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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】痛覚過敏を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4436 20060101AFI20220105BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K31/4436
A61K31/485
A61P25/04
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018549425
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 US2016066601
(87)【国際公開番号】W WO2017106306
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】62/267,144
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511158580
【氏名又は名称】トレベナ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TREVENA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】コンラド・コワン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・コブリシュ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ダブリュー・ラーク
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-532709(JP,A)
【文献】米国特許第08835488(US,B2)
【文献】The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2013年,Vol.344,pp.708-717
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2013年,Vol.56,pp.8019-8031
【文献】PLOS ONE,2014年,Vol.9, No.4, e93688,pp.1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 25/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるオピオイド誘発性痛覚過敏を治療又は逆転させる方法で使用するための医薬組成物であって、下記式
【化1】
式中
23及びR24は、存在しないか又は、それぞれ独立して、H、OH、Cl、Br、F、I、OMe、CN、CH 3 、フェニル、C 3 -C 6 炭素環、メタンスルホニル、CF 3
【化2】
であり、ここでR 29 はH又はC 1 ―C 6 アルキル、
で表される化合物、又はその薬学的に許容されるその塩を含む、
上記医薬組成物。
【請求項2】
化合物が下記式
【化3】
を有するか、又はその薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
化合物が下記式
【化4】
を有するか、又はその薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
化合物が下記式
【化5】
を有するか、又はその薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
23がメトキシである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
{2-[9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル}(チオフェン-2-イルメチル)アミン;
{2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル}(チオフェン-2-イルメチル)アミン;
[(3-メチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-メチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(4-メチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-エチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(3,5-ジメチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(4,5-ジメチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(3-メトキシチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(3-メトキシチオフェン-2-イル)メチル]({2-[9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-クロロチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-プロピルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
1-{5-[({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル}アミノ)メチル]チオフェン-2-イル}エタン-1-オール;
[(5-ニトロチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
{[5-(メチルスルファニル)チオフェン-2-イル]メチル}({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
(1-ベンゾチオフェン-3-イルメチル)({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
{[5-(2-メチルプロピル)チオフェン-2-イル]メチル}({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-ブチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
N-メチル-5-[({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル}アミノ)メチル]チオフェン-2-カルボキサミド;
{2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル}({2H,3H-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-5-イルメチル})アミン;
{[5-(フラン-2-イル)チオフェン-2-イル]メチル}({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-フルオロ-1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-シクロペンチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
N-エチル-5-[({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル}アミノ)メチル]チオフェン-2-カルボキサミド;
2-アミノ-4-クロロ-5-[({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル}アミノ)メチル]チオフェン-3-カルボキサミド;
[(4-フェニルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-フェニルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-メタンスルホニルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})ア
ミン;
[(4-ブロモチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-ブロモチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
{2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル}({[5-(チオフェン-2-イル)チオフェン-2-イル]メチル})アミン;
[(5-クロロ-1-ベンゾチオフェン-3-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(5-ブロモ-4-メチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(4-ブロモ-5-メチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(3-ブロモ-5-メチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(4-ブロモ-3-メチルチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;
[(4,5-ジブロモチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン;及び
[(3,4-ジブロモチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン
からなる群から選択される化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む、対象におけるオピオイド誘発性痛覚過敏を治療又は逆転させる方法で使用するための医薬組成物。
【請求項7】
化合物は以下の式
【化6】
を有する化合物、又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される塩は、化合物のフマル酸塩である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される塩は、化合物の塩酸塩である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2015年12月14日に出願した米国仮出願第62/267,144号の優先権主張出願であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本出願は又、2012年3月23日に出願した米国非仮出願第13/428,849号、2012年2月9日に出願した仮出願第61/596,808号及び2011年3月23日に出願した米国仮出願第61/466,809号にも関連する。これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、オピオイド受容体リガンドとして作用する化合物群、及び痛覚過敏、誘発性痛覚過敏、侵害受容性感作の減少などの治療、又は逆転等のために、そのような化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オピオイド受容体(OR)は、モルヒネ及び、多くの臨床用鎮痛薬を含む、モルヒネ様オピオイド、の作用を媒介する。3種類の分子的かつ薬理学的に異なるオピオイド受容体の型、δ、κ及びμが記載されている。更に、各型はサブタイプを有すると考えられている。これらのオピオイド受容体型の3種類全てが、細胞レベルでは、同じ機能的機構を共有していると思われる。例えば、オピオイド受容体の活性化は、アデニル酸シクラーゼの阻害を引き起こし、かつβ-アレスチンを補充する。
【0004】
治療的用量のモルヒネを疼痛を有する患者に与えた場合、患者は疼痛がより少ない強度であるか、より少ない不快感であるか、又は完全に消えたと報告する。苦痛の軽減を経験するほかに、一部の患者は多幸感を経験する。しかし、疼痛軽減用量のモルヒネを選択し、疼痛の無い個体に投与する場合、常に心地よい経験をする訳ではなく、一般に悪心があり、しかも、嘔吐も起こり得る。嗜眠状態、集中できないこと、精神状態の困難、感情鈍麻、身体活動の低下、視力低下、及び傾眠が引き続いて起こり得る。更に、モルヒネ及び同様の非バイアスドリガンドを投与された患者は痛覚過敏に苦しむ可能性がある。その原因がオピオイド療法によるものであれば、オピオイド誘発性痛覚過敏(OIH)と呼び得る。
【0005】
痛覚過敏を引き起こさせないか、又は、オピオイド若しくは、その他により、誘発される痛覚過敏に苦しむ人々を治療するために使用し得る治療薬として、用いる新しいORモジュレーターが継続して必要とされている。本発明の実施形態は、これらの必要性並びにその他を満足するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願には、オピオイド受容体(OR)リガンドを記載する。又、これに限定する訳ではないが、オピオイド誘発性痛覚過敏などの痛覚過敏を治療又は逆転する方法も記載する。従って、いくつかの実施形態では、被験体における痛覚過敏を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、被験体において、これに限定する訳ではないが、オピオイド誘発性痛覚過敏を含む痛覚過敏を逆転させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の任意の式の化合物又は薬学的に許容されるその塩を被験体に投与することを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、被験体における侵害受容性感作を減少させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の任意の式の化合物又は薬学的に許容されるその塩を被験体に投与することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、被験体の疼痛を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、第1のオピオイドが被験体における侵害受容性感作を増加するまでオピオイドアゴニストを被験体に投与し、次に、侵害受容性感作が増加した被験体に本明細書に記載した任意の式の化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、オピオイドに曝露された被験体における疼痛を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、オピオイドアゴニストを被験体に投与し、次にオピオイドの非存在下で、本明細書に記載した任意の式の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、被験体に投与する工程を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載した任意の式の化合物又は薬学的に許容されるその塩は下式Iの式を有する。
【化1】
【0011】
上記の構造において、変数A1、A2、A3、A4、A5、B1、B2、B3、B4、B5及びD1は、後述する化学残基のそれぞれの基から選択することができる。ORリガンド誘導体及び模倣体も又提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、化合物は、下式
