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特許6992006光学積層体、画像表示装置、及び光学積層体の製造方法
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  • 特許-光学積層体、画像表示装置、及び光学積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】光学積層体、画像表示装置、及び光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220105BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20220105BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220105BHJP
   B32B 7/035 20190101ALI20220105BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220105BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/13363
B32B7/023
B32B7/035
B32B9/00 Z
G09F9/00 313
G09F9/00 342
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018556545
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2017042746
(87)【国際公開番号】W WO2018110277
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2016244225
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】今野 芳美
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 寛教
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 章典
(72)【発明者】
【氏名】北村 ▲吉▼紹
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-262155(JP,A)
【文献】国際公開第2009/054204(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/014595(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178224(WO,A1)
【文献】特開2015-163936(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166991(WO,A1)
【文献】特表2008-509425(JP,A)
【文献】特開2009-139841(JP,A)
【文献】特開2004-038064(JP,A)
【文献】国際公開第2004/068225(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の位相差層と、第2の位相差層と、偏光子と、第3の位相差層とが、視認側からこの順に積層されており、
該第1の位相差層または該第2の位相差層のいずれか一方の屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たし、他方の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たし、
該第3の位相差層の屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たし、
該第1の位相差層の面内位相差Re1が、
Re1(450)/Re1(550)<1.03
Re1(650)/Re1(550)>0.97
を満たし、
該第2の位相差層の面内位相差Re2が、
Re2(450)/Re2(550)≧1.03
Re2(650)/Re2(550)≦0.97
を満たす、光学積層体
ここで、Re1(450)およびRe2(450)は、23℃における波長450nmの光で測定した面内位相差を表し、Re1(550)およびRe2(550)は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差を表し、Re1(650)およびRe2(650)は、23℃における波長650nmの光で測定した面内位相差を表す
【請求項2】
前記第1の位相差層の面内位相差Re1(550)が105nm~115nmであり、前記第2の位相差層の面内位相差Re2(550)が190nm~260nmであり、前記偏光子の吸収軸と前記第1の位相差層の遅相軸とのなす角度θ1が19°~35°であり、かつ、前記偏光子の吸収軸と前記第2の位相差層の遅相軸とのなす角度θ2が77°~85°であるか、
前記第1の位相差層の面内位相差Re1(550)が116nm~125nmであり、前記第2の位相差層の面内位相差Re2(550)が200nm~260nmであり、前記偏光子の吸収軸と前記第1の位相差層の遅相軸とのなす角度θ1が15°~35°であり、かつ、前記偏光子の吸収軸と前記第2の位相差層の遅相軸とのなす角度θ2が75°~85°であるか、
前記第1の位相差層の面内位相差Re1(550)が126nm~135nmであり、前記第2の位相差層の面内位相差Re2(550)が210nm~260nmであり、前記偏光子の吸収軸と前記第1の位相差層の遅相軸とのなす角度θ1が15°~35°であり、かつ、前記偏光子の吸収軸と前記第2の位相差層の遅相軸とのなす角度θ2が75°~85°であるか、
または、
前記第1の位相差層の面内位相差Re1(550)が136nm~145nmであり、前記第2の位相差層の面内位相差Re2(550)が220nm~270nmであり、前記偏光子の吸収軸と前記第1の位相差層の遅相軸とのなす角度θ1が15°~31°であり、かつ、前記偏光子の吸収軸と前記第2の位相差層の遅相軸とのなす角度θ2が75°~83°である、請求項に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第1の位相差層が高分子フィルムの延伸体で構成され、前記第2の位相差層が液晶化合物の配向固化層で構成される、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
第1の位相差層と、第2の位相差層と、偏光子と、第3の位相差層とが、視認側からこの順に積層されており、
該第1の位相差層または該第2の位相差層のいずれか一方の屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たし、他方の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たし、
該第3の位相差層の屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たし、
第1の位相差層の面内位相差Re1が、
Re1(450)/Re1(550)<1.03
Re1(650)/Re1(550)>0.97
を満たし、
第2の位相差層の面内位相差Re2が、
Re2(450)/Re2(550)<1.03
Re2(650)/Re2(550)>0.97
を満たす、光学積層体:
ここで、Re1(450)およびRe2(450)は、23℃における波長450nmの光で測定した面内位相差を表し、Re1(550)およびRe2(550)は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差を表し、Re1(650)およびRe2(650)は、23℃における波長650nmの光で測定した面内位相差を表す。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の光学積層体を備える、画像表示装置。
【請求項6】
第1の位相差層と、第2の位相差層と、偏光子と、第3の位相差層とが、この順に積層された長尺状の光学積層体の製造方法であって、
前記第1の位相差層を構成する長尺状の第1フィルム、前記第2の位相差層を構成する長尺状の第2フィルム、長尺状の前記偏光子、および前記第3の位相差層を構成する長尺状の第3フィルムのそれぞれを、搬送しながら連続的に隣接するフィルムに貼り合わせる工程を含み、
