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特許6992003絶対組織酸素飽和度および相対組織酸素飽和度の判定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】絶対組織酸素飽和度および相対組織酸素飽和度の判定
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20220127BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
A61B5/1455
G01N21/27 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018555235
(86)(22)【出願日】2017-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017029221
(87)【国際公開番号】W WO2017185104
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2019-12-10
(31)【優先権主張番号】62/326,630
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/326,644
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/326,673
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507416414
【氏名又は名称】ビオプティックス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VIOPTIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベクテル,ケイト・リーアン
(72)【発明者】
【氏名】ローマン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ジョハン,リサール
(72)【発明者】
【氏名】コールリッジ,スコット
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528334(JP,A)
【文献】特開2015-107229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0331639(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0099955(US,A1)
【文献】米国特許第05337743(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0099964(US,A1)
【文献】特表昭64-500494(JP,A)
【文献】米国特許第08622918(US,B1)
【文献】特開平06-090933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の第1の標的組織にプローブ先端を接触させることと、
第1の時間にオキシメータプローブの源構造から前記第1の標的組織に第1の光を透過することと、
前記標的組織から反射された第1の反射光を前記オキシメータプローブの複数の検出器構造によって検出することと、
前記検出器構造によって検出された前記第1の反射光の第1の反射率データを前記検出器構造によって生成することと、
前記反射率データを複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、
前記第1の反射率データの、前記複数のシミュレート反射率曲線への適合から、前記シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線を判断することとを備え、各シミュレート反射率曲線は、オキシメータパラメータの値に関連付けられ、さらに、
前記シミュレート反射率曲線のうち、前記第1の反射率データに対して最良に適合する1つ以上の曲線について、少なくとも第1のオキシメータパラメータを判断することと、
前記第1のオキシメータパラメータに基づいて第1のオキシメータ測定値の第1の値を判断することと、
前記第1のオキシメータ測定値の前記第1の値をメモリに格納することと、
前記第1の値をメモリに格納した後に第2の時間に前記オキシメータプローブの前記源構造から前記第1の標的組織とは異なる第2の標的組織に第2の光を透過することと、
前記第2の標的組織から反射された第2の反射光を前記オキシメータプローブの前記複数の検出器構造によって検出することと、
前記検出器構造によって検出された前記第2の反射光について第2の反射率データを前記検出器構造によって生成することと、
前記第2の反射率データを前記複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、
前記第2の反射率データの、前記複数のシミュレート反射率曲線への適合から、前記シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線を判断することと、
前記シミュレート反射率曲線のうち、前記第2の反射率データに対して最良に適合する1つ以上の曲線について、少なくとも第2のオキシメータパラメータを判断することと、
第2の吸収係数に基づいて第2のオキシメータ測定値の第2の値を判断することと、
前記第2の値を判断した後に前記メモリから前記第1の値を検索することと、
前記第1の値と前記第2の値との間の百分率差を判断することと、
前記オキシメータプローブのディスプレイ上に前記百分率差を表示することとを備える、方法。
【請求項2】
前記第1のオキシメータ測定値は第1の酸素飽和度であり、前記第2のオキシメータ測定値は第2の酸素飽和度値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記百分率差は数値として表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の値を前記ディスプレイ上に表示することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の値が前記第1の値よりも減少した場合には、前記ディスプレイ上に下向き矢印を表示することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記下向き矢印は赤色である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の値が前記第1の値よりも増加した場合には、前記ディスプレイ上に上向き矢印を表示することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記上向き矢印は緑色である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載
関連出願への相互参照
この出願は、2016年4月22日に出願された米国特許出願第62/326,630号、第62/326,644号、第62/326,673号の利益を主張する。これらの出願は、これらの出願に引用されている他のすべての参考文献とともに、ここに引用により援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は一般に組織における酸素レベルを監視する光学システムに関する。より具体的には、本発明は、光学プローブのセンサヘッド上に源および検出器を含み、組織の酸素飽和度を判断するためにローカルに記憶されるシミュレート反射率曲線を使用するオキシメータなどの光学プローブに関する。
【0003】
オキシメータは、様々な目的のために、ヒトおよび生体における組織の酸素飽和度を測定するために使用される医療装置である。例えば、オキシメータは、病院および他の医療施設での医療および診断目的(例えば、手術、患者モニタリング、または低酸素症などの、救急車または他の移動モニタリング);スポーツ競技場でのスポーツおよび運動目的(例えば、プロスポーツ選手のモニタリング);個人によるまたは自宅での個人のモニタリング(例えば、一般的な健康状態のモニタリング、またはマラソンのための人の訓練);および獣医療目的(例えば、動物モニタリング)で使用される。
【0004】
パルスオキシメータおよび組織オキシメータは、異なる原理で作動する2つのタイプのオキシメータである。パルスオキシメータは機能するためにパルスを必要とする。パルスオキシメータは、典型的には、脈動する動脈血による光の吸光度を測定する。対照的に、組織オキシメータは、機能するためにパルスを必要とせず、血液供給源から切り離された組織弁の酸素飽和度測定を行うために使用することができる。
【0005】
一例として、ヒトの組織は、様々な光吸収分子を含む。そのような発色団には、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、メラニン、水、脂質、およびシトクロムが含まれる。酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビンおよびメラニンは、可視および近赤外スペクトル範囲の大部分について、組織における最も支配的な発色団である。光の吸収は、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの場合、特定の波長の光で、著しく異なる。組織オキシメータは、これらの光吸収差を利用することにより、ヒト組織内の酸素レベルを測定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存のオキシメータの成功にもかかわらず、例えば、測定精度を向上させること、測定時間を短縮すること、コストを下げること、サイズ、重量、または形状因子を低減させること、消費電力を削減すること、およびその他の理由で、ならびにこれらの測定値の任意の組合せによって、オキシメータを改善することが継続的に望まれている。
【0007】
特に、領域および局所レベルの両方で患者の酸素化状態を評価することは、それが患者の局所的な組織健康状態の指標であるので、重要である。したがって、オキシメータは、患者の組織の酸素化状態が不安定であると疑われる場合がある手術および回復の間のような臨床設定においてしばしば使用される。例えば、手術中、オキシメータは様々な理想的でない状況下で正確な酸素飽和度測定を迅速に果たすことが可能でなければならない。既存のオキシメータは、絶対精度が重要ではなく、動向データだけが十分である術後組織モニタリングには十分であったが、組織が生存可能かまたは除去される必要があるかを判断するためにスポット検査を使用できる手術中には正確さが必要である。
【0008】
したがって、改善された組織オキシメータプローブおよびこれらのプローブを使用して測定を行う方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の概要
オキシメータプローブは、比較的多数のシミュレート反射率曲線を利用して、検査中の組織の光学特性を迅速に判断する。組織の光学特性により、組織の酸素化ヘモグロビン濃度および脱酸素化ヘモグロビン濃度を組織の酸素飽和度とならんでさらに判断することが可能になる。
【0010】
一実施形態では、オキシメータプローブは、脈拍または心拍を必要とせずに酸素飽和度を測定することができる。本発明のオキシメータプローブは、成形術を含む多くの医療分野および外科領域に適用可能である。オキシメータプローブは、脈動がない組織の酸素飽和度測定を行うことができる。そのような組織は、身体から分離されているかもしれず(例えば組織片)、身体の別の場所に移植されることになる。本発明の態様は、パルスオキシメータにも適用可能である。オキシメータプローブとは対照的に、パルスオキシメータは機能するために脈動を必要とする。パルスオキシメータは、典型的には、脈動する動脈血による光の吸収を測定する。
【0011】
一実施態様では、酸素飽和度測定値のような酸素化測定値の相対値が判断され表示され、オキシメータプローブの使用により、エピネフリンまたは他の薬物のような、経時的な酸素飽和度に影響を与える投与薬物の有効性を判断することができる。
【0012】
一実施態様では、ある方法は、患者の標的組織にプローブ先端を接触させることと、第1の時間にオキシメータプローブの源構造から標的組織に第1の光を透過することと、標的組織から反射された第1の反射光をオキシメータプローブの複数の検出器構造によって検出することと、検出器構造によって検出された第1の反射光の第1の反射率データを検出器構造によって生成することと、反射率データを複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、第1の反射率データの、複数のシミュレート反射率曲線への適合から、シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線を判断することとを備え、各シミュレート反射率曲線は、吸収係数の値に関連付けられ、前記方法はさらに、シミュレート反射率曲線のうち、第1の反射率データに対して最良に適合する1つ以上の曲線について、少なくとも第1の吸収係数を判断することと、第1の吸収係数に基づいて第1の酸素飽和度の第1の値を判断することと、第1の酸素飽和度の第1の値をメモリに格納することとを備える。
【0013】
本方法は、第2の時間にオキシメータプローブの源構造から標的組織に第2の光を透過することと、標的組織から反射された第2の反射光をオキシメータプローブの複数の検出器構造によって検出することと、検出器構造によって検出された第2の反射光について第2の反射率データを検出器構造によって生成することと、第2の反射率データを複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、第2の反射率データの、複数のシミュレート反射率曲線への適合から、シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線を判断することと、シミュレート反射率曲線のうち、第2の反射率データに対して最良に適合する1つ以上の曲線について、少なくとも第2の吸収係数を判断することと、第2の吸収係数に基づいて第2の酸素飽和度の第2の値を判断することとを備える。
