータベースに登録する。このデータベースに登録された情報は、起重機船1及び従局船6のパソコン13,16によりウェブブラウザを用いて閲覧することができる。
【0044】
次に、前記起重機船1のパソコン13の処理について説明する。前記パソコン13は、前記船舶情報に含まれるAIS搭載対象船舶4,AIS非搭載対象船舶5,パソコン13,16を搭載した起重機船1及び従局船6の針路情報・位置情報・速力情報に基づいて、各表示モニタ14,17の画面に起重機船1,前記対象船舶4,5及び従局船6の針路情報・位置情報・速度情報をベクトル21,24,25,26で表示する。
【0045】
この場合、起重機船1の表示モニタ14には、少なくとも自船である起重機船1が表示され、従局船6の表示モニタ17には、少なくとも自船である従局船6が表示される。このようにパソコン13,16にはそれぞれ自船が中央側に表示される。尚、各パソコン13,16には、表示切替手段(図示せず)が設けられており、各パソコン13,16の表示モニタ14,17において、起重機船1を中心とした主局船用表示と従局船6を中心とした従局船用表示とに選択して切り替えることもできる。尚、従局用表示においては、複数の従局船6の中から選択して切り替えることができる。
【0046】
図1~
図7を用いてパソコン13の処理について説明する。
図2の表示モニタ14,17は起重機船1を選択して表示したものであり、表示モニタ14,17の中央側には、起重機船1を表す船形のマーク31を表示している。尚、船形のマーク31は尖鋭な先端31Sを略進行方向側に向けて表示している。また、起重機船1の現在の位置、方向及び速度から起重機船1の針路を直線表示部たるベクトル21で表示し、このベクトル21の始点は前記現在の起重機船1の中心位置である。前記ベクトル21には、複数の設定時間に対応した予想位置を示す予想位置表示部たる点表示部21Aが表示され、これら点表示部21Aの直径はベクトル21の線の太さより大きい。
【0047】
また、表示モニタ14,17には、AIS情報及びレーダー装置11により取得した情報によりAIS搭載対象船舶4及びAIS非搭載対象船舶5を船形等のマーク34,35で表示し、同時にそれら対象船舶4,5及び従局船6の現在の位置、方向及び速度から対象船舶4,5及び従局船6の針路を直線表示部たるベクトル24,25,26で表示し、これらベクトル24,25,26の始点は前記現在の対象船舶4,5及び従局船6の位置
である。
【0048】
また、前記ベクトル24,25,26には、複数の設定時間に対応した予想位置を示す点表示部24A,25A,26Aが表示される。
【0049】
前記ベクトル21,24,25,26の始点には、マーク31,34,35及び/又は船名が表示される。また、点表示部21A,24A,25A,26Aに対応して、設定時間を表示することができる。具体的には、
図2に示すように、マーク31,34,35の近傍に、船名や船体を特定する事項を表示する船体特定情報表示部36が表示され、また、設定時間を示す設定時間表示部37が点表示部21A,24A,25A,26Aの近傍に表示される。尚、設定時間表示部37は、
図2及び
図3では、例えば「3分後」と表示したが、「3分」「3」などの設定時間が判る表示であれば適宜選定できる。
【0050】
図2に示した例では、このままの針路と速度で航行した場合、起重機船1と対象船舶4が3分後に行き会うことが一目で判り、速やかに回避行動を取ることができる。このように自船と他船の位置、方向及び設定時間経過後の予想位置を表示モニタ14,17に表示することにより、昼夜を問わずに衝突回避行動や航路への侵入・横断判断を早期に行うことができ、工事用船舶を用いた施工性が向上する。また、対象船舶4が大型船の場合、接近するだけで衝撃波の影響を受けるため、接近が想定される場合、その接近を回避することができる。
【0051】
また、船の種類に対応して、マーク31,34,35を設定することができ、
図10に示すように、それぞれを模してポンプ浚渫船,グラブ浚渫,土運船,アンカー船,監視船,交通船,砂撒船などが例示され、また、任意に設定することもできる。このように既知の工事船舶を、該工事船舶を表す図形のマークで表示することにより、工事船舶の種類を容易に判断することができる。
【0052】
図5は、表示モニタ14,17の表示を切り替え、表示モニタ14,17に設定時間設定表示部41を表示した画面を示している。この設定時間設定表示部41には、複数の時間切換部42,42A,42Bが並設され、この例では3つの時間切換部42,42A,42Bが設けられ、各時間切換部42,42A,42Bの数値を切り替えることができる。この切り替えは上下の三角の時間切換部43,43をクリックすることにより数値が増減し、この例では1分単位で切り替えることができる。また、複数の切換部42,42A,42Bのいずれかを使用しない場合は、時間切換部42に対応する「使用する」の隣りの使用選択切換部44のチェックボックスをオン・オフ切換することにより、対応する時間切換部42,42A,42Bを使用する場合と使用しない場合とに切換えることができる。尚、チェックボックスはオフの状態で空欄となる。
【0053】
全ての使用選択切換部44を使用するにした状態で、時間切換部43により設定時間を選択し、この例では、左側から「1分」「3分」「5分」を選択することにより、「1分後」「3分後」「5分後」に対応した予想位置を示す前記点表示部21A,24A,25Aがベクトル21,24,25と共に表示される。ここで例えば中央の時間切換部42Aを使用選択切換部44により使用しないにすると、「1分後」「5分後」の設定時間に対応した予想位置を示す予想位置表示部たる点表示部21A,24A,25Aが表示される。
【0054】
さらに、表示モニタ14,17の画面には、警戒区域51が表示される。この警戒区域51は工事場所を囲んで表示するものであり、例えば、水中構造物であるケーソン67などの据付位置である工事現場を囲んでいる。尚、工事船舶運航管理システムにおいて、ケーソン67は、工事船舶の従局船6と略同様に管理される。
