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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】透明導電シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20220105BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20220105BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20220105BHJP
   H05B 3/84 20060101ALI20220105BHJP
   H05B 3/34 20060101ALI20220105BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B32B27/18 J
B32B7/02
H05B3/14 E
H05B3/84
H05B3/34
H01B5/14 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018104764
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019209501
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000109037
【氏名又は名称】ダイニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 諒
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 翔子
(72)【発明者】
【氏名】山口 将彦
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157510(JP,A)
【文献】特開2016-187929(JP,A)
【文献】特開2016-72244(JP,A)
【文献】特開2013-117584(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073474(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0091370(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0038533(KR,A)
【文献】特開2011-126162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01B 5/14
H05B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基材層A、
(B)ポリチオフェン系導電性高分子を含有する導電層B、並びに
(C)コアシェル型アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、カルボジイミド系架橋剤とを含有する保護層C、
をこの順で含む、透明導電シート。
【請求項2】
前記カルボジイミド系架橋剤の含有量が、前記樹脂100質量部に対して1~30質量部である、請求項1に記載の透明導電シート。
【請求項3】
前記保護層Cがさらに紫外線吸収剤を含有する、請求項1又は2に記載の透明導電シート。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である、請求項3に記載の透明導電シート。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤の含有量が、前記樹脂100質量部に対して1~30質量部である、請求項3又は4に記載の透明導電シート。
【請求項6】
前記ポリチオフェン系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1~5のいずれかに記載の透明導電シート。
【請求項7】
前記導電層Bが、前記ポリチオフェン系導電性高分子に対するポリアニオンドーパントを含有する、請求項1~6のいずれかに記載の透明導電シート。
【請求項8】
前記ポリアニオンドーパントがポリスチレンスルホン酸である、請求項7に記載の透明導電シート。
【請求項9】
前記導電層Bが、ポリチオフェン系導電性高分子及び沸点が150℃以上の導電性向上剤を含有する導電性塗料を塗布して得られた層である、請求項1~8のいずれかに記載の透明導電シート。
【請求項10】
前記導電性向上剤がエチレングリコール及びジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の透明導電シート。
【請求項11】
電極を含む、請求項1~10のいずれかに記載の透明導電シート。
【請求項12】
透明面状発熱体用である、請求項1~11のいずれかに記載の透明導電シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電シート等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂基材層上に導電層が配置されてなる透明導電シートが、透明面状発熱体(フィルムフィーター等)、タッチパネル、有機ELディスプレイ、太陽電池等の多様な分野において利用されている。導電層材料として、ITO等の金属材料、PEDOT等の導電性高分子、カーボンナノチューブ等の炭素材料等の種々の材料が使用されることが報告されている。また、透明導電シートが使用される環境中の水分による悪影響を低減するために、導電層上に保護層を設けることもある。
