(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】表面改質セルロース系材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 11/20 20060101AFI20220105BHJP
D06M 15/233 20060101ALI20220105BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20220105BHJP
D21H 17/35 20060101ALI20220105BHJP
D21H 17/37 20060101ALI20220105BHJP
D21H 17/70 20060101ALI20220105BHJP
D21H 21/16 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
D21H11/20
D06M15/233
D06M15/263
D21H17/35
D21H17/37
D21H17/70
D21H21/16
(21)【出願番号】P 2019520179
(86)(22)【出願日】2017-06-22
(86)【国際出願番号】 CA2017050764
(87)【国際公開番号】W WO2017219145
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-17
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518457314
【氏名又は名称】パフォーマンス バイオフィラメンツ インク
【氏名又は名称原語表記】PERFORMANCE BIOFILAMENTS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】ミンハス,ガーマインダー
(72)【発明者】
【氏名】グーレイ,キース
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/133093(WO,A1)
【文献】特表2005-526148(JP,A)
【文献】特開2014-125690(JP,A)
【文献】特開2010-031400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0214738(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0273965(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0079607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B1/00-37/18
D06M10/00-16/00
19/00-23/18
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系材料のスラリーを提供すること;
前記スラリーに表面改質剤を添加すること;及び
塩基を添加することにより、スラリーのpHを調整してセルロース系材料の表面上に表面改質剤を析出させること
を含み、
前記表面改質剤が前記セルロース系材料の表面と相互作用
し、
前記表面改質剤が、4,000g/mol~10,000g/molの変性スチレン-無水マレイン酸(SMA)コポリマーを含み、
前記表面改質剤のスチレン:無水マレイン酸比が、1:1~4:1である、表面改質セルロース系材料の製造方法。
【請求項2】
セルロース系材料のスラリーを提供すること;
前記スラリーに表面改質剤を添加すること;及び
塩基を添加することにより、スラリーのpHを調整してセルロース系材料の表面上に表面改質剤を析出させること
を含み、
前記表面改質剤が前記セルロース系材料の表面と相互作用し、
前記表面改質剤が、4,000g/mol~10,000g/molの変性スチレン-無水マレイン酸(SMA)コポリマーを含み、
前記表面改質剤の主鎖が
、40%
~50%の無水マレイン酸単位及
び50%
~60%のスチレン単位から構成される、
表面改質セルロース系材料の製造方法。
【請求項3】
セルロース系材料のスラリーを提供すること;
前記スラリーに表面改質剤を添加すること;及び
塩基を添加することにより、スラリーのpHを調整してセルロース系材料の表面上に表面改質剤を析出させること
を含み、
前記表面改質剤が前記セルロース系材料の表面と相互作用し、
前記表面改質剤が、4,000g/mol~10,000g/molの変性スチレン-無水マレイン酸(SMA)コポリマーを含み、
前記表面改質剤が、変性無水マレイン酸単位を含み、前記無水マレイン酸単位が少なくとも部分的にイミド化されている、
表面改質セルロース系材料の製造方法。
【請求項4】
前記表面改質剤が、ジメチルアミ
ノプロピルアミン(DMAPA)-イミド化SMAコポリマーを含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記DMAPA-イミド化SMAコポリマーが、酢酸を添加することによって水中に可溶化される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記SMAコポリマーの前記無水マレイン酸単位
の25%
~100%がDMAPA-イミド化されている、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
前記DMAPA-イミド化SMAコポリマーが
、8.5のpHで前記スラリーから析出する、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリーへの表面改質剤の添加が、前記セルロース系材料の実質的に全ての表面を被覆するのに必要な表面改質剤の量と等しいかそれを超える量の、溶液中の前記表面改質剤を添加することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
表面改質セルロース系材料をワンステップ溶媒乾燥させることをさらに含み、前記表面改質セルロース系材料を前記ワンステップ溶媒乾燥させることが、
前記表面改質セルロース系材料の水性スラリーを提供すること;
前記表面改質セルロース系材料の前記水性スラリーを溶媒に添加することであって、
前記溶媒は、前記溶媒の沸点より低い沸点を有する共沸混合物を形成すること;及び
前記スラリーを蒸留して前記表面改質セルロース系材料からの前記共沸混合物を除去すること
を含む、請求項1
~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記表面改質セルロース系材料がフィブリル化されている、請求項1
~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1
~10のいずれか一項に記載の方法に従って製造される表面改質セルロース系材料。
【請求項12】
請求項1
1に記載の表面改質セルロース系材料を含む、疎水性材料。
【請求項13】
非極性溶媒の流動特性を改質するための
、表面改質セルロース系材料の使用
であって、
前記表面改質セルロース系材料が、
セルロース系材料のスラリーを提供すること;
前記スラリーに表面改質剤を添加すること;及び
塩基を添加することにより、スラリーのpHを調整してセルロース系材料の表面上に表面改質剤を析出させること
によって製造される、表面改質セルロース系材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2016年6月22日に出願された「SURFACE-MODIFIED CELLULOSIC MATERIALS AND METHODS OF PRODUCING SAME」という名称の米国特許出願第62/353504号からの優先権を主張し、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国を目的として、本出願は、2016年6月22日に出願された「SURFACE-MODIFIED CELLULOSIC MATERIALS AND METHODS OF PRODUCING SAME」という名称の米国特許出願第62/353504号の利益を主張する。
【0002】
本出願は、改質セルロース系材料及び改質セルロース系材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
物品の構造特性を強化するため、及び/又は強化疎水性物品において提供される、より高価な及び/又はより高密度の材料を置き換えるため、ポリプロピレン、ポリアミド、及びポリウレタンなどのポリマー及びコポリマーを含む疎水性物品に、セルロース系材料を組み込むことが一般的に望ましい。セルロース系材料を非極性溶媒に組み込んでこれらの溶媒の流動特性を改質することも一般的に望ましい。セルロース系及びリグノセルロース系材料の表面が親水性であるため、これらの材料を疎水性材料に組み込むことは困難である。適合性を促進するために、セルロース系材料の表面が改質され得る。しかしながら、表面改質、特に表面疎水化(エステル化、アセチル化、アシル化、及びポリマーグラフトなど)のための公知のプロセスは、複雑な反応プロセス(例えば、Stanssens,D.,et al.,”Creating water-repellent and super-hydrophobic cellulose substrates by deposition of organic nanoparticles,”2011,Materials Letters,65(12):1781-1784、及びRastogi,V.K.,et al.,”Mechanism for Turning the Hydrophobicity of Microfibrillated Cellulose Films by Controlled Thermal Release of Encapsulated Wax,”2014,Materials,7:7196-7216は、セルロース系材料を被覆するためのナノ粒子の製造方法を開示する)、過酷なプロセス条件、多段階反応プロセス、長い反応時間を伴い、及び/又は(1又は複数の)表面改質工程を実施する前にセルロース系材料を乾燥させることを伴う。そのようなプロセスは、Dufresne,A.,”Nanocellulose:From Nature to High Performance Tailored Materials,”(Berlin,Boston:De Gruyter,2012)に論じられている。
【0004】
さらに、改質セルロース系材料を疎水性材料に組み込むことは、多くの場合、最初に天然セルロース系材料内の水を除去することを必要とし、これはセルロースの強い親水性、並びにこれらの材料が乾燥中に不可逆的に凝集及び/又は角化する傾向のため、困難であることが判明している。セルロースの凝集/角化は、疎水性物品において良好な分散を達成する能力を損なう。凝集/角化を防ぐために、時間集約的及びエネルギー集約的な乾燥プロセスが一般に使用されている。例えば、セルロース系材料は、凍結乾燥、臨界点乾燥、及び/又は溶媒交換乾燥によって乾燥され得る。溶媒交換乾燥は、一連の溶媒交換工程を伴い、それによってセルロース系材料は、段階的に極性がより低い多数の溶媒を用いて水から徐々に交換される。溶媒交換乾燥は、大量の溶媒を使用し、リサイクルのため蒸留により分離しなければならない大量の溶媒混合物を生成する。従って、セルロース系材料を表面改質するための公知の方法は、十分に分散しない凝集した材料を製造するものであるか、又は易分散性材料を製造するために高価で時間のかかる乾燥プロセスを必要とする。
【0005】
疎水性物品及び非極性溶媒を含む疎水性材料との相溶性を促進するため、セルロース系材料の表面を改質する費用効率の高い方法が一般的に望まれている。
【0006】
前記の関連技術の例、及びそれに関連する制限は、例示的であり、排他的ではないことが意図される。関連技術の他の制限は、明細書を読み、図面を検討すれば、当業者には明らかになるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Stanssens,D.,et al.,”Creating water-repellent and super-hydrophobic cellulose substrates by deposition of organic nanoparticles,”2011,Materials Letters,65(12):1781-1784
【文献】Rastogi,V.K.,et al.,”Mechanism for Turning the Hydrophobicity of Microfibrillated Cellulose Films by Controlled Thermal Release of Encapsulated Wax,”2014,Materials,7:7196-7216
【文献】Dufresne,A.,”Nanocellulose:From Nature to High Performance Tailored Materials,”(Berlin,Boston:De Gruyter,2012
