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特許6992042マイクロ流体アクチュエータを有する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】マイクロ流体アクチュエータを有する装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20220105BHJP
   F04B 45/047 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01N1/00 101R
F04B45/047 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019500308
(86)(22)【出願日】2016-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2016065694
(87)【国際公開番号】W WO2018006932
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2019-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】リヒター マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルト クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】コンガー ユーセル
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0134053(US,A1)
【文献】特表2013-522512(JP,A)
【文献】特表2003-512632(JP,A)
【文献】特開平10-132712(JP,A)
【文献】特開2014-037826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0212979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 37/00
F04B 43/00-47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置(1)内の流体通路(3)と周囲空気との間の流体接続を規定するハウジング開口部(2)を有するハウジングと、
前記流体通路(3)に連結され、そして、前記装置(1)内に配置され、前記周囲空気の少なくとも1つの成分を感知するように構成されたセンサー(4)と、
前記センサー(4)の下流に配置され、そして、前記装置(1)内に配置され、吸引ストロークにおいて、前記流体通路(3)を通って流体を吸い込み、それを前記センサー(4)に向かって移送し、そして、圧力ストロークにおいて、吸い込まれた前記流体を、前記流体通路(3)を通って前記ハウジング開口部(2)に向けて戻すように移送するように構成されたマイクロ流体アクチュエータ(5)と、
を備え、
前記センサー(4)は前記ハウジング開口部(2)から離間して配置され、前記マイクロ流体アクチュエータ(5)と前記ハウジング開口部(2)との間の前記流体通路(3)の容積は、前記マイクロ流体アクチュエータ(5)が、1回の吸引ストロークで搬送することができる、1回拍出量以下であり、
前記マイクロ流体アクチュエータ(5)の1回拍出量は、前記センサー(4)と前記ハウジング開口部(2)との間の流体通路部分(3a)の前記容積よりも少なくとも2.5倍大きく、
前記マイクロ流体アクチュエータ(5)は、キャリア(8)とそこに配置された可撓膜(6)とを有する膜アクチュエータであり、前記膜(6)は、作動していないアイドル位置においては前記キャリア(8)から離間し、作動時に、前記キャリア(8)に向かって移動するように、前記膜(6)は機械的にバイアスされている、
装置(1)。
【請求項2】
前記流体通路(3)が、前記ハウジング開口部(2)と前記マイクロ流体アクチュエータ(5)との間に伸張し、前記流体通路(3)、前記流体通路(3)に連結された前記センサー(4)、および前記マイクロ流体アクチュエータ(5)は、前記装置(1)の内部に対して密封された流体密封の配置を共に形成する、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記マイクロ流体アクチュエータ(5)の前記1回拍出量は、前記センサー(4)と前記ハウジング開口部(2)との間の前記流体通路部分(3a)の前記容積よりも少なくとも10倍大きい、請求項1または請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記センサー(4)は、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、亜酸化窒素(N2O)、揮発性有機化合物(VOC)、湿気、およびほこりの群からの少なくとも1つの周囲空気成分を感知するように構成されている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項5】
前記マイクロ流体アクチュエータ(5)は、可撓膜(6)を有する膜アクチュエータであり、前記膜(6)は、圧電式、電磁気式、または静電式、または電気活性ポリマーアクチュエータによって、または形状記憶合金を含む要素(7)によって作動可能である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項6】
前記マイクロ流体アクチュエータ(5)は、可撓二重膜(6)を有する膜アクチュエータである、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項7】
前記マイクロ流体アクチュエータ(5)は、キャリア(8)とそこに配置された可撓膜(6)とを有する膜アクチュエータであり、前記キャリア(8)を含む前記膜(6)は、0.50mm以下の高さを含む、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項8】
前記装置(1)が、流体の流れ方向に連続して直列に配置された2つ以上のセンサー(4a、4b、4c、4d)を含む、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項9】
前記装置(1)が、流体の流れ方向に並列に配置された2つ以上のセンサー(4a、4b、4c、4d)を含む、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項10】
前記装置(1)が、2つ以上のマイクロ流体アクチュエータ(5a、5b、5c、5d)を含み、各マイクロ流体アクチュエータ(5a、5b、5c、5d)はそれぞれのセンサー(4a、4b、4c、4d)と流体接続される、請求項8または請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
吸い込まれた前記流体内に凝縮した液体を集めるように構成される通気性フィルタ要素が、前記ハウジング開口部(2)と前記センサー(4)との間に配置されている、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
