IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バックマン ラボラトリーズ インターナショナル,インコーポレイティドの特許一覧

特許6992040パルプ中のデンプンを保存する方法、並びにカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御する方法
<>
  • 特許-パルプ中のデンプンを保存する方法、並びにカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御する方法 図1
  • 特許-パルプ中のデンプンを保存する方法、並びにカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御する方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】パルプ中のデンプンを保存する方法、並びにカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/02 20060101AFI20220105BHJP
   D21F 1/66 20060101ALI20220105BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20220105BHJP
   C02F 1/76 20060101ALI20220105BHJP
   D21H 17/11 20060101ALI20220105BHJP
   C02F 5/08 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
D21H21/02
D21F1/66
C02F1/50 510Z
C02F1/50 520Z
C02F1/50 531M
C02F1/50 531P
C02F1/76 A
D21H17/11
C02F5/08 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019229842
(22)【出願日】2019-12-20
(62)【分割の表示】P 2018185965の分割
【原出願日】2013-06-04
(65)【公開番号】P2020073740
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】61/655,678
(32)【優先日】2012-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518022813
【氏名又は名称】バックマン ラボラトリーズ インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン オート,エディー
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-241018(JP,A)
【文献】特開2007-002348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0067832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-1/78
5/00-5/14
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙に使用される工程水を加工処理し、加工処理されるパルプに由来するカルシウムを含有していた好気性又は嫌気性の廃水処理部の蒸解釜におけるカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御又は防止する方法であって、抄紙プロセスにおいて、前記工程水が0.3ppm~15ppmの残存クロラミン量を有するようにパルプを含有する工程水を、モノクロラミンを含むクロラミンで連続処理し、さらに前記パルプを含有する前記工程水を少なくとも1の酸化剤で処理することであって、その後、前記パルプから紙/板紙が形成され、パルプ除去後に前記工程水が1又は複数の蒸解釜に到達することを含む、方法。
【請求項2】
抄紙で使用される工程水を加工処理し、加工処理されるパルプに由来するカルシウムを含有していた廃水処理部の廃水中の生物学的酸素要求量を減らすためのシステムにおけるカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御又は防止する方法であって、抄紙プロセスにおいて、前記工程水が0.3ppm~15ppmの残存クロラミン量を有するようにパルプを含有する工程水を、モノクロラミンを含むクロラミンで連続処理し、さらに前記パルプを含有する前記工程水を少なくとも1の酸化剤で処理することであって、その後、前記パルプから紙/板紙が形成され、パルプ除去後に前記工程水が前記システムに到達することであって、それにより生物学的酸素要求量を減少することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙及び/又は再生紙/板紙の使用に関し、また紙及び包装の製造中のパルプのデンプン含有量の保存に関し、さらに、廃水液の処理におけるカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングの制御に関する。
【0002】
本願は、2012年6月5日付けで出願された先の米国仮特許出願第61/655678号(その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす)の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
リサイクルは、近代のグリーン経済における重要な要因であり、特に、より効率がよく環境上持続可能となることを目標とする製紙産業において重要である。しかしながら、紙及び包装の製造における再生パルプの使用には、高品質の製品を達成するのにいくつかの障害がある。例えば、段ボール古紙に由来し、デンプンで糊付けされるか又は塗工された記述/印刷グレードの再生パルプは、通常高レベルのデンプンを含有し、再生紙/板紙の作製に有益である。また、再生紙/厚紙のグレードは、有益なレベルのCaCOを含む。残念ながら、このデンプン含有量は、製造中に補充のデンプンを追加することがあることから、製造中に大幅に低下する(degraded)場合がある。得られる製品中にデンプンが少ないことは、上記パルプから作られた紙/板紙製品の機械的特性が失われているか、又は低いことを意味する。さらに、再生供給源に由来するパルプ等のパルプに見出されるカルシウムは、パルプ除去後に起こる工程水の後処理においてカルシウムの沈殿、スケーリング又はファウリング(fouling)を引き起こす可能性がある。
【0004】
より具体的には、過去に多くの抄紙プラント(特に、再生紙を使用するもの)は、微生物の問題に関連し得る多くの問題を経験してきた。しかしながら、微生物に対抗する標準的なアプローチが試みられた場合、何ら成功しなかった。抄紙産業で典型的に使用される殺生物剤及び/又は典型的な殺生物処理は、包装紙を作る多くの機械に見られていた以下の問題を解決しなかった。上記産業の当業者らは、正確には何が問題なのかを理解することができず、問題の解決策を特定できなかった。しかしながら、本発明者は、特定の微生物活性が以下の連鎖を開始することを特定した。
微生物は、抄紙システム中へとアミラーゼを放出する。
これらの細胞外酵素は、デンプンをグルコースオリゴマー(例えば、マルトース)及びグルコース(デンプンは例えば、古紙、損紙及び/又はウェットエンド添加剤デンプンに由来する)へと分解する。
オリゴマー及びモノマーは細菌によって取り込まれ、発酵して揮発性脂肪酸(VFA)を産生する。
VFAはプロセスpHを減少する(7以上から6~6.5以下まで)。
発酵プロセスは、伝導率の増加及び酸化還元電位の減少を伴う。
発酵菌の周りの局所領域におけるpHは1~4まで低くなり得る。
低pHは炭酸カルシウム填料(例えば、古紙中に存在する)を可溶性カルシウムCa2+(及びCO)へと溶解する。
この時点では、問題は更に悪化するのみである。すなわち、(1)発酵菌の生育の増加は、細胞外アミラーゼの産生の増加をもたらし、(2)ウェットエンド(混合チェストとヘッドボックスとの間)に強度のため添加される任意のデンプンが分解され、(3)グルコースオリゴマーは微生物の更なる生育を助長し、それにより粘液及び/又は他の細菌による問題を増やし、(4)VFAは紙、並びに製造環境及び/又は潜在的に居住領域を含む周辺地域おける重大な臭気の問題の原因であり、(5)炭酸カルシウムが溶解されてVFAにより安定化されると、填料(例えば、古紙に由来する)が失われ、本質的に原材料が失われ、及び/又は(6)溶解したカルシウムは、堆積若しくはスケーリングの問題を生じ得る。
【0005】
廃水処理に嫌気性蒸解釜を利用する工場では、以下のような関連する別の問題が発生する可能性がある。
VFAは反応して溶解したカルシウムを安定化し(VFA-Ca塩として)、そのカルシウムを廃水処理システムへと運ぶ。
VFAのCH及びCOへの転化、及び嫌気性蒸解釜におけるpHの増加により、カルシウムスケールが形成され、過剰なスケールが形成される場合、これが廃水処理システムを閉鎖し、続いて嫌気性蒸解釜の清掃のために工場の閉鎖を引き起こす可能性がある。
【0006】
廃水処理に、単独で又は嫌気性蒸解釜と組み合わせて好気性蒸解釜又は池を利用する工場では、以下のようにCaCOフォールアウト(fall-out)が発生する問題がある。
VFAは反応して溶解したカルシウムを安定化し(VFA-Ca塩として)、そのカルシウムを廃水処理システムへと運ぶ。
廃液中のVFAの(更なる)分解及び廃液処理中の更なるpHの増加により、炭酸カルシウムは沈殿してスケーリング(好気性反応器)又は過剰な汚泥の形成(好気性池において)を生じ得る。これは、整備及び清掃のための停止時間の増加をもたらし、高CaCO含有汚泥の化学廃棄物としての処分にかかる多くの費用を生じる可能性がある。
【0007】
本発明者は、初めて、上記問題の根本、並びに如何にしてこの問題を防止及び/又は制御するかを理解した。本明細書に記載される、本発明者によって使用されるアプローチは、製紙工場における微生物学的活動によるデンプンの分解を減少又は防止することである。上記問題の根本原因を以下に要約する。
アミラーゼ酵素が、例えばマルトース及びグルコースへのデンプンの分解に非常に効率的であるため、抄紙機における細菌及び細菌によって産生されるアミラーゼ酵素。
上記プロセスでのカルシウム填料の可溶化の発端である高レベルのVFAの産生をもたらす、工程水中の高い含有量のグルコース及び糖による通性嫌気性細菌の発酵代謝の刺激。
【0008】
そのため、本発明者は、この問題を解決する最良の方法は、上記の問題に先手を打ち、上記に詳述された一連の深刻な事象を止めることであると特定した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の特徴は、包装シート/板紙、波型加工(fluting)、ライナー、テストライナー、単層/多層等の紙製品(特に、再生パルプ又は再生供給源に由来するパルプからの紙製品)の強度を、これを製造するために使用されるパルプのデンプン含有量を保存することによって改善することである。本発明の処理を長網抄紙機(Fourdrinier)及びラウンドフォーマー機(roundformer machines)に使用することができる。
【0010】
本発明の別の特徴は、紙及び包装の製造におけるウェットエンド添加剤の効率を高めることである。例えば、これはCa2+の減少、pHの上昇、及び/又は伝導率の低下により達成され得る。
【0011】
本発明の更なる特徴は、紙及び包装の製造中に形成され得る臭気を生じる材料を減少することである。
【0012】
本発明の更に別の特徴は、形成される紙及び包装、並びに完成品における穴及び微生物に関連する破れの減少である。
【0013】
本発明の別の特徴は、再生パルプ及び/又は損紙及び/又は他のパルプ供給材料における、既存の及び/又は新たに添加された強度付与(天然)デンプン、及び/又は既存の及び/又は新たに形成されたデンプン-セルロース複合体をアミラーゼ分解から保存し、既存の及び/又は新たに添加されたデンプン、及び/又は既存の及び/又は新たに形成されたデンプン-セルロース複合体の再生パルプ又は損紙によって製造される新たなシートへの効率的な回収及び移送を可能とすることである。
【0014】
