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特許6991964疎水的に改質された酸化セリウム粒子およびそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】疎水的に改質された酸化セリウム粒子およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/16 20060101AFI20220105BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20220105BHJP
   C01F 17/00 20200101ALI20220105BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20220105BHJP
【FI】
C08L27/16
C08L27/18
C08K3/22
C08K5/09
C08K9/04
C01F17/00
H01L31/04 560
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018514996
(86)(22)【出願日】2016-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2016072538
(87)【国際公開番号】W WO2017050894
(87)【国際公開日】2017-03-30
【審査請求日】2019-08-22
(31)【優先権主張番号】15306477.9
(32)【優先日】2015-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ビュイセット, ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】ダレンコン, ローリアーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ル-メルシエ, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】トニオロ, パオロ
(72)【発明者】
【氏名】カレッラ, セレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ミオッツォ, ルチャーノ
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-284651(JP,A)
【文献】特開昭59-045925(JP,A)
【文献】特開2004-262974(JP,A)
【文献】特表2006-505631(JP,A)
【文献】特開平05-070648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-3/40
C08K 5/00-5/59
C08K 9/00-9/12
C01F 17/00-17/38
H01L 31/00-31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質酸化セリウム、および少なくとも1種のポリマーを含み、
改質酸化セリウムは、10nm~90nmの平均粒子サイズを有する酸化セリウム粒子、9~50個の炭素原子を有し、任意選択的に官能基を有する、線状または分岐の、脂肪族または芳香族の、酸、ならびにそれらの塩および誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の両親媒性物質とを含み、
ポリマーが、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を含むポリマー、ならびにエチレンとクロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンから選択される少なくとも1種のモノマーとに由来する繰り返し単位を含むポリマーからなる群から選択されるフッ素化ポリマーである、組成物。
【請求項2】
改質酸化セリウム粒子がポリマー中に分散している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
両親媒性物質が、10~40個の炭素原子を有する線状または分岐の脂肪族カルボン酸およびそれらの塩からなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
両親媒性物質がイソステアリン酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の両親媒性物質が、改質酸化セリウム粒子の総重量に対して少なくとも0.5重量%、最大でも30.0重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
酸化セリウム粒子が、15nm~60nmの平均粒子サイズを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
酸化セリウム粒子が、20~65nmの平均サイズを有し、両親媒性物質が、改質酸化セリウムの総重量に対して4.0~15.0重量%の間に含まれる量でのイソステアリン酸またはその塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
酸化セリウムがセリウム(IV)結晶性酸化物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
酸化セリウム粒子が、平均粒子サイズの値の最大でも30%の標準偏差を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ポリマーが熱可塑性ポリマーである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
改質酸化セリウムが、組成物の総重量に対して少なくとも0.5重量%、最大でも10.0重量%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
フィルムの形態の、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
フィルムの厚さが15~800μmである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を含む物品。
【請求項15】
請求項14に記載の物品または請求項12もしくは13に記載のフィルムの形態の組成物を含む光起電性パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質表面を有する酸化セリウム粒子、それらの製造ならびにポリマー組成物および光起電性パネルなどの物品でのそれらの使用に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年9月23日出願の欧州特許出願第15306477.9号の優先権を主張するものであり、その内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に完全に援用される。用語または表現の明確さに影響を与えるであろう本出願とこの欧州出願との間の何らかの矛盾がある場合、それは本出願のみに言及されるべきである。