【0055】
前記警戒区域51は、複数の区域直線部52,52A,52B・・・と隣り合う直線52,52A,52B・・・を連結する区域角部53,53A,53B・・・を有する多角形形状をなす。
【0056】
図6は、表示モニタ14,17の表示を切り替え、警戒区域設定表示部55を表示した画面を示している。この警戒区域設定表示部55には、その左側に複数の警戒区域51を選択可能な選択部56が設けられ、その中央上部に現在選択している警戒区域51の名称を表示する名称表示部57が設けられ、この名称表示部57の下に、前記区域角部53の数を設定する区域角部数設定部58が設けられ、その中央にデータ入力部59が設けられ、その左側に凡例表示部60が設けられている。
【0057】
前記データ入力部59の左側には数字表示部59Aが設けられ、この数字表示部59Aには、前記区域角部53,53A,53B・・・に対応して、整数が1から下に向かって増加するように並んで配置され、その数字表示部59Aに対応してその右側にX座標入力部59BとY座標入力部59Cが配置されている。
【0058】
警戒区域51の設定方法について、
図4などに示す警戒区域51を例にして説明すると、五角形の警戒区域51を設定するには、区域角部数設定部58の上下の三角の数切換部58A,58Aをクリックすることにより数値が上下し、この例では区域角部53の数を多角形の角数に合わせて5個に切り替え、凡例表示部60に示されているように、1~5の数値表示部59AのX座標入力部59BとY座標入力部59Cに座標の数値を入力するにより、表示モニタ14,17に警戒区域51の枠が表示される。尚、
図3と
図6とは座標の数値が実際のものとは異なる。
【0059】
この場合、1~5の数値表示部59Aの座標の数値に対応した位置に、前記区域角部53,53A,53B,53C,53Dが表示され、隣り合う前記区域角部53,53A,53B,53C,53Dを区域直線部52,52A,52B,52C,52Dが繋ぐ。尚、数値表示部58Aの最小と最大に対応する区域角部53,53Dを、区域直線部52Dにより繋いで警戒区域51が閉じられる。
【0060】
また、警戒区域設定表示部55において、更新ボタン61を押すことにより座標の数値を更新することができ、警戒区域51を追加して座標を入力後、追加ボタン61Aを押すことにより選択部56における警戒区域51を追加することができ、また、選択部56において削除したい警戒区域51を選択した状態で、削除ボタン61Bを押すことにより、登録された警戒区域51を選択して削除することができる。
【0061】
さらに、表示モニタ14,17の画面には、航路区域62が表示される。この航路区域62は水中構造物の航海可能な航路を囲んで表示するものであり、例えば、水中構造物であるケーソン67などの航行に適した範囲を表示する。尚、適した範囲とは、水上に浮かべて曳航するケーソン67が海底に接触する虞のある浅瀬68などを避けるため、所定の水深を有する範囲や堤防などの構造物に近付かない範囲である。尚、
図9の平面図では理解を容易にするため、対応する位置に航路区域62を想像線で図示している。
【0062】
また、前記航路区域62は、前記警戒区域51と同様に、複数の区域直線部52,52A,52B・・・と隣り合う直線52,52A,52B・・・を連結する区域角部53,53A,53B・・・を有する多角形形状をなす。
【0063】
また、
図7は、表示モニタ14,17の表示を切り替え、航路区域設定表示部63を表示した画面を示している。この航路区域設定表示部63には、その左側に複数の航路区域62を選択可能な選択部56が設けられ、その中央上部に現在選択している航路区域62の名称を表示する名称表示部57が設けられ、その中央にデータ入力部59が設けられ、その左側に凡例表示部60が設けられている。そして、航路区域設定表示部63は、警戒区域設定表示部55と同様にして航路区域62を設定することができる。
【0064】
また、AIS機器3を搭載した対象船舶4及びAIS機器を搭載しない対象船舶5が警戒区域51に侵入すると、これらを表す舟形のマーク34,35が点滅等の警告表示状態となり、侵入を報知する。或は、
図4に示すように警戒区域51を表示する表示モニタ14,17に、「船舶が警戒区域に侵入しました」というメッセージを表示する。
【0065】
さらに、GNSS受信器8からの位置情報のデータにより、GNSS受信器8を搭載したケーソン67が航路区域62を逸脱すると、警報表示が表示モニタ14,17に表示される。具体的には、
図4に示したように航路区域62を表示する表示モニタ14,17に、「ケーソンが航路区域外に侵入しました」というメッセージを表示し、航路区域62からの逸脱を報知する。尚、ケーソン67は、傾斜計81を構成する情報携帯端末が、GNSS受信器8を備え、従局船6と同様に、船舶情報がインターネット回線を通じてサーバ7に送られ、表示モニタ14,17に表示することができる。
【0066】
図9は航路区域設定表示部63の使用例を示している。
図9は港湾の平面図であり、左右に堤防65,66が配置されており、左側の堤防66の先端66Aにケーソン67が据付けられる。港湾の陸側から左側の堤防66の先端66Aまでケーソン67を曳航する。前記堤防65,66の内側に浅瀬68,68が位置し、これら浅瀬68,68を避けて航路区域62を設定している。この場合、1~10の数値表示部58Aの座標の数値を入力することにより、航路区域62を設定することができる。
【0067】
ケーソン67の曳航航路は、ケーソン67が海底に接触しないようケーソン67の喫水以上の水深が必要となる。航路周辺に浅瀬68がある場合においては、計画航路から曳航ケーソン67が逸脱しないように管理する必要がある。このような場合に本システムを適用し、ケーソン67の曳航航路を航路区域62として管理することで航路区域62からの逸脱を防止することによりケーソン67と海底との接触防止を図ることができる。特に、後述する傾斜計と組み合わせることにより、ケーソン67の安定した曳航が可能になる。