【0014】
本方法は、メモリから第1の値を検索することと、第1の値と第2の値との間の百分率差を判断することと、オキシメータプローブのディスプレイ上に百分率差を表示することとを備える。
【0015】
ある実施形態では、あるシステムは、オキシメータ装置を含み、オキシメータ装置は、オキシメータ装置の遠位端上に源構造および検出器構造を含むプローブ先端と、プローブ先端に近接するディスプレイとを含み、オキシメータ装置は、第1の酸素飽和度値、第2の酸素飽和度値、および第1の酸素飽和度値と第2の酸素飽和度値との間の相対酸素飽和度値を計算し、第1の酸素飽和度値と第2の酸素飽和度値との間の相対酸素飽和度値を表示し、オキシメータ装置は特に、第1の期間において、オキシメータプローブの光源から、測定されるべき第1の組織に、光を透過し、第1の期間において透過光に応答して第1の組織によって反射された光をオキシメータプローブの検出器で受光し、第2の期間において、オキシメータプローブの光源から測定すべき第2の組織に光を透過するよう構成され、第2の期間は第1の期間の後であり、オキシメータ装置はさらに、第2の期間における透過光に応答して第2の組織によって反射される光をオキシメータプローブの検出器で受光し、第1の組織について第1の酸素飽和度値を判断し、第2の組織について第2の酸素飽和度値を判断し、第1の酸素飽和度値と第2の酸素飽和度値との間の相対酸素飽和度値を計算し、相対酸素飽和度値をディスプレイに表示するよう構成される。
【0016】
オキシメータプローブを備えるシステムであって、オキシメータプローブは、ハンドヘルドのハウジングと、ハンドヘルドのハウジングに収容されるプロセッサと、ハンドヘルドのハウジング内に収容され、プロセッサに電子的に結合され、プロセッサを制御するための第1のコードを記憶するメモリと、ハンドヘルドのハウジングの外部からアクセス可能であり、プロセッサに電子的に結合されるディスプレイと、ハンドヘルドのハウジング内に収容され、プロセッサ、メモリ、およびディスプレイに結合され、プロセッサ、メモリ、およびディスプレイに電力を供給するバッテリとを含む。
【0017】
このコードは、プロセッサによって実行可能な命令を含み、その命令は、第1の時間にオキシメータプローブの源構造を制御して第1の光を患者の標的組織に照射することと、標的組織から反射された第1の反射光の、オキシメータプローブの複数の検出器構造による検出を制御することと、検出器構造によって検出された第1の反射光について検出器構造によって生成される第1の反射率データを検出器構造から受信することと、反射率データを複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、第1の反射率データの、複数のシミュレート反射率曲線への適合から、シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線を判断することとのためのものであり、各シミュレート反射率曲線は、吸収係数の値に関連付けられ、命令はさらに、シミュレート反射率曲線のうち、第1の反射率データに対して最良に適合する1つ以上の曲線について、少なくとも第1の吸収係数を判断することと、第1の吸収係数に基づいて第1の酸素飽和度の第1の値を判断することと、第1の酸素飽和度の第1の値をメモリに格納することとのためのものである。
【0018】
このコードは、プロセッサによって実行可能な命令を含み、その命令は、第2の時間にオキシメータプローブの源構造を制御して標的組織に第2の光を照射することと、標的組織から反射された第2の反射光をオキシメータプローブの複数の検出器構造によって検出することと、検出器構造によって検出された第2の反射光について第2の反射率データを検出器構造によって生成することと、第2の反射率データを複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、第2の反射率データの、複数のシミュレート反射率曲線への適合から、シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線を判断することと、シミュレート反射率曲線のうち、第2の反射率データに対して最良に適合する1つ以上の曲線について、少なくとも第2の吸収係数を判断することと、第2の吸収係数に基づいて第2の酸素飽和度の第2の値を判断することとのためのものである。
【0019】
このコードは、プロセッサによって実行可能な命令を含み、その命令は、メモリから第1の値を検索することと、第1の値と第2の値との間の百分率差を判断することと、オキシメータプローブのディスプレイ上に百分率差を表示することを制御することとのためのものである。
【0020】
一実施態様では、ある方法は、患者の標的組織にプローブ先端を接触させることと、第1の時間にオキシメータプローブの源構造から標的組織に第1の光を透過することと、標的組織から反射された第1の反射光をオキシメータプローブの複数の検出器構造によって検出することと、検出器構造によって検出された第1の反射光の第1の反射率データを検出器構造によって生成することと、反射率データを複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、第1の反射率データの、複数のシミュレート反射率曲線への適合から、シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線を判断することとを備え、各シミュレート反射率曲線は、吸収係数の値に関連付けられ、方法はさらに、シミュレート反射率曲線のうち、第1の反射率データに対して最良に適合する1つ以上の曲線について、少なくとも第1の吸収係数を判断することと、第1の吸収係数に基づいて第1の組織測定値の第1の値を判断することと、組織測定値の第1の値をメモリに格納することとを備える。
【0021】
本方法は、第2の時間にオキシメータプローブの源構造から標的組織に第2の光を透過することと、標的組織から反射された第2の反射光をオキシメータプローブの複数の検出器構造によって検出することと、検出器構造によって検出された第2の反射光について第2の反射率データを検出器構造によって生成することと、第2の反射率データを複数のシミュレート反射率曲線に適合させることと、第2の反射率データの、複数のシミュレート反射率曲線への適合から、シミュレート反射率曲線のうちの1つ以上の最良適合曲線を判断することと、シミュレート反射率曲線のうち、第2の反射率データに対して最良に適合する1つ以上の曲線について、少なくとも第2の吸収係数を判断することと、第2の吸収係数に基づいて第2の組織測定値の第2の値を判断することとを備える。
【0022】
本方法は、メモリから第1の値を検索することと、第1の組織測定値と第2の組織測定値との間の百分率差を判断することと、オキシメータプローブのディスプレイ上に第1の組織測定値と第2の組織測定値との間の百分率差を表示することとを備える。
【0023】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を考慮することにより明らかになるであろう。図面において、同様の参照記号は図面全体にわたって同様の特徴を表す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】オキシメータプローブの実施形態を示す。
図2】実施形態におけるプローブ先端の端面図を示す。
図3】実施形態におけるオキシメータプローブのブロック図である。
図4A】ディスプレイが酸素飽和度の値および総ヘモグロビンの値を表示するように適合された実施形態におけるオキシメータプローブの上面図を示す。
図4B】ディスプレイが酸素飽和度の値および血液量の値を表示するように適合された実施形態におけるオキシメータプローブの上面図を示す。
図4C】ディスプレイが2つの時点の間の相対酸素飽和度の値を表示するように適合された実施形態におけるオキシメータプローブ101の上面図を示す。
図4D】ディスプレイが2つの時点の間の相対酸素飽和度の値を表示するように適合された実施形態におけるオキシメータプローブ101の上面図を示す。
図4E】ディスプレイが絶対酸素飽和度の値および相対酸素飽和度の値を表示するオキシメータプローブ101の上面図を示す。
図4F】組織の相対酸素飽和度の値を判断し、その値をディスプレイ上に表示する方法のフロー図を示す。
図4G】組織の相対酸素飽和度の値を判断し、その値をディスプレイ上に表示する方法のフロー図を示す。
図4H】ディスプレイが相対酸素飽和度の値を表示し、さらに、相対酸素飽和度の増減を示す矢印を表示するオキシメータプローブ101の上面図を示す。
図4I】ディスプレイが相対酸素飽和度の値を表示し、さらに、相対酸素飽和度の増減を示す矢印を表示するオキシメータプローブ101の上面図を示す。
図4J】ユーザが酸素飽和度の第1の値を入力または選択し、プローブが酸素飽和度の後者の第2の値を判断する、組織の相対酸素飽和度の値を判断するための方法のフロー図を示す。
図4K】ある実施形態においてオキシメータプローブによって組織(例えば、実際の組織)の光学特性を判断するための方法のフロー図を示す。
図5】ある実施形態においてオキシメータによって組織の光学特性を判断するための方法のフロー図である。
図6】ある実施形態においてオキシメータによって組織の光学特性を判断するための方法のフロー図である。
図7】プローブ先端の源構造および検出器構造の構成のような、源構造および検出器構造の特定の構成に関するものであってもよい、反射率曲線の例示的なグラフを示す。
図8】組織における酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、メラニン、および水についての、任意の単位の吸収係数μa対光の波長のグラフを示す。
図9】実施形態においてオキシメータプローブのメモリに記憶されるシミュレート反射率曲線の組織の均質モデルのデータベースの表を示す。
図10】実施形態においてオキシメータプローブのメモリに記憶されるシミュレート反射率曲線の組織の層状モデルのデータベースの表を示す。
図11A】データベースの各行が、シミュレートされた源構造から照射されシミュレートされた検出器構造によって検出される4つの波長の光についての4つのシミュレート反射率曲線についてのものである、組織の層状モデルのためのデータベースの表を示す。
図11B】データベースの各行が、シミュレートされた源構造から照射されシミュレートされた検出器構造によって検出される4つの波長の光についての4つのシミュレート反射率曲線についてのものである、組織の層状モデルのためのデータベースの表を示す。
図12A】オキシメータプローブが光学特性を判断するために反射率データおよびシミュレート反射率曲線を使用する、オキシメータプローブによって組織(例えば、実際の組織)の光学特性を判断するための方法のフロー図である。
図12B】オキシメータプローブが光学特性を判断するために反射率データおよびシミュレート反射率曲線を使用する、オキシメータプローブによって組織(例えば、実際の組織)の光学特性を判断するための方法のフロー図である。
図13】オキシメータプローブによって組織の光学特性を判断する別の方法のフロー図を示す。
図14】選択検出器構造によって生成される反射率データを重み付けする方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な記載
図1は、実施形態におけるオキシメータプローブ101を示す。オキシメータプローブ101は、術中および術後などの組織オキシメトリ測定を行うように構成される。オキシメータプローブ101は、プローブユニット105、および感知アーム111の端部に配置されてもよいプローブ先端110(センサヘッドとも呼ばれる)を含むハンドヘルドデバイスであってもよい。オキシメータプローブ101は、近赤外光などの光をプローブ先端110から組織に照射し、プローブ先端で組織から反射した光を収集することによって、組織の酸素飽和度を測定するように構成される。
【0026】
オキシメータプローブ101は、オキシメータプローブによって行われた酸素飽和度測定をユーザに通知するディスプレイ115または他の通知装置を含む。プローブ先端110は、ハンドヘルドデバイスであるオキシメータプローブ101と共に使用するように構成されていると説明されているが、プローブ先端110は、ベースユニットに結合するケーブル装置の端部にプローブ先端があるモジュール式オキシメータプローブなどの他のオキシメータプローブとともに用いることもできる。ケーブル装置は、1人の患者に使用するように構成された使い捨て装置であってもよく、ベースユニットは、繰り返し使用するように構成された装置であってもよい。そのようなモジュール式オキシメータプローブは、当業者には十分に理解されており、これ以上説明しない。
【0027】
図2は、実現例におけるプローブ先端110の端面図を示す。プローブ先端110は、組織酸素濃度測定が行われるべき組織(例えば、患者の皮膚)に接触するように構成される。プローブ先端110は、第1および第2の源構造120aおよび120b(概して源構造120)と、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の検出器構造125a~125h(概して検出器構造125)とを含む。代替的実現例では、オキシメータプローブは、より多くのもしくはより少ない源構造を含むか、より多くのもしくはより少ない検出器構造を含むか、またはその両方を含む。
【0028】
