(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G09G 5/02 20060101AFI20220105BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20220105BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G09G5/02 B
G09G5/36 520P
G09G5/36 520A
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2020523884
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2018021553
(87)【国際公開番号】W WO2019234825
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391010116
【氏名又は名称】EIZO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】伴場 裕介
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180787(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067698(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/02
G09G 5/36
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
彩度値取得部と補正部とを備え、モノクロ画像とカラー画像とを合わせて表示し、医療診断に用いられる画像処理装置であって、
前記彩度値取得部は、対象画素の彩度値、または、当該対象画素とその周辺の周辺画素とを含む対象小領域の彩度値を取得し、
前記補正部は、前記対象画素を補正して得られる補正後の階調特性が、前記彩度値に基づいてカラー階調特性とモノクロ階調特性とを所定の混合比率で混合して合成された階調特性と一致するように、前記対象画素を補正し、
前記彩度値をcとし、前記カラー階調特性の混合比率をWとすると、cを変数としたときのWの値は関係W=f(c)で表され、以下の条件を満たす、画像処理装置。
条件:彩度値の最小値から最大値にわたる全範囲において、前記彩度値cに対して前記混合比率Wが比例して増加する関係をW=g(c)とすると、
前記彩度値が閾値より低い場合に、前記混合比率は、g(c)に従うか又はg(c)を下回り、
前記彩度値が前記閾値以上の場合に、
f(c)>αg(c)
が前記閾値から前記最大値までの彩度値範囲のうち
50%以上で満たされ、乗数αがα≧1である。
【請求項2】
請求項1において、
前記補正部は、取得された前記彩度値に基づいて、カラー画素用のカラー階調特性とモノクロ画素用のモノクロ階調特性との混合比率を決定する混合部を含む、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記関係f(c)は、
前記閾値以下における関係W1=f1(c)と、
前記閾値以上における関係W2=f2(c)とを含み、
閾値以下の任意の彩度値をc1,閾値以上の任意の彩度値をc2とすると、前記閾値から前記最大値までの彩度値範囲のうち
50%以上で、
f1(c1)≦f2(c2)が満たされる、画像処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記閾値以下における関係f1(c)は比例関数である、画像処理装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記閾値を第1閾値としたときの第2閾値が存在し、
前記第2閾値は、前記第1閾値以上であり、
前記彩度値が第2閾値以上の場合に、前記関係f2(c)の傾きがゼロに向かって減少する、画像処理装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記関係f(c)はシグモイド関数の少なくとも一部である、画像処理装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項において、
前記補正部は、さらに、前記対象画素のカラー階調特性における第1明度値と、前記対象画素のモノクロ階調特性における第2明度値との差分が大きいほど、前記閾値がより大きく設定された関係を用いて、前記混合比率Wを決定して補正を行い、
前記差分は、入力階調値に対する第1明度値と第2明度値の差分である、画像処理装置。
【請求項8】
モノクロ画像とカラー画像とを合わせて表示し医療診断に用いられる画像を処理するための画像処理方法であって、
対象画素の彩度値、または、当該対象画素とその周辺の周辺画素とを含む対象小領域の彩度値を取得する取得ステップと、
前記対象画素を補正して得られる補正後の階調特性が、前記彩度値に基づいてカラー階調特性とモノクロ階調特性とを所定の混合比率で混合して合成された階調特性と一致するように、前記対象画素を補正する補正ステップとを含み、
前記彩度値をcとし、前記カラー階調特性の混合比率をWとすると、cを変数としたときのWの値は関係W=f(c)で表され、以下の条件を満たす、画像処理方法。
条件:彩度値の最小値から最大値にわたる全範囲において、前記彩度値が増加するのに伴い、前記混合比率が最小値から最大値まで比例して増加する関係をW=g(c)とすると、
前記彩度値が閾値より低い場合に、前記混合比率は、g(c)に従うか又はg(c)を下回り、
前記彩度値が前記閾値以上の場合に、
f(c)>αg(c)
が前記閾値から前記最大値までの彩度値範囲のうち
50%以上で満たされ、乗数αがα≧1である。