【発明の概要】
【0008】
以下の実施形態及びその態様は、範囲を限定するものではなく、典型的及び例示的であることを意図したシステム、ツール及び方法と合わせて説明及び図示される。1つまたは複数の様々な実施形態において、上記の問題のうちの1つ又は複数が軽減又は解消されている一方で、他の実施形態は、他の改良に向けられる。
【0009】
本発明の一態様は、表面改質セルロース系材料の製造方法を提供する。この方法は、セルロース系材料のスラリーを提供すること、及びスラリーに表面改質剤を添加することを含む。表面改質剤は、セルロース系材料の表面と相互作用する。
【0010】
いくつかの実施形態において、表面改質剤を添加することは、表面改質剤の溶液をスラリーに添加することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、この方法は、スラリーのpHを調整してセルロース系材料の表面上に表面改質剤を析出させることを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、スラリーのpHを調整して表面改質剤を析出させることは、塩基を添加することを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、スラリーへの表面改質剤の添加は、セルロース系材料の実質的に全ての表面を被覆するのに必要な表面改質剤の量と等しいかそれを超える量の表面改質剤を添加することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、表面改質剤はコポリマーを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、表面改質剤は、変性スチレン-コ-無水マレイン酸(SMA)コポリマーを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の分子量は、約4,000g/mol~約10,000g/molである。いくつかの実施形態において、表面改質剤の分子量は、約6,000g/mol~約7,000g/molである。
【0017】
いくつかの実施形態において、表面改質剤のスチレン:無水マレイン酸比は、約1:1~約4:1である。いくつかの実施形態において、表面改質剤の主鎖は、約40%~約50%の無水マレイン酸単位及び約50%~約60%のスチレン単位から構成される。いくつかの実施形態において、表面改質剤の主鎖は、約42%の無水マレイン酸単位及び約58%のスチレン単位から構成される。
【0018】
いくつかの実施形態において、表面改質剤は、変性無水マレイン酸単位を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、無水マレイン酸単位は、少なくとも部分的にイミド化されている。
【0020】
いくつかの実施形態において、表面改質剤は、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)-イミド化SMAコポリマーを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、DMAPA-イミド化SMAコポリマーは、酢酸を添加することによって水中に可溶化される。
【0022】
いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の少なくとも90%がDMAPA-イミド化されている。
【0023】
いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約25%~約100%がDMAPA-イミド化されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約50%~約100%がDMAPA-イミド化されている。
【0025】
いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約75%~約100%がDMAPA-イミド化されている。
【0026】
いくつかの実施形態において、DMAPA-イミド化SMAコポリマーは、約8.5のpHでスラリーから析出する。
【0027】
いくつかの実施形態において、表面改質剤はアルカリ塩形態の変性SMAコポリマーを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、アルカリ塩形態の変性SMAコポリマーは、約6未満のpHでスラリーから析出する。
【0029】
いくつかの実施形態において、変性SMAコポリマーは、非荷電及び/又は低極性アミンで変性されている。
【0030】
いくつかの実施形態において、表面改質剤は、アンモニア塩形態の変性SMAコポリマーを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、アンモニア塩形態の変性SMAコポリマーは、約8未満のpHでスラリーから析出する。
【0032】
いくつかの実施形態において、スラリー中のセルロース系材料の固形分は、約1重量%~約50重量%である。
【0033】
いくつかの実施形態において、方法は、表面改質剤を添加する前にスラリーの温度を約10℃~約40℃の範囲内に制御することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、スラリー中の表面改質剤の固形分は、約5重量%~約50重量%である。
【0035】
いくつかの実施形態において、方法は、表面改質セルロース系材料を乾燥させることを含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料を乾燥させることは、濾過、遠心分離、フラッシュ乾燥、未改質セルロース系材料との共乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、マイクロ波補助乾燥、真空乾燥、リング乾燥、流動床乾燥、オーブン乾燥、通気乾燥、分散乾燥、混合乾燥、及び溶媒乾燥のうちの1つ又は複数を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、方法は、表面改質セルロース系材料をワンステップ溶媒乾燥させることを含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料のワンステップ溶媒乾燥は、表面改質セルロース系材料の水性スラリーを提供すること、表面改質セルロース系材料の水性スラリーを溶媒に添加すること、及びスラリーを蒸留して表面改質セルロース系材料からの共沸混合物を除去することを含む。溶媒は、溶媒の沸点より低い沸点を有する共沸混合物を形成する。
【0039】
いくつかの実施形態において、方法は、表面改質セルロース系材料の水性スラリーを溶媒に添加する前に溶媒を予熱することを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、溶媒は溶媒の沸点まで予熱される。
【0041】
いくつかの実施形態において、溶媒は約80℃~約200℃の温度に予熱される。
【0042】
いくつかの実施形態において、溶媒は約105℃~約150℃の温度に予熱される。
【0043】
いくつかの実施形態において、溶媒は約80℃~約200℃の沸点を有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、溶媒は、約105℃~約150℃の沸点を有する。
【0045】
いくつかの実施形態において、共沸混合物は約50℃~約150℃の沸点を有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、共沸混合物は約75℃~約100℃の沸点を有する。
【0047】
いくつかの実施形態において、溶媒はキシレンであり、溶媒は約135℃~約145℃の温度に予熱される。
【0048】
いくつかの実施形態において、溶媒はキシレンであり、溶媒はキシレンの沸点まで予熱される。
【0049】
いくつかの実施形態において、水性スラリー中の表面改質セルロース系材料の固形分は、約2重量%~約10重量%である。
【0050】
いくつかの実施形態において、溶媒は、キシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸n-ブチル、ピリジン、酢酸n-プロピル、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、イソブタノール、及びn-ブタノールのうちの1つ又は複数を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、方法は、共沸混合物の形態で表面改質セルロース系材料から水を除去することを含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、方法は、共沸混合物を凝縮して水から溶媒を分離することを含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、方法は、表面改質セルロース系材料から溶媒を除去することを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料から溶媒を除去することは、蒸発、デカンテーション、排出、濾過、及び空気乾燥のうちの1つ又は複数を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、方法は、溶媒、共沸混合物を除去した後の表面改質セルロース系材料、共沸混合物及び溶媒を除去した後の表面改質セルロース系材料のうちの1つ又は複数に相溶化剤を添加することを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、相溶化剤は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンコポリマー及び無水マレイン酸ポリプロピレンコポリマーのうちの1つ又は複数を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は、未改質セルロース系材料よりも疎水性が高い。
【0058】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料はフィブリル化されている。
【0059】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は分散性である。
【0060】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は綿毛状(fluffy)である。
【0061】
本発明の別の態様は、改質セルロース系材料を乾燥させる方法を提供する。この方法は、改質セルロース系材料の水性スラリーを提供すること、改質セルロース系材料の水性スラリーを溶媒に添加すること、及びスラリーを蒸留して改質セルロース系材料からの共沸混合物を除去することを含む。溶媒は、溶媒の沸点より低い沸点を有する共沸混合物を形成する。
【0062】
いくつかの実施形態において、方法は、改質セルロース系材料の水性スラリーを溶媒に添加する前に溶媒を予熱することを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、溶媒は溶媒の沸点まで予熱される。
【0064】
いくつかの実施形態において、溶媒は約80℃~約200℃の温度に予熱される。
【0065】
いくつかの実施形態において、溶媒は約105℃~約150℃の温度に予熱される。
【0066】
いくつかの実施形態において、溶媒は約80℃~約200℃の沸点を有する。
【0067】
いくつかの実施形態において、溶媒は約105℃~約150℃の沸点を有する。
【0068】
いくつかの実施形態において、共沸混合物は約50℃~約150℃の沸点を有する。
【0069】
いくつかの実施形態において、共沸混合物は約75℃~約100℃の沸点を有する。
【0070】
いくつかの実施形態において、溶媒はキシレンであり、溶媒は約135℃~約145℃の温度に予熱される。
【0071】
いくつかの実施形態において、溶媒はキシレンであり、溶媒はキシレンの沸点まで予熱される。
【0072】
いくつかの実施形態において、水性スラリー中の改質セルロース系材料の固形分は、約2重量%~約10重量%である。
【0073】