各源構造120は、光(例えば、赤外光)を照射するように適合され、照射される光を生成する4つの光源のような、1つ以上の光源を含む。各光源は、1つ以上の波長の光を照射することができる。各光源は、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、有機発光ダイオード(OLED)、量子ドットLED(QMLED)、または他のタイプの光源を含むことができる。
【0029】
各源構造は、光源をプローブ先端の面127に光学的に結合する1つ以上の光ファイバを含むことができる。一実現例では、各源構造は4つのLEDを含み、4つのLEDをプローブ先端の面に光学的に結合する単一の光ファイバを含む。代替的実現例では、各源構造は、LEDをプローブ先端の面に光学的に結合する2つ以上の光ファイバ(例えば、4つの光ファイバ)を含む。
【0030】
各検出器構造は、1つ以上の検出器を含む。一実現例では、各検出器構造は、源構造から照射され、組織から反射された光を検出するように適合された単一の検出器を含む。検出器は、光検出器、光抵抗器、または他のタイプの検出器とすることができる。検出器構造は、2つ以上の(例えば、8つの)固有の源-検出器距離が形成されるように、源構造に対して配置される。
【0031】
一実現例では、最短の源-検出器距離はほぼ等しい。例えば、源構造120aと検出器構造125dとの間の最短の源-検出器距離(S1-D4)と、源構造120bと検出器構造125aとの間の最短の源-検出器距離(S2-D8)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125eとの間の次に長い源-検出器距離(例えばS1-D4およびS2-D8の各々より長い)(S1-D5)と、源構造120bと検出器構造125aとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D1)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125cとの間の次に長い源-検出器距離(例えばS1-D5およびS2-D1の各々より長い)(S1-D3)と、源構造120bと検出器構造125gとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D7)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125fとの間の次に長い源-検出器距離(例えばS1-D3およびS2-D7の各々より長い)(S1-D6)と、源構造120bと検出器構造125bとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D2)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125cとの間の次に長い源-検出器距離(例えばS1-D6およびS2-D2の各々より長い)(S1-D2)と、源構造120bと検出器構造125fとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D6)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125gとの間の次に長い源-検出器距離(例えばS1-D2およびS2-D6の各々より長い)(S1-D7)と、源構造120bと検出器構造125cとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D3)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125aとの間の次に長い源-検出器距離(例えばS1-D7およびS2-D3の各々より長い)(S1-D1)と、源構造120bと検出器構造125eとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D5)とは、ほぼ等しい。源構造120aと検出器構造125hcとの間の次に長い源-検出器距離(例えば最長の源-検出器距離、S1-D1およびS2-D5の各々より長い)(S1-D8)と、源構造120bと検出器構造125dとの間の次に長い源-検出器距離(S2-D4)とは、ほぼ等しい。他の実現例では、源-検出器距離は、すべて固有であるか、またはほぼ等しい8つ未満の距離を有することができる。
【0032】
以下の表1は、ある実現例による8つの固有の源-検出器距離を示す。最も近い源-検出器距離間の増加は約0.4ミリメートルである。
【0033】
【表1】
【0034】
実施形態では、オキシメータプローブが照射するように構成された光の各波長(例えば、可視スペクトルにおける赤色光、赤外光、または可視光および赤外光の両方などの、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の波長の光)ごとに、オキシメータプローブは、少なくとも、約1.5ミリメートル未満、約1.6ミリメートル未満、約1.7ミリメートル未満、約1.8ミリメートル未満、約1.9ミリメートル未満、または約2.0ミリメートル未満である2つの源-検出器距離、および約2.5ミリメートルより大きく、約4ミリメートル未満、約4.1ミリメートル未満、約4.2ミリメートル未満、約4.3ミリメートル未満、約4.4ミリメートル未満、約4.5ミリメートル未満、約4.6ミリメートル未満、約4.7ミリメートル未満、約4.8ミリメートル未満、約4.95ミリメートル未満、または約5ミリメートル未満である2つの源-検出器距離を含む。
【0035】
一実現例では、検出器構造125aおよび125eは、源120aと120bとを接続する直線上にある点の周りに対称的に配置される。検出器構造125bおよび125fは、その点の周りに対称的に配置される。検出器構造125cおよび125gは、その点の周りに対称的に配置される。検出器構造125dおよび125hは、その点の周りに対称的に配置される。この点は、源構造120aと120bとの間においてその接続線上の中心に置くことができる。
【0036】
源-検出器距離対検出器構造125によって検出された反射率のプロットにより、データ点がx軸に沿って十分に離間している反射率曲線を提供することができる。源構造120aと120bと検出器構造125との間の距離のこれらの間隔は、データの冗長性を低減し、相対的に正確な反射率曲線の生成に至り得る。
【0037】
一実現例では、源構造および検出器構造をプローブ表面上の様々な位置に配置して、(上に示したような)所望の距離を与えることができる。例えば、2つの源が線を形成し、この線の上下に等しい数の検出器が存在する。検出器の位置(線の上)は、2つの源の線上の選択された点について、別の検出器(線の下)と点対称になる。一例として、選択された点は、2つの源間の中間であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。他の実現例では、この位置決めは、円形、楕円形、卵形、無作為、三角形、矩形、四角形、または他の形状などの形状に基づいて配置することができる。
【0038】
以下の特許出願は、様々なオキシメータ装置および酸素測定動作を記載しており、以下の特許出願における議論は、本願に記載された本発明の局面と任意の組み合わせで組み合わせることができる。以下の特許出願、すなわち2015年11月17日に出願された特許出願第14/944,139号、2013年5月3日に出願された第13/887,130号、2016年5月24日に出願された第15/163,565号、2013年5月3日に出願された13/887,220号、2016年7月19日に出願された第15/214,355号、2013年5月3日に出願された第13/887,213号、2015年12月21日に出願された第14/977,578号、2013年6月7日に出願された第13/887,178号、2016年7月26日に出願された第15/220,354号、2013年8月12日に出願された第13/965,156号、2016年11月22日に出願された第15/359,570号、2013年5月3日に出願された第13/887,152号、2016年4月16日に出願された第29/561,749号、2012年5月3日に出願された第61/642,389号,第61/642,393号,第61/642,395号,第61/642,399号、2012年8月10日に出願された第61/682,146号、2017年4月20日に出願された第15/493,132号,第15/493,111号,第15/493,121号、2017年4月21日に出願された第15/494,444号、2017年4月24日に出願された第15/495,194号,第15/495,205号、および第15/495,212号は、これらの出願において引用されるすべての参照文献とともにここに引用により援用される。
【0039】
図3は、実現例におけるオキシメータプローブ101のブロック図を示す。オキシメータプローブ101は、ディスプレイ115、プロセッサ116、メモリ117、スピーカ118、1つ以上のユーザ選択デバイス119(例えば、1つ以上のボタン、スイッチ、ディスプレイ115に関連するタッチ入力デバイス)、源構造の組120、検出器構造の組125、および電源(例えば、バッテリ)127を含む。前述の挙げられた構成要素は、オキシメータプローブ101のシステムバスアーキテクチャであってもよいバス128を介して一緒に接続されてもよい。この図は、各構成要素に接続する1つのバスを示しているが、このバス接続は、これらの構成要素またはオキシメータプローブ101に含まれる他の構成要素を接続するのに役立つ任意の相互接続方式の例である。例えば、スピーカ118は、ポートを介してサブシステムに接続されてもよく、またはプロセッサ116への内部直接接続を有してもよい。さらに、記載された構成要素は、実現例ではオキシメータプローブ101の可動ハウジング(図1参照)に収容される。
【0040】
プロセッサ116は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、マルチコアプロセッサ、または他のプロセッサタイプを含むことができる。メモリ117は、揮発性メモリ117a(例えば、RAM)、不揮発性メモリ117b(例えば、ディスクまたはフラッシュ)などの様々なメモリを含むことができる。オキシメータプローブ101の異なる実現例は、任意の組み合わせまたは構成において、任意の数の列挙された構成要素を含むことができ、図示されていない他の構成要素も含むことができる。
【0041】
電源127は、使い捨て電池のようなバッテリとすることができる。使い捨て電池は、蓄積された電荷が消費された後に廃棄される。いくつかの使い捨て電池化学技術は、アルカリ、亜鉛炭素、または酸化銀を含む。バッテリは、ハンドヘルドの装置の使用を数時間の間可能にするのに十分な蓄積電荷を有する。ある実現例ではオキシメータプローブは廃棄可能である。
【0042】
他の実現例では、バッテリは再充電可能であり、バッテリは、蓄積された電荷が消費された後、複数回充電され得る。いくつかの充電式電池化学技術は、ニッケルカドミウム(NiCd)、ニッケル金属水素化物(NiMH)、リチウムイオン(Liイオン)および亜鉛空気を含む。例えば、ハンドヘルドのユニットに接続するコードを備えたACアダプタを介して、バッテリを充電することができる。ハンドヘルドのユニット内の回路系は、再充電回路(図示せず)を含むことができる。充電式電池化学のバッテリは、使い捨て電池として使用されてもよく、バッテリは再充電されずに使用後廃棄される。
【0043】
図4Aおよび図4Bは、実施形態におけるオキシメータプローブ101の上面図を示す。上面図は、ディスプレイ115がオキシメータプローブの頂部のプローブユニット105に配置されるのを示す。ディスプレイは、オキシメータプローブに関する情報およびプローブによって行われる測定についての測定情報の1つ以上を表示するように適合される。
【0044】
一実施形態では、ディスプレイは、オキシメータプローブによって測定される組織の酸素飽和度200の値(「酸素飽和度値」)を表示するように適合される。ディスプレイは、百分率値としての酸素飽和度、1つ以上の色(例えば、ディスプレイがカラーディスプレイである場合)のある数の棒を有する棒グラフ、または他の表示可能な情報を表示することができる。
【0045】
ディスプレイは、例えばリセットからオキシメータプローブが動作していた期間の値205を表示するように構成することもできる。オキシメータプローブのリセットは、プローブ内の電池が変えられたとき、先に未使用であった電池(新しい電池)の組の最初の電力上昇から、ハードパワーダウンからの電力上昇から、ソフトパワーダウン(例:冬眠モード)からの電力上昇から、または他のリセットイベントで、生じ得る。
【0046】
ディスプレイは、血液量ごとの総ヘモグロビンの値225を表示する(図4A)か、または血液量の値(例えば、プローブされた組織の体積当たりの血液の百分率、図4B)を表示することができる。オキシメータプローブによる総ヘモグロビンおよび血液量の測定を以下に記載する。ある実施形態では、メラニンの表示値は、ヘモグロビン濃度を表す値(例えば、指標値)であり、組織体積におけるヘモグロビン濃度がサンプリングされ、その値は、無単位の値であってもよい。
【0047】
図4Cは、ディスプレイが組織の相対酸素飽和度の値を表示するように適合された実施形態におけるオキシメータプローブ101の上面図を示す。相対酸素飽和度の値は、第1の時間に判断された酸素飽和度の第1の値および第1の時間後の第2の時間に判断された酸素飽和度の第2の値についての百分率差として表示することができる。
【0048】
一実施形態では、オキシメータプローブは、絶対St02および相対St02の値、総ヘモグロビンおよび相対St02の値、血液量および相対ヘモグロビンの値などの、情報の他の組み合わせを表示することができる。図4Eは、ディスプレイが絶対酸素飽和度および相対酸素飽和度の値を表示するオキシメータプローブ101の上面図を示す。
【0049】