【0068】
以上を主として起重機船1のパソコン13が処理して制御する。この場合、パソコン13は、受け取ったデータに基づき、演算処理をして表示モニタ14の画面に表示し、経時的に変化するデータに基いて表示を1秒間に複数回書き換える。また、表示モニタ14と同様な表示を表示モニタ17の画面に表示することができる。
【0069】
次に、前記工事船舶運航管理システムの構成につきその作用を説明する。起重機船1を含む工事船舶の当日の航行に合わせて設定時間設定表示部41において設定時間を設定し、ベクトル21,24,25,26と点表示部21A,24A,25A,26Aを設定する。また、警戒区域51を警戒区域設定表示部55により設定し、航路区域62を航路区域設定表示部63により設定する。
【0070】
そして、
図2に示したように、表示モニタ14,17を運行管理システムの画面に切り替え、起重機船1がこのままの針路と速度で航行した場合、対象船舶4と3分後に行き会うことが一目で判り、速やかに回避行動を取ることができる。
【0071】
また、
図11~
図17では、主局船たる起重機船1の前部に前記ケーソン67を取り付けて押航し、このケーソン67を引船71により曳航する。このように船舶である引船71と起重機船1によりケーソン67が浮上した状態で水上を移送される。尚、この場合、
引船71は従局船6である。
【0072】
図12に示すように、前記起重機船1の前面部70Aには、緩衝装置たる緩衝架台装置72が設けられている。この緩衝架台装置72は、前記前面部70Aに弾性体たる複数の弾性筒体73,73・・・を左右に間隔を置いて配置し、これら弾性筒体73,73・・・の前面に硬質材料からなる枠体74を固定し、この例では枠体74は鋼製であって、横方向の上,下横枠部74Y,74Yを複数の縦枠部74T,74T・・・により連結してなる。また、その枠体74の前面に左右に間隔を置いて、緩衝部材たる複数の弾性リング体75,75・・・を固定し、この例では弾性リング体75にタイヤを用いている。
【0073】
前記ケーソン67は、左右方向より前後方向が長く形成され、底板(図示せず)の四方に前後外壁67A,67A及び左右外壁67B,67Bを設け、これら周囲の外壁67A,67A,67B,67B間に平面で前後及び左右方向の隔壁67C,67D,67Dを設けて複数の投入箇所を升目状に配置している。また、前後外壁67A,67Aの左右幅寸法より左右外壁67B,67Bの前後幅寸法が大きい。尚、前後外壁67A,67Aの左右幅より、起重機船1の前面部70A及び枠体74の左右幅が大きい。
【0074】
また、緩衝架台装置72の前面にケーソン67を配置し、前記前面部70Aの左右に大回しロープ76の両端部76T,76Tを連結すると共に、この大回しロープ76をケーソン67の前外壁67Aと左右外壁67B,67Bの外面に配置し、起重機船1の前部にケーソン67を取付ける。
【0075】
前記引船71はケーソン67の前方において該ケーソン67に牽引ロープ77を連結している。
【0076】
本発明のケーソン用傾斜測定表示装置には傾斜計81が用いられ、前記ケーソン67上には、傾斜測定手段たる2台の傾斜計81,81が搭載されている。尚、2台(複数)の傾斜計81,81を搭載するのは、一方が故障した場合のバックアップのためであり、どちらか一方の傾斜計81により傾斜を測定し、その測定データがインターネット回線などを介してパソコン13に送られる。
【0077】
この場合、ケーソン67を起重機船70に取り付けたから、ケーソン67の位置などを起重機船70と同じとして処理してもよいし、GNSS通信機となる携帯端末からの位置情報によりケーソン67の位置などを測定してもよく、一方、傾斜はケーソン67に設けた携帯端末などの傾斜計81により測定する。尚、引船71のみで曳航する場合などは、引船71とケーソン67が離れているから、この場合はケーソン67に設けたGNSS受信器8又はGNSS受信器機能を備えた携帯端末によりケーソン67の船舶情報を管理する。
【0078】
前記表示モニタ14,17には傾斜情報表示部82が表示され、この傾斜情報表示部82に、前記傾斜計81により測定したケーソン67の傾斜角度が表示される。
図14及び
図15に示すように、傾斜情報表示部82には、水平位置を示す中心点83と、この中心点83を中心とする所定角度表示円84と、この所定角度表示円84の内側に設定可能に設けられ中心点83を中心とする許容角度表示部たる許容角度範囲85とを備え、傾斜計81により測定した傾斜を示す傾斜指示部たる傾斜指示点86が表示され、この傾斜指示点86は、水平器などの気泡と同じ動作で傾斜を表示する。尚、傾斜情報表示部82は、X軸方向においてプラス方向、即ち真上が傾斜計81を装備したケーソン67の進行方向を示す。また、所定角度表示円84には、該所定角度表示円84の表す傾斜角が、数字からなる数字表示部84Aにより表示されている。尚、前記許容角度範囲85は閉曲線で表され、この例では円形である。
【0079】
前記所定角度表示円84の示す傾斜値と許容角度範囲85の示す許容傾斜値とは任意に設定することができる。また、前記中心点83を中心としたX軸方向及びY軸方向の目盛り87,87の間隔を任意に設定できる。尚、X軸方向及びY軸方向に並んだ目盛り87,87が傾斜方向表示部である。
【0080】
また、前記傾斜情報表示部82には、被測定物(ケーソン67)の方位を示す方位指示部88が設けられている。この例では、方位指示部88は、互いに色の異なる三角形の指示図形88A,88Bから構成され、一方の指示図形88Aは方位の北を示し、他方の指示図形88Bは方位の南を示し、両指示図形88A,88Bは前記中心点83を挟んで対称の位置にある。
【0081】
