(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】手摺の取付構造及び手摺付き梯子
(51)【国際特許分類】
E06C 7/18 20060101AFI20220105BHJP
E06C 1/06 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
E06C7/18
E06C1/06
(21)【出願番号】P 2019038213
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2019-10-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月17日以降に、複数の販売先に販売した商品、及びその施工説明書にて発表。 〔刊行物等〕 平成30年11月7日に、ウェブサイト「https://www.daiken.jp/pro/」における「施工説明書・取扱説明書ダウンロード」の「〔施工・取扱説明書〕手摺付アルミ製ロフトタラップ 〈2018年11月改訂〉」欄にて発表。
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本合 優太
(72)【発明者】
【氏名】御手洗 佳枝
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-028974(JP,A)
【文献】特許第4316310(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3128309(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06C 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梯子の少なくとも一方の支柱に取り付けられる手摺の取付構造であって、
前記支柱には、受け部が設けられている一方、
前記手摺には、前記受け部に前記手摺の全部を貫通する手摺固定ネジ部材により固定される固定部が設けられ、
前記固定部には、該固定部の全部を貫通し、且つ前記手摺固定ネジ部材が貫通可能な少なくとも1つの貫通孔が形成され、
前記受け部には、前記手摺固定ネジ部材と螺合可能なネジ孔が形成されており、
前記受け部のネジ孔に、
ネジ頭が前記固定部に接触するように該固定部の貫通孔
にのみ挿通された前記手摺固定ネジ部材
が螺合
され、該受け部と該固定部とが螺合固定されることにより、前記手摺が前記支柱に取り付けられていることを特徴とする手摺の取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記支柱の受け部には、該受け部に取付固定された前記手摺の固定部を覆う蓋部材が取り外し可能に固定されていることを特徴とする手摺の取付構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記支柱の受け部は、該支柱に固定された手摺受け部材を有し、
前記手摺受け部材には、前記手摺の固定部の外周面部に対応するように該固定部に沿って延びる受け凹部が設けられている一方、
前記蓋部材には、前記手摺受け部材の受け凹部との間に前記手摺の固定部が挟み込まれて挟持されるように構成された蓋凹部が設けられ、
前記手摺の固定部には、該固定部の全部を貫通し、且つ蓋固定ネジ部材が貫通可能な少なくとも1つの貫通孔が形成され、
前記手摺受け部材には、前記蓋固定ネジ部材が貫通可能な少なくとも1つの貫通孔が形成され、
前記蓋部材には、前記蓋固定ネジ部材と螺合可能なネジ孔が形成されており、
前記蓋部材のネジ孔に、前記固定部の貫通孔及び前記手摺受け部材の貫通孔に挿通された前記蓋固定ネジ部材が螺合固定されることにより、前記蓋部材が前記手摺受け部材に固定されていることを特徴とする手摺の取付構造。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つにおいて、
前記手摺の固定部は、該手摺の両端に設けられていることを特徴とする手摺の取付構造。
【請求項5】
請求項4において、