吸い込まれた前記流体内に凝縮した液体を集めるように構成される通気性フィルタ要素が、前記センサー(4)と前記マイクロ流体アクチュエータ(5)との間に配置されている、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記装置(1)はモバイル装置である、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項14】
前記モバイル装置は携帯電話であり、前記携帯電話に設けられた前記ハウジング開口部(2)はマイクロフォン開口部である、請求項13に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記モバイル装置は振動警報モータを有する携帯電話であり、前記マイクロ流体アクチュエータ(5)は可撓膜(6)を有する膜アクチュエータであり、前記膜(6)は前記振動警報モータによって作動可能である、請求項13または請求項14に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記モバイル装置は、携帯電話、またはスマートフォン、またはウェアラブル、またはモバイルコンピュータである、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記装置は、静止型装置である、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の特徴を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、ますます多くのセンサーが使用されている。これらのセンサーの多くは、CO2、湿度、温度、煙などの環境パラメータを測定する。しかしながら、これらのセンサーは、当然部屋のパラメータを測定するのではなく、それらが統合されているそれぞれの装置内のパラメータを測定する。そして、部分的にしか成功しない複雑なアルゴリズムによって、センサーの測定信号から室内空気のパラメータを概算する試みがなされる。
【0003】
CO、N2O、VOCなどのガス、水分含有量、および周囲のガス組成を検出することは、多くの人々の利益になる。
【0004】
さらに、ほとんどの人は、大気汚染ガス、細かいほこり、花粉などのアレルギー粒子をその場所で即座に感知したり、アレルギー物質や有害ガスについての早期警告を受けたりする。さらに、呼気アルコール、口臭および他の多くの匂いなどの匂いを検出することは興味深い。
【0005】
周囲のパラメータの測定のさらなる応用分野は、モバイル装置のいわゆるコンテキストアウェアネス(context awareness)である。この場合、装置自体は、スイッチオンまたはスイッチオフすることによって、あるいは音響信号音または振動する警告および送信機能などの機能を適応させることによって、あるいはバッテリ寿命を節約するために電力消費装置をオフにすることによって、直接の周囲に反応する。この例は、内外のスペースまたは航空機の認識、他の人の存在または持ち運びスタイル、例えば財布またはブリーフケースの中で体から離れている、あるいはシャツまたはズボンのポケットの中の体の近くである。
【0006】
言及されている多くの用途に、センサーが利用可能である。利用可能なセンサー(例えば、湿度用、揮発性有機化合物VOC、CO、またはNO)または有機金属原理、光学的原理または共鳴原理に基づくセンサーの多くは、フォームファクタおよびモバイル装置での利用のための適切な省コスト性を含む。センサーの原理に関しては、ガス、臭気または細かい塵埃がそれらのすべてにおいて携帯用装置内のセンサーに迅速かつ確実に移送されえないので、商業的使用は限られた範囲でのみ可能である。
【0007】
しかしながら、これは、意味のある速い測定結果をユーザに提供するために必要である。ガス測定のための信頼できるデータは、例えば街路沿いまたは大都市における大気汚染、またはアレルギーを患っている人々のための花粉マップなど、周囲の意味のあるガス概観を提供することができる。
【0008】
場合によっては、センサーは大型の独立型装置にインストールされる。場合によっては、マウスピースをこれらの装置と一緒に使用する必要があるが、これは多くの人には好まれない。追加の問題は、センサーを備えた独立型装置がディスプレイ機能および計算機能を必要とし、それが追加のコストを招くことである。
【0009】
そのような特殊な携帯用ガス測定装置は、国際公開第2015/104221 A1号により公知である。この参考文献は、ガスを検出するためのガス測定装置用のセンサーユニットに関する。可搬式ガス測定装置は、ガスおよび蒸気、特に工業環境における有毒ガスを監視するのに役立つ。一般に、それは分子レベルで分析物分子と相互作用する、受容体の物理化学的特性の変化に関するものである。これに関連して、国際公開第2015/104221 A1号は、耐圧測定チャネル、ガス入口、ガス出口、排気用ポンプユニット、ガスセンサー、ガスセンサー用加熱ユニットおよび再生モードと測定モードを有するセンサーユニットの組み合わせを記載している。
【0010】
冒頭で述べたように、国際公開第2015/104221 A1号により公知のガス測定装置は、周囲空気中のガスを測定することだけを目的とした特殊な装置である。そのような装置は良好で信頼できる測定結果を提供する。しかしながら、そのような装置は、ガスセンサー技術が十分に信頼できる結果を提供するために、それ自体を較正する間にある程度の時間を必要とする。したがって、そのような既知の装置は、特に周囲の状況が急速に変化する場合には、すぐに使用することができない。例えば、これは、装置が外側の領域から居間のような内側の領域に移動された場合に当てはまる。この場合、既知の装置は、いわば「順応させる」ためにある程度の時間を必要とし、それは数分まででありうる。
【0011】
しかしながら、ガスセンサーの速い応答時間は、例えば、ガスセンサーによる人の迅速な認識の場合、火災検知センサーの場合、または、人は建物に入っていることをいつ検知されるかを感知するために、携帯用電子機器の多くの用途にとって望ましい。この知識を考慮に入れると、ガス測定装置の製造業者は、迅速な信号を得るために、センサーをハウジング表面に直接取り付ける必要があるだろう。しかしながら、これはいくつかの理由で不経済であるかまたは好ましくない。
【0012】
一方では、ハウジング内の回路基板のうちの1つにセンサーを配置することは、組立要件および必然的に関連する組立コストを増大させる。さらに、ハウジングの表面に直接取り付けると、外部からの影響によってセンサーが損傷する危険性がある。他方、センサーがガス測定装置の外側に設置されている場合、ハウジングはもはやなだらかではないかもしれない。さらに、多くのガスセンサーおよび他の構成要素(例えば、回路基板、ディスプレイなど)をガス測定装置の空気入口の近くに取り付ける必要がある場合、十分な利用可能なスペースがない可能性がある。
【0013】
スマートフォンの標準として湿度センサーがすでに使用された。しかしながら、このセンサーは数分の範囲の長い応答時間を有していた。センサーは、スマートフォンのハウジングに位置する。スマートフォンのハウジングは、空気がセンサーを通って拡散するハウジング開口部を備えている。しかしながら、ハウジング開口部とセンサーとの間の移送機構としての拡散は非常に遅かった。