【化2】
を有するか又は、薬学的に許容されるその塩、であり、ここでD1は、場合により置換されたアリールであり、B5は場合により置換されたピリジルである。
【0013】
本出願はまた、薬学的に許容される担体として本明細書に記載した1種又はそれ以上の化合物を含む医薬組成物を記載する。当然のことながら、本明細書に記載した化合物は、以下に更に記載するように、固体又は溶液(例えば、水溶液)等、任意の形態で使用しても良い。本明細書に記載した化合物は、例えば、凍結乾燥形態で得てもよく、単独で又は適切な添加剤と併用して、使用しても良い。
【0014】
いくつかの実施形態では、痛覚過敏、オピオイド誘発性痛覚過敏等、の治療又は逆転のための医薬の調製における、化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書に記載したバイアスドリガンドは痛覚過敏を誘発しないことを示す。
図2】バイアスドリガンドが、オピオイド誘発性痛覚過敏を逆転させることが出来ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願では、独特の特性を有する化合物群であるORリガンドを記載する。本明細書に記載した化合物は、オピオイド受容体(OR)が媒介するシグナル伝達のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用する。これらの受容体のリガンドは、これらに限定するわけではないが、オピオイド誘発性痛覚過敏及び侵害受容性感作などの疼痛及び疼痛関連障害を含むORに関連する症状を治療するために使用し得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、化合物は、又、式Iを含み、
【化3】
式中、A1は、存在しないか、CH2、CHR1、CR12、CH、CR1、O、S、SO、SO2、NH又はNR1であり、A2は、存在しないか、CH2、CHR5、CR56、CH、CR5、O、S、SO、SO2、NH又はNR5であり、A3は、存在しないか、CH2、CHR7、CR78、O、S、SO、SO2、NH、NR7、CH又はCR7であり、A4は、存在しないか、CH2、式C(CH2n、ここでn=2~5、の環、CHR9、CR910、O、S、SO、SO2、NH、NR9、CH又はCR9であり、及びA5は、存在しないか、CH2、CHR11、CR1112、CH2CH2、CHR11CH2、CH2CHR11、CHR11CHR12、O、S、SO、SO2、NH、NR11、CH又はCR11である。
【0018】
5個のAa(具体的にはA1、A2、A3、A4、A5)のうち2個を超えて同時に存在しないことはあり得ない。A1からA5迄のヘテロ原子の数が同時に2を超えることはあり得ず、かつ環構造内でのO-O、S-O、S-S、S-Nフラグメントはこの構成から除外する。
【0019】
1、A2、A3、A4、A5、及びD1に連結した炭素を含有する環は、別の環、例えばベンゼン、ピリジン、ピリミジン、フラン、チオフェン又はピリダジンと縮合し得るが、これらの例(ezamples)には限定されず、ここで生じた二環式環は化学的に安定であり、かつ合成により容易に得られる。上述の縮合環は、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、ホルミル、アセチル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、及び他の小さい置換基で多置換し得ることも理解される。A1とA2、A2とA3、A3とA4、A4とA5との間の結合は、独立して単結合又は二重結合であっても良い。A1とA2、A2とA3、A3とA4、A4とA5との間の結合は同時に二重結合にはなり得ない。
【0020】
2及びA4は炭素架橋により連結し得る。このような架橋の例としては-CH2-、及び-CH2CH2-が挙げられる。
【0021】
1は、CH2、CHR13、CR1314、O、S、SO、SO2、NH、NR13、CR13又はCOである。B2はCH2、CHR15、CR1516、CR15又はCOである。B3はH、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルカルボニル、分岐アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、又はアルキルスルホニルである。B4は、存在しないか、C1~C6アルキル、CH2、CH2CH2、CHR19、CR1920又はCOである。いくつかの実施形態において、B4がアルキルである場合、1つ又はそれ以上の水素を重水素で置き換えても良い。B5はアルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、炭素環-置換アルキル、アリール、炭素環又はアリールアルキルである。
【0022】
アリール、炭素環(非芳香族)/複素環(O、N、Sを含む1~3個のヘテロ原子を有する非芳香族)は非置換であるか、又は小さい置換基で置換される。小さい置換基は、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリール、アリールアルキル、炭素環又は炭素環-アルキルでも良い。いくつかの実施形態において、小さい置換基は、F、Cl、Br、CH3、CH2CH3、CH2F、CHF2、CF3、n-Pr、n-Bu、i-Bu、sec-Bu、i-Pr、t-Bu、CN、OH、OMe、OEt、O-iPr、OCF3、NH2、NHMe、NMe2、メトキシカルボニル、メタンスルホニル(methanesuflonyl)、Ph、ベンジル、MeSO2、ホルミル、及びアセチルから選択される。
【0023】
炭素環は二重結合を含有し得るが、それらは芳香族であるべきではない。
【0024】
1はアリール基又は炭素環である。
【0025】
アリール基は単環式芳香族基又は二環式芳香族基の何れかであり、これらは芳香族基中にヘテロ原子を含有し得る(例えばヘテロアリール)。下記の構造は代表的なアリール基のいくつかの例であるが、アリール基はこれらの例に限定される訳ではない。
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
炭素環は、単環式又は二環式の非芳香族環系の何れかである。以下の構造は代表的な炭素環の例のいくつかであるが、炭素環はこれらの例に限定される訳ではない。
【0029】
【化6】
ここで、炭素環の例におけるX1、及びX2は、独立して、O、S、N、NH又はN18である。
【0030】
アリール基は、シアノ、ハロゲン、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプタニル、アルキルメルカプタニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環-アルキル、及び/又は他の小さな置換基で独立して単置換又は多置換していても良い。いくつかの実施形態において、小さな置換基は、F、Cl、Br、CH3、CH2CH3、CH2F、CHF2、CF3、n-Pr、n-Bu、i-Bu、sec-Bu、i-Pr、t-Bu、CN、OH、OMe、OEt、O-iPr、OCF3、NH2、NHMe、NMe2、メトキシカルボニル、メタンスルホニル、Ph、ベンジル、ホルミル、及びアセチルから選択される。
【0031】
いくつかの実施形態において、D1はアリール、又は炭素環である。
【0032】
いくつかの実施形態において、R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R18、R19、及びR20は独立して、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アルキル、分岐アルキル、ハロゲン化アルキル、分岐ハロゲン化アルキル、アリール、アリールアルキル、炭素環、炭素環-アルキル、アルキルカルボニル、分岐アルキルカルボニル、ハロゲン化アルキルカルボニル、分岐ハロゲン化アルキルカルボニル、アリールカルボニル又はアルコキシカルボニルである。いくつかの実施形態において、生じる構造が安定である場合はいつでも、R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R18、R19、及びR20は独立して、F、Cl、Br、CH3、CH2CH3、CH2F、CHF2、CF3、n-Pr、n-Bu、i-Bu、sec-Bu、i-Pr、t-Bu、CN、OH、OMe、OEt、O-i-Pr、メトキシカルボニル、フェニル、ベンジル、ホルミル、又はアセチルである。
【0033】
いくつかの実施形態において、R1及びR2、R5及びR6、R7及びR8、R9及びR10、R11及びR12、R13及びR14、R15及びR16、R19及びR20、又はR15及びR19は単環を形成し得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、Meはメチルであり、Etはエチルであり、i-Prはi-プロピルであり、t-Buはt-ブチルであり、Phはフェニルである。
【0035】
いくつかの実施形態において、以下の化合物は化合物の属(genus)から除いても良い。2-[({2-[2-エチル-2-メチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]フェノール、2-[({2-[2-エチル-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]フェノール、{2-[2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4イル]エチル}[(4-メトキシフェニル)メチル]アミン、{2-[(4S*,R*)-2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル}[(1R)-1-フェニルエチル]アミン、{2-[(4S*,R*)-2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル}[(1S)-1-フェニルエチル]アミン、ベンジル({2-[2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル})アミン、2-[({2-[2-エチル-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]フェノール、ベンジル[2-(2,2-ジメチル-4-フェニルオキサン-4-イル)エチル]アミン、{2-[2-エチル-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル}[(4-メトキシフェニル)メチル]アミン、[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]({2-[4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、{2-[4-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル}(1-フェニルエチル)アミン、[(4-クロロフェニル)メチル]({2-[4-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、ベンジル({2-[2-エチル-4-(2-メトキシフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]({2-[2-エチル-4-(2-メトキシフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、4-[({2-[4-(2-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]-N,N-ジメチルアニリン、ベンジル({2-[4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、{2-[2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル}(1-フェニルエチル)アミン、[2-(2,2-ジメチル-4-フェニルオキサン-4-イル)エチル][(4-メトキシフェニル)メチル]アミン、{2-[4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル}[(4-メトキシフェニル)メチル]アミン、[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル][2-(2,2-ジメチル-4-フェニルオキサン-4-イル)エチル]アミン
【0036】
本出願はまた、下式II-1、及びII-2
【化7】
式中、A2はCH2、CHR5、CR56であり、A4はCH2、CHR9、CR910又は式C(CH2n、ここでn=2~5である、の環である、を有する化合物を記載する。
【0037】
更に、いくつかの実施形態において、R5、R6、R9、及びR10は独立して、CH3、CH2CH3、CH2F、CHF2、CF3、n-Pr、n-Bu、i-Bu、sec-Bu、i-Pr、t-Bu、又はフェニルである。更に、R5及びR6、又はR9及びR10は単環式炭素環を形成し得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、A2及びA4は炭素架橋により連結され得る。この架橋は-CH-又は-CH2CH2-であっても良い。
【0039】
更に、いくつかの実施形態において、B3は以下の、H、アルキル、分岐アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルカルボニル、分岐アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、及びアルキルスルホニルより選択される。いくつかの実施形態において、B3はC1-C5アルキルである。いくつかの実施形態において、B3はHである。
【0040】
更に、いくつかの実施形態において、B4は、存在しないか、C1-C6アルキル、CH2、CH2CH2、CHR19、CR1920又はCOである。更に、R19及びR20は式(CH2n[ここでn=2~4である]の単環を形成し得る。B5は、アルキル、分岐アルキル、炭素環、炭素環-置換アルキル、アリール又はアリールアルキルである。
【0041】
更に、いくつかの実施形態において、D1はアリールである。アリール基の例は上に示される。
【0042】
各アリール基は、F、Cl、Br、CH3、CH2CH3、CH2F、CHF2、CF3、n-Pr、n-Bu、i-Bu、sec-Bu、i-Pr、t-Bu、CN、OH、OMe、OEt、O-iPr、OCF3、NH2、NHMe、NMe2、メトキシカルボニル、Ph、ベンジル、ホルミル、又はアセチルで独立して単置換又は多置換され得る。即ち各アリール基は、同じ置換基(即ち、2つのクロロ基)で多置換しても良く、又は、たとえ、異なる基であっても単に多置換されてもよい(例えば、1つのクロロ及び1つのメチル基を有するアリール基は多置換されるとみなされる)。
【0043】
本出願はまた、下式III
【化8】
式中、A2はCH2、CHR5又はCR56であり、A4はCH2、CHR9、CR910又は式C(CH2n、ここでn=2~5である、の環である、の構造を有する化合物を提供する。
【0044】
更に、R5、R6、R9、及びR10は独立して、CH3、CH2CH3、CH2F、CHF2、CF3、n-Pr、n-Bu、i-Bu、sec-Bu、i-Pr、t-Bu、又はフェニルである。R5及びR6、又はR9及びR10は単環式炭素環を形成し得る。
【0045】
2及びA4は炭素架橋により連結され得る。架橋は-CH2-又は-CH2CH2-でも良い。
【0046】