いくつかの実施形態において、溶媒は、キシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸n-ブチル、ピリジン、酢酸n-プロピル、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、イソブタノール、及びn-ブタノールのうちの1つ又は複数を含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、方法は、共沸混合物の形態で改質セルロース系材料から水を除去することを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、方法は、共沸混合物を凝縮して水から溶媒を分離することを含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、方法は、改質セルロース系材料から溶媒を除去することを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料から溶媒を除去することは、蒸発、デカンテーション、排出、濾過、分散乾燥、混合乾燥、及び空気乾燥のうちの1つ又は複数を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、方法は、溶媒、共沸混合物を除去した後の改質セルロース系材料、共沸混合物及び溶媒を除去した後の改質セルロース系材料のうちの1つ又は複数に相溶化剤を添加することを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、相溶化剤は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンコポリマー及び無水マレイン酸ポリプロピレンコポリマーのうちの1つ又は複数を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は疎水性である。
【0081】
いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は、アルケニル無水コハク酸-改質セルロース系材料及びシリル化セルロース系材料のうちの1つ又は複数を含む。
【0082】
本発明の別の態様は、表面改質セルロース系材料の製造方法に従って製造される表面改質セルロース系材料を提供する。この方法は、セルロース系材料のスラリーを提供すること、及びスラリーに表面改質剤を添加することを含む。表面改質剤は、セルロース系材料の表面と相互作用する。
【0083】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は、少なくとも約80°の接触角を有する。
【0084】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は、少なくとも約100°の接触角を有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は、少なくとも約110°の接触角を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は、少なくとも約125°の接触角を有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の固形分は、約10重量%未満である。
【0088】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の固形分は、約1重量%~約5重量%である。
【0089】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の固形分は、約2重量%である。
【0090】
いくつかの実施形態において、含水量は、約5重量%未満である。
【0091】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は、未改質セルロース系材料よりも疎水性が高い。
【0092】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料はフィブリル化されている。
【0093】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は分散性である。
【0094】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は綿毛状である。
【0095】
本発明の別の態様は、改質セルロース系材料を乾燥させる方法に従って製造される改質セルロース系材料を提供する。この方法は、改質セルロース系材料の水性スラリーを提供すること、改質セルロース系材料の水性スラリーを溶媒に添加すること、及びスラリーを蒸留して改質セルロース系材料からの共沸混合物を除去することを含む。溶媒は、溶媒の沸点より低い沸点を有する共沸混合物を形成する。
【0096】
いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は、少なくとも約85°の接触角を有する。
【0097】
いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は、少なくとも約100°の接触角を有する。
【0098】
いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は、少なくとも約110°の接触角を有する。
【0099】
いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は、少なくとも約125°の接触角を有する。
【0100】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の固形分は、約10重量%未満である。
【0101】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の固形分は、約1重量%~約5重量%である。
【0102】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の固形分は、約2重量%である。
【0103】
いくつかの実施形態において、含水量は、約5重量%未満である。
【0104】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は、未改質セルロース系材料よりも疎水性が高い。
【0105】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料はフィブリル化されている。
【0106】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は分散性である。
【0107】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は綿毛状である。
【0108】
本発明の別の態様は、非極性溶媒の流動特性を改質するための表面改質セルロース系材料の使用を提供する。
【0109】
本発明の別の態様は、疎水性物品の構造特性を改質するための表面改質セルロース系材料の使用を提供する。
【0110】
本発明の別の態様は、非極性溶媒の流動特性を改質するための改質セルロース系材料の使用を提供する。
【0111】
本発明の別の態様は、疎水性物品の構造特性を改質するための改質セルロース系材料の使用を提供する。
【0112】
本発明の別の態様は、表面改質セルロース系材料を含む疎水性材料を提供する。
【0113】
本発明の別の態様は、表面改質セルロース系材料を含む非極性溶媒を提供する。
【0114】
本発明の別の態様は、改質セルロース系材料を含む疎水性材料を提供する。
【0115】
本発明の別の態様は、改質セルロース系材料を含む非極性溶媒を提供する。
【0116】
本発明の別の態様は、強化疎水性材料の製造方法を提供する。この方法は、表面改質セルロース系材料を製造すること、及び表面改質セルロース系材料を疎水性材料に添加することを含む。
【0117】
いくつかの実施形態において、方法は、スラリーから表面改質セルロース系材料を分離することを含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は、配合、混合、及びブレンドのうちの1つ又は複数を介して疎水性材料に添加される。
【0119】
本発明の別の態様は、強化疎水性材料の製造方法を提供する。この方法は、改質セルロース系材料を乾燥させること、及び改質セルロース系材料を疎水性材料に添加することを含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は、配合、混合、及びブレンドのうちの1つ又は複数を介して疎水性材料に添加される。
【0121】
本発明の別の態様は、レオロジー改質非極性溶媒の製造方法を提供する。この方法は、表面改質セルロース系材料を製造すること、スラリーから表面改質セルロース系材料を分離すること、及び表面改質セルロース系材料を非極性溶媒に添加することを含む。
【0122】
本発明の別の態様は、レオロジー改質非極性溶媒の製造方法を提供する。この方法は、改質セルロース系材料を乾燥させること、及び改質セルロース系材料を非極性溶媒に添加することを含む。
【0123】
本発明の別の態様は、表面改質剤で表面改質されたセルロース系材料を含む疎水性セルロース系材料を提供する。
【0124】
いくつかの実施形態において、表面改質剤はコポリマーを含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、表面改質剤は、変性SMAコポリマーを含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の分子量は、約4,000g/mol~約10,000g/molである。いくつかの実施形態において、表面改質剤の分子量は、約6,000g/mol~約7,000g/molである。
【0127】
いくつかの実施形態において、表面改質剤のスチレン:無水マレイン酸比は、約1:1~約4:1である。
【0128】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の主鎖は、約40%~約50%の無水マレイン酸単位及び約50%~約60%のスチレン単位から構成される。いくつかの実施形態において、表面改質剤の主鎖は、約42%の無水マレイン酸単位及び約58%のスチレン単位から構成される。
【0129】
いくつかの実施形態において、表面改質剤は、変性無水マレイン酸単位を含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、無水マレイン酸単位は、少なくとも部分的にイミド化されている。
【0131】
いくつかの実施形態において、表面改質剤は、DMAPA-イミド化SMAコポリマーを含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、DMAPA-イミド化SMAコポリマーは、酢酸を添加することによって水中に可溶化される。
【0133】
いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の少なくとも90%がDMAPA-イミド化されている。いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約25%~約100%がDMAPA-イミド化されている。いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約50%~約100%がDMAPA-イミド化されている。いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約75%~約100%がDMAPA-イミド化されている。
【0134】
いくつかの実施形態において、DMAPA-イミド化SMAコポリマーは、約8.5のpHでスラリーから析出する。
【0135】
いくつかの実施形態において、表面改質剤はアルカリ塩形態の変性SMAコポリマーを含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、変性SMAコポリマーは、非荷電及び/又は低極性アミンで変性されている。
【0137】
いくつかの実施形態において、表面改質剤は、アンモニア塩形態の変性SMAコポリマーを含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、疎水性セルロース系材料は、相溶化剤を含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、相溶化剤は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンコポリマー及び無水マレイン酸ポリプロピレンコポリマーのうちの1つ又は複数を含む。
【0140】
いくつかの実施形態において、疎水性セルロース系材料は、少なくとも約80°の接触角を有する。
【0141】
いくつかの実施形態において、疎水性セルロース系材料は、少なくとも約100°の接触角を有する。
【0142】
いくつかの実施形態において、疎水性セルロース系材料は、少なくとも約110°の接触角を有する。
【0143】
いくつかの実施形態において、疎水性セルロース系材料は、少なくとも約125°の接触角を有する。
【0144】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の固形分は、約10重量%未満である。
【0145】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の固形分は、約1重量%~約10重量%である。
【0146】