【請求項9】
コンピュータを、彩度値取得部と補正部とを備えモノクロ画像とカラー画像とを合わせて表示する医療診断用の画像処理装置として機能させる画像処理プログラムであって、
前記彩度値取得部により、対象画素の彩度値、または、当該対象画素とその周辺の周辺画素とを含む対象小領域の彩度値を取得する取得ステップと、
前記補正部により、前記対象画素を補正して得られる補正後の階調特性が、前記彩度値に基づいてカラー階調特性とモノクロ階調特性とを所定の混合比率で混合して合成された階調特性と一致するように、前記対象画素を補正するステップとを前記コンピュータに実行させ、
前記彩度値をcとし、前記カラー階調特性の混合比率をWとすると、cを変数としたときのWの値は関係W=f(c)で表され、以下の条件を満たす、画像処理プログラム。
条件:彩度値の最小値から最大値にわたる全範囲において、前記彩度値が増加するのに伴い、前記混合比率が最小値から最大値まで比例して増加する関係をW=g(c)とすると、
前記彩度値が閾値より低い場合に、前記混合比率は、g(c)に従うか又はg(c)を下回り、
前記彩度値が閾値以上の場合に、
f(c)>αg(c)
が前記閾値から前記最大値までの彩度値範囲のうち
50%以上で満たされ、乗数αがα≧1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療診断用ディスプレイにおいて、モノクロ画素とカラー画素とを合わせて表示することにより、総合的な診断を行うことが可能となっている。このような医療診断用ディスプレイに画像を表示する際、モノクロ画素を表示する場合にはDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格で定められたGSDF(Grayscale Standard Display Function)カーブによる明度値の補正が一般に行われている。それに対して、カラー画素を表示する場合はsRGB規格で定められたγ2.2カーブによる明度値の補正が広く利用されている
【0003】
図1には、上述したGSDFカーブとγ2.2カーブとを示す。ディスプレイに入力される階調値と表示すべき明度値との関係を「階調特性」といい、
図1に示すように、モノクロ画素とカラー画素とでは階調特性が異なる。そこで、入力画像の画素単位に階調特性を適切に補正する画像処理技術が開発されている。例えば、特許文献1は、入力画像の画素単位の彩度値、もしくはエリア単位の彩度値に基づいて決定される混合比率に基づいて、カラー階調特性とモノクロ階調特性とを混合して合成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1における技術では、画素単位の彩度値を用いる場合は、カラー画像に対してγ2.2カーブによるカラー階調特性補正のみを行っているディスプレイでの診断に慣れている医師などの診断者にとって、ディスプレイに表示されるカラー画像が暗く感じられ、正確な診断をしかねるといった懸念が生じていた。また、エリア単位の彩度値を用いる場合は、エリアごとの彩度計算結果によっては画面表示が崩れ適切な明度値を出力できない懸念があった。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、モノクロ画素とカラー画素とを合わせて表示するディスプレイにおいて、より適切な明度値での表示を実現するための画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、彩度値取得部と補正部とを備える画像処理装置であって、前記彩度値取得部は、対象画素の彩度値、または、当該対象画素とその周辺の周辺画素とを含む対象小領域の彩度値を取得し、前記補正部は、前記対象画素を補正して得られる補正後の階調特性が、前記彩度値に基づいてカラー階調特性とモノクロ階調特性とを所定の混合比率で混合して合成された階調特性と一致するように、前記対象画素を補正し、前記彩度値をcとし、前記カラー階調特性の混合比率をWとすると、cを変数としたときのWの値は関係W=f(c)で表され、以下の条件を満たす、画像処理装置が提供される。
条件:前記彩度値cに対して前記混合比率Wが比例して増加する関係をW=g(c)とすると、前記彩度値が閾値以上の場合に、f(c)>αg(c)が満たされる彩度値cおよび乗数αが存在し、α≧1である。
【0008】
これにより、対象画素の彩度とカラー階調特性との混合比率の関係を、対象画素の彩度が所定の閾値を超えた場合に変化させることが可能となり、対象画素の彩度が低いときにはカラー階調特性の混合比率をおさえつつ、対象画素の彩度が高いときにはカラー階調特性の混合比率を強めることができる。このため、対象画素の彩度が高いときにはその明度値を高める補正を実現することが可能となり、より適切な明度値でディスプレイ表示を行うことが可能となる。また、エリア単位の彩度値を用いないため、エリアごとの彩度値の違いにより画面表示が崩れる懸念もない。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴が独立に発明を構成する。
【0010】
好ましくは、前記補正部は、取得された前記彩度値に基づいて、カラー画素用のカラー階調特性とモノクロ画素用のモノクロ階調特性との混合比率を決定する混合部を含む。
好ましくは、前記関係f(c)は、前記閾値以下における関係W1=f1(c)と、前記閾値以上における関係W2=f2(c)とを含み、閾値以下の任意の彩度値をc1,閾値以上の任意の彩度値をc2とすると、f1(c1)≦f2(c2)が満たされる。
好ましくは、前記閾値以下における関係f1(c)は比例関数である。
好ましくは、前記閾値を第1閾値としたときの第2閾値が存在し、前記第2閾値は、前記第1閾値以上であり、前記彩度値が第2閾値以上の場合に、前記関係f2(c)の傾きがゼロに向かって減少する。
