(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体若しくは抗体キット、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子、及びこれらを用いた測定試薬若しくは測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220105BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20220105BHJP
G01N 33/72 20060101ALI20220105BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20220105BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220105BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01N33/53 K
C07K17/00
G01N33/72 A
G01N33/531 A
G01N33/543 581D
C07K16/18
(21)【出願番号】P 2018520871
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2017019736
(87)【国際公開番号】W WO2017209001
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2016107343
(32)【優先日】2016-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NITE BP-02268
【微生物の受託番号】NITE BP-02269
【微生物の受託番号】NITE BP-02270
【微生物の受託番号】NITE BP-02271
【微生物の受託番号】NITE BP-02272
(73)【特許権者】
【識別番号】000120456
【氏名又は名称】栄研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】安居 良太
(72)【発明者】
【氏名】油井 恵
(72)【発明者】
【氏名】牧之段 満
(72)【発明者】
【氏名】関 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】坂西 千紗
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-503593(JP,A)
【文献】特許第4926320(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219658(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0227208(US,A1)
【文献】Horn IR,Generation of a haptoglobin-hemoglobin complex-specific Fab antibody blocking the binding of the complex to CD163,Eur J Haematol,2003年,Vol.71,Page.289-293
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
C07K 17/00
G01N 33/72
G01N 33/531
G01N 33/543
C07K 16/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5C-2A(NPMD受託番号NITE BP-02268)または12-9G-C(NPMD受託番号NITE BP-02269)である、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体。
【請求項2】
5C-2A(NPMD受託番号NITE BP-02268)、7C-7B-8E(NPMD受託番号NITE BP-02270)、1-5G-3C(NPMD受託番号NITE BP-02271)、12-9G-C(NPMD受託番号NITE BP-02269)、79-8G-3F(NPMD受託番号NITE BP-02272)、およびSU112からなる群より選ばれる少なくとも2種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を含む、抗体キット。
【請求項3】
前記抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体がマウス由来である、請求項1
又は2に記載の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体または抗体キット。
【請求項4】
5C-2A(NPMD受託番号NITE BP-02268)または12-9G-C(NPMD受託番号NITE BP-02269)である抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られた、モノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子。
【請求項5】
5C-2A(NPMD受託番号NITE BP-02268)、7C-7B-8E(NPMD受託番号NITE BP-02270)、1-5G-3C(NPMD受託番号NITE BP-02271)、12-9G-C(NPMD受託番号NITE BP-02269)、79-8G-3F(NPMD受託番号NITE BP-02272)、およびSU112からなる群より選ばれる少なくとも2種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られた、モノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子。
【請求項6】
前記抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体がマウス由来である、請求項
4又は5に記載のモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体を固定化する前記不溶性担体粒子が、ラテックス粒子または金属コロイド粒子である、請求項
4~
6のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子。
【請求項8】
請求項
4~
7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子を含む、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出するための免疫学的測定試薬。
【請求項9】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体または抗体キット、請求項
4~
7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子、あるいは、請求項