【背景技術】
【0003】
酸化セリウムのUV吸収特性はよく知られている。ナノサイズの酸化セリウム粒子を含むポリマー組成物を調製することもまた知られている。例えば、欧州特許出願公開第1517966A号明細書(RHODIA ELECTRONICS AND CATALYSIS)2005年3月30日は、ナノサイズの酸化セリウム粒子の水性コロイド状分散系、ならびに特に木材保護用途向けの、ペイントおよびワニスのUV放射光に対する耐性を向上させるためのそれらの使用を開示している。欧州特許出願公開第1517966A号明細書は、ポリマー材料と、酸化セリウム粒子のコロイド状分散系と、少なくとも3つの酸性官能基を有する少なくとも有機酸と、アンモニウムまたはアミンとを含む水性分散系を開示している。具体的には、欧州特許出願公開第1517966A号明細書は、約7~9nm(透過電子顕微鏡法、本明細書では以下、「TEM」によって測定される)のサイズを有する酸化セリウム粒子を含む、そしてクエン酸を含む分散系を開示している。クエン酸の存在は、水性媒体中の酸化セリウム粒子の安定性を向上させるが、それは、有機媒体中に分散するそれらの能力を向上させない。
【0004】
10~50個の炭素原子、好ましくは15~25個の炭素原子を含有する両親媒性酸の存在下での1~5nm(TEMによって測定される)の粒子サイズを有する酸化セリウム粒子の分散系は、国際公開第01/10545A号パンフレット(RHODIA CHIMIE)2001年2月15日に開示されている。
【0005】
これらの分散系、ならびにそれらから得られる粉末は、しかし、マトリックスの色が維持されなければならない用途での使用にそれらを適さないものにする暗色で特徴づけられる。両親媒性物質の存在は一般に、酸化セリウムの暗色を増加させるという効果を有する。
【0006】
Chem.Eng.J.2011,168,1346-1351(Veriansyahら)は、それらの表面がデカン酸またはオレイン酸によって改質されてもよい、超臨界メタノール中で調製された酸化セリウムナノ粒子を開示している。
【0007】
Turkish J.Chem.2014,38,388-401(Yazdaniら)は、CeOとポリ(アミド酸)とのナノ複合材料の調製を開示している。
【0008】
RSC Adv.2014,4,9048-9055(Salazar-Sandovalら)は、アミノカルボン酸によるセリアナノ粒子の安定化を開示している。
【0009】
米国特許出願公開第2009/0076207号明細書は、親水性ブロックAと疎水性ブロックBとを含む両親媒性ブロックポリマーによる無機粒子の安定化分散系を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
きちんと定められた粒子サイズの酸化セリウム粒子と、両親媒性物質とを組み合わせることによって、ナノサイズの酸化セリウム粒子の光学特性と、ポリマーマトリックス中のそれらの分散性との間の最適折衷を得ることが可能であることが今や見いだされた。粒子は、ポリマー中に十分に分散させることができる。粒子がその中に分散しているポリマーでできた透明なフィルムを得ることができる。
【0011】
本発明の第1目的はしたがって、10~90nmの平均粒子サイズを有する酸化セリウム粒子と、少なくとも1種の両親媒性物質とを含む改質酸化セリウムである。少なくとも1種の両親媒性物質は一般に、酸化セリウム粒子の表面上に典型的には吸着されて、酸化セリウム粒子の表面上にある。好ましくは、酸化セリウム粒子は、少なくとも1種の両親媒性物質でコートされている。
【0012】
本出願における平均粒子サイズは、X線回折技術によるか、BET表面積の測定によるかのどちらかで測定され、両技術とも本明細書で以下、より正確に定義される。それ故、改質酸化セリウム粒子の平均粒子サイズは、X線回折技術によって測定されるように10nm~90nmであってもよい。本発明はまた、BET法によって測定されるように10nm~90nmの平均粒子サイズの改質酸化セリウム粒子を包含する。
【0013】
表現「両親媒性物質」は、水不溶性炭化水素鎖に結合した少なくとも1つの極性水溶性基を含む化合物に言及するために本明細書では用いられる。両親媒性物質の効果は、ポリマーマトリックス中での酸化セリウムの粒子のより良好な分散を促進することである。
【0014】
少なくとも1種の両親媒性物質は、天然か合成かに関わりなく、脂肪族カルボン酸、脂肪族スルホン酸、脂肪族ホスホン酸、アルキルアリールスルホン酸およびアルキルアリールホスホン酸などの、9~50個の炭素原子を有し、任意選択的に官能基を有する線状または分岐の、脂肪族または芳香族の、酸、ならびに前記酸の塩および誘導体からなる群から選択される。
【0015】
少なくとも1種の両親媒性物質は、9~40個の炭素原子を有する、好ましくは12~25個の炭素原子を有する、線状または分岐の、脂肪族または芳香族の、カルボン酸、ならびにそれらの塩および誘導体からなる群から選択することができる。表現「カルボン酸」は、モノ-およびポリカルボン酸を含む。
【0016】
両親媒性物質は、モノカルボン酸であってもよい。モノカルボン酸の好適で、非限定的な例としては、トール油、大豆油、タロー油、アマニ油の脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、4-ヒドロキシ-安息香酸、2-エチルヘキサン酸、ナフテン酸、ヘキサン酸が挙げられる。両親媒性物質は、脂肪酸または脂肪酸の塩であってもよい。好ましくは、両親媒性物質は不飽和酸である。より好ましくは、両親媒性物質は、ステアリン酸またはイソステアリン酸、それらの異性体およびそれらの塩であってもよい。両親媒性物質は好ましくは、イソステアリン酸またはその塩がポリマー中の分散およびフィルムの透明性の観点から良好な結果をもたらすので、イソステアリン酸またはその塩であってもよい。
【0017】
両親媒性物質はポリカルボン酸、より具体的にはジカルボン酸であってもよい。ポリカルボン酸の好適で非限定的な例としては、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸が挙げられる。
【0018】
少なくとも1種の両親媒性物質はまた、例えば
CO-CH--(CHCO)-CH-(CHCO)-CH-COOH
などの、Rが1~6個の炭素原子を有するアルキル基である、式R-(CHCO) -COOHのものなどの、炭化水素鎖中にエーテル結合を含有するカルボン酸の群から選択されてもよい。
【0019】