好ましくは、前記関係f(c)はシグモイド関数の少なくとも一部である。
好ましくは、前記補正部は、さらに、前記対象画素のカラー階調特性における明度値と、前記対象画素のモノクロ階調特性における明度値との差分が大きいほど、前記閾値がより大きく設定された関係を用いて、前記混合比率Wを決定して補正を行う。
【0011】
本発明の他の観点によれば、対象画素の彩度値、または、当該対象画素とその周辺の周辺画素とを含む対象小領域の彩度値を取得する取得ステップと、前記補正部により、前記対象画素を補正して得られる補正後の階調特性が、前記彩度値に基づいてカラー階調特性とモノクロ階調特性とを所定の混合比率で混合して合成された階調特性と一致するように、前記対象画素を補正する補正ステップとを含み、前記彩度値をcとし、前記カラー階調特性の混合比率をWとすると、cを変数としたときのWの値は関係W=f(c)で表され、以下の条件を満たす画像処理方法が提供される。
条件:前記彩度値が最小値から最大値まで増加するのに伴い、前記混合比率が最小値から最大値まで比例して増加する関係をW=g(c)とすると、前記彩度値が閾値以上の場合に、f(c)>αg(c)が満たされる彩度値cおよび乗数αが存在し、α≧1である。
【0012】
本発明の他の観点によれば、コンピュータを、彩度値取得部と補正部とを備える画像処理装置として機能させる画像処理プログラムであって、前記彩度値取得部により、対象画素の彩度値、または、当該対象画素とその周辺の周辺画素とを含む対象小領域の彩度値を取得する取得ステップと、前記対象画素を補正して得られる補正後の階調特性が、前記彩度値に基づいてカラー階調特性とモノクロ階調特性とを所定の混合比率で混合して合成された階調特性と一致するように、前記対象画素を補正するステップとを含み、前記彩度値をcとし、前記カラー階調特性の混合比率をWとすると、cを変数としたときのWの値は関係W=f(c)で表され、以下の条件を満たす画像処理プログラムが提供される。
条件:前記彩度値が最小値から最大値まで増加するのに伴い、前記混合比率が最小値から最大値まで比例して増加する関係をW=g(c)とすると、前記彩度値が閾値以上の場合に、f(c)>αg(c)が満たされる彩度値cおよび乗数αが存在し、α≧1である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】GSDFカーブとγ2.2カーブとを示すグラフである。
【
図2】第1の実施の形態に係る画像処理装置100のハードウェア構成図である。
【
図4】
図4Aは、モノクロ画素用のルックアップテーブルL1を示す図である。
図4Bは、カラー画素用のルックアップテーブルL2を示す図である。
【
図5】彩度値cと混合比率Wとの関係を示す図である。
【
図6】補正処理の手順を説明する処理フローである。
【
図7】
図7Aは変形例1における彩度値と混合比率との関係を示す図である。
図7Bは変形例2における彩度値と混合比率との関係を示す図である。
図7Cは変形例3における彩度値と混合比率との関係を示す図である。
【
図8】
図8Aは、GSDFカーブとγ2.2カーブとにおける明度値の差分を示す図である。
図8Bは、GSDFカーブとγ2.2カーブとにおける明度値の差分割合を示す図である。
【
図9】
図9Aは、
図8Bに対して差分割合の大きさごとに入力階調値の領域分けをした図である。
図9Bは、彩度値cと混合比率Wとの関係を、入力階調値の領域分けに対応して複数規定した図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る補正処理の手順を説明する処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。特に、本明細書において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものを指しうる。
【0015】
また、広義の回路とは、回路(circuit)、回路類(circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CLPD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0016】
また、本明細書では、入力画像の一画素、または、当該画素とその周辺の周辺画素とを含む領域を小領域と定義する。さらに、画像とは、静止画/動画の何れも含むものとし、動画の場合においては特に指定がない限りそのうちの1フレームを指すものとする。
【0017】
また、下記に詳述する実施形態においては、様々な情報やこれを包含する概念を取り扱うが、これらは、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得るものである。具体的には、「小領域」、「入力階調値」、「彩度値」、「明度値」、等が、かかる情報/概念に含まれ得る。これらについては、再度必要に応じて詳しく説明するものとする。
【0018】
<第1の実施の形態>
(1.1.画像処理装置100の構成)
図2を参照し、画像処理装置100の構成について説明する。なお、
図2を用いた説明では、各構成要素の基本的な機能を説明するにとどめ、処理の詳細な説明は後述する。
【0019】
図2に示すように、画像処理装置100は、制御部1と、記憶部2と、操作部3と、表示部4と、バックライト5と、通信部6と、バス7とを備える。制御部1は、記憶部2に記憶されたプログラム(不図示)を読み出して種々の演算処理を実行するものであり、例えば、CPU等により構成される。
【0020】