更に、B3は、H、アルキル、分岐アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルカルボニル、分岐アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル又はアルキルスルホニルから選択される。
【0047】
更に、B4は、存在しないか、C1-C6アルキル、CH2、CH2CH2、CHR19、CR1920又はCOである。更に、R19及びR20は式(CH2n、ここでn=2~4である、の単環を形成し得る。B5は、アルキル、分岐アルキル、炭素環、炭素環-置換アルキル、アリール又はアリールアルキルである。
【0048】
更に、D1はアリールである。アリール基の例は上に示される。
【0049】
アリール基は、F、Cl、Br、CH3、CH2CH3、CH2F、CHF2、CF3、n-Pr、n-Bu、i-Bu、sec-Bu、i-Pr、t-Bu、CN、OH、OMe、OEt、O-iPr、OCF3、NH2、NHMe、NMe2、メトキシカルボニル、Ph、ベンジル、ホルミル、又はアセチルで単置換又は多置換され得る。
【0050】
本出願はまた、式IV-1、IV-2、若しくはIV-3、V、又はVI、
【化9】
式中、R21及びR22は独立してH又はCH3であり、A4はCH2、CR910又は式C(CH2)n、ここでn=2~5である、の環である、の構造を有する化合物を提供する。
【0051】
更に、R9及びR10は独立してCH3又はCH2CH3である。
【0052】
更に、B3はH、C1-C6アルキル又は分岐アルキルである。
【0053】
更に、B4は存在しないか、C1-C6アルキル、CH2、CH2CH2、又は-CHCH3である。
【0054】
5は-(CH2)nCH3、ここでn=2~3である、-C(CH33、シクロヘキシル、シクロペンチル、アリール又はアリールアルキルである。いくつかの実施形態において、アリール基は以下のリストから選択する。
【化10】
各アリール基は、例えばF、I、Cl、Br、CH3、CN、OH、OMe、OEt、OCF3、CF3、又はメタンスルホニルで単置換若しくは多置換されていても良い。
【0055】
更に、いくつかの実施形態において、D1はフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、又は4-ピリジルであり、これらは独立して、F、Cl、Br、OCF3、CF3、又はCH3で単置換又は多置換しれ得る。
【0056】
本出願はまた、式V-1、V-2、V-3、VI-1、VI-2、又はVI-3、
【化11】
【化12】
【化13】
[式中、D1はアリールであり、B5はアリール又は炭素環である]の構造を有する化合物を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態において、各アリール基は独立して以下のリストから選択される。
【化14】
【0058】
いくつかの実施形態において、各アリール基は独立して単置換又は多置換される。いくつかの実施形態において、各アリール基は独立して、I、F、Cl、Br、CH3、CN、OH、OMe、OEt、OCF3、CF3、又はメタンスルホニルで単置換又は多置換され得る。更に、いくつかの実施形態において、炭素環はシクロヘキシル、シクロヘキセニル又はシクロペンチルである。
【0059】
いくつかの実施形態において、D1は場合により単置換又は多置換されたアリールである。いくつかの実施形態において、B5は場合により単置換又は多置換されたアリール又は炭素環である。いくつかの実施形態において、D1又はB5は、
【化15】
からなる群より独立して選択され、かつ、
ここで炭素環はシクロヘキシル、シクロヘキセニル又はシクロペンチルである。
【0060】
いくつかの実施形態において、D1は場合により単置換又は多置換の、フェニル、2-ピリジル(pyridil)、3-ピリジル、又は4-ピリジルである。いくつかの実施形態において、D1は、F、Cl、Br、I、OCF3、CH3、及びCF3の1つ又はそれ以上で場合により置換される。いくつかの実施形態において、D1は置換されていない。
【0061】
いくつかの実施形態において、B5は場合により単置換又は多置換された、
【化16】
である。
【0062】
いくつかの実施形態において、B5は、Cl、Br、F、I、OMe、CN、CH3、メタンスルホニル、及びCF3の1つ又はそれ以上で置換される。いくつかの実施形態において、B5は、Cl、Br、F、I、OMe、CN、CH3、CF3、及びメタンスルホニルの2種若しくはそれ以上、又はそれらの組み合わせで置換される。即ち、B5は2種又はそれ以上の置換基を有し得るが、複数の置換基の全てが同じである必要はない。
【0063】
いくつかの実施形態において、式VII-1、VII-2、又はVII-3
【化17】
の構造を有する化合物を提供し、式中、D1は場合により置換されたヘテロアリール又はアリールであり、B3はH、又はアルキルであり、B5は場合により置換されたアリール又はヘテロアリールであり、及びR26とR27とはそれぞれ水素又はその同位体である。いくつかの実施形態において、R26とR27とは重水素である。いくつかの実施形態において、R26とR27とは独立してアルキルである。いくつかの実施形態において、B3はC1-C5アルキルである。
【0064】
いくつかの実施形態において、化合物は、下式VIII
【化18】
式中、D1は場合により置換されたヘテロアリール又はアリールであり、B3はH又はアルキルであり、B5は場合により置換されたアリール又はヘテロアリールであり、そしてはそれぞれ水素又はその同位体である。いくつかの実施形態において、R26とR27とは重水素である。いくつかの実施形態において、R26とR27とは独立してアルキルである。A4は、本明細書に記載される通りである。いくつかの実施形態において、B3はC1-C5アルキルである。いくつかの実施形態において、鏡像異性体は、D1に連結している炭素におけるR又はS鏡像異性体である。
【0065】
いくつかの実施形態において、化合物は、式IX
【化19】
又は、その鏡像異性体の構造を有する。
いくつかの実施形態において、鏡像異性体は、D1に連結している炭素におけるR又はS鏡像異性体である。
【0066】
いくつかの実施形態において、化合物は、式X
【化20】
又はその鏡像異性体の構造を有する。
いくつかの実施形態において、鏡像異性体はD1に連結している炭素におけるR又はS鏡像異性体である。
【0067】
本明細書に記載される構造のいくつかの実施形態において、D1は場合により置換されたピリジル基又はフェニル基である。いくつかの実施形態において、D1は場合により置換された2-ピリジル、3-ピリジル、若しくは4-ピリジル基又はフェニル基である。いくつかの実施形態において、D1は、H、OH、アルキルアルコール、ハロ、アルキル、アミン、アミド、シアノ、アルコキシ、ハロアルキル、又はアルキルスルホニル(aklylsulfonyl)の1種又はそれ以上で場合により置換される。いくつかの実施形態において、D1は、H、OH、Cl、Br、F、I、OMe、CN、CH3、CF3の1種又はそれ以上で場合により置換される。
【0068】
本明細書において記載される構造のいくつかの実施形態において、B5は場合により置換されたチオフェン基である。いくつかの実施形態において、B5はアルコキシ基で置換される。いくつかの実施形態において、B5はC1-C5アルコキシ基で置換される。いくつかの実施形態において、B5はメトキシ基で置換される。いくつかの実施形態において、B5
【化21】
である。
いくつかの実施形態において、B5
【化22】
であり、ここでR23、R24及びR30はそれぞれ独立して、存在しないか、H、OH、環、アリール、分岐又は非分岐アルキルアルコール、ハロ、分岐又は非分岐アルキル、アミン、アミド、シアノ、アルコキシ、ハロアルキル、アルキルスルホニル(aklylsulfonyl)、亜硝酸塩、アルキルスルファニルであり、及び、R25はH又はアルキルである。いくつかの実施形態において、R23及びR24は、B5の原子の1種又はそれ以上に結合されたアリール又は環を共に形成する。R23、R24、及びR30は更に置換されてもよい。いくつかの実施形態において、R23、R24、及びR30はそれぞれ独立して、H、NH2、OH、Cl、Br、F、I、OMe、CN、CH3、フェニル、C3-C6炭素環、メタンスルホニル、CF3
【化23】
であり、ここでR29はH又はアルキルである。いくつかの実施形態において、R29はC1-C6アルキルである。いくつかの実施形態において、R23、R24、及びR30のうちの1種はHである。いくつかの実施形態において、R23、R24、及びR30のうちの少なくとも1種はHである。いくつかの実施形態において、R23、R24、及びR30のうちの2種はHである。
【0069】
以下の化合物及び本明細書に記載される他の化合物は、OR媒介シグナル伝達に対するアゴニスト活性を有する。[(4-クロロフェニル)メチル]({2-[4-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル][2-(2,2-ジメチル-4-フェニルオキサン-4-イル)エチル]アミン、2-[({2-[2-エチル-2-メチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]フェノール、[2-(2,2-ジメチル-4-フェニルオキサン-4-イル)エチル][(2-フルオロフェニル)メチル]アミン、4-[({2-[4-(2-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]-N,N-ジメチルアニリン、2-[({2-[2-エチル-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]フェノール、[(3-メトキシチオフェン-2-イル)メチル]({2-[(9R)-9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル]エチル})アミン。他の例には、本明細書に記載の化合物及び薬学的に許容されるその塩が含まれる。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているもの、等の化合物を提供する。いくつかの実施形態において、実施例において記載される化合物から選択される化合物を提供する。化合物は、本明細書に記載される、疼痛の処置を含む方法の何れかにおいて使用しても良いがこれに限定する訳ではない。例えば、本化合物を痛覚過敏、誘発性痛覚過敏、侵害受容性感作の減少等の治療、又は逆転させるために使用しても良い。本化合物は又、そのための医薬品の調製に使用しても良い。いくつかの実施形態では、疼痛の治療、痛覚過敏の治療又は逆転、誘発性痛覚過敏、侵害感作の減少等のための本化合物の使用を提供する。
【0071】
従って、本出願は、上で列挙される化合物の1種又はそれ以上を被験体又はそれを必要とする被験体に投与することによりOR媒介シグナル伝達におけるアゴニスト活性を生じさせる方法を提供する。
【0072】
本明細書において記載した組成物における様々な原子は、より低い頻度で存在する同位体であっても良い。水素は本明細書で記載した組成物における如何なる位置であっても重水素で置換しても良い。場合により、水素はまたトリチウムで置き換えても良い。炭素(12C)は、本明細書で記載した組成物における如何なる位置であっても13C又は14Cで置き換えても良い。窒素(14N)は15Nで置き換えても良い。酸素(16O)は、本明細書で記載した組成物における如何なる位置であっても17O又は18Oで置き換えても良い。硫黄(3 2S)は、本明細書で記載した組成物における如何なる位置であっても33S、34S又は36Sで置き換えても良い。塩素(35Cl)は、本明細書で記載した組成物における如何なる位置であっても37Clで置き換えても良い。臭素(79Br)は、本明細書で記載した組成物における如何なる位置であっても81Brで置き換えても良い。
【0073】
本明細書において記載し、選択した化合物は、オピオイド受容体(OR)のアゴニスト及びアンタゴニストである。OR媒介シグナル伝達を刺激する化合物の能力は、OR媒介シグナル伝達若しくはOR活性を、又はこのようなシグナル伝達/活性が存在しないことを、検出するために当該分野で公知の何れかのアッセイを使用して測定し得る。「OR活性」とは、シグナルを伝達するORの能力を指す。このような活性は、例えば、異種細胞において、OR(又はキメラOR)をアデニル酸シクラーゼのような下流のエフェクターに共役させることにより測定し得る。
【0074】
本明細書において使用する「天然リガンド誘発活性」は、ORの天然リガンドによるORの活性化を指す。活性は、任意の数の終点を使用してORの活性を測定することにより評価しても良い。
【0075】
一般に、OR媒介シグナル伝達を調節する化合物を試験するためのアッセイは、ORの影響下で間接的又は直接的に何れかのパラメーター、例えば機能的、物理的又は化学的な効果を測定することを含む。
【0076】
潜在的可能性のある、活性化因子、阻害剤又は調節因子で処理したORを含むサンプル又はアッセイを、阻害剤、活性化因子又は調節因子を用いないコントロールサンプルと比較して、その阻害の程度を調べた。コントロールサンプル(阻害剤で未処理)に、相対的OR活性値100%を割り当てた。ORの阻害は、コントロールと比較したとき、OR活性値が約80%、50%、又は25%を達成した。ORの活性化は、コントロール(活性化因子で未処理)と比較してOR活性値が、110%、150%、200~500%(即ち、コントロールと比較して2~5倍高い)又は、1000~3000%若しくはそれ以上を達成した。
【0077】
ORの機能に及ぼす化合物の効果を、上記のパラメーターの何れかを調べることにより測定しても良い。OR活性に影響を及ぼす適切な生理学的変化の何れかを使用して、OR及び天然リガンドが媒介するOR活性、に及ぼす化合物の影響を評価しても良い。インタクトな細胞又は動物を使用して、機能的結果を測定する場合、cAMPのような細胞内セカンドメッセンジャーの変化等の様々な効果を測定しても良い。
【0078】
OR活性の調節因子は、上記のように、組み換え又は天然由来のORポリペプチドの何れかを使用して試験する。このタンパク質を、単離し、細胞内で発現させ、細胞由来の膜内において発現させ、組織内、又は動物内において発現させても良い。例えば、神経細胞、免疫系の細胞、形質転換させた細胞、又は膜を使用して、上記のGPCRポリペプチドを試験しても良い。調節は本明細書で記載したインビトロ又はインビボでのアッセイの1つを使用して試験する。シグナル伝達は、又、可溶性又は固体状態の反応を用いてインビトロで調べても良く、異種シグナル伝達ドメインに共有結合で連結された受容体の細胞外ドメイン、又は、受容体の膜貫通及び若しくは細胞質ドメインに共有結合で連結された異種細胞外ドメイン等のキメラ分子を使用する。更に、対象とするタンパク質のリガンド結合ドメインを可溶性又は固体の状態でのインビトロの反応で使用し、リガンド結合についてのアッセイをしても良い。
【0079】
OR、ドメイン又はキメラタンパク質へのリガンド結合は、多数の形式で試験しても良い。結合は、溶液内で、固相に付着させた二重層膜内で、脂質単層内で、又は小胞内で実施しても良い。通常は、本明細書において記載したアッセイにおいて、天然リガンドのその受容体への結合を候補となる調節因子の存在下で測定する。あるいは、候補となる調節因子の結合を、天然リガンドの存在下で測定し得る。しばしば、天然リガンドの受容体に対する結合と競合する化合物の能力を測定する競合アッセイも使用される。結合の試験は、分光特性(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)の変化、流体力学的(例えば、形状)変化、又はクロマトグラフィー若しくは溶解度特性の変化を測定しても良い。
【0080】