本発明の付加的な特徴及び利点は以下の記載に一部説明され、本明細書から一部明らかであり、又は本発明の実施によって習得され得る。本発明の目的及び他の利点は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において具体的に指摘される要素及び組合せを用いて実現及び達成される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの及び他の利点を達成するため、また本明細書において具体化され広く説明される本発明の目的にしたがって、本発明は、パルプ及び工程水に存在するデンプンを保存する方法に関する。上記方法を抄紙プロセスの一部として行うことができる。パルプを含有する工程水を、クロラミン(複数の場合がある)で処理することができる。上記処理は、任意の好適な手法で行われ得る。上記処理は、継続的、実質的に継続的、断続的、周期的、バッチ、又はこれらの任意の組合せであってもよい。上記処理は、本明細書に言及される1又は複数の利益を達成するために工程水中に有効量のクロラミンを維持することが好ましく、この有効量は、一般的に、長期の連続した時間に亘り工程水中に残存量のクロラミンを維持することによって達成される。上記処理は、抄紙システムの1又は複数の段階又は位置で行われ得る。例えば、上記処理は、ヘッドボックス等の容器、及び/又はヘッドボックスの上流及び/又は下流の1又は複数の位置において行われ得る。標的残存クロラミンの値又は範囲は、上記処理によって達成され得る。例えば、工程水は、約0.3ppm~約15ppm(すなわち塩素当量)の残存クロラミン量を含み得る。ppmレベルは、当業者に既知であり理解される塩素当量として表され、工程水中の実際のクロラミンppmレベルではない。この残存量は、例えば、ヘッドボックスにおいて、又は(測定位置の単なる一例として)ヘッドボックスの直前若しくは直後において特定され得る。デンプンは、パルプ中に所望の量で存在し得る。例えば、デンプンは、乾燥パルプ繊維の総重量ベースで少なくとも約0.001重量%、例えば乾燥パルプ繊維の総重量ベースで0.1重量%以上、又は1重量%以上の量でパルプ中に存在し得る。本発明は、クロラミンが、十分な量で、実質的に継続的な又は継続的な方式で使用される場合、カチオン性デンプン、及び/又はサイズ剤、コーティング、スプレー及び/又は接着剤に由来する天然デンプン等であるがこれらに限定されないパルプ中に存在するデンプン内容物を劇的に保存することができ、そのようにして強度を含む特性が向上した包装及び紙製品がもたらされるという驚くべき予想外の発見を含む。
【0016】
本発明は、パルプを含有する工程水の殺生物剤及び酸化剤による二重処理を含む、抄紙プロセス又は他のプロセスにおいてパルプ中の微生物を制御するとともに、デンプンを保護する方法に関する。殺生物剤(例えば、クロラミン及び/又は他の殺生物剤)は、工程水において、アミラーゼ(例えば、α-アミラーゼ)等のデンプン分解酵素又は他のデンプン分解酵素を産生する可能性がある微生物を減少又は排除することができる。酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム及び/又は他の酸化剤)は、デンプン分解酵素(微生物により産生されるデンプン分解酵素等)又は他の酵素の残存酵素活性を排除するための酵素制御を提供し得る。示される二重処理により、酵素基質(天然デンプン又は他の酵素基質等)は、かかる酵素による分解から保護され得る。二重処理方法は、殺生物剤及び酸化剤を用いないパルプを含有する工程水の処理と比べて、パルプを含有する工程水中のデンプン分解酵素産生性の細菌及び/又は他の微生物、及び/又は他の微生物の数を減少又は排除することができる。さらに、二重処理は、殺生物剤及び酸化剤を用いないパルプを含有する工程水の処理と比べて、処理された工程水におけるデンプン分解酵素量(enzyme counts)を減少又は排除することができる。
【0017】
本発明は、セルロースと天然デンプンとの複合体又は凝集物を含むパルプを含有する工程水の処理を含む抄紙プロセスにおいて、パルプに存在する既存の及び新たに添加された(天然)デンプン、並びに既存の及び新たに形成された(天然)デンプン-セルロース複合体を保存する方法であって、ここで、上記処理はクロラミン及び酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)を別々に工程水に添加することを含む、方法に関する。処理された工程水におけるデンプン分解酵素含有量(例えば、アミラーゼ含有量)は、酸化剤を用いない工程水の同様の処理と比べて減少している。上記方法は、示される二重処理戦略を含む抄紙プロセスで使用される、再生パルプ、損紙、又はこれらの両方において既存の、また新たに形成される(天然)デンプン及びデンプン-セルロース複合体を保存するために使用され得る。酸化剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)が、抄紙プロセス等のプロセスからデンプン分解酵素(例えば、アミラーゼ)を減少又は排除するために使用され、クロラミンが、上記プロセスにおいて微生物汚染を減少若しくは排除するとともに、上記プロセスにおいてデンプン分解酵素産生微生物によるデンプン分解酵素(例えば、アミラーゼ)産生を防止若しくは少なくとも減少するために、酸化剤とは別に使用される。再生紙又は損紙中の(天然)デンプン及びデンプン-セルロース複合体は保存され、これは再生パルプ又は損紙を用いて製造された新たなシートの強度に寄与し得る。アミラーゼ産生細菌等のデンプン分解酵素産生微生物は、工程水中に存在する場合、遊離デンプンを分解することができ、また再生紙又は損紙等から抄紙プロセスへと導入される、及び/又は繊維と新たな結合を形成する上記プロセスに添加される新たなデンプン(天然又はカチオン性)からin-situで形成される、凝集物中でセルロースと複合体化されているデンプンを分解することができる酵素を産生し得る。本発明は、(例えば、リパルピング、混合、リファイニング(refining)及び他の抄紙プロセス等のプロセスによって)機械的には除去することができない再生パルプ又は損紙に存在する(天然)デンプンは、デンプン分解作用(例えば、アミロース分解作用)による放出に脆弱であるという驚くべき意外な発見を含み、示される二重処理戦略は、かかるデンプン分解作用(例えば、アミロース分解作用)を減少又は防止して、既存の(天然)デンプン及びデンプン-セルロース複合体の再生パルプ又は損紙を用いて製造された新たなシートへの効率的な回収及び移行を可能とし得る。示される二重処理戦略は、代替的に又は追加的に、プロセスにおいて遊離デンプンとして及び/又は上記プロセスにおいてこの新たなデンプンと繊維との間にin-situで新たな結合が作られる複合体形態で存在し得る、新たに添加されたデンプン(天然又はカチオン性)に対するかかるデンプン分解作用を減少及び/又は防止することができる。示される二重処理戦略は、かかる新たに添加されたデンプン及び/又は新たに形成されたデンプン-繊維複合体をアミロース分解作用から少なくとも部分的に又は全体的に保護し得る。
【0018】
また、本発明の方法は、微生物の生育の制御、揮発性脂肪酸(VFA)産生の減少、伝導率増加の防止、酸化還元電位の減少の防止、カルシウム溶解の低下、pHの上昇、及び/又は機械、特に嫌気性蒸解釜における沈殿及び/又はそのスケーリングの最小化という追加の利益を有する。本発明の方法は、カチオン性ウェットエンド添加剤、例えば、歩留まりポリマー(retention polymers)、デンプン、及び/又は乾燥紙力増強剤(dry strength resins)の効率を高めることができる。強度の改善は、強度添加剤の費用の削減、坪量の減少、及びより高い強度グレードの市場における製品使用を可能とする。
【0019】
本発明の方法は、シート製品中の填料及び/又は灰分の維持又は増加をもたらすことができる。例えば、従来のシステムでは溶解されていた固体カルシウムは、代わりに原材料としてシート中に保持される。より低いカルシウムイオン濃度(より低い沈殿カルシウムレベル)は、デンプンを填料の粒子に結合することを含む、デンプンのシートへの吸収増加をもたらす。また、化学物質の使用(chemistry usage)の減少もまた、抄紙機及びその後、生物学的廃水プラントを含む複数の状況で実現される。サイズプレスデンプン固体の減少に起因する機械生産高の増加、及びサイズプレスからウェットエンドデンプンの添加への移行する選択肢もまた、可能となる。また、本発明により、サイズプレス(両面サイズプレスのうち片面又は両面)の排除によって乾燥エネルギーの減少を達成することができる。本発明の方法によって、埋め立てなければいけない汚泥量の減少及び廃液プラントポリマー処理の減少が更に可能となる。
【0020】
上記の一般的記述及び以下の詳細な記述は両方とも例示的及び説明的なものにすぎず、特許請求されるような本発明の更なる説明を与えることを意図しているにすぎないことを理解すべきである。
【0021】
引用することにより本願の一部をなす添付の図面は、本発明の幾つかの特徴を示し、本明細書とともに本発明の原理を説明する役割を果たすものである。
【0022】
本発明は、添付の図面を参照してより完全に理解することが可能である。図面は、本発明の例示的な特徴を示すことを意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本出願の実施例による方法を説明するプロセスフローチャートである。
図2】本出願の実施例による方法を説明するプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明によれば、パルプ中に存在するデンプンを保存する方法が提供される。上記方法は、抄紙プロセスの一部として行われ得る。
【0025】
上記に詳述される問題の効果的な制御の達成における要点は、正しい殺生物剤を用いる処理を使用することであり、これは、正しい殺生物剤を使用すること、正しい用量、正しい適用時点(複数の場合がある)、正しい残存殺生物剤レベルを維持すること、及びこれを長期間に亘り繰り返すことを含む。上記に詳述される問題を制御するため、高レベルの1又は複数のクロラミンが維持されなければならないと特定された。本質的には、本発明者は、本明細書に詳述されるような非常に積極的で持続的な処理スケジュールが必要であると特定した。
【0026】
より詳細には、パルプ中に存在するデンプンを保存する方法は、抄紙プロセスに組み込まれてもよい。例えば、抄紙プロセスは、ヘッドボックス又はラウンドフォーマー機等を含み得る。この位置(複数の場合もある)は処理領域であってもよいが、これは任意である。上記方法は、工程水が、例えば0.3ppm~15ppm(塩素当量)の量の残存クロラミン量(例えば、ヘッドボックス又はパルプが存在する他の位置で決定される)を有するように、パルプを含有する工程水、又はパルプの調製及び紙の生産プロセスにおいて使用された工程水を、モノクロラミンを含む1又は複数のクロラミンで処理することを含む。デンプンは、パルプ中に乾燥パルプ繊維の重量ベースで少なくとも0.001重量%の量で存在し得る。更なる詳細、選択肢、及び例が以下に提供される。
【0027】
パルプを含有する工程水を、1又は複数のクロラミン、例えば、モノクロラミン(MCA)、ジクロラミン(DCA)、又はこれらの組合せを用いて処理することができる。(重量基準で)大半のクロラミンは、MCA(存在するクロラミンの少なくとも50.1重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、又は100重量%等)であってもよい。上記処理は、任意の好適な手法により行われ得る。上記処理は、継続的、実質的に継続的、断続的、周期的、バッチ、又はこれらの任意の組合せであってもよい。上記処理は、抄紙システムの1又は複数の段階又は位置において行われ得る。例えば、上記処理は、ヘッドボックス等の容器、処理パルパー、パルパーフィル水(pulper fill water)若しくはダンプチェスト、又はこれらの任意の組合せにおいて行われ得る。一般的に、上記処理(複数の場合がある)は、パルプが工程水と共に存在する場合に行われ、及び/又はパルプと組み合わせる前に本明細書に記載されるようにクロラミンによってプロセス紙を前処理することができる。
【0028】
本発明の方法は、パルプを含有する工程水の殺生物剤及び酸化剤による二重処理を含む抄紙プロセスにおいてパルプ中の微生物を制御するとともに、デンプンを保護する方法を含み得る。制御される微生物は、細菌、真菌、酵母、古細菌、又は抄紙プロセス若しくは他のプロセスにおいて工程水中等にデンプン分解酵素を産生する可能性がある他の微生物であってもよい。上記処理により制御され得る微生物は、主として細菌であり、本質的には完全に、又は完全に細菌であり得る。汚染制御は、工程水中でデンプン複合体分解酵素の産生及び該酵素の存在を減少するため、アミラーゼ(例えば、α-アミラーゼ)又は他の酵素等のデンプン分解酵素又は他の酵素を産生する可能性がある工程水中の微生物の存在を減少又は排除するための殺生物剤(例えば、クロラミン及び/又は他の殺生物剤)により提供され得る。α-アミラーゼ(アルファアミラーゼ)は、急速に分子量を減少することができ、またセルロースからデンプンを放出することができるエンドアミラーゼである。β-アミラーゼ(ベータアミラーゼ)及びγ-アミラーゼ(ガンマアミラーゼ)は、二糖/単糖を放出するターミナルアミラーゼ(terminal amylases)である。本発明の範囲に限定されず、β-アミラーゼ(ベータアミラーゼ)及びγ-アミラーゼは典型的に抄紙においてデンプンの安定性に関連する主な役割を持たないかもしれないが、それらは、アミラーゼを産生するか否かに関わらず、最終的には細菌にとって利用可能な糖類を作る役割を果たし得る。本発明の目的のため、全ての又は一部若しくは1つのアミラーゼのタイプ(α-アミラーゼ及び/又はβ-アミラーゼ及び/又はγ-アミラーゼ)を、本明細書に記載されるように制御及び/又は防止することができる。α-アミラーゼを単独で、又は他のアミラーゼタイプと共に制御及び/又は防止することにより、本発明の利益を達成することができる。本明細書において「アミラーゼ」に言及する場合、1若しくは複数の又は全てのアミラーゼタイプを含むことができ、少なくともα-アミラーゼを含むことが好ましい。酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム及び/又は他の酸化剤)は、デンプン分解酵素(例えば、微生物によって産生されるもの)又は他の酵素の残存酵素活性を減少又は排除するための酵素制御を提供し得る。示される二重処理により、酵素基質(天然デンプン及び/又は他の酵素基質等)をかかる酵素による分解から保護することができる。上記方法により提供される微生物汚染制御等の微生物制御は、殺生物剤及び酸化剤を用いないパルプを含有する工程水の処理と比べて、パルプを含有する工程水中のデンプン分解酵素産生性の細菌及び/又は他の微生物、及び/又は他の種類の微生物の数を減少又は排除することができる。デンプン分解酵素産生性であり得る微生物の上記方法による制御は、検出可能なレベル又は他の値を下回る場合がある。さらに、二重処理は、殺生物剤及び酸化剤を用いないパルプを含有する工程水の処理と比べて、処理された工程水中のデンプン分解酵素量を減少又は排除することができる。上記方法によるデンプン分解酵素の制御は、検出可能なレベル又は他の値まで低下し得る。