記憶部2は、表示部4に適用される階調特性補正を行うルックアップテーブルや、種々のデータやプログラムを記憶するものであり、例えば、メモリ、HDD又はSSDにより構成される。ここで、プログラムは、画像処理装置100の出荷時点においてプリインストールされていてもよく、Web上のサイトからアプリケーションとしてダウンロードしてもよく、有線又は無線通信により他の情報処理装置又は記録媒体から転送されてもよい。ルックアップテーブルについては、詳細を後述する。
【0021】
操作部3は、画像処理装置100を操作するものであり、例えば、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、タッチパネル、音声入力部、又は、カメラ等を利用した動き認識装置により構成される。例えば、操作部3によりOSD(On Screen Display)上の各種設定情報が操作される。
【0022】
表示部4は、入力画像データ(静止画及び動画を含む)を画像として表示するものであり、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、電子ペーパーその他のディスプレイで構成される。
【0023】
バックライト5は、表示部4の背面から表示部4を照明するものである。なお、表示部4が液晶ディスプレイでない場合には、バックライト5は不要である。
【0024】
通信部6は、他の情報処理装置又は各構成要素と種々のデータを送受信するものであり、任意のI/Oにより構成される。バス7はシリアルバス、パラレルバス等で構成され、各部を電気的に接続し、種々のデータの送受信を可能にするものである。
【0025】
各構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUがプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。プログラムは、内蔵の記憶部2に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。ハードウェアによって実現する場合、ASIC、FPGA、又はDRPなどの種々の回路によって実現することができる。
【0026】
(1.2.機能構成)
図3を参照し、制御部1の機能について説明する。
図3に示すように、制御部1は、判定部11と、彩度値取得部12と、補正部20とを備える。補正部20は、混合部21と、モノクロ補正部22と、カラー補正部23とを含む。
【0027】
判定部11は、画像処理装置100に入力される入力画像データの対象画素に対して、モノクロであるかカラーであるかを判定する。ここで、判定方法としては種々の方法が知られている。一例として、対象画素の有する入力階調値(R,G,B)をRGB空間にプロットし、RGB空間における(1,1,1)方向に規定される直線との距離が基準値に収まればモノクロと判定する方法を採用してもよい。なお、本実施形態では、入力階調値は0~1023までの値をとる10ビットのデジタル値として規定されている。
【0028】
彩度値取得部12は、画像処理装置100に入力される入力画像データの対象画素について、入力階調値に基づいて彩度値(以下、彩度値cともいう)を取得する。本実施形態では、彩度値は、0~255の値をとる8ビットのデジタル値として定義されている。ここで、彩度値取得部12は、対象画素とその周囲の周辺画素とを含む対象小領域についての彩度値を取得してもよい。その場合には、例えば、対象画素とその周囲の画素とのそれぞれに対応づけられた彩度値について、相加平均を演算して対象小領域の彩度値としてもよく、または、対象小領域内の1つの彩度値を代表値として取得してもよい。
【0029】
補正部20は、入力画像データについて、カラー画素用のカラー階調特性補正とモノクロ画素用のモノクロ階調特性補正とを行う。ここで、階調特性とは、入力画像データの対象画素の入力階調値と、当該対象画素がディスプレイで出力される際の明度値との関係をいう。カラー階調特性補正とは、カラー画素について階調特性を補正することをいう。モノクロ階調特性補正とは、モノクロ画素の階調特性を補正することをいう。
【0030】
混合部21は、彩度値取得部12が取得した彩度値に基づいて、カラー階調特性とモノクロ階調特性との混合比率(以下、混合比率Wともいう)を決定する。混合部21の具体的な処理の内容については、詳細を後述する。
【0031】
モノクロ補正部22は、入力画像データの対象画素ごとにモノクロ階調特性補正を実行する。モノクロ補正部22が行うモノクロ階調特性補正の具体的な処理の内容については、詳細を後述する。
【0032】
カラー補正部23は、入力画像データの対象画素ごとにカラー階調特性補正を実行する。カラー補正部23が行うカラー階調特性補正の具体的な処理の内容については、詳細を後述する。
【0033】
記憶部2は、一例としては、階調特性補正を行うためのルックアップテーブルLと、彩度値cと混合比率Wとの関係が規定された混合比率テーブルKとを記憶する。
【0034】
表示部4は、入力画像データの対象画素について、モノクロ補正部22、または、カラー補正部23により補正された階調特性に対応する明度値で入力画像データを表示するように構成される。
【0035】
(1.3.ルックアップテーブル)
図4A及び
図4Bを参照して、記憶部2に格納されるルックアップテーブルLについて説明する。ただし、ルックアップテーブルLの規定方法はあくまで一例にすぎず、ここで例示する態様に限定されない。
【0036】
図4A及び
図4Bに示すように、記憶部2はモノクロ画素用のルックアップテーブルL1と、カラー画素用のルックアップテーブルL2とを記憶している。ルックアップテーブルL1には、0~1023までの入力階調値とそれに対応する明度値が規定されている。ここで、明度値M0~M1023は、0~100%で表せる値であり、0%は表示部4が表現できる最低明度を、100%は表示部4が表現できる最大明度を表す。ルックアップテーブルL1は、DICOM規格により定められるGSDFカーブを満たすように、入力階調値と明度値が1対1に対応づけられている。なお、明度値は、0~100%に代えて、例えば0~65535までの値をとる16ビットのデジタル値として規定してもよい。
