(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 9/508 20060101AFI20220105BHJP
F16F 9/02 20060101ALI20220105BHJP
F16F 9/19 20060101ALI20220105BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20220105BHJP
F16F 9/34 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F16F9/508
F16F9/02
F16F9/19
F16F9/32 L
F16F9/34
(21)【出願番号】P 2020509973
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2019012150
(87)【国際公開番号】W WO2019188807
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2018061798
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018061919
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018062909
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幸一
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202009005757(DE,U1)
【文献】特表平11-511229(JP,A)
【文献】国際公開第2007/143760(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/093548(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0175830(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0091641(US,A1)
【文献】実開昭52-111894(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
F16F 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに近接離反する一対の部材の間に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するダンパーであって、
端部が開口部をなす筒状のシリンダーと、
前記シリンダーの前記開口部を通して移動可能に挿入され、係合部を有するロッドと、
前記ロッドの軸方向に沿って所定長さで延び、前記ロッドを囲むように装着された弾性樹脂材料からなるピストンとを有し、
前記ピストンは、軸方向の一端側に設けられた、前記シリンダーの内周に常時圧接される凸部を有しており、
前記ピストンは、前記ロッドを囲むように配置された本体を有しており、前記凸部は、前記本体の外周から外径方向に向けて突出し、前記本体と一体成形されており、
前記ダンパーの制動時に、前記ロッドの係合部が、前記ピストンの他端に当接し、前記シリンダーの内周に圧接された前記凸部との間で、前記ピストンに対して、軸方向圧縮力が作用し、該軸方向圧縮力により前記ピストンを圧縮させることで、前記ピストンが前記シリンダーの内周に圧接されるように構成されており、
前記ピストンは、その外周に切欠き部を有しており、該切欠き部は、前記ピストンの他端側から一端に至るまで、前記凸部を軸方向に貫通して形成されていることを特徴とするダンパー。
【請求項2】
互いに近接離反する一対の部材の間に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するダンパーであって、
端部が開口部をなす筒状のシリンダーと、
前記シリンダーの前記開口部を通して移動可能に挿入され、係合部を有するロッドと、
前記ロッドの軸方向に沿って所定長さで延び、前記ロッドを囲むように装着された弾性樹脂材料からなるピストンとを有し、
前記ピストンは、軸方向の一端側に設けられた、前記シリンダーの内周に常時圧接される凸部を有しており、
前記ピストンは、前記凸部と、ダンパーの制動方向とは反対側の戻り方向に移動する際に、前記ロッドに係合する被係合部とを有しており、前記被係合部は、前記ピストンの前記凸部よりも、前記戻り方向側に配置されており、前記戻り方向に移動する際に、前記被係合部と前記凸部との間で、前記ピストンに対して、軸方向引張力が作用し、該軸方向引張力により、前記ピストンが軸方向に引き延ばされて縮径するように構成されており、
前記ピストンは、その外周に切欠き部を有しており、該切欠き部は、前記ピストンの他端側から一端に至るまで、前記凸部を軸方向に貫通して形成されていることを特徴とするダンパー。
【請求項3】
互いに近接離反する一対の部材の間に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するダンパーであって、
端部が開口部をなす筒状のシリンダーと、
前記シリンダーの前記開口部を通して移動可能に挿入され、係合部を有するロッドと、
前記ロッドの軸方向に沿って所定長さで延び、前記ロッドを囲むように装着された弾性樹脂材料からなるピストンとを有し、
前記ピストンは、軸方向の一端側に設けられた、前記シリンダーの内周に常時圧接される凸部を有しており、
前記ダンパーの制動時に、前記ロッドの係合部が、前記ピストンの他端に当接し、前記シリンダーの内周に圧接された前記凸部との間で、前記ピストンに対して、軸方向圧縮力が作用するように構成されており、
前記ピストンは、前記ロッドの軸方向に沿って所定長さで延び、前記ロッドを囲むように配置された本体と、この本体の外周から外径方向に向けて突出し、前記シリンダーの内周に圧接される前記凸部とを有しており、
前記凸部は、前記本体の周方向に沿って延び、前記本体の軸方向に並列して配置された複数の第1凸部と、隣り合う第1凸部間の周方向所定箇所を互いに連結することにより、前記第1凸部と協同して環状凸部を形成する第2凸部とを有しており、
前記凸部の前記環状凸部が前記シリンダーの内周に密着して、それらの内部に密閉空間が形成されることを特徴とするダンパー。
【請求項4】
前記ピストンは、その外周に切欠き部を有しており、該切欠き部は、一端から他端側へ向って少なくとも途中まで形成されているか、又は、他端から一端側へ向って少なくとも途中まで形成されている請求項3記載のダンパー。
【請求項5】
前記ピストンは、その外周が円周形状をなしており、前記切欠き部は、前記ピストンを軸方向から見たときに、円周形状の一部を一平面でカットした形状をなしている請求項1、2、4のいずれか1つに記載のダンパー。
【請求項6】
前記切欠き部は、前記凸部を軸方向に貫通して延びており、
前記ダンパーの制動時に、前記軸方向圧縮力によって、前記ピストンの軸方向における少なくとも一部の全周が前記シリンダーの内周に圧接される一方、前記凸部に形成された切欠き部は、前記シリンダーの内周に密着しないように構成されている請求項4記載のダンパー。
【請求項7】
前記切欠き部は、前記凸部には形成されておらず、ダンパー制動時に、前記凸部の全周が前記シリンダーの内周に圧接される一方、前記切欠き部が設けられた部分は、前記シリンダーの内周に密着せず、該内周との間に隙間を形成するように構成されている請求項4記載のダンパー。
【請求項8】
互いに近接離反する一対の部材の間に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するダンパーであって、
端部が開口部をなす筒状のシリンダーと、
前記シリンダーの前記開口部を通して移動可能に挿入され、係合部を有するロッドと、
前記ロッドの軸方向に沿って所定長さで延び、前記ロッドを囲むように装着された弾性樹脂材料からなるピストンとを有し、
前記ピストンは、軸方向の一端側に設けられた、前記シリンダーの内周に常時圧接される凸部を有しており、
前記ダンパーの制動時に、前記ロッドの係合部が、前記ピストンの他端に当接し、前記シリンダーの内周に圧接された前記凸部との間で、前記ピストンに対して、軸方向圧縮力が作用するように構成されており、
前記ピストンの外周は、一端側から他端側に向けて縮径する形状をなしていることを特徴とするダンパー。
【請求項9】
互いに近接離反する一対の部材の間に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するダンパーであって、
端部が開口部をなす筒状のシリンダーと、
前記シリンダーの前記開口部を通して移動可能に挿入され、係合部を有するロッドと、
前記ロッドの軸方向に沿って所定長さで延び、前記ロッドを囲むように装着された弾性樹脂材料からなるピストンとを有し、
前記ピストンは、軸方向の一端側に設けられた、前記シリンダーの内周に常時圧接される凸部を有しており、
前記ダンパーの制動時に、前記ロッドの係合部が、前記ピストンの他端に当接し、前記シリンダーの内周に圧接された前記凸部との間で、前記ピストンに対して、軸方向圧縮力が作用するように構成されており、
前記ピストンの内周には、周方向に沿った凹部が、前記ピストンの軸方向に複数設けられていることを特徴とするダンパー。
【請求項10】
互いに近接離反する一対の部材の間に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するダンパーであって、
端部が開口部をなす筒状のシリンダーと、
前記シリンダーの前記開口部を通して移動可能に挿入され、係合部を有するロッドと、
前記ロッドの軸方向に沿って所定長さで延び、前記ロッドを囲むように装着された弾性樹脂材料からなるピストンとを有し、
前記ピストンは、軸方向の一端側に設けられた、前記シリンダーの内周に常時圧接される凸部と、ダンパーの制動方向とは反対側の戻り方向に移動する際に、前記ロッドに係合する被係合部とを有しており、
前記ダンパーの制動時に、前記ロッドの係合部が、前記ピストンの他端に当接し、前記シリンダーの内周に圧接された前記凸部との間で、前記ピストンに対して、軸方向圧縮力が作用するように構成されており、
前記ロッドは、前記ピストンの前記被係合部に係合する係合部を有しており、前記ロッドの、前記係合部よりも、前記制動方向側の外周には、前記ピストン内周に当接する突条が軸方向に延びるように、かつ、周方向に所定間隔で並んで複数形成されていることを特徴とするダンパー。
【請求項11】
前記環状凸部は、前記ピストンの外周の周方向に沿って、複数配置されている請求項3記載のダンパー。
【請求項12】
前記本体の外周は円周形状をなしており、
前記第2凸部は隣り合う前記第1凸部の周方向両端部を連結しており、周方向で隣り合う前記第2凸部どうしの間には、前記ピストンを軸方向で見たときに、円周形状の一部を一平面でカットした形状をなす切欠き部が設けられている請求項11記載のダンパー。