8に記載の免疫学的測定試薬を用いた、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出するための免疫凝集反応方法。
【請求項10】
1種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られたモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子を用いた、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出するための免疫学的測定方法であって、
前記1種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体が、
5C-2A(NPMD受託番号NITE BP-02268)または12-9G-C(NPMD受託番号NITE BP-02269)の1種類、あるいは、
5C-2A(NPMD受託番号NITE BP-02268)、7C-7B-8E(NPMD受託番号NITE BP-02270)、1-5G-3C(NPMD受託番号NITE BP-02271)、12-9G-C(NPMD受託番号NITE BP-02269)、79-8G-3F(NPMD受託番号NITE BP-02272)、およびSU112からなる群より選ばれる少なくとも2種類以上である、免疫学的測定方
法。
【請求項11】
前記抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体がマウス由来である、請求項1
0に記載の免疫学的測定方法。
【請求項12】
前記抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を固定化する前記不溶性担体粒子が、ラテックス粒子または金属コロイド粒子である請求項1
0又は11に記載の免疫学的測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不溶性担体粒子に固定化された場合、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を含む被験試料中のヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と特異的に凝集反応を起こす抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体若しくは抗体キット、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子、及びこれらを用いた、被験試料中のヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出、測定するための測定試薬若しくは測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出血を伴う消化器官の疾患として、炎症、腫瘍、癌等が知られている。そして、これらの疾患のスクリーニング検査として、糞便中のヘモグロビンの存在を調べる便潜血検査が行われている。そして、この検査は主に免疫測定法によって行われる(特開昭61-137064号公報)。
【0003】
しかし、糞便中に含まれるヘモグロビンは、被験試料である糞便中に含まれる細菌を始めとした種々の要因によって、また、消化管内を移動する際にも分解されて、検出、測定が出来なくなる。それゆえ、糞便中のヘモグロビンの検出、測定は、下行結腸や直腸の出血の検査には有効であるが、上部消化管の出血を検査することは困難である。
【0004】
そこで、糞便中に含まれる細菌を始めとした種々の要因によって分解を受けないヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を測定することが提案され、実施されている。しかしながら、この測定原理は、ヘモグロビンに特異的に結合する抗体とハプトグロビンに特異的に結合する抗体を組み合わせたサンドイッチ免疫測定法である(特開平2-193071号公報)。
【0005】
ELISAに代表されるサンドイッチ免疫測定法は、測定の過程において被験試料に含まれる被測定物以外のタンパク成分等を除去する洗浄工程を含むため、測定に要する時間が長くなる。そのため、短時間で多数の被験試料を検出、測定する必要がある検出、測定には適していない。
【0006】
また、ヘモグロビンおよびハプトグロビンの基本構造は四量体を形成しており、常法で得られたヘモグロビンに特異的に結合する抗体とハプトグロビンに特異的に結合する抗体を組み合わせて、短時間で多数の被験試料を検出、測定することが可能な凝集法による免疫測定法に適用すると、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体のみならず、複合体を形成していない遊離ヘモグロビンや遊離ハプトグロビンでも凝集反応を起こすため、精確な測定は困難である。
【0007】
そこで、凝集法による免疫測定法に適用することが可能で、複合体を形成していない遊離ヘモグロビンや遊離ハプトグロビンを検出、測定せず、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体のみ検出、測定出来る抗体の作製およびその抗体を用いた凝集法による免疫測定法でヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出、測定する免疫測定法の確立が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
出血を伴う消化器官疾患のスクリーニング検査を行なうことは、重篤化する炎症、腫瘍、癌等を早期に発見するために重要な課題となっている。そこで、消化管内で分解を受けないヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を短時間で多数検体を検出、測定出来る試薬が求められている。
【0009】
それゆえ、本発明は、複合体を形成していない遊離ヘモグロビンおよび遊離ハプトグロビンは検出、測定せず、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に、短時間で多検体の検出、測定が出来る凝集法による免疫測定法に使用することが可能な抗体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、不溶性担体粒子に結合させることによって、複合体を形成していない遊離ヘモグロビンおよび遊離ハプトグロビンとは反応せず、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と特異的に反応する抗体を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体であって、モノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られたモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子が、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と凝集反応する反面、ヘモグロビンと凝集反応しない、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体。