【0037】
一方、ルックアップテーブルL2には、入力階調値とそれに対応するRGBごとの明度値が規定されている。ルックアップテーブルL2では、ルックアップテーブルL1で規定される関係を、RGBごとに規定する。すなわち、明度値R0~R1023がR(レッド)、明度値G0~G1023がG(グリーン)、明度値B0~B1023がB(ブルー)に、それぞれ対応している。ルックアップテーブルL2は、sRGB規格により定められるγ2.2カーブを満たすように、入力階調値と明度値がRGBごとに1対1に対応づけられている。
【0038】
これにより、モノクロ画素の入力階調値について、ルックアップテーブルL1を参照することにより、GSDFカーブを満たす明度値となるように階調特性補正を行うことができる。また、カラー画素の入力階調値について、ルックアップテーブルL2を参照することにより、γ2.2カーブを満たす明度値となるように階調特性補正を行うことができる。
【0039】
(1.4.混合部21)
混合部21は、彩度値取得部12が取得した彩度値cに基づいて、カラー画素用のカラー階調特性(ルックアップテーブルL2に相当)とモノクロ画素用のモノクロ階調特性(ルックアップテーブルL1に相当)とを混合するための混合比率Wを決定する。ここで、混合比率Wは、W=1のときにカラー階調特性となり、W=0のときにモノクロ階調特性となることを意味する。また、W=0.5のときにカラー階調特性とモノクロ階調特性を50%ずつ混合した階調特性が合成されることとなる。
【0040】
彩度値cと混合比率Wとの関係は、記憶部2に格納される混合比率テーブルKに規定されている。混合部21は、混合比率テーブルKを参照することにより、彩度値取得部12が取得した彩度値cに対応する混合比率Wを決定することができる。
【0041】
図5は、彩度値cと混合比率Wとの関係W=f(c)(以下、対応関係f(c)ともいう)を示す図であり、混合比率テーブルKに対応する。
図5には、さらに、彩度値cが最小値0から最大値255まで増加するのに伴い、混合比率Wが最小値0から最大値1まで比例して増加する関係W=g(c)(以下、比例関係g(c)ともいう)が示されている。さらに、彩度値cに対する第1閾値Pと第2閾値Qとが示されている。
【0042】
図5に示すように、対応関係f(c)は、彩度値cが第1閾値P以上の領域(すなわち、f(c)における点X以降の領域)において、比例関係g(c)よりも大きな値をとり得るように構成されている。いいかえると、彩度値cが第1閾値P以上の場合に、f(c)>αg(c)という条件が満たされる彩度値cおよび乗数αが存在し、α≧1である。
【0043】
このように構成することにより、彩度値cの増加に比例してカラー階調特性の混合比率Wを増加させる比例関係g(c)に比べて、第1閾値P以上の場合に、カラー階調特性の混合比率Wを増加させることが可能となる。その結果、第1閾値P以上の場合に、入力画素に対するカラー階調特性の割合が高くなり、より明度値を高めた画像を実現することができる。
【0044】
ここで、乗数αの値は、1~20であり、好ましくは、1.5~15であり、さらに好ましくは、2~10である。乗数αの値は、具体的には例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0045】
ここで、彩度値cが第1閾値P以上の場合、第1閾値Pから最大値255までの彩度値の内、50%以上の割合の彩度値について、上記条件が満たされるようにする。当該割合は、具体的には、50%,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%,90%,95%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。より好ましくは、当該割合を70%とすることができる。こうすると、第1閾値P以上の彩度値cの70%以上について、カラー階調特性の混合比率を、比例関係g(c)の場合の混合比率よりも増加させることが可能となり、第1閾値P以上の彩度値cの70%以上について、明度値を高めた画像を表現することが可能となる。
【0046】
また、好ましくは、彩度値cが第1閾値P以上の場合、第1閾値Pから最大値255までの彩度値の内、値の低い方の50%以上の領域に含まれる彩度値について上記条件が満たされるようにする。当該領域は、具体的には、値の低い方の50%,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%,90%,95%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。より好ましくは、当該割合を90%とすることができる。このようにすることで、対応関係f(c)のうち、第1閾値Pから最大値255までの彩度値の内、値の低い90%の領域について、カラー階調特性の混合比率を増加させることが可能となる。その結果、第1閾値Pから最大値255までの彩度値の内、値の低い90%以上の領域において、明度値を高めた画像を表現することが可能となる。
【0047】
また、
図5に示す例では、彩度値cと混合比率Wとの関係f(c)は、第1閾値P以下における関係W=f1(c)と、第1閾値P以上における関係W=f2(c)とを含んでおり、第1閾値P以下の任意の彩度値をc1,第1閾値P以上の任意の彩度値をc2とすると、f1(c1)≦f2(c2)が満たされている。
【0048】
さらに、
図5の例では、f1(c)は比例関数であり、比例関係g(c)と一致している。一方、