いくつかの実施形態において、表面改質剤の固形分は、約2重量%である。
【0147】
いくつかの実施形態において、含水量は、約5重量%未満である。
【0148】
いくつかの実施形態において、疎水性セルロース系材料は、未改質セルロース系材料よりも疎水性が高い。
【0149】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料はフィブリル化されている。
【0150】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は分散性である。
【0151】
いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料は綿毛状である。
【0152】
上記の典型的な態様及び実施形態に加えて、さらなる態様及び実施形態が、図面を参照することによって、及び以下の詳細な説明を検討することによって、明らかとなる。
【0153】
典型的な実施形態は、図面の参照図に示される。本明細書に開示される実施形態及び図は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきであることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による表面改質セルロース系材料の作製方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の例示の実施形態によるパルプ化設備の概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による表面改質セルロース系材料を乾燥させるためのワンステップ溶媒乾燥方法を示すフローチャートである。
【
図4A】未改質セルロースフィブリルから製造されたハンドシートの接触角の実証画像である。
【
図4B】本発明の例示の実施形態による、部分的DMAPA-イミド化SMAコポリマーで表面改質されたセルロースフィブリルから製造されたハンドシートの接触角の実証画像である。
【
図5A】本発明の例示の実施形態による溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリルの画像(倍率:500倍)である。
【
図5B】
図5Aに示す溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリルの画像(倍率:2,500倍)である。
【
図6A】本発明の例示の実施形態による、MAPPの存在下で溶媒乾燥させた表面改質セルロースフィブリルの画像(倍率:2,500倍)である。
【
図6B】
図6Aに示す表面改質セルロースフィブリルの画像(倍率:500倍)である。
【
図7A】本発明の例示の実施形態による、MAPPの存在下で溶媒乾燥させた表面改質セルロースフィブリルの画像(倍率:約2倍)である。
【
図7B】
図7Aに示す表面改質セルロースフィブリルの画像(倍率:約2倍)である。
【
図7C】
図7Aに示す表面改質セルロースフィブリルの画像(倍率:約2倍)である。
【
図8A】本発明の例示の実施形態による、ハンドシート形態の、MAPPの存在下で溶媒乾燥させた表面改質セルロースフィブリルの接触角の実証画像である。
【
図8B】本発明の例示の実施形態による、綿毛状形態の、MAPPの存在下で溶媒乾燥させた表面改質セルロースフィブリルの接触角の実証画像である。
【
図9】オーブン乾燥表面改質セルロース系材料及び空気乾燥表面改質セルロース系材料のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルである。
【
図10A】キシレン中のDMAPA-イミド化SMAで改質されたセルロースフィブリルのスラリーの写真であり、ここで表面改質セルロース系材料は、様々なpH値で調製された。
【
図10B】キシレン中の表面改質セルロース系材料の分散体の写真であり、ここで表面改質セルロース系材料は、様々なpH値で調製された。
【
図11A】キシレン中のセルロースフィブリル及びDMAPA-改質イミド化SMAのスラリーの写真であり、ここで表面改質セルロース系材料は、ある範囲のセルロース系材料の重量%の稠度で調製された。
【
図11B】キシレン中の表面改質セルロース系材料の分散体の写真であり、ここで表面改質セルロース系材料は、ある範囲のセルロース系材料の重量%の稠度で調製された。
【発明を実施するための形態】
【0155】
当業者にさらに完全な理解を提供するために、以下の説明を通じて具体的な詳細が記載される。しかしながら、本開示を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の要素は詳細に示されていない、又は説明されていない場合がある。従って、説明及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきである。
【0156】
文脈上別段の定めがない限り、「セルロース系材料」(本明細書で使用される場合)には、パルプ繊維(メカニカルパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、ケミカルパルプ、リサイクルパルプ、及びオルガノソルブパルプのうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない)、ナノフィブリル化セルロース(セルロースナノフィブリルとしても知られる)、ミクロフィブリル化セルロース、フィブリル化セルロース、及び微結晶セルロースのうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない、硬木、軟木、農業資材(小麦わら;大麦わら;とうもろこしの茎;及び綿、麻、亜麻、ジュート、サイザル麻を含むがこれらに限定されない繊維質材料のうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない、農作物からの残渣など)、藻類セルロース、海洋植物セルロース、及びそれらの誘導体のうちの1つ又は複数から得られる、パルプ繊維、クラフト繊維、及びサーモメカニカルパルプ(TMP)を含むがこれらに限定されない、セルロース系、ヘミセルロース系、及びリグノセルロース系のフィブリル及び/又は繊維のうちの1つ又は複数が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、セルロース系材料は、バクテリアセルロース及びナノ結晶セルロース(セルロースナノ結晶としても知られる)を除外する。特定の実施形態において、セルロース系材料は、原線維が緩く個別になった形態である。そのような実施形態において、セルロース系材料は、分散性であり、フィブリル化されており、共に凝集/角化/結合していない。セルロース系材料の表面は、大部分が親水性である。セルロース系材料は、紙コップを含むがこれに限定されない紙製品の製造に使用され得る。
【0157】
文脈上別段の定めがない限り、「接触角」(本明細書で使用される場合)は、液体-蒸気界面が固体表面と接する角度を指す。角度は液体(水など)を通して測定される。接触角(θC)は、ヤング方程式:γSG-γSL-γLGcosθC=0(式中、γSGは固気界面の表面張力、γSLは固液界面の表面張力、γLGは気液界面の表面張力である。)を介して、液体による固体表面の濡れ性を定量化する。
【0158】
文脈上別段の定めがない限り、「濡れ性」(本明細書で使用される場合)は、液体表面と固体表面とを合わせたときの、その間の相互作用から生じる、固体表面との接触を維持する液体の能力を指す。
【0159】
文脈上別段の定めがない限り、「疎水性材料」(本明細書で使用される場合)は、疎水性物品、非極性溶媒、及び/又は低極性溶媒を含む。
【0160】
文脈上別段の定めがない限り、「物品」(本明細書で使用される場合)は、他の製品の製造に使用されるインプットを指す。例えば、物品は原料を含み得る。物品は、付加的又は代替的に、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、高密度ポリエチレン、及び低密度ポリエチレンのうちの1つ若しくは複数などの、ポリマー及び/又はコポリマーを含み得る。
【0161】
文脈上別段の定めがない限り、「原料」(本明細書で使用される場合)は、一次生産又は物の製造において使用される粗製又は未処理の材料又は物質を指す。原料は、多くの場合、油、鉄、木材などの天然資源である。
【0162】
文脈上別段の定めがない限り、「疎水性」(本明細書で使用される場合)は、水をはじく又は水と混ざらない能力を指す。
【0163】
文脈上別段の定めがない限り、「非極性」(本明細書で使用される場合)は、有意な双極子モーメントを欠く1つ又は複数の分子を指す。
【0164】
文脈上別段の定めがない限り、「ポリマー」(本明細書で使用される場合)は、常にではないが多くの場合、反復構造からなる形態で、モノマーと呼ばれる多数の小分子の重合によって形成される、大分子又は巨大分子を指す。
【0165】
文脈上別段の定めがない限り、「コポリマー」(本明細書で使用される場合)は、2つ又は3つ以上の異なるモノマーから得られるポリマーを指す。
【0166】
文脈上別段の定めがない限り、「重量パーセント」(重量%)(本明細書で使用される場合)は、下式で定義されるように、1つの物質の質量(m
1)と全混合物の質量(m
tot)との比を指す。
【数1】
【0167】
文脈上別段の定めがない限り、「共沸混合物」(本明細書で使用される場合)は、蒸留を通じて一定の沸点及び組成を有する、2つの液体の混合物を指す。
【0168】
文脈上別段の定めがない限り、「スラリー」(本明細書で使用される場合)は、半液体混合物を指す。混合物はコロイド状であり得る。
【0169】
文脈上別段の定めがない限り、「分散助剤」及び「乾燥助剤」(本明細書で使用される場合)は、凝集を防ぎ、乾燥中の繊維、フィブリル、及びナノ粒子のうちの1つ又は複数の分離を促進する、物理的及び/又は化学的化合物を指す。
【0170】
文脈上別段の定めがない限り、「セルロースフィブリル」(本明細書で使用される場合)は、バルクフィブリル化セルロース材料をいう。
【0171】
文脈上別段の定めがない限り、「フィブリル化セルロース」(本明細書で使用される場合)は、繊維の質量の約25%超をナノスケール及び/又はマイクロスケールのフィブリル化領域に変換することが従来知られている他の方法を使用して、精製又はフィブリル化されているセルロース繊維を指す。文脈上別段の定めがない限り、「フィブリル化」(本明細書で使用される場合)は、セルロース繊維を精製して、繊維の質量の約25%超をナノスケール及び/又はマイクロスケールのフィブリル化領域に変換する方法を指す。
【0172】
文脈上別段の定めがない限り、「約」(本明細書で使用される場合)は、記載の値に近い(すなわち、記載の値の±5%以内、記載のpH値の±1pH単位以内、文脈が定める記載の接触角の±10°以内、又は記載の時間値から30分以内)ことを指す。
【0173】
本発明のいくつかの実施形態は、セルロース系材料の疎水性材料との相溶性を向上させるための、表面改質セルロース系材料及び表面改質セルロース系材料の製造方法を提供する。この方法は、セルロース系材料のスラリーを提供すること、及びスラリーに表面改質剤を添加することを含む。表面改質剤は、可溶性形態でスラリーに添加され、pHを調整することによって析出され得る。析出した表面改質剤は、溶液中で及び/又は乾燥中にセルロース系材料と反応し得る。表面改質セルロース系材料は、従来公知の方法(リング乾燥、フラッシュ乾燥、分散乾燥、流動床乾燥、オーブン乾燥、通気乾燥、噴霧乾燥、溶媒乾燥などのうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない)に従って乾燥され得る(すなわち、表面改質セルロース系材料から水が除去され得る)、及び/又は本発明の例示の実施形態に従って溶媒乾燥され得る。乾燥した表面改質セルロース系材料は、疎水性材料との相溶性が高く、乾燥時に最小限の凝集及び/又は角化を示す。
【0174】
本発明のいくつかの実施形態は、表面改質セルロース系材料を溶媒乾燥する方法を提供する。表面改質セルロース系材料の水性スラリーが提供される。溶媒をスラリーに添加して、溶媒の沸点より低い沸点を有する共沸混合物を形成する。スラリーを蒸留して、表面改質セルロース材料から共沸混合物が除去される。溶媒乾燥した表面改質セルロース系材料は、疎水性材料との相溶性が高く、乾燥時に最小限の凝集及び/又は角化を示す。表面改質セルロース系材料の疎水性を向上させるために、溶媒乾燥中及び/又は共沸蒸留後に相溶化剤をスラリーに添加してもよい。
【0175】
本発明のいくつかの実施形態による表面改質セルロース系材料は、分散性であり、フィブリル化されており、最初に共に凝集/角化/結合していない。表面改質セルロース系材料はフィブリルを含み、その表面は表面改質剤で少なくとも部分的に被覆されている。
【0176】