そして、前記傾斜情報表示部82には、中心点83を中心としたX軸方向及びY軸方向がピッチ角及びロール角に対応して、ピッチ角を表示するピッチ表示部90と、ロール角を表示するロール表示部91と、方位角を表示する方位表示部92が設けられ、前記ピッチ表示部90とロール表示部91が傾斜角度数値表示部である。尚、方位は北を0°とし、北と進行方向とがなす角度で、北から時計回り方向に増加する。傾斜計81には、傾斜角度と傾斜方向を測定可能なスマートフォンなどの情報携帯端末を用いることができ、所定時間が経過しても傾斜計81からパソコン13に傾斜データの入力がない場合、後述するように警告を表示することができる。
【0082】
図16を用いて、傾斜情報表示部82の設定について説明する。
図16は表示モニタ14に表示した傾斜計設定表示部93であり、この傾斜計設定表示部93には、左側上部からデータ有効時間設定部94、表示円設定部95、目盛り値設定部96、傾斜許容範囲設定部97が設けられ、中央上部にはオフセット設定部98が設けられ、これら設定部95,96,97,98に数値を入力することにより設定することができる。
【0083】
前記データ有効時間設定部94は、データ有効時間を設定することができ、設定した時間が過ぎても傾斜計81から新しいデータが来ない場合、傾斜情報表示部82に「データがきていません」などの警告表示94A(
図20参照)を表示し、傾斜に係る表示が実際の現在の値と異なることを報知する。前記表示円設定部95を用いて前記所定角度表示円84の表す傾斜角を設定することができ、前記目盛り値設定部96を用いて前記目盛り87の傾斜角に対応した位置及び間隔を設定することができる。
【0084】
また、前記傾斜許容範囲設定部97は、ピッチ角が北側に増加するピッチアップ部97Aと、ピッチ角が南側に増加するピッチダウン部97Bと、ロール角が左に増加するロールレフト部97Cと、ロール角が右に増加するロールライト部97Dとを有し、それぞれに傾斜の許容角度を設定することができる。尚、
図16の傾斜許容範囲設定部97における設定では、
図15に示すように許容角度範囲85の閉曲線は円となる。
【0085】
尚、前記傾斜情報表示部82において、ケーソン67の進行方向前側が進行方向後側より低くなるように傾斜した傾斜角をプラスで表わし、ケーソン67の進行方向後側が進行方向前側より低くなるように傾斜した傾斜角をマイナスで表わし、また、ケーソン67の進行方向右側が進行方向左側より低くなるように傾斜した傾斜角をプラスで表わし、ケーソン67の進行方向左側が進行方向右側より低くなるように傾斜した傾斜角をマイナスで表わしている。
【0086】
前記オフセット設定部98は、表示される方位、ピッチ、ロールを補正する方位オフセット部98A、ピッチオフセット部98B、ロールオフセット部98Cを有し、それぞれ角度を入力することができる。例えば、傾斜計81をケーソン67に位置固定して設置し
た後、オフセット設定部98に値を入力することにより補正することができる。例えば、方位を例にすると、ケーソン67が北を向いた状態で、方位データが1°であれば、方位オフセット部98Aに-1°を入力することにより、実際の方位に補正できる。
【0087】
また、傾斜計設定表示部93には、その中央下部に描画設定部99が設けられ、その右側に色設定部100が設けられている。前記描画設定部99は、傾斜情報表示部82における各種の表示に対応するチェックボックスをオン・オフ切換することができる。
【0088】
前記チェックボックスをオン・オフ切換することにより、「軸の値を表示する」では、数字表示部84Aが表示・非表示となり、「目盛を表示する」では、目盛り87が表示・非表示となり、「傾斜許容範囲を表示する」では、許容角度範囲85が表示・非表示となり、「方位を表示する」では、方位指示部88が表示・非表示となり、「中心点を表示する」では、中心点83が表示・非表示となり、「値を表示する」では、ピッチ表示部90,ロール表示部91及び方位表示部92が表示・非表示となり、「警告文を表示する」では、警告表示94Aが表示・非表示になる。
【0089】
尚、
図14に対して、
図15では前記チェックボックスをオン・オフ切換することにより、方位指示部88,ピッチ表示部90及びロール表示部91を非表示にし、方位指示部88は図示省略している。
【0090】
また、色設定部100は、傾斜情報表示部82における各種の表示の色を選択・変更することができる。
【0091】
そして、ケーソン67の傾斜角度が許容角度範囲85以上になると、警報表示が表示モニタ14,17に表示されたり、警報音を発したりして報知する。例えば、傾斜情報表示部82を表示する表示モニタ14,17に、「傾斜許容範囲を超えました」というメッセージを表示し、傾斜角度が許容角度以上になったことを報知する。或いは、ケーソン67の傾斜角度が許容角度範囲85以上になると、表示モニタ14,17の画面の一部が点滅して警報表示してもよい。
【0092】
図11などの示すように、前記ケーソン67の水上移動において、保持吊枠101を使用することができる。この保持吊枠101の枠体102は、左右方向の前後枠部102A,102Aと、前後方向の左右枠部102B,102Bとからなる横長の方形をなし、その枠体102内に前後方向の中央補強枠部102Cが設けられ、この中央補強枠部102Cの前後が前記前後枠部102A,102Aに固定されている。
【0093】
前記枠体102は前記ケーソン67の左右幅以上に形成され、この例では枠体102の左右幅はケーソン67の左右幅と略同一である。そして、枠体102の前後左右の4箇所の角部側から索条103,103,103,103を垂設し、各索条103,103,103,103の下端をケーソン67の左右外壁67B,67Bに連結している。また、前記索条103,103,103,103に対応して、枠体102には吊上げ用索条104,104,104,104が連結され、これら吊上げ用索条104,104,104,104の上端が、上部で集まった集合部104Aが形成されている。
【0094】