【請求項13】
前記凸部は、前記本体の、前記ダンパーの制動方向の一端側に設けられており、前記凸部に設けられた前記切欠き部は、前記本体の、前記ダンパーの戻り方向の他端に向けて延びている、請求項12記載のダンパー。
【請求項14】
前記環状凸部は、前記ピストンを軸方向から見たときに、周方向に対応する2箇所に配置された一対のものからなり、前記切欠き部は、前記一対の環状凸部の間に設けられた、一対のものからなる、請求項12又は13記載のダンパー。
【請求項15】
前記切欠き部には、前記ピストンを形成する分割型の分割線が位置するように設けられている請求項1、2、4~7、12~14のいずれか1に記載のダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のグローブボックスの開閉動作等の制動に用いられる、ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のグローブボックスには、リッドが急に開くのを抑制して緩やかに開かせるために、ダンパーが用いられることがある。
【0003】
このようなダンパーとして、下記特許文献1には、基端側が開口したシリンダーと、該シリンダー内に挿入されるロッドと、ロッドの先端に設けられたピストンとを有する、ダンパーが記載されている。ピストンは、ロッド先端に固定されたアダプターと、アダプターの先端側外周に装着された第1シール部材と、アダプター外周であって、第1シール部材に隣接して、シリンダー基端寄りの位置に装着された第2シール部材とを有している。また、第1シール部材は、断面がV字リップ状をなした環状をなし、シリンダー内周に常時圧接する。一方、第2シール部材は、外周に軸方向に延びる溝を複数設けた、略円筒状をなしている。そして、第2シール部材は、ロッドがシリンダーの先端側に押し込まれる際に、空気圧を受けて拡径してシリンダー内周に圧接して、第1シール部材と合わせて制動力を付与し、一方、ロッドがシリンダーの開口から引き出される際に縮径して、シリンダー内の空気が排出して、制動力を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8348028号明細書(US8348028B2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、グローブボックスなどの開閉においては、手でゆっくり開くときには、制動力を弱くし、グローブボックス内の荷物の重さ等によって急激に開くときには、制動力を強くして、使い勝手を損なわずに、開いたときの衝撃力を弱めることが望まれている。このため、ロッドの移動速度に応じて制動力が変動する、荷重応答特性に優れたダンパーが要求されている。
【0006】
この要求に対して上記特許文献1のダンパーでは、第1シール部材と第2シール部材とが別体であるため、制動力が付与される際に、略円筒状をなした第2シール部材の全周が一気に拡径して、シリンダー内周に圧接することなるので、上記のような荷重応答性をもたせることは難しい。
【0007】
したがって、本発明の目的は、荷重応答特性に優れたダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、互いに近接離反する一対の部材の間に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するダンパーであって、端部が開口部をなす筒状のシリンダーと、前記シリンダーの前記開口部を通して移動可能に挿入され、係合部を有するロッドと、前記ロッドの軸方向に沿って所定長さで延び、前記ロッドを囲むように装着された弾性樹脂材料からなるピストンとを有し、前記ピストンは、軸方向の一端側に設けられた、前記シリンダーの内周に常時圧接される凸部を有しており、前記ダンパーの制動時に、前記ロッドの係合部が、前記ピストンの他端に当接し、前記シリンダーの内周に圧接された前記凸部との間で、前記ピストンに対して、軸方向圧縮力が作用するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリンダーに対してロッドが制動方向に移動すると、ロッドの係合部がピストンの他端に当接し、係合部によってピストンが押圧される。一方、ピストンの一端では、凸部がシリンダー内周に常時圧接されているため、ピストンに軸方向圧縮力が作用し、ピストンが他端側から圧縮されてシリンダー内周に圧接されていくことによって、制動力が増大する。この場合、ロッドの制動方向への移動速度が速いほどピストンに対する軸方向圧縮力が高くなって、ピストンの圧接面積が拡大するため、制動力をより高めることができる。このように、ロッドの移動速度に応じて制動力が変動する、荷重応答特性に優れたダンパーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るダンパーの、第1実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】同ダンパーを構成するロッドを示しており、(a)はその斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【
図3】同ダンパーを構成するピストンを示しており、(a)はその斜視図、(b)は(a)とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
【
図4】同ダンパーを構成するピストンを示しており、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA-A矢示線における断面図、(d)は(b)のB-B矢示線における断面図、(e)は(b)のC-C矢示線における断面図である。
【
図5】同ダンパーを構成するピストンにおいて、ロッドが制動方向とは反対側の戻り方向に移動する際の、状態を示す斜視図である。
【
図6】同ダンパーを構成するピストンを成形するための型構造を示しており、(a)はその平面図、(b)は正面図である。
【
図7】同ダンパーを構成するキャップを示しており、(a)はその組付け斜視図、(b)は分解斜視図である。
【
図8】同ダンパーの使用状態を示しており、(a)はロッドが静止した状態の説明図、(b)はダンパーの制動力が作用した状態の説明図である。
【
図9】同ダンパーの使用状態を示しており、ダンパーの制動力が解除される状態の説明図である。
【
図11】同ダンパーを組み立てるときに、シリンダー内にピストンを装着したロッドを挿入する際の状態を示す斜視図である。
【
図12】
図11の状態において、環状凸部を構成する複数の第1凸部の変形状態を間示しており、(a)は一つの第1凸部がシリンダー内に挿入され、もう一つの第1凸部がシリンダーの開口部内周に当接した際の、圧接部の変形状態を示す説明図、(b)は(a)の状態から、もう一つの第1凸部もシリンダー内に完全に挿入された際の、圧接部の変形状態を示す説明図である。
【
図13】(a)はロッドが静止した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図14】(a)は
図13(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図15】(a)は
図14(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図16】(a)は
図15(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図17】(a)は
図16(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図18】ロッドがダンパーの戻り方向に移動する際の、ピストンの第1状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図19】ロッドがダンパーの戻り方向に移動する際の、ピストンの第2状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図20】ロッドがダンパーの戻り方向に移動する際の、ピストンの第3状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図21】ロッドがダンパーの戻り方向に移動する際の、ピストンの第4状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図22】ロッドがダンパーの戻り方向に移動する際の、ピストンの第5状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図23】本発明に係るダンパーの、第2実施形態を示しており、同ダンパーを構成するピストンの斜視図である。
【
図24】(a)はロッドが静止した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図25】(a)は
図24(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図26】(a)は
図25(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図27】(a)は
図26(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図28】(a)は
図27(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図29】ロッドがダンパーの戻り方向に移動する際の、ピストンの当初の状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図30】ロッドがダンパーの戻り方向に移動し、ピストンが元の形状に戻った際の状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図31】本発明に係るダンパーの、第3実施形態を示しており、同ダンパーを構成するピストンの斜視図である。
【
図32】(a)はロッドが静止した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図33】(a)は
図32(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図34】ロッドがダンパーの戻り方向に移動する際の、ピストンの当初の状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図35】ロッドがダンパーの戻り方向に移動し、ピストンが元の形状に戻った際の状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図36】本発明に係るダンパーの、第4実施形態を示しており、同ダンパーを構成するピストンの斜視図である。
【
図37】(a)はロッドが静止した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図38】(a)は