(2)5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)または12-9G-C(NPMD受領番号NITE ABP-02269)である、(1)の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体。
(3)2種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られたモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子が、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と凝集反応する反面、ヘモグロビンと凝集反応しない、2種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を含む、抗体キット。
(4)2種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体が5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)、7C-7B-8E(NPMD受領番号NITE ABP-02270)、1-5G-3C(NPMD受領番号NITE ABP-02271)、12-9G-C(NPMD受領番号NITE ABP-02269)、79-8G-3F(NPMD受領番号NITE ABP-02272)、およびSU112からなる群より選ばれる少なくとも2種類以上である、(3)の抗体キット。
(5)抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体がマウス由来である、(1)~(4)のいずれかの抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体または抗体キット。
(6)1種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られたモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子であって、モノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子が、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と凝集反応する反面、ヘモグロビンと凝集反応しない、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子。
(7)1種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体が、5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)または12-9G-C(NPMD受領番号NITE ABP-02269)の1種類である、(6)のモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子。
(8)1種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体が、5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)、7C-7B-8E(NPMD受領番号NITE ABP-02270)、1-5G-3C(NPMD受領番号NITE ABP-02271)、12-9G-C(NPMD受領番号NITE ABP-02269)、79-8G-3F(NPMD受領番号NITE ABP-02272)、およびSU112からなる群より選ばれる少なくとも2種類以上である、(7)のモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子。
(9)抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体がマウス由来である、(6)~(8)のいずれかのモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子。
(10)モノクローナル抗体を固定化する不溶性担体粒子が、ラテックス粒子または金属コロイド粒子である、(6)~(9)のいずれかのモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子。
(11)(6)~(10)のいずれかのモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子を含む、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出するための免疫学的測定試薬。
(12)5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)、7C-7B-8E(NPMD受領番号NITE ABP-02270)、1-5G-3C(NPMD受領番号NITE ABP-02271)、12-9G-C(NPMD受領番号NITE ABP-02269)、または79-8G-3F(NPMD受領番号NITE ABP-02272)である、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体。
(13)(1)~(5)のいずれかの抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体または抗体キット、(6)~(10)のいずれかのモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子、(11)の免疫学的測定試薬、あるいは、(12)の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を用いた、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出するための免疫学的測定方法。
(14)1種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られたモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子を用いた、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出するための免疫学的測定方法であって、モノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子が、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と凝集反応する反面、ヘモグロビンと凝集反応しない、免疫学的測定方法。
(15)1種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体が5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)または12-9G-C(NPMD受領番号NITE ABP-02269)の1種類である、(14)の免疫学的測定方法。