【0029】
本発明の方法は、同じプロセスで協調してクロラミン及び少なくとも1つの他の活性物質の使用を含むことができる。クロラミン及び酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl))を、同じプロセスで協調して使用することができる。クロラミン及び酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)のこれらの活性物質を使用して、抄紙プロセス又はかかる再生パルプ若しくは損紙材料を使用する他のプロセスにおいて、再生パルプ若しくは損紙中の既存の(天然)デンプン及びデンプン-セルロース複合体を、アミラーゼ分解等のデンプン分解酵素作用から保存する方法が提供される。天然デンプンは、サイズ剤、コーティング、スプレー、及び/又は接着剤に由来して、再生パルプ又は損紙中に存在し得る。再生紙又は損紙のパルピング及び紙の生産プロセスにおける後の工程の間に存在するセルロースとデンプンとの複合体若しくは凝集物が完全に破壊されると推測するよりも、実際には相当量のデンプンがかかる材料においてセルロースとの堅い結合に留まるというのが本発明の知見である。試験では、(汚染されておらず、アミラーゼを含まない)水中でのパルピング及び水を用いるいくつかの洗浄工程の後、繊維画分からそれ以上デンプンを回収することはできない。しかしながら、この試験では、アミラーゼが水に添加されると、非常に大量のデンプン及びデンプン分解産物が、その後も放出され、単なる機械的手段(パルピング、リファイニング又は洗浄等)によっては除去され得ないが、特定のアミラーゼ作用によって放出され得る、繊維との堅い結合において一部のデンプン画分が存在することを示している。この発見は、(酵素的な)アミラーゼ分解から保護されるデンプンが如何にして強度に寄与し得るかという説明を提供する。アミラーゼの存在及びデンプンのアミラーゼ分解を防止することにより、プロセスに存在し得る複合体化されていない又は遊離のデンプン(再生パルプ又は損紙においてパルプ化繊維から放出される)が保護されるのみならず、既存のセルロース-デンプン複合体もまた保護される。既存のセルロース-デンプン複合体は、リパルピング、混合、リファイニング及び他の抄紙プロセス等のプロセスにより機械的に除去されないか、又は少なくともセルロース-デンプン複合体中に含有されていないデンプンのように少なくとも容易に、若しくはそれと同程度までは除去されない天然デンプンを含有し得る。かかるセルロース-デンプン複合体は、新たなシートに非常に効率的に留まって、(実質的な)再生デンプンの画分の新たなシートへの組込みを確実にすることができる。示される二重処理戦略は、代替的に又は追加的に、上記プロセスにおいて遊離デンプンとして及び/又は上記プロセスにおいてこの新たなデンプンと繊維との間にin-situで新たな結合が作られる複合体化された形態で存在することができる、新たに添加されたデンプン(天然又はカチオン性)、例えば、パルパー又はリファイナにより除去されない新たに添加されたデンプンに対するかかるデンプン分解作用を減少及び/又は防止することができる。この方法では、新たなデンプン-繊維複合体が、上記プロセス中にin-situで形成され得る。示される二重処理戦略は、かかる新たに添加されたデンプン及び/又は新たに形成されたデンプン-繊維複合体をアミロース分解作用から保護することができる。
【0030】
本発明の方法による適切なアミラーゼ制御を伴う、工業適用におけるデンプン/カルシウム安定化におけるセルロース-デンプン複合体の存在を実験的試験において示した。
【0031】
示される本発明の方法の二重処理により、再生繊維(例えば、古紙/板紙、混合オフィス古紙、上質コート紙、損紙等に由来する繊維)と共に回復するデンプンを酵素分解から保護することができる。この保護は、かかる紙における多くの種類のデンプン、例えば、デンプンスプレー、接着剤、コーティング、サイズ剤、及び他のデンプン供給源に由来する天然デンプンに対して提供され得る。これらのデンプンは、典型的には、新たに形成されたシートにおいてセルロースに対して何らの活性な結合手段も有しておらず、望ましくないアミラーゼ分解によるかかる凝集物の解離を防止することによって、既存のデンプン-セルロース凝集物の保護からの利益を得ることができる。さらに、本発明の方法の二重処理によるアミラーゼ活性の排除は、低分子量の分子よりもより良好な強度を与えることができる高分子量のデンプン分子を保護することができる。カチオン性デンプンは、リパルピングプロセスにおいてセルロースに付着したまま留まって新たなシートを作製することができる。これらの分子は、より小さい、より低い強度を与える分子への分解からそれらの高分子量を保存し得ることから、上記プロセスにおけるアミラーゼの排除による利益を受けることができる。本発明の方法により分解から保護される再生デンプン、特にセルロース-デンプン複合体について、上記保護は、a)例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定される、約10~約10の範囲等の高い平均分子量を維持する、アミラーゼ分解から保護された再生デンプン、2)遊離高分子量デンプン、及び/又は3)セルロース-高分子量デンプン凝集物の少なくとも1つに対して提供され得る。本発明の方法によってアミラーゼ分解から保護されるセルロース-デンプン複合体中のデンプンの重量は、平均して、上記方法によって分解から保護されない凝集体中のものよりも大きい。
【0032】
セルロース-デンプン複合体(凝集物)は填料を含有してもよく、デンプンの分解を防止することは、新たなシートにおける填料歩留まりの増加及び灰の増加に寄与し得る。これらは、リパルピング後にそのまま留まる既存のデンプン-填料及び/又はデンプン-填料-セルロース複合体であり得る。これらの複合体においてデンプンをそのまま維持することは、強度及び填料歩留りに有益な可能性がある。デンプン-セルロース複合体が新たなシートへと運ばれ、それによって天然デンプンを新たなシートへと移送する同様の方法(通常、それ自身によっては非常に効率的に為されないもの)では、填料複合体はそのままで維持され、パルプ供給源として使用される再生紙から新たなシートへと効率的に移送され得る。これは、カルシウムの可溶化を防止する場合に、新たなシート中の灰分の著しい増加が本発明の抄紙方法によって如何にして得られるのかを、少なくとも部分的に説明し得る。
【0033】
より詳細には、再生パルプ、損紙、又はこれら両方における既存のデンプン及びセルロース-デンプン複合体を保存する方法は、二重処理戦略を含み得る。次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)又は他の酸化剤を使用して、抄紙プロセス等のプロセスからアミラーゼを特異的に減少又は排除することができ、上記プロセスにおいて、クロラミンを次亜塩素酸ナトリウム又は他の酸化剤と別々に使用して、上記プロセスにおける微生物汚染を減少又は排除するとともに、アミラーゼ産生を防止することができる。クロラミンはNaOClの遊離塩素又は他のハロゲン放出酸化剤の遊離ハロゲンと反応して、両方の活性物質の分解をもたらす。工程水中でのこれらの活性物質の混合を防ぐために、クロラミン及びNaOClの添加に関し、プロセスにおけるこれらの活性物質に関して別々の添加位置、プロセスにおける同一の位置からのこれらの活性物質の順次の添加、又はこれらの両方を使用し、上記プロセスにおいてクロラミン及びNaOClが混合されることを防止することができる。クロラミン添加(又は先のクロラミン添加及びその消耗後のクロラミンの再添加)の上流においてサブデマンド濃度でNaOClを添加することができ、ここで、遊離塩素はその添加位置から先に移動することはなく、又は工程水中で化学物質を離しておくために他の戦略を使用することができる。工程水中の遊離塩素又はmcaの検出限界を下回る、塩素として0.05ppm~0.1ppmの少量のNaOCl及びクロラミンを工程溶液中に混合又は意図せずに混合することを可能とし得る(例えば、5重量%以下)。工程溶液に添加されるクロラミンの量は、デンプン分解酵素を産生する可能性がある微生物を減少又は排除するのに有効な量であればよく、工程溶液に添加されるNaOClの量は、酵素の残存活性を排除するか、又は少なくとも減少するためにアミラーゼ制御を提供するのに有効な量であればよい。
【0034】
選択肢として、工程水から微生物学的なもの(microbiological)以外の還元剤を排除するために、「犠牲」酸化剤(例えば、過酸化水素(H)又は次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)が挙げられる)を追加的に使用することができる。この犠牲酸化剤処理を、本明細書に記載されるクロラミン処理と組み合わせて使用することができる。微生物汚染及びデンプン分解酵素の制御を含む二重処理を提供する、示される方法と組み合わせて使用する場合、犠牲酸化剤を、示される二重処理に使用されるものと同じ又は異なる種類の酸化剤に加えて使用することができる。犠牲酸化剤を、使用する場合には、クロラミンと同じ生産ラインに添加することできるが、必ずしも同時である必要はない。上述のように、クロラミンは、NaOClの遊離塩素又は他のハロゲン放出酸化剤の遊離ハロゲンと反応する傾向があり、プロセスにおいて両方が使用される場合、これらの活性物質は別々に使用されることが好ましい。
【0035】
本明細書で使用される「保存する(preserve)」又は「保存する(preserves)」、「保存(preservation)」若しくは「保存している(preserving)」等の変形は、1又は複数のデンプン分解酵素とデンプンとを含有する組成物におけるアミロース若しくはアミロペクチン等のデンプン又はその構成成分の分解の減少及び/又は防止を指す。相対的にみれば、同様のモニタリング期間についてクロラミンが存在しない同じ組成物と比較すると、デンプン分解酵素、デンプン、及びクロラミンを含有する組成物中のデンプンレベルを決定することによって減少量を計測することができる。デンプンレベルは、その目的に使用される従来の手段によりアッセイされ得る。デンプンにおける分子量分布及びデンプンミックスに対する種々の分子量の相対的な寄与に関する情報を与えることにより、デンプンの量に加えて質も説明するサイズ排除クロマトグラフィー等の他のモニタリング手段を使用することができる。酵素の活性及び/又は産生に対する効果のメカニズムは、特には限定されない。上記メカニズムは、デンプンの分解を触媒する酵素の効果を少なくとも部分的に減少又は防止することができ、上記酵素を産生する微生物それ自身の制御を必要としないか、又は排除しない。
【0036】