【0014】
現在、センサー開発者は応答時間の短縮に取り組んでいる。1つの解決策は、拡散経路、したがって拡散に必要な時間を短縮するために、センサーを開口部にできるだけ近づけることを提案する。
【0015】
さらなる解決策は、センサー信号の初期増加からソフトウェアによって最終値を予測することを提案する。したがって、さらなる進歩を推定するために、したがって時間を節約するために、初期センサー値で十分である。
【0016】
ただし、どちらの方法にも技術的な限界がある。したがって、20~30秒未満のセンサー応答時間を実現することはほとんど不可能である。
【0017】
現在、湿度センサーの他に、空気パラメータを測定するさらなるセンサーを携帯無線装置および他のウェアラブル装置(ウェアラブル、時計など)に統合する傾向がある。
【0018】
これら全てのセンサーにおいて、応答時間は今日まで十分に解決されていない重要なパラメータである。例えば、移動通信製造業者は、ユーザが値を要求した後に既に1~2秒以内にセンサー値の出力を要求する。しかしながら、この要件は、空気サンプルをセンサーに能動的に(すなわち、対流によって)ポンピングするマイクロアクチュエータまたはマイクロ流体アクチュエータなしでは十分に解決されえない。
【0019】
シリコンマイクロ膜ポンプがセンサーに空気を供給することを担うマイクロポンプを有するいくつかのモバイル装置がすでに提示されている。これにより、速い応答時間が実現されうる。しかしながら、この技術はいくつかの困難を伴う。
【0020】
例えば、この場合に使用されるマイクロポンプは一方向性である。すなわち、センサーに到達した後、ポンピングされる媒体は、異なる方法でモバイル装置を離れなければならない。空気が、(他の欠点を有する)モバイル装置に送り込まれるか、または装置から空気を戻すために第2のハウジング開口部が必要とされる。
【0021】
これに対する解決策も、双方向マイクロポンプの形で知られている。双方向マイクロポンプ(例えば、フラウンホッファーEMFTによって開発された3つの圧電アクチュエータを有するマイクロ蠕動ポンプ)は、吸込ストロークで空気を吸い込み、出口ストロークで前記空気を吸い出す。しかしながら、双方向マイクロポンプは一方向マイクロポンプよりも実質的に大きいので、それを製造することはより高価である。
【0022】
さらに、全ての機械的マイクロポンプおよびバルブは可動部分を含む。粒子が吸い込まれると、これらがマイクロバルブ内で詰まり、それがマイクロポンプの性能低下またはマイクロポンプの故障を招く可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、上述の問題を解決し解決するセンサーを有する装置、特にモバイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によれば、この目的は請求項1の特徴を有する装置によって解決される。
【0025】
本発明による装置は、とりわけ、装置内の流体通路と周囲空気との間の流体接続を規定する開口部を備える。好ましくは、開口部はハウジング開口部、すなわち装置のハウジング内の開口部である。開口部は、装置の内部を周囲と接続する、すなわち、流体、特に空気は、外部から前記開口部を通ってこの装置に流れ込むことができる。特に、開口部は、周囲を装置の内部に配置された流体通路と接続する。例えば、流路は細管、ホース等でもよい。流体通路は剛性でありうる。しかしながら、それは好ましくは可撓性でありうる。本発明による装置は、流体通路に連結され、周囲空気の少なくとも1つの成分を感知するように構成されたセンサーをさらに含む。センサーは流体通路に流体的に連結されている。すなわち、流体通路を通って流れる流体が少なくとも部分的にセンサーに流れるか、またはセンサーを通って流れるのであれば、センサーは流体通路内または流体通路に配置されうる。さらに、本発明による装置は、センサーの下流に配置されたマイクロ流体アクチュエータを含む。前記マイクロ流体アクチュエータは、吸引ストロークにおいて、流体通路を通って流体を吸い込み、それをセンサーに向かって移送し、圧力ストロークにおいて、吸い込まれた流体を、前記流体通路を通って再び開口部に向かって戻すように移送するように構成される。マイクロ流体アクチュエータは、流体を吸い込み(吸入ストローク)、吐き出しを(圧力ストローク)する手段である。そうすることで、マイクロ流体アクチュエータは、外部から開口部を通して流体通路内に流体(例えば、周囲空気)を吸い込む。流入する流体は、流体通路に連結されたセンサーに流れる。しかしながら、吸い込んだ後、マイクロ流体アクチュエータは、吸い込んだ流体を再び流体通路を通して逆方向に吐出するので、吸い込んだ流体は開口部を通って周囲に吐出する。言い換えれば、マイクロ流体アクチュエータは、流体通路内に位置する流体容積を前後に押す。本発明によれば、センサーと開口部との間の流体通路の容積(または流体通路内に配置された流体の容積)は、マイクロ流体アクチュエータが、1回の吸引ストロークで搬送することができる、1回拍出量以下である。すなわち、マイクロ流体アクチュエータは、1回の吸引ストロークで、流体通路内の必要量の流体容積を移動させることができ、それによって、外部から開口部を通して吸い込まれる流体は、開口部からセンサーまで全長にわたって移動する。
【0026】
流体通路は、開口部とマイクロ流体アクチュエータとの間に伸張し、流体通路、流体通路に連結されたセンサー、およびマイクロ流体アクチュエータは、モバイル装置(1)の内部に対して密封された流体密封の配置を共に形成することが考えられる。これは、流体通路内に位置する(マイクロリットルの範囲内の)小さな流体容量を変位させる際の正確さに有利に働く。本質的には、例えばモバイル装置の開口部を通して吸い込まれる周囲空気が、モバイル装置の内部に位置する装置内空気と混合しないように、流体密封の配置は残りのモバイル装置に対して密封されるべきである。それらがセンサーシステムの結果を偽造しない限り、特定の小さなガス漏れ速度は許容可能であろう。
【0027】
マイクロ流体アクチュエータの1回拍出量は、センサーと開口部との間の流体通路の容積より少なくとも2.5倍、または好ましくは少なくとも10倍大きいと考えられる。このようにして、マイクロ流体アクチュエータによって周囲空気を吸い込むと、十分な量の流体が流体通路を通って流れ、流体通路内に配置されたセンサーに到達することを確実にすることができる。
【0028】
実施例によれば、モバイル装置は携帯電話であり、携帯電話に設けられた開口部はマイクロフォン開口部である。したがって、マイクロフォン開口部はすでに携帯電話に存在するため、追加のデバイス開口部を設けることは必要ではない。
【0029】
さらなる実施例によれば、センサーは、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N)、亜酸化窒素(N2O)、揮発性有機化合物(VOC)、湿気、およびほこりの群からの少なくとも1つの周囲空気成分を感知するように構成されうる。すなわち、センサーは、例えば、そのような周囲空気成分が存在するかどうかを感知することができ、センサーは、この周囲空気成分の濃度も決定することができる。
【0030】