図37(a)から、ロッドがダンパー制動方向へ移動した状態の要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図39】ロッドがダンパーの戻り方向に移動する際の、ピストンの当初の状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図40】ロッドがダンパーの戻り方向に移動し、ピストンが元の形状に戻った際の状態を示しており、(a)はその要部拡大断面図、(b)は(a)における、シリンダー内周に対するピストンの圧接状態を説明する要部拡大説明図である。
【
図41】上記実施形態のダンパーに対して、ダンパーの制動方向を逆向きとしたダンパーの、要部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~22を参照して、本発明に係るダンパーの、第1実施形態について説明する。
【0012】
図1に示されるダンパー10は、互いに近接離反する一対の部材に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するものであって、例えば、自動車のインストルメントパネルに設けられた収容部の開口部に、開閉可能に取付けられたグローブボックスやリッド等の、制動用として用いることができる。なお、以下の実施形態においては、一方の部材を、インストルメントパネルの収容部等の固定体とし、他方の部材を、固定体の開口部に開閉可能に取付けられた、グローブボックスやリッド等の開閉体として説明するが、一対の部材は互いに近接離反可能なものであれば、特に限定はされない。
【0013】
図1に示すように、この実施形態のダンパー10は、略円筒状をなしたシリンダー20と、該シリンダー20内に移動可能に挿入されたロッド30と、このロッド30の軸方向先端側に装着された弾性樹脂材料からなるピストン50と、シリンダー20の開口部22に装着されるキャップ80とから、主として構成されている。
【0014】
図1や
図8に示すように、この実施形態のシリンダー20は、所定長さで延びる略円筒状の壁部21を有しており、その軸方向の一端側が開口して開口部22をなしている。また、壁部21の他端側は端部壁23によって閉塞されている。この端部壁23の外側には環状をなした取付部24が設けられており、該取付部24を介して、インストルメントパネル等の一方の部材に、シリンダー20が取付けられるようになっている。更に、壁部21の一端側には、円形状の嵌合孔25,25が周方向に対向して形成されている(
図1参照)。なお、壁部21の他端側を開口させて、オリフィスを設けたキャップを装着してもよく、更に、取付部を、壁部21外周の軸方向所定箇所に設けてもよい。また、シリンダー20は、その外径が12mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。
【0015】
図7(a),(b)に示すように、この実施形態における前記キャップ80は、半割の円筒状をなした一対の半割体81,81を有しており、これらを係止片88やこれに係止する被係止部90を介して互いに係合させることで、一体化されるようになっている。各半割体81は、その基端外周にフランジ部83が設けられており、また、軸方向途中の外周に嵌合突部84が突設されている。そして、キャップ80は、その先端側からシリンダー20の開口部22内に挿入されて、各フランジ部83をシリンダー20の基端面に係止させると共に、各嵌合突部84をシリンダー20の嵌合孔25,25に嵌合させることで、シリンダー20の基端側に装着されるようになっている(
図8及び
図9参照)。
【0016】
図11に示すように、上記ロッド30は、上記シリンダー20の開口部22を通して、その先端側からシリンダー20内に移動可能に挿入されるものであって、円柱状をなした軸部31と、その先端側に連設され、ピストン50が装着されるピストン装着部32とを有している。前記軸部31の基端側には、環状をなした取付部33が設けられており、該取付部33を介して、グローブボックス等の他方の部材に、ロッド30が取付けられるようになっている。
【0017】
図2(a)~(c)を併せて参照すると、前記ピストン装着部32は、ロッド30の軸方向の最先端に設けられ、略円板状をなした第1係合部34と、この第1係合部34に対して、ロッド基端側に所定間隔をあけて設けられ、略円形突起状をなしたストッパー部35とを有している。
【0018】
前記第1係合部34は、ダンパーが制動力を付与する方向となる制動方向に、ロッド30が移動する際に、
図14~17に示すようにピストン50に係合する部分となっている(ここでは第1係合部34はピストン50の他端側に係合する)。すなわち、この第1係合部34が、本発明における「係合部」をなしている。なお、この実施形態におけるダンパーの制動方向とは、第1係合部34がシリンダー20の端部壁23から離れて、シリンダー20の開口部22からの、ロッド30の引出し量が増大する方向を意味する(
図8や
図13の矢印F1参照)。
【0019】
また、ストッパー部35は、全体として略円形突起状をなしていると共に、その周方向両側であって、第1係合部34側の位置に、壁部をカットしてなるカット部35a,35aがそれぞれ形成されている。各カット部35aには、後述する第2柱部39に設けた平坦面40に連続する平坦面が設けられている(
図2(a)参照)。なお、第1係合部34及びストッパー部35は、その外径が、ピストン50の内径よりも大きく形成されており、更に第1係合部34とストッパー部35との距離は、ピストン50の軸方向長さよりも長く形成されており、第1係合部34とストッパー部35との間で、ピストン50が軸方向に伸縮可能に装着されるようになっている。
【0020】
更にピストン装着部32は、第1係合部34の内面側からロッド基端側に向けて延びる略円柱状の第1柱部36と、この第1柱部36の延出方向先端に連設された略円形突起状をなすと共に、ロッド30がダンパーの制動方向とは反対の戻り方向に移動する際に(
図18~22の矢印F2参照)、ピストン50に係合する第2係合部37と、この第2係合部37の基端側から、凹部38を介してロッド基端側に延びて、前記ストッパー部35に連結された、略円柱状をなした第2柱部39とを有している。
【0021】
なお、この実施形態におけるダンパーの制動方向とは反対の戻り方向(以下、単に「戻り方向」ともいう)とは、第1係合部34がシリンダー20の端部壁23に近接して、シリンダー20内への、ロッド30の押込み量が増大する方向に、ロッド30が移動することを意味する(
図9や
図18~22の矢印F2参照)。
【0022】
また、前記第2係合部37は、
図10や、
図18(a),
図19(a),
図20(a),
図21(a),
図22(a)に示すように、ピストン50の後述する凸部53よりも、ダンパーの戻り方向側に配置されている。更に、第2係合部37及び第2柱部39は、第1柱部36よりも大径で且つ第1係合部34やストッパー部35よりも小径とされており、また、第1柱部36よりも第2柱部39の方が長く形成されている。
【0023】
なお、この実施形態においては、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際に、
図18(a),
図19(a),
図20(a),
図21(a),
図22(a)に示すように、前記第2係合部37がピストン50の後述する被係合部61に係合するようになっている。また、上記の
図15に示す状態から、更にロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、軸方向に縮んでシリンダー内周に圧接した状態のピストン50が、延びた状態に弾性復帰するようになっているが(
図19~22参照)、同
図22に示すように、ピストン50が最も長く延びた状態では、前記ストッパー部35がピストン50の他端側に係合して、ピストン50の延びが規制されるようになっている。
【0024】
また、
図2(a)に示すように、第1係合部34、ストッパー部35、第1柱部36、及び第2柱部39の外周であって、その周方向の2か所には、ロッド30の軸方向に沿って平面状にカットされてなる、平坦面40,40が互いに平行となるように形成されている。なお、第2柱部39に形成された平坦面40は、ストッパー部35に設けたカット部35a,35aの平坦面に対して面一とされている。この平坦面40により、シリンダー20内周やピストン50内周に対して、隙間が形成されるようになっている。
【0025】
更に
図2(a)に示すように、ロッド30の第1係合部37よりも、ダンパーの制動方向側の外周には、ピストン50の内周に当接する突条41が軸方向に延びるように、かつ、周方向に所定間隔で並んで複数形成されている。具体的にこの実施形態では、
図2(c)に示すように、第2柱部39の外周であって、前記平坦面40の周方向両側には、ロッド30の軸方向に沿って延びる突条41,41が、ロッド30の第2係合部37側寄りの先端部分から、ストッパー部35の手前部分に至る長さで突設されている(この実施形態では合計4か所に突条41が設けられている)。この突条41によって、ピストン50内周と第2柱部39外周との間に、隙間が形成されるようになっている。
【0026】
更に
図2(a)や
図2(b)に示すように、第1係合部34の内面の周方向一箇所から、第1柱部36の軸方向に沿って、所定深さで溝部43が形成されている。
図2(b)に示すように、この溝部43は、第1係合部34に設けた平坦面40,40の間であって、その中間となるように設けられている。この溝部43によって、
図14(a),15(a),16(a),17(a)に示すように、第1係合部34の内面にピストン50の他端面が当接した状態においても、第1係合部34の内面とピストン50の他端面との間に隙間を確保でき、また、第1柱部36の外周とピストン50の被係合部61(
図4(c)参照)の内周との間に、隙間を確保できるようになっている。
【0027】
また、軸部31の先端側外周、すなわち、軸部31とストッパー部35との連結部分の外周には、ロッド30の基端側に向けて次第に縮径した、傾斜部44が形成されている。更に、第1柱部36の先端側外周にも、ロッド30の基端側に向けて次第に縮径した傾斜部45が形成されている。
【0028】
なお、上記構造をなしたロッド30は、上述したように、シリンダー20内に先端の第1係合部34側から挿入されて、シリンダー20内で移動可能に配置されるが、この際、
図8や
図9に示すように、ロッド30の第1係合部34を境にして、ロッド30の、ダンパーの戻り方向側に位置する第1室R1と、ロッド30の、ダンパーの制動方向側に位置する第2室R2とが形成されるようになっている。この実施形態では、シリンダー20の端部壁23側に第1室R1が形成され、同シリンダー20の開口部22側に第2室R2が形成される。また、以上説明したロッド30は、軸部31や、取付部33、第1係合部34、ストッパー部35、第2係合部37、その他、第1柱部36や、第2柱部39、複数の突条41等が、すべて一体的に形成されている。