本発明で使用されるパルプは、任意好適な様々なパルプ又はパルプの組合せであってもよい。パルプは、硬材、軟材、又はこれらの組合せに由来し得る。パルプは、バージンパルプ、再生パルプ、又はこれらの組合せであってもよい。損紙、再生包装、古段ボール箱(OCC)、混合オフィス古紙(MOW)、上質コート紙、ベール混合紙、選別したオフィス用紙、脱インキグレード新聞印刷用紙、白損(news blank)、ボール紙、ポリマーを含むボール紙、ワックスボール紙、アルミ箔を含むボール紙、ベール段ボール、ワックス段ボール、ビールカートン古紙、裁落クラフト紙、漂白クラフト紙、わずかに印刷された漂白クラフト紙、印刷漂白クラフト紙、着色クラフト紙、茶クラフト紙、クラフト紙雑袋古紙、クラフト紙ポリ袋古紙、キャリアストック、混合封筒(新)、白封筒、プラスチック窓付き白封筒、着色封筒、プラスチック窓付き着色封筒、クラフト封筒、プラスチック窓付きクラフト封筒、印刷クラフト封筒、プラスチック窓付き印刷クラフト封筒、模造、坪上の模造、レーザプリント模造、色上、坪上の色上、スーパーレッジャー(superledger)、カーボン紙が挿入された帳簿、ノンカーボン感熱帳簿用紙、上白、混合タブカード、マニラタブカード、着色タブカード、マニラファイルフォルダーストック、ソフトホワイト、粉砕木材繊維、雑誌、ホットメルトを含む雑誌、本、ブックストック、ワックスカップストック、グラシン紙、無菌包装、固形繊維容器、又はこれらの任意の組合せ等の1又は複数の供給源からパルプを得ることができる。デンプンは、損紙、再生包装、古段ボール箱(OCC)、混合オフィス古紙(MOW)、上質コート紙若しくは他の印刷紙、又は他の示される再生紙等の再生紙、また一般にデンプンを含有する全ての再生セルロース性材料に存在し得る。パルプは、乾燥パルプの総重量ベースで少なくとも約1.0重量%の再利用資源(post-consumer content)、少なくとも約10重量%の再利用資源、少なくとも約25重量%の再利用資源、少なくとも約50重量%の再利用資源、少なくとも約60重量%の再利用資源、少なくとも約75重量%の再利用資源、少なくとも約90重量%の再利用資源、少なくとも約95重量%の再利用資源、少なくとも約99重量%の再利用資源、又は100重量%の再利用資源を含有し得る。
【0037】
パルプ供給源及び/又はパルプは、任意所望の量のデンプンを含有し得る。例えば、パルプ供給源及び/又はパルプは、少なくとも0.1kg/トン(Tonne)(1トンは1メートルトン、すなわち2200ポンドである)、少なくとも約0.5kg/トン、少なくとも約1kg/トン、少なくとも約5kg/トン、少なくとも約10kg/トン、少なくとも約15kg/トン、少なくとも約20kg/トン、少なくとも約40kg/トン、少なくとも約45kg/トン、少なくとも約50kg/トン、少なくとも約75kg/トン、少なくとも約100kg/トン、少なくとも約250kg/トン、約500kg/トン超、又は1若しくは複数のかかる量を含む範囲の量のデンプンを含有し得る。デンプンは、乾燥パルプ繊維の総重量ベースの所望の量でパルプ中に存在し得る。例えば、デンプンは、乾燥パルプ繊維の総重量ベースで少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.10重量%、少なくとも約0.50重量%、少なくとも約1.0重量%、少なくとも約5.0重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約50重量%、又は1若しくは複数のかかる量を含む範囲の量でパルプ中に存在し得る。例えば、デンプン含有量は、乾燥パルプ繊維の総重量ベースで約2.0重量%~約3.0%のウェットエンドカチオン性デンプンと、約2.0重量%~約5.0重量%のサイズ両面ストック(sizedouble sided stock)と、約1.0%~約4.0%の接着剤に由来するデンプンとを含む少なくとも10重量%であってもよい。パルプ及び/又は工程水中に存在するデンプンは、パルプに存在するデンプン(包装及び/又は板紙等の再生供給源に由来するデンプン等)の結果であってもよく、及び/又はパルプ及び/又は工程水に添加された追加のデンプンの結果であってもよい。
【0038】
パルプを処理する前、その後、及び/又はその間に任意の好適な又は望ましい方法を使用して、デンプンを計測することができる。デンプンの分子量(MW)分布を、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーにより計測することができる。本発明の方法は、バージン繊維包装工場という状況で、再生繊維及び損紙から回収されたデンプンの量及び平均分子量の増加を可能とし得る。デンプンの分子量の増加は、機械特性の改善の達成を補助する。パルプ中のアミロース、アミロペクチン、及び/又は全デンプンの平均分子量(ダルトン単位)は、少なくとも1.0×10ダルトン、少なくとも1.0×10ダルトン、少なくとも1.0×10ダルトン、少なくとも5.0×10ダルトン、少なくとも1.0×10ダルトン、少なくとも2.5×10ダルトン、少なくとも5.0×10ダルトン、少なくとも7.5×10ダルトン、又は少なくとも1.0×10ダルトンであってもよい。
【0039】
デンプンは、パルプ供給源及び/又はパルプに対して、内因性及び/又は外因性であってもよい。パルプに任意所望の時点、位置、又は速度で追加のデンプンを補充することができる。デンプンを任意の供給源又は供給源の組合せから得ることができる。任意の種類のデンプン又はデンプンの組合せを使用することができる。デンプンは、任意の望ましい量及び/又は相対量のアミロース及びアミロペクチンを含み得る。例えば、デンプンは、デンプンの総重量ベースで約5.0重量%~約50重量%のアミロース及び約50重量%~約95重量%のアミロペクチン、約10重量%~約35重量%のアミロース及び約65重量%~約90重量%のアミロペクチン、又は約20重量%~約25重量%のアミロース及び約75重量%~約80重量%のアミロペクチンを含有することができる。デンプンは、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、又はこれらの組合せを含有することができる。デンプンは、修飾されていても、修飾されていなくてもよく、又はこれらの組合せであってもよい。修飾されたデンプンとしては、例えば、1又は複数のヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチル化デンプン、デキストリン、酸処理デンプン、アルカリ処理デンプン、漂白デンプン、酸化デンプン、酵素処理デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化グリセロール架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、アセチル化酸化デンプン、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0040】
本発明により、パルプを含有する工程水は、非常に低いアミロース分解性細菌数及び/又は他の細菌を含む。アミロース分解性細菌は、パルプ乾燥重量(d.w.)1g当たり約0.1コロニー形成単位(cfu)未満、パルプd.w.1g当たり約10cfu未満、パルプd.w.1g当たり約1000cfu未満、パルプd.w.1g当たり約1.0×10cfu未満、パルプd.w.1g当たり約1.0×10cfu未満、パルプd.w.1g当たり約1.0×10cfu未満、パルプd.w.1g当たり約1.0×1010cfu未満、パルプd.w.1g当たり約1.0×1012cfu未満、パルプd.w.1g当たり約1.0×1015cfu未満で存在し得る。本質的には、本発明により、アミロース分解性細菌は、細菌がパルプ中のデンプンの著しい破壊を引き起こさないように制御される。例えば、本発明により、本来存在するデンプンの量(工程水に添加される場合)は、一度パルプから作製された紙では50重量%より多くは減少されない。言い換えると、開始パルプ中のデンプンの開始量の少なくとも50重量%が、パルプから生じる紙へと進むことができ、これは少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、例えば60重量%~99重量%であってもよい。
【0041】
本発明の方法は、アミラーゼ産生及び/又は活性(α-アミラーゼ産生及び/又は活性等)の制御又は防止を含み得る。アミラーゼの制御又は防止は、任意の好適な技法又は技法の組合せを使用して実施され得る。例えば、アミラーゼ産生は、微生物若しくは他のアミラーゼを産生する微生物を殺傷すること、又は微生物によるアミラーゼの産生を阻害することによって制御及び/又は防止され得る。抄紙プロセス又は他のプロセスに導入される再生紙、損紙又は他の材料における外因性アミラーゼ、例えば、α-アミラーゼは、NaOCl等の酸化剤の使用を含む示される二重処理の使用により不活性化され得る。産生されるか、又は別の方法で存在するアミラーゼ(α-アミラーゼ等)は、阻害され及び/又は分解され得る。制御又は防止によって、パルプ中及び最終的には得られる紙へのデンプンの残留が、例えば、上記段落で記載される量で達成される。クロラミン及び酸化剤(例えば、NaOCl)を用いる、示される二重処理戦略は、酸化剤(例えば、NaOCl)処理を含まない同様のプロセスにより作製される紙シートと比較してより高い強度を有する紙シートを提供することができる。代替として、酸化剤(例えば、NaOCl)の添加が上記プロセスに含まれる場合、酸化剤(例えば、NaOCl)処理を排除する同様のプロセスにより作製される紙シートと比較すると同レベルの製品強度を与えるため、添加される補強剤(strengthening aid)はより少量であってもよい。
【0042】
本発明の方法において、任意の好適なクロラミン又はクロラミンの組合せが使用され得る。クロラミンは、モノクロラミン若しくは他のクロラミン、又はそれらの任意の組合せを含有し得る。クロラミンを、任意の好適な供給源から得ることができる。例えば、テネシー州メンフィスのBuckman Laboratories International,Inc.より入手可能なBUSPERSE 2454製品、BUSAN 1215製品、及びBUCKMAN 1250製品を、クロラミンを形成する前駆体として使用することができる(漂白においてNaOClに対して1:1のモル比)。クロラミンを、任意の好適な方法に従って調製することができる。例えば、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす、米国特許第4,038,372号、同第4,789,539号、同第6,222,071号、同第7,045,659号、及び同第7,070,751号に記載される1又は複数の技法によりクロラミンを製造することができる。クロラミンは、工程水へと導入され得るストック溶液として形成されてもよい。クロラミンは、工程水においてin-situで形成されてもよい。クロラミンは、少なくとも1種のアンモニウム塩と少なくとも1種の塩素含有酸化剤とを反応させて形成されてもよい。クロラミンは、少なくとも1種のアンモニウム塩と次亜塩素酸ナトリウム若しくは次亜塩素酸カルシウム、又はこれらの両方とを反応させて形成されてもよい。例えば、アンモニウム塩は、臭化アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、又はこれらの組合せであってもよい。モノクロラミンは、アンモニウム塩と塩素とを1:1のモル比で反応させて産生され得る。
【0043】
任意の好適な酸化剤又は酸化剤の組合せが、示される本発明の二重処理方法においてデンプン分解酵素、例えばアミラーゼを減少又は排除するために使用される酸化剤として使用され得る。モノクロラミンと不相溶性の又は相溶性の酸化剤が二重処理方法において使用され得る。示されるように、NaOClはモノクロラミンと不相溶性であり、NaOClはモノクロラミンと反応する遊離塩素を放出し、そのようにしてモノクロラミンを排除する。使用され得るクロラミンと不相溶性の他の酸化剤は、次亜ハロゲン酸塩化合物(例えば、OBr)、ハロゲン化ヒダントイン(例えば、ブロモクロロー5,5-ジメチルヒダントイン、すなわちBCDMH)、漂白剤を含むDMH、漂白剤を含む尿素等のハロゲン安定化剤により添加されるハロゲン酸化剤である。例えば、本明細書にはNaOClが説明されるが、他のアルカリ金属の次亜ハロゲン酸塩又はアルカリ土類金属の次亜ハロゲン酸塩(これらの任意の組合せを含む)を使用することができる。次亜ハロゲン酸塩は、特定の材料に応じて液体又は固体微粒子形態で工程水に添加され得る。デンプン分解酵素を減少又は排除するのに効果的なモノクロラミンと相溶性の酸化剤が使用され得る。相溶性の酸化剤は、モノクロラミンと反応する遊離ハロゲンを放出しない。モノクロラミンと相溶性であり得る酸化剤は、二酸化塩素(ClO)、過酸化水素(H)、過酢酸(PAA)、過フッ素酸(PFA)又はその他等の過酸化物、及びこれらの任意の組合せであってもよい。
【0044】
図1は、クロラミンを用いたパルプを含有する工程水の処理のための101~106の工程を含むプロセス100として示される方法を示す。上記処理は、抄紙システムの1又は複数の段階及び/又は位置で行われ得る。例えば、上記処理は、ヘッドボックス等の容器で行われ得る。上記処理は、ヘッドボックス、ヘッドボックスの上流、ヘッドボックスの下流、又はこれらの任意の組合せにおいて行われ得る。1つの位置当たりの複数の添加点は入れ替え可能であってもよい。パルパーから機械までの間で共有される単一のウォーターループを含むシステムでは、添加点の例として以下の1又は複数、すなわち、パルパー(複数の場合がある)、パルパーフィル水、ダンプチェスト、ミキシングチェスト若しくは機械チェスト、ヘッドボックス、及び/又は白水を挙げることができる。ストック調製部及び機械部を規定する2つのウォーターループを含むシステムでは、添加点の例として以下の1又は複数、すなわち、ストック調製、パルパー(複数の場合がある)、パルパーフィル水、ダンプチェスト、ストックチェスト(複数の場合がある)、ストックループ工程水、抄紙機、ミキシングチェスト若しくは機械チェスト、ヘッドボックス、損紙、及び白水を挙げることができる。保管される損紙は、適切な処理を受け得る。複数のライン(短い/長い)を採用する場合、処理は少なくとも1つのライン、2つ以上のライン、又は全てのラインに維持され得る。