前記起重機船1には、起重機本体111が配置されている。この起重機本体111は、起重機船1に対して旋回可能に設けられ、また、起伏可能なクレーンアーム112を備え、このクレーンアーム112の先端113から吊下げ用の索条114が吊下げられ、この索条114は起重機本体111により巻取り・送り出し可能に構成されている。そして、索条114の下端に設けた連結部たるフック115に前記集合部104Aを連結している。
【0095】
尚、
図17では、主局船である起重機船70の船名が「○○○丸」であり、従局船である引船71の船名が「×××丸」であり、それら引船71と起重機船70との間にケーソン67が位置し、搭載した「傾斜計1」により船体を特定するために、ケーソン67の近傍には「傾斜計1」が船体特定情報表示部36として表示されている。この場合、ケーソン67が従局船であり、ケーソン67の針路情報・位置情報・速度情報をベクトル21により表示されている。
【0096】
このように本実施例では、請求項1に対応して、船舶たる引船71により水上たる海上を移送する水中構造物たるケーソン67に設けられ該ケーソン67の傾斜角度及び傾斜方向を測定する傾斜測定手段たる傾斜計81と、この傾斜計81の測定データによりケーソン67の傾斜を表示する表示モニタ14,17とを備えたケーソン用傾斜測定表示装置を用いたケーソン67の曳航管理方法において、表示モニタ14,17は、所定の傾斜角度を表示する所定角度表示円84と、傾斜方向の基準を表示する傾斜方向表示部たる目盛り87と、測定データによりケーソン67の傾斜角度及び傾斜方向を示す傾斜指示部たる傾斜指示点86とを備え、前記船舶が引船71及び起重機船1であり、ケーソン67は、底板の四方に前後外壁67A,67A及び左右外壁67B,67Bが設けられていると共に、前後方向が左右方向より長く形成され、ケーソン67を該ケーソン67の前方の引船71により曳航し、起重機船1の前部に緩衝部材たる弾性リング体75を設け、弾性リング体75の前にケーソン67を配置し、ケーソン67の前外壁67Aと左右外壁67B,67Bの外面に大回しロープ76を配置すると共に、この大回しロープ76の両端部76T,76Tを起重機船1の前部の左右に連結して弾性リング体75の前にケーソン67を取り付け、起重機船1の起重機本体111により保持吊枠101を使用してケーソン67を吊った状態で曳航し、保持吊枠101の枠体102は、左右方向の前後枠部102A,102Aと前後方向の左右枠部102B,102Bとを備え、枠体102の前後左右の4箇所の角部側から索条103,103,103,103を垂設し、各索条103,103,103,103の下端をケーソン67に連結し、引船71及び起重機船1に表示モニタ14,17を配置し、表示モニタ14,17が表示するケーソン67の傾斜を確認しながらケーソン67が安定した姿勢を保つように引船71及び起重機船1の速度を調整するから、傾斜指示点86の移動によりケーソン67の傾斜を直感的に把握することができるため、操船者により移送中にケーソン67が安定した姿勢を保つように船舶の速度を調整することができる。また、緩衝部材たる弾性リング体75を用いたから、ケーソン67を傷付けることがなく、さらに、保持吊枠101を使用することにより、ケーソン67を均一に吊ることができる。
【0097】
このように本実施例では、請求項2に対応して、表示モニタ14,17は、ケーソン67の傾斜角度の許容角度範囲85が設定可能に設けられると共に、所定角度表示円84より小さい許容角度範囲85を備えるから、移送するケーソン67に対応した許容傾斜角度で許容角度範囲85を表示することができる。
【0098】
このように本実施例では、請求項3に対応して、ケーソン67の傾斜角度を数値で表示する傾斜角度数値表示部たるピッチ表示部90及びロール表示部91を備えるから、傾斜角度を数値で確認することができる。
【0099】
このように本実施例では、請求項4に対応して、水中構造物たるケーソン67は船舶たる引船71により曳航され、水中構造物たるケーソン67の傾斜角度が許容角度範囲85以上になるとこれを傾斜測定表示装置が報知するから、傾斜角度が許容角度以上になったことが判り、すぐに対応することができる。
【0100】
このように本実施例では、請求項5に対応して、請求項1~4のいずれか1項に記載のケーソン67の曳航管理方法において、表示モニタ14,17には、航路区域62が表示され、水中構造物たるケーソン67が航路区域62から逸脱すると警報表示するから、ケーソン67の傾斜角によりケーソン67が安定した姿勢を保つように曳航速度を調整し、且つ、航路区域62を逸脱しないように曳航することにより、水底たる海底に接触する虞のある浅瀬68などを避けて曳航することができる。
【0101】
また、このように本実施例では、請求項1に対応して、ケーソン用傾斜測定表示装置を用いたケーソン67の曳航管理方法において、ケーソン67は前後方向が左右方向より長く形成され、ケーソン67を引船71により曳航し、起重機船1の前部に緩衝部材たる弾性リング体75を設け、弾性リング体75の前にケーソン67を取り付け、起重機船1の起重機本体111により吊った状態で曳航し、引船71及び起重機船1に表示モニタ17,14を配置したから、細長形状で左右に傾斜し易いケーソン67を、引船71と起重機船1とで前後から挟み、起重機船1で吊った状態で、ケーソン67の傾斜角を確認しながら引船71と起重機船1を航行することにより、ケーソン67を安定した姿勢で移送することができる。この場合、引船71と起重機船1の速度・針路を調整してケーソン67の傾斜や針路を管理し、例えば、ケーソン67が前傾姿勢になった場合には曳航速度を遅くするなどして調整する。
【0102】
また、実施例上の効果として、緩衝部材として弾性を有する複数の弾性リング体75,75・・・を用いたから、ケーソン67を傷付けることなく、押航することができる。また、枠体74の前後に弾性リング体75と弾性筒体73を配置したから、緩衝機能が効果的に向上する。さらに、前記ケーソン67の水上移動において、保持吊枠101を使用することにより、ケーソン67を均一に吊ることができ、4箇所の索条103,103,103,103が略垂直で緩まないように吊ることにより、曳航中のケーソン67の傾斜を低減することができる。