少なくとも1種の両親媒性物質はさらに、その鎖中にCF単位、例えば、式R-(CF-COOH(式中、Rは、上で定義されたとおりであり、mは、10と18との間に含まれる)の部分フッ素化カルボン酸を含んでもよい。
【0020】
カルボン酸以外の好適な酸の中に、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トルエンホスホン酸、ラウリルスルホン酸、ラウリルホスホン酸、パルミチルスルホン酸およびパルミチルホスホン酸が挙げられてもよい。
【0021】
本発明の文脈内で、少なくとも1種の両親媒性物質はまた、式(1):
のポリオキシエチレン化アルキルエーテルホスフェート、
または式(2):
のポリオキシエチレン化ジアルキルエーテルホスフェート
(式中:同一であっても異なってもよい、R、RおよびRは、特に、2~20個の炭素原子を含有する、線状または分岐のアルキル基;フェニル基;アルキルアリール基、より特に、8~12個の炭素原子を含有するアルキル鎖を特に持った、アルキルフェニル基;またはアリールアルキル基、より特に、フェニルアリール基を表し;nは、0~12であり得る、エチレンオキシド単位の数を表し;Mは、水素、ナトリウムまたはカリウムを表す)
から選択することができる。
【0022】
特に、Rは、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オレイルまたはノニルフェニル基であり得る。
【0023】
引用することができるホスフェート型の両親媒性物質の注目に値する例は、ポリオキシエチレン(C~C10)-アルキルエーテホスフェート;ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェート;ポリオキシエチレンオレオデシルエーテルホスフェート;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスフェート;ポリオキシエチレンノニルエーテルホスフェートである。
【0024】
少なくとも1種の両親媒性物質は、式(3):
-(OC-O-R (3)
(式中、Rは、特に、4~20個の炭素原子を含有することができる線状または分岐のアルキル基であり;pは、1~20、例えば2~16、好ましくは3~12の整数であり;Rは、-CHCOOHなどのカルボン酸残基である)
のポリオキシエチレン化アルキルエーテルカルボキシレ-トからなる群から選択することができる。
【0025】
本発明の有利な実施形態において、少なくとも1種の両親媒性物質は、10~30個の炭素原子を有する、好ましくは12~25個の炭素原子を有する、より好ましくは14~20個の炭素原子を有する線状または分岐の脂肪族カルボン酸、およびそれらの塩からなる群から選択される。特に有利な実施形態において、少なくとも1種の両親媒性物質は、ステアリン酸、その異性体、特にイソステアリン酸、およびそれらの塩、例えば、アルカリ金属塩からなる群から選択される。少なくとも1種の両親媒性物質は、ステアリン酸ナトリウムもしくはマグネシウムまたはイソステアリン酸であってもよい。
【0026】
改質酸化セリウムは典型的には、改質酸化セリウムの総重量に対して少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%、より好ましくは少なくとも2.0重量%の少なくとも1種の両親媒性物質を含有する。少なくとも1種の両親媒性物質の量は、改質酸化セリウムの総重量に対して、一般に30.0重量%を超えず、より典型的にはそれは25.0重量%を超えず、好ましくはそれは20.0重量%を超えない。良好な結果は、改質酸化セリウムの総重量に対して3.0~15.0重量%の少なくとも1種の両親媒性物質の量で得られた。
【0027】
表現「酸化セリウム」は、酸化セリウム(IV)を、一般に結晶性酸化セリウム(IV)に言及するために本明細書では用いられる。好ましくは、酸化セリウムは、結晶性酸化セリウム(IV)である。
【0028】
改質酸化セリウムは、10~90nmの平均サイズを有する酸化セリウム粒子を含む。
【0029】
酸化セリウム粒子の平均サイズは、本明細書では以下「XRD」と言われる、X線回折技術を用いることによって測定することができる。XRDによって測定される平均粒子サイズの値は、2つの最も強い回折線の幅に基づいて、およびScherrer(シェラー)モデルを用いて計算されるコヒーレント範囲のサイズに相当する。このモデルは、Appl.Cryst.1978,11,102-113,“Scherrer after sixty years:a survey and some new results in the determination of the crystallite size”,J.I.Langford et al.に開示されている。
【0030】
このモデルによれば、平均サイズtは、下式:
(kは、無次元の形状係数(k=0.9)であり;
λ(ラムダ)は、放射光の波長(CuのKα線 1.5406オングストローム)であり;
H:回折ピークの中間高さでの幅であり;
s:用いられる装置におよび回折角に依存する計測幅(補正係数)であり;sは、LaB結晶の解析によって求めることができる。
θ:回折角である)
に基づいて求められる。
【0031】
酸化セリウム粒子の平均サイズは、それぞれ28.6°;47.5°および56.4°の角度での3つのそれぞれの回折ピークについて上記式に従って求められる3つのサイズt1、t2およびt3の算術平均に相当する。47.5°および56.4°でのピークが、例えばそれらがオーバーラップしているかまたははっきりしないので、サイズt2およびt3を得ることを可能にしない場合、平均サイズは、そのとき角度28.6°でのみのサイズt1に関して求められてもよい。
【0032】
酸化セリウム粒子の平均サイズはまた、窒素吸着でのBET表面積を測定することによって求められてもよい。BET表面積は一般に、標準ASTM D 3663-03に従って窒素吸着によって測定される。Micromeriticsによって商品化されている装置Tristar II 3020が、Micromeriticsによって明示されているガイドラインに従って粒子のBET表面積を自動モードで測定するために用いられる。粒子は、いかなる吸着水をも取り除くために真空下に加熱されてもよい。
【0033】
平均サイズは、式:平均サイズ(nm)=6000/(m/g単位のBET表面積×g/cm単位の密度)に基づいて求められる。酸化セリウムについては、用いられる密度は7200kg/cmである。
【0034】
酸化セリウム粒子は典型的には、最大でも85nmの、実に最大でも80nmの、好ましくは最大でも70nmの、より好ましくは最大でも65nmの、さらにより好ましくは最大でも50nmの平均サイズ(BET法を用いて測定される)を有する。
【0035】
酸化セリウム粒子は典型的には、少なくとも12nmの、実に少なくとも15nmの、典型的には少なくとも18nmの平均サイズを有する。酸化セリウム粒子の平均サイズは、少なくとも20nmの、実に少なくとも22nmの、特に少なくとも25nmのもの(BET法を用いて測定される)であってもよい。