該第1の位相差層または該第2の位相差層のいずれか一方の屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たし、他方の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たし、
該第3の位相差層の屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たし、
該第1の位相差層の面内位相差Re1が、
Re1(450)/Re1(550)<1.03
Re1(650)/Re1(550)>0.97
を満たし、
該第2の位相差層の面内位相差Re2が、
Re2(450)/Re2(550)≧1.03
Re2(650)/Re2(550)≦0.97
を満たす、
光学積層体の製造方法
ここで、Re1(450)およびRe2(450)は、23℃における波長450nmの光で測定した面内位相差を表し、Re1(550)およびRe2(550)は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差を表し、Re1(650)およびRe2(650)は、23℃における波長650nmの光で測定した面内位相差を表す
【請求項7】
第1の位相差層と、第2の位相差層と、偏光子と、第3の位相差層とが、この順に積層された長尺状の光学積層体の製造方法であって、
前記第1の位相差層を構成する長尺状の第1フィルム、前記第2の位相差層を構成する長尺状の第2フィルム、長尺状の前記偏光子、および前記第3の位相差層を構成する長尺状の第3フィルムのそれぞれを、搬送しながら連続的に隣接するフィルムに貼り合わせる工程を含み、
該第1の位相差層または該第2の位相差層のいずれか一方の屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たし、他方の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たし、
該第3の位相差層の屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たし、
該第1の位相差層の面内位相差Re1が、
Re1(450)/Re1(550)<1.03
Re1(650)/Re1(550)>0.97
を満たし、
該第2の位相差層の面内位相差Re2が、
Re2(450)/Re2(550)<1.03
Re2(650)/Re2(550)>0.97
を満たす、
光学積層体の製造方法:
ここで、Re1(450)およびRe2(450)は、23℃における波長450nmの光で測定した面内位相差を表し、Re1(550)およびRe2(550)は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差を表し、Re1(650)およびRe2(650)は、23℃における波長650nmの光で測定した面内位相差を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、画像表示装置、及び光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光サングラスをかけて画像表示装置の表示画面を見たときの視認性を向上させるために、タッチセンサー基材または視認側偏光板の保護基材に1/4波長板を用いた画像表示装置が知られている(特許文献1)。特許文献1の画像表示装置は、視認側偏光板の視認側に1/4板を有し、視認側偏光板の吸収軸と1/4波長板の遅相軸とのなす角度は45°とされる。これにより、表示画面から円偏光が出射され、その結果、偏光サングラスの透過軸が視認側偏光板の透過軸に対して直交した状態で表示画面を観察した場合に表示画面が暗くなるという問題を解消し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-10523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来の画像表示装置では、偏光サングラスをかけて表示画面を見たときに、偏光サングラスの角度に応じた色相変化および透過率変化が生じ、視認性が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、偏光サングラスの角度に応じた色相変化を抑制することによって視認性を改善し得る光学積層体、上記光学積層体を備える画像表示装置、及び光学積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学積層体は、第1の位相差層と、第2の位相差層と、偏光子と、第3の位相差層とが、視認側からこの順に積層されている。
1つの実施形態においては、上記第1の位相差層の面内位相差Re1が、
Re1(450)/Re1(550)<1.03
Re1(650)/Re1(550)>0.97
を満たし、上記第2の位相差層の面内位相差Re2が、
Re2(450)/Re2(550)≧1.03
Re2(650)/Re2(550)≦0.97
を満たす。
1つの実施形態においては、
上記第1の位相差層の面内位相差Re1(550)が105nm~115nmであり、上記第2の位相差層の面内位相差Re2(550)が190nm~260nmであり、上記偏光子の吸収軸と上記第1の位相差層の遅相軸とのなす角度θ1が19°~35°であり、かつ、上記偏光子の吸収軸と上記第2の位相差層の遅相軸とのなす角度θ2が77°~85°であるか、
上記第1の位相差層の面内位相差Re1(550)が116nm~125nmであり、上記第2の位相差層の面内位相差Re2(550)が200nm~260nmであり、上記偏光子の吸収軸と上記第1の位相差層の遅相軸とのなす角度θ1が15°~35°であり、かつ、上記偏光子の吸収軸と上記第2の位相差層の遅相軸とのなす角度θ2が75°~85°であるか、
上記第1の位相差層の面内位相差Re1(550)が126nm~135nmであり、上記第2の位相差層の面内位相差Re2(550)が210nm~260nmであり、上記偏光子の吸収軸と上記第1の位相差層の遅相軸とのなす角度θ1が15°~35°であり、かつ、上記偏光子の吸収軸と上記第2の位相差層の遅相軸とのなす角度θ2が75°~85°であるか、または、
上記第1の位相差層の面内位相差Re1(550)が136nm~145nmであり、上記第2の位相差層の面内位相差Re2(550)が220nm~270nmであり、上記偏光子の吸収軸と上記第1の位相差層の遅相軸とのなす角度θ1が15°~31°であり、かつ、上記偏光子の吸収軸と上記第2の位相差層の遅相軸とのなす角度θ2が75°~83°である。
1つの実施形態においては、上記第1の位相差層が高分子フィルムの延伸体で構成され、上記第2の位相差層が液晶化合物の配向固化層で構成される。
1つの実施形態においては、上記第1の位相差層の面内位相差Re1が、
Re1(450)/Re1(550)<1.03
Re1(650)/Re1(550)>0.97
を満たし、上記第2の位相差層の面内位相差Re2が、
Re2(450)/Re2(550)<1.03
Re2(650)/Re2(550)>0.97
を満たす。
1つの実施形態においては、上記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx=nz>nyの関係を満たし、上記第2の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny=nzの関係を満たす。
1つの実施形態においては、上記第1の位相差層の屈折率楕円体が、nx>ny=nzの関係を満たし、上記第2の位相差層の屈折率楕円体が、nx=nz>nyの関係を満たす。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記光学積層体を含む。
本発明の別の局面によれば、光学積層体の製造方法が提供される。この光学積層体の製造方法は、第1の位相差層と、第2の位相差層と、偏光子と、第3の位相差層とが、この順に積層された長尺状の光学積層体の製造方法であって、上記第1の位相差層を構成する長尺状の第1フィルム、上記第2の位相差層を構成する長尺状の第2フィルム、長尺状の上記偏光子、および上記第3の位相差層を構成する長尺状の第3フィルムのそれぞれを、搬送しながら連続的に隣接するフィルムに貼り合わせる工程を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、偏光サングラスをかけて表示画面を見たときの偏光サングラスの角度に応じた色相変化を抑制し、その結果、視認性を改善し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態に係る光学積層体の断面図である。