図4F図4Gは、組織の相対酸素飽和度の値を判断し、その値をディスプレイ上に表示する方法のフロー図を示す。このフロー図は、1つの実施形態を表している。ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0050】
400で、入力装置(例えば、オキシメータプローブのボタン119または第2のボタンのようなボタン、オキシメータプローブのロッカースイッチ、または他の入力装置)が活性化される。入力装置は、ユーザによって起動することができる。入力装置を活性化させると、オキシメータプローブは「相対」動作モードにされ、オキシメータプローブは組織の相対酸素飽和度の値を判断することができる。ボタンを比較的速く2回押して(例えば、「ダブルクリック」)活性化させることによって、オキシメータプローブを相対モードにセットしてもよい。入力装置の第2の活性化(例えば、その後のボタンのダブルクリック)または別の入力装置(例えば、第3のボタン)の活性化は、オキシメータ装置を「絶対」モードにし、オキシメータプローブは、組織の絶対酸素飽和度の値を判断できる。
【0051】
405で、オキシメータプローブ101は、第1の期間で、源構造の1つから組織内に光(例えば、近赤外光)を照射する。照射された光が組織から反射した後、検出器構造125は光を検出し(ステップ410)、組織の反射率データを生成する(ステップ415)。ステップ405、410、および415は、複数の波長の光について、および源構造120bなどの1つ以上の他の源構造について繰り返されてもよい。
【0052】
420において、オキシメータプローブは反射率データをシミュレート反射率曲線315に適合させ、反射率データが最良適合を有するシミュレート反射率曲線を求める。メモリに格納され、反射率データに適合されるデータベースは、以下に記載されるデータベース900、データベース1000、またはデータベース1100であり得る。その後、ステップ425において、オキシメータプローブは、反射率データに最良適合するシミュレート反射率曲線の光学特性に基づいて、組織の光学特性(例えば、データベース900またはデータベース1000の場合ではμaおよびμ's、またはデータベース1100の場合ではメラニン含有量、酸素飽和度の第1の値、血液量および散乱)を求める。例えば、オキシメータプローブがデータベース900または1000からμaおよびμ'sを判断する場合、オキシメータプローブは、その後、吸収係数(μa)を用いて酸素飽和度の第1の値を判断することができる。μaからの酸素飽和度の値の判断は以下に記載される。
【0053】
ステップ430において、オキシメータプローブの入力装置(例えば、記載された入力装置のいずれかまたは他の入力装置)が活性化される。入力装置を活性化させると、酸素飽和度値がオキシメータプローブのメモリ(例えば、メモリ117、プロセッサのバッファメモリ、または他のメモリ)に格納される。第1の値のタイムスタンプも格納できる。
【0054】
435で、オキシメータプローブ101は、第1の期間後の第2の期間に、源構造の1つから組織(例えば2つの乳房または1つの乳房の対側乳房組織などのような、患者の異なる位置の異なる組織であり得る)内に光(例えば、近赤外光)を照射する。照射された光が組織から反射した後、検出器構造125は光を検出し(ステップ440)、組織についての反射率データを生成する(ステップ445)。ステップ435、440、および445は、複数の波長の光について、および源構造120bなどの1つ以上の他の源構造について繰り返されてもよい。
【0055】
450において、オキシメータプローブは反射率データをシミュレート反射率曲線315に適合させ、反射率データが最良適合を有するシミュレート反射率曲線を求める。メモリに格納され、反射率データに適合されるデータベースは、以下に記載されるデータベース900、データベース1000、またはデータベース1100であり得る。その後、ステップ455において、オキシメータプローブは、反射率データに最良適合するシミュレート反射率曲線の光学特性に基づいて、組織の光学特性(例えば、データベース900またはデータベース1000の場合ではμaおよびμ's、またはデータベース1100の場合ではメラニン含有量の第2の値、酸素飽和度の第2の値、血液量の第2の値および散乱の第2の値)を求める。例えば、オキシメータプローブがデータベース900または1000からμaおよびμ'sを判断する場合、オキシメータプローブは、その後、吸収係数(μa)を用いて酸素飽和度の第2の値を判断することができる。
【0056】
ステップ460において、プロセッサは、酸素飽和度の第1の値と第2の値との間の差(例えば、百分率差)(例えば、相対酸素飽和度)を計算する。ステップ465で、酸素飽和度の差または百分率差がディスプレイに表示される。相対的な酸素飽和度値は、第2の期間後、および第2の酸素飽和度値の判断後まで、表示に利用することはできない。一実施形態では、相対酸素飽和度値は、記号でディスプレイに表示され、第2の酸素飽和度値が第1の酸素飽和度値より上であること(例えば、上向き矢印を表示)、第1の酸素飽和度値より下であること(例えば、下向き矢印を表示)、または第1の酸素飽和度値と等しいこと(例えば、ダッシュまたは他の記号を表示)を示す。記号インジケータが表示されているときは、酸素飽和度の数値は表示されなくてもよい。酸素飽和度の数値が表示されているときに記号インジケータが表示されてもよい。
【0057】
酸素飽和度の後続値(第3、第4、第5およびそれ以上)を計算するために、ステップ435~465を継続的な態様で繰り返すことができる。これにより、オキシメータプローブは、第1の時間での酸素飽和度の値に対する、後の時間での酸素飽和度における継続的な変化を判断および表示する。相対モードに対する出入りは、酸素飽和度の第1の値をリセットすることができる。
【0058】
図4F図4Gに示す方法のステップは、第1の時間における第1の組織測定、(第1の期間の後の)第2の時間における第2の組織測定、(第2の期間の後の)第3の時間における第3の組織測定、またはそれより後の時間における、より多くの組織測定など、複数の組織測定のために繰り返され得る。計算および表示された相対酸素飽和度値は、第1および第2の組織測定値(例えば、第1の相対酸素飽和度)、第2および第3の組織測定値(例えば、第2の相対酸素飽和度値)、または第1および第3の組織測定値(例えば、第3相対酸素飽和度)についてであり得る。第1、第2および第3の組織測定値は、2つの同じ組織位置、2つの異なる組織位置、または3つの異なる組織位置についてのものであり得る。第1、第2または第3の相対酸素飽和度値(例えば、第1、第2および第3の動作モード)の表示は、ユーザにより、ユーザ入力(例えば、ボタン119、タッチスクリーン、または他のもの)の操作を介して選択され得る。
【0059】
3つの動作モードのうちの2つ以上は、同時に動作され得、第1および第2の相対酸素飽和度値が同時に表示され(例えば、第3の相対酸素飽和度値は表示されない)、第2および第3の相対酸素飽和度が同時に表示され(例えば、第1の相対酸素飽和度値は表示されない)、第1および第3の相対酸素飽和度値が同時に表示される(例えば、第2の相対酸素飽和度値は表示されない)。
【0060】
一実施形態では、酸素飽和度値の百分率差(例えば、相対酸素飽和度値)が閾値量よりも大きいかもしくは小さい場合、または酸素飽和度の絶対値が閾値量よりも大きいかもしくは小さい場合に、通知を提供するように適合されてもよい。閾値量は、ディスプレイに表示される表示量から選択される、またはオキシメータプローブに有線もしくは無線で入力される、ユーザによってオキシメータプローブに入力される量とすることができる。この量は、図4Jのステップ470で入力される値とすることができる。百分率差が閾値を上回るかまたは下回る場合、表示される酸素飽和度値は、上向き矢印、下向き矢印、点滅表示、着色された表示値(例えば、赤色または緑色)、点灯した赤色LED、点灯した緑色LED、ディスプレイ上の点灯した赤い画素の組(例えば、赤色または緑色)、または他の表示などの1つ以上の追加の表示とともに表示されてもよい。オキシメータプローブは、酸素飽和度の百分率値が閾値を上回るかまたは下回る場合に、1つ以上の音(例えば、トーンまたはクリック)を発してもよく、または触覚フィードバック(例えば、振動)を提供してもよい。いくつかの実施形態では、百分率の差が閾値を下回る(例えば、酸素飽和度が低下する)が、閾値を超えない(例えば、酸素飽和度が増加しない)場合に、これらの追加の通知の1つ以上が表示される。
【0061】
オキシメータプローブは、酸素飽和度の百分率差(例えば、相対酸素飽和度)が閾値量よりも大きいかもしくは小さい場合、または酸素飽和度の絶対値が閾値量よりも絶対量だけ上もしくは下(例えば、閾値+オフセット値、および閾値-オフセット値)である場合に、酸素飽和度値の百分率差を表示するように適合させることができる。閾値の上下のオフセットは、閾値+閾値の2パーセントおよび閾値-閾値の2パーセント、閾値+閾値の5パーセントおよび閾値-閾値の5パーセント、閾値+閾値の1パーセントおよび閾値-閾値の5パーセント、閾値+閾値の5パーセントおよび閾値-閾値の2パーセント、または他の値のように、等しくても不等であってもよい。閾値の上下の上下絶対百分率は、ユーザによって、ディスプレイに表示された表示量から選択されて、オキシメータプローブに入力されるか、またはオキシメータプローブに有線もしくは無線で入力され得る。百分率の差が閾値+もしくは-絶対値オフセットより上または下である場合、表示される酸素飽和度値は、上向き矢印、下向き矢印、点滅表示、着色された表示値(例えば、赤色または緑色)、点灯した赤色LED、点灯した緑色LED、ディスプレイ上の点灯した赤い画素の組(例えば、赤色または緑色)、または他の表示などの1つ以上の追加の表示とともに表示されてもよい。オキシメータプローブは、酸素飽和度の百分率値が閾値を上回るかまたは下回る場合に、1つ以上の音(例えば、トーンまたはクリック)を発してもよく、または触覚フィードバック(例えば、振動)を提供してもよい。いくつかの実施形態では、百分率の差が閾値を下回る(例えば、酸素飽和度が低下する)が、閾値を超えない(例えば、酸素飽和度が増加しない)場合に、これらの追加の通知の1つ以上が表示される。いくつかの実施形態では、百分率の差が閾値を下回る(例えば、酸素飽和度が低下する)が、閾値を超えない(例えば、酸素飽和度が増加しない)場合に、これらの追加の通知の1つ以上が表示される。
【0062】
一実施形態では、酸素飽和度の第1の値と第2の値との間の百分率差ではなく、酸素飽和度の第1の値と第2の値との間の差を表示するように適合される。オキシメータプローブは、相対酸素飽和度が増加または減少したことを示す様々なインジケータのうちの1つ以上で百分率差または計算された差異を表示することができる。例えば、減少した相対酸素飽和度の値は、下向きの矢印(図4H)で、着色されたインジケータ(例えば、ディスプレイ上の赤い点またはプローブ105における赤色LEDのような点灯された赤色の照明要素)とともに表示することができる。例えば、増加した相対酸素飽和度の値は、上向きの矢印(図4I)で、着色されたインジケータ(例えば、ディスプレイ上の緑の点またはプローブ105における緑色LEDのような点灯された緑色の照明要素)とともに表示することができる。相対酸素飽和度の値は、値が減少する場合には第1の色(例えば赤色)で表示され、値が増加する場合には第2の色(例えば緑色)で表示され得る。オキシメータプローブは、百分率差の値または計算された差の値が減少する場合、その値を例えば点滅として表示することができる。オキシメータプローブは、例えば、これらの値が減少する場合、1つ以上のノイズを発するように適合させることができる。オキシメータプローブは、これらの値が減少する場合、触覚フィードバック(例えば、振動)を提供するように適合させることができる。相対酸素飽和度が下限閾値を下回って減少するか、上限閾値を超えて増加するか、またはそれら両方である場合、これらの追加のインジケータ(例えば、矢印、照射光、点滅表示、色、音、触覚フィードバック、または他のインジケータで表示された値)を発することができる。
【0063】
相対的な動作モードは、酸素飽和度(相対酸素飽和度)の値における相対的変化の知識が、医療処置を開始するか、進行させるか、または停止すべきかを判断するのに役立つ、多数の医療処置に有用であり得る。例えば、組織内の血流を減少させるためには、エピネフリン注入または他の薬物を患者に投与して(例えば、局所的に組織に投与して)組織内の血流を減少させ得る。エピネフリンを投与する前に、または他の薬物を患者に投与後比較的短い時間で、組織のヘモグロビン含有量または血液量の基線値を判断することができる(例えば、ステップ405~425で、ヘモグロビン含有量または血液量の第1の値を、例えば以下に説明するデータベース1100を使用して判断する)。
【0064】
その後、更新された相対的なヘモグロビン値または血液量値の継続中の表示に基づいて(例えば、ステップ435~425で、例えば、データベース1100を使用してヘモグロビン含有量または血液量の第2の値を判断する)、開業医は、エピネフリン投与が、血流を減少させることに成功したかどうか、組織内の血流をさらに減少させるために、より多くのエピネフリンを患者に投与する必要があるかどうか、または処置を停止すべきかどうか、判断することができる。すなわち、オキシメータプローブは更新された相対的なヘモグロビン値または血液量値を表示するので、開業医は、組織に作用する投薬を「観察」することができる。
【0065】
図4Jは、組織の相対酸素飽和度の値を判断し、その値をディスプレイ上に表示する方法のフロー図を示す。このフロー図は、1つの実施形態を表している。ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0066】
470において、オキシメータは、ユーザ入力または他の装置からの入力などの入力を介して酸素飽和度の第1の値を受信する。ユーザ入力は、1回以上のボタンの押下またはタッチスクリーンなどの他の入力装置を介して入力されてもよい。酸素飽和度の第1の値は、オキシメータプローブとの有線または無線接続を介してオキシメータプローブに入力されてもよい。いくつかの実施形態では、オキシメータプローブは、例えばボタン押下または他の入力によって、ユーザが選択できる酸素飽和度の第1の値の範囲を表示することができる。
