(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】液晶移相器、液晶アンテナ及び液晶移相器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01P 1/18 20060101AFI20220105BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20220105BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H01P1/18
H01Q3/36
H01P11/00
(21)【出願番号】P 2020531607
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2019082162
(87)【国際公開番号】W WO2020199238
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】201910272556.9
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520188949
【氏名又は名称】信利半導体有限公司
【氏名又は名称原語表記】TRULY SEMICONDUCTORS LTD.
【住所又は居所原語表記】North of the Dong Chong Road,Truly Industrial Area Shanwei City,Guangdong 516600 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】劉 智生
(72)【発明者】
【氏名】徐 響戦
(72)【発明者】
【氏名】王 立雄
(72)【発明者】
【氏名】黄 英群
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ふ▼新
(72)【発明者】
【氏名】▲ざん▼ 端清
(72)【発明者】
【氏名】何 基強
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0182556(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0164155(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/18
H01Q 3/36
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向設置される第1基板と第2基板、及び前記第1基板と第2基板との間に位置する液晶層を備え、前記第2基板に向かう第1基板の一方側には、第1金属膜層が設置され、前記第1基板に向かう第2基板の一方側には、第2金属膜層が設置され、前記第1金属膜層及び第2金属膜層はともにパターニングされた金属膜層であり、前記第1基板及び第2基板はPCB基板であ
り、
前記第1金属膜層と第1基板との間には、光透過性の第1キャリア層を有し、前記第2金属膜層と第2基板との間には、光透過性の第2キャリア層を有し、
前記第1金属膜層は第1位置合わせマークを有し、前記第2金属膜層は第2位置合わせマークを有し、
前記第1基板は、前記第1位置合わせマークの位置に対応する位置に第1貫通孔を有し、前記第2基板は、前記第2位置合わせマークの位置に対応する位置に第2貫通孔を有する
ことを特徴とする液晶移相器。
【請求項2】
前記第1キャリア層と第2キャリア層はPI層である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の液晶移相器。
【請求項3】
請求項1~
2のいずれか一項に記載の液晶移相器、及びアンテナ放射ユニットを備える
ことを特徴とする液晶アンテナ。
【請求項4】
請求項1~
2のいずれか一項に記載の液晶移相器を製造する液晶移相器の製造方法であって、
第1位置合わせマークを有する第1金属膜層と、前記第1位置合わせマークの位置に対応する第1貫通孔とを有するPCB基板の第1基板を提供するステップS1と、
第2位置合わせマークを有する第2金属膜層と、前記第2位置合わせマークの位置に対応する第2貫通孔とを有するPCB基板の第2基板を提供するステップS2と、
第1貫通孔及び第2貫通孔のそれぞれを通って、第1位置合わせマークと第2位置合わせマークを用いて、第1基板と第2基板を位置合わせして貼り合わせるステップS3と、を含む
ことを特徴とする液晶移相器の製造方法。
【請求項5】
前記第1位置合わせマークは、金属位置合わせマークであり、第1金属膜層を露光してエッチングすることで得られ、前記第2位置合わせマークは、金属位置合わせマークであり、第2金属膜層を露光してエッチングすることで得られ、前記第1金属膜層と第1基板との間には、高光透過性の第1キャリア層が設置され、前記第1キャリア層は、第1位置合わせマークの支持層として機能し、前記第2金属膜層と第2基板との間には、高光透過性の第2キャリア層が設置され、前記第2キャリア層は、第2位置合わせマークの支持層として機能する、
ことを特徴とする請求項
4に記載の液晶移相器の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS1の製造方法は、
第1基板を提供し、前記第1基板上に第1接着剤層を設置し、前記第1基板に前記第1貫通孔を製造し、第1接着剤層に、前記第1貫通孔の位置に対応する第1孔を製造するステップと、
第1キャリア層を、第1孔を有する第1接着剤層に貼り合わせ、第1金属膜層を第1基板とは反対側の第1キャリア層の一面に位置付けるステップと、