図2】本発明の別の実施形態に係る光学積層体の断面図である。
図3】実施例1、比較例1、および比較例2の光学積層体を介した透過率スペクトル測定で得られた色相を示す図である。
図4】実施例1、比較例1、および比較例2の光学積層体を介した透過率スペクトル測定で得られた透過率変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
【0011】
A.光学積層体の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の断面図である。光学積層体10は、第1の位相差層1と、第2の位相差層2と、偏光子3と、第3の位相差層4とが、この順に積層された構成を有する。光学積層体10は、代表的には画像表示装置(代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置)に用いられる。光学積層体10は、第1の位相差層1が視認側となるように、画像表示装置に配置される。すなわち、光学積層体10が画像表示装置に配置された状態において、第1の位相差層1、第2の位相差層2、偏光子3、および第3の位相差層4は、画像表示装置の視認側からこの順に配置される。
【0012】
1つの実施形態においては、第1の位相差層1は、測定光の波長に関わらず面内位相差値がほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示し、第2の位相差層2は、測定光の波長が大きいほど面内位相差値が小さい正の波長分散特性を示す。第1の位相差層1の面内位相差Re1および第2の位相差層2の面内位相差Re2は、好ましくは、以下の式(1)~(4)を満たす。
Re1(450)/Re1(550)<1.03 ・・・(1)
Re1(650)/Re1(550)>0.97 ・・・(2)
Re2(450)/Re2(550)≧1.03 ・・・(3)
Re2(650)/Re2(550)≦0.97 ・・・(4)
第1の位相差層1がフラットな波長分散特性を示し、第2の位相差層2が正の波長分散特性を示す場合、第1の位相差層の面内位相差Re1(550)、第2の位相差層の面内位相差Re2(550)、偏光子の吸収軸と第1の位相差層の遅相軸とのなす角度θ1、および、偏光子の吸収軸と第2の位相差層の遅相軸とのなす角度θ2は、好ましくは以下の(A)~(D)のいずれかを満たす。
(A)Re1(550)が105nm~115nmであり、Re2(550)が190nm~260nmであり、θ1が19°~35°であり、かつ、θ2が77°~85°である。
(B)Re1(550)が116nm~125nmであり、Re2(550)が200nm~260nmであり、θ1が15°~35°であり、かつ、θ2が75°~85°である。
(C)Re1(550)が126nm~135nmであり、Re2(550)が210nm~260nmであり、θ1が15°~35°であり、かつ、θ2が75°~85°である。
(D)Re1(550)が136nm~145nmであり、Re2(550)が220nm~270nmであり、θ1が15°~31°であり、かつ、θ2が75°~83°である。
【0013】
別の実施形態においては、第1の位相差層1は、測定光の波長に関わらず面内位相差値がほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示し、第2の位相差層2も同様に、測定光の波長に関わらず面内位相差値がほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示す。第1の位相差層1の面内位相差Re1および第2の位相差層2の面内位相差Re2は、好ましくは、以下の式(5)~(8)を満たす。
Re1(450)/Re1(550)<1.03 ・・・(5)
Re1(650)/Re1(550)>0.97 ・・・(6)
Re2(450)/Re2(550)<1.03 ・・・(7)
Re2(650)/Re2(550)>0.97 ・・・(8)
【0014】
代表的には、第1の位相差層1および第2の位相差層2のうち、一方の屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たし、他方の屈折率楕円体が、nx>ny=nzの関係を満たす。すなわち、第1の位相差層1および第2の位相差層2のうち、一方がネガティブAプレートであり、他方がポジティブAプレートである。代表的には、第1の位相差層1が高分子フィルムの延伸体で構成され、第2の位相差層2が液晶化合物の配向固化層で構成される。第3の位相差層4は、代表的には、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たす。本発明の実施形態による光学積層体10を、第1の位相差層1、第2の位相差層2、偏光子3、および第3の位相差層4が視認側からこの順に配置されるように画像表示装置に適用することで、偏光サングラスをかけて表示画面を見たときの偏光サングラスの角度に応じた色相変化を抑制し得、その結果、視認性を改善し得る。
【0015】
光学積層体10は、実用的には、第1の位相差層1の第2の位相差層2とは反対側に表面保護フィルムを有し得、第3の位相差層4の偏光子3とは反対側に粘着剤層を有し得る。光学積層体10は、実用的には、偏光子3の少なくとも片側に配置された保護層を有し得る。上記保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。
【0016】
図2は、本発明の別の実施形態による光学積層体の断面図である。光学積層体11は、第1の位相差層1と、第2の位相差層2と、偏光子3と、第3の位相差層5と、第4の位相差層6とが、この順に積層された構成を有する。本実施形態では、代表的には、第3の位相差層5の屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を満たし、第4の位相差層6の屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満たす。
【0017】
光学積層体は、枚葉状であってもよく、長尺状であってもよい。
【0018】
B.第1の位相差層
第1の位相差層は、好ましくは、測定光の波長に関わらず面内位相差値がほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示し、Re1(450)/Re1(550)が1.03より小さく、Re1(650)/Re1(550)が0.97より大きい。Re1(450)/Re1(550)は、より好ましくは0.98~1.02であり、Re1(650)/Re1(550)は、より好ましくは0.98~1.02である。
【0019】
第1の位相差層の厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは1μm~80μmであり、さらに好ましくは10μm~60μmであり、最も好ましくは30μm~50μmである。
【0020】
第1の位相差層は、光弾性係数の絶対値が好ましくは2×10-11/N以下、より好ましくは2.0×10-13/N~1.5×10-11/N、さらに好ましくは1.0×10-12/N~1.2×10-11/Nの樹脂を含む。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、加熱時の収縮応力が発生した場合に位相差変化が生じにくい。
【0021】
1つの実施形態においては、第1の位相差層の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たし、第1の位相差層のNz係数が例えば0.9より大きく1.1未満である。別の実施形態では、第1の位相差層の屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たし、第1の位相差層のNz係数が例えば-0.1より大きく0.1未満である。
【0022】
B-1.屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たす第1の位相差層
屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たす第1の位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。1つの実施形態においては、第1の位相差層は、任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。そのような樹脂の代表例としては、環状オレフィン系樹脂が挙げられる。
【0023】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα-オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。ノルボルネン系モノマーとしては、特開2015-210459号公報等に記載されているモノマーが挙げられる。
【0024】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物が挙げられる。
【0025】
上記環状オレフィン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量(Mn)が好ましくは25,000~200,000、さらに好ましくは30,000~100,000、最も好ましくは40,000~80,000である。数平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
【0026】
上記環状オレフィン系樹脂は、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0027】
第1の位相差層は、例えば、上記環状オレフィン系樹脂から形成されたフィルムを延伸することにより得られる。環状オレフィン系樹脂からフィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。なお、上記環状オレフィン系樹脂は、多くのフィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
【0028】
第1の位相差層を構成するフィルムは、枚葉状であってもよく、長尺状であってもよい。1つの実施形態においては、第1の位相差層は、長尺方向に延伸された上記樹脂フィルムを、長尺方向に対して所定の角度の方向に切り出すことにより作製される。別の実施形態においては、第1の位相差層は、長尺状の上記樹脂フィルムを長尺方向に対して所定の角度の方向に連続的に斜め延伸することにより作製される。さらに別の実施形態においては、第1の位相差層は、支持基材と当該支持基材に積層された樹脂層との積層体を斜め延伸し、斜め延伸された樹脂層(樹脂フィルム)を他の層に転写することにより作製される。斜め延伸を採用することにより、フィルムの長尺方向に対して所定の角度の配向角(当該角度の方向に遅相軸)を有する長尺状の延伸フィルムが得られ、例えば、他の層との積層に際してロールトゥロールが可能となり、製造工程を簡略化することができる。なお、当該所定の角度は、偏光子の吸収軸(長尺方向)と第1の位相差層の遅相軸とがなす角度であり得る。
【0029】
斜め延伸に用いる延伸機としては、例えば、横および/または縦方向に、左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引き取り力を付加し得るテンター式延伸機が挙げられる。テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺状の樹脂フィルムを連続的に斜め延伸し得る限り、任意の適切な延伸機が用いられ得る。
【0030】
上記延伸機において左右の速度をそれぞれ適切に制御することにより、上記所望の面内位相差を有し、かつ、上記所望の方向に遅相軸を有する第1の位相差層が得られ得る。
【0031】
上記フィルムの延伸温度は、第1の位相差層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくはTg-30℃~Tg+30℃、さらに好ましくはTg-15℃~Tg+15℃、最も好ましくはTg-10℃~Tg+10℃である。このような温度で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る面内位相差を有する第1の位相差層が得られ得る。なお、Tgは、フィルムの構成材料のガラス転移温度である。
【0032】
B-2.屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たす第1の位相差層
屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たす第1の位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。1つの実施形態においては、第1の位相差層は、負の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂を主成分とする任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。負の屈折率異方性を有する光学素子を構成する材料としては、負の固有複屈折を有するポリマーが好ましく用いられる。負の固有複屈折を有するポリマーは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その配向方向の屈折率が相対的に小さくなるものを指す。負の固有複屈折を有するポリマーとしては、例えば、芳香族やカルボニル基などの分極異方性の大きい化学結合や官能基が、ポリマーの側鎖に導入されているものが挙げられ、具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、フマル酸エステル系樹脂等が挙げられる。ポジティブAプレートにおける「ny=nz」との記載、あるいはネガティブAプレートにおける「nz=ny」の記載は、面内の屈折率(nxまたはny)と厚み方向の屈折率nzが必ずしも完全に一致する必要はない。Nz=(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が0.97~1.03の範囲内であれば、ny=nzのポジティブAプレートとみなすことができ、Nz係数が-0.03~0.03の範囲内であれば、nx=nzのネガティブAプレートとみなすことができる。
【0033】
第1の位相差層は、例えば、上記負の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂フィルムを延伸することにより得られる。上記負の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂フィルムを延伸する方法としては、任意の適切な延伸方法が採用され得る。好ましくは、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せて、ロール延伸機にて縦一軸延伸法で、加熱延伸する方法である。当該収縮性フィルムは、加熱延伸時に延伸方向と直交する方向の収縮力を付与し、厚み方向の屈折率(nz)を高めるために用いられる。上記樹脂フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せる方法としては、特に制限はないが、上記樹脂フィルムと上記収縮性フィルムとの間に、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤層を設けて接着する方法が、作業性、経済性に優れる点から好ましい。本実施形態の第1の位相差層を構成する樹脂フィルムの形成方法の詳細は、特開2007-193365号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。1つの実施形態においては、第1の位相差層は、長尺状の上記樹脂フィルムを長尺方向に対して所定の角度の方向に連続的に斜め延伸することにより作製される。この場合、好ましくは、上記収縮性フィルムを貼り合せた樹脂フィルムを支持基材上に積層し、この積層体を斜め延伸し、斜め延伸された樹脂フィルムを他の層に転写することにより作製される。
【0034】
C.第2の位相差層
1つの実施形態においては、第2の位相差層は、測定光の波長が大きいほど面内位相差値が小さい正の波長分散特性を示し、Re2(450)/Re2(550)が1.03以上であり、Re2(650)/Re2(550)が0.97以下である。Re2(450)/Re2(550)は、より好ましくは1.03~1.15であり、Re2(650)/Re2(550)は、より好ましくは0.90~0.97である。別の実施形態においては、第2の位相差層は、測定光の波長に関わらず面内位相差値がほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示し、Re2(450)/Re2(550)が1.03より小さく、Re2(650)/Re2(550)が0.97より大きい。Re2(450)/Re2(550)は、より好ましくは0.98~1.02であり、Re2(650)/Re2(550)は、より好ましくは0.98~1.02である。