【0003】
特許文献1には、チオフェン系導電性高分子及びポリヒドロキシ化合物を含有する導電層を採用することにより、透明性、発熱性能、耐水性、耐薬品性等の性能が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開第2016-126913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、研究を進める中で、透明導電シートとして必要な透明性、並びに透明面状発熱体としての利用を考慮した場合に必要な発熱性能及び低抵抗性に加え、製品品質に対する要求の近年の高まりに伴い、また種々の環境(例えば屋外)でのより長期間の使用を見据え、より過酷な条件下(例えば、熱湿(高温高湿)条件下、光(紫外線)照射条件下)でも透明性及び低抵抗性が損なわれ難いことが重要である点に着目した。そして、導電層材料の種類、保護層材料の種類、及びこれらの組み合わせが、上記性能に大きく影響することを見出した。
【0006】
そこで、本発明は、透明性、発熱性能、低抵抗性、耐熱湿性(熱湿条件下でも、透明性及び低抵抗性がより長く保たれる性能)、及び耐光性(光照射条件下でも、透明性及び低抵抗性がより長く保たれる性能)を備える、導電層及び保護層を含む透明導電シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究を進めた結果、(A)基材層A、(B)ポリチオフェン系導電性高分子を含有する導電層B、並びに(C)コアシェル型アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、カルボジイミド系架橋剤とを含有する保護層C、をこの順で含む、透明導電シートであれば、上記課題を解決できることを見出した。この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0009】
項1. (A)基材層A、(B)ポリチオフェン系導電性高分子を含有する導電層B、並びに(C)コアシェル型アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、カルボジイミド系架橋剤とを含有する保護層C、をこの順で含む、透明導電シート。
【0010】
項2. 前記カルボジイミド系架橋剤の含有量が、前記樹脂100質量部に対して1~30質量部である、項1に記載の透明導電シート。
【0011】
項3. 前記保護層Cがさらに紫外線吸収剤を含有する、項1又は2に記載の透明導電シート。
【0012】
項4. 前記紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である、項3に記載の透明導電シート。
【0013】
項5. 前記紫外線吸収剤の含有量が、前記樹脂100質量部に対して1~30質量部である、項3又は4に記載の透明導電シート。
【0014】
項6. 前記ポリチオフェン系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、項1~5のいずれかに記載の透明導電シート。
【0015】
項7. 前記導電層Bが、前記ポリチオフェン系導電性高分子に対するポリアニオンドーパントを含有する、項1~6のいずれかに記載の透明導電シート。
【0016】
項8. 前記ポリアニオンドーパントがポリスチレンスルホン酸である、項7に記載の透明導電シート。
【0017】
項9. 前記導電層Bが、ポリチオフェン系導電性高分子及び沸点が150℃以上の導電性向上剤を含有する導電性塗料を塗布して得られた層である、項1~8のいずれかに記載の透明導電シート。
【0018】
項10. 前記導電性向上剤がエチレングリコール及びジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1種である、項9に記載の透明導電シート。
【0019】
項11. 電極を含む、項1~10のいずれかに記載の透明導電シート。
【0020】
項12. 透明面状発熱体用である、項1~11のいずれかに記載の透明導電シート。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、透明性、発熱性能、低抵抗性、耐熱湿性(熱湿条件下でも、透明性及び低抵抗性がより長く保たれる性能)、及び耐光性(光照射条件下でも、透明性及び低抵抗性がより長く保たれる性能)を備える、導電層及び保護層を含む透明導電シートを提供することができる。該透明導電シートは、その性質上、透明面状発熱体として、中でも屋外で使用される透明面状発熱体として、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の透明導電シートの層構成の一例を示す。
図2】本発明の透明導電シートの層構成の一例を示す。
図3】本発明の透明導電シートの層構成の一例を示す。
図4】本発明の透明導電シートの層構成の一例を示す。
図5】導電層表面上の電極の配置の一例を示す、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0024】
1.透明導電シート