図1は、例示の実施形態による表面改質セルロース系材料を製造する方法10を示す。この方法は、表面改質剤及びセルロース系材料の粒子の両方が存在するスラリーを提供することを含む。セルロース系材料及び表面改質剤を液体に導入する順序は様々であり得る。例示の方法10では、セルロース系材料を液体に添加してスラリーを形成し、次いで表面改質剤をスラリーに添加する。ブロック21において、セルロース系材料が提供される。セルロース系材料は、ベール、シート、乾燥シート、及び液体(水など)中の混合物、又は約1重量%~約50重量%の固形分を有するスラリーのうちの1つ又は複数として提供されてもよい。ブロック22では、セルロース系材料に水などの液体を添加し、ブレンダー、離解機、リパルパー、リファイナー、又はセルロース系材料を湿らせることが従来知られている他の混合手段で混合することによって、セルロース系材料の均質スラリーを調製する。いくつかの実施形態において、ブロック22において、緩衝剤、塩、溶媒、及び分散助剤又は乾燥助剤(粘土鉱物、ポリマー繊維、及びポリマー粉末のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されない)のうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない添加剤をスラリーに添加する。
【0177】
スラリー中のセルロース系材料の固形分は、約0.1重量%未満であってもよく、より好ましくは約1重量%~約50重量%の範囲であってもよい。スラリーの固形分は、セルロース系材料を液体及び/又は特定のセルロース系材料に混合するのに利用可能な装置によって制限され得る。いくつかの実施形態において、スラリーのpHは約4~約7である。スラリーのpHは、本明細書の他の箇所に記載されているように、スラリーに添加される、pH依存性溶解度を有する表面改質剤の所望量の析出を生じるように調整され得る。
【0178】
ブロック23において、表面改質剤が提供される。表面改質剤は、スラリーに添加される。表面改質剤は、周囲温度及び圧力で、溶液として添加され得る。いくつかの実施形態において、表面改質剤をスラリーに添加する前に、スラリーを約10℃~約45℃の範囲、好ましくは約20℃~約45℃の範囲の温度にする。スラリーは、表面改質剤が混合物中に均一に分散するまで混合される。いくつかの実施形態において、スラリー中の表面改質剤の重量の、スラリー中のセルロース系材料の乾燥重量に対する比は、1:20~1:1の範囲内である。いくつかの実施形態において、スラリー中のセルロース系材料の乾燥重量に対するスラリー中の表面改質剤の重量は、1:10~1:2の範囲内である。
【0179】
表面改質剤はコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、コポリマーは水溶性である。水中での表面改質剤の溶解度は、スラリーのpH及び/又は温度を変えることによって調整することができる。表面改質剤は、共有結合、静電相互作用、及び非特異的ファンデルワールス相互作用のうちの1つ又は複数を介してセルロース系材料と会合する。表面改質剤で改質されたセルロース系材料は、表面改質剤の疎水性の特徴を直接通して、及び/又は特定の条件下での表面改質剤の疎水性の特徴を通して(例えば、表面改質剤が化学反応を受けて、より疎水性が高くなる場合)、向上した疎水性を示す。セルロース系材料の表面は、表面改質剤で少なくとも部分的に被覆されている。
【0180】
表面改質剤は、疎水性物品材料とよく相互作用する疎水性基を含む。疎水性基は、固有のものであってもよく、及び/又は析出及び/又は乾燥中に形成されてもよい。いくつかの実施形態において、疎水性基は析出及び/又は乾燥中に形成される。
【0181】
いくつかの実施形態において、表面改質剤は、変性スチレン-コ-無水マレイン酸(SMA)コポリマーを含む。変性SMAコポリマーは、例えば、コポリマーの主鎖について以下の一般式を有し得る:
【化1】
【0182】
いくつかの実施形態において、変性SMAコポリマーの分子量は、約4,000g/mol~約10,000g/molの範囲内である。いくつかの実施形態において、表面改質剤のスチレン/無水マレイン酸比は、約1:1~約4:1であり得る。いくつかの実施形態において、SMAコポリマーは、1つ又は複数のアルカリ材料、アミン、及びカチオン塩との反応によって、及び/又はカチオンイミド化を介して改質される。
【0183】
水性溶媒中での表面改質剤の溶解度を向上させるために、表面改質剤は、様々な方法で可溶化され得る。例えば、SMAコポリマーの場合、表面改質剤中の無水マレイン酸単位が変性され得る。例えば、いくつかの実施形態において、変性SMAコポリマーの約100%までの無水物基がイミド化される。イミド化される無水物基の割合は、水性溶媒中での変性SMAコポリマーの溶解性を促進しながら、変性SMAコポリマーの無水物基とセルロース系材料との間の反応を向上させるために最適化され得る。いくつかの実施形態において、変性SMAコポリマーは、部分的又は完全にイミド化されたSMAコポリマーを含む。例えば、SMAコポリマーは、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)を使用して部分的に又は完全にイミド化し、次いで酢酸を使用して可溶化し得る。
【0184】
いくつかの実施形態において、SMAコポリマーは、非反応性希釈剤中でSMAコポリマーとDMAPAとを組み合わせることによって部分的にイミド化される。得られた混合物を約150℃~約180℃の範囲内で約2~約3時間加熱する。加熱期間中に水が除去される。次いで、得られたDMAPA-イミド化SMAコポリマーの第三級アミンを、例えば、塩酸及び酢酸を含むがこれらに限定されない酸を添加することによる酸性化によってプロトン化する。得られたカチオン性DMAPA-イミド化SMAコポリマーは水溶性である。水に溶解すると、カチオン性水溶液が生成される。酢酸によるDMAPA-イミド化SMAの可溶化は、以下の反応機構によって示される:
【化2】
【0185】
いくつかの実施形態において、未変性SMAコポリマーは、約5,000g/molの分子量(MW)を有し、DMAPA-イミド化SMAコポリマーは、約6,500g/mol~約7,000g/molの範囲のMWを有する。いくつかの実施形態において、未変性SMAコポリマーは、約40%~約50%の無水マレイン酸単位及び約50%~約60%のスチレン単位から構成される主鎖を有する。いくつかの実施形態において、未変性SMAコポリマーは、約42%の無水マレイン酸単位及び約58%のスチレン単位から構成される主鎖を有する。いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約90%超がDMAPA-イミド化されている。いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約25%~約100%がDMAPA-イミド化されている。いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約50%~約100%がDMAPA-イミド化されている。いくつかの実施形態において、SMAコポリマーの無水マレイン酸単位の約75%~約100%がDMAPA-イミド化されている。いくつかの実施形態において、DMAPA-イミド化SMAコポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約75℃~約90℃の範囲内である。
【0186】
DMAPA-イミド化SMAコポリマーは市販されている。DMAPA-イミド化SMAコポリマーは、コポリマーの第三級アミンの電荷を中和することによって水溶液から析出させることができる。これは、pHを約7.5~約10の範囲内の値に調整することによって達成することができる。DMAPA-イミド化SMAコポリマーは、イオン力及び/又はファンデルワールス力を介してセルロース系材料と会合するのに利用することができる。DMAPA-イミド化SMAコポリマーは、残留(すなわち、イミド化されていない)コポリマーの無水マレイン酸基とセルロース系材料のヒドロキシル基との間のエステル化反応を通してセルロース系材料に共有結合し得る。エステル化は、表面改質セルロース系材料の乾燥中又は乾燥後に行われ得る。次亜リン酸ナトリウムなどの無水物安定化又はエステル化促進触媒を添加することによってエステル化を向上させ得る(例えば、Yang,C.Q.,et al.,”Cross-Linking Cotton Cellulose by the Combination of Maleic Acid and Sodium Hypophosphite,”2010 Industrial & Engineering Chemistry Research,49(18):8325-8332を参照)。本明細書の他の箇所に記載されているように、表面改質セルロース系材料は乾燥され得る(すなわち、表面改質セルロース系材料から水が除去され得る)。
【0187】
いくつかの実施形態において、SMAコポリマーは、水溶性アニオンアルカリ塩を形成するように変性されてもよい。これは、SMAコポリマーを水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムなどのアルカリ性物質と約10℃~約90℃の範囲の温度で反応させることによって実施され得る。好ましくは、SMAコポリマーは、約60℃~約90℃の範囲の温度で約1時間~約5時間の反応時間にわたってアルカリ性物質と反応させる。アルカリ塩形態のSMAコポリマーの水溶解度を維持するため、pHは約10のアルカリpHに調整され得る。アルカリ塩形態のSMAコポリマーは、酢酸及び/又は塩酸を含むがこれらに限定されない酸を使用して、セルロース系材料/変性SMAコポリマー溶液をpH約6未満に酸性化することによってセルロース系材料上に析出され得る。アルカリ塩形態のSMAコポリマーは、イオン相互作用及び/又はファンデルワールス力を介してセルロース系材料と会合するのに利用することができる。アルカリ塩形態のSMAコポリマーは、本明細書の他の箇所に記載されるように、残留(すなわち、イミド化されていない)コポリマーの無水マレイン酸基とセルロース系材料のヒドロキシル基との間のエステル化反応を通してセルロース系材料に共有結合し得る。
【0188】
いくつかの実施形態において、アミド酸形態のコポリマーは、閉環及びセルロース系材料とのイミドの形成を促進するために使用される。アミド酸形態は、SMAコポリマーを水に可溶にすると考えられる任意のアミンを使用して製造され得る(例えば、米国特許第6,232,405号参照)。セルロース系材料及びアミド酸形態の変性SMAコポリマーの溶液は、アミド酸を脱水するために約100℃より高い温度で乾燥される。アミド酸の脱水は、閉環及びSMAコポリマーマレイン酸基のイミド形態の形成を引き起こす(すなわち、マレイミドが形成される)。閉環は、SMAコポリマーを親水性形態(すなわち、アミド酸)からより疎水性の高いイミド形態に変換する。DMAPA-イミド化SMAコポリマーとは異なり、メチルアミン又はモノエタノールアミンなどの非荷電及び/又は低極性アミンで変性されたSMAコポリマーは、閉環/イミド化が起こると、いかなるpHにおいても水に溶解しない。そのように、アミド酸形態は、アミド酸が脱水されるまで可溶性のままである(すなわち析出しない)。脱水は閉環により変性SMAコポリマーの疎水化を生じる。このようにして、セルロース系材料の表面改質も乾燥中に達成され得る。いくつかの実施形態において、アミド酸を脱水することは、同時に変性SMAコポリマーをセルロース系材料のヒドロキシル基に架橋する(例えば、Johnson,E.H.及びCuculo,J.A.,”The Reaction of Cellulose with Amic Acids and Anhydride/Ammonia,Part III:Reactivity of Alpha,Beta-Amic Acids and Corresponding Anhydrides/Ammonia,”1973,Textile Research Journal,43(5):283-293参照)。次いで、本明細書の他の箇所に記載されているように、表面改質セルロース系材料を乾燥し得る(すなわち、表面改質セルロース系材料から水が除去され得る)。
【0189】
いくつかの実施形態において、SMAコポリマーをアンモニアと反応させることによりコポリマーをアンモニア塩形態に変換することによって、SMAコポリマーが変性され得る。この反応は、アンモニア塩がアミンのR基を欠いていることを除き、本明細書の他の箇所に記載されているSMAコポリマーとアミンとの間の反応と同様に、無水マレイン酸単位上に、無水物基の代わりに第一級アミド及びカルボン酸を形成する。アンモニア塩形態のSMAコポリマーは、約8より大きいpHで可溶性である。セルロース系材料をアンモニア塩形態のSMAコポリマーで表面改質するため、セルロース系材料の溶液のpHが最初に約8よりも上に調整される。次いで、可溶化した変性SMAコポリマーをセルロース系材料に添加し、pHを約8未満に下げてセルロース系材料の表面上に変性SMAコポリマーの析出を誘導する。アンモニア塩形態のSMAコポリマーは、本明細書の他の箇所に記載されるように、残留(すなわち、イミド化されていない)コポリマーの無水マレイン酸基とセルロース系材料のヒドロキシル基との間のエステル化反応を通してセルロース系材料に共有結合し得る。あるいは、セルロース系材料は、変性SMAコポリマーとセルロース系材料との水性混合物を加熱及び乾燥させることによって(すなわち、最初に変性SMAコポリマーを析出させることなく)、アンモニア塩形態のSMAコポリマーで表面改質されてもよい。