前記手摺の一方の端部に設けられた前記固定部の各貫通孔は、該固定部に沿って延びる長孔であることを特徴とする手摺の取付構造。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1つに記載の手摺の取付構造を有することを特徴とする手摺付き梯子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺の取付構造及び手摺付き梯子に関する。
【背景技術】
【0002】
梯子の支柱に手摺を取り付ける構造として、例えば、特許文献1には、支柱に固定された固定部材の挟持面と挟持部材の挟持面とによって手摺が挟持され、固定部材及び挟持部材に対して、手摺を貫通する孔に挿通された締結部材から締結力が付与されるようにした手摺の取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の手摺の取付構造では、固定部材と挟持部材とに締結力を付与する締結部材が手摺を貫通する孔に挿通されているため、大きな力がかかった場合、固定部材の挟持面と挟持部材の挟持面との間で手摺がぐらつくおそれがあり、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、手摺の取付構造に工夫を加えることにより、簡単な構造で手摺のぐらつきを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明では、梯子の支柱に手摺が取付固定されるようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明は、梯子の少なくとも一方の支柱に取り付けられる手摺の取付構造であって、前記支柱には、受け部が設けられている一方、前記手摺には、前記受け部に前記手摺の全部を貫通する手摺固定ネジ部材により固定される固定部が設けられ、前記固定部には、該固定部の全部を貫通し、且つ前記手摺固定ネジ部材が貫通可能な少なくとも1つの貫通孔が形成され、前記受け部には、前記手摺固定ネジ部材と螺合可能なネジ孔が形成されている。そして、前記受け部のネジ孔に、ネジ頭が前記固定部に接触するように該固定部の貫通孔にのみ挿通された前記手摺固定ネジ部材が螺合され、該受け部と該固定部とが螺合固定されることにより、前記手摺が前記支柱に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、支柱の受け部に手摺の固定部が直接取付固定されることにより、手摺が梯子の支柱に取り付けられているため、手摺のぐらつきが低減される。具体的には、受け部のネジ孔に、固定部の全部を貫通してネジ頭が固定部に接触するように固定部の貫通孔にのみ挿通された手摺固定ネジ部材が螺合固定されているため、受け部と固定部との固定がより一層確実となり、手摺のぐらつきがより一層低減される。このように、受け部と固定部とは、手摺の全部且つ手摺のみを貫通する手摺ネジ固定部材により螺合固定されているため、手摺の取付構造が簡単である。従って、簡単な構造で手摺のぐらつきを抑制することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記支柱の受け部には、該受け部に取付固定された前記手摺の固定部を覆う蓋部材が取り外し可能に固定されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、受け部に取付固定された固定部を覆う蓋部材が、受け部に対して取り外し可能に固定されているため、該固定部と共に、それを固定する手摺固定部材又は手摺固定ネジ部材を蓋部材の中に収容することができる。これにより、意匠性のみならず、手摺付き梯子に要求される安全性の向上を図ることができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記支柱の受け部は、該支柱に固定された手摺受け部材を有する。また、前記手摺受け部材には、前記手摺の固定部の外周面部に対応するように該固定部に沿って延びる受け凹部が設けられている一方、前記蓋部材には、前記手摺受け部材の受け凹部との間に前記手摺の固定部が挟み込まれて挟持されるように構成された蓋凹部が設けられている。