【0036】
有利には、酸化セリウム粒子は、15nm~60nm、実に20nm~50nmの平均サイズ(BET法を用いて測定される)を有してもよい。25nm~45nmの平均サイズ(BET法を用いて測定される)の酸化セリウム粒子は、ある種の用途、例えばポリマーフィルムの製造にとりわけ有用であることが分かった。
【0037】
酸化セリウム粒子は典型的には、平均粒子サイズの値(XRDまたはBET法を用いて測定される)の最大でも30%の標準偏差の、単分散である。酸化セリウム粒子は有利には、10nm~90nmの平均サイズを、前記平均粒子サイズの値(XRDまたはBET法を用いて測定される)の最大でも30%の標準偏差で有する。
【0038】
表現「標準偏差」は、分散の平方根である、その通常の数学的意味で本明細書では用いられ、それは、式:
(式中、nは、測定において考慮に入れられる粒子の数であり、xは、粒子iのサイズであり、
は、粒子のサイズの平均値
である)
で表される。
【0039】
n粒子のサイズは、透過電子顕微鏡法(TEM)によって得られる1つ以上の写真を用いて測定される。写真は一般に、粒子を含有する懸濁液を支持体上に堆積させ、溶媒を蒸発させることによって得られる。この方法の原理は、顕微鏡下に、TEM画像の様々な領域(約10)を観察することに、および支持体上に堆積した少なくとも250個の粒子の寸法を、これらの粒子が球形粒子であると見なしながら、測定することに存する。粒子は、その周辺の少なくとも半分を規定することができる場合に特定可能であると判断される。値xは、粒子の外周を正確に再現する円の直径に相当する。この円は、「最小包含円」と見なすことができる。利用可能な粒子の特定は、ImageJ,Adobe Photoshop or Analysisなどの画像認識のためのソフトウェアを用いることによって実施することができる。上記方法により粒子のサイズを測定した後に、粒子の累積的粒度分布はそれから推定され、それは、0~100nmの範囲のいくつかの粒子サイズカテゴリーに再グループ化され、各カテゴリーの幅は1nmである。各カテゴリー中の粒子の数は、数によって粒度分布を表すための基礎データである。この方法によって測定されるような平均粒子サイズ値は、数による分布から得られる中央径(一般にd50と定義される)である。中央径は、TEM画像上で数えられる粒子の50%(数による)が、この値よりも小さい直径を有するようなものである。200,000以上までの範囲の拡大にアクセスできる透過電子顕微鏡が使用されてもよい。
【0040】
標準偏差は、酸化セリウム粒子の平均サイズ(XRDまたはBET法を用いて測定される)の値の好ましくは最大でも20%、より特に最大でも15%、さらにより特に最大でも10%のものであり得る。
【0041】
酸化セリウム粒子は、当技術分野で公知の方法に従って調製することができる。有利には、10~90nmの範囲の平均粒子サイズを有する好適な酸化セリウム粒子は、国際公開第2008/043703A号パンフレット(RHODIA OPERATIONS)2008年4月17日に開示されている方法、より具体的には国際公開第2008/043703号パンフレットの実施例1の方法に従って調製されてもよい。この方法は、CeIIIとCeIVとの混合物の組み合わせを使用する。平均サイズは、CeIV/CeIII比を変えることによって制御することができる。
【0042】
酸化セリウム粒子について提供された同じ範囲および定義の平均粒子サイズ、粒度分布および標準偏差が、改質酸化セリウムの粒子に等しく適用される。両親媒性物質の存在は、酸化セリウム粒子の粒子サイズおよび粒度分布にまったく影響を及ぼさないか、または無視できる影響を及ぼす。
【0043】
本発明の有利な実施形態において、改質酸化セリウムは、10~70nmの平均粒子サイズ(BET法を用いて測定される)を有する酸化セリウム粒子と;改質酸化セリウムの総重量に対して3.0~15.0重量%の間に含まれる量の両親媒性物質とを含む。
【0044】
本発明の別の有利な実施形態において、改質酸化セリウムは、20~65nm、好ましくは20~50nmの平均粒子サイズ(BET法を用いて測定される)を有する酸化セリウム粒子と;改質酸化セリウムの総重量に対して4.0~15.0重量%の間に含まれる量のイソステアリン酸またはその塩の1つとを含む。
【0045】
改質酸化セリウムは典型的には、固体微粒子の形態にあり、粒子は、上に定義されたような平均粒子サイズを有する。
【0046】
本発明の改質酸化セリウムは典型的には、無機粒子のコーティングのための任意の好適な方法に従って調製されてもよい。好適な方法は、実施例1に開示されるものである。
【0047】
本発明の第1実施形態によれば、改質酸化セリウムは、少なくとも1種の両親媒性物質が酸化セリウムの乾燥粒子に添加される方法に従って調製されてもよい。少なくとも1種の両親媒性物質が液体である場合、添加は、純粋な両親媒性物質、または両親媒性物質および好適な溶媒を含む液体組成物を使用して実施することができる。
【0048】
少なくとも1種の両親媒性物質が固体である場合、酸化セリウム粒子への添加を実施する前に、固体を好適な溶媒に溶解させて液体組成物を形成することが好ましい。溶媒は典型的には、両親媒性物質を溶解させることができ、そして最終生成物から容易に除去することができ、かつ、酸化セリウム粒子を溶解させない溶媒の中から選択されるであろう。
【0049】
両親媒性物質を溶媒に溶解させるかまたは分散させるのを助けるために、塩基または酸が添加されてもよい。例えば、両親媒性物質が酸の形態にある、例えばイソステアリン酸である場合、実施例1に示されているように、塩基が添加されてもよい。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、改質酸化セリウムは、液体媒体中の酸化セリウム粒子の組成物を提供する工程と;少なくとも1種の両親媒性物質を前記組成物に添加する工程と;液体媒体を除去する工程と;乾燥させる工程とを含む方法に従って調製されてもよい。
【0051】
液体媒体は典型的には、当業者に周知の能力を用いて酸化セリウム粒子のおよび少なくとも1種の両親媒性物質の性質に基づいて選択される。
【0052】
本方法の有利な実施形態において、少なくとも1種の両親媒性物質は、液体媒体中の酸化セリウム粒子の組成物に添加される。
【0053】
本発明の第2目的は、改質酸化セリウムと液体媒体とを含む分散系である。
【0054】
典型的には、液体媒体は有機溶媒である。表現「有機溶媒」は、1つの単一有機溶媒、ならびに2つ以上の有機溶媒の混合物を意味するために用いられる。液体媒体は、有機溶媒からなってもよい。
【0055】
あるいは、液体媒体は、有機溶媒と水とを含んでもよい。存在する場合、水は典型的には、液体媒体の総容積の50容積%未満を表す。有機溶媒と水とは、分散系が使用される温度で混和性であってもよい。