図5の例では、f2(c)はシグモイド関数の少なくとも一部が用いられている。ここで、f1(c)及びf2(c)はこれに限定されず、f1(c1)≦f2(c2)を満たす関係であればよい。このように、f1(c)を比例関数にすることにより、彩度値cが低い領域において、モノクロ階調特性の混合比率を高めることができる。これにより、彩度値cが低い領域において、カラー階調特性の混合比率が高いことによるノイズの発生を抑制しつつ、モノクロ階調特性の比率を高めすぎることによる意図したカラー表示からの乖離が大きくなることを防止することが可能となる。
【0049】
さらに、f(c)は、彩度値cが第1閾値P以上で第2閾値以下の領域では、その傾きが上昇し、混合比率Wの値が大きく上昇する。さらに、彩度値cが第2閾値以上で最大値255以下の領域(すなわち、f(c)における点Y以降の領域)では、その傾きはゼロに向かって減少し、f(c)は緩やかに増加する。
【0050】
このように彩度値cと混合比率Wとの関係を規定することにより、彩度値cの低い領域においてはカラー階調特性の混合比率を抑えてモノクロ階調特性とカラー階調特性を混合した階調特性補正を行いつつ、第1閾値P以上の領域においてはカラー階調特性の混合比率を大きくすることが可能となる。
【0051】
(1.5.モノクロ補正部22)
モノクロ補正部22は、判定部11によりモノクロ画素と判定された対象画素の入力階調値について、ルックアップテーブルL1を参照し、明度値を取得する。上述のとおり、ルックアップテーブルL1は、GSDFカーブを満たすように規定されている。その結果、モノクロ画素を、GSDFカーブを満たす明度値で表示することが可能となる。
【0052】
また、モノクロ補正部22は、判定部11によりカラー画素と判定された対象画素の入力階調値について、ルックアップテーブルL1を参照し、混合比率Wに基づいて混合するための明度値を決定する。
【0053】
(1.6.カラー補正部23)
カラー補正部23は、判定部11によりカラー画素と判定された対象画素の入力階調値について、ルックアップテーブルL1を参照し、混合比率Wに基づいて混合するための明度値を決定する。
【0054】
制御部1は、判定部11によりモノクロ画素と判定された画素を、モノクロ補正部22が決定した明度値に基づいて、表示部4に表示させる。一方、制御部は、判定部11によりカラー画素と判定された画素を、モノクロ補正部22が決定した明度値とカラー補正部23が決定した明度値とに基づいて、表示部4に表示させる。
【0055】
以下、カラー画素を表示させる場合の明度値について、具体的に説明する。一例として、対象画素の入力階調値が(R、G、B)=(80、90、100)、カラー階調特性の混合比率Wが0.7とした場合、混合後の明度値(MR、MG、MB)は以下の(式1)~(式3)として求まる。
【0056】
MR=L2(80)×0.7+L1(80)×0.3 (式1)
MG=L2(90)×0.7+L1(90)×0.3 (式2)
MB=L2(100)×0.7+L1(100)×0.3 (式3)
【0057】
ここで、入力値を80としたときのルックアップテーブルL1の明度値をL1(80)、ルックアップテーブルL2の明度値をL1(80)としている。他の入力値90、100に対しても同様であるとする。
【0058】
(1.7.補正処理の手順)
図6を参照し、本実施形態における補正処理の手順を説明する。以下の処理は、例えばCPUにより構成される制御部1により実行される。
【0059】
ステップS10において、判定部11は、入力画像データの対象画素についてモノクロ判定を行う。判定部11が、入力画素をモノクロと判定した場合には、ステップS45が実行される。一方、判定部11が、入力画素をカラーと判定した場合には、ステップS20が実行される。
【0060】
ステップS20において、彩度値取得部12は、判定部11によってカラーであると判定された対象画素又は対象小領域に対する彩度値cを取得する。
【0061】
次に、ステップS30において、混合部21は、取得された彩度値cにもとづき、記憶部2に格納されている混合比率テーブルKを参照し、カラー階調特性の混合比率Wを決定する。
【0062】
次に、ステップS40において、モノクロ補正部22およびカラー補正部23は、入力画素の入力階調値に基づいてルックアップテーブルL1およびL2を参照し、ステップS30で決定された混合比率Wに基づいてルックアップテーブルL1およびL2の値を混合して合成された階調補正後の明度値を決定する。
【0063】
一方、ステップS45において、モノクロ補正部22は、判定部11によってモノクロであると判定された対象画素に対し、記憶部2に格納されているルックアップテーブルL1を参照し、対象画素の入力階調値に対応する明度値を決定する。
【0064】
ステップS50において、補正部20は、入力画像データの全画素について、上記S10~S45の処理が完了したかどうかを判定する。処理が完了していない場合、ステップS10が再度実行される。一方、処理が完了している場合、ステップS60が実行される。
【0065】
ステップS60において、制御部1は、ステップS40および/またはステップS45で決定された明度値で入力画像データが表示されるように、表示部4を制御する。
【0066】
以上のようにして、本実施形態では、制御部1は彩度値取得部12と補正部20とを備える。彩度値取得部12は、入力画像データの対象画素、または対象小領域の彩度値を取得する。補正部20は、取得された彩度値に基づいて、対象画素を補正して得られる補正後の階調特性が、カラー画素用のカラー階調特性とモノクロ画素用のモノクロ階調特性とを所定の混合比率で混合して合成された階調特性と一致するように、対象画素を補正する。
【0067】
ここで、彩度値をcとし、カラー階調特性の混合比率をWとすると、cを変数としたときの混合比率Wの対応関係W=f(c)は、比例関係g(c)に対してf(c)>αg(c)が満たされる彩度値cおよび乗数αが存在し、α≧1であるという条件が満たされる。