(16)1種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体が5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)、7C-7B-8E(NPMD受領番号NITE ABP-02270)、1-5G-3C(NPMD受領番号NITE ABP-02271)、12-9G-C(NPMD受領番号NITE ABP-02269)、79-8G-3F(NPMD受領番号NITE ABP-02272)、およびSU112からなる群より選ばれる少なくとも2種類以上である、(14)の免疫学的測定方法。
(17)抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体がマウス由来である、(14)~(16)のいずれかの免疫学的測定方法。
(18)抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を固定化する不溶性担体粒子が、ラテックス粒子または金属コロイド粒子である(14)~(17)のいずれかの免疫学的測定方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化して作製した免疫学的測定試薬を用いることにより、被験試料中に含まれる、複合体を形成していない遊離ヘモグロビンおよび/または遊離ハプトグロビンの影響を受けることなく、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に測定することが可能となる。
【0013】
そして、このことにより、ヘモグロビンと比較して検体中での安定性に優れているヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を被験物質として、出血を伴う消化器官疾患のスクリーニング検査を簡便かつ短時間で行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ELISA法とラテックス凝集法で検体を測定したときの相関図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られたモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子が、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と凝集反応する反面、ヘモグロビンと凝集反応しない、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体である。
【0016】
本発明の別の実施形態の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体は、抗体キットであり、具体的には2種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られたモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子が、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と凝集反応する反面、ヘモグロビンと凝集反応しない、2種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を含む、抗体キットである。
【0017】
本発明におけるヘモグロビン-ハプトグロビン複合体は、ヘモグロビンとハプトグロビンにより形成された、遊離ヘモグロビンよりも安定な複合体である。血管中において何らかの理由により赤血球が破壊され、ヘモグロビンが血中に遊離すると、遊離したヘモグロビンが酸化されることにより酸化的血管障害毒性が生じる。そこで、ハプトグロビンが遊離したヘモグロビンと速やかに複合体を形成することにより、その毒性を中和させることが知られている。その後、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体は細網内皮系細胞の受容体を介して速やかに取り込まれ分解処理されるが、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体自体はヘモグロビンに比べて安定であることが知られている。
【0018】
ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体が安定な構造物である性質に着目して、糞便中に含まれるヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出、測定することにより、消化管における出血を把握することが可能となる。
【0019】
ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体の検出、測定を行なう方法としては、免疫学的測定方法が好ましく、スクリーニング検査として多数の検体を短時間で行なう方法としては、免疫凝集反応方法がさらに好ましい。免疫凝集反応方法としては、担体粒子、たとえば、高感度測定が可能なホモジーニアスな系の粒子担体を用いた方法が好ましい。
【0020】
また、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出、測定するという観点から、免疫学的測定方法に用いる抗体としては、モノクローナル抗体が適している。本発明は、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を免疫凝集反応方法に用いて検出、測定することが可能なモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出、測定する方法を構築する。
【0021】
ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出、測定する方法を構築するための抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体として、その由来は特に限定されないが、マウス由来の抗ヒトヘモグロビンマウスモノクローナル抗体が好ましい。
【0022】
抗ヒトヘモグロビンマウスモノクローナル抗体は、通常のモノクローナル抗体の作製方法によって作製できる。たとえば、マウスを使った以下の方法が挙げられる。具体的には、マウスにヒトヘモグロビンで免疫した後、肥大化した脾臓を提出し、脾臓由来のB細胞を調製し、別に増殖させたマウスミエローマ細胞と電気融合法により細胞融合させ、B細胞とミエローマ細胞が融合して出来た細胞を選択培地を利用して増殖およびクローニングを行う。その結果発育したコロニーがヒトヘモグロビンに対する抗体を産生しているか否かを確認する。ヒトヘモグロビンに対する抗体を産生していると認められた細胞をクローニングし、抗ヒトヘモグロビンマウスモノクローナル抗体産生細胞株を得る。得られた抗ヒトヘモグロビンマウスモノクローナル抗体産生細胞株を培養し、その培養上清または培養細胞をマウスの腹腔内で増殖させて得られた腹水より抗体を精製し、抗ヒトヘモグロビンマウスモノクローナル抗体とする。
【0023】