さらに、前記手摺の固定部には、該固定部の全部を貫通し、且つ蓋固定ネジ部材が貫通可能な少なくとも1つの貫通孔が形成され、前記手摺受け部材には、前記蓋固定ネジ部材が貫通可能な少なくとも1つの貫通孔が形成され、前記蓋部材には、前記蓋固定ネジ部材と螺合可能なネジ孔が形成されている。そして、前記蓋部材のネジ孔に、前記固定部の貫通孔及び前記手摺受け部材の貫通孔に挿通された前記蓋固定ネジ部材が螺合固定されることにより、前記蓋部材が前記手摺受け部材に固定されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、受け部として支柱に固定された手摺受け部材を有し、この手摺受け部材の受け凹部と蓋部材の蓋凹部との間に手摺の固定部が挟み込まれて挟持されるように構成されているため、受け凹部及び蓋凹部と、固定部との接触面積を確保することができる。これにより、固定部近傍に過大な力が作用した場合であっても、この力を接触面全体に分散させることができるため、固定部の破損を防止することができ、手摺付き梯子に要求される安全性の向上をより一層図ることができる。
【0013】
また、蓋部材のネジ孔に、固定部の全部を貫通するように固定部の貫通孔及び手摺受け部材の貫通孔に挿通された蓋固定ネジ部材が螺合固定されることにより、蓋部材が手摺受け部材に固定されている。これにより、固定部の貫通孔には、固定部の全部を貫通するように、支柱の対向方向に手摺固定ネジ部材(手摺固定部材)が挿通される一方、該対向方向とは反対の方向に蓋固定ネジ部材が挿通されているため、手摺の周方向の回転が抑制され、手摺のぐらつきがさらに低減される。
【0014】
第4の発明は、第1~第3の発明の何れか1つにおいて、前記手摺の固定部は、該手摺の両端に設けられていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、固定部が手摺の両端に設けられているため、手摺付き梯子に要求される安全性の向上をさらに図ることができる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、前記手摺の一方の端部に設けられた前記固定部の各貫通孔は、該固定部に沿って延びる長孔であることを特徴とする。
【0017】
第5の発明では、手摺が変形した場合であっても、固定部の一方に設けられた長孔からなる各貫通孔で位置調整しながら、該各貫通孔と、支柱、手摺受け部材(支柱の受け部)及び蓋部材の各貫通孔又は各ネジ孔とを容易に連通させることができる。これにより、上記各孔どうしの位置合わせが容易になるため、支柱に手摺を取付ける作業性の向上を図ることができる。
【0018】
第6の発明は、手摺付き梯子に係り、第1~第5の発明の何れか1つに記載の手摺の取付構造を有することを特徴とする。
【0019】
第6の発明では、第1~第5の発明の作用効果を奏する手摺付き梯子を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上に説明したように、本発明によれば、簡単な構造で手摺のぐらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る手摺付き梯子を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1に係る手摺の取付構造を示す第1の斜視図である。
【
図4】
図4は、手摺の取付構造を示す第2の斜視図である。
【
図5】
図5は、手摺の取付構造を示す側面図である。
【
図6】
図6は、手摺の取付構造を示す
図5のVI-VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
<実施形態1>
(手摺付き梯子)
図1は、本実施形態に係る手摺付き梯子1を示す。この手摺付き梯子1は、例えば、収納所や寝台として利用されるロフトLを有する建物の室内において、そのロフトLへの昇降を可能にするためのロフト梯子として使用されるものである。
【0024】
手摺付き梯子1は、
図1に示すように、梯子(以下「梯子本体」ともいう)10と、左右一対の手摺20,20と、手摺受け部材30,30,…と、蓋部材40,40,…とを備えている。
【0025】
また、手摺付き梯子1には、梯子本体10の上部にフック部材3,3,…と、梯子本体10(後述する支柱8,8)の底部に滑り止め部材4,4とが設けられている。なお、フック部材3,3,…は、壁面Wに予め取り付けられている壁取付パイプPに掛けて、手摺付き梯子1を着脱するためのものである。