【0045】
パルプを処理するために使用されるクロラミン及び/又は前駆体の量は、一定であってもよく、又は変動可能であってもよい。標的残存クロラミン値又は範囲は、上記処理によって達成され得る。例えば、工程水は、パルプを含有する工程水中に約0.1ppm~約30ppm、約0.3ppm~約15ppm、約0.5ppm~約12ppm、約1.0ppm~約10ppm、約2.0ppm~約8.0ppm、約4.0ppm~約7.5ppm、約5.0ppm~約7.0ppmの残存クロラミン量を含み得る。上述のように、この量は、塩素当量とされ得る。また、これは、白水、及び/又は様々な濾過物、すなわち超清澄、清澄、及び混濁した濾過物に適用可能であろう。この残存クロラミン量は、24時間ベースの平均クロラミン量であってもよい。パルプに対するクロラミンのレベルは、乾燥パルプ1米トン(ton)(1米トンは2000ポンド(lbs.))当たり少なくとも約0.10ポンド(lb.)のクロラミン、乾燥パルプ1米トン当たり少なくとも約0.30ポンドのクロラミン、乾燥パルプ1米トン当たり少なくとも約0.75ポンドのクロラミン、乾燥パルプ1米トン当たり少なくとも約1.0ポンドのクロラミン、乾燥パルプ1米トン当たり少なくとも約1.25ポンドのクロラミン、乾燥パルプ1米トン当たり少なくとも約1.6ポンドのクロラミン、乾燥パルプ1米トン当たり少なくとも約2.0ポンドのクロラミン、乾燥パルプ1米トン当たり少なくとも約2.5ポンドのクロラミン、乾燥パルプ1米トン当たり少なくとも約3.0ポンドのクロラミン、又は乾燥パルプ1米トン当たり少なくとも約5.0ポンドのクロラミンであってもよい。パルプに対するクロラミンのレベルは、乾燥パルプ1トン(1トンは2200ポンド)当たり少なくとも約50gのクロラミン、乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約150gのクロラミン、乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約350gのクロラミン、乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約500gのクロラミン、乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約700gのクロラミン、乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約800gのクロラミン、乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約1.0kgのクロラミン、乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約1.25kgのクロラミン、乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約1.5kgのクロラミン、乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約3.0kgのクロラミン、又は乾燥パルプ1トン当たり少なくとも約5.0kgのクロラミンであってもよい。
【0046】
クロラミンによるパルプの処理は、継続的、実質的に継続的、断続的、周期的、バッチ、又はこれらの任意の組合せであってもよい。処理を任意所望の回数繰り返すことができ、一定の又は変動可能な期間により処理を分けることができる。パルプへのクロラミン及び/又は前駆体の添加は、継続的、実質的に継続的、断続的、周期的、バッチ、又はこれらの任意の組合せであってもよい。クロラミン及び/又は前駆体の添加速度は、一定であってもよく、又は変動可能であってもよい。クロラミン及び/又はその前駆体を、工程水に任意の手法、例えば、注ぐことにより、ノズルにより、噴霧により、ミスチングにより、カーテンにより、ウェヤーにより、ファウンテンにより、浸透により、混合により、注入により、又はこれらの任意の組合せにより添加することができる。工程水を任意の期間に亘り処理することができる。例えば、実質的に継続的に又は継続的に、例えば、少なくとも約6.0時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約36時間、又は少なくとも約7日間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、1日~6か月間、1日~12か月以上。添加されるクロラミンの量は、例えば、デンプン濃度、アミラーゼ濃度、微生物濃度、伝導性、酸化還元電位、濁度、パルプの量、陽イオン濃度、陰イオン濃度、カルシウムイオン濃度、揮発性脂肪酸(VFA)濃度、及びpHの種々の要因のいずれか又はそれらの組合せに応じて変化し得る。
【0047】
工程水は、クロラミンによるパルプの処理の間、一定又は変動可能なpHを有することができる。pHは、少なくとも約5.0、少なくとも約6.0、少なくとも約6.5、少なくとも約7.0、少なくとも約8.0、少なくとも約10.0、又は少なくとも約12.0であってもよい。工程水は、クロラミンによるパルプ処理の間、一定又は変動可能な温度を有し得る。例えば、上記温度は、少なくとも約5℃、少なくとも約10℃、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、少なくとも約60℃、又は少なくとも約75℃であってもよい。
【0048】
本発明では、工程水中でのカルシウムイオン形成の最小化が達成される。これは、抄紙プロセス及び/又はタンク/反応器の1又は複数の構成要素のファウリングを防止する。より重要なことは、カルシウムイオンの形成を最小化することにより、これが、カルシウム(例えば、炭酸カルシウム)がパルプと共に留まるか、また最終的には得られる紙製品中に存在することを意味し、さらに、これは工程水(パルプ除去後の)中のカルシウムイオン濃度が低く、そのためこのプロセスの廃水処理部(例えば、蒸解釜及び/又はBODシステム)においてカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングの制御(又は防止)をもたらすことを意味する。「沈殿」は、固体又は不溶物の沈降又は下降を指すことができ、「スケーリング」は堆積物を形成する具体的なプロセスを指すことができる。例えば、工程水中のCa2+イオンレベルは、約5000ppm未満、約2500ppm未満、約1200ppm未満、約1000ppm未満、約800ppm未満、約500ppm未満、約250ppm未満、又は約100ppm未満、例えば、10ppm~5000ppm、50ppm~3000ppm、100ppm~2000ppmであってもよい。これは、パルプが一旦実質的に又は全体的に工程水から除去される場合に特に当てはまり、このカルシウム濃度は、蒸解釜(複数の場合がある)又は他のBOD処理設備に入る直前等の廃水処理部に入る直前のものとなる。
【0049】
本発明の方法は、包装用シート/板紙を形成することを更に含むことができる。かかる包装用シート/板紙は、任意所望のデンプン含有量を有し得る。例えば、包装用シート/板紙は、包装用シート/板紙の少なくとも約1.0kg/米トン(1米トンは2000lbs.)、少なくとも約2.5kg/米トン、少なくとも約5.0kg/米トン、又は少なくとも約10.0kg/米トンのデンプン含有量を有し得る。本発明の方法を使用して作製される包装用シート/板紙及び他の紙製品の強度は、任意の好適な技法、例えば、スパン圧縮試験(SCT)、破裂試験、及び/又はリングクラッシュ/コンコーラ試験を使用して計測することができる。また、本発明は、本明細書に記載される方法を利用するシステム、また同様に本明細書に記載される方法によって生産される包装及び他の紙製品を提供する。本明細書に記載される方法は、好気性システム、嫌気性システム、又はこれらの任意の組合せにおいて行われ得る。
【0050】
上述のように、本発明は、同じプロセスで協調してクロラミン及び次亜塩素酸ナトリウムを使用する方法に関する場合がある。クロラミン(例えば、モノクロラミン)は、殺生物剤がアミラーゼレベルを非常に低く維持するために必要とされる正確なレベルの汚染制御を可能とすることから、高要求システムにおいて優れた費用対効果を提供することができる。直接試験では、酸化剤としてのクロラミンは、他の酵素に関しては活性であり得るが、アミラーゼ特異的に不活性化する活性を実質的には示さない。NaOClは、非常に高い処理速度であっても、高要求システムでは不十分な殺生物剤である。直接試験では、NaOClは、アミラーゼ(及び一般的な酵素)の不活性化に非常に有効である。
【0051】
これらの協調効果を提供するため、本明細書に示される用量でクロラミンを添加し、デンプン分解酵素を制御するために使用される酸化剤(NaOCl等)を、処理溶液における実際の塩素要求量の約10重量%~約50重量%、又は約10重量%~約45重量%、又は約15重量%~約50重量%、又は約20重量%~約40重量%の用量で添加することができる。「塩素要求量」は、工程溶液中の全ての塩素反応性化合物との反応において、そこに残存塩素を残さずに使い切られるであろう塩素の総量であり得る。クロラミン及び酸化剤(例えば、NaOCl)について本明細書に示される用量は、工程溶液において他の示される二重処理活性物質と反応していない工程溶液に添加される各活性物質の量であってもよく、したがって上記工程溶液を処理するのに利用可能である。酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を、水性形態で添加することができる。本明細書の方法においては、NaOClを希釈水性形態、例えば、最大約15重量%(例えば、約1重量%~約15重量%のNaOCl)又は他の濃度の塩素を含有し得る水性形態で使用することができる。
【0052】
本明細書の実施例における実験結果によって示されるように、アミラーゼを含有する塩素高要求溶液(high demand solutions)における実際の塩素要求量の10%~50%でのNaOClの添加が、アミラーゼ活性を減少又は排除するのに十分であったことが実験室の試験で示された。示されるように、NaOClがプロセスからアミラーゼを排除するのに使用され、クロラミンがプロセスにおいて汚染を排除し、アミラーゼの産生を防止するために使用される、二重処理戦略が提供され得る。プロセスにおける両処理の組合せは、両処理間で相乗作用が得られる、より一層効率的な処理をもたらす。クロラミンは、汚染及びアミラーゼを減少して低く維持し、NaOClは、まだ存在しているどんなアミラーゼ、例えばα-アミラーゼも排除し、そのようにしてデンプンの分解を防止し、汚染への栄養素の利用可能性を減少する。アミラーゼは、品質の劣る古紙(ぬれ、汚染、カビ)と共にもたらされる場合がある。クロラミンは、通常、入ってくるアミラーゼに対しては何らの影響もない。また、NaOClはプロセス内へと入る外因性アミラーゼも不活性化する。外因性アミラーゼの他の供給源は、未処理の抄紙機から持ち込まれる工程水、清浄水を置換する(部分的に)再利用された処理廃液である場合がある。アミラーゼの別の供給源は、モノクロラミンを用いても任意の汚染制御を与える(偶発的な)非常に長い滞留時間を有する、問題のある再生繊維ストックチェスト、脱インキ繊維ストックチェスト又は損紙チェストであってもよく、かかるチェストから使用されるストックに由来するアミラーゼを排除するためにNaOClを使用することができ、このようにしてアミラーゼによる工程水の更なる汚染(contamination)を防止する。
【0053】