【0103】
また、所定角度表示円84も所定角度が設定可能であるから、移送するケーソン67に適した所定角度で所定角度表示円84を表示することができる。また、方位指示部88は、互いに異なるマーク、この例では色の異なる指示マークたる指示図形88A,88Bから構成されるから、針路の方位を容易に確認でき、さらに、所定角度表示円84の内側で、好ましくは所定角度表示円84と許容角度範囲85との間で、中心点83を挟んだ位置に指示図形88A,88Bを配置したから、指示図形88A,88Bが見易く、針路の方位の確認が容易となる。尚、この場合、指示図形88A,88Bは所定角度表示円84に近接しているが、重なりあってはいない。また、前記データ有効時間設定部94は、データ有効時間を設定することができから、データ有効時間内の略現在のケーソン67の傾斜を知ることができる。
【0104】
以下、実施例上の効果として、主局船たる起重機船1と、起重機船1に設けられ、AIS機器3を搭載した対象船舶4のAIS情報を受信するAIS機器2と、GNSS受信器8を備え、GNSS受信器8で得られた自船の船舶情報を起重機船1に送る従局船6と、AIS情報による対象船舶4の船舶情報と、起重機船1の船舶情報及びGNSS受信器8で得られた従局船6の船舶情報とに基づいて、起重機船1,従局船6及び対象船舶4の針路情報・位置情報を直線表示部たるベクトル21,26,24で表示すると共に、起重機船1及び従局船6の一方である起重機船1と対象船舶4の複数の設定時間経過後の予想位置をベクトル21,24に表示する表示モニタ14,17と、を備えるから、起重機船1の設定時間経過後の位置を表示するベクトル21と、対象船舶4の複数の設定時間経過後の位置を表示するベクトル24とにより、対象船舶4との接近位置と時間とを直感的に知ることができる。
【0105】
また、起重機船1と、起重機船1に設けられ、AIS機器3を搭載した対象船舶4のAIS情報を受信するAIS機器2と、GNSS受信器8を備え、GNSS受信器8で得られた自船の船舶情報を起重機船1に送る従局船6と、起重機船1に設けられ、AIS機器を搭載しない対象船舶5の船舶情報を取得するレーダー装置11と、AIS情報による対象船舶4の船舶情報と、レーダー装置11によるAIS機器を搭載しない対象船舶5の船舶情報と、起重機船1の船舶情報及びGNSS受信器8で得られた従局船6の船舶情報とに基づいて、起重機船1,従局船6及び対象船舶4の針路情報・位置情報を直線表示部たるベクトル21,26,24で表示すると共に、起重機船1及び従局船6の一方である起重機船1と対象船舶4,5の複数の設定時間経過後の予想位置をベクトル21,24,24に表示する表示モニタ14,17と、を備えるから、対象船舶4,5のAIS機器の搭載・非搭載に係らず、起重機船1及び従局船6の一方の設定時間経過後の位置を表示するベクトル21と、対象船舶4,5の複数の設定時間経過後の位置を表示するベクトル24,25とにより、対象船舶4,5との接近位置と時間とを直感的に知ることができる。
【0106】
また、複数の設定時間が任意に設定可能であるから、設定時間を任意に変更することが
できるため、これから向かうべき方向及び速度に合わせて直線表示部の長さ及び設定時間を設定することができる。
【0107】
また、表示モニタ14,17には、警戒区域51が表示され、警戒区域51への対象船舶4の侵入を報知するから、警戒区域51に侵入した船舶を監視することができる。
【0108】
また、警戒区域51は多角形に表示され、この多角形の角部の位置を設定することにより任意に設定可能であるから、工事の進捗に伴う範囲や場所の変更に対して、警戒区域51の設定及び変更を簡便に行うことができる。
【0109】
また、実施例上の効果として、起重機船1のパソコン13にサーバ機能を有するものを用いることにより、サーバ7の替わりに起重機船1のパソコン13をサーバとして用いることができ、この場合、陸上のサーバ7が不要となる。さらに、ベクトル21には、複数の設定時間に対応した予想位置を示す点表示部21Aが表示され、これら点表示部21Aの大きさ(直径)はベクトル21の線の太さより大きいものであるから、一目で設定時間経過後の位置が理解できる。また、複数の時間切換部42,42A,42Bにより、中心側の設定時間よりその外側の設定時間を長く設定する方法であり、具体的に実施例では、中心側の設定時間が1分、その外側の設定時間が1分の2倍以上の2分,2分であるから、始点に船名などが有っても無くても時間切換部42,42A,42Bの間隔が広い方が航行方向であることが容易に判る。さらに、工事船舶には、対応するマーク31,34,35の近傍に、船名や船体を特定する事項を表示する船体特定情報表示部36が表示され、また、設定時間を示す設定時間表示部37が点表示部21A,24A,25A,26Aの近傍に表示されているから、どの工事船舶がどこに向かうかが容易に分かる。また、設定時間設定表示部41は、時間切換部42,42A,42Bを使用する場合と使用しない場合とに切換えることができ、設定時間だけでなく、航行条件に応じてベクトルに設ける点表示部の数も替えることができ、現場に合わせた対応が可能となる。
【0110】
また、前記警戒区域51及び航路区域62は、複数の区域直線部52,52A,52B・・・と隣り合う直線52,52A,52B・・・を連結する区域角部53,53A,53B・・・を有する多角形形状をなし、設定表示部55,63を用いて現場に合わせた区域を簡便に設定することができる。
【実施例2】
【0111】
図18及び
図19は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、同心円22を用いて航路を予想可能にしている。また、実施例1と同様に以下の制御はパソコン13により行われる。
【0112】