【0029】
次に、
図3~6を参照して、ロッド30の軸方向に沿って所定長さで延び、ロッドの30の第1係合部34の基端側に、ロッド30を囲むように装着され、弾性樹脂材料からなるピストン50について説明する。このピストン50は、例えば、ラバーやエラストマー等のゴム弾性材料や、スポンジ等の樹脂材料から形成されており、ピストン50が軸方向に圧縮された場合には拡径し、軸方向に引張られた場合には縮径するようになっている。なお、上記ピストン50は、ロッド30がダンパーの制動方向に移動する際に、追随してダンパーの制動方向に移動し、一方、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際にも、追随してダンパーの戻り方向に移動する。
【0030】
この実施形態のピストン50は、略円筒状をなすように所定長さで延び、その外周が円周形状とされた本体51と、この本体51の軸方向所定箇所、すなわち、本体51の軸方向の一端側において外径方向に向けて突出して設けられ、シリンダー20の内周に常時圧接される凸部(「圧接部」ともいう)53とを有している。
【0031】
この実施形態における本体51は、略円筒状をなすように所定長さで延び、その外周が円周形状とされている。この本体51の、ダンパーの制動方向とは反対側(ダンパーの戻り方向側)の他端部52(ピストン50がロッド30に装着された状態で、第1係合部34側に位置する端部)の外周は、本体51の軸方向の他端面に向かって次第に縮径するテーパ状をなしている。更に、ピストン50は、ダンパーの制動方向とは反対側の戻り方向に移動する際に、ロッド30に係合する被係合部61とを有している。
【0032】
また、前記凸部53は、前記本体51の、ダンパーの制動方向側の一端部(ピストン50がロッド30に装着された状態で、ストッパー部35側に位置する端部)の外周に、設けられており、後述する切欠き部54を除いて、シリンダー20の内周に常時圧接されており、ロッド30の移動時(ダンパーの移動方向及びダンパーの戻り方向の両方)に、ピストン50に制動力を付与する。
【0033】
なお、以下の説明においては、ピストンにおける、ダンパーの制動方向側の一端部又は一端を、単に「一端部」又は「一端」とし、ダンパーの制動方向とは反対側(ダンパーの戻り方向側)の他端部又は他端を、単に「他端部」又は「他端」として説明する。
【0034】
また、
図4(c)や
図4(d)に示すように、ピストン50の外周は、ピストン50の他端側から一端側に向けて拡径するテーパ状をなしている。この実施形態では、ピストン50を構成する本体51の外周が、テーパ状をなした他端部52の一端側から前記凸部53に向けて、次第に拡径するテーパ状に形成されている。
【0035】
更に、本体51の外周には、テーパ状をなした他端部52の一端側から、軸方向に沿って延びる切欠き部54が形成されている。この切欠き部54は、シリンダー内周と、ピストン外周(本体51や凸部53)との間に、空気の逃げ道を形成して、ピストン50を伸縮変形させやすくすると共に、ピストン50によるダンパー制動力の調整を図るものである。
図4(e)に示すように、この切欠き部54は、ピストン50を軸方向から見たときに、本体51の外周の、円周形状の一部を一平面でカットした形状をなしており、本体51の周方向の2箇所に互いに平行となるように形成されている。更に
図3に示すように、この実施形態における切欠き部54は、前記凸部53を軸方向に貫通して、本体51の一端に至るまで形成されている。このような切欠き部54を設けることにより、ダンパーの制動力が作用していない状態で、本体51の凸部53から他端側に至るまでの外周部分と、シリンダー20の内周との間に隙間が形成される。また、凸部53に切欠き部54を形成したことで、ロッド30やピストン50が静止時や、ダンパーの制動時、ダンパーの制動解除時のいずれにおいても、凸部53の切欠き部54がシリンダー20の内周に密着せず、シリンダー20内周との間で隙間が形成されるようになっている。
【0036】
なお、この実施形態における切欠き部54は、本体51の他端部52の一端側から、本体51の一端に至るまで形成されているが、本体51の他端部52がテーパ状となっていない場合には、切欠き部を本体51の他端から一端に至るまで形成してもよい。但し、切欠き部は、本体51の他端から軸方向途中まで形成してもよく、また、本体51の外周に形成せず、本体51の他端側の凸部53のみに設けてもよい。すなわち、切欠き部は、一端から他端側へ向って少なくとも途中まで形成されているか、又は、他端から一端側へ向って少なくとも途中まで形成されていればよい。
【0037】
更に
図3(a),(b)に示すように、この実施形態における前記凸部53は、ピストン50の本体51の外径方向に突出し、かつ、本体51の周方向に沿って細長く延びる、環状をなした一対の環状凸部56,56を有している。これらの一対の環状凸部56,56は、本体51の一端部外周であって、凸部53の周方向2か所に設けた切欠き部54,54の間に、それぞれ配置されている(
図4(e)参照)。具体的に説明すると、凸部53は、本体51の周方向に沿って延び、本体51の軸方向に並列して配置された複数の第1凸部57,58と、隣り合う第1凸部57,58間の周方向所定箇所を互いに連結することにより、第1凸部57,58と協同して、環状凸部56を形成する第2凸部59とを有している。すなわち、凸部53は、本体51の周方向に沿って延びる複数の第1凸部57,58と、複数の第1凸部57,58の周方向両端を互いに連結するように、第1凸部57,58に対して交差して配置された第2凸部59とからなる、環状凸部56を有している。
【0038】
より具体的に説明すると、前記環状凸部56は、本体51の一端外周に配置され、本体51の周方向に沿って延びる第1凸部57と、この第1凸部57に対して、ピストン50の他端側に所定間隔をあけて平行に配置されると共に、本体51の周方向に沿って延びる、もう一つの第1凸部58と、本体51の軸方向に沿って延び且つ第1凸部57,58に対して直交して配置され、本体51の軸方向に隣り合う一対の第1凸部57,58の周方向両端部どうしを互いに連結する第2凸部59,59とからなり、全体として本体51の周方向に沿って細長く延びる、環状をなしている。
【0039】
また、環状凸部56を構成する凸部57,58,59の内側には、それらによって囲まれて、所定深さの凹溝状をなした凹部60が、本体51の周方向に沿って所定深さで延びて形成されている。更に、各凸部57,58,59の最外径は、シリンダー20の内径よりも大きく形成されており、各凸部57,58,59がシリンダー20の内周に常時圧接されるようになっている。
【0040】
また、
図4(c),(d)に示すように、本体51の他端側内周には、その周方向に沿って環状に突出した、被係合部61が設けられている。この被係合部61は、上述したように、ピストン50に設けた凸部53よりも、ダンパーの戻り方向側に配置されている。そして、この被係合部61は、
図8の矢印F2に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際に、
図18(a),
図19(a),
図20(a),
図21(a),
図22(a)に示すように、ロッド30の第2係合部37に係合するようになっている(
図14(a)参照)。また、この際には、
図14(b)に示すように、ロッド30の第1係合部34と、ピストン50の他端との間に、隙間が形成される。また、この際には、ロッド30の第1係合部34と、ピストン50の他端との間に、隙間が形成される(
図18(b),
図19(b),
図20(b),
図21(b),
図22(b)参照)。
【0041】
そして、ピストン50はシリンダー20の内周に挿入された状態で、凸部53の環状凸部56が、シリンダー20の内周に密着することで、
図12(b)に示すように、それらの内側、すなわち、シリンダー20の内周と、環状凸部56を構成する各凸部57,58,59及び凹部60との間に、密閉空間R3が形成されるようになっている。
【0042】
このように、環状凸部56の内側に、各凸部57,58,59で囲まれた凹部60を設け、これによってシリンダー20の内周との間に、
図12(b)に示すような密閉空間R3を形成したことで、シリンダー20内にピストン50が挿入され、凸部53がシリンダー20の内周に圧接した状態で、凸部53にシリンダー20内周に対する吸着効果が生じるようになっている。
【0043】
すなわち、開口部22を通してシリンダー20内に、ピストン50を他端部52側から挿入していくと、環状凸部56を構成する軸方向に並列した第1凸部57,58のうち、まず、他端部52側の第1凸部58がシリンダー20の内周に押圧されて、
図12(a)の二点鎖線で示す初期形状が、実線で示すように押し潰されて撓み変形しながら挿入され、それと共に、凹部60内の空気が押し出されていく。その後、ピストン50の一端側の第1凸部57がシリンダー20の内周に密着することで、密閉空間R3が形成される。更にピストン50が押し込まれると、第1凸部57がシリンダー20の内周によって強く押し潰されて、
図12(b)の実線で示すように、第1凸部57,58が変形して、密閉空間R3も潰されて容積が小さくなる。こうして、押し潰されて変形した第1凸部57,58が、
図12(b)の二点鎖線で示すように、元の形状に戻ろうとすると、潰された密閉空間R3がやや広がって減圧された状態となるので、凸部53がシリンダー20の内周に吸着される状態となる。
【0044】
なお、
図12(a)の二点鎖線で示す、第1凸部58の、シリンダー20内周に対するラップ面積と、
図12(b)の二点鎖線で示す、第1凸部58及び第1凸部57の、シリンダー20内周に対するラップ面積とは同等であるが、
図12(b)に示す、一対の第1凸部57,58が共にシリンダー20内に挿入された状態における、凸部53のピストン内方への撓み変形量の方が、
図12(a)に示す、ピストン50の他端側の第1凸部58のみがシリンダー20内に挿入された状態における、凸部53のピストン内方への撓み変形量に比べて大きくなる。
【0045】
また、前記環状凸部56は、ピストン50の外周の周方向に沿って、複数配置されている。この実施形態においては、上記の環状凸部56は、
図4(e)に示すように、ピストン50を軸方向から見たときに、凸部53の、周方向に対応する2箇所に配置された一対のものからなる。より具体的に説明すると、各環状凸部56は、同一の周方向長さで且つ同一の軸方向長さで形成された、同一形状の環状凸状をなしており、これらの一対の環状凸部56,56は、ピストン50の本体51の中心Oを通る線分Lに対して、線対称となるように配置されている(
図4(e)参照)。なお、環状凸部としては、ピストン50の外周の周方向に沿って、3個以上配置してもよく、その配置個数は特に限定されない。
【0046】