【0067】
471で、オキシメータプローブ101は、光源構造の1つから組織内に光(例えば、近赤外光)を照射する。照射された光が組織から反射した後、検出器構造125は光を検出し(ステップ472)、組織についての反射率データを生成する(ステップ473)。ステップ471、472、および473は、複数の波長の光について、および源構造120bなどの1つ以上の他の源構造について繰り返されてもよい。
【0068】
474において、オキシメータプローブは反射率データをシミュレート反射率曲線315に適合させ、反射率データが最良適合を有するシミュレート反射率曲線を求める。メモリに格納され、反射率データに適合されるデータベースは、以下に記載されるデータベース900、データベース1000、またはデータベース1100であり得る。その後、ステップ475において、オキシメータプローブは、反射率データに最良適合するシミュレート反射率曲線の光学特性に基づいて、組織の光学特性(例えば、データベース900またはデータベース1000の場合ではμaおよびμ's、またはデータベース1100の場合ではメラニン含有量の第2の値、酸素飽和度の第2の値、血液量の第2の値および散乱の第2の値)を求める。例えば、オキシメータプローブがデータベース900または1000からμaおよびμ'sを判断する場合、オキシメータプローブは、その後、吸収係数(μa)を用いて酸素飽和度の第2の値を判断することができる。
【0069】
ステップ460において、プロセッサは、酸素飽和度の第1の値と第2の値との間の差(例えば、百分率差)を計算する。ステップ477で、酸素飽和度値の百分率差がディスプレイに表示される。
【0070】
酸素飽和度の後続値(第3、第4、第5およびそれ以上)を計算するために、ステップ471~477を継続的な態様で繰り返すことができる。これにより、オキシメータプローブは、第1の時間での酸素飽和度の値に対する、後の時間での酸素飽和度における継続的な変化を判断および表示する。相対モードに対する出入りは、酸素飽和度の第1の値をリセットすることができる。
【0071】
組織分析図4Kは、ある実施形態においてオキシメータプローブ101によって組織(例:実際の組織)の光学特性を判断するための方法のフロー図である。オキシメータプローブは、オキシメータプローブによって測定される様々な組織パラメータを補正するために組織について判断されたメラニン含有量を使用する。このフロー図は、1つの実施形態を表している。ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0072】
480において、メラニン読取部が、組織に光学的に結合する(例えば、接触する)。メラニン読取部は、光をステップ482で組織に照射し、光が組織を透過した後、または組織から反射した後、ステップ484で光を検出するように適合されたオプトエレクトロニクス装置である。ステップ486において、メラニン読取部によって検出された光は、電気信号に変換され、ステップ488で、組織のメラニン含有量を判断するために装置によって使用される。メラニン読取部は、ステップ490で読取部のディスプレイ上または有線もしくは無線出力を介してメラニン含有量の値を出力することができる。
【0073】
実施形態では、492において、メラニン含有量に関する情報(例えば、数値)がオキシメータプローブ101に入力される。情報は、ユーザ(例えば、人間のユーザ)を介して、またはメラニン読取部とオキシメータプローブとの間の有線もしくは無線通信を介してオキシメータプローブに入力することができる。
【0074】
第1の実施形態では、494で、オキシメータプローブは、メラニン含有量に関する情報を使用して、プローブによって生成される1つ以上の測定値を調整する。一実施形態では、オキシメータプローブは、組織の酸素飽和度の値を判断する。オキシメータプローブは、その後、メラニン含有量に関する情報を用いて酸素飽和度の値を調整する。オキシメータプローブは、1つ以上の算術演算、数学的関数、またはその両方を介して酸素飽和度の値を調整することができる。例えば、メラニン含有量に関する情報は、酸素飽和度の値を調整するためのオフセット(例えば、加法オフセット)、スケールファクタ、またはその両方として使用することができる。
【0075】
代替的実施形態では、494で、オキシメータプローブは、オキシメータプローブにより照射され検出される光のいくつかの波長(例えば、4つの光の波長)について、組織についての吸収係数μa、低減された散乱係数μs’またはそれらの両方を判断する。その後、オキシメータプローブは、メラニン含有量に関する情報を使用して、光の各波長について、判断された吸収(μa)値を調整する。オキシメータプローブは、1つ以上の算術演算、数学的関数、またはその両方を介して吸収係数(μa)値を調整することができる。例えば、メラニン含有量に関する情報は、吸収(μa)値を調整するためのオフセット(例えば、加法オフセット)、スケールファクタ、またはその両方として使用することができる。その後、オキシメータプローブは、吸収(μa)値を使用して、組織の酸素飽和度の値を判断する。吸収(μa)および低減された散乱(μs’)の判断については以下に記載する。
【0076】
別の実施形態では、494において、オキシメータプローブは、検出器構造によって生成される反射率データに1つ以上のメラニン補正関数を適用する。メラニン補正関数は、メラニン含有量に関する情報に基づく。反射率データは、検出器構造によって生成された後オキシメータプローブの1つ以上の電子構成要素によってデジタル化されるアナログ反射率データ、またはデジタル化された反射率データであり得る。メラニン補正関数は、アナログ反射率データまたはデジタル化された反射率データに適用することができる。メラニン補正関数は、反射率データに適用される1つ以上の数学的演算を含む。スケールファクタは、オキシメータプローブに入力されるメラニン含有量に関する情報に基づいて、オキシメータプローブによって判断される。反射率データは、オキシメータプローブによって照射される光の各波長ごとにメラニン含有量について調整することができる。
【0077】
ある実施形態では、メラニン補正関数は、(例えば、スケールファクタを有する)1つ以上の較正関数と組み合わされた結合関数(例えば、スケールファクタを有する)とすることができる。較正関数は、製造の結果として生じる差異、検出器構造の温度ドリフトの結果として生じる差異、または他の考慮事項など、様々な要因に基づいて検出器応答を補正するためのスケールファクタを含むことができる。反射率データがオキシメータプローブによって調整された後、プローブは、測定される組織内の血液の酸素飽和度を判断することができる。
【0078】
図5は、実施形態におけるオキシメータプローブ101によって組織の光学特性を判断するための方法のフロー図を示す。オキシメータプローブは、オキシメータプローブによって測定される様々な組織パラメータを補正するために組織のメラニン含有量に関する情報を使用する。このフロー図は、1つの実施形態を表している。ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0079】
500において、組織の色をいくつかの色サンプル(時には色見本と呼ばれる)の2つ以上の色サンプルと比較して、色サンプルの1つの色が組織の色とほぼ一致するかどうかを判定する。色の比較に使用される各色サンプルは、メラニン含有量の値と関連付けられる。色サンプルのメラニン含有量を識別する情報(例えば、数値)は、色サンプル上に位置することができる。
【0080】
組織の色と色サンプルの色との比較は、ミシガン州グランドラピッズのX-Rite, Incorporatedの色比較ツールの1つ以上のような色比較ツールによって行うことができる。実施形態では、比較は、患者または医療提供者のような人間によって視覚的に実行され得る。一実施態様では、オキシメータプローブは、組織のメラニン含有量の値を判断するように適合され、それは、プローブのディスプレイ上に表示することができる。オキシメータプローブの一実施形態は、組織のメラニン含有量を判断するために、可視光またはIRなどの1つ以上の波長の光を照射するように適合される。
【0081】
505において、比較に続いて、比較に基づいて組織のメラニン含有量の値が判断される。
【0082】
代替的実施形態では、メラニン含有量の値は、メラニン含有量値の有限範囲に基づく含有量の推定値から判断される。メラニン含有量の範囲内の値の数は、2つ以上の値を含むことができる。例えば、メラニン含有量の範囲内の値の数は、2つ(例えば明るい色の組織に対しては1、暗い色の組織に対しては2)、3つ(例えば、明るい色は1、中間色は2、暗い色は3)、4つ,5つ,6つ,7つ,8つ,9つ,10個またはそれ以上の値を含むことができる。メラニン含有量の値の推定は、患者または医療提供者によって提供され得る。
【0083】
510において、メラニン含有量に関する情報をオキシメータプローブに入力することができる。ステップ510は、オキシメータプローブがメラニン含有量の値を判断する方法ではスキップすることができる。ボタン119は、メラニン含有量に関する情報が入力され得るデータ入力モードにオキシメータプローブをセットするために、予め定められた回数だけ活性化させることができる。その後、メラニン含有量の情報は、ボタンのさらなる活性化により、プローブとの有線通信、プローブとの無線通信、ディスプレイがタッチインタフェースディスプレイであればディスプレイを介して、音声インタフェース(例えば、プローブ内のマイクロフォンおよび音声認識ソフトウェア)、または他の入力技術によって、プローブに入力され得る。
【0084】
515で、オキシメータプローブは、メラニン含有量に関する情報を使用して、オキシメータプローブによって実行される1つ以上の測定または計算を調整するように適合される。例えば、オキシメータプローブは、この情報を使用して、組織の酸素飽和度を調整し、吸収(μa)を調整し、低減された散乱(μs’)を調整し、検出器によって生成される値を調整し、またはこれらの調整の組み合わせの1つ以上を調整し得る。これらの調整の各々は、ステップ435に関してさらに上で説明される。
【0085】
図6は、ある実施形態においてオキシメータプローブ101によって組織の光学特性を判断するための方法のフロー図である。オキシメータプローブは、プローブによって測定される様々な組織パラメータを補正するために組織について判断されたメラニン含有量を使用する。このフロー図は、1つの実施形態を表している。ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0086】
600において、組織の1つ以上の対側測定がオキシメータプローブによって行われる。対側測定は、測定すべき標的組織(例えば、組織健康が判断されるべき乳房組織)上でオキシメータプローブを用いて測定する前に、健康な組織の一部(例えば、健康な乳房組織)上でオキシメータプローブを用いて行われる。組織の対側測定は、オキシメータプローブによって照射される光の各波長について行うことができる。
【0087】
605において、検出器構造によって生成された反射率データは、オキシメータプローブの電子要素によってデジタル化され、メモリに記憶される。反射率データは、その後の組織測定のための比較の基礎を提供する。例えば、対側測定値は対側組織のメラニン含有量の基線測定値を提供し、基線測定値をプロセッサが使用してオキシメータプローブの種々の測定値を補正することができる。
【0088】
610において、測定されるべき標的組織のオキシメトリ測定がオキシメータプローブによって行われる。
【0089】
実施形態では、615において、プロセッサは、オキシメトリ測定を使用して標的組織の酸素飽和度値を生成する。その後、プロセッサは、対側組織について605で記憶された、記憶された反射率データを取り出し、取り出された値を用いて酸素飽和度値を調整する。すなわち、プロセッサは、健康な対側組織のメラニン含有量についての基線測定値を使用して、標的組織の酸素飽和度値を調整する。
【0090】
別の実施形態では、615において、プロセッサは、標的組織のオキシメトリ測定値から吸収μa、低減された散乱係数μs’、またはその両方を判断する。その後、プロセッサは、対側組織について605で記憶された反射率データを取り出し、取り出した値を使用してμa、μs、またはその両方を調整する。次に、プロセッサは、調整されたμa値を用いて、標的組織の酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、または他の値を計算する。すなわち、プロセッサは、健康な対側組織のメラニン含有量の基線測定値を使用して、標的組織のμaを調整する。
【0091】
615では、別の代替的な実施態様では、プロセッサは、対側組織について605で記憶された、記憶された反射率データを取り出し、取り出された値を使用して、標的組織について検出器構造によって生成される反射率データを調整する。反射率データにプロセッサによって適用される調整は、単純なオフセット(例えば、加算オフセット)、スケールファクタ(例えば、乗算オフセット)、関数による補正、他の補正、またはこれらの調整のいずれかの任意の組み合わせとすることができる。すなわち、プロセッサは、健康な組織のメラニン含有量の基線測定値を用いて、検出器構造によって生成される値を調整して、標的組織の反射率データを調整する。
【0092】