【0026】
梯子本体10は、左右一対の支柱8,8と、支柱8,8の長さ方向に沿って所定間隔で複数段に配置され、支柱8,8間に連結された踏板9,9,…と備えている。各支柱8及び各踏板9は、例えば、アルミニウム等の高剛性材料により、それぞれ形成されている。
【0027】
支柱8,8は、
図5及び
図6に示すように、互いに対向する対向面部11,11と、対向面部11,11の各一辺を連結する側面部12とからなる略コ字状の断面を有する棒状に形成されている。そして、これら2つの対向面部11,11と、側面部12とにより、受け部13が構成されている。
【0028】
対向面部11は、支柱8の剛性を高めるために略半円状の断面を有する筒状に形成されている。
【0029】
側面部12(受け部13の底部)には、受け固定部材5が貫通可能な1つの貫通孔14(
図5及び
図6参照)と、この貫通孔14を挟むように貫通孔14の上下両端に蓋固定ネジ6(蓋固定ネジ部材)が貫通可能な2つの貫通孔15,15(
図5参照)とがそれぞれ形成されている。なお、貫通孔14,15,15は、いずれも円形(円孔)に形成されている。また、側面部12には、踏板9,9,…を取り付けるためのネジが貫通可能な貫通孔(図示省略)が形成されている。
【0030】
受け部13は、支柱8に手摺20を固定するために、その手摺20を受ける部分である。ここで、本実施形態では、
図5及び
図6に示すように、受け部13に手摺受け部材30が嵌合されて固定されている。換言すると、この受け部13は、手摺受け部材30を有している。
【0031】
踏板9は、人が昇降する際に足や手が掛けられる部分であり、例えば、中空板状に形成されている。なお、踏板9の表面又は側面には、必要に応じて、注意を喚起するための蛍光材や光反射材等(図示省略)が取り付けられてもよい。
【0032】
手摺20は、人が昇降する際に手が掛けられる部分であり、
図1、
図3及び
図4に示すように、支柱8の上部に取り付けられている。この手摺20は、例えば、SPCC等の冷間圧延鋼板が略円形の断面を有するパイプ状に加工された部材を略U字状に曲げることにより形成されている。また、手摺20は、その両端において、支柱8の側面に沿うように一直線上に同一方向に配置されると共に、支柱8の受け部13に固定される、下固定部21と、上固定部25とが設けられている。
【0033】
下固定部21は、手摺20の下端に設けられている。この下固定部21には、
図2、
図5及び
図6に示すように、手摺固定ネジ7(手摺固定ネジ部材)が貫通可能な1つの貫通孔22と、蓋固定ネジ6が貫通可能な2つの貫通孔23,23とがそれぞれ形成されている。貫通孔23,23は、貫通孔22を挟むように、貫通孔22の上下両端(下固定部21の軸方向両端)における支柱8の貫通孔15,15に対応する位置に形成されている。これら各貫通孔22,23,23は、いずれも下固定部21(手摺20)の直径方向に下固定部21の全部を貫通する一対の円孔に形成されている。
【0034】
一方、上固定部25は、手摺20の上端に設けられている。この上固定部25には、手摺固定ネジ7が貫通可能な1つの貫通孔26と、蓋固定ネジ6が貫通可能な2つの貫通孔27,27とがそれぞれ形成されている。貫通孔27,27は、貫通孔26を挟むように、貫通孔26の上下両端における支柱8の貫通孔15,15に対応する位置に形成されている。これら各貫通孔26,27,27は、いずれも上固定部25の直径方向に上固定部25の全部を貫通し、且つ上固定部25の軸方向に沿って延びる一対の長円形(長孔)に形成されている。
【0035】
手摺受け部材30は、支柱8の受け部13を構成し、
図3に示すように、支柱8に、下固定部21及び上固定部25(以下「固定部21,25」ともいう)を取付固定するためのものである。この手摺受け部材30は、受け固定部材5により支柱8の受け部13に固定される。なお、受け固定部材5は、例えば、ネジ、リベット等が挙げられる。
【0036】
また、手摺受け部材30は、
図5及び
図6に示すように、略矩形状の断面を有する中空板状に形成されている。この手摺受け部材30には、支柱8の側面部12に沿う平坦面32を有する嵌合凸部31と、平坦面32と対向する面に受け凹部33とが設けられている。