【0190】
いくつかの実施形態において、乾燥は、本明細書の他の箇所に記載されているアミド酸形態のSMAコポリマーの脱水と同様に、変性マレイン酸基の脱水及び閉環を生じて疎水性マレイミドを形成する。脱水/閉環はまた、アミド酸とセルロース系材料のヒドロキシル基との間の共有結合反応を促進する(例えば、Johnson,E.H.及びCuculo,J.A.,”The Reaction of Cellulose with Amic Acids and Anhydride/Ammonia,Part III:Reactivity of Alpha,Beta-Amic Acids and Corresponding Anhydrides/Ammonia,”1973,Textile Research Journal,43(5):283-293参照)。いくつかの実施形態において、コポリマー上に存在する無水マレイン酸単位は、水中で加水分解してジカルボン酸形態を生成し得る。無水物基を再形成するための閉環反応は、乾燥中に起こり得、上記のように、次亜リン酸ナトリウムなどの無水物安定化又はエステル化促進触媒の添加によって促進させることができる。次いで、この再形成された無水物は、セルロース表面上のヒドロキシル基と反応するのに利用することができる。
【0191】
本明細書の他の箇所に記載されているSMAコポリマー変性は、水溶液中にSMAコポリマーを可溶化するように設計され、広範囲のエステル化アルコールを使用して部分的にエステル化されたSMAコポリマーと共に使用され得る。エステル化SMAコポリマーは、無水物とモノエステル/モノカルボン酸官能基との組み合わせを含む。エステル化SMAコポリマーの組成は、使用される出発SMAコポリマー、エステル化アルコールの構造、及びエステル化の程度によって変わる。
【0192】
任意選択によるブロック24(
図1)では、スラリーのpHを調整して表面改質剤を析出させ、析出した表面改質剤でセルロース系材料の表面を改質する。表面改質剤が析出するpHは、本明細書の他の箇所に記載されているように、表面改質剤の種類に依存する。例えば、DMAPA-イミド化SMAコポリマーは、約7.5~約10の範囲のpHで析出し得る。アルカリ塩形態のSMAコポリマーは、約6未満のpHで析出し得る。アンモニア塩形態のSMAコポリマーは、約8未満のpHで析出し得る。いくつかの実施形態において、析出は可逆的であり、表面改質剤はpHを調整することによって再可溶化され得る。理論に拘束されるものではないが、析出すると、表面改質剤は、ファンデルワールス力、水素結合、及び表面改質剤の無水物基とセルロース材料のヒドロキシル基との間のエステル化のうちの1つ又は複数によって、セルロース系材料の表面と相互作用するものと推測される。いくつかの実施形態において、表面改質剤とセルロース系材料の表面との間の共有結合相互作用は、乾燥によって促進され得る。表面改質剤の無水マレイン酸基とセルロース系材料の表面上のヒドロキシル基との間の反応は、例えば、以下の反応機構によって説明され得る:
【化3】
(式中、R
1及び/又はR
2は、共有結合したモノマーの鎖である。)上に示した反応機構では、コポリマー表面改質剤の無水マレイン酸基がセルロース系材料のヒドロキシル基と反応してエステル結合を形成し、セルロース系材料の表面を共有結合的に改質する。表面改質セルロース系材料のシス(左)及びトランス(右)配置が示されている。
【0193】
あるいは、任意選択によるブロック25において、セルロース系材料と表面改質剤の溶液は、本明細書の他の箇所に記載されているように、最初にpHを調整して表面改質剤でセルロース系材料の表面を改質することなく乾燥され得る。しかしながら、表面改質剤をセルロース系材料の水性スラリーと合わせ、合わせたスラリーのpHを調整して表面改質剤を析出させる前に、表面改質剤を可溶化することは、セルロース系材料を製造するための上流処理工程との方法10の適合性を促進し得る。例えば、表面改質剤をセルロース系材料の水性スラリーと合わせ、スラリーのpHを調整して表面改質剤を析出させる前に表面改質剤を可溶化することは、表面改質セルロース系材料と、本明細書の他の箇所に記載されている本発明の例示の実施形態による溶媒乾燥方法との適合性を向上させる。セルロース系材料が水性スラリーとして利用可能である任意の時点で、可溶化された表面改質剤がパルプ化設備内のセルロース系材料の表面上に析出し得ることを、当業者は認識するであろう。例えば、可溶化された表面改質剤は繊維処理中、フィブリル化セルロースの製造における精製プロセス中、及び/又はパルプ化設備内での他の処理/精製段階中にセルロース系材料の表面上に析出され得る。
【0194】
図2はパルプ化設備40を示す。ブロック50において、水溶液に可溶化された表面改質剤が提供される。可溶化された表面改質剤の水溶液は、処理を受けているセルロース系材料の表面に表面改質剤を固定するため、ブロック60、ブロック70、ブロック80、及びパルプ化設備40内の他の処理/精製段階(図示せず)のうちの1つ又は複数に添加され得る。ブロック60において、セルロース系材料は繊維処理を受ける。ブロック70において、セルロース系材料は精製を受ける。ブロック90において、セルロース系材料は乾燥される。いくつかの実施形態において、溶液のpHは、ブロック60及び70のうちの1つ又は複数において調整される。
【0195】
いくつかの実施形態において、セルロース系材料の表面を完全に被覆するのに必要な量を超える量の表面改質剤が水性スラリーに添加され得る。表面改質剤の析出及び表面改質セルロース系材料の抽出に続いて、過剰の表面改質剤が溶液から回収され得、及び/又は溶媒がリサイクルされ得る。任意選択によるブロック27(
図1)において、過剰の表面改質剤が回収される。過剰量の表面改質剤を提供する利点は、セルロース系材料の表面改質剤による表面被覆率を最大にすることであり得る。過剰の表面改質剤を除去することの利点は、溶媒の体積当たりの、(本明細書の他の箇所に記載されているように)溶媒乾燥され得る表面改質セルロース系材料の量を増加させることであり得る。
【0196】
本明細書に記載の表面改質剤でセルロース系材料の表面を改質すると、セルロース系材料の疎水性が高まる。例えば、未改質セルロース系材料の接触角は、セルロース系材料の構成及び/又はセルロース系材料のリグニン含有量に応じて、約10°~約60°の範囲内である。典型的には、未改質セルロース系材料の接触角は約25°である。対照的に、本発明の特定の実施形態によるセルロース系材料の表面改質から生じるハンドシートの少なくとも一方の面の接触角は少なくとも約75°である。いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料の接触角は、約75°~約110°である。表面改質セルロース系材料の接触角は、100°より大きくてもよい。未改質セルロース系材料のものよりも大きい接触角は、低い表面改質剤添加量の重量パーセント(重量%)(すなわち、セルロース系材料の質量に対する表面改質剤の質量の比)でも達成され得る。例えば、約10重量%未満の表面改質剤で表面改質されたセルロース系材料は、少なくとも約85°の接触角を有し得る。接触角は、乾燥表面改質セルロース系材料のハンドシートを、50%に制御された湿度の室内において、約20℃で約24時間コンディショニングすることによって決定され得る。接触角は、表面改質セルロース系材料のハンドシート形態を用いて最もよく測定される。ハンドシートは、従来公知のように、表面改質セルロース系材料の湿ったスラリーから生成され得る。
【0197】
表面改質セルロース材料の特性は、材料を乾燥するのに使用されるプロセスに依存し得る。表面改質後、セルロースは典型的には低稠度のスラリー形態(すなわち、水中約2重量%~約4重量%の改質セルロース)である。表面改質セルロース系材料は、より高稠度のスラリー形態(例えば、水中約30重量%を超える改質セルロース)で存在してもよい。スラリーは、異なる水分含量を有する異なる形態を生じる、従来公知の多数の異なる方法で乾燥させることができる。例えば、表面改質セルロース系材料が溶媒乾燥される場合、乾燥材料は約5重量%未満の水を有し、非常に綿毛状である。表面改質セルロース系材料がシート状に(例えば製紙などで)乾燥される場合、材料は紙様シート形態にあり、綿毛状ではなく、典型的には約5重量%~約20重量%の水分含量を有する。凍結乾燥される場合、表面改質セルロース系材料は、約5重量%未満の水を有する軽量の「エアロゲル」形態にあり、低密度であろう。リング/フラッシュ乾燥機内で乾燥される場合、材料は幾分綿毛状である(特に、乾燥中に材料が凝集するのを防ぐ担体パルプ又は他の材料と共乾燥される場合)。表面改質剤は、表面改質セルロース系材料の約1重量%~約10重量%の範囲で存在し得る。溶媒乾燥の場合、表面改質剤は、表面改質セルロース系材料の約0.05重量%~約10重量%の範囲で存在し得る。
【0198】
未改質セルロース系材料と比較して、本発明の表面改質セルロース系材料は、疎水性材料との向上した相溶性を示す。従って、本発明の表面改質セルロース系材料は、溶媒の流動特性を改質するために非極性溶媒に組み込まれ得、及び/又は物品の構造特性を向上させ、及び/又は他のより高価な、及び/又はより密度の高い材料を置き換えるか若しくは補足するために疎水性物品に組み込まれ得る。例えば、本発明の表面改質セルロース系材料は、いくつかのポリマーを強化するために使用されるガラス繊維を置き換えるか又は補足するために使用され得る。そのような置換は繊維強化材料の密度を低下させる。ガラス繊維は典型的には約2.55g/cm3の密度を有し、一方、本発明のいくつかの実施形態による変性SMAコポリマーで表面改質されたセルロース系材料は、約1.5g/cm3の密度を有する。従って、本発明のいくつかの実施形態による表面改質セルロース系材料は、軽量な材料が不可欠な、自動車、スポーツ用品、及び航空宇宙分野を含むがこれらに限定されない様々な産業分野で用途を有する、強く軽量なポリマー複合材料を製造するために使用され得る。従って、表面改質セルロース系材料を製造する本方法は、林業によって提供される製品の多様化を可能にし得、及び/又はセルロース系廃棄物を(例えば、紙製飲料カップなどの紙製品から)存立可能な製品に変換するために使用され得る。
【0199】
方法10に従って製造される表面改質セルロース系材料は、疎水性材料と組み合わせる前に乾燥させてもよく、又はまだ湿っているときに疎水性材料と組み合わせてもよい。例えば、方法10に従って製造され、約70重量%の水分含量を有する表面改質セルロース系材料は、この材料を所望の疎水性材料と組み合わせるため、Gelimat(商標)型配合機又は真空補助ツインスクリュー乾燥機を含む(がこれらに限定されない)湿式配合プロセスに直接添加され得る。あるいは、表面改質セルロース系材料は、空気乾燥、従来の抄紙機内での乾燥、濾過、遠心分離、リング/フラッシュ乾燥、付加的なセルロース系材料との共乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、マイクロ波補助乾燥、真空乾燥、超臨界CO2乾燥、溶媒交換乾燥、溶媒乾燥、分散乾燥、流動床乾燥、通気乾燥、及び「混合乾燥」(例えば、米国特許出願公開第2015/0308017号明細書参照)のうちの1つ又は複数を含む(がこれらに限定されない)、任意の従来公知の乾燥手段を用いて最初に乾燥されてもよい。乾燥表面改質セルロース系材料は、溶融処理の前又は溶融処理中に、熱可塑性材料と粉末状、粒状、ペレット状、及びその他の固体形態のうちの1つ又は複数に直接ブレンドされ得る。乾燥表面改質セルロース系材料は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と液体形態で直接ブレンドされ得る。乾燥表面改質セルロース系材料を合成ゴムに組み込むことが望ましい場合、そのような材料は、合成ゴム製造プロセスへの組み込みを容易にするため、最初にシクロヘキサン及び/又は他の非極性溶媒(トルエン、ナフサ、及びベンゼンのうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない)中に分散され得る。
【0200】
いくつかの実施形態では、方法10に従って製造される表面改質セルロース系材料は、本明細書の他の箇所に記載されているワンステップ溶媒乾燥プロセス、又は他の従来の乾燥方法(リング乾燥、オーブン乾燥、通気乾燥、噴霧乾燥、溶媒乾燥などのうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない)と組み合わせたプロセス溶媒乾燥プロセスを使用して乾燥される。例えば、表面改質セルロース系材料は、ワンステップ溶媒乾燥プロセスを開始する前に部分的に脱水されてもよく、それによって、必要とされる溶媒の全体積が減少される。いくつかの実施形態において、表面改質セルロース系材料を乾燥させることは、材料の疎水性を向上させ、従って、改質方法10にとって有益であり得る。