考えられる実施例によれば、マイクロ流体アクチュエータは、可撓膜を有する膜アクチュエータとすることができ、膜は、圧電式、電磁気式、または静電式、または電気活性ポリマーアクチュエータによって、または形状記憶合金を含む要素によって作動可能でありうる。流体は、膜のストローク運動によって運ばれる。膜は、ストローク動作(吸引ストロークおよび/または圧力ストローク)を実行し、流体を、流体通路を通して搬送するために、前記作動手段によって、そのアイドル位置から撓むことができる。このような単純な方法で構造化された膜アクチュエータは、例えば(マイクロ)膜ポンプと比較して有利である。なぜなら、ポンプは入口と出口を含み、それらは順にそれぞれ頃合いを見計らって入口弁と出口弁で開閉されなければならないからである。すなわち、ポンプは、一般に、入口側に流体通路を含み、出口側も流体通路を含む。対照的に、本発明による膜アクチュエータは、吸込ストロークでは流体が流入し、圧力ストロークでは流体が流出する単一の流体通路のみを備える。
【0031】
装置は振動警報モータを有する携帯電話であり、マイクロ流体アクチュエータは可撓膜を有する膜アクチュエータであり、膜は振動警報モータによって作動可能であることが考えられる。したがって、既に存在する振動警報モータを膜の操作に使用することができ、すなわち、別個の作動手段を省略することができる。言い換えると、これにより構造スペースが節約される。これは、今日の装置、特にモバイル装置では重要な基準である。
【0032】
実施例によれば、マイクロ流体アクチュエータは、可撓二重膜を有する膜アクチュエータでありうる。これにより、膜を作動させるときに膜に作用する機械的応力を単一の膜と比較して低く保つことができる。
【0033】
マイクロ流体アクチュエータは、キャリアとそこに配置された可撓膜とを有する膜アクチュエータであり、膜が、作動していないアイドル位置にあるときにキャリアから離間し、作動時に、キャリアに向かって移動するように、機械的にバイアスされている。例えば、膜はステンレス鋼膜のようなバイアスされた金属膜でありうる。バイアスのために、膜はアーチ状になっているので、そのアイドル位置では、それはキャリアから離れている。キャリアとバイアスされた膜との間に形成されたキャビティは、例えば、マイクロ流体アクチュエータの1回拍出量を決定しうる。膜の例示的な電気的動作の場合、膜は、結果として、膜がキャリアに向かって移動するように(例えば、正の)電圧を印加することによって作動させることができる。この場合、膜は圧力ストロークを実行し、マイクロ流体アクチュエータは、この場合、マイクロ流体アクチュエータから離れる方向に移動する流体を搬送する。電圧がもはや印加されない(または、例えば、負の電圧が印加される)場合、膜はその予めバイアスされたアイドル位置に戻る、すなわち、それはキャリアから離れる。したがって、流体を吸引する負圧が流体流路内に形成される。すなわち、マイクロ流体アクチュエータは吸引ストロークを実行し、この場合、マイクロ流体アクチュエータに向かって移動する流体を搬送する。
【0034】
マイクロ流体アクチュエータは、キャリアとそこに配置された可撓膜とを有する膜アクチュエータであり、キャリアを含む膜は、0.50mm以下の高さを有することが考えられる。このような高さは、マイクロ流体アクチュエータをハウジング、特にモバイル装置のハウジングに一体化するために有利である。
【0035】
実施例によれば、装置は、流れ方向に連続して直列に配置された2つ以上のセンサーを含みうる。直列配置とは、流体通路を通って流れる流体が時間的に連続してそれぞれのセンサーを通って流れるように、個々のセンサーが流れ方向に空間的に連続して流体通路内に配置されうることを意味する。個々のセンサーはそれぞれ、吸い込まれた流体の他のパラメータまたは成分を測定することができる。
【0036】
さらに考えられる実施例によれば、装置は、流れ方向に並列に配置された2つ以上のセンサーを含みうる。個々のセンサーを並列に接続することは、流体通路が分割され、少なくとも1つのセンサーが各分岐に配置されることを意味する。この場合、流体通路を通って流れる流体は、ほぼ同時に各センサーを通って流れる。並列接続では、すべてのセンサーの流動抵抗がほぼ同じであれば実用的である。センサーの並列接続と直列のセンサー接続とを組み合わせて、いくつかのセンサーを並列に直列に接続することもできる。
【0037】
この場合、装置が、2つ以上のマイクロ流体アクチュエータを含み、各マイクロ流体アクチュエータはそれぞれのセンサーと流体接続していることが考えられる。いくつかのセンサーが互いに直列または並列に接続されているという事実に関係なく、好ましくは、各個々のセンサーはそれ自身のマイクロ流体アクチュエータと関連付けられている。したがって、各センサーは独立して作動することができる。これは、例えばマイクロ流体アクチュエータの故障時の動作信頼性を高め、それでもなお作動可能な他のマイクロ流体アクチュエータは作動し続けることができる。
【0038】
吸い込まれた流体内に凝縮した液体を集めるように構成される通気性フィルタ要素が、開口部とセンサーとの間に配置されることが考えられる。例えば、これは活性炭フィルタ、疎水性フィルタ、静水圧帯電フィルタまたはテフロンフィルタでありうる。通気性フィルタ要素は、液体からセンサーを保護するために、凝縮液を集める通気性膜、例えば、小さい孔径および大きい「バブルポイント」を有する疎水性(例えば、テフロン被覆)フィルタ膜でありうる。
【0039】
代替的に又は付加的に、吸引された流体中に凝縮した液体を集めるように構成される通気性フィルタ要素が、センサーとマイクロ流体アクチュエータとの間に配置されることが考えられる。例えば、これは活性炭フィルタ、疎水性フィルタ、静水圧帯電フィルタまたはテフロンフィルタでもありうる。通気性フィルタ要素は、液体からセンサーを保護するために、凝縮液を集める通気性膜、例えば、小さい孔径および大きい「バブルポイント」を有する疎水性(例えば、テフロン被覆)フィルタ膜でありうる。
【0040】
実施例によれば、装置はモバイル装置である。考えられる実施例によれば、モバイル装置は、携帯電話、またはスマートフォン、またはウェアラブル、またはモバイルコンピュータでありうる。ウェアラブルは、身体に装着可能なモバイル装置、特にコンピュータ、例えば、時計、ヘッドバンドなどの形態のものである。モバイルコンピュータは、ラップトップ、ノートブック、またはネットブックとも呼ばれる。
【0041】
本発明のさらなる利点は、この「シングルストロークアクチュエータ」を用いて、測定されるべき空気が(マイクロポンプと比較して)極めて迅速にセンサーに吸引されうることである:電圧が非常に急速に(例えば1または数ミリ秒以内に)印加されると、アクチュエータもこの時定数で動く。それから、発生した負圧、または正圧は、流体をセンサー通路に「運ぶ」。通路またはフィルタ要素における空気の粘性摩擦だけが「減速」的に作用する。対応する実施例によって、1秒未満、または100ミリ秒未満で周囲空気をセンサーに移送することが可能である。
【0042】
この速度は、マイクロ膜ポンプではほとんど実現不可能であろう:例えば、0.1秒以内に5mm3のデッドボリュームを搬送したい場合、50mm3/sまたは3ml/minのポンプ速度を必要とするであろう。しかしながら、そのような搬送速度は、チップサイズひいては1回拍出量が大きい場合には、例えば、シリコンマイクロポンプでのみ実現可能である。しかしながら、これらのマイクロポンプは高価で経済的ではないであろう。