【0035】
C-1.正の波長分散特性を示す第2の位相差層
第1の位相差層がフラットな波長分散特性を示し、第2の位相差層が正の波長分散特性を示す場合、上記のとおり、Re1(550)、Re2(550)、θ1、および、θ2は、好ましくは以下の(A)~(D)のいずれかを満たす。
(A)Re1(550)が105nm~115nmであり、Re2(550)が190nm~260nmであり、θ1が19°~35°であり、かつ、θ2が77°~85°である。
(B)Re1(550)が116nm~125nmであり、Re2(550)が200nm~260nmであり、θ1が15°~35°であり、かつ、θ2が75°~85°である。
(C)Re1(550)が126nm~135nmであり、Re2(550)が210nm~260nmであり、θ1が15°~35°であり、かつ、θ2が75°~85°である。
(D)Re1(550)が136nm~145nmであり、Re2(550)が220nm~270nmであり、θ1が15°~31°であり、かつ、θ2が75°~83°である。
【0036】
第1の位相差層1がフラットな波長分散特性を示し、第2の位相差層2が正の波長分散特性を示す場合、Re1(550)、Re2(550)、θ1、および、θ2は、より好ましくは以下の(E)~(G)のいずれかを満たす。
(E)Re1(550)が105nm~115nmであり、Re2(550)が210nm~250nmであり、θ1が19°~35°であり、かつ、θ2が77°~85°である。
(F)Re1(550)が116nm~135nmであり、Re2(550)が220nm~260nmであり、θ1が19°~31°であり、かつ、θ2が77°~83°である。
(G)Re1(550)が136nm~145nmであり、Re2(550)が220nm~260nmであり、θ1が19°~27°であり、かつ、θ2が77°~81°である。
【0037】
第1の位相差層1がフラットな波長分散特性を示し、第2の位相差層2が正の波長分散特性を示す場合、Re1(550)、Re2(550)、θ1、および、θ2は、最も好ましくは以下の(H)~(K)のいずれかを満たす。
(H)Re1(550)が105nm~115nmであり、Re2(550)が220nm~230nmであり、θ1が23°~27°であり、かつ、θ2が79°~81°である。
(I)Re1(550)が116nm~125nmであり、Re2(550)が220nm~250nmであり、θ1が19°~27°であり、かつ、θ2が77°~81°である。
(J)Re1(550)が126nm~135nmであり、Re2(550)が230nm~250nmであり、θ1が19°~27°であり、かつ、θ2が77°~81°である。
(K)Re1(550)が136nm~145nmであり、Re2(550)が245nm~255nmであり、θ1が19°~23°であり、かつ、θ2が77°~79°である。
【0038】
第2の位相差層の厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは1μm~80μmである。第2の位相差層が液晶化合物の配向固化層で構成される場合には、厚みは、より好ましくは1μm~10μmであり、さらに好ましくは1μm~6μmである。
【0039】
1つの実施形態においては、第2の位相差層の屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たし、第2の位相差層のNz係数が例えば-0.1より大きく0.1未満である。別の実施形態では、第2の位相差層の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たし、第2の位相差層のNz係数が例えば0.9より大きく1.1未満である。
【0040】
C-1-1.屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たす第2の位相差層
屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たす第2の位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。1つの実施形態においては、第2の位相差層は、液晶化合物の配向固化層により構成され得る。液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。その結果、光学積層体(最終的には、画像表示装置)のさらなる薄型化を実現することができる。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。本実施形態においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第2の位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
【0041】
液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された第2の位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、第2の位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
【0042】
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
【0043】
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマチック性液晶モノマーが好ましい。
【0044】
液晶化合物の配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。1つの実施形態においては、基材は任意の適切な樹脂フィルムであり、当該基材上に形成された配向固化層は、第1の位相差層の表面に転写され得る。
【0045】
上記配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0046】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0047】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性モノマーまたは架橋性モノマーである場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0048】
液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006-163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0049】
C-1-2.屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たす第2の位相差層
屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たす第2の位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。
【0050】
1つの実施形態においては、第2の位相差層は、実質的に垂直に配向させたディスコチック液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層により構成され得る。本明細書において、「ディスコチック液晶化合物」とは、分子構造中に、円板状のメソゲン基を有し、該メソゲン基に2~8本の側差が、エーテル結合やエステル結合で放射状に結合しているものをいう。上記メソゲン基としては、例えば、液晶辞典(培風館出版)のP.22、図1に記載されている構造のものが挙げられる。具体的には、ベンゼン、トリフェニレン、トゥルキセン、ピラン、ルフィガロール、ポルフィリン、金属錯体等である。理想的には、実質的に垂直に配向させたディスコチック液晶化合物は、フィルム面内の一方向に光軸を有する。「実質的に垂直に配向させたディスコチック液晶化合物」とは、ディスコチック液晶化合物の円板面が、フィルム平面に対して垂直であり、光軸がフィルム平面に対して平行である状態のものをいう。