【0056】
有機溶媒の例として、ヘキサン、ヘプタン、オクタンまたはノナンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタンまたはシクロヘプタンなどの不活性脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、または液体ナフタレンなど芳香族炭化水素が挙げられてもよい。
【0057】
クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはクロロトルエンなどの、塩素化炭化水素もまた、有機溶媒として使用することができる。脂肪族および脂環式エーテルまたはケトン、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンまたはメシチルオキシドもまた使用することができる。
【0058】
好適な有機溶媒の中に、1~8個の炭素原子を有する酸とアルコールとの反応から誘導されるものなどの、エステル、特にイソプロパノールなどの第二級アルコールのパルミチン酸エステルがさらに挙げられてもよい。
【0059】
分散系中で、改質酸化セリウムの粒子は凝集体を形成し得る。改質酸化セリウムの前記凝集体は典型的には、最大でも250nmの平均サイズで特徴づけられる。凝集体の平均サイズは、最大でも200nm、より特に最大でも170nmの、さらにより特に最大でも150nmのものであってもよい。
【0060】
凝集体は一般に単分散である。それらは、最大でも0.5の分散指数を有してもよい。この指数は、特に最大でも0.4、より特に最大でも0.3、さらにより特に最大でも0.2のものであり得る。
【0061】
分散系中の凝集体の平均サイズおよび分散指数は、レーザ粒径分析計(質量による分布)を使用するレーザ回折技術を用いて測定される。用語「分散指数」は、比:σ/m=(d90-d10)/2d50(式中、d90、d10およびd50は、統計学において用いられる一般的な意味を有する)に言及することを意図し:
- d90は、粒子の90%がd90未満の直径を有する粒子サイズまたは直径であり;
- d10は、粒子の10%がd10未満の直径を有する粒子サイズまたは直径であり;
- d50は、粒子の平均サイズまたは直径である。
【0062】
分散系は典型的には、幅広い限度内で変わることができ、そして分散系の総重量に対して例えば、最大でも40重量%、特に最大でも30重量%の酸化物のものであり得る改質酸化セリウム含有量を有してもよい。分散系中の改質酸化セリウムの量は、分散系の総重量に対して一般に少なくとも0.5重量%の、典型的には少なくとも1.0重量%のものである。
【0063】
本発明の改質酸化セリウムは、UV抵抗特性および透明性を有する物品を有利に提供するためにポリマーマトリックス中へ組み入れることができる。本発明の改質酸化セリウムは、ポリマーマトリックス中に十分に分散させられ得る。
【0064】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の改質酸化セリウムとポリマーとを含む組成物である。
【0065】
組成物は、組成物の総重量を基準として、典型的には少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.10重量%、より好ましくは少なくとも0.20重量%の改質酸化セリウムを含有する。改質酸化セリウムの量は、組成物の総重量を基準として、典型的には最大でも10.00重量%、好ましくは最大でも7.00重量%、より好ましくは最大でも5.00重量%である。
【0066】
良好な結果は、改質酸化セリウムが、組成物の総重量を基準として、0.10~5.00重量%の、好ましくは組成物の総重量を基準として、0.20~2.00重量%の量で存在する場合に得られた。
【0067】
組成物中のポリマーの性質は特に限定されない。ポリマーは、アルファ-オレフィンホモーおよびコポリマー、重縮合ポリマーおよびハロゲン化ポリマーからなる群から選択されてもよい。ポリマーは熱可塑性ポリマーであってもよい。
【0068】
表現「アルファ-オレフィンホモ-およびコポリマー」は、アルファ-オレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマーに言及するために本明細書では用いられる。エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/1-ブテンコポリマー、エチレン/1-ヘキセンコポリマー、エチレン/1-オクテンコポリマー、プロピレン/1-オクテンコポリマー、エチレン/カルボン酸ビニルエステルコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー、中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーが挙げられてもよい。
【0069】
アルファ-オレフィンコポリマーの中に、エチレンおよび少なくとも1種のカルボン酸ビニルエステルに由来する繰り返し単位を含むコポリマーが挙げられてもよい。カルボン酸ビニルエステルの例として、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルまたはマレイン酸ビニルが挙げられてもよい。エチレンおよび酢酸ビニルの繰り返し単位を含み、繰り返し単位の一般に5~40重量%が酢酸ビニルに由来し、繰り返し単位の60~95重量%がエチレンに由来するコポリマーが好ましいかもしれない。
【0070】
アルファ-オレフィンホモ-およびコポリマーは、例えば、少なくとも1つの官能基を有する1種以上のエチレン性不飽和モノマーでの非官能化ポリマーのグラフト化によって官能化されてもよい。好適なグラフト化剤は、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルビニルケトン、不飽和ジカルボン酸、それらのエステル、およびそれらの無水物、例えば、無水マレイン酸;アクリル酸および/またはメタクリル酸、ならびにそれらのエステルである。
【0071】
表現「重縮合ポリマー」は、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレートなどの、互いに反応することができる官能基を有するモノマーの縮合反応に由来する繰り返し単位を含むそれらのポリマーに言及するために本明細書では用いられる。
【0072】
好適なポリエステルの中に、エチレングリコールおよびフタル酸、例えば、テレフタル酸またはイソフタル酸に由来する繰り返し単位を含むそれらのポリエステルが挙げられてもよい。
【0073】
ハロゲン化ポリマーの中に、塩素化およびフッ素化ポリマーが挙げられてもよい。
【0074】
好適な塩素化ポリマーの中に、塩化ビニル、および/または塩化ビニリデンに由来する繰り返し単位を含むポリマーが特に挙げられてもよい。
【0075】