本発明は、その一態様において、(A)基材層A、(B)ポリチオフェン系導電性高分子を含有する導電層B、並びに(C)コアシェル型アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、カルボジイミド系架橋剤とを含有する保護層C、をこの順で含む、透明導電シート(本明細書において、「本発明の透明導電シート」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0025】
<1-1.基材層A>
基材層Aは、透明導電シートの基材として使用され得る樹脂(基材用樹脂)を含有する限り、特に制限されない。
【0026】
基材層Aは、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、基材用樹脂以外の成分が含まれていてもよい。その場合、基材層A中の基材用樹脂の合計量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、100質量%未満である。
【0027】
基材用樹脂としては、特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。これらの中でも透明性等の観点から、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート等が挙げられ、より好ましくはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0028】
基材用樹脂は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0029】
基材層Aの厚みは、用途に応じた透明性及び強度が確保される限り、特に制限されない。基材層Aの厚みは、例えば2~500μm、好ましくは10~400μm、より好ましくは20~300μm、さらに好ましくは50~200μm、よりさらに好ましくは70~150μmである。
【0030】
基材層Aの層構成は特に制限されない。基材層Aは、1種単独の基材層Aから構成されるものであってもよいし、組成が同一又は異なる2種以上の基材層Aが複数組み合わされたものであってもよい。
【0031】
基材層Aは、各種表面処理が施されたものであってもよい。表面処理としては、例えばコロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理等が挙げられる。
【0032】
基材層Aの導電層B側とは反対側の表面、及び/又は基材層Aと導電層Bとの間には、他の層が配置されていてもよい。他の層としては、例えば易接着層、帯電防止層、離型層、ブリードアウト成分封止層、屈折率調整層、光線透過率向上層、防曇層、バリアコート層、ハードコート層、粘着剤層等が挙げられる。
【0033】
<1-2.導電層B>
導電層Bは、ポリチオフェン系導電性高分子を含有する限り、特に制限されない。導電層Bは、基材層A上に配置される。換言すれば基材層Aの有する2つの主面の少なくとも1方の表面上に配置される(例えば、図1及び2)。
【0034】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、例えばポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が挙げられる。
【0035】
ポリチオフェン系導電性高分子は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0036】
導電層Bは、さらに、ポリチオフェン系導電性高分子に対するポリアニオンドーパントを含有することが好ましい。これにより、導電性をより向上させることができる。ポリアニオンドーパントとしては、例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはスルホン酸基を有する高分子が挙げられ、より好ましくはポリスチレンスルホン酸が挙げられる。
【0037】
ポリアニオンドーパントは、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0038】
ポリアニオンドーパントを含有する場合、少なくとも一部のポリチオフェン系導電性高分子と少なくとも一部のポリアニオンドーパントとが導電性複合体を形成する。このような導電性複合体として、好ましくはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との複合体(PEDOT/PSS)が挙げられる。
【0039】
導電層Bは、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、ポリチオフェン系導電性高分子(ポリアニオンドーパントを含有する場合は、ポリチオフェン系導電性高分子及びポリアニオンドーパント)以外の成分(例えば、バインダー等)が含まれていてもよい。その場合、導電層B中のポリチオフェン系導電性高分子(ポリアニオンドーパントを含有する場合は、ポリチオフェン系導電性高分子及びポリアニオンドーパント)の合計量は、例えば50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%未満である。
【0040】
導電層Bの厚みは、特に制限されない。導電層Bの厚みは、例えば0.1~5μm、好ましくは0.1~2μm、より好ましくは0.1~1μmである。
【0041】
導電層Bの層構成は特に制限されない。導電層Bは、1種単独の導電層Bから構成されるものであってもよいし、組成が同一又は異なる2種以上の導電層Bが複数組み合わされたものであってもよい。