【0037】
嵌合凸部31は、支柱8の受け部13に嵌合可能に形成されている。この嵌合凸部31の平坦面32には、受け固定部材5により受け部13に手摺受け部材30を固定するための1つの有底状の固定孔35と、蓋固定ネジ6が貫通可能な2つの貫通孔36,36とがそれぞれ形成されている。固定孔35は、後述するネジ孔37の底部まで延びている。貫通孔36は、固定孔35を挟むように固定孔35の上下両端における支柱8の貫通孔15,15に対応する位置に、手摺受け部材30の幅方向(
図5及び
図6では左右水平方向)の全長に亘って(手摺受け部材30の全部を貫通するように)形成されている。これら固定孔35及び貫通孔36,36は、いずれも、円孔に形成されている。
【0038】
受け凹部33は、固定部21,25の外周面部に沿うように形成されている。換言すると、受け凹部33は、蓋部材40(後述する蓋凹部41)と共に固定部21,25を挟持する挟持面34を構成するものである。この受け凹部33は、手摺受け部材30の高さ方向の全長に亘って(固定部21,25に沿って延びるように)設けられている。なお、手摺受け部材30の高さ(
図5では上下方向)寸法は、特に限定されず、固定部21,25の軸方向の寸法に応じて決定すればよい。
【0039】
また、受け凹部33の底部には、固定部21,25の貫通孔22,26にそれぞれ対応する位置に、手摺固定ネジ7と螺合可能な1つの有底状のネジ孔37が形成されている。
【0040】
蓋部材40は、手摺受け部材30に取付固定された手摺20の固定部21,25を覆うものであり、換言すると、手摺受け部材のカバー部材である。そのため、蓋部材40の高さ寸法は、
図5に示すように、手摺受け部材30の高さ寸法とほぼ同一になっている。
【0041】
また、蓋部材40は、
図5及び
図6に示すように、略半円状の上下端面を有する中空板状に形成されている。この蓋部材40の手摺受け部材30の受け凹部33と対向する面部には、受け凹部33との間に固定部21,25が挟み込まれて挟持されるように構成された蓋凹部41が設けられている。
【0042】
より具体的には、蓋凹部41は、固定部21,25の外周面部に沿うように設けられている。換言すると、蓋凹部41は、受け凹部33と共に固定部21,25を挟持する挟持面42を構成するものである。この蓋凹部41は、蓋凹部41の高さ方向の全長に亘って設けられている。
【0043】
また、蓋凹部41の底部には、支柱8の貫通孔15,15にそれぞれ対応する位置に、蓋固定ネジ6と螺合可能な2つの有底状のネジ孔43が形成されている。これにより、蓋部材40は、手摺受け部材30に対して取り外し可能に固定されている。
【0044】
なお、手摺受け部材30のネジ孔37、及び蓋部材40のネジ孔43は、例えば、
図5及び
図6に示すように、手摺受け部材30の受け凹部33の底部、及び蓋部材40の蓋凹部41の底部に、抜け止め状態で回動不能に圧入された埋込ナット38,44の雌ネジにより形成される。また、手摺受け部材30及び蓋部材40は、例えば、ABS、PP、PS等の硬質樹脂材料の他、アルミニウム、ステンレス鋼、亜鉛引き鋼板等の金属材料により形成することもできる。この場合、埋込ナット38,44を使用せずに、手摺受け部材30及び蓋部材40自体に雌ネジからなるネジ孔37及びネジ孔43をそれぞれ形成することもできる。
【0045】
(手摺の取付構造)
次に、
図3~
図6を参照しながら、手摺20の取付構造Sを以下に説明する。この手摺20の取付構造Sでは、
図3に示すように、梯子本体10の支柱8に固定されている手摺受け部材30に、手摺20の固定部21,25が手摺20の全部を貫通する手摺固定ネジ7によりそれぞれ取付固定されている。より具体的には、
図5及び
図6に示すように、手摺受け部材30のネジ孔37に、固定部21,25の各貫通孔22,26に挿通された手摺固定ネジ7が螺合固定されている。これにより、手摺20は、その固定部21,25において、手摺受け部材30を介して支柱8の受け部13に取付固定される。
【0046】
また、
図4に示すように、手摺受け部材30に、蓋部材40が手摺20の全部を貫通する蓋固定ネジ6により取付固定されている。より具体的には、
図5及び