【0051】
上記のディスコチック液晶化合物を含有する液晶性組成物は、ディスコチック液晶化合物を含み、液晶性を示すものであれば特に制限はない。上記液晶性組成物中のディスコチック液晶化合物の含有量は、液晶性組成物の全固形分100重量部に対して、好ましくは40重量部以上100重量部未満であり、さらに好ましくは50重量部以上100重量部未満であり、最も好ましくは70重量部以上100重量部未満である。
【0052】
上記実質的に垂直に配向させたディスコチック液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層からなる位相差フィルムとしては、特開2001-56411号公報に記載の方法によって得ることができる。上記実質的に垂直に配向させたディスコチック液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層からなる位相差フィルムは、一方向に塗工することによって、塗工方向と実質的に直交する方向に、フィルム面内の屈折率が大きくなる方向(遅相軸方向)が発生するため、連続塗工によって、特にその後、延伸や収縮処理を行わずに、長手方向と直交する方向に遅相軸を有するロール状の位相差フィルム(ネガティブAプレート)を作製することができる。この長手方向と直交する方向に遅相軸を有するロール状の位相差フィルムは、他の層との積層に際してロールトゥロールが可能となる。
【0053】
別の実施形態においては、第2の位相差層は、ホモジニアス配向させたリオトロピック液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層により構成され得る。本明細書において、「リオトロピック液晶化合物」とは、溶液状態で溶質の濃度によって液晶相が発現する液晶化合物をいう。上記リオトロピック液晶化合物としては、任意の適切なものが用いられ得る。上記リオトロピック液晶化合物の具体例としては、分子の両末端に親水性基と疎水性基を有する両親媒性化合物、水溶性が付与された芳香環を有するクロモニック化合物、ならびに、セルロース誘導体、ポリペプチド、および核酸などの主鎖が棒状骨格を有する高分子化合物などが挙げられる。これらの中でも、第2の位相差層に用いられる位相差フィルムとして好ましくは、ホモジニアス配向させたリオトロピック液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層であって、該リオトロピック液晶化合物が、水溶性が付与された芳香環を有するクロモニック化合物である。
【0054】
上記のリオトロピック液晶化合物を含有する液晶性組成物は、リオトロピック液晶化合物を含み、液晶性を示すものであれば特に制限はない。上記液晶性組成物中のディスコチック液晶化合物の含有量は、液晶性組成物の全固形分100に対して、好ましくは40重量部以上100重量部未満であり、さらに好ましくは50重量部以上100重量部未満であり、最も好ましくは70重量部以上100重量部未満である。
【0055】
上記実質的に垂直に配向させたリオトロピック液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層からなる位相差フィルムとしては、特開2002-296415号公報に記載の方法によって得ることができる。上記ホモジニアス配向させたリオトロピック液晶化合物を含有する液晶性組成物の配向固化層からなる位相差フィルムは、一方向に塗工することによって、塗工方向と実質的に直交する方向に、フィルム面内の屈折率が大きくなる方向(遅相軸方向) が発生するため、連続塗工によって、特にその後、延伸や収縮処理を行わずに、長手方向と直交する方向に遅相軸を有するロール状の位相差フィルムを作製することができる。この長手方向と直交する方向に遅相軸を有するロール状の位相差フィルムは、他の層との積層に際してロールトゥロールが可能となる。
【0056】
C-2.フラットな波長分散特性を示す第2の位相差層
上記のとおり、第2の位相差層は、測定光の波長に関わらず面内位相差値がほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示す位相差層であってもよい。
【0057】
第2の位相差層の厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは1μm~160μmであり、さらに好ましくは10μm~80μmであり、最も好ましくは20μm~50μmである。
【0058】
1つの実施形態においては、第2の位相差層の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たし、第1の位相差層のNz係数が例えば0.9より大きく1.1未満である。別の実施形態では、第1の位相差層の屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たし、第1の位相差層のNz係数が例えば-0.1より大きく0.1未満である。
【0059】
屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たす第2の位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得、例えば上記B-1項に記載の材料で構成され得る。屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たす第2の位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得、例えば上記B-2項に記載の材料で構成され得る。
【0060】
D.偏光子
偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0061】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0062】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0063】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0064】
偏光子の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0065】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは42.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0066】
E.第3の位相差層
第3の位相差層の厚みは、好ましくは0.1μm~50μmであり、より好ましくは10μm~30μmである。第3の位相差層は、好ましくは、偏光子の保護層を兼ねる。この場合、偏光子と第3の位相差層との間に別途の保護層を設けなくても良い。この場合、第3の位相差層は、任意の適切な接着層を介して偏光子に接着される。
【0067】
1つの実施形態においては、第3の位相差層の屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たし、第3の位相差層のNz係数が例えば0.1~0.9である。
【0068】
別の実施形態では、第3の位相差層の屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を満たし、第3の位相差層のNz係数が例えば1.03以上である。この場合、光学積層体は、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満たす第4の位相差層を有する。
【0069】
E-1.屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たす第3の位相差層
屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たす第3の位相差層の面内位相差Re3(550)は、150nm~400nmであり、より好ましくは180nm~350nmである。偏光子の吸収軸と第3の位相差層の遅相軸とのなす角度θ3は、好ましくは87°~93°または-3°~3°であり、より好ましくは89°~91°または-1°~1°である。第3の位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。1つの実施形態においては、任意の適切な位相差フィルムで構成され得る。好ましくは、上記位相差フィルムが、ノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、カーボネート系樹脂、エステル系樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む。上記位相差フィルムは、より好ましくは、ノルボルネン系樹脂、カーボネート系樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む。耐熱性、透明性、成形加工性に優れるからである。上記位相差フィルムの作製方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。代表的には、例えば、熱可塑性樹脂、又は上記熱可塑性樹脂を含む組成物をシート状に成形して、高分子フィルムとし、上記高分子フィルムの片面または両面に収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱延伸する方法が挙げられる。加熱延伸は、例えば、ロール延伸機にて、縦一軸延伸法で加熱延伸することが挙げられる。
【0070】
E-2.屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を満たす第3の位相差層
屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を満たす第3の位相差層の面内位相差Re3(550)は、90nm~160nmであり、より好ましくは110nm~155nmである。偏光子の吸収軸と第3の位相差層の遅相軸とのなす角度θ3は、好ましくは87°~93°であり、より好ましくは89°~91°である。第3の位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。
【0071】
1つの実施形態においては、第3の位相差層は任意の適切な位相差フィルムで構成され得る。上記位相差フィルムを形成する樹脂は、好ましくは、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂である。位相差フィルムの作製方法としては、樹脂フィルムの延伸工程を含む任意の適切な方法を採用し得る。延伸方法としては、例えば、横一軸延伸(固定端二軸延伸)、逐次二軸延伸が挙げられる。延伸温度は、好ましくは135~165℃、さらに好ましくは140~160℃である。延伸倍率は、好ましくは2.8~3.2倍、さらに好ましくは2.9~3.1倍である。
【0072】
別の実施形態においては、第3の位相差層は任意の適切な非液晶性材料で構成され得る。この場合、第3の位相差層の厚みは、代表的には0.1~10μm、さらに好ましくは0.1~8μm、特に好ましくは0.1~5μmである。上記非液晶性材料は、好ましくは非液晶性ポリマーであり、具体的には、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、2種以上の混合物として使用してもよい。第3の位相差層は、代表的には、基材フィルムに上記非液晶ポリマーの溶液を塗工して、溶媒を除去することにより形成され得る。当該第3の位相差層の形成方法において、好ましくは、光学的二軸性(nx>ny>nz)を付与するための処理(例えば、延伸処理)が行われる。このような処理を行うことにより、面内に屈折率の差(nx>ny)を確実に付与し得る。なお、上記ポリイミドの具体例および当該第3の位相差層の形成方法の具体例としては、特開2006-234848号公報に記載のポリマーおよび製造方法が挙げられる。
【0073】
F.第4の位相差層
第4の位相差層は、上述のとおり、屈折率特性がnz>nx>nyの関係を示す。第4の位相差層の面内位相差Re4(550)は、好ましくは10nm~150nmであり、より好ましくは10nm~80nmである。第4の位相差層のNz係数は、例えば-0.1以下であり、好ましくは-2.0以下である。偏光子の吸収軸と第4の位相差層の遅相軸とのなす角度は、好ましくは87°~93°であり、より好ましくは89°~91°である。
【0074】
第4の位相差層は、上記のような光学的特性および機械的特性を満足し得る任意の適切な材料で構成され得る。1つの実施形態においては、第4の位相差層は、ホメオトロピック配向に固定された液晶層で構成され得る。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該液晶層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0042]に記載の液晶化合物および形成方法が挙げられる。この場合、厚みは、好ましくは0.1μm~6μm、より好ましくは0.2μm~3μmである。別の実施形態においては、第4の位相差層は、特開2012-32784号公報に記載のフマル酸ジエステル系樹脂で形成された位相差フィルムであってもよい。この場合、厚みは、好ましくは5μm~50μm、より好ましくは5μm~35μmである。
【0075】
G.製造方法
光学積層体の製造方法は、代表的には、第1の位相差層1を構成する長尺状の第1フィルム、第2の位相差層2を構成する長尺状の第2フィルム、長尺状の偏光子3、および第3の位相差層4を構成する長尺状の第3フィルムのそれぞれを、搬送しながら連続的に隣接するフィルムに貼り合わせる工程を含む。1つの実施形態においては、第2フィルムは基材上に形成されており、基材上に形成された第2フィルムを第1フィルムに貼り合わせた後、基材を剥離する工程を含む。別の実施形態では、偏光子は基材上に形成されており、基材上に形成された偏光子を第2フィルムに貼り合わせた後、基材を剥離する工程を含む。さらに別の実施形態では、第3フィルムは基材上に形成されており、基材上に形成された第3フィルムを偏光子に貼り合わせた後、基材を剥離する工程を含む。なお、2以上の上記実施形態を組み合わせてもよい。
【0076】
H.画像表示装置
上記A項からF項に記載の光学積層体は、液晶表示装置などの画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明は、上記光学積層体を用いた画像表示装置を包含する。本発明の実施形態による画像表示装置は、上記A項からF項に記載の光学積層体を備え、光学積層体は、第1の位相差層、第2の位相差層、偏光子、および第3の位相差層が画像表示装置の視認側からこの順で配置されるように設けられる。
【実施例
【0077】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0078】
(1)厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製KC-351C)を用いて測定した。
(2)位相差値
実施例および比較例で用いた位相差層の屈折率nx、nyおよびnzを、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA-WPR)により計測した。面内位相差Reの測定波長は450nm、550nm、および650nmであり、厚み方向位相差Rthの測定波長は550nmであり、測定温度は23℃であった。
(3)偏光サングラスの角度に応じた色相変化および透過率変化
光学積層体の背面側(第3の位相差層側)に光源(岩崎電気株式会社製、製品名「JCR 12V 50W 20H」)を配置し、光学積層体の前面側(表面保護フィルム側)に偏光サングラスを模擬した偏光子を配置した。上記偏光子を90°~-90°の範囲で回転させながら、光源から出射されて光学積層体および上記偏光子を透過した光を、積分球式文高透過率測定器DOT-3C(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いてスペクトル測定した。得られた透過光のスペクトルからハンターLab表色系の色相aおよびbを算出し、横軸をa、縦軸をbとする座標上にプロットした。また、横軸を偏光サングラスを模擬した偏光子の角度、縦軸を透過率(Y値)としてプロットした。
【0079】
<実施例1>
1.第1の位相差層を構成する位相差フィルムAの作製
ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加したシクロオレフィン系樹脂(日本ゼオン(株)製、商品名「ゼオノアZF14」、厚み40μm)の両側に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ(株) 製、商品名「トレファン-高収縮タイプ」、厚み60μm)を、アクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合せた。その後、ロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、148℃±1℃の空気循環式乾燥オーブン内で、1.40倍に延伸した。このようにして得られた延伸フィルムを位相差フィルムAとした。この位相差フィルムAは、厚みが35μmであり、面内位相差Re(550)が110nmであり、Re(450)/Re(550)が1.00であり、Re(650)/Re(550)が1.00であり、屈折率楕円体がnx=nz>nyの関係を満たし、遅相軸と長尺方向とのなす角度は25°であった。
2.第2の位相差層を構成する液晶化合物の配向固化層Bの作製
厚み100μmの長尺状のポリエチレンテレフタレート基材(PET基材)の表面に光配向膜を塗工し、長尺方向に対して10°の方向に光配向処理を施した。一方、ネマチック液晶相を示す重合性液晶モノマー(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)10重量部および当該重合性液晶モノマーに対する光重合開始剤(BASF社製:商品名イルガキュア907)3重量部をトルエン40重量部に溶解して、液晶塗工液を調製した。PET基材の光配向処理を施した面に、当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、PET基材上に配向固化層Bが形成された長尺状の積層体(配向固化層積層体)を得た。この配向固化層Bは、厚みが2μmであり、面内位相差Re(550)が220nmであり、Re(450)/Re(550)が1.08であり、Re(650)/Re(550)が0.96であり、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たし、遅相軸と長尺方向とのなす角度は80°であった。
3.偏光子の作製
長尺状の非晶質ポリエチレンテレフタレート(A-PET)フィルム(三菱樹脂社製、商品名「ノバクリア」、厚み:100μm)を基材として用意し、基材の片面に、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセノール(登録商標)NH-26」)の水溶液を60℃で塗布および乾燥して、厚み7μmのPVA系樹脂層を形成した。このようにして得られた積層体を、液温30℃の不溶化浴に30秒間浸漬させた(不溶化工程)。次いで、液温30℃の染色浴に60秒間浸漬させた(染色工程)。次いで、液温30℃の架橋浴に30秒間浸漬させた(架橋工程)。その後、積層体を、液温60℃のホウ酸水溶液に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長尺方向)に一軸延伸を行った。ホウ酸水溶液への浸漬時間は120秒であり、積層体が破断する直前まで延伸した。その後、積層体を洗浄浴に浸漬させた後、60℃の温風で乾燥させた(洗浄・乾燥工程)。このようにして、基材上に厚み5μmの偏光子が形成された長尺状の積層体(偏光子積層体)を得た。
4.第3の位相差層を構成する位相差フィルムCの作製
厚み100μmの長尺状のノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム(オプテス社製 商品名「ゼオノアZF-14-100」の片側に、厚み60μmの収縮性フィルム(東レ社製 商品名「トレファンBO2873」)を、アクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合わせた。その後、146℃の空気循環式オーブン内で1.38倍に延伸することで、収縮性フィルム上に長尺状の位相差フィルムCが形成された長尺状の積層体(位相差フィルム積層体)を得た。この位相差フィルムCは、厚みが17μmであり、面内位相差Re(550)が275nmであり、Re(450)/Re(550)が1.10であり、Re(650)/Re(550)が0.95であり、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たし、遅相軸と長尺方向とのなす角度は90°であった。
5.光学積層体の作製
位相差フィルムAの一方の面に表面保護フィルムを貼り合わせた。次いで、位相差フィルムAの他方の面に、長尺方向を揃えてロールトゥロールにより配向固化層積層体の配向固化層Bの面を貼り合わせた。次いで、配向固化層積層体からPET基材を剥離し、配向固化層Bの表面に、長尺方向を揃えてロールトゥロールにより偏光子積層体の偏光子の面を貼り合わせた。次いで、偏光子積層体から基材を剥離し、偏光子の表面に、長尺方向を揃えてロールトゥロールにより位相差フィルム積層体を貼り合わせた。次いで、位相差フィルム積層体から収縮性フィルムを剥離することにより、表面保護フィルム、第1の位相差層、第2の位相差層、偏光子、および第3の位相差層がこの順で積層された光学積層体を得た。なお、各構成の貼り合わせにはアクリル系粘着剤を用いた。上記光学積層体は、偏光子の吸収軸と第1の位相差層の遅相軸とのなす角度が25°であり、偏光子の吸収軸と第2の位相差層の遅相軸とのなす角度が80°である。得られた光学積層体について、偏光サングラスの角度に応じた色相変化および透過率変化の評価に供した。色相変化の評価結果を図3に、透過率変化の評価結果を図4に示す。
【0080】
<比較例1>
1.第1の位相差層を構成する位相差フィルムDの作製
ポリカーボネート樹脂ペレットから構成される長尺状のフィルムを斜め延伸して、長尺状の位相差フィルムDを得た。この位相差フィルムDは、厚みが67μmであり、面内位相差Re(550)が125nmであり、Re(450)/Re(550)が1.06であり、Re(650)/Re(550)が0.97であり、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を満たし、遅相軸と長尺方向とのなす角度は45°であった。
2.光学積層体の作製
位相差フィルムAと配向固化層の積層体に代えて位相差フィルムDをロールトゥロールにより偏光子積層体の偏光子の面を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。上記光学積層体は、第1の位相差層、偏光子、および第2の位相差層がこの順で積層された光学積層体であり、偏光子の吸収軸と第1の位相差層の遅相軸とのなす角度が45°である。得られた光学積層体について、実施例1と同様に色相変化および透過率変化の評価に供した。結果を図3および図4に示す。
【0081】
<比較例2>
得られた位相差フィルムAの面内位相差Re(550)が100nmであり、遅相軸と長尺方向とのなす角度が45°であり、位相差フィルムAと配向固化層の積層体に代えて上記位相差フィルムAをロールトゥロールにより偏光子積層体の偏光子の面を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。上記光学積層体は、第1の位相差層、偏光子、および第2の位相差層がこの順で積層された光学積層体であり、偏光子の吸収軸と第1の位相差層の遅相軸とのなす角度が45°である。得られた光学積層体について、実施例1と同様に色相変化および透過率変化の評価に供した。結果を図3および図4に示す。
【0082】
<評価>
図3から明らかなように、実施例1の光学積層体を介したスペクトル測定で得られた色相プロットが描く曲線は、比較例1および比較例2の光学積層体を介したスペクトル測定で得られた色相プロットが描く曲線と比べて、内側の面積が小さく、または、縦軸に沿った変化幅が小さい。これは、実施例1の光学積層体を透過する光は、比較例1および比較例2の光学積層体を透過する光に比べて、偏光サングラスの角度に応じた色相変化が小さいことを意味する。実施例1の光学積層体を介した透過率測定で得られた曲線の振幅は、比較例2の光学積層体を介した透過率測定で得られた曲線の振幅よりも小さい。これは、実施例1の光学積層体は、比較例2の光学積層体に比べて、偏光サングラスを模擬した偏光子の角度の変化に伴う透過率の変化が小さいことを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の光学積層体は、画像表示装置(特に、液晶表示装置)に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0084】
1 第1の位相差層
2 第2の位相差層
3 偏光子
4 第3の位相差層
5 第3の位相差層
6 第4の位相差層
10 光学積層体
11 光学積層体
図1
図2
図3
図4