次に、抗ヒトヘモグロビンマウスモノクローナル抗体を免疫凝集反応方法に適用するため、該抗体を不溶性担体粒子に固定化する。モノクローナル抗体を固定化するための不溶性担体粒子としては、一般的に使用されるラテックス粒子、シリカ粒子、金属コロイド粒子、磁性粒子、蛍光粒子、赤血球等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0024】
また、該不溶性担体粒子の粒子径としては、50~500nmが好ましく、75~350nmがさらに好ましいが、特にこの範囲に捉われることなく、使用することが可能である。
【0025】
さらに、抗体を不溶性担体粒子に固定化する方法としては、公知の技術である、抗体と不溶性担体粒子を混合して不溶性担体粒子の表面に抗体を物理的吸着を行なうことにより不溶性担体粒子への抗体の固定化が可能である。
【0026】
また、表面にアミノ基やカルボキシル基を導入した不溶性担体粒子を用いる場合には、グルタルアルデヒドやカルボキシイミド試薬を用いた化学結合によって不溶性担体粒子の表面への抗体の固定化が可能である。
【0027】
これらの方法により得られた1以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体が固定化された不溶性担体粒子は、複合体を形成していない遊離ヘモグロビンおよび遊離ハプトグロビン、並びにヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を含む混合物に付与し、遊離ヘモグロビンおよび遊離ハプトグロビンとは凝集反応は認められず、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体とは凝集反応を生ずることを確認し、本願発明の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体及び抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子を得る。
【0028】
すなわち、不溶性担体粒子に固定化することによりヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と特異的に凝集反応を生ずる抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体が得られ、該抗体を不溶性担体粒子に固定化することによる抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子が得られる。それによって、ヘモグロビン-ハグロビン複合体を特異的に反応する、該抗体又は該モノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子を含む測定試薬、ヘモグロビン-ハグロビン複合体を特異的に検出、測定する、該抗体又は該モノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子を用いた測定方法も得られる。
【0029】
本発明の一実施形態の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体として好ましくは、不溶性担体粒子に固定化した場合ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と特異的に凝集反応を起こす、NPMDに受領番号NITE ABP-02268として寄託された5C-2A、またはNPMDに受領番号NITE ABP-02269として寄託された12-9G-Cである。
【0030】
また、本発明の別の実施形態の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体キットとして好ましくは、2種類以上のモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化した場合ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と特異的に凝集反応を起こす、NPMDに受領番号NITE ABP-02268(受託番号NITE BP-02268)として寄託された5C-2A、NPMDに受領番号NITE ABP-02270(受託番号NITE BP-02270)として寄託された7C-7B-8E、NPMDに受領番号NITE ABP-02271(受託番号NITE BP-02271)として寄託された1-5G-3C、NPMDに受領番号NITE ABP-02269(受託番号NITE BP-02269)として寄託された12-9G-C、NPMDに受領番号NITE ABP-02272(受託番号NITE BP-02272)として寄託された79-8G-3F、およびSU112(日本バイオテスト研究所)からなる群より選ばれる少なくとも2種類以上である。
【0031】
本発明の測定試薬は、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体又は抗体キット、あるいは、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子を含み、その他、例えば、各種電解質、緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、または増感剤等の成分を含んでもよい。
【0032】
本発明の測定方法は、1種類以上の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体を不溶性担体粒子に固定化することにより得られたモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子を用いた、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出するための免疫学的測定方法であり、該モノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子が、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と凝集反応する反面、ヘモグロビンと凝集反応しないため、複合体を形成していない遊離ヘモグロビンおよび遊離ハプトグロビン、並びにヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を含む混合物から、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体のみ特異的に検出、測定することができる。
【0033】
本発明の測定方法は、上記モノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子と検体(被験試料)とを混合して、凝集反応の有無によって、検体中のヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出、測定する。検体は、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を含み得る試料であれば特に限定されないが、血液、便、尿、汗などであることが好ましく、便であることが特に好ましい。凝集反応の検出、測定方法は、一般的な方法であればよく、たとえば、吸光度の測定、散乱光強度の測定、目視による測定(スライド凝集法)等が挙げられる。