第1金属膜層をパターニングして、第1位置合わせマークを含むパターニングされた第1金属膜層を得るステップと、を含み、
前記ステップS2の製造方法は、
第2基板を提供し、前記第2基板に第2接着剤層を設置し、第2基板に第2貫通孔を製造し、第2接着剤層に前記第2貫通孔の位置に対応する第2孔を製造するステップと、
第2キャリア層を、第2孔を有する第2接着剤層に貼り合わせ、第2金属膜層を、第2基板とは反対側の第2キャリア層の一面に位置付けるステップと、
第2金属膜層をパターニングして、第2位置合わせマークを含むパターニングされた第2金属膜層を得るステップと、含む、
ことを特徴とする請求項
5に記載の液晶移相器の製造方法。
【請求項7】
前記第1貫通孔は、第1位置合わせマークを完全に覆うほどのサイズを有し、前記第2貫通孔は、第2位置合わせマークを完全に覆うほどのサイズを有する、
ことを特徴とする請求項
6に記載の液晶移相器の製造方法。
【請求項8】
ステップS3では、第1基板と第2基板を位置合わせして貼り合わせる際に、大寸法基板を用いて製造し、ステップS3の後に、ホットプレスしてセル化するステップをさらに含み、それによって、複数の空セルを製造し、次に、小片裁断プロセスによって、単体となる請求項1に記載の液晶移相器の空セルを得る、
ことを特徴とする請求項
4に記載の液晶移相器の製造方法。
【請求項9】
好ましくは、第1位置合わせマーク、第2位置合わせマーク、第1貫通孔、及び第2貫通孔は、大寸法基板を用いて製造するときに大寸法基板のエッジ位置に設置され、小片裁断をするときに、第1位置合わせマーク、第2位置合わせマーク、第1貫通孔、及び第2貫通孔は切り取られる、
ことを特徴とする請求項
8に記載の液晶移相器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の技術分野に関し、具体的には、液晶移相器、液晶アンテナ及び液晶移相器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報ネットワークの発展は日々変化しており、さまざまな分野で大きな変化が起こっており、また、これからも起こり得る。ホットスポットとなる技術には、5G及び衛星モバイルインターネット通信技術がある。
【0003】
アンテナは、通信情報を送受信するためのコア機器として、情報ネットワークのパフォーマンス指標とユーザーの使用効果に影響を与える重要な要素になっている。
【0004】
現在、高低周波数帯域(センチ波以下、たとえば周波数≦10GHz)の無線電磁波のスペクトルリソースが不十分であるため、超高周波帯域以上(センチ波~テラヘルツ波、10GHz以上)のスペクトルの開発利用が求められる。
【0005】
液晶移相器は、液晶アンテナの重要な部材であり、超高周波帯域以上のスペクトルに適する液晶移相器及び液晶アンテナの設計及び製造が当業者にとって急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、液晶移相器、液晶アンテナ及び液晶移相器の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液晶移相器を提供し、前記液晶移相器は、対向設置される第1基板と第2基板、及び前記第1基板と第2基板との間に位置する液晶層を備え、前記第2基板に向かう第1基板の一方側には、第1金属膜層が設置され、前記第1基板に向かう第2基板の一方側には、第2金属膜層が設置され、前記第1金属膜層及び第2金属膜層はともにパターニングされた金属膜層であり、前記第1基板及び第2基板はPCB基板である。
【0008】
好ましくは、前記第1金属膜層と第1基板との間には、光透過性の第1キャリア層を有し、前記第2金属膜層と第2基板との間には、光透過性の第2キャリア層を有する。
【0009】
好ましくは、前記第1キャリア層と第1基板との間には、第1接着剤層を有し、前記第2キャリア層と第2基板との間には、第2接着剤層を有する。
【0010】
好ましくは、前記PCB基板はPTFE高周波基板である。
【0011】
好ましくは、前記第1金属膜層と第2金属膜層は銅層である。
【0012】
好ましくは、前記第1金属膜層と第2金属膜層の金属膜層の厚さはすべて2.0μm以上である。
【0013】
好ましくは、前記第1キャリア層と第2キャリア層はPI層である。
【0014】
好ましくは、前記第1キャリア層と第1金属膜層は、一体化された銅張PI基材であり、前記第2キャリア層と第2金属膜層は、一体化された銅張PI基材である。
【0015】
本発明は、前記液晶移相器、及びアンテナ放射ユニットを備える液晶アンテナをさらに提供する。
【0016】
本発明は、前記液晶移相器を製造する液晶移相器の製造方法をさらに提供し、前記製造方法は、
第1位置合わせマークを有する第1金属膜層と、前記第1位置合わせマークの位置に対応する第1貫通孔とを有するPCB基板の第1基板を提供するステップS1と、
第2位置合わせマークを有する第2金属膜層と、前記第2位置合わせマークの位置に対応する第2貫通孔とを有するPCB基板の第2基板を提供するステップS2と、
第1貫通孔及び第2貫通孔のそれぞれを通って、第1位置合わせマークと第2位置合わせマークを用いて、第1基板と第2基板を位置合わせして貼り合わせるステップS3と、を含む。
【0017】
好ましくは、ステップS3では、CCDカメラを用いて、第1基板と第2基板を位置合わせして貼り合わせる。
【0018】