記憶されたシミュレート反射率曲線。ある実施形態によれば、メモリ117は、後でメモリに記憶するためにコンピュータによって生成され得るいくつかのモンテカルロシミュレーション反射率曲線315(「シミュレート反射率曲線」)を記憶する。シミュレート反射率曲線315の各々は、1つ以上のシミュレートされた源構造からシミュレートされた組織内へと照射され、シミュレートされた組織から1つ以上のシミュレートされた検出器構造に反射される光(例えば近赤外線)のシミュレーションを表す。シミュレート反射率曲線315は、図2に関して上述したように、源-検出器距離を有するプローブ先端110の源構造120a~120bおよび検出器構造125a~125hの構成のような、シミュレートされた源構造およびシミュレートされた検出器構造の特定の構成に対するものである。
【0093】
したがって、シミュレート反射率曲線315は、オキシメータプローブ101の源構造から照射され、オキシメータプローブ101の検出器構造によって収集される光をモデル化する。さらに、シミュレート反射率曲線315の各々は、組織発色団の特定の濃度および組織散乱体の特定の濃度に関する特定の組織吸収値および組織散乱値などの固有の実際の組織状態を表す。例えば、シミュレート反射率曲線は、様々なメラニン含有量、様々な酸素化ヘモグロビン濃度、様々な脱酸素化ヘモグロビン濃度、様々の水の濃度、水の濃度の静的値、脂肪の様々な濃度、脂肪の濃度の静的値、または様々な吸収(μa)値および低減された散乱(μs’)値のために使用される。
【0094】
メモリ117に記憶されるシミュレート反射率曲線の数は、相対的に大きくてもよく、オキシメータプローブ101によって生存能力について分析される実際の組織に存在し得る光学特性および組織特性のすべてではないにしてもほとんどすべての実際的な組み合わせを表し得る。メモリ117は、モンテカルロシミュレーション反射率曲線を格納するものとして本明細書では説明されているが、メモリ117は、拡散近似を使用するなど、モンテカルロ法以外の方法によって生成されたシミュレート反射率曲線を記憶してもよい。
【0095】
図7は、プローブ先端110の源構造および検出器構造の構成のような、源構造120および検出器構造125の特定の構成に関するものであってもよい、反射率曲線の例示的なグラフを示す。グラフの水平軸は、源構造120と検出器構造125との間の距離(すなわち、源-検出器距離)を表す。源構造120と検出器構造125との間の距離が適切に選択され、シミュレート反射率曲線が源構造120および検出器構造125についてのシミュレーションである場合、シミュレート反射率曲線におけるデータ点間の横方向の間隔は相対的に均一である。このような均一な間隔は、図7のシミュレート反射率曲線に見ることができる。グラフの垂直軸は、組織から反射し、検出器構造125によって検出される光のシミュレートされた反射率を表す。シミュレート反射率曲線によって示されるように、検出器構造125に到達する反射光は、源構造と検出器構造との間の距離によって変化し、より小さな源-検出器距離で検出される反射光は、より大きな源-検出器距離で検出される反射光よりも大きい。
【0096】
図8は、いくつかの重要な組織発色団、すなわち酸素化ヘモグロビンを含有する血液、脱酸素化ヘモグロビンを含有する血液、メラニン、および水についての、吸収係数μa対光の波長のグラフを示す。ある実施形態では、シミュレート反射率曲線を生成するために使用されるモンテカルロシミュレーションは、組織内に存在し得る1つ以上の選択発色団の関数である。発色団はメラニン、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、水、脂質、シトクロムまたは他の発色団を、任意の組み合わせで含むことができる。酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビンおよびメラニンは、可視および近赤外スペクトル範囲の大部分について、組織における最も支配的な発色団である。
【0097】
一実施形態によれば、メモリ117は、シミュレート反射率曲線315の各々について選択された数のデータ点を記憶し、シミュレート反射率曲線の全体は記憶しないかもしれない。シミュレート反射率曲線315の各々について記憶されるデータ点の数は、源-検出器対の数と一致してもよい。例えば、プローブ先端110が2つの源構造120aおよび120bならびに8個の検出器構造125a~125hを含む場合は、オキシメータプローブ101は16個の源-検出器の対を含み、メモリ117はしたがって源構造120aまたは120bによって照射される光の各波長のシミュレート反射率曲線ごとに16個の選択データ点を記憶し得る。実施形態では、記憶されたデータ点は、表1において示されるものなどのようなプローブ先端110の特定の源-検出器距離についてのものである。
【0098】
したがって、メモリ117に記憶されるシミュレート反射率曲線データベースのサイズは16×5850であり得、各源構造120によって生成および照射され各検出器構造125によって測定され得る曲線ごとに16個の点が記憶され得、光学特性範囲にわたって合計5850本の曲線がある。代替的に、メモリ117に記憶されるシミュレート反射率曲線データベースのサイズは16×4×5850であり得、各源構造によって生成され発せられ得る4つの異なる波長について16個の点が曲線ごとに記憶され、光学特性範囲にわたって合計5850本の曲線がある。5850本の曲線は、例えば、39個の散乱係数μs'値および150個の吸収係数μa値のマトリクスに由来する。他の実施形態では、より多くかまたはより少ない数のシミュレート反射率曲線が、メモリにおいて記憶される。例えば、メモリに記憶されるシミュレート反射率曲線の数は、約100本の曲線から、約250,000本の曲線、約400,000本の曲線、またはそれ以上の範囲に及ぶことができる。
【0099】
低減された散乱係数μs'値の範囲はセンチメートルにつき5:5:24からかもしれない。μa値の範囲はセンチメートルにつき0.01:0.01:1.5からかもしれない。上述の範囲は例の範囲であり、源-検出器の対の数、各源構造によって生成され照射される波長の数、およびシミュレート反射率曲線の数はより小さくても大きくてもよいことが理解されるであろう。
【0100】
図9は、実施形態においてオキシメータプローブのメモリに記憶されるシミュレート反射率曲線315のデータベース900を示す。このデータベースは、組織の均質モデル用である。データベース内の各行は、2つのシミュレートされた源構造(例えば、源構造120a~120b)からシミュレートされた組織に照射され、シミュレートされた組織からの反射後に8つのシミュレートされた検出器構造(例えば、検出器構造125a~125h)によって検出されるシミュレートされた光についてモンテカルロシミュレーションから生成されるシミュレート反射率曲線を示す。データベースのためにシミュレート反射率曲線を生成するために使用されるモンテカルロシミュレーションは、均質な組織モデル用である。均質組織モデルのためのシミュレートされた組織は、組織表面から表皮、真皮および皮下組織を通して均質な光学特性を有する。つまり、表皮、真皮および皮下の光学特性は、モンテカルロシミュレーションでは同じである。データベースにおいて、シミュレート反射率曲線の各々は、吸収(μa)値および低減された散乱(μs’)値と関連付けられる。データベース内のシミュレート反射率曲線の各々は、他の発色団の値と関連付けることができる。
【0101】
シミュレート反射率曲線のデータベースは、シミュレートされた反射率の実際の値(例えば、浮動小数点値)を含むことができ、またはシミュレートされた反射率の実際の値に対する索引付けされた値(例えば、2進値)を含むことができる。図9に示すように、データベースは、シミュレートされた反射率の実際の値に対する索引付けされた値(例えば、2進値)を含む。データベースは、例えばエントリの精度に依存する様々な長さのバイナリワードを含むことができる。バイナリワードは、2ビット長、4ビット長、8ビット長、16ビット長、32ビット長、または他の長さとすることができる。
【0102】
一実施態様では、1つ以上の数学的変換が、シミュレート反射率曲線の値をデータベースに入力する前に、シミュレート反射率曲線に適用される。数学的変換は、検出器構造によって生成された反射率データのシミュレート反射率曲線への適合を改善することができる。例えば、シミュレート反射率曲線に対数関数を適用して、検出器構造によって生成された測定データのシミュレート反射率曲線への適合を改善することができる。
【0103】
オキシメトリ測定が行われると、照射された光の各波長に対する反射率データが検出器構造によって検出され、データベース900のシミュレート反射率曲線に個別に適合される。シミュレート反射率曲線に適合した照射光の各波長の反射率データについて、オキシメータプローブは吸収μa、低減された散乱μs’またはこれらの値の両方を判断する。例えば、第1の波長の光に対する第1の反射率データのセットをシミュレート反射率曲線に適合させて、吸収μaおよび低減された散乱μs’の1つ以上(例えば、組織パラメータの第1の組)を判断する。反射率データをシミュレート反射率曲線に適合させることについては、以下でさらに説明する。
【0104】
その後、第2の波長の光に対する第2の反射率データのセットをデータベース900のシミュレート反射率曲線に適合させて、第2の波長について吸収μaおよび低減された散乱μs’の1つ以上(例えば、組織パラメータの第2の組)を判断する。その後、第3の波長の光に対する第3の反射率データのセットをデータベース900のシミュレート反射率曲線に適合させて、吸収μaおよび低減された散乱μs’の1つ以上(例えば、組織パラメータの第3の組)を判断する。その後、第4の波長の光に対する第4の反射率データのセットをデータベース900のシミュレート反射率曲線に適合させて、第4の波長について、吸収μaおよび低減された散乱μs’の1つ以上(例えば、組織パラメータの第4の組)を判断する。
【0105】
4組の組織パラメータをオキシメータプローブによって一緒に使用して、酸素化ヘモグロビン濃度、脱酸素化ヘモグロビン濃度、メラニン含有量、または他のパラメータなど、組織の様々な値を判断することができる。
【0106】
図10は、実施形態においてオキシメータプローブのメモリに記憶されるシミュレート反射率曲線のデータベース1000を示す。データベースは、組織の層状モデル(例えば、層状の皮膚)のためのものである。シミュレート反射率曲線を生成したモンテカルロシミュレーションは、シミュレーションのために層状組織モデルを使用する。層状組織は、2つ以上の層を含むことができる。一実施形態では、層状組織は2つの組織層を含む。2つの組織層は、異なる吸収μa、低減された散乱μs’、またはこれらの特性の両方のような、異なる光学特性を有する。
【0107】
一実施態様では、第1のシミュレートされた組織層は表皮用であり、第2のシミュレートされた組織層は真皮用である。モンテカルロシミュレーションで使用される表皮の厚さは、約40ミクロン~約140ミクロンの範囲であり得る。例えば、表皮の厚さは、40ミクロン、50ミクロン、60ミクロン、70ミクロン、80ミクロン、90ミクロン、100ミクロン、110ミクロン、120ミクロン、130ミクロン、140ミクロンまたは他の厚さであり得る。モンテカルロシミュレーションで使用される真皮の厚さは、1ミリメートル未満から事実上無限の厚さまでの範囲、例えば12ミリメートル以上であり得る。
【0108】
シミュレート反射率曲線が真皮のために生成されるとき、表皮の1つ以上の光学特性は変動され得る。例えば、シミュレート反射率曲線が真皮のために生成されるとき、メラニン含有量は表皮について変動され得る。代替的に、シミュレート反射率曲線が真皮のために生成されるとき、μaは表皮について変動され得る。
【0109】
一実施形態では、データベース1000は、表皮と真皮との組み合わせによって反射される光についてのシミュレート反射率曲線を含む。
【0110】
オキシメータプローブによって測定される実際の組織について、源構造によって照射され検出器構造によって検出される光の各波長についての反射率データは、プロセッサによって一度に1つずつシミュレート反射率曲線に適合される。データベース内のシミュレート反射率曲線の1つ以上への適合に基づいて、オキシメータプローブは、実組織の一方または両方の層について、吸収μaおよび低減された散乱μs’の一方または両方を判断する。一方の層について判断された吸収(μa)値から、オキシメータプローブは組織の酸素化濃度および脱酸素化ヘモグロビン濃度を判断する。
【0111】
図11A図11Bは、実施形態においてオキシメータプローブのメモリに記憶されるシミュレート反射率曲線のデータベース1110を示す。データベースは組織の層状モデル用である。データベースの各行は、シミュレートされた源構造から照射され、シミュレートされた検出器構造によって検出される4つの波長の光の各々に対するシミュレート反射率曲線を含む。4つのシミュレート反射率曲線の各行は、各シミュレート反射率曲線について16の値を含む。より具体的には、各行は、源構造120a~120bおよび検出器構造125a~125hの16個の源-検出器距離のために16個の値を含む。合計で、各行は、2つのシミュレートされた源構造から照射され、8つのシミュレートされた検出器構造によって検出される4つの波長の光に対する4つのシミュレート反射率曲線について64個の値を含む。
【0112】
より多くのまたはより少ない波長が源構造から照射される場合、データベース1110の組織の層状モデルは、1行当たりより多くのまたはより少ないシミュレート反射率曲線を含むことができる。データベース1110は、例えば、1つまたは3つ以上の源構造がプローブ先端に含まれるか、より多くのまたはより少ない検出器構造がプローブ先端に含まれるか、またはその両方である場合、シミュレート反射率曲線の各々について、16個より多くまたはより少ない値を含むことができる。
【0113】
データベース1110の各行についての4つのシミュレート反射率曲線の各々は、メラニン含有量、血液量、散乱、および酸素飽和度(組織の総ヘモグロビンに対する酸素化ヘモグロビンの割合)を含む4つの組織パラメータに関連付けられる。より多数または少数の組織パラメータをデータベース1110に含めることができる。
【0114】