図6に示すように、蓋部材40のネジ孔43に、支柱8の貫通孔15、手摺受け部材30の貫通孔36、及び固定部21,25の各貫通孔23,27の順に挿通された蓋固定ネジ6が螺合固定されている。これにより、蓋部材40は、固定部21,25を覆うように、手摺受け部材30に取り外し可能に固定される。
【0047】
このように、固定部21,25には、固定部21,25の全部を貫通するように、各貫通孔22,26に支柱8の対向方向に手摺固定ネジ7が挿通される一方、各貫通孔23,27に該対向方向とは反対の方向に蓋固定ネジ6が挿通されている。
【0048】
また、固定部21,25は、手摺受け部材30の受け凹部33と蓋部材40の蓋凹部41との間に挟み込まれて挟持されている。そして、受け凹部33の挟持面34、及び蓋凹部41の挟持面42と、各固定部21,25の外周面部との接触面積が十分に確保されている。
【0049】
(手摺の取付作業手順)
次に、
図3~
図6を参照しながら、梯子本体10の各支柱8に手摺20を取り付ける作業手順を以下に説明する。
【0050】
準備作業として、まず、各支柱8の受け部13に、手摺受け部材30を固定する。より具体的には、各支柱8の貫通孔14に支柱8,8が互いに離間する方向(
図5では右方向)に挿通させた受け固定部材5を、手摺受け部材30の固定孔35に固定する。
【0051】
続いて、受け部13に取り付けられた手摺受け部材30に、手摺20を取付固定する。より具体的には、手摺20の全部を貫通するように、手摺20の下固定部21の貫通孔22に、支柱8,8の対向方向(
図5では左方向)に挿通させた手摺固定ネジ7を、手摺受け部材30のネジ孔37に螺合固定する。上記と同様にして、上固定部25の貫通孔26に挿通させた手摺固定ネジ7を、ネジ孔37に螺合固定する。これにより、各支柱8の受け部13に、手摺受け部材30を介して固定部21,25が取付固定される。
【0052】
最後に、固定部21,25が取付固定された手摺受け部材30に、蓋部材40を取り付ける。より具体的には、手摺20の全部を貫通するように、順に、各支柱8の貫通孔15、手摺受け部材30の貫通孔36、及び固定部21,25の各貫通孔23,27に、支柱8,8が互いに離間する方向にそれぞれ挿通させた蓋固定ネジ6を、蓋部材40のネジ孔43に螺合固定する。これにより、手摺受け部材30に、蓋部材40が固定される。
【0053】
以上の作業手順により、各支柱8に固定された手摺受け部材30に、手摺20及び蓋部材40を取り付けることによって、各支柱8に手摺20を取り付けることができる。
【0054】
なお、手摺20を各支柱8から取り外す場合は、上記と逆の手順を行なえばよい。
【0055】
(効果)
以上のように構成される手摺の取付構造S及び手摺付き梯子1では、梯子本体10の各支柱8の受け部13に、各支柱8に固定された手摺受け部材30を介して手摺20の固定部21,25が取付固定されることにより、手摺20が支柱8に取り付けられているため、手摺20のぐらつきが低減される。また、受け部13(手摺受け部材30)と固定部21,25とは、手摺20の全部を貫通する手摺固定ネジ7により、螺合固定されているため、手摺の取付構造Sが簡単である。従って、簡単な構造で手摺20のぐらつきを抑制することができる。
【0056】
また、手摺受け部材30に取付固定された各固定部21,25を覆う蓋部材40が、手摺受け部材30に対して取り外し可能に固定されているため、各固定部21,25と共に、それを固定する手摺固定ネジ7を蓋部材40の中に収容することができる。これにより、意匠性のみならず、手摺付き梯子1に要求される安全性の向上を図ることができる。
【0057】
また、手摺受け部材30の受け凹部33と蓋部材40の蓋凹部41との間に各固定部21,25が挟み込まれて挟持されるように構成され、受け凹部33の挟持面34、及び蓋凹部41の挟持面42と、各固定部21,25の外周面部とが十分に接触している。これにより、固定部21,25近傍に過大な力が作用した場合であっても、この力を接触面全体に分散させることができるため、固定部21,25の破損を防止することができ、手摺付き梯子1に要求される安全性の向上をより一層図ることができる。
【0058】