好ましくは、前記第1位置合わせマークは、金属位置合わせマークであり、第1金属膜層を露光してエッチングすることで得られ、前記第2位置合わせマークは、金属位置合わせマークであり、第2金属膜層を露光してエッチングすることで得られ、前記第1金属膜層と第1基板との間には、高光透過性の第1キャリア層が設置され、前記第1キャリア層は、第1位置合わせマークの支持層として機能し、前記第2金属膜層と第2基板との間には、高光透過性の第2キャリア層が設置され、前記第2キャリア層は、第2位置合わせマークの支持層として機能する。
【0019】
好ましくは、前記ステップS1の製造方法は、
第1基板を提供し、前記第1基板上に第1接着剤層を設置し、前記第1基板に前記第1貫通孔を製造し、第1接着剤層に、前記第1貫通孔の位置に対応する第1孔を製造するステップと、
第1キャリア層を、第1孔を有する第1接着剤層に貼り合わせ、第1金属膜層を第1基板とは反対側の第1キャリア層の一面に位置付けるステップと、
第1金属膜層をパターニングして、第1位置合わせマークを含むパターニングされた第1金属膜層を得るステップと、を含む。
【0020】
前記ステップS2の製造方法は、
第2基板を提供し、前記第2基板に第2接着剤層を設置し、第2基板に第2貫通孔を製造し、第2接着剤層に前記第2貫通孔の位置に対応する第2孔を製造するステップと、
第2キャリア層を、第2孔を有する第2接着剤層に貼り合わせ、第2金属膜層を、第2基板とは反対側の第2キャリア層の一面に位置付けるステップと、
第2金属膜層をパターニングして、第2位置合わせマークを含むパターニングされた第2金属膜層を得るステップと、含む。
【0021】
好ましくは、前記第1貫通孔は、第1位置合わせマークを完全に覆うほどのサイズを有し、前記第2貫通孔は、第2位置合わせマークを完全に覆うほどのサイズを有する。
【0022】
好ましくは、ステップS3では、第1基板と第2基板を位置合わせして貼り合わせる際に、大寸法基板を用いて製造し、ステップS3の後に、ホットプレスしてセル化するステップをさらに含み、それによって、複数の空セルを製造し、次に、小片裁断プロセスによって、単体となる請求項1に記載の液晶移相器の空セルを得る。
【0023】
好ましくは、前記第1位置合わせマーク、第2位置合わせマーク、第1貫通孔、及び第2貫通孔は、大寸法基板を用いて製造するときに大寸法基板のエッジ位置に設置され、小片裁断をするときに、前記第1位置合わせマーク、第2位置合わせマーク、第1貫通孔、及び第2貫通孔は切り取られる。
【発明の効果】
【0024】
従来技術に比べて、本発明は、下記の有益な効果を有する。
1.超高周波無線通信では、基板材料の誘電率及び誘電損失値が大きいほど、誘電損失が大きく、信号が悪い。本願では、液晶アンテナの基板としてPCB基板が使用されるため、PCB基板の誘電率及び誘電損失が液晶パネルによく使用されるガラス基板よりも低く、誘電損失がより小さくなり、超高周波帯用途での液晶アンテナの性能向上に有利である。
2.さらに、PCB基板が光を透過できないため、光透過性を用いたマーク検知方法で2枚の基板を位置合わせして貼り合わせることに不利であり、その結果、正確な位置合わせができず、アンテナの設計要件が満足できず、アンテナの性能が大幅に低下する。本願では、第1金属膜層と第2金属膜層のそれぞれに位置合わせマークを設置し、第1基板と第2基板のそれぞれに位置合わせマークの位置に対応する貫通孔を設置するように改良することによって、光透過性を用いたマーク検知で2枚を位置合わせして貼り合わせることを可能にする。
3.さらにまた、フロー及びプロセスを簡素化するために、位置合わせマークは、対応する金属膜層を露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークであり、金属位置合わせマークの寸法が貫通孔の寸法未満であり、金属膜層と対応する基板との間に光透過性のキャリア層を設置することで、光透過性のキャリア層が光透過性を用いたマーク検知による位置合わせ・貼り合わせへ影響を与えずに、露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークを支持する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例1による液晶移相器の構造模式図である。
【
図2】本発明の実施例1による液晶移相器を位置合わせして貼り合わせるときの第1基板、第1金属膜層、第1キャリア層の一例の構造模式図である。
【
図3】本発明の実施例1による液晶移相器を位置合わせして貼り合わせるときの第1基板、第1金属膜層、第1キャリア層及び第1接着剤層の一例の構造模式図である。
【
図4】本発明の実施例1による液晶移相器を位置合わせして貼り合わせるときの第1基板、第1金属膜層、第1キャリア層及び第1接着剤層の別の構造模式図である。
【
図5】本発明の実施例1による液晶移相器を位置合わせして貼り合わせるときの大寸法基板の第1基板の構造模式図である。
【
図6】本発明の実施例3による液晶移相器の製造方法のフローチャートである。
【
図7】本発明の実施例3による液晶移相器の製造方法のステップS1のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的、技術案及び利点をより明瞭にするために、以下、図面を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、明らかなように、説明する実施例は、本発明の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力を必要とせずに想到し得るすべてのほかの実施例は、本発明の特許範囲に属する。