【0043】
圧電技術から、その耐用年数を損なわないようにするために、圧電膜変換器をあまり速く駆動してはならないことが知られている。この場合、電圧エッジは、モードが機械的固有周波数を超えて励起されるのに十分なほど速くはないことを考慮しなければならない。さもなければ、高い機械的応力が発生し、亜臨界亀裂伝播が誘発され、それが圧電効果を減少させ、そしてまた圧電セラミックの破損をもたらしうる。
【0044】
自然な共鳴は、膜および圧電の配置と弾性モジュールとに依存する。「通常の」マイクロポンプでは、固有振動数は10~30kHzの範囲である。この考えでは、1回拍出量は大きくなければならないが、閉塞圧力は大きすぎてはいけない。したがって、固有振動数は大幅に低く、1kHz以下になる可能性がある。長い耐用年数を保証するために、駆動電圧の立ち上がりエッジを著しく遅く、例えば10ミリ秒以上に選択することが必要である。この立ち上がり時間はマイクロアクチュエータを破損から保護する;ただし、応答時間が1秒未満の場合は、まだ十分に高速である。
【0045】
さらに、このマイクロアクチュエータでは、電圧信号を適切に変調することによって他の動作モードを選択することができる。例えば、測定されるガスがセンサー要素によって流れる流速は、アクチュエータ速度によって簡単に変えることができる。あるいは、パルス状ガス部分が生成されうる。あるいは、ガスは、第1の工程において、第1のセンサーに搬送され、第2の工程において、その下流に配置されたセンサーに搬送される。センサーの原理によっては、これが有利な場合がある。
【0046】
本発明の実施例は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、本発明によるモバイル装置の一実施例の上面図を示す。
図2図2は、図1に示す切断線II-IIに沿った、本発明によるモバイル装置の一実施例の断面図である。
図3図3は、本発明によるモバイル装置の一実施例の断面図を示す。
図4図4は、いくつかのセンサーの直列接続を有する本発明によるモバイル装置の一実施例の断面図を示す。
図5図5は、いくつかのセンサーの並列接続を有する本発明によるモバイル装置の実施例の上面図を示す。
図6図6は、いくつかのセンサーの並列接続を有する本発明によるモバイル装置のさらなる実施例の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図面を参照して、モバイル装置に基づいて実施例を以下に説明する。実施例では、装置はセンサーノードなどの固定装置でありうるので、それぞれの説明は固定装置にも適用される。例えば、静止センサーノードは、独立した方法でバッテリと共に機能してもよく、センサーデータを記録し、それを通信してもよい。
【0049】
図1は、開口部2を有する本発明によるモバイル装置1の実施例を示す。開口部2は、モバイル装置内の流体通路と周囲空気との間の流体接続を規定するハウジング開口部である。
【0050】
図2は、図1に示す断面線II-IIに沿ったモバイル装置1の断面図である。図2において、モバイル装置1のハウジング20が認識されうる。ハウジング20は開口部2を含む。
【0051】
モバイル装置1には、上述した流体接続部3が配置されている。センサー4は流体通路3に連結されている。センサー4は、周囲空気の少なくとも1つの成分を感知するように構成されている。
【0052】
また、モバイル装置1には、マイクロ流体アクチュエータ5が配置されている。マイクロ流体アクチュエータ5も流体通路3に連結されている。マイクロ流体アクチュエータ5は、流体通路3内でセンサー4の下流に配置されている。言い換えれば、センサー4は、流体通路3に流体的に連結され、開口部2とマイクロ流体アクチュエータ5との間に配置されている。
【0053】
したがって、流体通路3は、開口部2とセンサー4との間に伸張する第1の部分3aと、センサー4とマイクロ流体アクチュエータ5との間に伸張する第2の部分3bとを含む。
【0054】
マイクロ流体アクチュエータ5は、吸引ストロークにおいて、流体通路3を通って流体を吸い込み、それをセンサー4に向かって移送するように構成される。さらに、マイクロ流体アクチュエータ5は、圧力ストロークにおいて、流体通路3内に位置する吸い込まれた流体を、流体通路3を通して開口部2に向けて戻すように構成されている。
【0055】
センサー4は、開口部2から離間して配置されている。流体の流れの経路をできるだけ短く保つために、センサー4は開口部2にできるだけ接近して配置される既知の解決法と比較して、本発明によるセンサー4の間隔を空けた配置は、モバイル装置1内のほぼ全ての位置にセンサー4を配置する可能性を提供する。特に、これは、センサーシステムを設置するための無限のスペースを提供しないので、これまでより平坦なモバイル装置1に関して望ましい。
【0056】
本発明によれば、センサー4と開口部2との間の流体通路3の第1の部分3aの容積は、マイクロ流体アクチュエータ5が1回の吸引ストロークで搬送することができる1回拍出量と同じかそれより小さい。
【0057】
流体通路3は、開口部2とマイクロ流体アクチュエータ5との間に伸張している。流体通路3、流体通路3に連結されたセンサー4、およびマイクロ流体アクチュエータ5は、モバイル装置(1)の内部に対して密封された流体密封の配置を共に形成する。すなわち、流体通路3、センサー4およびマイクロ流体アクチュエータ5は、密封方式で、特に気密に具体化されている。
【0058】
図2および図3に示す実施例において、マイクロ流体アクチュエータ5は、膜アクチュエータとして構成されている。マイクロ流体アクチュエータ5は、可撓膜6を含む。膜6は、圧電方式、電磁方式、静電方式、または電気活性ポリマーアクチュエータによって、または形状記憶合金を含む要素によって、作動させることができる。
【0059】
それに応じて構成された作動手段7は、膜6を撓ませる目的で膜6に配置されている。図から認識できるように、膜6は、一方の面22がキャリア8に配置されている。例えば、キャリア8は、シリコンチップとして、または金属体もしくはポリマー体として構成することができる。
【0060】
特に、膜6は、その横方向外側部分23においてキャリア8に配置されている。上面図では、膜6は円形または長方形、特に六角形を含むことができる。膜6は、取り付け手段によって、例えば適切な接着剤によって、キャリア8上に取り付けられるか、または固定されうる。
【0061】
図に示された実施例では、膜6は、機械的バイアスの下でキャリア8上に配置されている。すなわち、バイアスのために、膜6は凹状のアーチ(キャリア8から離れる方向に向けられている)を含む。その結果、このアーチの領域において、キャリア8と膜6との間にキャビティ24が形成される。このキャビティ24の容積は、マイクロ流体アクチュエータ5の1回拍出量を基本的に決定する。
【0062】
図2および図3において、矢印21で示されるように、マイクロ流体アクチュエータ5は基本的に2つの方向に動くことができる。作動していないアイドル位置では、マイクロ流体アクチュエータ5は、膜6がバイアスされて、上述のキャビティ24が構成されている図示の位置に配置されている。したがって、このアイドル位置では、膜6はキャリア8から離間している。