【0068】
上記構成とすることにより、比例関係g(c)で定める場合と比較して、第1閾値P以上の領域において、カラー階調特性の混合比率Wを高めることが可能となる。その結果、第1閾値P以上の領域において、混合された階調特性をγ2.2カーブに基づく階調特性に近づけることができる。
【0069】
(1.8.変形例)
図7Aに、変形例1としての彩度値cと混合比率Wとの対応関係f(c)を示す。この例では、彩度値cに対する混合比率Wの対応関係W=f(c)は、1つのシグモイド関数で表される。具体的には、対応関係f(c)は、以下の式で表される。
【0070】
【0071】
ここで、係数aおよびbについては、
図7Aに示す例では、a=18,b=128としているが、この例に限定されない。このようにすることで、1つの関数を用いて上述の条件を満たすように彩度値と混合比率との関係を規定することが可能となり、対応関係f(c)を規定するのが容易となる。
【0072】
図7Bに、変形例2としての彩度値cと混合比率Wとの対応関係f(c)を示す。この例では、彩度値cに対する混合比率Wの対応関係W=f(c)は、f1(c)は1次関数であり、f2(c)は定数となっている。このようにすることで、よりシンプルな演算で彩度値cに対する混合比率Wを取得することが可能となる。
【0073】
図7Cに、変形例3としての彩度値cと混合比率Wとの対応関係f(c)を示す。この例では、彩度値cが閾値Pに到達するまでは、対応関係f(c)<比例関係g(c)となっている。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0074】
ここで、
図7Cにおいて、閾値Pに到達するまで、彩度値cと混合比率Wとの関係は単調増加に限定されない。例えば、閾値P以下で、混合比率Wは0であってもよい。具体的には、
図7Cに一点鎖線で示すように、0とPの間の任意の閾値をSとし、0≦c≦SまではW=0であり、c≧Sでは、Wはf(P)に向かって単調増加するようにしてもよい。
【0075】
以下、上記実施形態において、彩度値cが低い場合においてモノクロ階調特性の混合比率を高める理由について説明する。モノクロ画素とカラー画素が混在する低彩度画像において、モノクロ画素用のモノクロ階調特性と、カラー画素用のカラー階調特性との明度値の差が大きい場合、当該明度値の差がノイズしてユーザに知覚されることがある。そこで、ノイズが知覚されないように、低彩度画像のカラー画素に対して、モノクロ階調特性の混合比率を強めた階調特性補正を行う必要がある。
【0076】
同様に、モノクロ画素とカラー画素が混在する高彩度画像において、モノクロ階調特性とカラー階調特性との明度値の差が大きい場合、当該明度値の差がノイズとして知覚される懸念がある。しかし、高彩度画像では、ノイズが知覚されることは稀である。その理由は、カラー(RGB各色)の明度はモノクロの明度に比べて低いため、高彩度における明度の差をユーザが知覚しにくいからである。
【0077】
また、別の理由として、低彩度画像においては色差による差異を知覚しやすいが、高彩度画像においては色差による差異を知覚しづらいことも挙げられる。このように、高彩度画像においては、カラー階調特性の混合比率を高めても、ノイズの出現はユーザにとって気にならない程度となる。そして、高彩度においては、カラー階調特性の混合比率を高めることにより、画像品質を低下させることなくディスプレイに表示されるカラー画像が暗く感じられることを防止することが可能となる。
【0078】
<2.第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、入力階調値に対するGSDFカーブにより規定される明度値と、γ2.2カーブにより規定される明度値との差分を考慮して、彩度値cと混合比率Wとの対応関係F(c)を規定する点で第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付しており、説明は繰り返さない。
【0079】
図8Aには、GSDFカーブγ2.2カーブが示されている。ここで、入力階調値がZのときにおけるγ2.2カーブ上の明度値をB1、GSDFカーブ上の明度値をB2とする。
図8Aに示すように、入力階調値によって明度値B1と明度値B2との差分は変化している。
【0080】
図8Bには、
図8Aに基づいて、明度値B1と明度値B2との差分割合Cを示している。ここで、差分割合Cは、以下の(式4)によって算出される。
C=|(B1-B2)/B2|(||は絶対値) (式4)
【0081】
ここで、入力階調値に対する明度値B1と明度値B2の差分が大きいということは、GSDFカーブによるモノクロ階調特性補正と、γ2.2カーブによるカラー階調特性補正との補正後における明度値の差が大きいことを意味する。このような場合、カラー階調特性の混合比率Wを急激に高めると、ノイズが発生して画像品質が低下することとなる。
【0082】
そこで、
図9Aに示すように、明度値B1と明度値B2の差分割合の大きさに応じた領域I~領域IVを規定する。そして、領域I~領域IVに対応する入力階調値を領域(1)~(4)として規定する。
【0083】
さらに、
図9Bに示すように、彩度値cと混合比率Wとの対応関係をF1(c)~F4(c)のように複数用意する。ここで、
図8Bおよび
図9において、明度値B1と明度値B2の差分がもっとも小さい領域(領域(1)に相当)に属する入力階調値については、対応関係F1(c)を適用する。そして、明度値B1と明度値B2の差分が次に小さい領域(領域(2)に相当)における入力階調値については、対応関係F2(c)を適用する。このようにして、入力階調値に基づいて、混合比率の決定に用いられる対応関係F1(c)~F4(c)が決定される。
【0084】