【0027】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【0028】
実施例1
図1には、本発明の実施例1が示されており、本特定実施例は液晶移相器を提供する。液晶移相器は、対向設置される第1基板11と第2基板12、及び第1基板11と第2基板12との間に位置する液晶層50を備える。
【0029】
第1基板11と第2基板12との間には、封止材40をさらに有し、封止材40は、第1基板11と第2基板12のエッジに位置し、液晶層50を封止する。好ましくは、液晶層50には、プラスチックビーズとエポキシ封止材40を含む支持物が分布している。
【0030】
第1基板11には、第1導電層が設置され、第2基板12には、第2導電層が設置される。
【0031】
前記第2基板12に向かう第1基板11の一方側には、第1金属膜層21が設置され、前記第1基板11に向かう第2基板12の一方側には、第2金属膜層22が設置される。
【0032】
第1金属膜層21と第2金属膜層22は、ともにパターニングされた金属膜層である。
【0033】
第1基板11及び第2基板12は、安定性と絶縁効果に優れるとともに、誘電損失が極めて低い材料を用いる。第1基板11及び第2基板12は、ガラス基板、溶融石英、ABS、セラミックス基材、及びセラミックスと熱硬化性ポリマーの複合材料であってもよい。本実施例では、第1基板11及び第2基板12は、好ましくはPCB基板である。
【0034】
超高周波無線通信では、基板材料の誘電率及び誘電損失値が大きいほど、誘電損失が大きく、信号が悪い。本願では、液晶移相器の基板としてPCB基板が使用されるため、PCB基板の誘電率及び誘電損失が液晶パネルによく使用されるガラス基板よりも低く、誘電損失がより小さくなり、超高周波帯用途での液晶移相器及び液晶アンテナの性能向上に有利である。
【0035】
液晶移相器の基板として使用されるPCB基板は、FR4(エポキシ樹脂ガラス繊維)板、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)板、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PS(ポリスチレン)、PPO(ポリフェニレンオキシド板)などの板材としてもよい。PCB基板は好ましくは高周波基板であり、より好ましくはPTFE高周波基板である。PCB基板の中でも、PTFE高周波基板は、より低い誘電率及び誘電損失を有し、誘電損失が小さいほど、超高周波帯用途での液晶移相器及び液晶アンテナの性能が向上する。
【0036】
第1金属膜層21及び第2金属膜層22は、高い導電性と透磁率を有する金属材料を用い、アルミニウム、銅、銀、金、カドミウム、クロム、モリブデン、ニオブ、ニッケル、鉄などの金属を用い得るが、銀、銅、金、アルミニウム及びこれらの合金が好ましい。
【0037】
無線通信の損失が低いほど、その性能が良好であり、即ち、挿入損失(導体損失を含む)も低いほど、性能が良好であり、液晶移相器に必要な金属材料には高い導電率及び透磁率が求められるため、一般には、銀、銅、金、アルミニウム及びこれらの合金が使用される。
【0038】
金属材料の銀、銅、金、アルミニウム及びこれらの合金のうち、銀及び金の導電率が良好であるが、高価である。コストパフォーマンスが最も好ましい形態では、金属膜層の金属材料は好ましくは銅材料である。第1金属膜層21と第2金属膜層22はともに銅層である。
【0039】
金属材料及び金属膜層の厚さのいずれも導体損失に繋がることが知られており、表皮効果は導体損失を反映するものである。交流電流が表皮効果を有するので、表皮効果は導体の抵抗を間接的に増大し、導体のエネルギー熱損失もその分増大する。マイクロ波などの高周波帯では、表皮効果は非常に顕著である。金属材料によって表皮深さが異なる。
【0040】
表皮効果について、導体に交流電流又は交流電磁場が存在する場合、導体の内部の電流分布が不均一になり、電流が導体の表皮部分に集中し、導体の表面に向かうほど、電流密度が大きくなり、リード線の内部では、実質的に電流が極めて小さい。その結果、導体の抵抗が増え、その損失電力も増える。このような現象は表皮効果(skin effect)である。
【0041】
表皮深さδは、下記式により算出される。
【0042】
δ=(1/πfμσ)1/2
式中、μは金属材料の透磁率、σは導体の導電率、fは液晶アンテナが送受信する信号は周波数を表す。
【0043】
液晶移相器に使用される金属材料に対して高い導電率及び透磁率が求められるので、一般には、銀、銅、金、アルミニウム及びこれらの合金が使用され、このため、液晶移相器及び液晶アンテナに求められる表皮効果は、一般には、対応する第1金属膜層21及び第2金属膜層22の金属膜層の厚さがそれぞれ表皮深さδの3倍~5倍でなければならない。液晶アンテナの性能を確実に確保するために、μmスケールの金属膜層の厚さが必要である。
【0044】
第1金属膜層21及び第2金属膜層22がともに銅層である場合、第1金属膜層21及び第2金属膜層22の金属膜層の厚さはすべて2.0μm以上である。
【0045】