【0063】
ところで、作動手段7は膜6を作動することができる。例えば、作動手段7は、電圧を印加すると膜6を下方に、すなわちキャリア8に向かって屈折させる圧電素子でありうる。したがって、膜6を作動すると、膜6がその底面22でキャリア8に接触するまで、膜6はキャリア8に向かって移動する。
【0064】
そうすることで、マイクロ流体アクチュエータ5は、この時点でキャビティ24内に位置する流体の容積を排出させる。次いで、この流体容量は流体通路3を通って移送され、開口部2から周囲に出る。したがって、この場合、マイクロ流体アクチュエータ5は圧力ストロークを実行し、吐出された流体容量はマイクロ流体アクチュエータ5の1回拍出量にほぼ対応する。
【0065】
ところで、作動手段7は、膜6を反対方向、すなわちキャリア8から離れる方向に戻すことができる。バイアスされた膜6の場合には、作動手段7がもはや膜6に作動力を加えなくても十分である。その後、膜6は、機械的なバイアスによってその元の初期位置に戻る。
【0066】
したがって、この場合、膜6はキャリア8から離れる方向に移動し、したがって、また、膜の底面22とキャリア8との間に形成されるキャビティ24を増大させる。流体密封の配置(マイクロ流体アクチュエータ5、センサー4、流体通路3)内に負圧が形成され、流体が周囲から開口部2を通して吸い込まれる。したがって、この場合、マイクロ流体アクチュエータ5は吸引ストロークを実行する。
【0067】
流体通路3、すなわち、前部分3a、後部分3b、および流体通路3のセンサー4の周囲を流れる部分3cは、一定の容積を含む。この容量は、全デッドボリュームとも呼ばれる。
【0068】
本発明によれば、マイクロ流体アクチュエータ5の1回拍出量は、少なくとも全デッドボリュームと同程度に大きい。しかしながら、マイクロ流体アクチュエータ5の1回拍出量が少なくとも前方流体通路部分3aの容積と同じ大きさであれば、既に十分でありうる。したがって、マイクロ流体アクチュエータ5の吸引ストロークは、開口部2に吸い込まれた流体がちょうどセンサー4に到達するように、前方流体通路部分3aを通って十分な量の容積を搬送するだけである。
【0069】
確実に、吸い込まれた流体をセンサー4の周囲に流させるために、本発明の実施例は、マイクロ流体アクチュエータ5の1回拍出量が、センサー4と開口部2との間の流体通路3の容積より少なくとも2.5倍大きいことを規定する。すなわち、前方流体通路部分3aよりも大きい。
【0070】
図2に示す実施例では、センサー4を流体通路3に配置することによって、センサー4は、流体通路3に流体的に連結される。図3に示す実施例では、センサー4は、センサー4を流体通路3にではなく、流体通路3内に配置することによって、流体通路3に流体的に連結される。
【0071】
図3から認識されるように、マイクロ流体アクチュエータ5は、キャリア8の底面と膜6の上面との間、または膜6に配置された作動手段7の間に延びる高さHを有する。有利な実施例によれば、マイクロ流体アクチュエータ5は、0.50mm以下の高さHを含む。
【0072】
図4は、本発明によるモバイル装置1のさらなる実施例を示す。ここで、モバイル装置1は、流れ方向(吸引方向および吐出方向の両方向)に連続して直列に配置された3つのセンサー4a、4b、4cを備える。
【0073】
図5はさらなる実施形態を示しており、モバイル装置1は流れ方向に並列に配置された4つのセンサー4a、4b、4c、4dを含む。この実施例では、モバイル装置1は、吸い込まれた周囲空気と共にいくつかのセンサー4a~4dの並列接続を供給するように構成されたマイクロ流体アクチュエータ5を備える。
【0074】
図6はさらなる実施例を示しており、ここで、モバイル装置1は4つのマイクロ流体アクチュエータ5a、5b、5c、5dおよび4つのセンサー4a、4b、4c、4dを備える。ここで、各マイクロ流体アクチュエータ5a、5b、5c、5dは、それぞれのセンサー4a、4b、4c、4dと流体接続している。例えば、4つのセンサー4a~4dのそれぞれは、特定の周囲空気パラメータを分析することができる。したがって、センサー4a~4dは、それぞれ関連付けられたマイクロ流体アクチュエータ5a~5dを別々に駆動することによって要求に基づいた方法で機能することができる。
【0075】
本発明によるモバイル装置1の実施例が構造的に説明された後、以下に作動モードが説明される。
【0076】
例えば、センサー4は、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N)、亜酸化窒素(N2O)、揮発性有機化合物(VOC)、湿度またはほこりを測定するためのセンサーでありうる。この目的のために、センサー4は周囲空気で周回されなければならない。
【0077】
例えば、モバイル装置1は、既存のマイクロフォン開口部2を有するスマートフォンでありうる。このマイクロフォン開口部2を通じて、周囲の空気が吸い込まれうる。この目的のために、流体管路3がマイクロフォン開口部2に配置されている。この流体管路3はセンサー4に通じている。
【0078】
開口部2からセンサー4への周囲空気の拡散は比較的長い時間がかかる。したがって、本発明は、開口部2を通して周囲空気を吸い込むマイクロ流体アクチュエータ5を提供する。かくして、吸い込まれた周囲空気はセンサー4にかなり速く流れ、他方でセンサー4はより迅速に信号を生成することができる。したがって、拡散原理で機能する既知の解決策は対流に置き換えらる。
【0079】
これにより、マイクロ流体アクチュエータ5は、開口部2を通して、周囲空気を吸引する吸引ストロークを実行する。本発明によれば、流体通路3の容積は、マイクロ流体アクチュエータ5の1回拍出量よりも小さい。したがって、開口部2を通して吸い込まれた周囲空気は、前部流体通路部分3aを通り、センサー4に隣接する部分3cを通り、後部流体通路部分3bを通ってマイクロ流体アクチュエータ5のキャビティ24内に流れる。従って、吸い込まれた周囲空気は、センサー4の周囲を流れる。
【0080】
続いて、吸い込まれた周囲空気は、マイクロ流体アクチュエータ5によって開口部2を通して吐出される。この目的のために、マイクロ流体アクチュエータ5は、吸い込まれた空気が逆方向に流体通路3を通して流れ、開口部2を通って周囲に放出される圧力ストロークを実行する。
【0081】
したがって、本発明は、マイクロポンプが空気を吸い込み、引き続いて、吸い込まれた空気をモバイル装置に吐出するという従来技術の問題を解決する。これに対し、本発明のモバイル機器1では、マイクロ流体アクチュエータ5が流体通路3を通して流体容量を吸い込み、この流体通路3を介して吸い込んだ流体容量を吐出する。言い換えれば、マイクロ流体アクチュエータ5は、流体通路3内で流体容量を前後に押す。
【0082】
以下において、本発明の実施例は、言い換えれば要約される。
【0083】
本開示の1つの構成要素は、周期的に(前後に)空気量を移動させることができ、それに1つ(またはいくつか)のセンサーおよび流管が接続されている平膜アクチュエータである。
【0084】
ホース内およびセンサーまでの流体アダプタ内のデッドボリュームは、アクチュエータが移動する可能性がある(空気)量よりも小さくする必要がある。
【0085】
例えば、アクチュエータは、以下に記載の方法で駆動されうる:

・電気的な圧電
・単形性の曲がるコンバータ
・付着されたPZTセラミック
・薄い層(AIN、酸化亜鉛…)
・厚い層PZT
・ 電磁気的
・ 静電気的
・ 電気活性ポリマーアクチュエータによる
・ 熱的、たとえば、形状記憶合金による
・ 膜を駆動するために、振動警報のためのモータを有する
【0086】
考えられる実施例は、圧電膜変換器5である。同じことが非常に平らな方法で構築されてもよく(移動無線装置の前提条件-0.5mm未満のキャリアを有する設計高さ)、それでも数mm3の大きな1回拍出量を移動させてもよい。センサー4に新鮮な空気を供給するための、圧電膜アクチュエータ5を有する図2を参照されたい。
【0087】
ホースの代わりに、剛体管が、流体通路3として用いられうる。
【0088】
全ての流体接続は、開口部2からの空気が吸い込まれるように密封されるべきである。また、いくつかのセンサー4は(好ましくは直列に)配置されてもよい。
【0089】
全てのセンサー4の流動抵抗がほぼ同じである場合、並列配置は意味がある。
【0090】
また、いくつかのアクチュエータ5は、例えば各センサー4のうちの1つを使用することができる。
【0091】
必要に応じて、電圧を低く保つために二重膜を使用することもできる。
【0092】
可能な限り少ないコーナーとデッドルームが存在するように流路を設計する必要がある。この場合、分散とキャリーオーバーがほとんど発生しないことが保証される。最良の場合では、マイクロ流体アクチュエータ5の1回拍出量は、(吸引開口部2からセンサー4までの)デッドボリュームと同じくらい大きくなければならない。実際には、1回拍出量は一定量だけデッドボリュームよりも大きくされる。
【0093】
吸引開口部2とセンサー4との間、またはセンサー4とマイクロ流体アクチュエータ5(例えばマイクロポンプ)との間には、凝縮液を通さない通気性膜を配置してもよく、それは、センサー4を液体から保護するために、小さな孔径および大きな「バブルポイント」を有する、(テフロン(登録商標)でコーティングされた)疎水性フィルタ膜である。設計によれば、この膜は、流動抵抗を克服しなければならない。さらに、供給に圧力降下がありうる。
【0094】
したがって、マイクロ流体アクチュエータ5は、また、