オキシメータプローブによって測定されるべき組織について検出器構造125a~125hによって生成される検出器値の組が、プロセッサによって行の1つ以上に適合されると、オキシメータプローブは、それによって、メラニン含有量、血液量、散乱、および酸素飽和度などの組織パラメータのうちの1つ以上を、任意の組み合わせで、判断する。一実施形態では、オキシメータプローブは、組織の酸素飽和度を判断し、ディスプレイ上に酸素飽和度の値を表示するように適合される。
【0115】
上で簡単に説明したように、データベース1110は、層状組織モデルのシミュレート反射率曲線315を含む。シミュレートされた組織の層は、表皮、真皮、皮下組織、またはこれらの層の1つ以上の任意の組み合わせを含むことができる。これらの層は、細網真皮および表層神経叢のような皮膚形態のより高い分解能を含むことができる。シミュレート反射率曲線を生成するモンテカルロシミュレーションは、組織層に含まれる様々な発色団について組織をシミュレートすることができる。例えば、モンテカルロシミュレーションは、様々なメラニン含有量を有する表皮のための組織モデルを使用することができるが、血液を含む表皮のための組織モデルを使用しないかもしれない。モンテカルロシミュレーションは、様々な血液量および様々な酸素飽和度を有する真皮層のための組織モデルを使用することができる。ある実施形態では、モンテカルロシミュレーションは、メラニンを含む真皮のための組織モデルを使用しない。同様に、モンテカルロシミュレーションは、様々な血液量および様々な酸素飽和度を有する脂肪組織の組織モデルを使用することができる。ある実施形態では、モンテカルロシミュレーションは、メラニンを有する脂肪組織のための組織モデルを使用しない。組織層の組織モデルは、他の組織発色団の濃度が比較的典型的な生理学的値である水および脂肪のような、他の組織発色団についての濃度を含むことができる。
【0116】
一実施態様では、シミュレート反射率曲線を生成するためにモンテカルロシミュレーションが使用する様々な発色団濃度は、実際の組織に存在する実際の生理学的値の相対的に大きくかつ相対的に正確な範囲に亘る。実際の生理学的値の範囲に含まれる値の数は、組織オキシメータ測定の様々なパラメータのバランスをとるために変更することができる。例えば、シミュレートされた組織における発色団の濃度の範囲に使用される値の数は、相対的に高くまたは低くあり得、オキシメータプローブによって行われる測定の精度に影響を与え得る。一実施形態では、シミュレートされた表皮組織における光吸収についてメラニン含有量の範囲のためにモンテカルロシミュレーションで355の値が使用される。一実施形態では、シミュレートされた真皮組織における光吸収についてメラニン含有量の範囲のためにモンテカルロシミュレーションで86の値が使用される。シミュレートされた表皮組織およびシミュレートされた真皮組織の両方における散乱については、モンテカルロシミュレーションで65の値が使用される。他の実施態様では、これらの値の数は異なる。
【0117】
組織分析図12A図12Bは、オキシメータプローブ101が光学特性を判断するために反射率データおよびシミュレート反射率曲線315を使用する、オキシメータプローブによる組織(例えば皮膚)の光学特性を判断するための方法のフロー図である。光学特性は、組織の吸収係数μaおよび低減された散乱係数μs’を含み得る。組織の吸収係数μaを組織の酸素飽和度値に変換するためのさらなる方法は、以下により詳細に説明される。このフロー図は、1つの実施形態を表している。ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0118】
1200において、オキシメータプローブ101は、源構造120aなどの源構造120の1つから組織内に光(例えば近赤外光)を発する。オキシメータプローブは一般に、源構造から発光されているときに組織と接触している。照射光が組織から反射した後、ステップ1205において検出器構造125がこの光の一部を検出し、ステップ1210において組織の反射率データ点を生成する。ステップ1200、1205、および1210は、光の複数の波長(例えば赤色光、近赤外光、またはその両方)について、および源構造120bなどの1つ以上の他の源構造について繰返され得る。1つの波長の反射率データ点は、例えば組織オキシメトリプローブ115が16個の源-検出器距離を有する場合、16個の反射率データ点を含むかもしれない。反射率データ点は、反射率データ点のNベクトルと称されることもある。
【0119】
1215において、反射率データ点(例えば生反射率データ点)が源-検出器の対のゲインに対して補正される。源-検出器の対の校正の間、源-検出器の対についてゲイン補正が生成され、メモリ117に記憶される。ゲイン補正の生成については、以下でさらに詳細に説明する。
【0120】
1220において、プロセッサ116は、(例えば残差二乗和計算を介して)反射率データ点をシミュレート反射率曲線315に適合させて、反射率データ点に最良適合する(すなわち最低適合誤差を有する)特定の反射率データ曲線を求める。メモリに格納され、反射率データに適合されるデータベースは、データベース900、データベース1000、またはデータベース1100であることができる。1つの特定の実施形態では、シミュレート反射率曲線のデータベースの「粗(coarse)」グリッドであるシミュレート反射率曲線の比較的小さいセットが選択されて適合ステップ1220に利用される。例えば、39個の散乱係数μs’値および150個の吸収係数μa値を与えられるデータベース900の場合、シミュレート反射率曲線の粗グリッドは、プロセッサ116によって、粗グリッド内の合計40本のシミュレート反射率曲線について5個おきの散乱係数μs’値および8個おきの吸収係数μaを取ることによって、求められるかもしれない。上述の具体値は例の実施形態についてのものであり、他のサイズの粗グリッドもプロセッサ116によって利用されるかもしれないことが理解されるであろう。反射率データ点を粗グリッドに適合させることによる結果は、最良適合するシミュレート反射率曲線の粗グリッド内の座標(μa,μs’)coarseである。データベース1000の場合、粗グリッドは、各層の吸収、および低減された散乱をカバーする。データベース1000のための方法に関する以下の各ステップは、各層のμa、およびμs’について調整される。データベース1100の場合、粗グリッドは、メラニン含有量、酸素飽和度、血液量、および散乱をカバーする。データベース1100のための方法の以下の各ステップは、μa、およびμs’の代わりにメラニン含有量、酸素飽和度、血液量、および散乱について調整される。
【0121】
1225において、最低適合誤差を有する粗グリッドからの特定のシミュレート反射率曲線がプロセッサ116によって利用されてシミュレート反射率曲線の「微細(fine)」グリッドが定義され、微細グリッド内のシミュレート反射率曲線は、最低適合誤差を有する粗グリッドからのシミュレート反射率曲線の周りにある。
【0122】
すなわち、微細グリッドは規定サイズであり、粗グリッドからの最低誤差シミュレート反射率曲線は微細グリッドの中心を規定する。微細グリッドは粗グリッドと同数のシミュレート反射率曲線を有してもよいし、またはより多いもしくはより少ないシミュレート反射率曲線を有してもよい。微細グリッドは、ステップ1230において微細グリッド内で近傍の吸収係数μa値および散乱係数μs’値のピーク表面アレイを求めるのに十分な数の点を提供する。具体的には、プロセッサ116が粗グリッドからの最低誤差値に加えて特定のオフセットを利用することによって閾値が設定され得る。閾値未満の誤差を有する微細グリッド上の散乱係数μs’および吸収係数μaの位置はすべて、反射率データについての散乱係数μs’および吸収係数μaをさらに求めるためにピーク表面アレイを求める際に用いるために識別され得る。具体的には、ピークについて誤差適合がなされ、ピークにおける吸収係数μaおよび散乱係数μs’値が求められる。ステップ1240において、ピークにおける吸収係数μaおよび散乱係数μs’値の重み付け平均(例えばセントロイド計算)がオキシメータプローブによって利用され、組織の反射率データ点についての吸収係数μaおよび散乱係数μs’値が求められ得る。
【0123】
重み付け平均についての吸収係数μaおよび散乱係数μs’値の重みは、閾値から微細グリッド誤差を引いたものとしてプロセッサ116によって求められ得る。微細グリッド上の点は閾値未満の誤差で選択されるため、これによって正の重みが与えられる。重み付け平均の重み付け計算(例えばセントロイド計算)によって、組織の反射率データ点についての予想される散乱係数μs’および吸収係数μa(すなわち(μa,μs’)fine)が提供される。様々な非線形最小二乗法の1つ以上を用いて適合して吸収係数μaの真の最小誤差ピークを求めるなど、他の方法もオキシメータプローブによって利用され得る。
【0124】
一具体化によると、プロセッサ116は反射率データ点およびシミュレート反射率曲線の対数を計算し、各対数を源-検出器距離(例えばセンチメートルで表わされる)の平方根で割る。源-検出器距離の平方根で割られた対数値は、上述のステップ(例えばステップ1215、1220、1225、および1230)において反射率データ点およびシミュレート反射率曲線についてプロセッサ116によって利用されて、シミュレート反射率曲線に対する反射率データ点の適合が改善され得る。
【0125】
別の具体化によると、オフセットは実質的にゼロに設定され、これによって粗グリッド最小と微細グリッド最小との差のオフセットが有効に与えられる。図12Aに関して上記に説明された方法は粗グリッドからの最小適合誤差に依拠するため、微細グリッド上の真の最小誤差は典型的にはより低い。理想的には、閾値は微細グリッド上の最低誤差から求められ、これは典型的にはプロセッサによるさらなる演算を必要とする。
【0126】
以下は、一具体化に係る微細グリッド内の反射率データ点に最良適合する特定のシミュレート反射率曲線を見つけるためのさらなる詳細な説明である。図12Bは、1つの実施形態による、微細グリッドにおいて反射率データ点に最良適合する特定のシミュレート反射率曲線を見つける方法のフロー図である。このフロー図は、1つの実施形態を表している。ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0127】
ステップ1225において反射率データ点に最良適合する粗グリッドから特定のシミュレート反射率曲線(μa,μs’)coarseを求めた後、ステップ1250において、プロセッサ116はシミュレート反射率曲線の完全シミュレート反射率曲線データベース(すなわち16×5850の(μa,μs’)データベース)内の(μa,μs’)coarseの周りの領域内の誤差表面を演算する。誤差表面はerr(μa,μs’)と示される。その後、ステップ1255において、プロセッサ116は、errminと称される、err(μa,μs’)内の最小誤差値を探す。プロセッサ116は次に、ステップ1260において、ピーク表面がゼロよりも大きい場合はpksurf(μa,μ’s)=k+errmin-err(μa,μ’s)によって示される、またはピーク表面がゼロ以下である場合はpksurf(μa,μ’s)=k+errmin-err(μa,μ’s)=0によって示されるerr(μa,μs’)からのピーク表面アレイを生成する。当該式において、kは、約10個の要素のゼロよりも大きい幅を有するerr(μa,μ’s)の最小点におけるピークから選択される。ステップ1265において、pksurf(μa,μ’s)のピークの質量中心(すなわちセントロイド計算)は、点の高さを重みとして用いる。質量中心の位置は、組織の反射率データ点の吸収係数μaおよび散乱係数μs’の補間結果である。
【0128】
組織の反射率データ点の吸収係数μaおよび散乱係数μs’を求めるための図12Aおよび図12Bに関して上記に説明された方法は、源構造120の各々によって生成される波長(例えば3つまたは4つの波長)の各々ごとに繰返され得る。
【0129】
酸素飽和度判定。第1の具体化によると、プロセッサ116は、各源構造120によって生成される光の3つまたは4つの波長について(上述のように)求められる吸収係数μa(例えば3つまたは4つの吸収係数μa)を利用することによって、オキシメータプローブ101によってプローブされる組織の酸素飽和度を求める。第1の具体化によると、酸素飽和度に対する吸収係数μaの最良適合を見つけるための酸素飽和度値のルックアップテーブルが生成される。ルックアップテーブルは、可能性のある総ヘモグロビン、メラニン、および酸素飽和度値の範囲を仮定し、これらのシナリオごとにμaを計算することによって生成され得る。そして、単位ベクトルのノルム(norm)で分割して、システム誤差を減少させて曲線の相対形状にのみ依存することによって、吸収係数μa点が単位ベクトルに変換される。そして、単位ベクトルがルックアップテーブルと比較されて最良適合が見つけられ、これによって酸素飽和度が与えられる。
【0130】
第2の具体化によると、プロセッサ116は、脱酸素化ヘモグロビンおよび酸素化ヘモグロビンの純検体信号(net analyte signal:NAS)を計算することによって組織の酸素飽和度を求める。NASは、系内の他のスペクトル成分に直交するスペクトルの部分と定義される。例えば、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンも含む系における脱酸素化ヘモグロビンのNASは、酸素化ヘモグロビンスペクトルおよびメラニンスペクトルに直交するスペクトルの部分である。そして、ベクトルがそれぞれのNASを各波長において予め決定された吸収係数で乗算することによって、脱酸素化および酸素化ヘモグロビンの濃度が計算され得る。そして、酸素飽和度が、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの合計で除算される酸素化ヘモグロビンの濃度として容易に計算される。LorberによるAnal. Chem. 58: 1167-1172 (1986)が引用により本明細書中に援用され、組織の酸素飽和度を求めるための第2の具体化のさらなる詳細な理解のための枠組みを提供する。