2枚の基板を位置合わせして貼り合わせる際に、位置合わせ・貼り合わせ機構は、2枚の基板の背面(即ち、基板の対応する金属膜層とは反対側の一面)から光透過性を用いたマーク検知を行う。PCB基板が光を透過できないため、光透過性を用いたマーク検知方法で2枚の基板を位置合わせして貼り合わせることに不利であり、その結果、正確な位置合わせができず、アンテナの設計要件が満足できず、アンテナの性能が大幅に低下する。手動で案内などなしで貼り合わせると、貼り合わせ精度が確保できない。この問題を解決するために、液晶移相器の製造プロセスでは、第1基板と第2基板を位置合わせして貼り合わせる際に、第1金属膜層21には、第1位置合わせマーク212があり、前記第2金属膜層22には、第2位置合わせマークがあり、第1基板11には、第1位置合わせマーク212に対応して第1貫通孔111が設置され、第2基板12には、第2位置合わせマークに対応して第2貫通孔が設置される。
【0046】
位置合わせマークは円形マークであってもよい。又は、位置合わせマークは、互いに垂直な2つの方向におけるマークラインを含んでもよく、たとえば、位置合わせマークは、十字状マーク、又は90度の夾角をなす2本のラインであってもよい。
【0047】
本願では、第1金属膜層21と第2金属膜層22のそれぞれに位置合わせマークを設置し、第1基板11と第2基板12のそれぞれに位置合わせマークの位置に対応する貫通孔を設置することによって、光透過性についての問題を解決し、位置合わせ・貼り合わせ機構が光透過性を用いたマーク検知によって2枚の基板を位置合わせして貼り合わせることを可能にし、2枚の基板を貼り合わせてセル化するというプロセスの実施に有利である。
【0048】
位置合わせ・貼り合わせを行う際に、CCDカメラを用いて、第1基板11と第2基板12を位置合わせして貼り合わせる。第1基板11を例にすると、CCDカメラは、第1金属膜層21の背面の第1基板11で光透過性を用いたマーク検知を行い、第1基板11の第1貫通孔111を通って、CCDカメラは第1位置合わせマーク212を検知できる。
【0049】
好ましくは、第1貫通孔111は、第1位置合わせマーク212を完全に覆うほどのサイズを有し、1つの仮想平面を想定し、この平面がたとえば第1基板11の位置する平面である場合、この平面での第1貫通孔111の投影は、第1位置合わせマーク212の平面での投影を完全に覆うことができる。同様に、第2貫通孔は、第2位置合わせマークを完全に覆うほどのサイズを有する。
【0050】
以下、第1位置合わせマーク212及び第2位置合わせマークを説明する。
【0051】
第1位置合わせマーク212は、第1貫通孔111を通って見られるように、第1基板11に近い第1金属膜層21の一面に設置されてもよい。たとえば、ビアを位置合わせマークとして製造し、又は部分的な透明領域を位置合わせマークとし、又はレーザで位置合わせマークを製造するなどの方法により製造される。同様に、第2位置合わせマークは、第2貫通孔を通って見られるように、第2基板12に近い第2金属膜層22の一面に設置されてもよい。
【0052】
より好ましくは、フロー及びプロセスを簡素化するために、位置合わせマークは、対応する金属膜層を露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークである。具体的には、第1位置合わせマーク212は、第1金属膜層21を露光してエッチングすることで得られ、第2位置合わせマークは、第2金属膜層22を露光してエッチングすることで得られ、第1位置合わせマーク212及び第2位置合わせマークは金属位置合わせマークである。なお、前記第1位置合わせマーク212と第2位置合わせマークの位置は対応している。
【0053】
さらにまた、第1基板11を例にすると、
図2に示されるように、第1金属膜層21と第1基板11との間には、光透過性の第1キャリア層71を有する。金属位置合わせマークの寸法は、一般には、貫通孔の寸法未満であり、金属膜層と対応する基板との間に光透過性のキャリア層を設置することで、光透過性のキャリア層が光透過性を用いたマーク検知による位置合わせ・貼り合わせへ影響を与えずに、露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークを支持する。同様に、第2金属膜層22と第2基板12との間には、光透過性の第2キャリア層を有する。
【0054】
第1キャリア層71及び第2キャリア層は、PI(ポリイミド)層、PET(ポリテレフタル酸系材料)層、又はPE(ポリエチレン)層であってもよく、それらは、すべて良好な光透過性を有する。より好ましくは、第1キャリア層71及び第2キャリア層はPI層であり、PIには、より良好な光透過性や良好な耐高温性などの利点がある。
【0055】
実際に使用されるとき、PI基材層上に銅箔層が積層された一体化された銅張PI基材を使用することができ、銅張PI基材は、第1キャリア層71及び第1金属膜層21の代わりとして使用され、第1キャリア層71及び第1金属膜層21と一体化することができる。銅張PI基材は、接着剤層を介して対応する基板に貼着できる。
図3に示されるように、第1キャリア層71と第1基板11との間には、第1接着剤層61があり、第1キャリア層71と第1基板11は第1接着剤層61を介して貼り合わせる。同様に、第2キャリア層と第2基板12との間には、第2接着剤層がある。又は、別の実施例では、まず、キャリア層、たとえばPI層を基板に貼着し、次にキャリア層上に金属膜層を製造又は設置する。しかし、銅張PI基材を用いた形態に比べて、銅張PI基材は、一般には従来の板材であるため、直接購入することができ、まずキャリア層たとえばPI層を基板に貼着し、次に、キャリア層上に金属膜層を製造又は設置する形態に比べて、コストが削減され時間が短縮されるという利点がある。
【0056】
第1接着剤層61及び第2接着剤層は、PCB基板によく使用される非透明接着剤、又は光透過性光学接着剤であってもよい。
【0057】