ここで、対応関係F1(c)~F4(c)を決定する際の入力階調値としては、対象画素の有する入力階調値(R,G,B)の3つの相加平均を採用してもよく、または、3つの中の特定の1つを代表値として採用してもよい。
【0085】
関係F1(c)~F4(c)は、具体的には、前述の[数1]における係数bを変化させることで、実現することができる。一例として、F1(c)は、a=18,b=55、F2(c)は、a=18,b=70、F3(c)は、a=18,b=96、F4(c)はa=18,b=128とする上記[数1]に記載のシグモイド関数を含んでいる。
【0086】
そして、関係F1(c)~F4(c)にそれぞれ対応する第1閾値P1~P4は、P1が最も小さく、P2、P3と大きくなり、P4が最も大きい。言い換えると、明度値B1と明度値B2との差分割合Cが大きくなるほど、第1閾値がより大きくなるように設定される。このようにして設定された対応関係F1(c)~F4(c)がそれぞれ規定された混合比率テーブルK1~K4が記憶部2に格納される。
【0087】
混合部21は、対象画素の入力階調値に対応する混合比率テーブルKを参照し、混合比率Wを決定する。そして、上記実施形態と同様に、カラー補正部23は決定された混合比率Wに基づいて、ルックアップテーブルL1およびL2を参照し、入力階調値に対して階調特性補正を行う。
【0088】
このような構成とすることにより、GSDFカーブにより定まる明度値と、γ2.2カーブにより定まる明度値との差分の絶対値が大きい入力階調値では、彩度が低い場合にカラー階調特性の混合比率を抑えることができる。そして、当該差分が小さい入力階調値では、彩度が低い場合でも混合比率を高めることができる。その結果、入力階調値に応じて適切な混合比率を決定することが可能となる。
【0089】
図10を参照し、第2の実施の形態における補正処理の手順を説明する。なお、第2の実施の形態と同様の処理には同一の符号を付しており、説明は繰り返さない。
【0090】
ステップS20の後のステップS25において、補正部20は、対象画素の入力階調値に基づいて、当該対象画素に対して適用すべき関係F(c)を決定する。その後、ステップS30が実行され、当該対象画素についての混合比率Wが決定される。
【0091】
<3.他の実施の形態>
【0092】
本発明の適用は、上記実施形態に限定されない。例えば、カラー階調特性を規定する3Dルックアップテーブルを参照した後に、カラー用及びモノクロ用で共通の1Dルックアップテーブルを参照する、いわゆる3D-1Dルックアップテーブルでも適用することができる。
【0093】
また、GSDFカーブを満たす明度値、γ2.2カーブを満たす明度値、および、彩度値cに基づく混合比率Wを軸として、混合結果としての明度値が規定された3Dルックアップテーブルを規定する方法を採用してもよい。
【0094】
また、入力階調値におけるR、G、Bを軸として、彩度値cに基づきカラー階調特性とモノクロ階調特性とが混合比率Wで混合されて合成された階調特性となる明度値が規定された3Dルックアップテーブルを規定する方法を採用してもよい。
【0095】
また、ルックアップテーブルを用いる代わりに演算式を用いて、入力階調値を彩度値cに基づきカラー階調特性とモノクロ階調特性とが混合比率Wで混合されて合成された階調特性となる明度値を出力してもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、画素毎にモノクロ用のルックアップテーブルL1の値(明度値)と、カラー用のルックテーブルL2の値(明度値)とを混合比率Wに基づいて混合したが、入力画素の入力階調値に混合比率Wに基づいた補正係数を演算することで(又はルックアップテーブルで同様の処理をすることで)、彩度値cに基づきカラー階調特性とモノクロ階調特性とが混合比率Wで混合されて合成された階調特性による明度値を決定するようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、カラー画素の階調特性補正についてγ2.2カーブを満たす明度値となるような階調特性補正を行う例を示したが、γ2.2カーブに限定されず、例えばガンマ値は1.8~2.6の値を採用してもよく、また、Rec.709、PQ方式(Perceptual Quantization)、又は、HLG方式(Hybrid Log Gamma)等を満たす明度値になるような階調特性を採用してもよい。
【0098】
さらに、本発明は、コンピュータを彩度値取得部と補正部とを備える画像処理装置として機能させる画像処理プログラムであって、前記彩度値取得部により、対象画素の彩度値、または、当該対象画素とその周辺の周辺画素とを含む対象小領域の彩度値を取得する取得ステップと、前記補正部により、前記対象画素を補正して得られる補正後の階調特性が、取得された前記彩度値に基づいてカラー階調特性とモノクロ階調特性とを所定の混合比率で混合して合成された階調特性と一致するように、前記対象画素を補正する補正ステップと、を備え、前記彩度値をcとし、前記カラー階調特性の混合比率をWとすると、cを変数としたときのWの値は関係W=f(c)で表され、上述の条件を満たす、画像処理プログラムとして実現することもできる。
【0099】
さらに、本発明は、上述のプログラムを格納する、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現することもできる。
【0100】
本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
1:表示制御部、2:記憶部、3:操作部、4:表示部、5:バックライト、6:通信部、7:バス、11:判定部、12:彩度値取得部、13:混合部、20:補正部、21:混合部、22:モノクロ補正部、23:カラー補正部、100:画像処理装置、K:混合比率テーブル、L:ルックアップテーブル