調節因子はまた、β-アレスチンの補充を含むアッセイを使用して同定し得る。β-アレスチンは、非活性化細胞内で細胞質全体にわたって分布する調節性タンパク質の役割を有する。適切なORに結合するリガンドの結合は、β-アレスチンの細胞質から細胞表面への再分配に関連し、ここで、このリガンドがORに関連する。従って、受容体活性化及び候補となる調節因子のリガンド誘発受容体活性化に及ぼす効果を、細胞表面へのβ-アレスチン補充をモニタリングすることにより評価しても良い。これは、標識したβ-アレスチン融合タンパク質(例えば、β-アレスチン-緑色蛍光タンパク質(GFP))を細胞にトランスフェクトし、次にその分布を共焦点顕微鏡法を使用してモニタリングすることにより頻繁に実施されている(例えば、Groarke et al.、J.Biol.Chem.274(33):23263 69(1999)を参照のこと)。
【0081】
OR-タンパク質相互作用を生存細胞において評価するために使用し得る別の技術は、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を含む。BRETに関する詳細な考察はKroeger et al.、J.Biol.Chem.、276(16):12736 43(2001)の中で見出すことが出来る。
【0082】
他のアッセイとしては、リガンド結合により活性化された場合に、アデニル酸シクラーゼのような下流エフェクターを活性化又は阻害することにより細胞内環状ヌクレオチド(例えばcAMP)のレベルの変化を生じる受容体の活性を測定することを含み得る。細胞内cAMPの変化はイムノアッセイを使用して測定しても良い。Offermanns & Simon、J.Biol.Chem. 270:15175 15180(1995)に記載された方法でcAMPのレベルを測定するために使用し得る。又、Felley-Bosco et al.、Am.J.Resp.Cell and Mol.Biol.11:159 164(1994)に記載された方法も、cGMPのレベルを測定するために使用し得る。更に、cAMPを測定するためのアッセイキットが米国特許第4,115,538号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
転写レベルを測定して試験化合物のリガンド誘導シグナル伝達に及ぼす効果を評価しても良い。対象とするタンパク質を含有する宿主細胞を、天然リガンドの存在下で、試験化合物と十分な時間の間接触させ、何らかの相互作用に効果を及ぼし、次いで遺伝子発現のレベルを測定する。このような相互作用に効果を及ぼすための時間の長さは、例えば時間を経過させながら、時間の関数として転写レベルを測定すること等により経験的に決定し得る。転写の量は、当業者に適切であると知られている方法の何れかを使用して測定し得る。例えば、対象とするタンパク質のmRNA発現は、ノーザンブロットを使用して検出出来、又はそれらのポリペプチド産生物はイムノアッセイを使用して同定し得る。あるいは、レポーター遺伝子を使用する転写ベースのアッセイを、米国特許第5,436,128号に記載してあるように使用出来、これは、参照により本明細書に取り込まれる。レポーター遺伝子は、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼであっても良い。更に、対象とするタンパク質は、緑色蛍光タンパク質のような二次レポーターへの結合を介する間接的レポーターとして使用し得る(例えば、Mistili & Spector、Nature Biotechnology 15:961 964(1997)を参照)。
【0084】
次いで転写の量を、試験化合物の不在下で同じ細胞における転写量と比較するか、又は対象とするタンパク質を欠いた実質的に同一の細胞における転写量と比較し得る。実質的に同一の細胞は、組み換え細胞が製造された同じ細胞であるが異種DNAの導入により改変されていないものから誘導し得る。転写量の差異は、試験化合物が対象とするタンパク質の活性を何らかの方法で変化させたことを示す。
【0085】
医薬組成物/製剤
医薬組成物は、1種又はそれ以上の生理学的に許容しうる担体又は添加剤を使用して標準的な技術により製剤化し得る。製剤は、緩衝剤及び/又は保存料を含有し得る。化合物及び生理学的に許容し得るそれらの塩及び溶媒和物は、吸入、局所、鼻腔、経口、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、膀胱内又は髄腔内)又は直腸を経由するものを含む何れかの適切な経路による投与のために、1種又はそれ以上の薬学的に許容しうる担体を含むビヒクル中で製剤化しても良く、その比率は、化合物の溶解度及び化学的性質、選択された投与の経路並びに標準的な生物学的慣行により決定される
【0086】
医薬組成物は、本明細書に記載した1種又はそれ以上の有効量の化合物を、例えば薬学的に許容しうる希釈剤、保存料、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又は他の担体と共に含んでいても良い。このような組成物は、様々な緩衝剤内容物(例えば、TRIS又は他のアミン類、炭酸塩、リン酸塩、アミノ酸、例えば、塩酸グリシンアミド(特に生理学的pH範囲において)、N-グリシルグリシン、リン酸ナトリウム若しくはリン酸カリウム(二塩基、三塩基)等、又はTRIS-HCl若しくは酢酸塩)、pH及びイオン強度の希釈剤;添加剤、例えば洗浄剤及び可溶化剤(例、Pluronics、Tween 20、Tween 80(ポリソルベート80)、Cremophor等の界面活性剤、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール、)、抗酸化剤(例、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存料(例、Thimersol、ベンジルアルコール、パラベン等)及び増量物質(例、例えばスクロース、ラクトース、マンニトール等の糖類、ポリビニルピロリドン又はデキストラン等のポリマー);並びに/又はポリ乳酸、ポリグリコール酸などのようなポリマー化合物の顆粒調製物内への若しくはリポソーム内への材料挿入剤を含み得る。ヒアルロン酸もまた使用し得る。このような組成物を使用して、本明細書に記載した化合物の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼしても良い。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed.(1990、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.18042)pages 1435-1712を参照、これは参照により本明細書に組み込まれる。組成物は、例えば液体形態に調製しても良く、又は凍結乾燥形態等の乾燥散剤に調製しても良い。このような組成物を投与する特定の方法を以下に記載する。
【0087】
緩衝剤を本明細書に記載した製剤中に含めようとする場合、緩衝剤は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、又はそれらの混合物から選択しても良い。緩衝剤はまた、グリシルグリシン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸ナトリウム又はそれらの混合物でも良い。
【0088】
薬学的に許容しうる保存料を本明細書に記載した化合物の1つの製剤中に含めようとする場合、その保存料は、フェノール、m-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメロサール(thiomerosal)、又はそれらの混合物から選択しても良い。保存料は又、フェノール又はm-クレゾールでも良い。
【0089】
保存料は約0.1mg/ml~約50mg/mlの濃度、約0.1mg/ml~約25mg/mlの濃度、又は約0.1mg/ml~約10mg/mlの濃度で存在する。
【0090】
医薬組成物における保存料の使用は当業者に周知である。Remington、The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が簡便に参照される。
【0091】
製剤はキレート化剤を更に含み得、この場合、キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、及びアスパラギン酸の塩、並びにそれらの混合物から選択し得る。
【0092】
キレート化剤は、0.1mg/ml~5mg/ml、0.1mg/ml~2mg/ml又は2mg/ml~5mg/mlの濃度で存在しても良い。
【0093】
医薬組成物におけるキレート化剤の使用は当業者に周知である。Remington、The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が簡便に参照される。
【0094】
本明細書に記載される化合物の製剤は、高分子量ポリマー及び低分子化合物から選択される安定剤を更に含み得、この場合、このような安定剤としては、これに限定する訳ではないが、ポリエチレングリコール(例、PEG 3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、種々の塩(例、塩化ナトリウム)、L-グリシン、L-ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、及びスレオニン又はそれらの混合物の何れかが挙げられる。安定剤は又、L-ヒスチジン、イミダゾール又はアルギニンでも良い。
【0095】
高分子量ポリマーは、0.1mg/ml~50mg/m、0.1mg/ml~5mg/ml、5mg/ml~10mg/ml、10mg/ml~20mg/ml、20mg/ml~30mg/ml又は30mg/ml~50mg/mlの濃度で存在しても良い。
【0096】
低分子量化合物は、0.1mg/ml~50mg/ml、0.1mg/ml~5mg/ml、5mg/ml~10mg/ml、10mg/ml~20mg/ml、20mg/ml~30mg/ml、又は、30mg/ml~50mg/mlの濃度で存在しても良い。
【0097】
医薬組成物における安定剤の使用は当業者に周知である。Remington、The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が簡便に参照される。
【0098】
本明細書に記載される化合物の製剤は、更に界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、洗浄剤、エトキシ化ひまし油、ポリグリコール分解化(polyglycolyzed)グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、例えば188及び407、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、例えばアルキル化及びアルコキシ化誘導体(tween類、例えばTween-20、又はTween-80)、モノグリセリド若しくはそのエトキシ化誘導体、ジグリセリド若しくはそのポリオキシエチレン誘導体、グリセロール、コール酸若しくはその誘導体、レシチン、アルコール及びリン脂質、グリセロリン脂質(レシチン、ケファリン、ホスファチジルセリン)、グリセロ糖脂質(ガラクトピラノシド(galactopyransoide))、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)、及びスフィンゴ糖脂質(セラミド、ガングリオシド)、DSS(ドクサートナトリウム、ドクサートカルシウム、ドクサートカリウム、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、ジパルミトイルホスファチジン酸、カプリル酸ナトリウム、胆汁酸及びその塩及びグリシン若しくはタウリン結合体、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、アニオン性(アルキル-アリール-スルホネート)一価界面活性剤、パルミトイル リゾホスファチジル-L-セリン、リゾリン脂質(例、エタノールアミン、コリン、セリン又はスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)、リゾホスファチジル及びホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えばリゾホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及び極性頭部基、即ち、コリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトールの修飾、並びに正に荷電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン及びリゾホスファチジルスレオニン、双性イオン性界面活性剤(例、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ1-プロパンスルホネート、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、ドデシルホスホコリン、ミリストイル リゾホスファチジルコリン、鶏卵リゾレシチン)、カチオン性界面活性剤(第四級アンモニウム塩基)(例えば、セチル-トリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド)、非イオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronics/Tetronics、Triton X-100、ドデシルβ-D-グルコピラノシド)又はポリマー界面活性剤(Tween-40、Tween-80、Brij-35)、フシジン酸誘導体--(例、タウロ-ジヒドロフシジン酸ナトリウム等)、長鎖脂肪酸及びその塩C6-C12(例、オレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン及び誘導体、リジン、アルギニン若しくはヒスチジンのNα-アシル化誘導体、又はリジン若しくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン若しくはヒスチジン及び中性若しくは酸性アミノ酸の組み合わせの何れかを含むジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸及び2つの荷電アミノ酸の組み合わせの何れかを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体から選択され得るか、又は界面活性剤は、イミダゾリン誘導体、又はそれらの混合物から選択され得る。
【0099】
薬組成物における界面活性剤の使用は当業者に周知である。Remington、The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が簡便に参照される。
【0100】
薬学的に許容しうる甘味料は、本明細書に記載した化合物の製剤の一部であっても良い。薬学的に許容しうる甘味料は、少なくとも1つの強力甘味料(intense sweetener)、例えばサッカリン、サッカリンナトリウム又はカルシウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サイクラミン酸ナトリウム、アリターム、ジヒドロカルコン甘味料、モネリン、ステビオシド又はスクラロース(4,1’,6’-トリクロロ-4,1’,6’-トリデオキシガラクトスクロース)、サッカリン、サッカリンナトリウム又はカルシウム、並びに場合によりバルク(bulk)甘味料、例えばソルビトール、マンニトール、フルクトース、スクロース、マルトース、イソマルト(isomalt)、グルコース、水素化グルコースシロップ、キシリトール、カラメル、及び蜂蜜を含む。
【0101】