更に、このダンパー10においては、一つの環状凸部56を形成する第2凸部59と、この第2凸部59に対して本体51の周方向で隣り合い、もう一つの環状凸部56を形成する、他の第2凸部59との間に、円周形状をなした本体51の円周形状の一部を一平面でカットした形状をなす、切欠き部54,54が設けられている。具体的には、凸部53の、一方の環状凸部56の第2凸部59と、他方の環状凸部56の第2凸部59との間に、
図4(e)に示すように、ピストン50を軸方向から見たときに、本体51の円周形状の一部を一平面でカットした形状をなす、切欠き部54,54が、凸部53の周方向の2箇所に互いに平行となるように形成されている。すなわち、この実施形態における切欠き部54,54は、一対の環状凸部56,56の間に設けられた一対のものからなり、ピストン50を軸方向から見たときに、前記一対の環状凸部56,56に対して直交するように配置されている(
図4(e)参照)。
【0047】
上記切欠き部54は、シリンダー内周と、ピストン外周(本体51や凸部53)との間に、空気の逃げ道を形成して、ピストン50を伸縮変形させやすくすると共に、ピストン50によるダンパー制動力の調整を図るものである。なお、凸部53を構成する一対の環状凸部56,56がシリンダー20の内周に密着する一方、これらの切欠き部54,54は、ロッド30やピストン50の静止時や、ダンパーの制動時、ダンパーの制動解除時のいずれにおいても、シリンダー20の内周に密着せず、シリンダー20内周との間で隙間を形成するようになっている。
【0048】
また、凸部53に設けられた各切欠き部54は、本体51の、ダンパーの戻り方向の他端に向けて延びており、この実施形態では、本体51の、テーパ状をなした他端部52に至るまで延びている。なお、各切欠き部54は、本体51の周方向の2箇所に互いに平行となるように形成されている。このような切欠き部54を設けることにより、ダンパーの制動力が作用していない状態で、本体51の凸部53から他端側に至るまでの外周部分と、シリンダー20の内周との間に隙間が形成される。
【0049】
なお、この実施形態における切欠き部54は、本体51の凸部53から、本体51の他端部52に至るまで形成されているが、本体51の他端部52がテーパ状となっていない場合には、凸部53から本体51の他端に至るまで形成してもよい。但し、切欠き部は、本体51の他端から軸方向途中まで形成してもよく、また、本体51の外周に形成せず、本体51の他端側の凸部53のみに設けてもよい。すなわち、切欠き部は、一端から他端側へ向って少なくとも途中まで形成されているか、又は、他端から一端側へ向って少なくとも途中まで形成されていればよい。更に切欠き部54は、凸部53に設けずに、本体51の、凸部53以外の箇所に設けてもよい。
【0050】
なお、以上説明した、環状凸部としては、複数の第1凸部と、その周方向所定箇所に連結された第2凸部とからなる、環状をなしていればよく、例えば、第1凸部が3個以上並列に配置されていてもよく、また、第2凸部も3個以上あってもよい。要は、第1凸部及び第2凸部が協同して環状凸部を形成して、第1凸部及び第2凸部の間に、凹部が形成されて、シリンダー内周との間に密閉空間が形成されれば、どのような形状であってもよい。
【0051】
更に
図3(b)や、
図4(c),(d)に示すように、本体51の内周であって、前記一対の切欠き部54,54に対応する位置には、本体51の他端から一端側に向けて軸方向に沿って延びる、凹溝状をなした空気流通溝62,62が形成されている。
図10に示すように、この空気流通溝62は、本体51の他端から、ロッド30の第2係合部37や凹部38を超えて、第2柱部39の一端に至る長さで形成されている。そして、この空気流通溝62は、ロッド30の第1柱部36や第2係合部37、第2柱部39の一端側の外周との間に、隙間を形成して、ロッド30とピストン50との間に空気を流通させる部分となる。なお、上記空気流通溝は、ロッド30の外周とピストン50の内周との間に形成されていればよく、例えば、ロッドの外周側に形成してもよい。
【0052】
また、
図3や
図4(a)に示すように、本体51の外周に設けた一方の切欠き部54には、ピストン50の他端から一端に向けて、ピストン50の軸方向全域に亘って切込み55が形成されている。この切込み55は、
図4(d)や
図4(e)に示すように、ピストン50の内周に形成した一対の空気流通溝62,62のうち、一方の空気流通溝62に連通している。そして、この切込み55は、ピストン50がダンパーの制動方向に移動する際には、空気流通溝62内が減圧されるために閉じており(
図8参照)、一方、ピストン50がダンパーの戻り方向に移動する際には、空気流通溝62から流入した空気によって押されて、開くように構成されている(
図5及び
図9参照)。
【0053】
また、本体51に設けた切込み55によって、本体51を軸方向に沿って2つに分離することができるようになっているので、ロッド30の外径側からピストン装着部32にピストン50を装着可能となっている。なお、切込み55は、本体51の他端から一端に亘る軸方向全域に形成するのではなく、本体51の他端から一端側に向けて、軸方向途中に至る長さで形成してもよい。
【0054】
そして、ロッド30やピストン50がダンパーの制動方向や戻り方向に移動せず、静止した状態、すなわち、ピストン50が伸縮していない平常時においては、
図10に示すように、ロッド30の第1係合部34と、ピストン50の他端との間に、隙間が形成されると共に、ロッド30のストッパー部35と、ピストン50の一端との間にも、ストッパー部35に設けたカット部35aによって隙間が形成されるようになっている。
【0055】
また、上記構造をなしたピストン50は、例えば、
図6(a),(b)に示すような、分割型100によって形成可能となっている。この分割型100は、互いに近接離反可能な一対の型101,103を有しており、その分割線PL(パーティングライン)、すなわち、一対の型101,103を閉じたときに互いに当接する面が、ピストン50の、前記一対の切欠き部54,54に位置するように設けられている(
図6(a),(b)参照)。
【0056】
そして、上記構成をなしたダンパー10は、ダンパーの制動時に、ロッド30の第1係合部34が、ピストン50の他端部52に当接し、シリンダー20の内周に常時圧接された、凸部53の環状凸部56,56との間で、ピストン50に対して、軸方向圧縮力が作用するように構成されている。これについて
図13~17を参照して詳述する。
【0057】
図13(a)に示すように、ダンパーに制動力が付与されていない状態、すなわち、ロッド30が静止して、その第1係合部34がシリンダー20の端部壁23から離反する方向に移動していない状態では、
図13(b)において、点描のハッチングで示すように、ピストン50の一対の環状凸部56,56が、シリンダー20の内周に圧接されている。また、この状態では、
図13(a)に示すように、ロッド30のストッパー部35がピストン50の一端側に当接し、かつ、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合している。なお、以下の説明において(他の実施形態も含む)において、ピストン50の外周のうち、凸部53を除く、シリンダー20の内周に圧接される部分S(以下、「シリンダー圧接部分S」ともいう)にも、点描のハッチングを付して表現するものとする。また、上記状態では、ピストン50の凸部53に形成した、切欠き部54,54は、シリンダー20の内周に密着しないようになっている(これは
図14~17においても同様である)。
【0058】
そして、
図13(a)に示す状態から、例えば、グローブボックス等が開口部から開くなどして、矢印F1方向に荷重が作用し、第1係合部34がシリンダー20の端部壁23から離反する方向に移動、すなわち、シリンダー20に対してロッド30が制動方向に移動すると、
図14(a)に示すように、ロッド30の第1係合部34がピストン50の他端部52に当接するので、同第1係合部34によってピストン50が一端部側(凸部53側)に向けて押圧される。なお、この状態では、
図14(a)に示すように、ロッド30のストッパー部35は、ピストン50の一端側から離間しており、ストッパー部35とピストン50の一端側との間に隙間が形成されている(
図15~17に示す場合も同様である)。
【0059】
このとき、ピストン50の一端部は、一対の環状凸部56,56がシリンダー20の内周に常時圧接されることで、シリンダー20内でのピストン50の移動が抑制された状態となっているが、この状態で、ピストン50の他端部52が一端部側に向けて押圧されるので、ピストン50の軸方向に圧縮力(軸方向圧縮力)が作用して、ピストン50が他端部52側から圧縮されて拡径する(なお、ピストン50の内径側は縮径する)。その結果、シリンダー20の内周に常時圧接している一対の環状凸部56,56に加えて、ピストン50の外周が、その他端部52の一端側から、シリンダー20の内周に圧接することになるので、ダンパーの制動力が増大する。
【0060】
図14の状態よりも、更に大きな開き荷重がかかって、ピストン50がより早くシリンダー20の端部壁23から離反する方向に移動しようとすると(
図15(a)参照)、ピストン50の他端部52に対する、第1係合部34からの押圧力が大きくなって、ピストン50に対する軸方向圧縮力が増大する。その結果、ピストン50の圧縮量が増えるので、
図15(b)に示すように、ピストン50の外周のシリンダー圧接部分Sの面積が、
図14(b)に示す場合と比べて増大すると共に、ピストン50外周の一部(他端部52の基端側から所定範囲部)の全周が、シリンダー20の内周に圧接するため、ダンパーの制動力が増えて、グローブボックス等の開き速度の増大を抑制して、グローブボックスが勢いよく開いてしまうのを防ぐ。なお、ピストン50に設けた切欠き部54の先端側が、シリンダー20の内周に圧接した状態となるため、ピストン他端側から、切欠き部54とシリンダー20の内周の隙間を通じての、空気の出入りは遮断される(後述する
図16,17に示す場合も同様である)。
【0061】
図15の状態よりも、更に大きな開き荷重がかかって、ピストン50がより早くシリンダー20の端部壁23から離反する方向に移動すると(
図16(a)参照)、ピストン50の他端部52に対する、第1係合部34からの押圧力が更に大きくなって、ピストン50に対する軸方向圧縮力が更に増大する。その結果、ピストン50の圧縮量が増えるので、
図16(b)に示すように、ピストン50の、シリンダー20の内周に対する全周圧接部分(以下、単に「ピストンの全周圧接部分」ともいう)が、
図15(b)に示す場合と比べて増大し、ダンパーの制動力が更に増える。
【0062】
図16の状態よりも、更に大きな開き荷重がかかって、ピストン50がより早くシリンダー20の端部壁23から離反する方向に移動すると(
図17(a)参照)、ピストン50の他端部52に対する、第1係合部34からの更に押圧力が大きくなって、ピストン50に対する軸方向圧縮力が更に増大し、ピストン50の圧縮量が増えるため、
図17(b)に示すように、ピストン50の全周圧接部分が