【0131】
オキシメータプローブ101の実施形態によると、反射率データは30ヘルツで検出器構造125によって生成され、酸素飽和度値は約3へルツで計算される。求められた酸素飽和度値(例えば少なくとも3つの酸素飽和度値)の移動平均がディスプレイ115上に表示され得るが、それは1ヘルツの更新速度を有するかもしれない。
【0132】
光学特性。上記に簡単に説明されたように、メモリ117に記憶される各シミュレート反射率曲線315は、組織の一意の光学特性を表わす。より具体的には、所与の波長についてのシミュレート反射率曲線の一意の形状は組織の光学特性の一意の値、すなわち、散乱係数(μs)、吸収係数(μa)、組織の異方性(g)、および組織の屈折率を表わし、それらから組織の特性が判断されてもよい。
【0133】
比較的小さい源-検出器距離について検出器構造125によって検出される反射率は、低減された散乱係数μs’に主に依存する。低減された散乱係数は、散乱係数μsおよび組織の異方性gを組込んだ「集合(lumped)」特性であり、μs’=μs(1-g)であり、1/μs’のサイズの多くのステップのランダムウォークの光子の拡散を記述するために用いられ、各ステップは等方散乱を含む。そのような記述は、多くの小さいステップ1/μsを用いる光子移動の記述と同等であり、これらのステップの各々は、吸収事象の前に多くの散乱事象がある場合、すなわちμa<<μs’である場合は一部偏向角度のみを含む。
【0134】
対照的に、比較的大きい源-検出器距離について検出器構造125によって検出される反射率は、有効吸収係数μeffに主に依存し、これは、
【0135】
【数1】
【0136】
と定義され、これはμaおよびμs’の両方の関数である。
したがって、相対的に小さい源-検出器距離(例えば図2のS1-D4およびS2-D8)ならびに相対的に大きい源-検出器距離(例えば図2のS1-D8およびS2-D4)における反射率を測定することによって、μaおよびμs’の両方を互いに独立して求めることができる。組織の光学特性は次に、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビン濃度の計算のための十分な情報、およびしたがって組織の酸素飽和度を提供し得る。
【0137】
データ収集最適化のための反復適合。図13は、オキシメータプローブ101による組織の光学特性を判断する別の方法のフロー図を示す。このフロー図は、1つの実施形態を表している。ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0138】
1300において、オキシメータプローブ101は、源構造120aなどの源構造120の1つから組織内に光(例えば近赤外光)を発する。照射された光が組織から反射した後、検出器構造125は光を検出し(ステップ1305)、組織についての反射率データを生成する(ステップ1310)。ステップ1300,1305、および1310は、複数の波長の光について、および源構造120bなどの1つ以上の他の源構造について繰り返されてもよい。1315において、オキシメータプローブ101は反射率データをシミュレート反射率曲線315に適合させ、反射率データが最良適合を有するシミュレート反射率曲線を求める。メモリに格納され、反射率データに適合されるデータベースは、データベース900、データベース1000、またはデータベース1100であり得る。その後、ステップ1320において、オキシメータプローブ101は、反射率データに最良適合するシミュレート反射率曲線の光学特性に基づいて、組織の光学特性(例えば、データベース900またはデータベース1000の場合ではμaおよびμs’、またはデータベース1100の場合ではメラニン含有量、酸素飽和度、血液量および散乱)を求める。
【0139】
1325において、オキシメータプローブ101は、ステップ1320で求めた光学特性(例えばmfp=1/(μa+μ’s))から組織内の光の平均自由工程を求める。具体的には、平均自由工程は、すべての源-検出器の対(例えば、対1:源構造120aおよび検出器構造125a、対2:源構造120aおよび検出器構造125b、対3:源構造120aおよび検出器構造125c、対4:源構造120aおよび検出器構造125d、対5:源構造120aおよび検出器構造125e、対6:源構造120aおよび検出器構造125f、対7:源構造120aおよび検出器構造125g、対8:源構造120aおよび検出器構造125h、対9:源構造120bおよび検出器構造125a、対10:源構造120bおよび検出器構造125b...など)についての反射率データを含む累積反射率曲線から得られる光学特性から求められ得る。
【0140】
1330において、オキシメータプローブ101は、組織の所与の領域について計算した平均自由工程が最短の源-検出器距離(例えば図2のS1-D4およびS2-D8)の2倍よりも長いか否かを判断する。平均自由工程が最短の源-検出器距離の2倍よりも長い場合は、最短の源-検出器距離を有する源-検出器の対の検出器構造から収集される反射率データを利用することなく、収集された反射率データはシミュレート反射率曲線に再適合される(すなわち再分析される)。例えば、ステップ1315~1330は、源構造120aが検出器構造125dの源として作用している状態で検出器構造125eからの反射率データを使用せずに、かつ、源構造120bが検出器構造125hの源として作用している状態で検出器構造125hからの反射率データを使用せずに、繰返される。平均自由工程を計算し、1つ以上の源-検出器の対についての反射率データを捨てる処理は、適合に対する反射率データに寄与する源-検出器の対のうち、計算された平均自由工程の半分よりも短い源-検出器距離を有する対がなくなるまで繰返され得る。その後、ステップ1335において、最良適合するシミュレート反射率曲線から酸素飽和度が求められ、オキシメータプローブ101によって例えばディスプレイ115上で報告される。
【0141】
源構造120の1つから組織内に発せされ、平均自由工程の半分未満だけ進む光は、非拡散反射されるか、またはほぼ非拡散反射される(例えば、拡散反射要素を有することができる)。この光の再発光距離は、組織位相関数および局所組織構成に大きく依存する。したがって、この光の反射率データを使用すると、複数の散乱事象を経験した光の反射率データと比較して、光学特性および組織特性の判定の精度が低下する傾向がある。
【0142】
データ重み付け検出器構造。源構造120からの増大した距離に位置する検出器構造125は、組織から、減少する量の反射を受ける。したがって、相対的に短い源-検出器距離(例えば、図2のS1-D4およびS2-D8)を有する検出器構造125によって生成された反射率データは、相対的に長い源-検出器距離(例えば、図2のS1-D8およびS2-D4)を有する検出器構造によって生成される反射率データと比較して、本来、より高い信号を示す傾向がある。したがって、適合アルゴリズムは、シミュレート反射率曲線を、相対的に長い源-検出器距離(例えば、平均距離より大きい源-検出器距離)を有する検出器構造によって生成される反射率データよりも密に、相対的に短い源-検出器距離(例えば、源構造と検出器構造との間の平均距離以下の源-検出器距離)を有する検出器構造125によって生成される反射率データに対して、優先的に適合させてもよい。反射率データから光学特性を比較的正確に求めるためには、この距離に比例したスキューは望ましくない場合があり、すぐ下に説明されるように反射率データを重み付けすることによって補正され得る。
【0143】
図14は、選択検出器構造125によって生成される反射率データを重み付けする方法のフロー図を示す。このフロー図は、1つの実施形態を表している。ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、フロー図に対して追加、削除、または結合することができる。
【0144】
1400において、オキシメータプローブ101は、源構造120aのような源構造の1つから組織内に光を照射する。照射された光が組織から反射した後、検出器構造125は光を検出し(ステップ1405)、組織についての反射率データを生成する(ステップ1410)。ステップ1400,1405、および1410は、複数の波長の光について、および源構造120bなどの1つ以上の他の源構造について繰り返されてもよい。1415において、オキシメータプローブ101は、反射率データの第1の部分を、シミュレート反射率曲線315に適合させる。メモリに格納され、反射率データに適合されるデータベースは、データベース900、データベース1000、またはデータベース1100であり得る。反射率データの第1の部分は、源構造から閾値距離未満である検出器構造の第1の部分によって生成される。閾値距離は、源構造と検出器構造との間の平均距離(例えば、おおよそミッドレンジ距離)であってもよい。1420において、反射率データの第2の部分についての反射率データが、シミュレート反射率曲線に適合される。反射率データの第2の部分は、検出器構造の第1の部分、および閾値距離と比較して源から次に大きい源-検出器距離にある別の検出器構造によって生成される。例えば、検出器構造の第1の部分が検出器構造125c、125d、125eおよび125fを含む場合、次に大きい源-検出器距離にある検出器構造は検出器構造125gである(表1参照)。
【0145】
1425で、ステップ1415で生成された適合をステップ1420で生成された適合と比較して、ステップ1420で生成された適合が1415で生成された適合より良いかどうかを判断する。当業者には理解されるように、曲線へのデータの適合の「近さ」は、様々なパラメータに基づいて定量化可能であり、適合の近さは、曲線へのより近い適合を有するデータを判断するべく、直接比較可能である。さらに理解されるように、より近い適合はより良好な適合またはより緊密な適合とも称される。ステップ1420で生成された適合がステップ1415で生成された適合よりも良い場合、源から次に増加された源-検出器距離に配置されるさらなる検出器構造(考慮される例によれば、源構造125c)を含む検出器構造によって生成される反射率データを用いてステップ1420および1425が繰り返される。代替的に、ステップ1420で生成された適合がステップ1415で生成された適合よりも良くない場合には、閾値距離よりも大きい源-検出器距離に配置された検出器構造125関する反射率データは、適合には用いられない。その後、オキシメータプローブ101は、ステップ1415または(ステップ1415で判断された適合よりも良い場合には)ステップ1420において生成された適合を用いて、組織の光学特性および酸素飽和度を判断する(ステップ1430)。その後、酸素飽和度は、ステップ1435で、オキシメータプローブ101によって、ディスプレイ115などにおいて、報告される。
【0146】
代替的実施形態によれば、ステップ1420で生成された適合がステップ1415で生成された適合よりも良くない場合、反射率データは、閾値距離よりも大きい源-検出器距離を有する検出器構造について、重み付け係数により重み付けされ、この重み付けされた反射率データが適合に及ぼす影響が低減されるようにする。適合に用いられない反射率データはゼロの重みを有していると考えることができ、対象の組織層の下の組織からの反射率と関連付けられ得る。対象の組織層の下の組織からの反射率は、この特定の反射率を示す反射率曲線における特徴的な歪み(kink)を示すといわれている。
【0147】
なお、反射率データをシミュレート反射率曲線に適合させる曲線適合アルゴリズムは、反射率データの不確実性の量および反射率データの絶対位置を考慮し得る。反射率データの不確実性は、検出器構造の1つによる反射率データの生成からのノイズ量に対応し、このノイズ量は、反射率データの大きさの平方根としてスケーリングすることができる。
【0148】
さらなる実施形態によれば、オキシメータプローブ101は、反射率データの測定に関連するノイズの量に基づいて反射率データを反復的に重み付けする。具体的には、相対的に大きな源-検出器距離を有する検出器構造によって生成される反射率データは、一般に、相対的に短い源-検出器距離を有する検出器構造によって生成される反射率データと比較して、より低い信号対ノイズ比を有する。相対的に大きい源-検出器距離を有する検出器構造によって生成される反射率データを重み付けすることにより、このデータが他の反射率データと等しくまたはおおよそ等しく適合に寄与することを可能にする。
【0149】
反射率データを多数のモンテカルロシミュレーション反射率曲線に一致させるために記載された方法は、オキシメータプローブによってプロービングされる実際の組織の光学特性の比較的迅速かつ正確な判断を可能にする。組織の光学特性を判断する速度は、術後プローブと比較して術中プローブの設計において重要な考慮事項である。さらに、記載されたモンテカルロ法は、堅牢な較正方法を可能にし、それは、次いで、相対的な光学特性と比較して絶対的な光学特性の生成を可能にする。相対光学特性とは対照的に絶対光学特性を報告することは、術後オキシメータプローブと比較して術中オキシメータプローブにとって比較的重要である。
【0150】
発明の本説明は例示および説明の目的で提示された。これは、網羅的であること、または発明を説明された厳密な形態に限定することを意図しておらず、上記の教示に鑑みて多くの修正および変形が可能である。実施形態は、発明の原理およびその実際的な用途を最もよく説明するために選択および説明された。この説明によって、当業者は、発明を特定の使用に好適であるようにさまざま実施形態で、さまざま修正を加えて最良に利用および実践することができるであろう。発明の範囲は以下の請求項によって定義される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14