第1接着剤層61及び第2接着剤層が非透明接着剤層である場合、
図4に示されるように、第1位置合わせマーク212に対応する前記第1接着剤層61の位置には、第1孔611が設置され、第2位置合わせマークに対応する前記第2接着剤層の位置には、第2孔が設置される。第1孔611及び第2孔が設置されることによって、第1接着剤層61及び第2接着剤層は光透過性を用いたマーク検知による位置合わせ・貼り合わせを邪魔することはない。
【0058】
第1孔611は、第1位置合わせマーク212を完全に覆うほどのサイズを有し、1つの仮想平面を想定し、この平面がたとえば第1基板11の位置する平面である場合、この平面での第1孔611の投影は、第1位置合わせマーク212のこの平面での投影を完全に覆う。同様に、第2孔は、第2位置合わせマークを完全に覆うほどのサイズを有する。好ましくは、第1孔611のサイズは、第1基板11の第1貫通孔111のサイズ以上であり、第2孔のサイズは、第2基板12の第2貫通孔のサイズ以上である。
【0059】
第1貫通孔111と第2貫通孔、及び第1孔611と第2孔は、貫通孔又は孔を製造するときにキャリア層又は金属膜層へダメージを与えることを回避するために、キャリア層を貼り合わせる前に製造される。
【0060】
位置合わせ・貼り合わせを行う際に、第1基板及び第2基板は、一般には、大寸法基板である。位置合わせ・貼り合わせステップの後、液晶移相器の製造方法は、ホットプレス・セル化、小片裁断、液晶充填・封止、結合などのステップをさらに含む。なお、以上の前記第1位置合わせマーク212、第2位置合わせマーク、第1貫通孔111、第2貫通孔の設置、及び第1孔611、第2孔の設置は、液晶移相器の2枚の基板を位置合わせして貼り合わせるときに、位置合わせ・貼り合わせ機構が基板の背面で光透過性を用いたマーク検知を行い、第1基板と第2基板を正確に位置合わせするためである。
【0061】
したがって、第1位置合わせマーク212、第2位置合わせマーク、第1貫通孔111、及び第2貫通孔は、一般には、液晶移相器製品のエッジ位置に設置され、後で小片裁断をするときに、第1位置合わせマーク212、第2位置合わせマーク、第1貫通孔111、及び第2貫通孔は、一般には切り取られる。
【0062】
液晶移相器は、それぞれ前記液晶層50の両側に設けられる第1配向層31及び第2配向層32をさらに備える。パターニングされた金属膜層が形成された第1基板11上に第1配向層31を製造し、パターニングされた金属膜層が形成された第2基板12上に第2配向層32を製造する。配向層は、液晶層50の結晶分子の初期偏向角を限定するものである。
【0063】
一特定実施例では、パターニングされた第2金属膜層22上の金属パターン211は移相器電極を含み、移相器電極は、マイクロ波信号を伝送するための平面伝送ラインである。平面伝送ラインは好ましくはマイクロストリップラインである。マイクロストリップラインの形状は蛇形又は螺旋形であってもよいが、マイクロストリップラインの形状については限定がなく、マイクロ波信号を伝送できればよい。パターニングされた第1金属膜層21上の金属パターン211は接地電極を含み、液晶移相器はバイアスラインをさらに含む。一実施例では、バイアスラインは、第2基板12の第2金属膜層22に設けられてもよい。バイアスラインを介してマイクロストリップラインと接地電極との間に電圧を印加することによって、液晶の有効誘電率を変え、さらにマイクロ波信号の位相を変えることができる。
【0064】
マイクロストリップラインと接地電極との間に電場が印加されていないと、液晶分子は、第1配向層と第2配向層の作用により所定の方向に配列される。マイクロストリップラインと接地電極との間に電場が印加されると、電場により液晶層50中の液晶分子の方向が偏向するように駆動される。
【0065】
マイクロ波信号は、マイクロストリップラインと接地電極との間で伝送され、マイクロ波信号の伝送中、液晶分子の偏向により位相が変わり、それによって、マイクロ波信号の移相機能が実現される。マイクロストリップラインと接地電極での電圧を制御することで、液晶層50中の液晶の偏向角度を制御し、さらに移相中に調整される位相を制御することができる。
【0066】
液晶材料の誘電異方性及び低消費電力の特性を利用して、液晶層50に印加される電圧を制御することによって、液晶の有効誘電定数を変え、さらに移相中に調整される位相を制御する。特別に設計された、静電容量の異なる液晶アンテナユニットにより二次元パターンが形成される。アンテナから受信又は放射する電磁波には、各アンテナユニットの静電容量に対応する位相差が付与され、静電容量の異なるアンテナユニットから形成される二次元パターンが特定方向に高い指向性(ビーム走査)を有することから、アンテナが受信又は放射する電磁波とRF信号(電圧信号)との間の変換機能が実現される。
【0067】
従来技術に比べて、本発明は、下記の有益な効果を有する。
1.超高周波無線通信では、基板材料の誘電率及び誘電損失値が大きいほど、誘電損失が大きく、信号が悪い。本願では、液晶移相器の基板としてPCB基板が使用されるため、PCB基板の誘電率及び誘電損失が液晶パネルによく使用されるガラス基板よりも低く、誘電損失がより小さいほど、超高周波帯用途での液晶アンテナの性能向上に有利である。
2.さらに、PCB基板はPTFE高周波基板であり、PTFE高周波基板は、より低い誘電率及び誘電損失を有し、誘電損失が小さいほど、超高周波帯用途での液晶移相器及び液晶アンテナの性能が向上する。