図16(b)に示す場合と比べて増大し、ダンパーの制動力が更に増える。
【0063】
上記のように、この実施形態においては、
図13~17に示すように、ピストン50がシリンダー20の端部壁23から離反する速度に応じて、ピストン50の、シリンダー20の内周に対する圧接量が、ピストン他端側から徐々に増えて、ダンパーの制動力が増大するようになっている。また、この実施形態においては、ダンパーの制動時に、軸方向圧縮力によって、ピストン50の軸方向における少なくとも一部の全周が、シリンダー20の内周に圧接されるが、その一方、凸部53に形成された切欠き部54は、シリンダー20の内周に密着しないように構成されている(
図14(b),
図15(b),
図16(b),
図17(b)参照)。それによって、圧接部分Sと凸部53との間に溜まった空気が、凸部53に形成された切欠き部54を通して外部に逃げるようになっている。
【0064】
また、この実施形態におけるダンパー10は、シリンダー20内において、ピストン50に対して空気を通過させるための通路として、(1)ロッド30の第1係合部34の平坦面40とシリンダー20内周との隙間、(2)ロッド30の第1係合部34とピストン50の他端との隙間、(3)ロッド30の溝部43とピストン50内周との隙間、(4)ロッド30外周とピストン50の空気流通溝62との隙間、(5)ロッド30の凹部38とピストン50内周との隙間、(6)突条41によるロッド30の第2柱部39とピストン50内周との隙間、(7)ロッド30のストッパー部35のカット部35aとピストン50の一端との隙間、(8)ロッド30のストッパー部35の平坦面40とシリンダー20内周との隙間、が設けられている。
【0065】
そして、
図10に示すように、ロッド30が静止してダンパーの制動力が付与されていない状態では、上記(1)~(8)の隙間が確保される。また、
図14~16に示すように、ロッド30がダンパーの制動方向に移動する際には、ロッド30の第1係合部34がピストン50の他端に当接するため、上記(2)の隙間はなくなるが、上記(1)及び(3)~(8)の隙間は確保される。更に
図18に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際には、ロッド30の第1係合部34が再びピストン50の他端から離れるため、上記(1)~(8)の隙間が確保される。
【0066】
また、このダンパー10においては、ピストン50に設けた凸部53と、この凸部53よりも、ダンパーの戻り方向側に配置した被係合部61との関係で、
図18~22に示すように、ロッド30及びピストン50がダンパーの戻り方向に移動する際に、被係合部61と凸部53との間で、ピストン50に対して、軸方向引張力が作用するように構成されている。
【0067】
更に、このダンパー10においては、ダンパーが制動された状態から、ダンパーの制動力が解除される状態に切り替わるとき、すなわち、
図17に示すような、ピストン50に軸方向圧縮力が作用して、ピストン50が拡径してシリンダー20内周に対する摩擦力が増大した状態から、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際に、次のような動作がなされることで、ピストン50を所定位置に戻しやすい構造となっている。
【0068】
すなわち、
図17に示す状態から、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、
図18(a)に示すように、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合して、ピストン50をダンパーの戻り方向側に押し込む。このとき、ピストン50の凸部53はシリンダー20の内周に圧接された状態となっているので、
図18(b)に示すように、ピストン50の一端側の移動は抑制されつつ、他端側が一端側から離れる方向に押されて、被係合部61と凸部53との間でピストン50に対して軸方向引張力が作用して、縮径状態とされた弾性樹脂材料からなるピストン50が軸方向に引き延ばされて縮径し、シリンダー20の内周に対する圧接力が低下する。また、ロッド30の第1係合部34が、ピストン50の他端側から離れる。
【0069】
その結果、
図19(a),
図20(a),
図21(a)に示すように、弾性樹脂材料からなるピストン50が、自己の弾性復元力によって、ストッパー部35に近づくように一端側が延びていき、それに伴って、
図19(b),
図20(b),
図21(b)に示すように、シリンダー圧接部分Sが減っていく。特に
図21(a)に示すように、ピストン50の一端が、ストッパー部35の直近になったときには、ピストン50のシリンダー圧接部分Sが、ピストン50の軸方向に貫通することとなり、空気の流通路が生まれる。更にピストン50が延びると、
図22に示すように、ピストン50の一端側がロッド30のストッパー部35に当接して、ピストン50の延びが規制され、ピストン50がロッド30のピストン装着部32の所定位置に保持される。
【0070】
このように、このダンパー10においては、ダンパーが制動された状態から、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合して、被係合部61と凸部53との間でピストン50に対して軸方向引張力が作用して、ピストン50の他端側を、凸部53により移動規制された一端側に対して引き延ばすため、ピストン50を元の形状に縮径させることが可能な構成となっており、その結果、ピストン50の、シリンダー20の内周に対する摩擦力を低減させて、ピストン50を戻しやすくすることができるようになっている。
【0071】
次に、上記構成からなるダンパー10の作用効果について説明する。
【0072】
上述したように、このダンパー10は、ダンパーの制動時に、ロッド30の第1係合部34が、ピストン50の他端部52に当接し、シリンダー20の内周に圧接された、凸部53の一対の環状凸部56,56との間で、ピストン50に対して軸方向圧縮力が作用する。そのため、シリンダー20に対してロッド30が制動方向に移動すると、ロッド30の第1係合部34がピストン50の他端部52に当接して、
図14(a),
図15(a),
図16(a),
図17(a)に示すように、ピストン50が押圧され、一方、ピストン50の基端部では、一対の環状凸部56,56がシリンダー20の内周に常時圧接されているため、
図14(b),
図15(b),
図16(b),
図17(b)に示すように、ピストン50に軸方向圧縮力が作用して、ピストン50が軸方向に圧縮されると、ピストン50の、シリンダー内周に対する圧接量が増大して、シリンダー圧接部分Sが増大するので、ダンパーの制動力を増大させることができる。
【0073】
この場合、ロッド30の、ダンパー制動方向への移動速度が速いほど、ピストン50に対する軸方向圧縮力が高くなって、ピストン50がより多く圧縮されるため、シリンダー圧接部分Sがより増大し、ダンパーの制動力を迅速に高めることができる。一方、ロッド30の、ダンパー制動方向への移動速度が遅い場合は、ピストン50に対する軸方向圧縮力が弱くなるので、シリンダー圧接部分Sの面積も小さくなり、制動力の増大も緩やかとなる。したがって、ロッド30の移動速度に応じて制動力が変動する、荷重応答特性に優れたダンパー10を提供することができる。
【0074】
上記の荷重応答特性について詳述すると、このダンパー10においては、上記の特許文献1に記載のダンパーのように第1シール部材と第2シール部材とが別体の構造に対して、シリンダー20の内周に常時圧接する凸部53(ここでは一対の環状凸部56,56)と、ロッド30の移動速度に応じてシリンダー20の内周に対する圧接量が増大する部分(ピストン50の凸部53よりも他端側の部分)とが、弾性樹脂材料によって一体形成されたピストン50を有しているので、ロッド30の移動速度に素早く対応して、シリンダー20の内周に対するピストン50の圧接量を迅速に変動させることができ、荷重応答性に優れているのである。
【0075】
また、この実施形態においては、上述したように、ピストン50はその外周に切欠き部54を有しており、この切欠き部54は、一端から他端側へ向って少なくとも途中まで形成されているか、又は、他端から一端側へ向って少なくとも途中まで形成されている(ここでは、本体51の他端部52の一端側から、本体51の一端に至るまで形成されている)。そのため、ロッド30が移動して、その第1係合部34がピストン50の他端部52に当接し、シリンダー内周に常時圧接された凸部53との間で、ピストン50に対して軸方向圧縮力が作用する際に、空気を第1室R1側又は第2室R2側へ逃がすことができるので、ピストン50を押し潰しやすくすることができる(空気の逃げ道がないと、ピストンがシリンダー内で変形しにくくなる)。
【0076】
なお、この実施形態におけるダンパー10は、シリンダー20内において、ピストン50に対して空気を通過させるための通路として、上述したような(1)~(8)の隙間を設けたので、
図14~17に示すようなダンパーの制動時(ここではロッド30の第1係合部34がシリンダー20の端部壁23から離反する方向に移動するとき)において、本体51の一部の全周がシリンダー20内周に圧接した状態となっても、空気が、上記(1)~(8)の各隙間を通って、第1室R1側へ移動するので、ロッド30の移動が妨げられることがない(第1室R1側へ空気が移動しない場合、第1室R1の内圧が過度に低下して、ロッド30の移動が妨げられる)。
【0077】
また、この実施形態においては、ピストン50は、その外周が円周形状をなしており(ここでは本体51の外周が円周形状をなしている)、切欠き部54は、
図4(e)に示すように、ピストン50を軸方向から見たときに、円周形状の一部を一平面でカットした形状をなしている。そのため、ピストン50が圧縮されて拡径する際に、ピストン50の外周を、シリンダー20の内周に当接しやすくなるので(ピストン50の圧縮される断面積が小さくなるため)、ダンパーの荷重応答特性をより向上させることができる。
【0078】
更に、この実施形態においては、切欠き部54は、凸部53を軸方向に貫通して延びており、ダンパーの制動時に、軸方向圧縮力によって、ピストン50の軸方向における少なくとも一部の全周が、シリンダー20の内周に圧接される一方、凸部53に形成された切欠き部54は、シリンダー20の内周に密着しないように構成されている(
図14(b),
図15(b),
図16(b),
図17(b)参照)。そのため、ピストン50の全周がシリンダー20の内周に圧接された部分(ピストンの全周圧接部分)と、凸部53との間に空気が溜まっても、該空気を、凸部53に形成された切欠き部54とシリンダー20内周との隙間を通して逃がすことができるので、軸方向圧縮力によるピストン50の拡径が阻害されないようにすることができる(空気を排出できないと、ピストン50の移動が規制されて、拡径が阻害されやすい)。
【0079】
また、この実施形態においては、ピストン50の外周は、一端側から他端側に向けて縮径する形状をなしている。ここでは