【0042】
<1-3.保護層C>
保護層Cは、コアシェル型アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂(保護層用樹脂)と、カルボジイミド系架橋剤とを含有する限り、特に制限されない。保護層Cは、導電層Bの基材層Aとは反対側の表面上に配置される(例えば、図1及び2)。
【0043】
コアシェル型アクリル樹脂は、疎水性アクリル樹脂を主成分とするコア部と親水性アクリル樹脂を主成分とするシェル部とからなるコアシェル型アクリル樹脂である限り、特に制限されない。
【0044】
シェル部を構成する親水性アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量が1,000~100,000であり、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基等のカチオン性又はアニオン性の官能基をポリマー中5~60質量%有するカチオン性又はアニオン性アクリル樹脂を挙げることができる。
【0045】
シェル部中の親水性アクリル樹脂の含有量は、シェル部100質量%に対して、例えば50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%未満である。
【0046】
コア部を構成する疎水性アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量が100,000より大きく、好ましくは500,000~2,000,000、より好ましくは800,000~1,200,000であり、親水性官能基がポリマー中20質量%以下、好ましくは1~5質量%の疎水性アクリル樹脂を挙げることができる。
【0047】
コア部は紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、例えば、後述の、保護層Cに配合される紫外線吸収剤と同様のものを挙げることができる。
【0048】
コア部中の疎水性アクリル樹脂の含有量は、コア部100質量%に対して、例えば50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%未満である。
【0049】
コアシェル型アクリル樹脂のTgは、好ましくは35~55℃、より好ましくは40~50℃である。
【0050】
コアシェル型アクリル樹脂の平均粒子径は、好ましくは0.05~0.20μm、より好ましくは0.08~0.15μmである。
【0051】
コアシェル型アクリル樹脂は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0052】
ポリエステル樹脂としては、特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、アクリルなどによる変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂を自己架橋型を含めて使用することができる。
【0053】
ポリエステル樹脂は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0054】
カルボジイミド系架橋剤は、分子中に複数のカルボジイミド基を有する樹脂である限り特に制限されない。カルボジイミド系架橋剤は、例えば、触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用い、各種イソシアネート化合物を無溶媒又は不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応させて合成することができる。具体的には有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造したポリカルボジイミド樹脂を例示することができる。該反応は、カルボジイミド化触媒の存在下で行われる。
【0055】
有機ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を使用することができ、具体的には、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート等を例示することができる。
【0056】
このような反応で得られるカルボジイミド系架橋剤は、末端にイソシアネート基を有しており、本発明ではこのような末端イソシアネート基含有ポリカルボジイミド樹脂であっても、末端イソシアネート基を変性したポリカルボジイミド樹脂であってもどちらでも使用することができる。例えば、ジイソシアネートから合成したポリカルボジイミド樹脂の末端にモノイソシアネート化合物を反応させて、末端イソシアネートを変成させた化合物を用いることもできる。さらにこの他にも、封止剤として末端イソシアネートと反応し得る化合物として、脂肪族化合物、芳香物化合物、脂環族化合物であって、-OH基を持つメタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N-メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等;=NH基を持つジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等;-NH2基を持つブチルアミン、シクロヘキシルアミン等;-COO基を持つコハク酸、安息香酸、シクロヘキサン酸等;-SH基を持つエチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等やエポキシ基等を有する化合物を使用することができる。