強力甘味料は低濃度で簡便に使用される。例えば、サッカリンナトリウムの場合、濃度は最終製剤の総体積に基づき、0.04%~0.1%(w/v)の範囲で、又は投薬量の低い処方では約0.06%そして高い投薬量の処方では約0.08%であり得る。バルク甘味料は、約10%~約35%、又は約10%~15%(w/v)の範囲に及ぶより多い量で効果的に使用され得る。
【0102】
本明細書において記載した化合物の製剤は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、1985、又はRemington:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995に記載されているような従来の技術により製造出来、ここで医薬産業の従来のこのような技術は、その成分を必要に応じて溶解及び混合して所望の最終製品を得ることを含む。
【0103】
「薬学的に許容し得る」又は「治療的に許容し得る」という語句は、ヒトに投与する場合に、生理学的に容認でき、かつ、典型的には、好ましくは胃の不調(gastric upset)、めまいなどのような、アレルギー性又は類似の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。本明細書において使用されるとき、用語「薬学的に許容し得る」は、動物、より具体的にはヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の監督官庁により認可されていること、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認識された薬局方(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985))に列挙されていることを意味する。
【0104】
本明細書に記載した化合物の投与は、当該分野で公知の方法の何れかを使用して実行し得る。例えば、投与は、経皮的、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、心室内、嚢内、脊髄内、大腸内、腹腔内、脳室内、髄腔内、鼻腔内、エアロゾル、坐剤により、又は経口投与であり得る。本明細書に記載した化合物の医薬組成物は、注射投与のため、又は経口、肺、鼻腔、経皮、眼への投与のためのものでも良い。
【0105】
経口投与のために、本明細書に記載した化合物の医薬組成物は、カプセル剤又は錠剤等の単位投薬形態で製剤化しても良い。錠剤又はカプセル剤は、薬学的に許容しうる賦形剤を用いて従来の手段により調製しても良く、賦形剤としては、結合剤、例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、充填剤としては、例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、若しくはリン酸水素カルシウム、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、若しくはシリカ、崩壊剤としては、例えば、ジャガイモデンプン若しくはデンプングリコール酸ナトリウム、又は湿潤剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。錠剤は、当該分野で周知の方法によりコーティングしても良い。経口投与のための液体製剤は、例えば、溶液、シロップ、若しくは懸濁の形態でも良く、又はそれらは水若しくは使用する前の他の適切なビヒクルとの構成のための乾燥製品として提供しても良い。このような液体製剤は、薬学的に許容しうる添加剤、例えば、懸濁化剤、例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体、若しくは硬化食用脂肪;乳化剤、例えば、レシチン若しくはアカシア;非水性ビヒクル、例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、又は分別植物油;及び保存料、例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸を用いて従来の手段により調製しても良い。製剤は、緩衝塩、香料、着色剤、及び/又は甘味料を必要に応じて含有しても良い。所望により、経口投与用の製剤は、活性化合物の制御放出を行うように適切に製剤化しても良い。
【0106】
局所投与のための、本明細書に記載した化合物の医薬組成物は、活性化合物を0.1~10パーセント、又は0.5~5パーセント含有する薬学的に許容しうるビヒクル中で製剤化しても良い。このような製剤は、クリーム、ローション、舌下錠、エアロゾル及び/又はエマルジョンの形態でも良く、及び、この目的のために当該分野ではありふれた素地又は貯留層タイプの経皮若しくは頬側パッチ中に含ませても良い。
【0107】
非経口投与のための、本明細書に記載した化合物を、静脈内、皮下、又は筋肉内注射の何れかにより、薬学的に許容しうるビヒクル又は担体を含む組成物と共に投与する。化合物を、注射、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために製剤化しても良い。注射用の製剤は、単位投薬形態で、例えば、アンプル又は複数回用量容器内に、保存料を加えて存在させても良い。組成物は、油性又は水性のビヒクル中の懸濁液、溶液、又は乳液等の形態をなしていても良く、そして調整剤(formulatory agents)、例えば、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤を含有しても良い。あるいは、活性成分は、適切なビヒクル、例えば滅菌した発熱物質非含有水と共に、使用前に構成するための粉末形態であっても良い。
【0108】
注射による投与のために、化合物を滅菌水性ビヒクル中の溶液内で使用しても良く、これは又、緩衝剤又は保存料のような他の溶質、並びに十分な量の、薬学的に許容しうる塩又はグルコースを含有させ、その溶液を等張にしても良い。本明細書に記載した化合物の医薬組成物は、薬学的に許容しうる担体を用いて製剤化し、注射による投与可能な滅菌液剤又は懸濁剤を提供しても良い。注射剤は、液体の溶液若しくは懸濁剤として慣用の形態で、注射する前の液体中の液剤若しくは懸濁剤に適した固体形態で、又はエマルジョンとして調製しても良い。適切な賦形剤としては、例えば、水、食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩などである。更に、所望により、注射可能な医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝化剤などを含有しても良い。所望により、吸収増強調製物(例えば、リポソーム)を利用しても良い。適切な医薬担体は、「Remington’s pharmaceutical Sciences」by E. W.Martinに記載されている。
【0109】
吸入による投与のために、化合物は、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスと併用して、加圧パック又は噴霧器からのエアロゾルスプレーを提供(presentation)するという形態で簡便に送達しても良い。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、定量を送達するための弁を備えることにより決定しても良い。吸入器又は注入器内で使用するための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物と適切な粉末基剤、例えばラクトース又はデンプンとの粉末ミックスを含有して製剤化しても良い。鼻腔内投与のために、本明細書に記載した化合物を、例えば液体スプレーとして、散薬として、又は点鼻薬の形態で使用しても良い。
【0110】
化合物は又、直腸用組成物内に、例えば、慣用の坐剤基剤、例えばカカオ脂又は他のグリセリドを含有する、例えば坐剤又は保持浣腸剤として製剤化しても良い。
【0111】
更に、化合物は、デポー製剤として製剤化しても良い。このような長期作用型の製剤は、移植により(例えば、皮下又は筋内に)又は筋肉内注射により投与しても良い。従って、例えば化合物は適切なポリマー若しくは疎水性材料(例えば許容し得る油中乳剤として)若しくはイオン交換樹脂、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤化しても良い。
【0112】
組成物は、所望により、活性成分を含有する1個又はそれ以上の単位投薬形態を含有し得るパック又はディスペンサー装置内に存在させても良い。そのパックは、例えば金属又はプラスチックの箔、例えば、ブリスターパックを含んでも良い。パック又はディスペンサー装置には、投与のための指示書を添付しても良い。
【0113】
本明細書に記載した化合物はまた、プロドラッグと称する誘導体を含み、これらは、その修飾部が慣用の操作又はインビボの何れかで切断されて親化合物となるような方法で化合物中に存在する官能基を修飾することにより調製しても良い。プロドラッグの例としては、化合物のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基に付加する1つ又はそれ以上の分子部分を含有し、かつ患者に投与した場合に、インビボで切断し、遊離のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、又はカルボキシル基をそれぞれ形成する本明細書に記載した化合物が挙げられる。プロドラッグの例としては、限定されないが、本発明の化合物中のアルコール及びアミン官能基のアセテート、ホルメート及びベンゾエート誘導体が挙げられる。プロドラッグの調製及び使用は、T.Higuchi et al.「Pro-drugs as Novel Delivery Systems,」Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、及び、Bioreversible Carriers in Drug Design、ed.Edward B.Roche、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987の中で議論され、これらは両方とも参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0114】
投薬用量
本明細書に記載した化合物は、OR-リガンド相互作用により、全体又は一部が媒介される1種又はそれ以上の疾患及び障害を予防、治療又は制御するために治療的に有効な用量で患者に投与し得る。本明細書に記載した1種又はそれ以上の化合物を含む医薬組成物は、患者が防護的に又は治療的に有効な応答を惹起するために十分な量で患者に投与し得る。これを達成するための適切な量を「治療有効用量」として定義する。用量は、使用される特定の化合物の有効性及び被験体の健康状態、並びに治療される領域の体重及び表面積により決定されよう。用量の規模は又、特定の被験体における特定の化合物又はベクターの投与に伴う何れかの有害な作用の存在、性質、及び程度により決定されよう。
【0115】
このような化合物の毒性及び治療有効性は、細胞培養又は実験動物において、例えば、LD50(集団の50%が致死的な用量)及びED50(集団の50%が治療的に有効な用量)を決定する標準的な薬学的手順により決定しても良い。毒性と治療的効果との間の用量比は治療指数であり、比 LD50/ED50として表し得る。いくつかの実施形態において、大きな治療指数を示す化合物を使用する。有毒な副作用を示す化合物を使用しても良いが、罹患組織の部位へのこのような化合物を標的とし、正常細胞に対する損傷の可能性を最小にし、それにより副作用を低減する送達系を設計するよう注意を払うべきである。
【0116】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒトに使用するための投薬量の範囲を定めるために使用しても良い。いくつかの実施形態において、このような化合物の投薬量は、毒性をほとんど有さないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用する投薬形態及び投与経路に依存してこの範囲内で変動し得る。本明細書に記載されるどのような化合物についても、治療有効用量は、最初は細胞培養アッセイから推定しても良い。用量は、動物モデルにおいて、調製し、細胞培養において決定されたIC50(症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成させても良い。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定しても良い。血漿レベルは、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定しても良い。一般に、調節因子の用量当量は、典型的な被験体について約1ng/kg~10mg/kgである。
【0117】
本明細書に記載した化合物、及び/又はその薬学的に許容しうる塩の投与の量及び頻度は、患者の年齢、健康状態及び体格、更には治療する症状の重症度等の因子を考慮して、担当臨床医の判断に従って調節される。通常の熟練した医師又は獣医師は、必要な薬物の有効量を容易に決定し、及び処方して、症状の進行を予防し、逆行させ、又は停止させることが出来る。一般に、有効量は0.001mg/体重kg~10mg/体重kg、及び特に0.01mg/体重kg~1mg/体重kgだろうと予測される。必要とする用量を、2、3、4回、又はそれ以上の副用量(sub-doses)で1日全体を通して適切な間隔で、適切に投与しても良い。上記副用量は、例えば、単位投薬形態あたり活性成分0.01~500mg、及び特に0.1mg~200mgを含有する単位投薬形態として製剤化しても良い。
【0118】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は単位投薬形態である。このような形態において、製剤は、適切な量の活性成分、例えば所望の目的を達成するための有効量を含有する適切なサイズの単位用量に細分される。製剤の単位用量中の活性化合物の量は、特定の適用に従って、約0.01mg~約1000mg、約0.01mg~約750mg、約0.01mg~約500mg、又は約0.01mg~約250mgで変動するか、又は調整しても良い。実際に使用される投薬量は、患者の要求及び治療する症状の重症度に依存して変動し得る。特定の状況のために適切に決定する投薬レジメンは、当該分野の技術範囲内である。便宜上、総投薬量は分割されてもよく、そして必要に応じてその日の内に少しずつ投与しても良い。