【0201】
任意選択によるブロック26(
図1)において、表面改質セルロース系材料は、本明細書の他の箇所に記載されているワンステップ溶媒乾燥プロセス、又は他の従来の乾燥方法(リング乾燥、オーブン乾燥、通気乾燥、噴霧乾燥、溶媒乾燥などのうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない)と組み合わせたプロセス溶媒乾燥プロセスを使用して乾燥される。いくつかの実施形態において、材料がオーブン乾燥、リング乾燥、フラッシュ乾燥、流動床乾燥、又は他の従来の乾燥プロセスによって専ら乾燥される場合、表面改質セルロース系材料の望ましくない量の凝集が観察される。いくつかの実施形態において、高フィブリル化パルプ繊維は、乾燥中に凝集し得る。凝集は、担体繊維(すなわち、高フィブリル化セルロース系材料をばらばらに保つことができる、より大きな繊維)を使用することによって低減され得る。例えば、フィブリル化繊維のみを直接乾燥させる代わりに、約80%の従来のパルプ繊維(例えば、クラフトパルプ、サーモメカニカルパルプ、溶解パルプなど)と約20%のフィブリル化繊維とのブレンドが使用され得る。
【0202】
ブロック28において、疎水性材料が提供され、表面改質セルロース系材料と組み合わされて、強化疎水性物品が提供され、強化疎水性物品において提供される、より高価な、及び/又はより密度の高い、及び/又はより強度の低い材料を置き換えるか若しくは補足し、及び/又は非極性溶媒の流動特性を改質する。
【0203】
図3は、改質セルロース系材料を乾燥させるためワンステップ溶媒乾燥方法100を示す。いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は、方法10に従って製造される表面改質セルロース系材料のうちの1つ又は複数、別の疎水的改質セルロース系材料(例えば、アルケニル無水コハク酸(ASA)改質セルロース系材料)、及びシリル化セルロース系材料を含む。ブロック121において、改質セルロース系材料の水性スラリーが調製される。いくつかの実施形態において、水性スラリー中の改質セルロース系材料の固形分は、約2重量%~約10重量%である。
【0204】
ブロック122において、溶媒が提供される。溶媒は水と共沸混合物を形成することができ、純溶媒の沸点より低い共沸沸点を有する。いくつかの実施形態において、溶媒が水の沸点より高い沸点を有することが有利であり得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、約125℃~約200℃の範囲の沸点を有する。いくつかの実施形態において、溶媒は、キシレン、トルエン、ベンゼン、酢酸n-ブチル、ピリジン、酢酸n-プロピル、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、イソブタノール、及びn-ブタノールのうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態において、溶媒は水と共沸混合物を形成し、その共沸混合物の沸点は約75℃~約95℃の範囲にある。
【0205】
任意選択によるブロック123において、溶媒が予熱される。水性スラリーを予熱した溶媒に添加すると、スラリーに含まれる水の一部が急速に蒸発し、及び/又は水:溶媒共沸混合物が形成され得る。
【0206】
改質セルロース系材料の水性スラリーは溶媒と合わせられ、溶媒は、過剰の溶媒で水と共沸混合物を形成する。共沸混合物は蒸留を通じて、純溶媒の沸点よりも低い一定の沸点を有する。例えば、キシレン(約140℃の沸点を有する)は、約95℃の沸点を有する水と共沸混合物を形成する。ブロック124において、共沸混合物が蒸留される。共沸混合物の蒸留124は、溶液中の大部分の水を共沸混合物の形態で蒸発させる。従って、共沸混合物の形成は乾燥を促進し、溶媒中の改質セルロース系材料の効率的な分散を可能にし得る。分散は、個々の改質セルロース系材料粒子を分離するために蒸留を通じてスラリーを撹拌することによって達成され得る。水の蒸発中に分散が促進され得、それによって、水蒸気が溶液から泡立って出ていく際、水蒸気は個々の改質セルロース系材料粒子を物理的に押してばらばらにするのに役立ち得る。蒸留124は大気圧で行われる。しかしながら、沸点を下げるためにより低い圧力が使用されてもよい。
【0207】
蒸発、デカンテーション、排水、及び/又は濾過などの1つ又は複数の従来の乾燥方法を使用して、任意の残存する水/溶媒が改質セルロース系材料から乾燥され得る。例えば、改質セルロース系材料は、方法100によるワンステップ溶媒乾燥の後に空気乾燥又はオーブン乾燥され得る。任意選択によるブロック125において、方法100に従って乾燥された改質セルロース系材料は、本明細書の他の箇所に記載されているように、1つ又は複数の従来の乾燥方法(リング乾燥、フラッシュ乾燥、分散乾燥、流動床乾燥、オーブン乾燥、通気乾燥、噴霧乾燥、溶媒乾燥などのうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない)を使用してさらに乾燥される。いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は、材料に剪断力を与え、材料に熱風又は熱ガスを当てることによって乾燥される。例えば、いくつかの実施形態において、剪断力は分散装置によって供給される。当業者は、分散力が従来公知の手段によって供給され得ることを認識するであろう。いくつかの実施形態において、剪断力及び熱風又は熱ガスは、改質セルロース系材料に同時に供給される。いくつかの実施形態において、熱風又は熱ガスの温度は、約100℃~約180℃の範囲である。いくつかの実施形態において、熱風又は熱ガスの温度は、約200℃以上である。より高い温度(例えば、約200℃以上の温度)が使用される場合、改質セルロース系材料は、比較的低い温度が使用される場合よりも比較的短時間、熱風又は熱ガスにさらされる。このようにして、改質セルロース系材料は、より高い温度によって破壊される、又は損傷を受ける可能性がより低い。
【0208】
改質セルロース系材料から蒸留された共沸混合物を回収し、凝縮させて溶媒から水が分離され得る。溶媒は、任意選択による比重分離によって、方法100での再使用のために任意選択によるブロック126でリサイクルされ得る。
【0209】
ワンステップ溶媒乾燥方法100は、1つのみの溶媒交換工程を使用するため、必要とされる溶媒の量、並びに溶媒を回収するための分離及び蒸留工程の数は、従来の溶媒交換乾燥方法と比較して減少する。いくつかの実施形態において、約200gまでの表面改質セルロース系材料は、約1Lのキシレン中で溶媒乾燥され得る。同量の溶媒中でより多くの表面改質セルロース系材料を溶媒乾燥することで、溶媒中に過剰の表面改質剤の蓄積が生じ得、これは、乾燥中に表面改質剤を表面改質セルロース系材料と凝集させ、表面改質セルロース系材料の適切な分散を妨げる。いくつかの実施形態において、所与の体積の溶媒中で溶媒乾燥され得る表面改質セルロース系材料の量は、(本明細書の他の箇所に記載されているように)溶媒乾燥の前に過剰な表面改質剤を除去することによって増加し得る。
【0210】
方法100はまた、外観が綿毛状であり、及び/又は乾燥時に最小限の凝集及び/又は角化を示し、及び/又は熱硬化性及び/又は熱可塑性ポリマーなどの疎水性材料中に容易に分散可能である低密度繊維状ネットワークを有する、溶媒乾燥改質セルロース系材料を製造する。そのような材料は、疎水性物品中のより高価な及び/又はより高密度の材料を置き換えるための、疎水性物品用の強度増強剤として、及び/又は非極性溶媒用のレオロジー改質剤として、使用され得る。正確な接触角測定のためのハンドシートの形成は水中に溶媒乾燥改質セルロース系材料を分散させることを含み、その材料は極めて疎水性であり得るため、溶媒乾燥改質セルロース系材料の接触角は決定不能であり得る。溶媒乾燥後、表面改質剤は、改質セルロース系材料の約0.05重量%~約10重量%の範囲で存在する。乾燥後に改質セルロース系材料中に存在する水の量は、典型的には約5重量%未満である。しかしながら、材料が湿った環境に存在する場合、この値は時間の経過と共に増加し得る。
【0211】
いくつかの実施形態において、改質セルロース系材料は、疎水性をさらに促進するために相溶化剤で処理され得る。例えば、改質セルロース系材料をポリプロピレン組成物に組み込もうとする場合、改質セルロース系材料は相溶化剤で処理され得る。相溶化剤は、改質セルロース系材料を乾燥させるのに使用される溶媒に可溶性であり、改質セルロース系材料と反応性であり、及び/又は改質セルロース系材料とそれが埋め込まれる材料との間の相溶性を向上させる任意の材料であり得る。例えば、相溶化剤は、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレンコポリマー及び/又は無水マレイン酸ポリプロピレン(MAPP)コポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、相溶化剤は反応性コポリマーを含む。相溶化剤で処理された改質セルロース系材料は、疎水性で外観が綿毛状である。綿毛状の溶媒乾燥改質セルロース系材料中に水滴が懸濁したままであり、測定可能な接触角を有しないため、接触角は決定不能であり得る。溶媒乾燥後、相溶化剤は、改質セルロース系材料の約5重量%~約100重量%の量で存在する。相溶化剤で処理された典型的な溶媒乾燥改質セルロース系材料の密度は約1.5g/cm3であるが、綿毛状の溶媒乾燥改質セルロース系材料の嵩密度は数倍低くてもよい。
【0212】
改質セルロース系材料を相溶化剤で処理するために、相溶化剤は、方法100の溶媒に添加され得る。任意選択によるブロック126において、相溶化剤が提供される。いくつかの実施形態において、相溶化剤は、溶媒及び/又は予熱溶媒に添加される。次に、改質セルロース系材料の水性スラリーが溶媒混合物に添加される。いくつかの実施形態において、相溶化剤は水と反応し得、共沸混合物が蒸発した後にのみ添加される。相溶化剤は、溶媒乾燥改質セルロース系材料と熱硬化性及び/又は熱可塑性ポリマーとの配合中に添加され得る。いくつかの実施形態では、相溶化剤は代替的乾燥プロセスの前及び/又は代替的乾燥プロセス(リング乾燥、フラッシュ乾燥、分散乾燥、流動床乾燥、オーブン乾燥、通気乾燥、噴霧乾燥、溶媒乾燥、及び水を除去し、相溶化剤をセルロース系材料と反応させることを可能にするために、約100℃を超える温度に加熱することを伴う、従来公知の任意の他の乾燥方法、のうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない)中に添加される。
【0213】
溶媒乾燥改質セルロース系材料は、約10重量%未満の水、好ましくは約5重量%未満の水、最も好ましくは約2重量%未満の水を有する綿毛状材料である。材料は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及び無極性又は非極性の流体のうちの1つ又は複数の中に容易に分散可能である。材料は、(エポキシ及びポリウレタンフォームによる硬化などの)硬化前に材料を液体マトリックスポリマー中に分散させること、配合前に材料を熱硬化性樹脂/熱可塑性樹脂の粉末又はペレットと混合すること、及び配合前又は配合中に材料を溶融した熱硬化性樹脂/熱可塑性樹脂に組み込むことのうちの1つ又は複数によって、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の中に分散され得る。
【0214】
本発明を以下の非限定的な実施例により例示する。
【実施例】
【0215】
実施例1-部分的DMAPA-イミド化SMAを有する表面改質セルロースフィブリル
非反応性希釈剤中でSMAコポリマーとDMAPAとを組み合わせることによって、部分的DMAPA-イミド化SMAコポリマーを調製した。得られた混合物を約2.5時間かけて約165℃に加熱した。加熱期間中に水を除去した。次いで、得られたDMAPA-イミド化SMAコポリマーの第三級アミンを、酢酸を添加することによりプロトン化した。得られたカチオン性DMAPA-イミド化SMAコポリマーは水溶性であった。水に溶解すると、カチオン性水溶液が生成した。部分的DMAPA-イミド化SMAコポリマーの分子量は、約6,500g/mol~7,000g/molであった。コポリマー主鎖中の無水マレイン酸単位対スチレン単位の比は約4:6であった。DMAPAでイミド化された無水マレイン酸単位の割合は約95%であった。
【0216】