図2は、工程201~210を含むプロセス200として示される、天然デンプンを含むパルプを含有する工程水のクロラミン及び次亜塩素酸ナトリウムを用いた示される二重処理に関する方法を示す。示されるように、クロラミン及び不相溶性の酸化剤、例えばNaOCl又は他の遊離ハロゲン放出酸化剤による工程水の処理方法において、クロラミン並びにNaOCl及び/又は他の不相溶性の酸化剤に由来する遊離塩素は、クロラミンが遊離塩素と反応して2つの活性物質の破壊をもたらすことから、工程水中に同時に存在しないことが好ましい。したがって、両方の活性物質は、加工処理を経る工程水中で互いに分離された(又は実質的に分離された)ままであることが好ましい。このクロラミンとNaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)の分離は、酸化剤として使用される場合、工程水中で種々の方法で達成され得る。NaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)及びクロラミンを、上記プロセスにおいて異なる位置で添加することができ、上記プロセスが進むにつれて両方の活性物質が消費されることから、これはNaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)及びクロラミンの混合を防止する。NaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)及びクロラミンを、それら各々の添加の間に時間遅延を伴って同じ位置から順次添加することができる。クロラミンがNaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)の添加前に工程水に添加される場合、先に添加されるクロラミンレベルが約5ppmを下回る、又は1ppmを下回る、又は検出限界を下回るようにNaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)の添加の遅延を制御することができる。NaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)が添加される位置から上流にクロラミン添加を適切に制御することにより、これらの位置におけるクロラミンの存在を防止することができる。再生繊維システムでは、典型的には、クロラミンの残存は非常に低い。クロラミン処理が停止された後、クロラミン残渣が存在する場合には急速に消滅する。クロラミン添加が停止された後の適切な(調整可能な)遅延の後、NaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)を投与することができる。示されるように、NaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)をサブデマンド濃度で添加することができ、遊離塩素はクロラミンが添加(又は再度添加)される前にその添加位置から先に移動しない。抄紙プロセスにおけるNaOCl(又は他の不相溶性の酸化剤)を添加する場所は、パルパー及び高密度チェスト、又は他の位置であってもよい。サブデマンド処理を適用することができ、または残渣が存在しないことから、NaOCl(又は他の不適合な酸化剤)の投与を停止した後、クロラミンの投与を再開する(例えば、すぐに再開する)ことができる。NaOCl(又は他の不適合な酸化剤)の添加の後に再開されるクロラミンの添加は、例えば、処理されるプロセスシステムの必要性に応じて任意であってもよい。クロラミンとNaOClとの空間的及び時間的の両方の分離が、工業システム上で行われた試験でうまく使用されたため、活性物質の相互の悪影響は検出されなかった。工業実験結果は、より低いクロラミン添加率、より抑えられた処理の総費用、新たなシートのより良好な強度特性、又はこれらの組合せを伴って、全体的な処理のより良好な効率を得ることができると示した。工業実験結果は、上記方法が、効率的な殺生物剤/クロラミン処理を提供するのみならず、上記プロセスにおいてアミラーゼを特異的に標的とするNaOClを用いる特異的二重処理アプローチを付加することを示す。
【0054】
また、上述のように、本発明は、抄紙に使用される工程水を加工処理し、加工処理されるパルプに由来するカルシウムを含有していた好気性又は嫌気性蒸解釜(複数の場合がある)におけるカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御又は防止する方法であって、抄紙プロセスにおいて、上記パルプが存在する場合に、上記工程水が、0.3ppm~15ppm等(又は先に言及される他の残存量)の残存クロラミン量を有するように、上記パルプを含有する工程水を、モノクロラミンを含むクロラミンを用いて連続処理することであって、ここで、上記パルプにカルシウムが存在することと、その後上記パルプから紙/板紙を形成することと、パルプ除去後に1又は複数の蒸解釜に対して上記工程水を加工処理することとを含む、方法にも関する。
【0055】
また、本発明は抄紙で使用される工程水を加工処理し、加工処理されるパルプに由来するカルシウムを含有していた生物学的酸素要求量減少(BOD)システムにおけるカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御又は防止する方法であって、抄紙プロセスにおいて、上記工程水が、上記パルプが存在する場合に0.3ppm~15ppm(又は先に言及される他の残存量)の残存クロラミン量を有するように、上記パルプを含有する工程水を、モノクロラミンを含むクロラミンで連続処理することであって、ここで、カルシウムが上記パルプ中に存在することと、その後上記パルプから紙/板紙を形成することと、パルプ除去後の上記工程水を上記BODシステムに対して加工処理することであって、それによりBODを減少することとを含む、方法にも関する。
【0056】
蒸解釜及び/又はBODシステムを含む上記方法では、パルプ除去後の工程水に存在するカルシウムイオン量は、(蒸解釜又はBODシステム設備に到達する工程水ベースで)5000ppm以下、2000ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、又は約10ppm~500ppmであり得る。
【0057】
追加的に又は代替的に、化学的酸素要求量(COD)を計測し、本発明により制御することができる。CODは、上記システムに対してBODが何であるかを決定するか、又は予測するためのより迅速な試験方法である。BOD試験は何日もかかるのに対し、COD試験は決定するのに数分から数時間で済む。使用され得る1つのCOD試験手順は、Standard Methods &#8211; For the Examination of Waterand Wastewater, 17th Ed., Am. Public Health Assoc. et al, pp. 5-12に記載される試験であり、化学的酸素要求量(5220B)/Open Reflux法である。このようにして、本発明によって、本発明の方法を使用し、COD要求量を制御又は減少することができる。本発明のプロセスを使用することによりデンプンがパルプ、最終的には紙に留まることから、本質的には、デンプン又はデンプンの破壊物のような細菌が餌とすることができる栄養素を減少することができる。
【0058】
蒸解釜又はBODシステム設備に入る際の工程水の残存クロラミン濃度は、かなり低く、例えば、0.3ppmを下回る(例えば、0.00001ppm以下、0ppm、0.01ppm以下、0.1ppm以下、0.001ppm以下)等であり得る。
【0059】
本発明により、パルプ及び工程水中のデンプンレベル(工程水からパルプが分離される直前、例えば、パルプがスクリーンに置かれる直前)と比べた、(抄紙プロセスの開始時に)工程水を含むパルプ中に見出される開始デンプンレベルは、50重量%以内、40重量%以内、30重量%以内、20重量%以内、10重量%以内、5重量%以内、又は1重量%以内である。換言すれば、本発明により、デンプンレベルはプロセスを通して保存され、細菌によって分解又は破壊されない。
【0060】
本発明により、パルプを除去した後の工程水のカルシウムレベルと比較した(抄紙プロセスの開始時に)工程水を含むパルプ中に見出される開始カルシウムレベル(例えば、溶解したカルシウム、Ca2+)のppmレベルの相違は、上述の工程水における開始カルシウムレベル対最終カルシウムレベルに関して、多くても500ppmの増加(+500ppm以下)、例えば、多くても250ppmの増加(+250ppm以下)、多くても100ppmの増加(+100ppm以下)、多くても50ppmの増加(+50ppm以下)であり、カルシウムレベルの減少、例えば、少なくとも50ppmの減少(-50ppm以上)、少なくとも100ppmの減少(-100ppm以上)、少なくとも250ppmの減少(-250ppm以上)、少なくとも500ppmの減少(-500ppm以上)、少なくとも1000ppmの減少(-1000ppm以上)、少なくとも2000ppmの減少(-2000ppm以上)、少なくとも3000ppmの減少(-3000ppm以上)であることがより好ましい。
【0061】
以下の実施例は、本発明の特徴を説明するために提示される。しかしながら、本発明は、これらの実施例に述べられる具体的な条件又は詳細に限定されないことが理解されるべきである。特に明記されない限り、実施例では、「トン」はメートルトンを指し、乾燥パルプの「1トン当たり」に基づく。
【実施例
【0062】
実施例1
本実施例は、本発明の1又は複数の優れた利益を説明する。抄紙に由来する廃水を(パルプ除去後に)受け取った廃液プラントにおいて、新たな嫌気性蒸解釜が使用されていた。本発明以前に、上記プラントは、カルシウムの沈殿及び/又はスケーリングによる嫌気性蒸解釜の性能の喪失を報告し、またカルシウムの沈殿/スケーリングによる上記蒸解釜の閉塞を報告した。上記プラントは、清掃(スケールの除去)するために蒸解釜を閉鎖しなければならなかった。これは、プラントの大幅な停止時間、及び蒸解釜を清掃するための予定外の費用をもたらした。プラントの管理者は問題の原因又は解決策がわからなかった。本発明者は、本発明が当該技術分野でうまくはたらくかどうかを確認するための実験的試験を提案した。蒸解釜に入った廃水となった工程水を処理した。具体的には、製紙工場のパルパーにおいて、また白水(WW)サイロの最上層(top ply)において300g/トンの量のクロラミン(主としてモノクロラミン)を用いて工程水(パルプを含有していた)を処理した。これを継続して行った。パルププロセスの開始時(ヘッドボックス前)における工程水中の(水に溶解した)カルシウムイオン濃度の量を計測し、また蒸解釜に入る直前のカルシウム濃度の量を計測し、カルシウムにおける相違を決定した。本発明を使用する以前に、カルシウムイオン濃度は2000ppmに増加した。これは非常に良くない、望ましくない出来事であった。一旦、2日~3日に亘って(継続的に)本発明の方法を使用し、カルシウム濃度の相違を再度決定すると、カルシウム濃度の変化は最終的にはマイナス2500ppmに低下した。換言すると、蒸解釜において溶解したカルシウムの量は、製紙工場におけるパルピング開始時のカルシウム量と比べて、2500ppm超低下した。これは、蒸解釜のファウリングを防止する、驚くべき好転であった。また、カルシウム含有量の減少により、生じた汚泥は嫌気性汚泥であり、化学廃棄物ではないものとすることができる。
【0063】
さらに、工程水(廃水)を生じるパルプ工場では、パルプは再生パルプ(再生包装を含む)であり、高いデンプン含有量を有していた。本発明の使用以前には、上述のように、パルプの加工処理の間、水と混合する際に初期デンプン含有量が著しく低下し、これによりパルプから形成されるウェットシートのデンプン含有量が著しく減少した。本発明者によって、デンプンはアミロース分解性細菌によって分解されていたことが発見された。本発明の方法を使用することにより、カルシウムの沈殿及び/又はスケーリングの制御を達成する以外に、本発明は、細菌を制御することによってデンプンの消費を制御した。その結果、かなりのレベルのデンプンの開始量が保存され、パルプから形成される紙へと取り込まれた。
【0064】
実施例2
本実施例は、また、本発明の1又は複数の優れた利益を説明する。嫌気性蒸解釜は、(パルプ除去後の)抄紙から廃水を受けた異なる廃液プラントにおいて使用されていた。本発明以前には、プラントは、カルシウムの沈殿及び/又はスケーリングによる嫌気性蒸解釜の性能の喪失を報告し、またカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングによる蒸解釜の閉塞を報告した。上記プラントは、清掃(スケールの除去)するために蒸解釜を閉鎖しなければならなかった。これは、プラントの大幅な停止時間、及び蒸解釜を清掃するための予定外の費用をもたらした。プラントの管理者は問題の原因又は解決策がわからなかった。本発明者は、本発明が当該技術分野でうまくはたらくかどうかを確認するための実験的試験を提案した。蒸解釜に入った廃水となった工程水を処理した。具体的には、製紙工場のパルパー希釈水において300g/トン~600g/トンの量、また分別前の希釈前原料(thick stock-before fractionation)において400g/トン~800g/トンの量、白水(WW)路(flume)において400g/トン~800g/トンの量のクロラミン(主としてモノクロラミン)で工程水(パルプを含有していた)を処理した。これを継続して行った。パルププロセスの開始時(ヘッドボックス前)における工程水中の(水に溶解した)カルシウムイオン濃度の量を計測し、また蒸解釜に入る直前のカルシウム濃度の量を計測し、カルシウムにおける相違を測定した。本発明を使用する以前に、カルシウムイオン濃度は4000ppmに増加した。これは非常に良くない、望ましくない出来事であった。一旦、2日~3日に亘って(継続的に)本発明の方法を使用して、カルシウム濃度の相違を再度測定すると、カルシウム濃度の変化は最終的にはマイナス700ppmになった。換言すると、蒸解釜におけるカルシウムの量は、製紙工場におけるパルピング開始時のカルシウム量と比べて、500ppm超低下した。これは、蒸解釜のファウリングを防止する、驚くべき好転であった。また、カルシウム含有量の減少により、生じた汚泥は嫌気性汚泥であり、化学廃棄物ではないものとすることができる。
【0065】
実施例3
α-アミラーゼを含むアミラーゼを含有する塩素高要求溶液にNaOClを添加する効果を評価するため、実験的試験を行った。
【0066】