図4(c)や
図4(d)に示すように、ピストン50の本体51の外周は、凸部53の他端から、テーパ状をなした他端部52側に向けて、次第に縮径する形状をなしている。そのため、ダンパーの制動時において、ピストン50が圧縮されて拡径する際に、シリンダー20内周に対するピストン50の外周の接触面積が徐々に増大するため(ピストン50の圧縮される断面積が徐々に大きくなる)、ダンパーの制動力を、調整しやすくすることができる。
【0080】
一方、ロッド30がダンパーの制動方向に移動して、ピストン50が圧縮されてシリンダー内周に対する圧接量が増大した状態(
図17参照)から、インストルメントパネル等の部材に対して開閉体等の部材を閉じて、
図9の矢印F2に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、ダンパー10は次のように作用する。
【0081】
すなわち、このダンパー10においては、ロッド30がダンパーの制動方向に移動して、ピストン50が圧縮して拡径した状態(
図17参照)から、インストルメントパネル等の部材に対して開閉体等の部材を閉じて、
図9の矢印F2に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合して(
図18(a)参照)、ピストン50をダンパーの戻り方向側に押し込む。このとき、ピストン50の凸部53はシリンダー20の内周に圧接された状態となっているので、ピストン50の一端側の移動は抑制されつつ、他端側が一端側から離れる方向に押されて、被係合部61と凸部53との間でピストン50に対して軸方向引張力が作用して、縮径状態とされた弾性樹脂材料からなるピストン50が軸方向に引き延ばされて縮径し、
図19,
図20,
図21に示すように、ピストン50が弾性復元力によって元の長さに近づくように延びていき、最終的に
図22に示すように、ピストン50の他端側がロッド30のストッパー部35に当接して、それ以上の延びが規制されて、ピストン50がロッド30のピストン装着部32の所定位置に保持される。その結果、ピストン50が元の形状に縮径して、ピストン50外周の凸部53以外の部分が、シリンダー20の内周に圧接していない状態となるので、ピストン50の、シリンダー20の内周に対する摩擦力を低減させて、シリンダー20内において、ピストン50を所定位置に戻しやすくすることができる。
【0082】
以上のように、このダンパー10においては、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際には、ピストン50の凸部53よりも、ダンパーの戻り方向側にある第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合して、ピストン50を移動させて、被係合部61と凸部53との間でピストン50に対して軸方向引張力を作用させることで、弾性樹脂材料からなるピストン50が軸方向に引き延ばされるので、同ピストン50を速やかに元の形状に縮径させることができ、シリンダー内周に対する摩擦力を低減させて、ピストン50を戻しやすくすることができるのである。
【0083】
また、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動した際に、ロッド30の係合部34が、ピストン50の他端側から離れるので、
図10の矢印に示すように、第1室R1内の空気が、上記(1)のロッド30の係合部34の平坦面40とシリンダー20内周との隙間を通って、上記(2)のロッド30の第1係合部34とピストン50の他端との隙間から、ロッド30外周とピストン50の空気流通溝62との隙間に流れ込み、閉じた状態の切込み55が、
図5や
図9に示すように空気圧によって押されて開くため、ロッド30外周とピストン50内周との間の空気を、ピストン50の一端側へ排出することができ、同空気を、上記(7)のロッド30のストッパー部35のカット部35aとピストン50の一端との隙間や、上記(8)のロッド30のストッパー部35の平坦面40とシリンダー20内周との隙間を通して、ロッド30のピストン装着部32の外方へ排出することができ(
図10参照)、ダンパーの制動力を解除しやすくして、ピストン50を戻しやすくすることができる。
【0084】
また、
図3や
図4に示すように、この実施形態においては、ピストン50に設けた凸部53は、ピストン50の外径方向に突出する凸部(ここでは複数の凸部57,58,59からなる環状凸部56)とされているので、凸部53を含めてピストン50を一体成形することができ、ピストン50の製造が容易となる。
【0085】
更に
図2に示すように、この実施形態においては、ロッド30の第2係合部37側から基端側に向けて、ピストン50の内周に当接する突条41が軸方向に延びるように、かつ、周方向に所定間隔で並んで複数形成されている。そのため、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動して、ピストン50が引き延ばされる際に、ロッド30の外周とピストン50の内周との接触面積を小さくして、ピストン50を元の形状に戻りやすくすることができる。
【0086】
また、
図3や
図4に示すように、この実施形態においては、ピストン50の外周には、シリンダー20の内周との間で隙間を形成する切欠き54部が、ダンパーの戻り方向側の他端部52側からダンパーの制動方向側の一端部側に向けて形成されている。そのため、ピストン50の、ダンパーの戻り方向側において、シリンダー20の内周に対するピストン50の接触面積を小さくすることができ、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動して、ピストン50が引き延ばれる際に、ピストン50を元の形状により復帰させやすくすることができる。
【0087】
更に
図4(c)や
図4(d)に示すように、この実施形態においては、ピストン50の外周(ここでは本体51の外周)は、ダンパーの戻り方向側の他端部52側からダンパーの制動方向側の一端部側に向けて拡径するテーパ状をなしている。そのため、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際に、ピストン50の、ダンパーの戻り方向側を、シリンダー20の内周に圧接されにくくすることができ、ピストン50を引き延ばして元の形状により復帰させやすくすることができる。
【0088】
また、シリンダー20内にピストン50を挿入する際には、次のようにして行う。すなわち、
図11に示すように、ピストン装着部32にピストン50を装着したロッド30を、その先端側からシリンダー20の開口部22に挿入して、シリンダー20内に押し込んでいく。このとき、シリンダー20の一対の嵌合孔25,25に、ピストン50の切欠き部54,54を位置合わせし、その状態でロッド30を押し込む。
【0089】
すると、上述したごとく、
図12(a),(b)に示すように、環状凸部56の軸方向に並列した第1凸部57,58が、他端部52側の第1凸部58から一端側の第1凸部57の順番に潰れて、シリンダー20内に挿入されるので、環状凸部56の内側の凹部60内の空気が押し出されつつ挿入されていき、更にシリンダー20内で第1凸部57,58が元の形状に戻ろうとすることにより、潰された密閉空間R3が広がって減圧された状態となり、それによって凸部53がシリンダー20の内周に吸着される。
【0090】
このように、このダンパー10においては、シリンダー20の開口部22から、ピストン50を装着したロッド30を、その先端側から挿入していく際に、環状凸部56の軸方向に並列した第1凸部57,58が、シリンダー20の内周に順番に押し潰されつつ挿入されていくので、ピストン50の挿入抵抗を低減させることができ、シリンダー20に対するピストン50の挿入作業性を向上させることができる。
【0091】
また、この実施形態においては、ピストン50の凸部53を構成する一対の環状凸部56,56の、本体51の周方向で隣り合う第2凸部59,59どうしの間には、
図4(e)に示すように、ピストン50を軸方向から見たときに、本体51の円周形状の一部を一平面でカットした形状をなす、切欠き部54,54が設けられている。そのため、この実施形態におけるシリンダー20のように、開口部22の近傍に、キャップ装着用の嵌合孔25,25が形成されている場合などにおいて、シリンダー20内へピストン50を挿入する際に、
図11に示すように、シリンダー20の嵌合孔25,25に、ピストン50の凸部53に設けられた切欠き部54,54を位置合わせして挿入することで、凸部53の環状凸部56が、シリンダー20の嵌合孔25,25によって損傷することを抑制できる(嵌合孔25の内周縁部が、弾性樹脂材料からなるピストン50の環状凸部56に接触すると、環状凸部56が損傷しやすい)。その結果、凸部53の環状凸部56による、シリンダー20の内周に対するピストン50の摩擦力が低下することを、効果的に抑制することができる。
【0092】
更にこの実施形態においては、ピストン50の凸部53は、本体51の、ダンパーの制動方向の他端側に設けられており、凸部53に設けられた切欠き部54は、本体51の、ダンパーの戻り方向の他端に向けて延びている。そのため、
図6(a),(b)に示すように、例えば、ピストン50を一対の型101,103により成形した後、一対の型101,103を分割線PLで分割して抜型する際は、ピストン50の外周にバリが生じるが、この型割により生じるバリを、ピストン50の切欠き部54,54に設けることができるので、バリがシリンダー20の内周に当接して隙間を生じさせることによる、シリンダー20の内周に対するピストン50の摩擦力の低下を抑制することができる。
【0093】
また、このダンパー10においては、上述したように、シリンダー20内へのピストン50の挿入によって、凸部53がシリンダー20の内周に吸着されるようになっているので、シリンダー20内においてピストン50が移動する際の、シリンダー20の内周に対する摩擦抵抗を増大させることができ、ダンパーの制動力を高めることができると共に、シリンダー20内でのピストン50の移動時において、ピストン50の姿勢を保持しやすくなり、安定した制動力を得ることができる。
【0094】
また、この実施形態においては、環状凸部56は、ピストン50の外周の周方向に沿って、複数配置されている。ここでは、環状凸部56は、
図4(e)に示すように、ピストン50を軸方向から見たときに、凸部53の周方向に対応する2箇所に、一対の配置されている。このように、ピストン50の外周に複数の環状凸部56が配置されるので、どれか一つの環状凸部56のシール漏れを起こしても(凹部60から空気が逃げて、環状凸部56に吸着効果が生じないこと)、他の環状凸部56によって、ダンパーの制動力が低下することを抑制することができる。
【0095】
更に、この実施形態においては、凸部53に設けた環状凸部56は、