【0119】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載した1種又はそれ以上の化合物は他の化合物と共に投与される。投与は連続でも同時でもよい。組み合わせは、同じ投薬形態でも別々の用量として投与しても良い。いくつかの実施形態において、他の化合物とは他の鎮痛薬(analgesic)又は疼痛緩和薬(pain reliever)である。いくつかの実施形態において、他の化合物は非オピオイド鎮痛薬である。有用な非オピオイド鎮痛薬の例としては、これに限定する訳ではないが、非ステロイド性抗炎症剤、例えばアスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナック、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン(flubufen)、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピロプロフェン(piroprofen)、カプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフェン(pramoprofen)、ムロプロフェン(muroprofen)、トリオキサプロフェン(trioxaprofen)、スプロフェン、アミノプロフェン(aminoprofen)、チアプロフェン酸、フルプロフェン(fluprofen)、ブクロキシ酸(bucloxic acid)、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラック、チオピナック(tiopinac)、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザック、クリダナック、オキシピナック(oxpinac)、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルミン酸、トルフェナム酸、ジフルリサル(diflurisal)、フルフェニサル(flufenisal)、ピロキシカム、スドキシカム(sudoxicam)、イソキシカム、及び薬学的に許容しうるその塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。他の適切な非オピオイド鎮痛薬としては、非限定的に、鎮痛薬、解熱薬、非ステロイド抗炎症薬の以下の化学的クラスが挙げられる:アスピリン、サリチル酸ナトリウム、コリンマグネシウムトリサリチル酸、サルサラート、ジフルニサル、サリチルサリチル酸、スルファサラジン、及びオルサラジンを含むサリチル酸誘導体;アセトアミノフェン及びフェナセチンを含むパラ-アミノフェノール誘導体;インドメタシン、スリンダク、及びエトドラクを含むインドール及びインデン酢酸;トルメチン、ジクロフェナク、及びケトロラクを含むヘテロアリール酢酸;メフェナム酸及びメクロフェナム酸を含むアントラニル酸(フェナマート);オキシカム系(oxicams)(ピロキシカム、テノキシカム)、及びピラゾリジンジオン系(フェニルブタゾン、オキシフェンタルタゾン(oxyphenthartazone))を含むエノール酸(enolic acids);並びにナブメトンを含むアルカノン系。NSAIDに関するより詳細な説明については、Paul A. Insel、Analgesic-Antipyretic and Anti-inflammatory Agents and Drugs Employed in the Treatment of Gout、in Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 617-57 (Perry B. Molinhoff and Raymond W. Ruddon eds.、9.sup.th ed 1996);及びGlen R.Hanson、Analgesic、Antipyretic and Anti-Inflammatory Drugs in Remington:The Science and Practice of Pharmacy Vol II 1196-1221(A.R.Gennaro ed.19.sup.th ed.1995)を参照のこと、これらは参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0120】
本明細書に記載した化合物はまた、Cox-II阻害剤投与しても良い。有用なCox-II阻害剤及び5-リポキシゲナーゼ阻害剤、更にはそれらの組み合わせの例が、米国特許第6,136,839号に記載され、これは参照によりその全体を本明細書に組み入れる。Cox-II阻害剤の例としては、ロフェコキシブ及びセレコキシブが挙げられるが、これに限定する訳ではない。
【0121】
本明細書に記載した化合物はまた、抗片頭痛薬と共に投与しても良い。有用な抗片頭痛薬の例としては、これに限定する訳ではないが、アルピロプリド(alpiropride)、ブロモクリプチン、ジヒドロエルゴタミン、ドラセトロン、エルゴコルニン、エルゴコルニニン、エルゴクリプチン、エルゴノビン、エルゴット(麦角)、エルゴタミン、酢酸フルメドロキソン、ホナジン(fonazine)、ケタンセリン、リスリド、ロメリジン、メチルエルゴノビン、メチセルジド、メトプロロール、ナラトリプタン、オキセトロン、ピゾチリン、プロプラノロール、リスペリドン、リザトリプタン、スマトリプタン、チモロール、トラゾドン、ゾルミトリプタン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0122】
本明細書に記載した化合物はまた、抗便秘剤(anti-constipation agents)と共に投与しても良い。抗便秘剤の例としては、これに限定する訳ではないが、緩下薬又は 便軟化剤(stool softners)が挙げられる。抗便秘剤の例としては、これに限定する訳ではないが、ドクサート(be docusate)、ポロクサマー188、サイリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリカルボフィル、ビサコジル、ひまし油、クエン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム又はそれらの何れかの組み合わせが挙げられる。
【0123】
医学的用途
本明細書に記載した組成物は、疼痛又は疼痛関連障害に有用であり得る。本明細書に記載した組成物は、免疫機能障害、炎症、食道逆流、神経学的及び精神医学的症状、泌尿器学的及び生殖性の症状を治療するため、薬物及びアルコールの乱用のための薬剤、胃炎及び下痢を治療するための薬剤、心血管系薬剤並びに呼吸器疾患及び咳を治療するための薬剤のために有用であり得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、疼痛を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載した1種又はそれ以上の化合物を、疼痛を治療するために被験体に投与する。いくつかの実施形態において、疼痛は術後痛であっても良い。いくつかの実施形態においては、疼痛は癌により引き起こされるものである。いくつかの実施形態において、疼痛は神経障害性疼痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は外傷、例えば、限定する訳ではないが、鈍力外傷により引き起こされる。いくつかの実施形態において、疼痛は炎症により引き起こされる。
【0125】
いくつかの実施形態において、1種又はそれ以上の化合物を、痛覚過敏の治療又は逆転のために使用しても良い。従って、いくつかの実施形態では、痛覚過敏の治療又は逆転させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、被験体に、本明細書に記載の1種又はそれ以上の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、1種又はそれ以上の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を投与する。本明細書で使用される痛覚過敏とは、疼痛に対して被験体が高い感受性を有する状態を指す。増加した感受性は、過去の傷害又は痛覚の部位で生じ得るか、又は異なる部位に存在し得る。いくつかの実施形態では、痛覚過敏は、びまん性過分膜症(即ち被験体の2箇所以上の部位)又は局所的(即ち被験体の分散した部位)である。いくつかの実施形態では、被験体には、本明細書に記載の1種又はそれ以上の化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与する前に、第1のオピオイドを投与する。
【0126】
いくつかの実施形態では、痛覚過敏は、オピオイド誘発性痛覚過敏であり、オピオイド誘発性異常痛覚又は逆説的痛覚過敏とも呼ばれ、オピオイドの使用に起因する症状として記載されている。例えば、オピオイドを摂取している個体は、侵害刺激に対する感受性が高まり、以前は無害な刺激でさえも、疼痛を伴う反応を発生させ得る(アロディニア)。これは被験体がオピオイドに曝露された結果である。オピオイド誘発性痛覚過敏(「OIH」)は、「耐性」として知られているものとは別個の、異なったものである。特定の理論に縛られる訳ではないが、耐性は抗侵害性受容メカニズムの脱感作に起因するが、OIHは侵害受容メカニズムの感作による。従って、オピオイド耐性が症状として同定される被験体の場合、オピオイドの投与量を増加させることによって耐性を最小限に抑えることができる。対照的に、OIHに罹患している被験体に対しオピオイドの用量を増加することは、その症状を悪化させるのみである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、痛覚過敏又はオピオイド誘発性痛覚過敏を治療するための医薬の調製に使用される。
【0127】
オピオイド誘発性痛覚過敏は、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、フェンタニル、メペリジン、アルフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、エトルフィン、ブプレノルフィン、メタドン及び/又はヘロイン誘発性痛覚過敏である。いくつかの実施形態において、OIHは、1種より多いオピオイドの組み合わせによって誘発される。いくつかの実施形態では、OIHはモルヒネによって誘発するOIHである。いくつかの実施形態において、OIHは、オキシコドンによって誘発するOIHである。いくつかの実施形態において、OIHは、ヒドロコドンによって誘発するOIHである。いくつかの実施形態では、OIHは、ヒドロモルホンによって誘発するOIHである。いくつかの実施形態では、OIHはフェンタニル誘導性のOIHである。いくつかの実施形態では、OIHはブプレノルフィン誘導OIHである。いくつかの実施形態において、OIHは、ヘロインによって誘発するOIHである。
【0128】
いくつかの実施形態では、被験体における侵害受容性感作を減少させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、被験体に、本明細書に記載の1種又はそれ以上の化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、1種又はそれ以上の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を投与する。いくつかの実施形態では、被験体は侵害感作性を増強している。いくつかの実施形態では、侵害受容性感作は別の治療薬によって誘発する。いくつかの実施形態において、侵害受容性感作は、オピオイド誘発性侵害受容性感作である。いくつかの実施形態では、オピオイド誘発性侵害受容性感作は、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、フェンタニル、メペリジン、アルフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、エトルフィン、ブプレノルフィン、メタドン、及び/又はヘロイン又は薬学的に許容されるその塩が侵害受容性感作を誘発する。
【0129】
いくつかの実施形態では、オピオイドが被験体における侵害受容性感作を増強させるまで、オピオイドアゴニストを被験体に投与し、次に、増強した侵害受容性感作を有する被験体に、本明細書に記載の1種又はそれ以上の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、被験体の疼痛を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、オピオイドアゴニストは、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、フェンタニル、メペリジン、アルフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、エトルフィン、ブプレノルフィン、メタドン、及び/又はヘロイン、又は薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、1種又はそれ以上の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を投与する。
【0130】
いくつかの実施形態において、オピオイドアゴニストを被験体に投与し、次に、オピオイドの非存在下で被験体に投与し、次いで本明細書に記載の1種又はそれ以上の化合物又は薬学的に許容されるその塩を被験体に投与することを含む疼痛を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、オピオイドアゴニストは、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、フェンタニル、メペリジン、アルフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、エトルフィン、ブプレノルフィン、メタドン、及び/又はヘロイン、又は薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、1種又はそれ以上の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を投与する。
【0131】
いくつかの実施形態では、化合物は、オピオイド誘発性OIHなどのOIHを治療するための、又は逆転させるための医薬の調製に使用される。いくつかの実施形態において、OIHを治療又は逆転させるための化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。オピオイド誘発性OIHの非限定的な例は上記に記載している。いくつかの実施形態では、化合物は侵害受容性感作を治療するための医薬品の調製に使用される。いくつかの実施形態では、侵害受容性感作を治療するための化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。いくつかの実施形態において、侵害受容性感作はオピオイド誘発性である。侵害受容性感作を誘発し得るオピオイドの非限定的な例を本明細書に提供する。
【0132】
いくつかの実施形態において、医薬の方法、使用又は調製において使用する化合物は、
【化24】
又は、薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、化合物は、実施例1~4に記載した化合物又は薬学的に許容されるその塩である。
【0133】