起重機船1の表示モニタ14には、起重機船1を中心22Sとした同心円22が表示され、従局船6の表示モニタ17には、従局船6を中心とした同心円22が表示される。このようにパソコン13,16の表示モニタ14,17にはそれぞれ自船を中心にして、同心円22が表示される。尚、各パソコン13,16には、表示切替手段(図示せず)が設けられており、各表示モニタ14,17で起重機船1を中心22Sとした表示と従局船6を中心22Sとした表示とに切り替えることもできる。
【0113】
以下、パソコン13の処理について説明する。
図18及び
図19の表示モニタ14は起重機船1を中心とした同心円22を表示しており、中心22Sに起重機船1を表す船形のマーク31を表示している。尚、船形のマーク31は尖鋭な先端31Sを略進行方向側に向けて表示している。また、起重機船1の現在の速度で所定時間後に達する位置を、同心円22の3つの円23,23A,23Bで示し、複数の所定時間が任意に設定可能である。この場合、同心円22の円23,23A,23Bの数と複数の設定時間を設定すること
ができ、中心21Sから3つの円23,23A,23Bが鎖線で表示され、これら3つの円23,23A,23Bは、実施例1で例示したように、中心22Sから1分後、3分後、5分後の起重機船1の位置を示している。また、各円23,23A,23Bに対応して、設定時間を示す設定時間表示部37がそれぞれ表示される。
【0114】
また、同心円22を表示した表示モニタ14,17に、前記ベクトル24,25を表示し、これらベクトル24,25の始点は前記現在の対象船舶4,5の位置である。前記ベクトル24,25には、前記同心円22の設定時間に対応した設定時間が点表示部24A,25Aにより表示される。
【0115】
尚、複数の対象船舶4,5が表示モニタ14,17の画面上に表示される場合、同心円22の外側の円23Bを通る又は外側の円23Bに近接するベクトル24,25のみを表示するように切り替えることができる。尚、この場合の近接は、他の船舶から衝撃波の影響を受ける程度近付くことを言う。
【0116】
また、表示モニタ14,17には現時点の起重機船1のベクトル21が表示され、行き会いが予想される箇所で警告表示部27が表示される。この例では、対象船舶4が現在の航路では、3分後に円23A上の位置において行き合いが予想され、この箇所が赤などの警報色で点滅すると共に、警報音が発せられるようにパソコン13が制御する。
【0117】
尚、
図19に示すように、直線表示部たるベクトル24の先端に矢印28を設けてもよく、この矢印28は同様に他のベクトル21,25に設けることができる。
【0118】
このように本実施例では、表示モニタ14,17は、所定の傾斜角度を表示する所定角度表示円84と、傾斜方向の基準を表示する傾斜方向表示部たる目盛り87と、測定データによりケーソン67の傾斜角度及び傾斜方向を示す傾斜指示部たる傾斜指示点86とを備えるから、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0119】
以下、実施例上の効果として、起重機船1と、起重機船1に設けられ、AIS機器3を搭載した対象船舶4のAIS情報を受信するAIS機器2と、GNSS受信器8を備え、GNSS受信器8で得られた自船の船舶情報を起重機船1に送る従局船6と、AIS情報による対象船舶4の船舶情報と、起重機船1の船舶情報及びGNSS受信器8で得られた従局船6の船舶情報とに基づいて、起重機船1,従局船6の一方及び対象船舶4の針路情報・位置情報を直線表示部たるベクトル21,26,24で表示すると共に、起重機船1及び従局船6の一方である起重機船1を中心にして、起重機船1及び従局船6の一方である起重機船1の複数の設定時間経過後の予想位置に対応する同心円22を表示し、起重機船1及び従局船6の一方である起重機船1の複数の設定時間経過後の予想位置における対象船舶4と接近が想定される箇所を、同心円22と共に表示する表示モニタ14,17と、を備えるから、起重機船1及び従局船6の一方の複数の設定時間経過後の位置における対象船舶4と接近が想定される箇所を、同心円22と共に表示するため、起重機船1及び従局船6の一方と対象船舶4との今後の位置関係を直感的に把握することができ、昼夜を問わずに衝突回避行動や航路への進入・横断判断を早期に行うことができる。
【0120】
特に、起重機船1及び従局船6の一方がそのままの速度で最大移動できる位置を同心円22が表わすため、速度を変えずに、操舵により対象船舶4との近接を回避することができる。
【0121】
また、起重機船1と、起重機船1に設けられ、AIS機器3を搭載した対象船舶4のAIS情報を受信するAIS機器2と、GNSS受信器8を備え、GNSS受信器8で得られた自船の船舶情報を起重機船1に送る従局船6と、起重機船1に設けられ、AIS機器
を搭載しない対象船舶5の船舶情報を取得するレーダー装置11と、AIS情報による対象船舶4の船舶情報と、レーダー装置11によるAIS機器を搭載しない対象船舶5の船舶情報と、起重機船1の船舶情報及びGNSS受信器8で得られた従局船6の船舶情報とに基づいて、起重機船1,従局船6及び対象船舶4,5の針路情報・位置情報を直線表示部たるベクトル21,26,24,25で表示すると共に、起重機船1及び従局船6の一方である起重機船1を中心にして、起重機船1及び従局船6の一方である起重機船1の複数の設定時間経過後の予想位置に対応する同心円22を表示し、起重機船1及び従局船6の一方である起重機船1の複数の設定時間経過後の予想位置における対象船舶4,5と接近が想定される箇所を、同心円22と共に表示する表示モニタ14,17と、を備えるから、対象船舶のAIS機器の搭載・非搭載に係らず、起重機船1及び従局船6の一方の複数の設定時間経過後の位置における対象船舶4,5と接近が想定される箇所を、同心円22と共に表示するため、起重機船1及び従局船6の一方と対象船舶4,5との今後の位置関係を直感的に把握することができ、昼夜を問わずに衝突回避行動や航路への進入・横断判断を早期に行うことができる。
【0122】
特に、起重機船1及び従局船6の一方がそのままの速度で最大移動できる位置を同心円22が表わすため、速度を変えずに、操舵により対象船舶4,5との近接を回避することができる。