以下に記載される実験では、MEGAZYME(商標)(アイルランド)から入手される合成α-アミラーゼ基質「RED-STARCH」、及びセルロースを含有する試料を含む複合製紙工場の工程水中においてこの基質の使用を可能とする開発された試験手順を使用してアミラーゼ活性を計測した。
【0067】
α-アミラーゼ活性について製紙工場の試料を試験するために開発された示される試験手順は、1gの粉末化RED-STARCH基質を50mLの0.5M KCl溶液(7.45g/100ml)に添加し、溶解するまで激しく振蕩しながら60℃まで温めることによる基質の調製を含む。調製した基質をそのまま(fresh)使用してもよく、又は使用まで冷蔵保存してもよい。アッセイでは、使用時に200倍に希釈される300mM CaCl・2HO溶液(39.2g/l)として濃縮アッセイ緩衝液を調製した。製紙工場で回収した任意の液体試料に対してアッセイを行うことができる。濁度の高い試料は、最終計測工程に支障をきたす可能性がある。したがって、濾紙を通して繊維を含有する試料を濾過し、高粘度試料に由来する液体を試料から液体を圧搾することによって回収することができる。試料に対してアッセイを行うため、アッセイ緩衝液30μl、RED-STARCH基質溶液3ml、及び試験試料溶液3mlを35ml容の試験バイアルに添加し、混合し、バイアル及び内容物を一定の温度(35℃~40℃)で30分インキュベートすることができる。エタノール(変性させた)又はメタノール10mlを添加し、激しく振蕩した後、濾紙を通して内容物を濾過する前にバイアル及びその内容物を2分間置くことにより反応を終了する。高分子量材料を濾過により除去することができる。10ml容のシリンジを使用して、0.22μm又は0.45μmの使い捨て濾過カートリッジに濾過した液体を通過させる。カートリッジを通過する液体を分光光度計のキュベットに入れ、反応溶液、及びそれと分けた反応ブランクの吸光度(OD)を、分光光度計を使用して計測する。エタノール又はメタノール10mlを最初に試験バイアルに添加することにより反応ブランクを調製し、その後アッセイ緩衝液30μl、red starch基質溶液3ml、及び試験溶液3mlを添加して、上述のように計測用試料を調製する。分光光度計は、Hach DR/890比色計(コロラド州、ラヴランド、Hach Company)でもよく、又は他の分光光度計装置でもよい。吸光度は、光学密度(OD)として計測され得る。RED-STARCH基質とα-アミラーゼとのインキュベーションに際して基質を脱重合し、反応混合物へのアルコールの添加に際して溶液中に残る低分子量の染色されたフラグメントを生じることができる。ODの計測値は、試験試料中のα-アミラーゼ活性に正比例する。多くの分光光度計は、対数目盛のOD(吸光度)単位で読む目盛りを有する。吸光度を計測する510nmの波長を選択すること、水をブランク(OD=0)として使用すること、また最大α-アミラーゼ活性試料を少量のBUZYME(商標)2508(ベルギー、Buckman Laboratories)を水に添加することによって調製すること、そしてこれをアッセイで使用する(計測され得る最大ODがおよそ25である)ことを含む、使用者が編集したプログラムをDR/890装置に入れることができる。このプログラムを用いて得られる範囲は非常に広く、全ての製紙工場試料に十分であり得る。この試験手順を使用することにより、典型的には製紙工場試料は、1~7の範囲の吸光度の値を有する。試料が最大読み取りを与える場合、水に希釈してより正確な値を決定することができる。結果を、実際の数字として、又は上記手順の最大読み取りである25の割合として表すことができる。下表1の結果は、最大読み取りの割合としてα-アミラーゼ活性に関する結果を示す。
【0068】
実施された試験では、酸化プログラムにより処理されていなかった塗工抄紙機(coated papermachine)パルパーフィル水タンクから採取された工程水を使用した。最初に、この工程水の実際の塩素要求量及びモノクロラミン(NHCl)要求量を決定した(表1)。この工程水に市販のα-アミラーゼを添加した(BUZYME(商標)2508、1/1000混合物比にて)。このミックスから30mlの試料を調製し、これに下表1に示されるサブデマンド量のNaOCl及びモノクロラミンを添加した。α-アミラーゼ基質であるRED-STARCH及び反応緩衝液が添加される前に、これらの試料を40℃にて15分間のインキュベーションに供した。40℃にて30秒間の接触時間の後、アルコール(変性エタノール又はメタノール)を添加することによって反応を停止し、各試料中の残存相対α-アミラーゼ活性を上記方法で記載されるように決定した(表1)。
【0069】
【表1】
【0070】
実験結果は、α-アミラーゼを含有する塩素高要求溶液に実際の塩素要求量の10%~50%でNaOClを添加することが、α-アミラーゼ活性を減少するのに効果的であったことを示す。モノクロラミンを同一の試料に添加してもα-アミラーゼ活性に対して何らの顕著な効果もなかった。
【0071】
実施例4
本実施例は、パルプ中でセルロース繊維と堅く結合したデンプンの存在を調べるために使用した実験的試験を説明する。化学的酸素要求量(COD)計測に基づく溶液中のデンプンの定量化に関する実験的試験を使用した。デンプンの定量化は、典型的にはヨウ素を使用して行われる。この方法を用いる問題は、正しい立体配置において、完全な(intact)高分子量のデンプンに対してのみ正しく機能するということである。低分子量のデンプン、糖オリゴマー又は個別の糖へのデンプン分子の様々な分解の程度は、ヨウ素では検出も計測もされない。この問題を克服し、デンプン及び分解産物を定量するためのよりロバストな(robust)方法を得るため、化学的酸素要求量(COD)計測を使用することができる。特に、デンプンが溶液中の唯一又は主なCOD寄与分子であることが既知である場合、この方法は、デンプンが分解される程度によって影響を受けない非常に的確で再現可能な数値を与えることができる。
【0072】
パルプ試料では、例えば、セルロース繊維と堅く結合したパルプ試料中にデンプンが存在していたかどうかを決定できることが重要であった。これを決定するため、実験室において繊維試料を調製するか、又は工業上の繊維試料をその現場で解析した。400ミクロンのスクリーン及び利用可能な濾紙の両方を使用して、スクリーン上の濾過によって異なる懸濁液からパルプを回収し、水道水に再懸濁した。パルプを再度濾過し、水道水に再懸濁した。このように調製したパルプの試料を、α-アミラーゼ活性に供し、適切なインキュベーション時間の後、再度濾過した。また、酵素によって処理されていない対照を再度濾過した。最後に、これら2つの最終(三次)濾過物、及び一次濾過物におけるCODを、セルロース繊維に結合したデンプンに関する評価基準として決定した。
【0073】
段ボール箱(1%繊維濃度)から調製した実験室試料について、以下の実験結果が得られた。
α-アミラーゼを含まない、濾過に際して一次濾過物を産生する未洗浄のパルプ:一次濾過物のCOD 500ppm超。このCODは、段ボール箱のパルピング後に溶液中に放出される有機材料である。このCODの多くはデンプン及びその様々な分解産物、並びにセルロース繊維に堅く結合していない他の有機材料で構成される。
α-アミラーゼを全く含有しない水に再懸濁した繊維の三次濾過物、この繊維を最終濾過の前に40℃にて1時間、懸濁液中に置いた:三次濾過物のCOD 70ppm未満。2回の洗浄サイクルの後、漉紙上に維持されるセルロース繊維材料からは、それ以上のCODは機械的にほとんど放出されなかった。
水に再懸濁された繊維の三次濾過物、最後のサイクル中、α-アミラーゼを懸濁液に添加し、濾過前に40℃にて1時間の接触時間を与えた:三次濾過物のCOD 500ppm超、最終繊維懸濁物へのα-アミラーゼの添加は、単純な機械的手段によって除去されないセルロース繊維からかなりの量の有機材料を放出する。基質としてのデンプンに対するアミラーゼの特異性に基づいて、繊維から放出されたCODはデンプンであったとするのが合理的である。
【0074】
最終試験では、繊維懸濁液から放出される実際のCODを与えるための酵素添加と共に添加されたCODについて、実際のCOD計測結果を補正した。
【0075】
アミラーゼ活性後に三次濾過物へと放出される実際量のCODは、一次繊維懸濁液からのCOD放出量に類似した。この観察に基づいて、再生板紙パルプ中の総デンプンの最大50%以上が、リパルピング等の単純な機械的作用によって破壊されないセルロース繊維との複合体中に存在し得ると言える。
【0076】
これらの実験的試験結果より、段ボール箱に存在する総COD/デンプンより、かなりの割合がデンプンとして繊維に密接に結合していることが明らかである。アミラーゼ分解からデンプンを保護することは、例えば、NaOCl及びクロラミンを使用する、示される二重処理法によって、デンプンが繊維と密接に結び付くことを維持し、段ボール箱に由来する再生パルプを用いて製造される新たなシートへのデンプンの効率的な移行を可能とする。試験した材料及び使用した実験条件では、これは、段ボール箱のデンプンのほぼ50%が繊維と共に移動することに相当する。
【0077】
実施例5
異なるグレードの紙の生産においてパルプに対してクロラミン及びNaOClを使用する二重処理方法の有効性を調査するため、商業的な製紙工場において産業試験を行った。試験中、二重処理を受けていないパルプから作られたシートについて得られる強度と同じくらいの強度に維持されるように、シートの形成前に、示される二重処理に供されたパルプから生産されたシートに対するサイズプレスデンプンの使用を調整した。これを行うため、試験中のサイズプレスデンプンの使用を、試験期間外で生産された同様の製品と比較した。また、試験中、填料の放出(filler evolution)(CaCO)等の他の変数を監視した。填料の増加はいずれも、通常、強度特性の低下をもたらすと予想される。試験中、サイズプレスにおけるデンプンの使用量は、異なるグレードの紙の生産において著しく減少し得る一方で、二重処理を受けずに生産されたシートとほぼ同じ紙強度を維持することができることが結果からわかった。さらに、二重処理を受けたパルプから生産されたシートについて填料歩留りの著しい増加が見られたのに対し、サイズプレスにおいてデンプンの使用量が減少したにもかかわらず、同時に、強度が維持されるか又はわずかに増加した。
【0078】
本発明は、任意の順序及び/又は任意の組合せでの以下の態様/実施形態/特徴を包含する:
1. パルプ中に存在するデンプンを保存する方法であって、
ヘッドボックスを有する抄紙プロセスにおいて、上記パルプを含有する工程水を、上記工程水がヘッドボックスで0.3ppm~15ppmの残存クロラミン量を有するように、モノクロラミンを含むクロラミンで処理することを含み、上記パルプ中に乾燥パルプ繊維の重量ベースで少なくとも0.001重量%の量のデンプンが存在する、方法。
2. 上記パルプを含有する工程水を上記クロラミンで連続処理することを含む、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
3. ヘッドボックスの代わりにラウンドフォーマーを有する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
4. 上記パルプが、再生包装、古段ボール箱(OCC)、混合オフィス古紙(MOW)、上質コート紙、又はこれらの任意の組合せに由来する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
5. 上記パルプが、少なくとも20kg/トンのデンプンを含有する、再生包装、古段ボール箱(OCC)、混合オフィス古紙(MOW)、及び/又は上質コート紙に由来する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
6. デンプン含有量が包装用シート/板紙1トン当たり少なくとも5kgの包装用シート/板紙を形成することを更に含む、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかにに記載の方法。
7. アミラーゼ、例えば、α-アミラーゼの産生が制御されるか、又は防止される、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
8. アミロース分解性細菌が、上記工程水中に乾燥パルプ1g当たり約1.0×1015cfu未満の量で存在する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
9. アミロース分解性細菌が、上記工程水中にパルプd.w.1g当たり約1.0×1010cfu未満の量で存在する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
10. アミロース分解性細菌が、上記工程水中にパルプd.w.1g当たり約1.0×10cfu未満の量で存在する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
11. 上記連続処理が少なくとも12時間に亘る、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
12. 上記連続処理が少なくとも24時間に亘る、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