【0057】
カルボジイミド系架橋剤のNCN当量(カルボジイミド基1molあたりの化学式量)は、特に制限されないが、例えば100~1000、好ましくは200~700、より好ましくは300~550、さらに好ましくは350~500である。
【0058】
カルボジイミド系架橋剤は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0059】
カルボジイミド系架橋剤の含有量は、特に制限されないが、保護層用樹脂100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは5~30、より好ましくは10~25、さらに好ましくは15~25質量部、よりさらに好ましくは15~22質量部である。
【0060】
保護層Cは、保護層用樹脂が含有する成分として、及び/又はそれ以外に別途添加される成分として、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0061】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸及び3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖及び直鎖アルキル)のエステル化合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2-[2-ヒドロキシ-3-(3、4、5,6-テトラヒドロフタルイミドーメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0062】
紫外線吸収剤は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0063】
紫外線吸収剤の含有量は、特に制限されないが、保護層用樹脂100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは5~30、より好ましくは10~30、さらに好ましくは15~25質量部である。
【0064】
保護層Cは、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、保護層用樹脂及びカルボジイミド系架橋剤(紫外線吸収剤を含有する場合は、保護層用樹脂、カルボジイミド系架橋剤、及び紫外線吸収剤)以外の成分が含まれていてもよい。その場合、保護層C中のポリチオフェン系導電性高分子保護層用樹脂及びカルボジイミド系架橋剤(紫外線吸収剤を含有する場合は、保護層用樹脂、カルボジイミド系架橋剤、及び紫外線吸収剤)の合計量は、例えば50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%未満である。
【0065】
保護層Cの厚みは、特に制限されない。保護層Cの厚みは、例えば5~200μm、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~50μm、さらに好ましくは15~30μmである。
【0066】
保護層Cの層構成は特に制限されない。保護層Cは、1種単独の保護層Cから構成されるものであってもよいし、組成が同一又は異なる2種以上の保護層Cが複数組み合わされたものであってもよい。
【0067】
<1-4.電極>
本発明の透明導電シートは、さらに電極を含むことが好ましい。電極は、透明導電シートに通電できるような態様で配置される限り特に制限されない。例えば、基材層Aと導電層Bとの間に、導電層Bに接触可能な態様(図3)で、或いは導電層Bと保護層Cとの間に、導電層Bに接触可能な態様(図4)で、電極が配置される。また、通電される面積がより広くなるように、電極は、透明導電シートの両端に配置されることが好ましい。
【0068】
<1-5.特性>
本発明の透明導電シートは、可視光透過率が、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。可視光透過率は、紫外可視近赤外分光光度計で測定される値である。
【0069】
本発明の透明導電シートは、電極間抵抗が、好ましくは150~600Ω、より好ましくは200~500Ωである。電極間抵抗は、両端に電極が配置された本発明の透明導電シート(電極間距離40mm)に5V、10V、20Vの電圧を印加し、それぞれの場合について電圧印加時の電流値から抵抗を算出し、その平均値とることによって得られる値である。
【0070】
本発明の透明導電シートは、50℃95RH%条件下で500時間静置前後の電極間抵抗の変化率が、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、さらに好ましくは10%未満、よりさらに好ましくは5%未満である。
【0071】
本発明の透明導電シートは、カーボンアーク灯試験(光照射(照度:50mW/cm)下に100時間静置)後の電極間抵抗の変化率が、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、さらに好ましくは10%未満、よりさらに好ましくは5%未満である。
【0072】
2.製造方法
本発明の透明導電シートは、基材層A(又は基材層Aを含む積層体)の表面に導電層B用塗料を塗布して導電層Bを形成する工程、及び導電層B(又は基材層A及び導電層Bを含む積層体)の基材層Aとは反対側の表面上に保護層C用塗料を塗布して保護層Cを形成する工程、を含む方法により製造することができる。