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
(実施例1 抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体の作製)
(1)マウスへの免疫
7週齢のメスのBalb/cおよびddYのマウス各5頭に対してヘモグロビンで免疫した。免疫プロトコールとしては、初回免疫としてアジュバントと混和したヘモグロビン溶液を背部皮下に50μg/マウスの用量で行なった。
【0036】
初回免疫の4週間後にアジュバントと混和したヘモグロビン溶液を背部皮下に50μg/マウスの用量で免疫し、さらにその4週間後にアジュバントと混和したヘモグロビン溶液を背部皮下に50μg/マウスの用量で免疫した。
【0037】
各々の免疫後に、125Iで標識したヘモグロビンを用いた2抗体法のRIA法で抗血清価を測定した。その結果、ddYのマウスの1頭で高い抗血清価が得られ、細胞融合に供した。なお、2回目の免疫後および3回目の免疫後の抗血清価に変動は認められなかった。
【0038】
(2)細胞融合
細胞融合を行なう3日前にヘモグロビン溶液を腹腔内に50μg/マウスの用量で最終免疫を行なった。細胞融合は、初回免疫より16週間経過したマウスより脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。
【0039】
調製した脾細胞とマウスミエローマNS-1細胞を電気融合法にて細胞融合を行ない、融合細胞選択培地に懸濁して96穴マイクロプレートに播種した。
【0040】
(3)モノクローナル抗体産生細胞株のスクリーニング
細胞融合の10日後に125Iで標識したヘモグロビンおよびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を用いた2抗体法のRIA法で、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体産生細胞をスクリーニングした。
【0041】
(実施例2 モノクローナル抗体の結合特異性)
(1)モノクローナル抗体の選定
細胞融合により得られた抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体45クローンおよび市販の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体SU112(日本バイオテスト研究所)の合計46クローンを選定し、ヘモグロビンおよびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との結合特異性を評価した。
【0042】
評価の方法としては、各々の抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体をポリスチレンラテックス粒子に固定化し、ヘモグロビンおよびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を含む試料と反応させたときの凝集の度合いを比較した。
【0043】
(2)モノクローナル抗体のポリスチレンラテックス粒子への固定化
各々のモノクローナル抗体を粒径211nmのポリスチレンラテックス粒子に固定化した。
【0044】
上記のポリスチレンラテックス粒子への抗体の固定化は、公知の技術を利用して実施した。すなわち、ポリスチレンラテックス粒子と抗体を混合して疎水性であるポリスチレンラテックス粒子の表面に抗体を物理的吸着を行なうことにより、ポリスチレンラテックス粒子への抗体の固定化を行なった。
【0045】
(3)試料の調製
ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体の試料は、32.3pmol/mLのヘモグロビンおよびそれと等モルのハプトグロビンを等液量で混和して作製した。ヘモグロビンのみの試料は、16.1pmol/mLのヘモグロビンを含むものを使用した。
【0046】
(4)ラテックス凝集の測定方法
96穴平底マイクロプレートのウェルを用いて凝集反応を行なった。具体的な方法は、50mM HEPES緩衝液(pH7.4)をマイクロプレートの各ウェルに100μL分注し、各々の抗体を固定化したポリスチレンラテックス粒子溶液を50μL添加した後に試料を30μL添加した。
【0047】
サンライズレインボー(テカンジャパン社)を用いて試料の添加10秒後および5分10秒後に波長660nmで吸光度を測定し、その差を凝集の指標とした。
【0048】
ヘモグロビンと反応させたときの凝集の度合いに比較して、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と反応させたときの凝集の度合いが高かった抗体又はその組合せを表1に示す。これらの抗体を特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託した。表1に示されたモノクローナル抗体又はその組合せを用いることにより、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に測定することが出来る試薬が期待される。5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)および12-9G-C(NPMD受領番号NITE ABP-02269)のモノクローナル抗体は、単独で使用してもほとんどヘモグロビンの影響を受けることなく、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と凝集することが認められた。また、1-5G-3C(NPMD受領番号NITE ABP-02271)とSU112(日本バイオテスト研究所)との組み合わせ、5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)と79-8G-3F(NPMD受領番号NITE ABP-02272)との組み合わせ、5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)と7C-7B-8E(NPMD受領番号NITE ABP-02270)との組み合わせ、5C-2A(NPMD受領番号NITE ABP-02268)と79-8G-3Fとの組み合わせ、12-9G-C(NPMD受領番号NITE ABP-02269)と79-8G-3F(NPMD受領番号NITE ABP-02272)との組み合わせも、ほとんどヘモグロビンの影響を受けることなく、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体と凝集することが認められた。
【0049】
【0050】
(実施例3 ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との特異的反応(1))
(1)モノクローナル抗体固定化ラテックス溶液の調製
5C-2Aのモノクローナル抗体を、実施例2と同様の方法でラテックス粒子に固定化してラテックス溶液とした。
【0051】
(2)ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体試料の調製