フッ素化ポリマーの中に、少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーが挙げられてもよい。好適なエチレン性不飽和フッ化モノマーの非限定的な例は:
- テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、およびヘキサフルオロイソブチレンなどの、C~Cフルオロフルオロオレフィン;
- フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびトリフルオロエチレンなどの、C~C含水素フルオロオレフィン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cフルオロアルキルまたは1つ以上のエーテル基を有するC~Cフルオロオキシアルキルである)のフルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレンのような、クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C~Cフルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のフルオロアルキルビニルエーテル
である。
【0076】
好適なフッ素化ポリマーの注目に値する例は、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を含むポリマーならびにエチレンとクロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンから選択される少なくとも1種のモノマーとに由来する繰り返し単位を含むポリマーである。
【0077】
有利な実施形態において、フッ素化ポリマーは、エチレンにならびにクロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの少なくとも1つに由来する繰り返し単位を含むポリマーである。
【0078】
有利な実施形態において、フッ素化ポリマーは、エチレンならびにクロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの少なくとも1つに由来する繰り返し単位を含む半結晶性ポリマーであって、前記ポリマーが、ASTM D 3418に従って、10℃/分の加熱速度で示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるように最大でも35J/gの融解熱を有するポリマーである。
【0079】
融解熱は、最大でも35J/gの、好ましくは最大でも30J/gの、より好ましくは最大でも25J/gのものである。
【0080】
表現「半結晶性ポリマー」は、ASTM D 3418に従って測定される場合に検出可能な融点を有するポリマーに言及するために本明細書では用いられる。融解熱の下限は決定的に重要ではないにもかかわらず、半結晶性ポリマーは一般に、少なくとも1J/gの、好ましくは少なくとも2J/gの、より好ましくは少なくとも5J/gの融解熱を有するであろうことが理解される。
【0081】
フッ素化ポリマーは有利には:
(a)30~48モル%、好ましくは35~45モル%のエチレンと;
(b)52~70モル%、好ましくは55~65モル%のクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンまたはそれらの混合物と;
(c)モノマー(a)および(b)の総量を基準として、0~5モル%、好ましくは0~2.5モル%の1つ以上のフッ素化および/または含水素コモノマーと
を含む。
【0082】
好ましくは、コモノマーは、(メタ)アクリル系モノマーの群から選択される含水素コモノマーである。より好ましくは、含水素コモノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートおよび(ヒドロキシ)エチルヘキシルアクリレートなどの、ヒドロキシアルキルアクリレートコモノマー、ならびにn-ブチルアクリレートなどの、アルキルアクリレートコモノマーの群から選択される。
【0083】
エチレンと、クロロトリフルオロエチレンと任意選択的に、上に詳述されたような、第3モノマーとのコポリマーが好ましい。
【0084】
本発明の組成物に好適なエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマーは、典型的には210℃を超えない、好ましくは200℃を超えない、さらに198℃を超えない、好ましくは195℃を超えない、より好ましくは193℃を超えない、さらにより好ましくは190℃を超えない溶融温度を有する。溶融温度は、有利には少なくとも120℃、好ましくは少なくとも130℃、なお好ましくは少なくとも140℃、より好ましくは少なくとも145℃、さらにより好ましくは少なくとも150℃である。
【0085】
特に良好な結果を与えることが見いだされたエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマーは:
(a)35~47モル%のエチレンに由来する繰り返し単位;
(b)53~65モル%のクロロトリフルオロエチレンに由来する繰り返し単位
に由来する繰り返し単位から本質的になるものである。
【0086】
230℃および2.16KgでASTM 3275-81の手順に従って測定される、本発明の組成物に好適なエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマーのメルトフローレートは、一般に0.01~75g/10分、好ましくは0.1~50g/10分、より好ましくは0.5~30g/10分の範囲である。
【0087】
本発明の改質酸化セリウムおよびフッ素化ポリマー、特に上に詳述されたようなエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマーを含む組成物は、光起電力パネルなどの、UV放射光からの保護を必要とする製造物品での使用に好適であることが分かった。
【0088】
少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%の本発明の改質酸化セリウムならびにエチレンと、クロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの少なくとも1つとのコポリマーの群から選択されるフッ素化ポリマーを含む組成物が特に有利であることが分かった。
【0089】
少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%の本発明の改質酸化セリウムならびに上に詳述されたように最大でも35J/gの融解熱を有するエチレンと、クロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの少なくとも1つとのコポリマーの群から選択されるフッ素化ポリマーを含む組成物は、光起電力用途での使用のためのフィルムの調製に好適であることが分かった。