13. 上記連続処理が少なくとも36時間に亘る、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
14. 上記連続処理が少なくとも7日間に亘る、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
15. 上記工程水中のCa2+イオンレベルが1200ppm未満である、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
16. 上記工程水中のCa2+イオンレベルが1000ppm未満である、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
17. 上記工程水中のCa2+イオンレベルが800ppm未満である、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
18. 上記処理がヘッドボックス、又は上記ヘッドボックスの上流で起こる、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
19. 上記クロラミンが上記工程水に導入されるストック溶液として形成される、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
20. 上記クロラミンが上記工程水中、in-situで形成される、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
21. 上記クロラミンが、少なくとも1種のアンモニウム塩と少なくとも1種の塩素含有酸化剤とを反応させて形成される、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
22. 上記クロラミンが、少なくとも1種のアンモニウム塩と、次亜塩素酸ナトリウム若しくは次亜塩素酸カルシウム又はこれらの両方とを反応させて形成される、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
23. 以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法を使用して製造される包装用シート/板紙。
24. パルプを含有する工程水の殺生物剤及び酸化剤による二重処理を含む抄紙プロセスにおいてパルプ中の微生物を制御するとともに、デンプンを保護する方法であって、上記殺生物剤がデンプン分解酵素を産生する可能性のある微生物を減少し、上記酸化剤がパルプのデンプン内容物に対するデンプン分解酵素の酵素活性を減少する、方法。
25. パルプ中に存在する天然デンプンを保存する方法であって、
抄紙プロセスにおいて、セルロース及び天然デンプンの複合体又は凝集物を含むパルプを含有する工程水を処理することを含み、ここで、上記処理がクロラミン及び酸化剤を別々に上記工程水に添加することを含み、処理された工程水中のデンプン分解酵素の含有量が、酸化剤を含まない工程水の処理に比べて減少している、方法。
26. デンプン分解酵素の含有量がアミラーゼの含有量、例えばα-アミラーゼの含有量である、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
27. 酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムである、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
28. 上記パルプが再生包装、古段ボール箱(OCC)、又は損紙に由来する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
29. アミラーゼ、例えば、α-アミラーゼの産生を防止する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
30. 上記次亜塩素酸ナトリウム又は他の酸化剤の添加が、上記工程水の実際の塩素要求量の約10%~約50%で上記次亜塩素酸ナトリウム又は他の酸化剤を添加することを含む、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
31. 上記工程水への上記クロラミン及び上記次亜塩素酸ナトリウム又は他の酸化剤の別々の添加が、上記工程水に上記クロラミンを添加することと、その後遅れて、上記工程水に上記次亜塩素酸ナトリウム又は他の酸化剤を添加することとを含む、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
32. 上記次亜塩素酸ナトリウム又は他の酸化剤の添加がパルパー又は高密度チェストで行われる、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
33. 以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法を使用して製造される包装用シート/板紙。
34. 抄紙に使用される工程水を加工処理し、加工処理されるパルプに由来するカルシウムを含有していた好気性又は嫌気性の蒸解釜におけるカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御又は防止する方法であって、抄紙プロセスにおいて、上記パルプが存在する場合に、上記工程水が0.3ppm~15ppmの残存クロラミン量を有するように上記パルプを含有する工程水を、モノクロラミンを含むクロラミンで連続処理することであって、ここで上記パルプ中にはカルシウムが存在することと、その後、上記パルプから紙/板紙を形成することと、パルプ除去後に1又は複数の蒸解釜に対して上記工程水を加工処理することとを含む、方法。
35. 抄紙で使用される工程水を加工処理し、加工処理されるパルプに由来するカルシウムを含有していた生物学的酸素要求量減少(BOD)システムにおけるカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御又は防止する方法であって、抄紙プロセスにおいて、上記パルプが存在する場合に、上記工程水が0.3ppm~15ppmの残存クロラミン量を有するように上記パルプを含有する工程水を、モノクロラミンを含むクロラミンで連続処理することであって、ここで上記パルプ中にはカルシウムが存在することと、その後、上記パルプから紙/板紙を形成することと、パルプ除去後に上記BODシステムに対して上記工程水を加工処理することであって、それによりBODを減少することとを含む、方法。
36. パルプ除去後に上記工程水中に存在する上記カルシウムイオンが5000ppm以下の量で存在する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
37. パルプ除去後に上記工程水中に存在する上記カルシウムイオンが2000ppm以下の量で存在する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
38. パルプ除去後に上記工程水中に存在する上記カルシウムイオンが1000ppm以下の量で存在する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
39. パルプ除去後に上記工程水中に存在する上記カルシウムイオンが500ppm以下の量で存在する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
40. パルプ除去後に上記工程水中に存在する上記カルシウムイオンが約10ppm~500ppmの量で存在する、以上又は以下の実施形態/特徴/態様のいずれかに記載の方法。
41. パルプ中に存在するデンプンを保存する方法であって、
ヘッドボックス又は丸網抄紙機、並びに再生供給源に由来するパルプを含有する、工程水を含む抄紙プロセスにおいて、計測されたカルシウムイオン濃度を得るために前記工程水のカルシウムイオン濃度を計測すること、並びに前記パルプを含有する工程水を、前記工程水がヘッドボックス又は丸網抄紙機で0.3ppm~15ppmの残存クロラミン量を有するように、モノクロラミンを含むクロラミンで処理することを含み、さらに前記パルプを含有する前記工程水を少なくとも1の酸化剤で処理することを含み、前記クロラミン処理及び前記酸化剤処理からなる二重処理の前後に、前記パルプ中に乾燥パルプ繊維の重量ベースで少なくとも0.001重量%の量の既存のデンプンが存在し、前記クロラミンが前記残存クロラミン量を維持するために前記工程水中の計測されたカルシウムイオン濃度に応じて少なくとも1か月間添加されることを含み、アミロース分解性細菌が前記工程水中にパルプ乾燥重量1g当たり1.0×1015cfu未満で存在するように、アミラーゼの産生が制御又は防止される、方法。
42. 前記パルプが、再生包装、古段ボール箱(OCC)、混合オフィス古紙(MOW)、上質コート紙、又はこれらの任意の組合せに由来する、前項1に記載の方法。
43. アミロース分解性細菌が、前記工程水中にパルプ乾燥重量1g当たり1.0×1010cfu未満の量で存在する、前項1又は2に記載の方法。
44. アミロース分解性細菌が、前記工程水中にパルプ乾燥重量1g当たり1.0×105cfu未満の量で存在する、前項1に記載の方法。
45. 前記工程水中のパルプ除去後Ca2+イオンレベルが800ppm未満である、前項1~4のいずれか一に記載の方法。
46. 前記二重処理がヘッドボックス、又は前記ヘッドボックスの上流で起こる、前項1~5のいずれか一に記載の方法。
47. 前記クロラミンが、少なくとも1種のアンモニウム塩と、次亜塩素酸ナトリウム若しくは次亜塩素酸カルシウム又はこれらの両方とを反応させて形成される、前項1~6のいずれか一に記載の方法。
48. 抄紙に使用される工程水を加工処理し、加工処理されるパルプに由来するカルシウムを含有していた好気性又は嫌気性の廃水処理部の蒸解釜におけるカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御又は防止する方法であって、抄紙プロセスにおいて、前記パルプが存在する場合に、前記工程水が0.3ppm~15ppmの残存クロラミン量を有するように前記パルプを含有する工程水を、モノクロラミンを含むクロラミンで連続処理し、さらに前記パルプを含有する前記工程水を少なくとも1の酸化剤で処理することであって、ここで前記パルプ中にカルシウムが存在し、その後、前記パルプから紙/板紙が形成され、パルプ除去後に前記工程水が1又は複数の蒸解釜に到達することを含む、方法。
49. 抄紙で使用される工程水を加工処理し、加工処理されるパルプに由来するカルシウムを含有していた廃水処理部の生物学的酸素要求量減少(BOD)システムにおけるカルシウムの沈殿及び/又はスケーリングを制御又は防止する方法であって、抄紙プロセスにおいて、前記パルプが存在する場合に、前記工程水が0.3ppm~15ppmの残存クロラミン量を有するように前記パルプを含有する工程水を、モノクロラミンを含むクロラミンで連続処理し、さらに前記パルプを含有する前記工程水を少なくとも1の酸化剤で処理することであって、ここで前記パルプ中にカルシウムが存在し、その後、前記パルプから紙/板紙が形成され、パルプ除去後に前記工程水が前記BODシステムに到達することであって、それによりBODを減少することを含む、方法。
【0079】
本発明は、文及び/又は段落に記載のような上記及び/又は下記のこれらの様々な特徴又は実施形態の任意の組合せを包含し得る。本明細書に開示される特徴の任意の組合せは本発明の一部とみなされ、組合せ特徴に関しては限定されないことが意図される。
【0080】
出願人らはこの開示における全ての引用文献の内容全体を具体的に援用している。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメーターが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値と好ましい下限値とのリストのいずれかとして与えられる場合、これは範囲が別々に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限又は好ましい値と、任意の範囲下限又は好ましい値との任意の組合せからなるあらゆる範囲を具体的に開示するものと理解されるものとする。数値の範囲が本明細書で言及されている場合、特に指定のない限り、範囲はその端点、並びに範囲内の全ての整数及び端数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を規定する場合に言及された特定の値に限定することは意図されない。
【0081】
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討、及び本明細書に開示される本発明の実施により当業者にとって明らかとなるであろう。本明細書及び実施例は例示的なものにすぎず、本発明の真の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲及びその均等物により示されることが意図される。
図1
図2