50mM リン酸緩衝液(pH6.6)中に、11.4pmol/mLのヘモグロビンおよび0.0、3.8、7.5、または11.3pmol/mLのハプトグロビンを含む溶液を調製した。すなわち、ヘモグロビンおよびハプトグロビンが強固に結合する性質を持つことより、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体およびヘモグロビンが、理論上は、各々0.0および11.4pmol/mL、3.8および7.6pmol/mL、7.5および3.9pmol/mL、ならびに11.3および0.1pmol/mL含む溶液を調製した。
【0052】
(3)モノクローナル抗体固定化ラテックス粒子とヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との反応
モノクローナル抗体固定化ラテックス粒子とヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との反応を7170S形自動分析装置(日立ハイテクノロジー社製)を用いて確認した。測定方法は、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体含有溶液15μLをH7170Sの反応セルに加えた後に50mM HEPES緩衝液(pH7.4)100μLを加え、その後モノクローナル抗体固定化ラテックス溶液25μLを加えた後の440秒間の波長660nmでの濁度変化量を求めた。
【0053】
0pmol/mLとなるようにハプトグロビンを添加したときの濁度変化量を0と補正し、ハプトグロビンが11.3pmol/mL含まれるように添加した溶液の濁度変化量を100%としたときの濁度変化率を表2に示す。
【0054】
ハプトグロビンの添加濃度、すなわちヘモグロビン-ハプトグロビン複合体の濃度の増加に伴い、ラテックス粒子に固定化したモノクローナル抗体との抗原抗体反応によって生じるラテックス凝集による濁度変化が増加する。また、ハプトグロビンの添加濃度が低いときにはラテックス凝集による濁度変化が低いことから、ハプトグロビンと結合していないヘモグロビンとの反応が認められないと推察された。これらより、5C-2Aのモノクローナル抗体を用いることにより、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出することが可能となる。
【0055】
【0056】
(実施例4 ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との特異的反応(2))
(1)モノクローナル抗体固定化ラテックス溶液の調製
1-5G-3C、7C-7B-8E、SU112、および79-8G-3Fのモノクローナル抗体を、実施例2と同様の方法でラテックス粒子に固定化してラテックス溶液とした。そして、1-5G-3CとSU112および7C-7B-8Eと79-8G-3Fの組合せのラテックス溶液を作製し、試験に供した。
【0057】
(2)ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体試料の調製
13.0pmol/mLのヘモグロビンおよび0.0、9.4、11.3、または13.0pmol/mLのハプトグロビンを含む他は実施例3と同様の方法で調製した。すなわち、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体およびヘモグロビンが、理論上は、各々0.0および13.0pmol/mL、9.4および3.6pmol/mL、11.3および1.7pmol/mL、ならびに13.0および0.0pmol/mL含む溶液を調製した。
【0058】
(3)モノクローナル抗体固定化ラテックス粒子とヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との反応
実施例3と同様の方法で濁度変化量を求めた。
0pmol/mLとなるようにハプトグロビンを添加したときの濁度変化を量0と補正し、ヘモグロビンとハプトグロビンを等量に調製した、ハプトグロビンが13.0pmol/mL含まれるように添加した溶液の濁度変化量を100%としたときの濁度変化率を表3に示す。
【0059】
実施例3と同様の結果が得られた。すなわち、ハプトグロビンの添加濃度、すなわちヘモグロビン-ハプトグロビン複合体の濃度の増加に伴い、ラテックス粒子に固定化したモノクローナル抗体との抗原抗体反応によって生じるラテックス凝集による濁度変化が増加した。このことより、1-5G-3CとSU112との組み合わせ、および7C-7B-8Eと79-8G-3Fとの組合せを用いることにより、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出することが可能となる。
【0060】
【0061】
(比較例1 ELISA法によるヘモグロビンおよびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体の測定)
実施例2において、ヘモグロビンと反応させたときには凝集反応がみられず、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との特異的な反応が確認された、5C-2Aと79-8G-3Fの組合せについて、ELISA法でのヘモグロビンおよび
ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との結合の特異性を評価した。
【0062】
(1)モノクローナル抗体固定化ラテックス溶液の調製
5C-2Aを96穴マイクロプレートに固相化して固相化プレートとし、79-8G-3Fにホースラディシュペルオキシダーゼを標識化して酵素標識化物とした。上記の96穴マイクロプレートへの抗体の固相化は、公知の技術を利用して実施した。すなわち、96穴マイクロプレートに抗体添加して疎水性である96穴マイクロプレートの表面に抗体を物理的吸着を行うことにより、96穴マイクロプレートへの抗体の固相化を行った。
【0063】
(2)ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体試料の調製
50mM リン酸緩衝液(pH6.6)中に12.6pmol/mLのヘモグロビンおよび12.6pmol/mLのハプトグロビンを含む溶液を調製し、この溶液を50mM リン酸緩衝液(pH6.6)で倍々希釈して、1.6、3.2、6.3または12.6pmol/mLのヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を含む試料を調製した。
【0064】
(3)ELISAの測定方法
96穴マイクロプレートに標準液または検体10μLを加え、3分間攪拌した後に、25℃で60分間静置した。静置後、界面活性剤含有50mM リン酸緩衝液(pH7.4)を用いて3回洗浄した。
【0065】
洗浄後、96穴マイクロプレートに酵素標識物100μLを加え、3分間攪拌した後に、25℃で60分間静置した。静置後、界面活性剤含有50mM リン酸緩衝液(pH7.4)を用いて3回洗浄した。
【0066】
洗浄後、96穴マイクロプレートに0.4mg/mL o-フェニレンジアミン含有基質溶解液100μLを加え、25℃で14分間静置した。静置後、3N 硫酸を反応停止液として100μL添加した。