いくつかの実施形態において、2-[({2-[2-エチル-2-メチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]フェノール、2-[({2-[2-エチル-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]フェノール、{2-[2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4イル]エチル}[(4-メトキシフェニル)メチル]アミン、{2-[(4S*,R*)-2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル}[(1R)-1-フェニルエチル]アミン、{2-[(4S*,R*)-2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル}[(1S)-1-フェニルエチル]アミン、ベンジル({2-[2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル})アミン、2-[({2-[2-エチル-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]フェノール、ベンジル[2-(2,2-ジメチル-4-フェニルオキサン-4-イル)エチル]アミン、{2-[2-エチル-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル}[(4-メトキシフェニル)メチル]アミン[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]({2-[4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、{2-[4-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル}(1-フェニルエチル)アミン、[(4-クロロフェニル)メチル]({2-[4-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、ベンジル({2-[2-エチル-4-(2-メトキシフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル]({2-[2-エチル-4-(2-メトキシフェニル)-2-メチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、4-[({2-[4-(2-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル}アミノ)メチル]-N,N-ジメチルアニリン、ベンジル({2-[4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル})アミン、{2-[2,2-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)オキサン-4-イル]エチル}(1-フェニルエチル)アミン、[2-(2,2-ジメチル-4-フェニルオキサン-4-イル)エチル][(4-メトキシフェニル)メチル]アミン、{2-[4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチルオキサン-4-イル]エチル}[(4-メトキシフェニル)メチル]アミン、[(3,4-ジメトキシフェニル)メチル][2-(2,2-ジメチル-4-フェニルオキサン-4-イル)エチル]アミン又はそれらの任意の組合わせは投与しない。
【0134】
いくつかの実施形態では、式 N-((3-メトキシチオフェン-2-イル)メチル)-2-(9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル)エタンアミン;N-((5-フルオロピリジン-3-イル)メチル)-2-(9-(ピリジン-2-イル)-6-オキサスピロ[4.5]デカン-9-イル)エタンアミン又はその任意の立体異性体である。例えば、いくつかの実施形態において、化合物は、化合物54、135、140、150、155、215、265、270、500、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1種又はそれ以上の化合物は、限定する訳ではないが、吸入、局所、経鼻、経口、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、膀胱内、又はくも膜下腔内)又は1種又はそれ以上の薬学的に許容される担体を含む賦形剤中で直腸、を含む適切な何れかの経路で投与しても良く、その割合は、化合物の溶解度及び化学的性質、選択された投与経路及び標準的な慣行によって決定される。
【0136】
定義
他に定義しなければ、本明細書において使用する全ての技術的及び科学的用語は、当業者により一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載したものと類似するか又は同等の方法及び材料を本明細書に記載した組成物及び化合物の実施又は試験において使用しても良いが、適切な方法及び材料を以下に記載した。本明細書において述べた全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献はその全体を参照により組み入れる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が規制することになる。更に、材料、方法、及び実施例は、説明のみのためであり、限定することを意図している訳ではされない。本明細書に記載した組成物及び化合物の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【0137】
本明細書中で使用する、「必要とする」という語句は、被験体である、動物又は哺乳動物が特定の方法又は治療の必要性を有するものとして確認されたことを意味する。いくつかの実施形態では、確認を任意の診断手段により行なっても良い。本明細書に記載した方法及び治療の何れかにおいて、被験体である、動物又は哺乳動物が、それを必要とする、としても良い。いくつかの実施形態では、被験体が、痛覚過敏、これに限定する訳ではないが、例えばオピオイド誘発性痛覚過敏症を有することが確認されている。いくつかの実施形態では、被験体が増強した侵害受容性感作を有することが確認されている。いくつかの実施形態では、増強した侵害受容性感作は、オピオイド誘発性侵害受容性感作であった。
【0138】
全体を通じて使用する一般的な化学用語は、それらの通常の意味を有する。例えば、用語アルキルは、分岐又は非分岐の飽和炭化水素基を指す。用語「n-アルキル」は非分岐アルキル基を指す。用語「Cx-Cyアルキル」は、包括的に分岐又は非分岐の炭化水素基中に、xからy個の炭素原子を有するアルキル基を指す。限定する訳ではないが、例示としては、用語「C1-C4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の炭化水素部分を指し、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルが挙げられる。用語「C1-C4n-アルキル」は、1~4個の炭素原子を有する直鎖炭化水素部分を指し、これらとしては、メチル、エチル、n-プロピル、及びn-ブチルが挙げられる。Cx-Cyのxは1~10であり、そしてyは2~20でも良い。用語「C3-C6シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルを指す。用語「C3-C7シクロアルキル」はシクロヘプチルも含む。シクロアルキルアルキルは、アルキルリンカー鎖を通して連結したシクロアルキル部分を指し、限定する訳ではないが、例えば、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルプロピル、シクロプロピルブチル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロブチルプロピル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロペンチルプロピル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、及びシクロヘキシルプロピルが挙げられる。各アルキル、シクロアルキル、及びシクロアルキルアルキル基は、場合により、例えば、これに限定する訳ではないが、本明細書に具体的に記載したように置換しても良い。いくつかの実施形態において、アルキルはC1-C3、C1-C4、C1-C6、C4-C6、又はC1-C10アルキルである。
【0139】
用語「アルコキシ」、「フェニルオキシ」、「ベンゾキシ」及び「ピリミジニルオキシ」は、それぞれ、酸素原子を通じて結合した、アルキル基、フェニル基、ベンジル基、又はピリミジニル基を指す。これらの基は場合により、それぞれ置換され得る。
【0140】
用語「アルキルチオ」、「フェニルチオ」、及び「ベンジルチオ」は、硫黄原子を通じて結合した、アルキル基、フェニル基、又はベンジル基をそれぞれ指す。これらの基は場合により、それぞれ置換され得る。
【0141】
用語「C1-C4アシル」は、ホルミル基、又はカルボニル部分を通じて結合したC1-C3アルキル基を指す。用語「C1-C4アルコキシカルボニル」は、カルボニル部分を通じて結合したC1-C4アルコキシ基を指す。
【0142】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを指す。いくつかの実施形態において、ハロ基はフルオロ、クロロ、及びブロモである。いくつかの実施形態において、ハロ基はフルオロ及びクロロである。
【0143】
本明細書で使用する「炭素環」又は「炭素環式環」は、他に明記されていなければ、安定な3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12員の単環式、二環式、又は三環式の環の何れかを意味することを意図しており、これらは何れも、飽和でも、不飽和(部分的に不飽和及び完全に不飽和を含む)でも、芳香族でも良い。このような炭素環の例としては、これに限定する訳ではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカン、[2.2.2]ビシクロオクタン、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチル、及びテトラヒドロナフチルが挙げられる。上で示したように、架橋環もまた炭素環の定義に含まれる(例、[2.2.2]ビシクロオクタン)。架橋環は、1個又はそれ以上の炭素原子が2つの非隣接炭素原子に連結する場合に生じる。いくつかの実施形態において、架橋は1個又は2個の炭素原子である。架橋が単環式環を三環式環に常に、変換することは注目される。環が架橋される場合、環について記載される置換基は、架橋上にも存在し得る。縮合環(例、ナフチル及びテトラヒドロナフチル)及びスピロ環もまた含まれる。
【0144】
用語「複素環」は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する飽和又は不飽和の5-又は6-員環を意味すると解釈され、上記環は場合によりベンゾ縮合される。例となる複素環としては、フラニル、チオフェニル(チエニル)、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、N-メチルピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チアゾリジニル、N-アセチルチアゾリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニルなどが挙げられる。ベンゾ縮合ヘテロ環式環としては、イソキノリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリルなどが挙げられ、これらは全て場合により置換され得、複素環がベンゾ縮合されている場合、これらは当然のことながら、ベンゾ環上でも場合により置換されたものを含む。
【0145】
用語「環」基は、炭素環式環、炭素環又は複素炭素環を意味すると解釈される。
【0146】
本明細書で使用される語句「式の環」は、言及する変数で形成し得る環を指す。例えば、構造
【化25】
式中Aは式C(CH2n、ここでn=2~5である、の環においては、これはAが炭素であり、かつそれ自体と2~5個のCH2基とで環を形成することを意味し、これは又、構造的に
【化26】
としても表し得る。変数「A」は炭素に限定されず、そして別の原子、例えば、限定する訳ではないが、ヘテロ原子でも良い、がしかしその変数が使用される文脈では、原子「A」の可能な型を示すだろう。これは単なる非限定的な例である。更に、「A」と共に形成される環も置換しても良い。置換基の例としては本明細書に記載している。
【0147】
いくつかの実施形態において、複素環としては、これに限定する訳ではないが、ピリジニル、インドリル、フラニル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾジオキソリル、及びチアゾリジニルが挙げられ、これらは全て場合により置換され得る。
【0148】
本明細書で使用する用語「芳香族複素環」又は「ヘテロアリール」は、炭素原子及び1個又はそれ以上のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1個又は1~2個又は1~3個又は1~4個又は1~5又は1~6個のヘテロ原子からなる、安定な5、6、7、8、9、10、11、又は12-員の単環式又は二環式の芳香族環を意味することを意図している。二環式複素環式芳香族環の場合、2個の環のうち1個のみが芳香族(例えば、2,3-ジヒドロインドール)である必要があり、両方が芳香族であってもよい(例えばキノリン)。複素環については、上で定義したように、第二の環もまた、縮合又は架橋であっても良い。窒素原子は置換されていても非置換であっても良く(即ちN又はNR、ここでRはH又は定義される別の置換基)。窒素及び硫黄ヘテロ原子は場合により酸化されていても良い(即ちN→O及びS(O)p、ここでp=1又は2である)。特定の化合物において、芳香族複素環中のS及びO原子の総数は1を超えない。
【0149】
複素環の例としては、これに限定する訳ではないが、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノリル(isatinoyl)、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、及びキサンテニルが挙げられる。
【0150】
置換アルキル、置換シクロアルキル、置換シクロアルキルアルキル、置換アルコキシ、又は置換アルキルチオは、それぞれハロ、ヒドロキシ、及びC1-C3アルコキシからなる群より選択される置換で1回又はそれ以上独立して置換されてた、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、又はアルキルチオ(alkythio)基を意味する。説明のためであるが、限定する訳ではなく、例としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、5-フルオロ-2-ブロモペンチル、3-ヒドロキシプロピルオキシ、4-ヒドロキシシクロヘキシルオキシ、2-ブロモエチルチオ、3-エトキシプロピルオキシ、3-エトキシ-4-クロロシクロヘキシルなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、置換は、それぞれ独立して選択される、ハロでの1~5回の置換、又はハロでの1~3回の置換並びにヒドロキシ及びC1-C3アルコキシから選択される基で独立して1~2回の置換されるか、又はヒドロキシ及びC1-C3アルコキシから選択される基で独立して1~3回置換されることを含むが、ただし、1種より多いヒドロキシ及び/又はアルコキシ置換基は同じ炭素を通じて結合することは出来ない。
【0151】
用語「置換フェニル」及び「置換複素環」は、いずれの場合も環状部分が置換されていることを意味するように解釈される。これらは1種又はそれ以上の置換基で独立して置換し得る。これらは、1、2、3、4、5、1~3、1~4、又は1~5種の置換基で独立して置換しても良い。置換は、独立して、ハロ、アルキル、限定する訳ではないが、例えば、C1-C4アルキル、アルコキシ、限定する訳ではないが、例えば、C1-C4アルコキシ、及びアルキルチオ(alklylthio)、限定する訳ではないが、例えば、C1-C4アルキルチオでも良く、ここで各アルキル、アルコキシ及びアルキルチオ置換基は、更に、C1-C2アルコキシ、若しくは1~5個のハロ基で独立して更に置換してあっても良く、又はフェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルチオ、ベンジルチオ、及びピリミジニルオキシからなる群より選択される1種の置換基で置換してあっても良く、ここでフェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルチオ、ベンジルチオ、及びピリミジニルオキシ部分は、更にハロ、C1-C2アルキル、及びC1-C2アルコキシからなる群より選択される1~2種の置換基で更に置換してあっても良く、又はC1-C4アシル及びC1-C4アルコキシカルボニルからなる群より選択される1種の置換基で置換してあっても良く、そして更に、ハロ、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、及びC1-C4アルキルチオからなる群より選択される0~1種の置換基で置換してあっても良い。置換基がハロである場合、いくつかの実施形態において、このハロ基はフルオロ、クロロ、及びブロモである。ハロはまたヨードでもよい。