3.さらに、PCB基板が光を透過できないため、光透過性を用いたマーク検知方法で2枚の基板を位置合わせして貼り合わせることに不利であり、その結果、正確な位置合わせができず、液晶移相器の設計要件が満足できず、アンテナの性能が大幅に低下する。本願では、さらに、第1金属膜層と第2金属膜層のそれぞれに位置合わせマークを設置し、第1基板と第2基板のそれぞれに位置合わせマークの位置に対応する貫通孔を設置するように改良することによって、光透過性を用いたマーク検知で2枚を位置合わせして貼り合わせることを可能にし、フロー及びプロセスを簡素化するために、位置合わせマークは、対応する金属膜層を露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークであり、金属位置合わせマークの寸法が貫通孔の寸法未満であり、金属膜層と対応する基板との間に光透過性のキャリア層を設置することで、光透過性のキャリア層が光透過性を用いたマーク検知による位置合わせ・貼り合わせへ影響を与えずに、露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークを支持する。
【0068】
実施例2
本特定実施例は、液晶アンテナを提供し、この液晶アンテナは、実施例1の前記液晶移相器を備える。液晶アンテナは、アンテナ放射ユニットをさらに備え、アンテナ放射ユニットは、マイクロ波信号を放射し、マイクロ波信号の入出力を行う。
【0069】
本実施例では、前記第2基板12から離れた第1基板11の一方側には、アンテナ放射ユニットが設置される。アンテナ放射ユニットは、高導電性材料で製造される。アンテナ放射ユニットは、矩形、円形又は角形のチップであってもよく、そして角部を切り取ったものであってもよい。表面実装プロセスによって液晶移相器に貼り付けられてもよく。又は、より好ましい形態では、アンテナ放射ユニットは、前記第2基板12から離れた第1基板11の一方側に設けられるパターニングされた第3金属膜層である。
【0070】
実施例3
本特定実施例は、実施例1の前記液晶移相器の製造方法を提供する。
図6に示されるように、この液晶移相器の製造方法は、
第1位置合わせマーク212を有する第1金属膜層21と、前記第1位置合わせマーク212の位置に対応する第1貫通孔111とを有するPCB基板の第1基板11を提供するステップS1と、
第2位置合わせマークを有する第2金属膜層22と、前記第2位置合わせマークの位置に対応する第2貫通孔とを有するPCB基板の第2基板12を提供するステップS2と、
位置合わせ・貼り合わせ機構は、第1貫通孔111及び第2貫通孔のそれぞれを通って、第1位置合わせマーク212及び第2位置合わせマークによって、第1基板11と第2基板12を位置合わせして貼り合わせるステップS3と、を含む。
【0071】
なお、ステップS1及びステップS2の順番は調整可能である。
【0072】
具体的には、ステップS3では、液晶パネルの位置合わせ・貼り合わせによく使用される、光透過性を用いたCCD位置合わせを用いて正確な貼り合わせを行う。つまり、CCDカメラが使用され、CCDカメラは、第1貫通孔111及び第2貫通孔を通って、第1位置合わせマーク212と第2位置合わせマークによって、第1基板11と第2基板12を予め位置合わせしておき、位置合わせ後、貼り合わせた状態となるまで徐々に移動させる。
【0073】
第1位置合わせマーク212及び第2位置合わせマークの製造プロセスについて説明する。
【0074】
第1位置合わせマーク212は、第1貫通孔111を通って見られるように、第1基板11に近い第1金属膜層21の一面に設置されてもよい。たとえば、ビアを位置合わせマークとして製造し、又は部分的な透明領域を位置合わせマークとし、又はレーザで位置合わせマークを製造するなどの方法により製造される。同様に、第2位置合わせマークは、第2貫通孔を通って見られるように、第2基板12に近い2金属膜層22の一面に設置されてもよい。同様に、第2位置合わせマークは、第2貫通孔を通って見られるように、第2基板12に近い第2金属膜層22の一面に設置されてもよい。
【0075】
ただし、より好ましくは、フロー及びプロセスを簡素化するために、位置合わせマークは、対応する金属膜層を露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークである。具体的には、第1位置合わせマーク212は、第1金属膜層21を露光してエッチングすることで得られ、第2位置合わせマークは、第2金属膜層22を露光してエッチングすることで得られ、第1位置合わせマーク212及び第2位置合わせマークは、ともに金属位置合わせマークである。
【0076】
貫通孔を通って光透過性を用いたマーク検知を行うように、金属位置合わせマークの寸法は、一般には、貫通孔の寸法未満である。露光エッチング後、金属位置合わせマークの周辺にある金属がエッチングにより除去され、金属位置合わせマークに対する支持がなくなる。改良形態として、第1金属膜層21と第1基板11との間には、光透過性の第1キャリア層71を有し、第2金属膜層22と第2基板12との間には、光透過性の第2キャリア層を有する。金属膜層と対応する基板との間に光透過性のキャリア層を設置することで、光透過性のキャリア層が光透過性を用いたマーク検知による位置合わせ・貼り合わせへ影響を与えずに、露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークを支持する。
【0077】
第1キャリア層71及び第2キャリア層は、PI層、PET層、又はPE層であってもよく、これらはすべて良好な光透過性を有する。より好ましくは、第1キャリア層71及び第2キャリア層は、PI層であり、PIには、より良好な光透過性や良好な耐高温性などの利点があり、後続の配向層の製造プロセスには、高温ベークに耐えられる。