・一定のブロッキング圧力を発生させることができ、
・そして、1回拍出量と全デッドボリューム(流管3、センサー4、流体アダプタ5およびアクチュエータチャンバ24の容積)との間の一定の圧縮比を満足され、

なければならない。
【0095】
これを確実にするために、マイクロ流体アクチュエータ5は、アクチュエータチャンバ24のデッドボリュームを最小にするために、バイアス法(フラウンホッファー EMFTによって特許を取得されている)によって適用されることが好ましい。
【0096】
空気サンプルを吸い込む前に、膜アクチュエータ5は(例えば、正の電圧を印加することによって)作動され、その下方位置に移動する。現在、デッドボリュームは最小である。
【0097】
次に、アクチュエータ5を(例えば、電圧を切ることによって、または適切な負電圧を印加することによって)その上方位置に移動させる。そうすることで、負圧がアクチュエータチャンバ24内に発生し、周囲空気が急速に吸い込まれてセンサー4に供給され、それによって空気パラメータの測定が行われうる。
【0098】
数値例:

アクチュエータ1(直径:9.6mm)

・サイズ:10×10×0.5mm3
・膜の直径:9.6mm
・膜の厚さ:30μm
・圧電の厚さ:60μm
・d31:250m/V
・駆動電圧:+90/-24V

結果として得られるストローク・データ

・1回拍出量:2.35mm3
・ブロッキング圧力:14kPa
【0099】
アクチュエータ2(直径:14.6mm)

・サイズ:15×15×0.5mm3
・膜の直径:14.6mm
・膜の厚さ:40μm
・圧電の厚さ:80μm
・d31:250m/V
・駆動電圧:+120/-32V

結果として得られるストローク・データ

・1回拍出量:9.4mm3
・ブロッキング圧力:11kPa
【0100】
開口部からセンサーのデッドボリューム:

ホースまたは管

・長さ:10mm
・内径:0.2mm
・デッドボリューム=lr2π
=10mm×(0.1mm)2×3.14=0.32mm3

流体アダプタ

・長さ:2mm
・内径:0.2mm
・デッドボリューム=lr2π
=2mm×(0.1mm)2×3.14=0.06mm3

センサーハウジング

・長さ:1.5×1.5mm2
・高さ:0.2mm
・デッドボリューム=0.45mm3

全デッドボリューム

・0.83mm3
【0101】
すなわち、アクチュエータ1では、1回排出量はデッドボリュームよりも2.8倍大きく、アクチュエータ2では11.3倍である。ストロークごとに新鮮な空気が安全にセンサーに到達する。
【0102】
適用可能であれば、このような大きな横寸法を有する薄いセラミックを使用するとき、圧電セラミック内の機械的応力が大きくなり、高い引張応力のために圧電セラミック内で破損が生じる可能性があるので、厚い圧電セラミックを使用することは意味がある。
【0103】
ここで、以下に示すような実施例がある:
【0104】
アクチュエータ3(直径:9.6mm)

・サイズ:10×10×0.5mm3
・膜の直径:9.6mm
・膜の厚さ:30μm
・圧電の厚さ:150μm
・d31:250m/V
・駆動電圧:+225/-60V

結果として得られるストローク・データ

・1回拍出量:1.3mm3
・ブロッキング圧力:29kPa
【0105】
アクチュエータ4(直径:14.6mm)

・サイズ:15×15×0.5mm3
・膜の直径:14.6mm
・膜の厚さ:50μm
・圧電の厚さ:150μm
・d31:250m/V
・駆動電圧:+225/-60V

結果として得られるストローク・データ

・1回拍出量:6.3mm3
・ブロッキング圧力:23kPa
【0106】
最後の2つのアクチュエータは1回拍出量が少なくて済む(ただし、供給ラインを適切に設計すれば、まだ十分である)が、機械的応力に関しては「控えめに」設計されている。
【0107】
ダブルストロークアクチュエータの場合、それぞれの1回拍出量は2倍になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6