図4(e)に示すように、ピストン50を軸方向から見たときに、周方向に対応する2箇所に配置された一対のものからなり、切欠き部54は、一対の環状凸部56,56の間に設けられた、一対のものからなるので、上述したように、ピストン50の成型時における型割線PLを、切欠き部54,54に位置させやすくすることができ、また、シリンダー20の内周に対して、一対の環状凸部56,56の摩擦力をバランスよく付与することができる。
【0096】
図23~30には、本発明に係るダンパーの、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0097】
この実施形態のダンパー10Aは、ピストンの構造が前記実施形態と異なっている。
図23に示すように、この実施形態におけるピストン50Aは、凸部53に切欠き部54が形成されておらず、凸部53の全周が、シリンダー20の内周に圧接するようになっている。また、本体51の外周の2か所に、凸部53の他端側から、本体51の軸方向の他端面に至るまで、所定深さで凹溝状をなした切欠き部63,63がそれぞれ形成されている。
【0098】
そして、この実施形態では、
図24に示すロッド30の静止状態から、第1係合部34がダンパーの制動方向に移動すると、
図25(a)に示すように、第1係合部34がピストン50の他端部52に当接して、ピストン50Aが押圧されて軸方向圧縮力が作用し、ピストン50Aのシリンダー内周に対する圧接量が増大してダンパーの制動力が増大する(
図25(b)参照)。更に
図26(a),
図27(a),
図28(a)に示すように、第1係合部34がダンパー制動方向により早く移動すると、
図26(b),
図27(b),
図28(b)に示すように、ピストン50Aのシリンダー圧接部分Sの面積が次第に増えるので、ダンパーの制動力が移動速度に応じて増大するようになっている。
【0099】
このように、この実施形態においても、ロッド30の、ダンパー制動方向への移動速度が速いほど、ピストン50Aに対する軸方向圧縮力が高くなって、ピストン50Aがより多く圧縮されるため、ダンパーの制動力を迅速に高めることができ、荷重応答特性に優れている。
【0100】
また、この実施形態においては、切欠き部は、凸部53には形成されておらず、ダンパー制動時に、凸部53の全周がシリンダー20の内周に圧接される一方、ピストン50Aの、凹溝状をなした切欠き部63が設けられた部分は、シリンダー20の内周に密着せず、該内周との間に隙間を形成するように構成されている。そのため、ピストン50Aの凸部53とシリンダー圧接部分S(ピストン50Aの拡径した部分)との間で空気が溜っても、この空気を、ピストン50Aの切欠き部63とシリンダー20の内周との隙間から排出することができ(ここでは第1室R1側に排出することができる)、それによって、ピストン50Aの拡径が阻害されないようにすることができる。
【0101】
一方、
図28に示すように、ロッド30がダンパーの制動方向に移動して、ピストン50Aが圧縮して拡径した状態から、
図29に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合して、被係合部61と凸部53との間でピストン50に対して軸方向引張力が作用して、ピストン50Aが軸方向に引き延ばされる。そして、
図30に示すように、ピストン50Aの一端がロッド30のストッパー部35に当接して、ピストン50Aが元の形状に縮径するので、ピストン50Aのシリンダー20内周に対する摩擦力を低減させ、ピストン50Aを所定位置に戻しやすくすることができる。
【0102】
なお、この実施形態においては、ロッド30のダンパーの戻り方向に移動の際に、ピストン50Aの切欠き部63が設けられた部分は、シリンダー20の内周に密着せず、該内周との間に隙間を形成するように構成されているので(
図29(b)参照)、この隙間から空気を第1室R1側に排出することが可能となっている。
【0103】
図31~35には、本発明に係るダンパーの、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0104】
この実施形態のダンパー10Bは、ピストンの構造が前記実施形態と異なっている。
図31に示すように、この実施形態におけるピストン50Bは、本体51の外周の、凸部53よりも他端側部分に、切欠き部が形成されておらず、全周が円周形状をなしている。
【0105】
そして、この実施形態では、
図32に示すロッド30の静止状態から、第1係合部34がダンパーの制動方向に移動すると、
図33(a)に示すように、第1係合部34がピストン50の他端部52に当接して、ピストン50Bが押圧されて軸方向圧縮力が作用し、ピストン50Bのシリンダー内周に対する圧接量が増大してダンパーの制動力が増大するので(
図33(b)参照)、荷重応答性に優れたダンパー10Bを提供することができる。なお、ピストン50Bの凸部53とシリンダー圧接部分Sとの間に溜った空気は、凸部53に形成した切欠き部54とシリンダー20内周との隙間を通して、ダンパーの制動方向側へ排出される。
【0106】
一方、
図33に示すように、ロッド30がダンパーの制動方向に移動して、ピストン50Aが圧縮して拡径した状態から、
図34に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、ロッド30の第2係合部37がピストン50Aの被係合部61に係合して、被係合部61と凸部53との間でピストン50に対して軸方向引張力が作用して、ピストン50Aが軸方向に引き延ばされる。そして、
図35に示すように、ピストン50Aの一端側がロッド30のストッパー部35に当接して、ピストン50Aが元の形状に縮径するので、ピストン50Aのシリンダー20内周に対する摩擦力を低減させ、ピストン50Aを所定位置に戻しやすくすることができる。
【0107】
図36~40には、本発明に係るダンパーの、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0108】
この実施形態のダンパー10Cは、ピストンの構造が前記実施形態と異なっている。すなわち、ピストン50Cの本体51の外周形状は、第1実施形態におけるピストン50と同様の形状をなしているが(
図36(a)参照)、
図36(b)に示すように、本体51の内周には、周方向に沿って延びる凹溝状をなした溝部63が、本体51の軸方向に沿って複数形成されている。これらの溝部63によって、ピストン50Cの本体51の内周と、ロッド30の第2係合部37や第2柱部39との間に、隙間が形成されるようになっている。
【0109】
そして、この実施形態では、
図37に示すロッド30の静止状態から、第1係合部34がダンパーの制動方向に移動すると、
図38(a)に示すように、第1係合部34がピストン50Cの他端部52に当接して、ピストン50Cが押圧されて軸方向圧縮力が作用し、ピストン50Cのシリンダー内周に対する圧接量が増大してダンパーの制動力が増大するので(
図38(b)参照)、荷重応答性に優れたダンパー10Cを提供することができる。また、この実施形態では、本体51の内周に、凹溝状の溝部63が軸方向に沿って複数形成されているので、ダンパーの制動時において、ピストン50Cの内周とロッド30の外周との間の隙間を広く確保することができ、空気を排出しやすくすることができる。
【0110】
一方、
図38に示すように、ロッド30がダンパーの制動方向に移動して、ピストン50Cが圧縮して拡径した状態から、
図39に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、ロッド30の第2係合部37がピストン50Aの被係合部61に係合して、被係合部61と凸部53との間でピストン50に対して軸方向引張力が作用して、ピストン50Cが軸方向に引き延ばされる。そして、
図40に示すように、ピストン50Cの一端側がロッド30のストッパー部35に当接して、ピストン50Cが元の形状に縮径するので、ピストン50Cのシリンダー20内周に対する摩擦力を低減させ、ピストン50Cを所定位置に戻しやすくすることができる。
【0111】
また、この実施形態においては、上述したように、ピストン50Cの内周には、周方向に沿った凹部64が、ピストン50Cの軸方向に複数設けられているので、ピストン50Cを変形させやすくすることができ、ダンパーの制動方向に移動する際の、ピストン50Cの拡径や、ダンパーの戻り方向に移動する際の、ピストン50の引き延ばしによる縮径を、より効果的に行うことができる。
【0112】
なお、以上説明した各実施形態においては、ロッド30の第1係合部34がシリンダー20の端部壁23から離反する方向に移動したときに、ダンパーによる制動力が付与され、同第1係合部34がシリンダー20の端部壁23に近接する方向に移動したときに、ダンパーによる制動力が解除されるように構成されているが、これとは逆に、ロッドの第1係合部がシリンダーの端部壁(シリンダー端部に装着されるキャップも含む意味である)に近接する方向に移動したときに、ダンパーによる制動力を付与して、離反する方向に移動したときに制動力を解除するように構成してもよい。
【0113】
例えば、
図41には、ダンパーの制動方向を逆向きとしたダンパー10Dの要部拡大説明図が示されているが、このダンパー10Dは、ロッドの形状及びピストンの装着向きが前記実施形態と異なっている。ロッド30は、第1柱部36が第2柱部39よりも長く延びた形状をなしている。また、ピストン50は、その他端部52をロッド30のストッパー部35に向け、ピストン50の凸部53をロッド30の第1係合部34に向けた状態で、ロッド30のピストン装着部32にピストン50が装着されており、上記各実施形態のダンパーとは、ピストン50の装着向きが逆となっている。そして、ロッド30の第1係合部34が、シリンダー20の図示しない端部壁(図中左側)に近接する方向に移動したとき、すなわち、
図41の矢印F1に示す向きに移動したときに、ロッド30のストッパー部35(本発明における「係合部」をなす)がピストン50の他端部52に当接して、凸部53との間で軸方向圧縮力が作用するので、ダンパーによる制動力が付与される。一方、ロッド30の第1係合部34が、シリンダー20の図示しない端部壁から離反する方向に移動したとき、すなわち、
図41の矢印F2に示す向きに移動したときに、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合して、ピストン50に対して軸方向引張力を作用させるので、ダンパーの制動力が解除されるようになっている。
【0114】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
10,10A,10B,10C,10D ダンパー
20 シリンダー
30 ロッド
31 軸部
32 ピストン装着部
34 第1係合部(係合部)
50,50A,50B,50C ピストン
51 本体
52 他端部
53 凸部
54,63 切欠き部
55 切込み
56,56 環状凸部
61 被係合部
80 キャップ
81,81 半割体
83 係合部