【0123】
また、実施例上の効果として、複数の対象船舶4,5が表示モニタ14,17上に表示される場合、同心円22の外側の円23Bを通る又は外側の円23Bに近接するベクトル24,25のみを表示するように切り替えることができるため、行き会いの判断の対象となる船舶を絞り込むことができる。さらに、起重機船1の設定時間表示部37は四角の枠で囲われて表示され、起重機船1と対象船舶4とで、設定時間表示部37,37の表示形態が異なるから、同一画面に表示しても、紛れることなく正しく表示できる。
【実施例3】
【0124】
図20は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、表示モニタ14,17には、2台の傾斜計81,81に対応して2つの傾斜情報表示部82,82を表示可能に構成している。
【0125】
また、この例では、従局船6である監視船のベクトル21を表示し、このベクトル21の始点に前記船体特定情報表示部36が設けられており、この船体特定情報表示部36には、船の種類を特定するために「監視船」と表示されている。
【0126】
一方、対象船舶4,5の船体特定情報表示部36,36には、対象船舶4,5を特定する番号が表示されている。
【0127】
このように本実施例では、従局船6と対象船舶4,5の複数の設定時間経過後の予想位置を直線表示部たるベクトル21,24,24に表示する表示モニタ14,17を備えるから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0128】
また、本実施例では、複数の傾斜計81,81を用い、複数の傾斜計81,81の測定データにより傾斜情報を表示する傾斜情報表示部82,82が、1つの表示モニタ14,17に同時に表示可能であるから、
図20に示すように、下側の傾斜情報表示部82に、データ有効時間が経過したことを知らせる「データがきていません」などの警告表示94Aが表示されることにより、上側の傾斜情報表示部82を確認して傾斜情報を得ることができ、しかも、データ有効時間設定部94によりデータ有効時間を設定することができるから、有効時間内の最新の傾斜情報を得ることができる。
【実施例4】
【0129】
図21は本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。同図は、傾斜計設定表示部93を使用して設定した傾斜情報表示部82の例を示す。
【0130】
図21(A)の「傾斜計1」では、表示円設定部95を3.0°、目盛り値設定部96を0.5°、ピッチアップ部97Aを2.0°、ピッチダウン部97Bを1.5°、ロールレフト部97Cを2.5°、ロールライト部97Dを1.0°に設定している。
【0131】
図21(B)の「傾斜計2」では、表示円設定部95を5.0°、目盛り値設定部96を0.5°、ピッチアップ部97Aを3.0°、ピッチダウン部97Bを3.0°、ロールレフト部97Cを1.0°、ロールライト部97Dを1.0°に設定している。
【0132】
いずれの場合も、ピッチアップ部97A,ピッチダウン部97B,ロールレフト部97C及びロールライト部97Dの値を湾曲線部により連結した閉曲線によって許容角度範囲85が表示される。
【0133】
図21(B)のようにピッチに比べてロールの許容値を小さく設定することにより、許容角度範囲85は、進行方向に長く形成され、略楕円形状をなす。そして、例えばケーソン67が進行方向に長く、進行方向と交差する幅方向に短いと、曳航中に左右に傾き易いから、左右における傾斜角の発生を小さくしたい場合、上記の設定が有効となる。
【0134】
上記のように、1つの傾斜計81に対応する傾斜情報表示部82の外枠82Wの大きさに対して、所定角度表示円84の直径の比率は変わらず、所定角度表示円84の表す角度に対応して、目盛り値設定部96により設定された目盛り87の間隔が設定される。
【0135】
このよう本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0136】
また、実施例上の効果として、1つの傾斜計81に対応する傾斜情報表示部82の外枠82Wの大きさに対して、所定角度表示円84の直径の比率は変わらず、目盛り87の間隔が変わるから、所定角度表示円84の角度を変えても、同じ大きさの傾斜情報表示部82を表示することができ、他の船舶のベクトルなどの運行管理システムの画面と同時に表示するに適したものとなる。また、許容角度範囲85は、ピッチアップ部97A,ピッチダウン部97B,ロールレフト部97C及びロールライト部97Dをそれぞれ別々に設定可能であるから、針路方向とその幅方向で形の異なる水中構造物など形状の異なるものの傾きを適切に管理することができる。
【0137】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、傾斜指示部を円形の点で表示したが、その形状は適宜選定可能である。また、処理を行うパソコンは、実施例に限らず、どの場所に配置してもよい。また、予想位置表示部は点に限らず、角型や星型などの線と区別がつくものであれば、各種の形状を用いることができる。
【符号の説明】
【0138】
1 起重機船(船舶)
6 従局船
14 表示モニタ
17 表示モニタ
62 航路区域
67 ケーソン
67A,67A 前後外壁
67B,67B 左右外壁
70 起重機船(船舶)
70A 前面部
71 引船(船舶)
75 弾性リング体(緩衝部材)
76 大回しロープ
76T 端部
81 傾斜計(傾斜測定手段)
82 傾斜情報表示部
84 所定角度表示円
85 許容角度範囲
86 傾斜指示点(傾斜指示部)
87 目盛り(傾斜方向指示部)
90 ピッチ表示部(傾斜角度数値表示部)
91 ロール表示部(傾斜角度数値表示部)
101 保持吊枠
102 枠体
102A,102A 前後枠部
102B,102B 左右枠部
103 索条
111 起重機本体