また、手摺20の全部を貫通するように、各貫通孔22,26には、支柱8,8の対向方向に手摺固定ネジ7が挿通される一方、各貫通孔23,27には、該対向方向とは反対の方向に蓋固定ネジ6が挿通されているため、手摺20の周方向の回転が抑制され、手摺20のぐらつきがより一層低減される。
【0059】
また、固定部21,25が手摺20の両端にそれぞれ設けられているため、手摺付き梯子1に要求される安全性の向上をさらに図ることができる。
【0060】
また、貫通孔26,27は、長孔に形成されているため、手摺20が変形した場合であっても、支柱8の貫通孔15、手摺受け部材30の貫通孔36及びネジ孔37、並びに蓋部材40のネジ孔43との位置合わせが容易になり、支柱8に手摺20を取付ける作業性の向上を図ることができる。
【0061】
<その他の実施形態>
上記実施形態1では、支柱8に固定された手摺受け部材30を介して、支柱8の受け部13に手摺20が取付固定されているが、これに限定されず、受け部13に手摺20が直接取付固定されていてもよい。この場合、受け部13に蓋部材40が直接取り付けられるようにすればよい。
【0062】
上記実施形態1では、手摺20と手摺受け部材30との固定には、手摺固定ネジ7が用いられているが、これに限定されず、例えば、リベット等の手摺固定部材を用いることもできる。
【0063】
上記実施形態1では、手摺20の両端に固定部21,25が設けられているが、これに限定されず、少なくとも手摺20の上端に上固定部25が設けられていればよい。但し、手摺付き梯子1に要求される安全性の向上を図る観点から、手摺20の両端に固定部21,25が設けられていることが好ましい。
【0064】
上記実施形態1では、手摺20の両端は、支柱8の側面に沿うように一直線上に同一方向に配置されているが、これに限定されず、該一直線上に配置されていればよく、該一直線上に異なる方向に配置されていてもよい。
【0065】
上記実施形態1では、下固定部21の貫通孔22,23,23が円孔であり、上固定部25の貫通孔26,27,27が長孔になっているが、これに限定されず、貫通孔22,23,23が長孔であり、貫通孔26,27,27が円孔であってもよい。手摺20のいずれの端部に長孔を形成するかどうかは、例えば、支柱8に手摺20を取り付ける手順により決定すればよい。より具体的には、支柱8に手摺20を取り付ける作業性を向上させる観点から、例えば、支柱8に先に取り付けられる側の端部の貫通孔が円孔に形成され、後に取り付けられる側の端部の貫通孔が長孔に形成されるように構成すればよい。
【0066】
上記実施形態1では、手摺20の断面は、略円形であるが、これに限定されず、略楕円形、略矩形、略多角形等でもよい。この場合、手摺受け部材30の受け凹部33と蓋部材40の蓋凹部41とを、手摺20の外周面部に沿うように設ければよい。
【0067】
上記実施形態1では、手摺受け部材30及び蓋部材40には、受け凹部33及び蓋凹部41がそれぞれ設けられているが、これに限定されず、手摺20の各固定部21,25が収容可能な凹部が、手摺受け部材30及び蓋部材40のいずれか一方に設けられていればよい。但し、手摺付き梯子1に要求される安全性の向上を図る観点から、手摺受け部材30及び蓋部材40には、固定部21,25の外周面部に沿う受け凹部33及び蓋凹部41がそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0068】
上記実施形態1では、手摺付き梯子1は、ロフト梯子として使用されるものであるが、これに限定されず、例えば、垂直梯子や引込梯子等のような他の梯子にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、種々の梯子に適用することができ、簡単な構造で手摺のぐらつきを抑制することができるため、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0070】
S 手摺の取付構造
1 手摺付き梯子
5 受け固定ネジ(固定ネジ部材)
6 蓋固定ネジ(蓋固定ネジ部材)
8 支柱
10 梯子
13 受け部
20 手摺
21 下固定部
22,23 貫通孔
25 上固定部
26,27 貫通孔
30 手摺受け部材
31 受け凸部
35,36 貫通孔
37 ネジ孔
40 蓋部材
41 蓋凹部
43 ネジ孔