【0073】
導電層B用塗料は、導電層Bの上記材料に加え、溶媒を含有する。また、保護層C用塗料は、保護層Cの上記材料に加え、溶媒を含有する。
【0074】
溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、各種有機溶媒、これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0075】
導電層B用塗料は、さらに導電性向上剤を含有することが好ましい。導電性向上剤は、導電層Bを形成する際の乾燥により蒸散するが、その際に導電性ポリチオフェン系導電性高分子及び/又はこれを含有する導電性複合体の配向を制御することで、導電層Bの導電性を向上させるものと推定される。
【0076】
導電性向上剤としては、沸点が、例えば100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上の有機溶媒を使用することができる。該沸点の上限は、例えば250℃、好ましくは220℃、より好ましくは200℃である。導電性向上剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはエチレングリコール、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0077】
塗布する方法は、特に制限されない。例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗布方式を用いることができる。
【0078】
塗布後は、乾燥させることが好ましい。乾燥温度は、例えば50~200℃、好ましくは70~170℃、より好ましくは90~150℃である。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なり得るが、例えば30秒間~15分間、好ましくは1分間~10分間、より好ましくは2分間~5分間である。
【0079】
3.用途
本発明の透明導電シートは、その透明性及び導電性を必要とする各種用途、例えば透明面状発熱体; 液晶、プラズマ、フィールドエミッション等の各種ディスプレイ方式のテレビ、携帯電話等の各種電子機器のタッチパネルや表示素子における透明電極; 太陽電池、電磁波シールド材、電子ペーパー、エレクトロルミネッセンス調光素子等における透明電極; 電解めっきプライマー等の用途に用いることができる。
【0080】
これらの中でも、本発明の透明導電シートの特性(特に、発熱性能、耐熱湿性、耐光性等)を特に発揮できるという観点から、透明面状発熱体、中でも屋外で使用される透明面状発熱体として用いることが好ましい。透明面状発熱体は、例えば防曇、防霜、除曇、除霜機能が求められる、乗用車、トラック、電車等の車両、飛行機、冷凍ショーケース、建物等のガラス; 信号、照明等の発光体(特に、LED発光体)に利用することができる。
【実施例
【0081】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0082】
(1)導電シートの製造
(1-1)材料
<基材>
PETフィルム(厚み:100μm、易接着処理)(A4300、東洋紡)。
【0083】
<電極用ペースト>
導電性ペースト(銀+カーボン混合品)(ドータイト(登録商標)XA-492、藤倉化成)。
【0084】
<導電層用塗料>
(a)ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)含有塗料(導電性向上剤として、エチレングリコール(EG)含有)(デナトロン(登録商標)PT-436、ナガセケムテックス)
(b)ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)含有塗料(導電性向上剤として、エチレングリコール(EG)含有)(PED200NE、化研産業)
(c)ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)含有塗料(導電性向上剤として、ジメチルスルホキシド(DMSO)含有)(デナトロンPT-436、ナガセケムテックス)
(d) カーボンナノチューブ分散液( WS Gen.2.3、KH Chemicals)にポリエステル樹脂を配合して作成した塗料。
【0085】
<保護層用塗料>
(A)コアシェル型アクリル樹脂含有塗料(水系、コア:疎水性アクリル(UV吸収剤含、樹脂100質量部に対して22質量部(固形分換算))+シェル:親水性アクリル)(SE-2915E、大成ファインケミカル)
(B)コアシェル型アクリル樹脂含有塗料(水系、コア:疎水性アクリル(UV吸収剤含)+シェル:親水性アクリル)(SE-2915E、大成ファインケミカル)+カルボジイミド系架橋剤(カルボジライト(登録商標)SV-02、日清紡ケミカル)(コアシェル型アクリル樹脂100質量部に対して20質量部(固形分換算))
(C)ポリエステル樹脂含有塗料(水系、自己架橋型、UV吸収剤非含有)(GX-1080、互応化学工業)
(D)ポリエステル樹脂含有塗料(水系、自己架橋型、UV吸収剤非含有)(GX-1080、互応化学工業)+カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトSV-02、日清紡ケミカル)((ポリエステル樹脂100質量部に対して20質量部(固形分換算))+水系用UV吸収剤(メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物)(TINUVIN(登録商標)1130、BASF)(ポリエステル樹脂100質量部に対して15質量部(固形分換算))