【0090】
光起電力用途での使用のためのフィルムの調製用の特に好適な組成物は:
- 20~65nmの平均サイズを有する酸化セリウム粒子と、改質酸化セリウムの総重量に対して4.0~15.0重量%の少なくとも1種の両親媒性物質、好ましくはイソステアリン酸とを含む少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%の改質酸化セリウム、および
- 上に詳述されたようなエチレンとクロロトリフルオロエチレンとの少なくとも1種のコポリマー
を含む。
【0091】
好ましくは、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマーは、35~47モル%のエチレンに由来する繰り返し単位と、53~65モル%のクロロトリフルオロエチレンに由来する繰り返し単位とを含み、それは、35J/gを超えない融解熱を有する。
【0092】
本発明の改質酸化セリウムの存在は、UVからの保護を提供する。
【0093】
組成物は、当技術分野で公知の任意の従来技術を用いて調製されてもよい。例として、混合は、ローラ型のゴム用ミル、バンバリーミキサ、二軸スクリュー押出機などを含む、ポリマー組成物を調製するのに有用であると知られている任意の混合装置によって実施することができる。改質酸化セリウムは、分散系の形態にあってもよい。その場合には、分散系の液相は、用いられる混合の条件に合わせられる。改質酸化セリウムはまた、粉末の形態にあってもよい(実施例5を参照されたい)。
【0094】
本発明のさらなる目的は、本発明の組成物を含む物品である。
【0095】
本発明のある実施形態において、物品は、フィルムまたはシートの形態にある。フィルムまたはシートは、15~800μm、好ましくは20~600μm、より好ましくは25~500μmの厚さを有してもよい。厚さは、マイクロメータで測定されてもよい。厚さは、25℃で測定され、フィルム上で行われる20のランダム測定値の算術平均厚さである。
【0096】
フィルムの製造技術は当技術分野で周知である。本発明の組成物は、任意選択的に一軸または二軸延伸で、キャスト押出または熱間吹込押出(hot blown extrusion)技術によりフィルムの形態下で好ましくは処理されるであろう。本発明の組成物のフィルムの製造に特に適合した技術は、押し出されたテープを得るために細長い形状を有するダイを通して融解組成物を押し出すこと、およびフィルムを得るために前記押し出されたテープをキャスト/圧延することに関わる。テープは、適切なロールに通すことによって圧延してフィルムにすることができ、ロールは適切な温度に維持でき、その速度は要求される厚さを達成するように調整できる。フィルムの厚さは、ダイで調整される。
【0097】
本発明のフィルムは、光起電力モジュールで使用されるのに特に好適である。光起電力モジュールは、結晶シリコンから作られたソーラーセルを含む。ソーラーセルは、例えば、非晶質シリコン、テルル化カドミウム(CdTe)もしくはセレン化銅インジウムガリウム(CIGS)をベースとするセルおよびそれらの同族体である、「薄膜」ソーラーセルとして知られる第2世代のソーラーセル、または有機光起電力(OPV)システム、および色素増感ソーラーセル(DSSC)などの第3世代のセルのものであってもよい。
【0098】
本発明の別の態様は、フィルムまたは層の形態での本発明の組成物を含む光起電力モジュールである。
【0099】
フィルムまたは層の形態での組成物は、セルの能動素子の前面上に、例えばセルのガラスの代わりに配置されてもよい。セルの能動素子は、光エネルギーを電気に変換する素子である。フィルムまたは層は、光のフィルム通過を損なうことなくUV防護を高めることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】UV-可視吸光法を用いて測定した、実施例2の改質CeO2およびCeO2-10を使って調製した各フィルムの波長と透過率の関係を表すスペクトルである。
図2】UV-可視吸光法を用いて測定した、実施例1の改質CeO2およびECTFEを使って調製した各フィルムの波長と透過率の関係を表すスペクトルである。
【0101】
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は単に説明のためである。
【0102】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0103】
実施例1:30nmの平均粒子サイズを有する改質酸化セリウムの調製
水中の酸化セリウム(CeO)の分散系を、国際公開第2008/043703号パンフレットに、より具体的には国際公開第2008/043703号パンフレットの実施例1に開示されている方法に従って調製した。この分散系は、30重量%のCeO当量での濃度を有した。40gの乾燥CeO(本明細書では以下、CeO-30と言われる)と同等である容積を採取した(133.3gの溶液に相当する)。
【0104】
粒子サイズは、BET法を用いて測定し、30nmであることが分かった。透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて測定される、標準偏差は、平均粒子サイズ(TEMによってまた測定される)の26%であった。
【0105】
イソステアリン酸の水溶液は、2gの純粋なイソステアリン酸を100mLの脱イオン水中で混合することによって調製した。1モル/lのソーダ溶液を、10.6に等しいpHに達するために混合下で滴加した(6.65gのソーダ溶液)。
【0106】
このようにして得られた112.8gのイソステアリン酸の水溶液を、室温における混合下で5g/分の流量でのポンプを用いて酸化セリウムの分解系に添加した。
【0107】
添加の終了後に、687gの水を、40g/Lの当量乾燥CeOの濃度に配慮するために添加した。分散系を室温で2時間攪拌した。混合物を10000rpmの速度で30分間遠心分離した。上澄液の排除後に得られた白色の固体を50℃でのオーブン中で24h乾燥させた。
【0108】
41gの生成物を3.2重量%の有機含有量で回収した。
【0109】
実施例2:10nmの平均粒子サイズを有する改質酸化セリウムの調製
10nmの(BETによって測定される)粒子サイズを有する酸化セリウム(CeO)の分散系を、国際公開第2008/043703号パンフレットに、より具体的には国際公開第2008/043703号パンフレットの実施例1に開示されている方法に従って(異なるCeIV/CeIII比を用いるが)調製した。この分散系は、30重量%のCeO当量での濃度を有した。40gの乾燥CeO(本明細書では以下、CeO-10と言われる)と同等である容積を採取した(133.3gの溶液に相当する)。
【0110】