【0067】
測定は、サンライズレインボー(テカンジャパン社)を用いて測定波長492/650nmで行った。ラテックス等の不溶性担体に固定化することにより、ヘモグロビンと反応させたときには凝集反応がみられず、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との特異的な反応が確認された、5C-2Aと79-8G-3Fの組合せを用いたELISA法での測定結果を表4に示す。5C-2Aと79-8G-3Fの組合せを用いたELISA法では、ヘモグロビンおよびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体双方と反応しており、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出することはできなかった。
【0068】
【0069】
(実施例5 ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との特異的反応(3))
実施例2において、ヘモグロビンと反応させたときには凝集反応がみられず、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との特異的な反応が確認された、5C-2Aと79-8G-3Fの組合せについて、ラテックス凝集法でのヘモグロビンおよびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との結合の特異性を評価した。
【0070】
(1)モノクローナル抗体固定化ラテックス溶液の調製
5C-2Aおよび79-8G-3Fのモノクローナル抗体を、実施例2と同様の方法でラテックス粒子に固定化してラテックス溶液とした。5C-2Aおよび79-8G-3Fのモノクローナル抗体を固定化したラテックス溶液を混合し、試験に供した。
【0071】
(2)ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体試料の調製
50mM リン酸緩衝液(pH6.6)中に12.6pmol/mLのヘモグロビンおよび12.6pmol/mLのハプトグロビンを含む溶液を調製し、この溶液を50mM リン酸緩衝液(pH6.6)で倍々希釈して、1.6、3.2、6.3または12.6pmol/mLのヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を含む試料を調製した。
【0072】
(3)ラテックス凝集法の測定方法
R1として50mM HEPES緩衝液(pH7.4)を用い、R2として上記のモノクローナル抗体固定化ラテックス溶液を用いた。測定は、日立7170S形自動分析装置(日立ハイテクノロジー社製)を用いて行なった。測定方法は、標準液または検体15μLを反応セルに加えた後に50mM HEPES緩衝液(pH7.4)を100μL加え、その後モノクローナル抗体固定化ラテックス溶液を25μL加えた後の440秒間の波長660nmでの濁度変化量を測定した。
【0073】
(4)モノクローナル抗体固定化ラテックス粒子とヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との反応
ELISA法では、ヘモグロビンおよびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体双方との反応が確認された、5C-2Aと79-8G-3Fの組合せを用いたラテックス凝集法での測定結果を表5に示す。5C-2Aと79-8G-3Fの組合せは、ラテックス等の不溶性担体に固定化することにより、ヘモグロビンと反応させたときには凝集反応がみられず、ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体との特異的に反応することが確認された。
【0074】
【0075】
(実施例6 検体の測定(1))
従来法の一つのELISA法および本発明の方法を用いてヘモグロビン-ハプトグロビン複合体の測定を行なった。
【0076】
(1)ELISA法によるヘモグロビン-ハプトグロビン複合体の測定
抗ヒトハプトグロビンモノクローナル抗体を96穴マイクロプレートに固相化して固相化プレートとし、抗ヒトヘモグロビンポリクローナル抗体にホースラディッシュペルオキシダーゼを標識化して酵素標識物とした。
【0077】
96穴マイクロプレートに50mM リン酸緩衝液(pH7.2)100μLと標準液または検体10μLを加え、5分間撹拌した後に、25℃で120分間静置した。静置後、界面活性剤含有50mM リン酸緩衝液(pH7.5)を用いて3回洗浄した。
【0078】
洗浄後、96穴マイクロプレートに酵素標識物100μLを加え、5分間撹拌した後に、25℃で55分間静置した。静置後、界面活性剤含有50mM リン酸緩衝液(pH7.5)を用いて3回洗浄した。
【0079】
洗浄後、96穴マイクロプレートに0.4mg/mL o-フェニレンジアミン含有基質溶解液100μLを加え、25℃で15分間静置した。静置後、2N 硫酸を反応停止液として100μL添加した。
【0080】
測定は、サンライズレインボー(テカンジャパン社)を用いて測定波長492/650nmで行ない、標準の測定結果から得られた検量線を基に検体の測定値を求めた。
【0081】
(2)ラテックス凝集法によるヘモグロビン-ハプトグロビン複合体の測定
R1として50mM HEPES緩衝液(pH7.4)を用い、R2として実施例3のモノクローナル抗体固定化ラテックス溶液を用いた。
【0082】
測定は、JCA-BM2250(日本電子社)を用いて行なった。測定方法は、標準液または検体8μLを反応セルに加えた後にR1を50μL加え、その後R2を16.7μL加えた後の471秒間の波長658nmでの濁度変化量を測定し、標準の測定結果から得られた検量線を基に検体の測定値を求めた。
【0083】
(3)測定結果
5検体をELISAおよびラテックス凝集法で測定した結果を表6に、測定間の相関図を
図1に示す。
ラテックス凝集法による検体の測定結果は、ELISAによる検体の測定結果と同等で、相関係数は0.998と良好であった。なお、
図1の数値の1はヘモグロビンとしての濃度が12.9pmol/mLを示している。
【0084】
【0085】
これらの結果より、本発明を用いることにより、検体中のヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を精確に測定することが可能となり、病気の診断に寄与することが判った。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、不溶性担体粒子に固定化することによりヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出、測定することが出来るモノクローナル抗体若しくは抗体キット、およびそのモノクローナル抗体固定化不溶性担体粒子、並びにこれらを用いて検体中のヘモグロビン-ハプトグロビン複合体を特異的に検出、測定するための測定試薬及び測定方法を提供するものである。この発明を糞便検体に適用することにより、消化器官での出血の有無を短時間で精度良く調べることが可能となる。