(E)アクリル樹脂含有塗料(UV吸収剤非含有)(TOCRYL(登録商標)、トーヨーケム)
(F)アクリル樹脂含有塗料(UV吸収剤非含有)(TOCRYL、トーヨーケム)+水系用UV吸収剤(TINUVIN1130、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)(アクリル樹脂100質量部に対して15質量部(固形分換算))
(G)アクリル樹脂含有塗料(溶剤系、UV吸収コーティング剤)(UV-G13、日本触媒)
(H)四フッ化エチレン含有塗料(UV吸収剤非含有)(ゼッフル(登録商標)GK-580、ダイキン工業)
(I)三フッ化エチレン含有塗料(UV吸収剤非含有)(オブリガード(登録商標)SS0057、AGCコーテック)。
【0086】
(1-2)製造工程
基材の一方の表面に、ワイヤーバー(番手:#20)を用いて導電層用塗料を塗工して、テンターに貼り付けて、120℃で3分間熱風乾燥して、保護層非含有導電シートを得た(導電層厚み0.4μm)。図5の模式図のように、保護層非含有導電シートの導電層表面の両端に電極用ペーストを厚み10μm以上且つ幅1cmになるように塗工して、保護層非含有電極付き導電シートを得た。保護層非含有電極付き導電シートの導電層表面及び電極上に、ワイヤーバー(番手:#32)を用いて保護装用塗料を塗工して、テンターに貼り付けて、120℃で3分間熱風乾燥して、導電シート(保護層含有、電極付き)を得た(保護層厚み20μm)。
【0087】
(2)評価
(2-1)透明性
測定機器として紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製:V-770 Spectrophotometer) 測定波長:780-300nm)を使用して、保護層非含有導電シート又は導電シートの可視光透過率を測定した。可視光透過率が85%以上の場合を◎、75%以上85%未満の場合を○、75%未満の場合を×と評価した。
【0088】
(2-2)表面抵抗率
低抵抗率計(LorestaGP MCP-T610(三菱ケミカルアナリテック社製))を使用し、JIS K 7194に準拠して表面抵抗率を測定した。測定サンプルとしては、50mm×80mmの保護層非含有導電シートを用いた。測定は計3回行い、3回の平均値を代表値とした。
【0089】
(2-3)電極間抵抗
導電シートの両電極の端(同じ側)に電源(PAN55-3 : オリックス・レンテック)を接続し、任意の電圧(5V/10V/20V)をかけ、その時の電流値を読み取った。R=V/I より電極間抵抗を計算した。測定サンプルとしては、電極間40mm、電極幅5mm、幅65mm、長さ50mmの導電シートを用いた。各電圧(5V/10V/20V)印加時の抵抗値を平均した値を代表値とした。
【0090】
(2-4)発熱性能(初期)
導電シートの両電極に電源(PAN55-3 : オリックス・レンテック)を接続し、電圧(10V/20V/30V/40V/50V)をかけた。通電開始から10分後に、サンプル中央の表面温度をサーモグラフィー(FLIR i60 : 日本バーンズ社製)を用いて測定した。表1に示す値は、50V印加時の発熱温度(表面温度)である。測定サンプルとしては、電極間120mm、電極幅10mm、幅160mm、長さ50mmの導電シートを用いた。
【0091】
(2-5)発熱性能(熱湿後)
上記項(2-4)で発熱性能を測定したサンプルを、温度50℃・湿度95%環境下に静置して、500時間後に、再度サンプルの発熱性能を上記項(2-4)と同様の方法で測定した。
【0092】
(2-6)耐熱湿性
測定サンプルとして、電極間40mm、電極幅5mm、幅65mm、長さ50mmの導電シートを用い、該導電シートの電極間抵抗を測定した(熱湿試験前・0h)。測定したサンプルを、温度50℃・湿度95%環境下に静置して、500時間後に、再度サンプルの電極間抵抗を測定した(熱湿試験後・500h)。0hと500hの電極間抵抗値から抵抗変化率(=[(500h測定値-0h測定値)/0h測定値]×100)を算出した。抵抗変化率について、20%未満の場合を◎、20%以上の場合を×と評価した。また、外観について、変化が無い場合を◎、白濁した場合を×と評価した。
【0093】
(2-7)耐光性
測定サンプルとして、電極間40mm、電極幅5mm、幅65mm、長さ50mmの導電シートを用い、該導電シートの電極間抵抗を測定した(耐光性試験前・0h)。測定したサンプルを、カーボンアーク灯試験(照度:50mW/cm、BPT温度:63℃、湿度:50%)に供して100時間後に、再度サンプルの電極間抵抗を測定した(耐光性試験後・100h)。0hと100hの電極間抵抗値から抵抗変化率(=[(100h測定値-0h測定値)/0h測定値]×100)を算出した。抵抗変化率について、20%未満の場合を◎、20%以上の場合を×と評価した。また、外観について、変化が無い場合を◎、白濁した場合を×と評価した。
【0094】
(3)結果
結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【符号の説明】
【0096】
1 基材層A
2 導電層B
3 保護層C
4 電極
図1
図2
図3
図4
図5