イソステアリン酸の水溶液は、5.95gの純粋なイソステアリン酸を100mLの脱イオン水中で混合することによって調製した。1モル/lのソーダ溶液を、10.6に等しいpHに達するために混合下で滴加した。
【0111】
このようにして得られた112.8gのイソステアリン酸の水溶液を、室温における混合下で5g/分の流量でのポンプを用いて酸化セリウムの分解系に添加した。
【0112】
添加の終了後に、687gの水を、40g/Lの当量乾燥CeOの濃度に配慮するために添加した。分散系を室温で2時間攪拌した。混合物を10000rpmの速度で30分間遠心分離した。上澄液の排除後に得られた白色の固体を50℃でのオーブン中で24h乾燥させた。
【0113】
40gの生成物を11.0重量%の有機含有量で回収した。
【0114】
比較例1- 3nmの平均粒子サイズを有する改質酸化セリウムの調製
3nmの平均粒子サイズの粒子と33重量%の量でのイソステアリン酸とを含む改質CeOを、国際公開第01/10545A号パンフレットの実施例2に記載されている手順に従って調製した。
【0115】
3nmの平均粒子サイズを有する酸化セリウム粒子(CeO-3)を、国際公開第01/10545A号パンフレットの同じ実施例のステップ1に記載されている手順に従い、続いて60℃で一晩乾燥させて得た。
【0116】
実施例4-改質CeOの比色分析評価
比色分析測定は、波長400~700nmの範囲でX-Rite Ci51/Ci52分光計(測定幾何学:d/8°、DRS分光エンジン、8mm視野/14mm照明;測定範囲0~200%反射率)を用いて実施例1のおよび比較例1の改質CeOの粉末に関して実施した。CIE94法に従ったL値を表1(ここで、Lは明度を表し;aは赤/緑軸を表し;bは黄/青軸を表す)に報告する。
【0117】
【0118】
値(それは、試料の明るさの指標を提供し、Lが高ければ高いほど、試料の色はより明るい)から特に理解できるように、3nmの平均粒子サイズの酸化セリウムがイソステアリン酸のような両親媒性物質で改質される場合、それらの色は、劇的により暗くなる(L値は、73.7から44.4に低下する)。これらの粒子は実際に、透明なフィルムでの用途にそれらを適さないものにする暗褐色、黒色を有する傾向がある。
【0119】
その一方で、30nmの平均粒子サイズのCeO粒子への両親媒性物質(イソステアリン酸)の添加は、粒子の色を有意に変えない。
【0120】
実施例4:UV硬化フィルムの調製
フィルムを、10nmの平均粒子サイズを有する非改質CeO粒子(本明細書では以下、CeO-10)を使って、および実施例2において調製された改質CeO粒子を使って調製した。
【0121】
固体形態でのCeO-10粒子は、実施例2において出発原料として使用される水性分散系を50℃でのオーブン中で一晩乾燥させることによって得られた。
【0122】
0.2gのCeOの粉末(非改質および改質の両方)を、10gのHDDA(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)に磁気混合下で、続いて5分間20,000rpmの速度でUltraturrax T 25(Janke & Kunkel)混合装置における攪拌によって混合してCeO粒子の懸濁液を提供した。
【0123】
8gのSartomer製の樹脂CN820(HDDAおよびトリプロピレングリコールジアクリレートによって構成される)を、1gの重合開始剤(2-メチル-4-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノン)に混合した。
【0124】
CeO粒子を含有する懸濁液を樹脂+開始剤溶液と、5分間20,000rpmでUltraturraxを用いて混合した。
【0125】
この混合物をガラス基材上に、Elcometer 4340 Automatic Film Applicatorで滴々堆積させてきめ細かいコーティングを形成した。
【0126】
このコーティングを、UV照明(Omnicure Series 1000/2000)下に光重合させてフィルムを形成した。フィルムを50℃でのオーブン中で2日間乾燥させていくらかの開始剤残渣を蒸発させた。乾燥後にガラス基材から分離したフィルムは、約140ミクロンの厚さであった。
【0127】
UV-可視吸光法を次に、分光計Perkin-Elmer Lambda 900を用いてフィルムに関して行った。190nm~800nmの波長(nm)の関数としての透過率(%)を図1に報告する。理解できるように、改質CeOを使って得られたフィルムは、非改質CeO-10を使って得られたフィルムよりも可視領域においてはるかに高い透過率を有し、ポリマーマトリックス中の無機粒子のはるかにより良好な分散を示唆する。
【0128】
実施例5-改質CeOとエチレン/クロロトリフルオロエチレンコポリマーとを含むフィルムの調製
原材料
- ECTFE:180℃の融点、18J/gの融解熱(ΔH2f)および3.4g/10分(225℃/2.16kgで測定される)のメルトフローインデックス(MFI)を有するエチレン/クロロトリフルオロエチレンコポリマー。
- 実施例1の改質CeO
【0129】
粉末形態のポリマーと、改質CeO粒子とを、三段階パドルミキサーを備えた急速ミキサー中で予備混合して、成分間の要求される重量比を有する均一な粉末混合物を得た。改質CeOの量は、組成物の重量に対して1.5重量%であった。
【0130】
粉末混合物を次に、4つの温度域および3mm穴ダイを備えた、二軸スクリューコニカル式押出機(Brabender)での押出によって処理した。処理設定点は次の通りであった。
【0131】
【0132】
スクリュー速度を、約3.3kg/hの押出量、および231℃の溶融温度を得るように、46%のトルクで、80rpmに設定した。押し出されたストランドを水浴中で冷却し、乾燥させ、検査し、ペレタイザーで切断した。
【0133】
薄いフィルムを製造するために、ペレットを、混合要素のない従来のスリーゾーンスクリュー(L/D=25)を備えた19mm一軸スクリュー押出機で処理した。使用したダイは、500μmのダイギャップを有する100mm幅のフラットダイであった。ダイから出るとき、融解テープは、約50μmのフィルム厚さを得るようにその速度が合わせられた、3つの順次チルロール上へキャストされた。
【0134】
フィルムの光学特性は、分光計Perkin-Elmer Lambda 900を使用したUV-可視分光法を用いて測定した。190nm~800nmの波長の関数としての透過率(%)を図2に報告する。
【0135】
50μmの同じ平均厚さを有するエチレン/クロロトリフルオロエチレン ECTFEからなるフィルムを対照として使用する。
【0136】
本発明の実施例1の改質CeOを含有するフィルムは、スペクトルの可視領域(500~700nm)におけるフィルムの光学特性に小さな影響を与えて、スペクトルの190~320nm領域における放射光の通過をブロックするのに有効である。
図1
図2