【0152】
DMFとはN,N-ジメチルホルムアミドを意味する。
【0153】
本明細書で使用する語句「薬学的に許容し得る」とは、信頼できる医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わず、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、ヒト及び動物の組織と接触する使用に適した化合物、材料、組成物及び/又は投薬形態を指す。
【0154】
「医薬製剤」により、担体、溶媒、添加剤及び塩がその製剤の活性成分(例えば本明細書に記載される化合物)と適合しなければならないということを更に意味する。用語「医薬製剤」及び「医薬組成物」は一般的に交換可能であり、しかも、それらは本出願の目的のために使用されるということを当業者は理解している。
【0155】
本明細書で使用する「薬学的に許容しうる塩」とは、開示した化合物の誘導体を指し、親化合物がその酸塩又は塩基塩を生成することにより改変されたものである。薬学的に許容しうる塩の例としては、限定する訳ではないが、アミンのような塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、カルボン酸等のような酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられる。薬学的に許容しうる塩としては、親化合物の、慣用の非毒性塩又は第四級アンモニウム塩が挙げられ、例えば、非毒性無機酸又は有機酸から形成される。例えば、このような慣用の非毒性塩としては、限定する訳ではないが、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコルリアルサニル(glycollyarsanilic)酸、ヘキシルレゾルシン(hexylresorcinic)酸、ヒドラバミン(hydrabamic)酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル(napsylic)酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、スバセチン(subacetic)酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、及びトルエンスルホン酸から選択される無機酸及び有機酸から誘導されるものが挙げられる。本開示は、本明細書に記載される何れかの化合物の薬学的に許容しうる塩を含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容しうる塩としては、塩酸塩である。
【0156】
薬学的に許容しうる塩は、塩基性部分又は酸性部分を含有する親化合物から慣用の化学的方法により合成しても良い。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基の形態を水中又は有機溶媒中、若しくはこれら2つの混合物中で、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなどのような非水性媒体中で、適切な化学量論量の塩基又は酸と反応させることにより製造しても良い。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th ed.、Mack Publishing Company、Easton、PA、USA、p.1445(1990)に見られる。
【0157】
プロドラッグは医薬品に望ましい多くの性質(例えば、溶解度、生物学的利用能、製造など)を増強することが知られているため、本明細書に記載した化合物をプロドラッグ形態で送達し、かつ疾患の治療のためにこの形態で投与しても良い。「プロドラッグ」は、共有結合で結合した任意の担体を含むことを意図しており、このようなプロドラッグを哺乳動物被験体に投与したとき、本明細書に記載した活性な親薬物をインビボで放出する。プロドラッグは、化合物中に存在する官能基を修飾することにより調製し、慣用の操作中に、又はインビボの何れかでその修飾が、切断され、親化合物になるようにしてある。本明細書に記載した化合物を含むプロドラッグは、ヒドロキシ、アミノ、又はスルフヒドリル基が、何れかの基に結合され、プロドラッグを哺乳動物被験体に投与した場合に、切断されて遊離ヒドロキシル、遊離アミノ、又は遊離スルフヒドリル基をそれぞれ形成する。プロドラッグの例としては、限定する訳ではないが、本明細書に記載した化合物中のアルコール及びアミン官能基のアセテート、ホルメート、及びベンゾエート誘導体が挙げられる。
【0158】
「安定な化合物」及び「安定な構造」は、化合物が反応混合物から、有用な程度までの純度への単離、及び有効な治療剤への製剤化、に耐えるほど十分に丈夫
であることを示すことを意味する。
【0159】
本明細書で使用される「治療すること」又は「治療」は、病状、疾患、障害などの改善をもたらす何れかの効果、例えば低下させるか、減少させるか、調節するか、又は消失させることを含む。疾患状態を「治療すること」又は「治療」とは、哺乳動物、特にヒトにおける疾患状態の治療を意味し、そしてこれには、(a)既存の疾患状態を抑制すること、即ちその発達、又はその臨床症状を停止させること、及び/又は(c)疾患状態を軽減すること、即ち疾患状態の後退を引き起こすことが含まれる。
【0160】
本明細書で使用される「予防すること」とは、疾患状態に曝露され得るか又は疾患状態になる傾向があるがその疾患状態の症状を経験していないか又は示していない被験体において、疾患状態の臨床症状が発生しないようにすること、即ち疾患の開始を阻止することを意味する。
【0161】
本明細書で使用される「哺乳動物」は、ヒト及び非ヒト患者を指す。
【0162】
本明細書で使用される用語「治療有効量」は、生物学的活性、例えば疼痛軽減を引き出すために、本明細書に記載した化合物又は化合物の組み合わせがレシピエント中又はレシピエント上に十分な量で存在することを指す。いくつかの実施形態において、化合物の組み合わせは相乗的な組み合わせである。相乗効果は、例えばChou and Talalay、Adv.Enzyme Regul.vol.22、pp.27-55(1984)により記載されているように、化合物を組み合わせて投与した場合の効果が、単剤として単独で投与した場合のそれらの化合物の相加的効果よりも高い場合に起こっている。一般に、相乗効果は、化合物の最適下限濃度で最も明確に実証される。相乗効果は、より低い細胞傷害性、疼痛減少の増加、又は、個々の成分と比較して、いくつかの他の有益な組み合わせの効果であっても良い。
【0163】
本明細書で使用される全てのパーセンテージ及び比率は、他に示さない限り、重量によるものである。
【0164】
記載全体を通して、組成物が特定の成分を有する(having)、含む(including)、若しくは含む(comprising)と記載した場合、又は方法が特定の工程段階を有する(having)、含む(including)、若しくは含む(comprising)と記載した場合、本明細書に記載した組成物もまた、本質的に列挙した成分からなるか、若しくは列挙した成分からなり、及び本明細書に記載した方法もまた、本質的に列挙した工程段階からなるか、若しくは列挙した工程段階からなるということを企図している。更に、当然のことながら、工程の順序又は特定の行為を実行する順序は、その方法が実働可能である限り重要ではない。更に、2つ又はそれ以上の工程又は行為は同時に実施しても良い。
【0165】
全ての鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物は、本明細書に記載した化合物の範囲内に含まれる。いくつかの実施形態において、R鏡像異性体を含む組成物は、S鏡像異性体を含まないか、又は実質的に含まない。いくつかの実施形態において、S鏡像異性体を含む組成物は、R鏡像異性体を含まないか実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、R又はS鏡像異性体の何れかが少なくとも、又は約、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の鏡像異性体過剰率を含む。
【0166】
本開示の全体を通して使用する単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確にそうではないと定めていなければ複数形の言及を含む。従って、例えば、「組成物(a composition)」への言及は、このような複数の組成物、更には単数の組成物を含み、そして「治療剤(a therapeutic agent)」への言及は、1種若しくはそれ以上の治療剤及び/又は薬剤及び当業者に公知のそれらの等価物などへの言及を含む。従って、例えば、「宿主細胞(a host cell)」への言及はこのような複数の宿主細胞を含み、そして「抗体(an antibody)」への言及は1種又はそれ以上の抗体への言及及び当業者に公知のそれらの等価物などを含む。
【0167】
本明細書に記載した化合物、及び本明細書に記載した様々な実施形態で使用される化合物は、任意の方法に従って、例えば、米国特許第8,835,488号に記載されるように調製しても良く、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0168】
以下の化合物又は薬学的に許容されるその塩は、本明細書に記載の方法及び実施形態の何れかにおいて使用しても良い。これらの化合物は、米国特許第8,835,488号に記載されており、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
【表4】
【0173】
【表5】
【0174】
【表6】
【0175】
【表7】
【0176】
【表8】
【0177】
【表9】
【0178】
【表10】
【0179】
【表11】
【0180】
【表12】
【0181】
【表13】
【0182】
【表14】
【0183】
【表15】
【0184】
【表16】
【0185】
【表17】
【0186】
【表18】
【0187】
【表19】
【0188】
【表20】
【0189】
【表21】
【0190】
【表22】
【0191】
【表23】
【0192】
【表24】
【0193】
【表25】
【0194】
【表26】
【0195】
【表27】
【0196】
【表28】
【0197】
【表29】
【0198】
【表30】
【0199】
【表31】
【0200】
【表32】
【0201】
【表33】
【実施例
【0202】
実施例1 バイアスドリガンドは痛覚過敏を誘発しない。オピオイド誘発性痛覚過敏のマウスモデルにおいて、痛覚過敏を誘発する化合物の可能性について試験した。この試験では、マウス(n=8/群)にビヒクル又はμオピオイドアゴニストの皮下注射を1日2回、4日間与えた。4回の薬物治療日の各々において、単一のvon Freyモノフィラメント(0.4g)で反復刺激する方法を用いて機械的異痛の測定結果を得た。追加の薬物治療はせず、動物を、5日目に再度試験した。試験のために、モノフィラメントを約1~2秒間、後肢に加える。離脱応答がある場合、それは肯定的な応答として記録した。これを各マウスについて10回反復した。各マウスの最終測定値は、10回の試行の刺激に対しての非応答%である。結果を図1に示した。化合物Aは化合物265であり、化合物Bは化合物54である。
【0203】
図には、前記のμ-オピオイドアゴニスト又はビヒクルで4日間にわたり治療したマウスにおける0.4g von Freyフィラメントの10回の適用に対する非応答%を示した。オキシコドン及びフェンタニルは、von Freyフィラメントに対する感受性(痛覚過敏)の増加の指標である非応答%が減少したが、一方でバイアスドμ-オピオイドアゴニストである化合物A及びBは減少しなかった。
【0204】
これらの結果より、μ-オピオイド受容体を標的とするバイアスドリガンドが、非バイアスドリガンドであるフェンタニル及びオキシコドンと比較して痛覚過敏を誘発しないことを実証した。これらの結果は驚くべきことであり予想外であった。従って、これらの結果に基づき、本化合物は、痛覚過敏又は本明細書に記載したような痛覚過敏又は侵害感受性増強を有する被験体の治療に使用し得ることが期待される。
【0205】
実施例2 バイアスドリガンドによるオピオイド誘発性痛覚過敏の逆転。オピオイド誘発性痛覚過敏のマウスモデルにおいて、化合物が、オピオイド誘発性痛覚過敏を逆転させる可能性について試験した。この試験では、マウス(n=8/群)にビヒクル又は参照μオピオイドアゴニストの皮下注射を1日2回、4日間与えた。4回の薬物治療日の各々において、単一のvon Freyモノフィラメント(0.4g)で反復刺激する方法を用いて機械的異痛の測定結果を得た。基準のμオピオイドアゴニストを投与した動物を5日目の行動試験後、化合物Bに切り替えた。毎日2回の皮下注射を12日間続けた。機械的異痛の行動評価を5、6、7、8、10日目及び12日目に行った。試験のために、モノフィラメントを約1~2秒間後肢に加える。離脱応答がある場合、それは肯定的な応答として記録した。これを各マウスについて10回反復した。各マウスの最終測定値は、10回の試行の刺激に対しての非応答%である。化合物B(化合物54)は、オピオイド誘発性痛覚過敏活性を逆転させることができた。化合物140及び化合物265も、化合物54のようにバイアスドリガンドであるので、同様の結果が予想される。従って、得られた結果より、本明細書で提供したバイアスドリガンドが、オピオイド誘発性痛覚過敏活性を逆転させることが出来ることを実証した。従って、本明細書に記載した化合物を使用して、ヒト又は他の哺乳動物におけるオピオイド誘発性痛覚過敏活性を逆転させることが出来る。
【0206】
実施例3 モルヒネを処方され、オピオイド誘発性痛覚過敏の症状を示したヒト被験体。被験体へのモルヒネの投与を中止し、化合物140又は化合物265を投与した。被験体のオピオイド誘発性痛覚過敏を治療し、かつ軽減した。被験体は化合物140又は化合物265の服用を継続し、疼痛緩和を維持しつつ、痛覚過敏の苦痛からは免れた。
【0207】
実施例4 疼痛緩和のためにオピオイドの投与を受けたことにより、侵害受容性感作の増強を有したと判定された被験体。被験体は、オピオイドから化合物140又は化合物265を含む医薬組成物に切り替えられた。被験体の侵害受容性感作は、疼痛緩和を維持しつつ、減少した。
【0208】
前述の実施例において、本明細書に記載した化合物が、本明細書に記載した化合物の1種又はそれ以上を投与された被験体に対し、OIHを誘発せず、かつ痛覚過敏若しくは侵害受容性感作増強を引き起こすことなく、被験体の疼痛を治療するために使用出来ることを実証した。実施例では又、本明細書で提供したバイアスドリガンドが、ヒトなどの哺乳動物においてオピオイド誘発性痛覚過敏活性を逆転させるために使用出来ることも示した。
【0209】
本明細書で記載した化合物及び方法は実施例を参照して記載しているが、当業者なら、その思想及び範囲から逸脱することなく様々な改変をなし得ると考えられる。
【0210】
本明細書で参照した、上記米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物並びに/又は出願データシートに列挙したもの全ての、その全体を参考として本明細書に取り込むものとする。
図1
図2