部分的DMAPA-イミド化SMAコポリマーを、約5のpHを有するセルロースフィブリルの水性スラリーに添加した。このpHでは、コポリマーは水に可溶であった。混合物を室温で約30分間(又は部分的DMAPA-イミド化SMAコポリマーがセルロースフィブリルスラリー中によく分散するまで)撹拌した。水酸化ナトリウムを使用して、連続的に撹拌しながらスラリーのpHを約15分かけて約5から約8.5に上昇させた。混合物をさらに約30分間撹拌して、コポリマーをセルロースフィブリルの表面に析出させ、堆積させた。次いで、表面改質セルロースフィブリルを遠心分離及び濾過を用いて脱水して、約10重量%~約20重量%の固形分を有する材料を得た。表面改質剤は、約1重量%~約10重量%の範囲内の量で表面改質セルロースフィブリル中に存在した。次いで、表面改質セルロースフィブリルから製造されたハンドシートの接触角を、未改質セルロースフィブリルから製造されたハンドシートの接触角と比較した。接触角は、未改質セルロースフィブリルから製造されたハンドシート及び表面改質セルロースフィブリルから製造されたハンドシートを制御された温度(20℃)及び湿度(50%)の室内において、少なくとも約24時間コンディショニングすることによって測定した。
図4Aに示すように、未改質セルロースフィブリルの接触角は約40°であった。
図4Bに示すように、部分的DMAPA-イミド化SMAコポリマーで表面改質したセルロースフィブリルの接触角は約105°であった。より大きい接触角は、表面改質セルロースフィブリルが未改質セルロースフィブリルよりも向上した疎水性を示したことを示す。
【0217】
実施例2-溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリル
実施例1で製造した表面改質セルロースフィブリルを方法100に従って乾燥した。キシレンを139℃の温度に予熱した。10重量%の表面改質セルロースフィブリルを有する水性スラリーを熱キシレンに添加した。得られた溶液は、1重量%の表面改質セルロースフィブリル、9重量%の水、及び90重量%のキシレンからなっていた。共沸混合物が形成され、これを約90℃で約30分間蒸留した。共沸混合物が完全に蒸発すると、溶液の温度は急速に139℃に上昇した。次いで、残留キシレンをデカントし、改質セルロースフィブリルを約60℃で約1時間、空気乾燥させた。
図5A及び5Bから、個々の溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリルは、最小限の凝集/角化を伴う良好な分離を有することが分かる。
【0218】
実施例3-MAPPの存在下で溶媒乾燥させた表面改質セルロースフィブリル
図6A、6B、7A、7B及び7Cは、実施例1で製造され、MAPPの存在下で方法100に従って溶媒乾燥された表面改質セルロースフィブリルを示す。10重量%の表面改質セルロースフィブリルを有する水性スラリーをキシレンに添加した。得られた溶液は、1重量%の表面改質セルロースフィブリル、9重量%の水、及び90重量%のキシレンからなっていた。共沸混合物が形成され、これを約90℃で約30分間蒸留した。共沸混合物が完全に蒸発すると、溶液の温度は急速に139℃に上昇した。次いで、(改質セルロースフィブリルに対して)50重量%のMAPPを添加し、熱キシレン溶液に溶解させ、温度を約30分間、139℃に維持した。次いで、過剰の溶解MAPPを有する残留キシレンをデカントした。表面改質セルロースフィブリルを熱(>100℃)キシレンで1回すすぎ、次いで約60℃で約1時間、空気乾燥させた。
図6A及び6Bから分かるように、溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリルの表面上にMAPPの小粒子が析出した。
図7A、7B、及び7Cから、溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリルは非常に綿毛状であることも分かる。
【0219】
セルロースフィブリルの表面改質により、共沸蒸留後に相溶化剤(すなわちMAPP)を添加する前に、フィブリルを無水環境に完全に分散させることが可能となる。共沸蒸留後の相溶化剤の添加は、MAPPの無水物単位が水と反応するのを防ぎ、これはMAPPがセルロースフィブリルと架橋するのを防ぐと考えられる。
【0220】
次いで、「扁平圧縮シート」及び「綿毛」形態の溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリルの接触角を決定した。扁平圧縮シートは、溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリルを扁平ディスク状にプレスすることによって作製し、制御された温度(20℃)及び湿度(50%)の室内において、少なくとも約24時間コンディショニングした。
図8Aに示すように、扁平圧縮シート形態の溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリルの接触角は約145°であり、これらのフィブリルの高い疎水性を示した。
図8Bに示すように、綿毛形態の溶媒乾燥表面改質セルロースフィブリルの接触角は測定できなかった。しかし、これらのフィブリルの表面の液体ビーズは材料の上に位置するように見え、格別に高い疎水性を示した。
【0221】
実施例4-オーブン乾燥表面改質セルロース系材料
図9は、部分的DMAPA-イミド化SMAコポリマー(MW約6,500g/mol~約7,000g/mol、コポリマー主鎖中の無水マレイン酸単位対スチレン単位の比約4:6、約95%の無水マレイン酸単位がDMAPAでイミド化)で表面改質したセルロースフィブリルの2つの試料のFTIRスペクトルを示す。スペクトルは、4cm
-1の分解能での4,000cm
-1~400cm
-1の周波数範囲における32回の走査を平均することにより、ZnSe窓を備えた分光光度計(Perkin Elmer、Wellesley、MA)で記録した。第1の(対照)試料を室温で空気乾燥した。第2の試料を105℃の温度で一晩オーブン乾燥した。第2の試料のFTIRスペクトルは約1715cm
-1にピークを示す。第1の試料のFTIRスペクトルにはこのピークがない。理論に拘束されるものではないが、オーブン乾燥すると、表面改質剤は、表面改質剤の無水物基とセルロース材料のヒドロキシル基との間のエステル化によって、セルロース系材料の表面と相互作用するものと推測される。第2の試料のFTIRスペクトルにおける約1715cm
-1のピークは、表面改質剤の無水物基とセルロース系材料のヒドロキシル基との間に形成されたエステル基に対応すると考えられる。
【0222】
実施例5-様々なpHで部分的DMAPA-イミド化SMAを有する表面改質セルロースフィブリル
実施例1に記載のように調製した部分的DMAPA-イミド化SMAコポリマー(MW約6,500g/mol~約7,000g/mol、コポリマー主鎖中の無水マレイン酸単位対スチレン単位の比約4:6、約95%の無水マレイン酸単位がDMAPAでイミド化)を、セルロースフィブリルの水性スラリーに添加した。各スラリーは、約5重量%のセルロースフィブリル及び約2.5重量%の部分的DMAPA-イミド化SMA(すなわち、セルロースフィブリル対部分的DMAPA-イミド化SMAの比約2:1)を含有していた。水酸化ナトリウムを添加することにより、スラリーのpHを
図10Aに示す次のpH値に調整した:(i)6.9;(ii)7.5;(iii)8.2;及び(iv)9.2。約8.2以上のpHでは、部分的DMAPA-イミド化SMAが析出した。次いで、スラリーを約139℃(すなわち、キシレンの沸点付近)の温度に予熱したキシレンに添加した。
図10Aに示すように、約1gの各スラリーを約100mLの予熱キシレンに添加した。キシレンは、スラリー中の水と共沸混合物を形成した。キシレンの沸点より低い沸点を有する共沸混合物を混合物から蒸留した。過剰のキシレンを表面改質セルロース系材料からデカントし、材料を金属の試料トレイに移した。
図10Bは、残留キシレン中の表面改質セルロース系材料の分散を示す。
図10Bに見られるように、スラリーのpHを約8.2以上に調整することによって、分散が改善された。理論に拘束されるものではないが、表面改質剤の析出は表面改質セルロース系材料の分散を向上させると推測される。
【0223】
実施例6-表面を改質する、部分的DMAPA-イミド化SMAを有するセルロースフィブリルの様々な重量%のスラリー
実施例1に記載のように調製した部分的DMAPA-イミド化SMAコポリマー(MW約6,500g/mol~約7,000g/mol、コポリマー主鎖中の無水マレイン酸単位対スチレン単位の比約4:6、約95%の無水マレイン酸単位がDMAPAでイミド化)を、セルロースフィブリルの水性スラリーに添加した。
図11Aに示すように、セルロースフィブリルの様々なスラリーは、約(i)13.7重量%のセルロースフィブリル;(ii)9.0重量%のセルロースフィブリル;(iii)7.7重量%のセルロースフィブリル;(iv)4.7重量%のセルロースフィブリル;(iv)2.0重量%のセルロースフィブリルを含有していた。各スラリーは、(各スラリー中のセルロースフィブリルの重量%に対して)約50重量%のDMAPA-変性イミド化SMAを含有していた。水酸化ナトリウムを添加することによって、各スラリーのpHを約8.5に調整した。次いで、スラリーを約139℃(すなわち、キシレンの沸点付近)の温度に予熱したキシレンに添加した。約1gのスラリーを約100mLの予熱キシレンに添加した。キシレンは、スラリー中の水と共沸混合物を形成した。キシレンの沸点より低い沸点を有する共沸混合物を混合物から蒸留した。過剰のキシレンを表面改質セルロース系材料からデカントし、材料を金属の試料トレイに移した。
図11Bは、残留キシレン中の表面改質セルロース系材料の分散を示す。表面改質セルロース系材料の分散は、水性スラリー中のセルロースフィブリルの重量%が約13.7重量%から約2.0重量%に減少するにつれて向上した。約13.7重量%のセルロースフィブリルを含有するスラリーから得られた表面改質セルロース系材料は、分散せず、いくつかの凝集体が形成された。約9.0重量%のセルロースフィブリルを含有するスラリーから得られた表面改質セルロース系材料は、いくつかの凝集体を形成した。表面改質セルロース系材料は、約3分以内に、疎水性溶媒中に分散した約7.7重量%を含有するスラリーから得られた。表面改質セルロース系材料は、約2分以内に、疎水性溶媒中に分散した約4.7重量%のセルロースフィブリルを含有するスラリーから得られた。この表面改質セルロース材料は「綿毛状」であるように見えた。表面改質セルロース系材料は、約1分より短い間で、疎水性溶媒中に分散した約2.0重量%のセルロースフィブリルを含有するスラリーから得られた。この表面改質セルロース材料は「最も綿毛状」であるように見えた。最小の粒子はこの表面改質セルロース材料で形成された。
【0224】
用語の解釈
文脈上明らかに別段の要求がない限り、明細書及び特許請求の範囲を通じて:
・「含む」、「含んでいる」などは、排他的又は網羅的な意味とは異なり、包括的な意味で解釈されるべきである。すなわち、「含むが、それに限定されない」という意味である。
・「接続した」、「結合した」、又はその任意の変形は、2つ以上の要素間の直接的又は間接的な任意の接続又は結合を意味する。要素間の接続又は結合は、物理的、論理的、又はそれらの組み合わせであり得る。
・本明細書を説明するために使用される場合、「本明細書」、「上記」、「下記」、及び類似の意味の語は、本明細書を全体として指すものとし、本明細書の特定の部分を指すものではない。
・2つ以上の項目のリストに関する「又は」は、リスト中の任意の項目、リスト中の全ての項目、及びリスト中の項目の任意の組み合わせ、という解釈の全てに対応する。
・単数形「a」、「an」、及び「the」には、任意の適切な複数形の意味も含まれる。
【0225】
構成要素(例えば、基材、アセンブリ、デバイス、マニホールドなど)が上記に言及される場合、別段の指示がない限り、その構成要素への言及(「手段」への言及を含む)は、その構成要素の等価物として、記載の構成要素の機能を果たす(すなわち、機能的に等価な)任意の構成要素を含むと解釈されるべきであり、これは、本明細書に記載の典型的実施形態における機能を果たす、開示された構造と構造的に等価でない構成要素を含む。
【0226】
システム、方法、及び装置の具体例は、例示の目的で本明細書に記載されてきた。これらは例に過ぎない。本明細書で提供される技術は、上記の例示のシステム以外のシステムにも適用することができる。本発明の実施の範囲内で、多くの変更、修正、追加、省略、及び置換が可能である。本発明は、当業者に明らかであろう記載された実施形態に対する変形を含み、これは、特徴、要素及び/又は行為を、等価な特徴、要素及び/又は行為に置き換えること;異なる実施形態からの特徴、要素及び/又は行為を組み合わせること;本明細書に記載の実施形態からの特徴、要素及び/又は行為を、他の技術の特徴、要素及び/又は行為と組み合わせること;及び/又は記載された実施形態から特徴、要素及び/又は行為を組み合わせることを省略すること、によって得られる変形を含む。
【0227】
従って、以下に添付される特許請求の範囲及び以下に導入される特許請求の範囲は、合理的に推測され得るような全ての修正、置換、追加、省略、及び部分組み合わせを含むと解釈される。特許請求の範囲は、実施例に記載される好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。