【0078】
実際に使用されるとき、銅張PI基材を金属膜層及びキャリア層とすることができ、銅張PI基材は、PI基材層に銅箔層が積層されたものであり、銅張PI基材は、接着剤層を介して対応する基板に貼着できる。具体的には、第1キャリア層71と第1基板11との間には、第1接着剤層61があり、第2キャリア層と第2基板12との間には、第2接着剤層がある。
【0079】
又は、ほかの実施例では、まず、キャリア層たとえばPI層を基板に貼着し、次に、キャリア層上に金属膜層を製造又は設置してもよい。
【0080】
したがって、さらに、
図7に示されるように、ステップS1の製造方法は、
第1基板11を提供し、前記第1基板11上に第1接着剤層61を設置し、第1基板11に第1貫通孔111を製造し、前記第1接着剤層61に第1貫通孔111の位置に対応する第1孔611を製造するステップS11と、
第1キャリア層71を、第1孔611を有する第1接着剤層61に貼り合わせ、第1金属膜層21を、第1基板11とは反対側の第1キャリア層71の一面に位置付けるステップS12と、
第1金属膜層21をパターニングし、第1位置合わせマーク212を含むパターニングされた第1金属膜層21を得るステップS13と、を含む。
【0081】
なお、ステップS11では、第1貫通孔111及び第1孔611は、同時に製造してもよく、順次製造してもよい。
【0082】
ステップS12では、第1金属膜層21及び第1キャリア層71を一体として、第1キャリア層71と第1接着剤層61を貼り合わせることができ、たとえば、直接銅張PI基材を用いて、銅張PI基材を第1接着剤層61に貼り合わせる。又は、まず、個別の第1キャリア層71を、第1孔611を有する第1接着剤層61に貼り合わせた後、第1キャリア層71上に第1金属膜層21を製造又は設置してもよい。
【0083】
同様に、ステップS2の製造方法は、
第2基板12を提供し、前記第2基板12上に第2接着剤層を設置し、第2基板12に第2貫通孔を製造し、第2接着剤層に、前記第2貫通孔の位置に対応する第2孔を製造するステップS21と、
第2キャリア層を、第2孔を有する第2接着剤層に貼り合わせ、第2金属膜層22を、第2基板12とは反対側の第2キャリア層の一面に位置付けるステップS22と、
第2金属膜層22をパターニングして、第2位置合わせマークを含むパターニングされた第2金属膜層22を得るステップS23と、を含む。
【0084】
なお、ステップS21では、第2貫通孔及び第2孔は、同時に製造してもよく、順次製造してもよい。
【0085】
ステップS22では、第2金属膜層22及び第2キャリア層を一体として、第2キャリア層と第2接着剤層を貼り合わせることができ、たとえば、直接銅張PI基材を用いて、銅張PI基材を第2接着剤層に貼り合わせる。又は、まず、個別の第2キャリア層を、第2孔を有する第2接着剤層に貼り合わせた後、第2キャリア層上に第2金属膜層22を製造又は設置してもよい。
【0086】
なお、ステップS3では、第1基板11と第2基板12を位置合わせして貼り合わせる前に、液晶移相器の製造方法は、第1金属膜層21及び第2金属膜層22に対する具体的なパターニングプロセス、及び、金属膜層のパターニング後の配向層及び封止材40の製造ステップをさらに含む。
【0087】
金属膜層をパターニングするプロセスの方法は、当業者にとって公知のものであり、フォトレジスト塗布、予備硬化、露光、現像、エッチング、離型のプロセスによって実施できる。
【0088】
配向層は、表面上に配向溝を形成するために、従来技術であるPIラビングプロセスで製造されることができる。たとえば、APR版を用いて、予め滴下した配向液体を電極パターンを有する対応する基板上に転写し、高温ベークにより十分に反応させるとともに、溶剤を発揮させ、最後に固体の配向膜層を形成する。配向膜層上をフランネル布又は綿布で一方向へラビングし、最終的に液晶分子を所定のラビング方向に平行に配列させる。ここで詳しく説明しない。
【0089】
封止材40の製造プロセスのステップは、当業者にとって公知のものである。ここで詳しく説明しない。
【0090】
ステップS3の後、液晶移相器の製造方法は、ホットプレス・セル化、小片裁断、液晶充填・封止、結合などのステップをさらに含む。
【0091】
位置合わせ・貼り合わせを行う際に、第1基板11と第2基板12は、一般には、大寸法基板であり、ステップS3では、第1基板11と第2基板12を位置合わせして貼り合わせる際に、大寸法基板を用いて製造する。ステップS3では、位置合わせ・貼り合わせ後、液晶移相器の製造方法は、ホットプレス・セル化、小片裁断、液晶充填・封止、結合などのステップをさらに含む。
【0092】
ホットプレス・セル化によって、貼り合わせられた基板が高圧高温プロセスで硬化し、一定のセル厚さを有する間隔が形成され、十分に硬化した後、粘着の強固さが高く、機械的強度が高い複数の空セル(CELL)が形成される。次に小片裁断プロセスによって、単体となる複数の液晶移相器の空セルが得られる。
【0093】
なお、以上の前記第1位置合わせマーク212、第2位置合わせマーク、第1貫通孔111、第2貫通孔の設置、及び第1孔611、第2孔の設置は、液晶移相器の2枚の基板を位置合わせして貼り合わせるときに、位置合わせ・貼り合わせ機構が基板の背面で光透過性を用いたマーク検知を行い、第1基板と第2基板を正確に位置合わせするためである。
【0094】
したがって、第1位置合わせマーク212、第2位置合わせマーク、第1貫通孔111、及び第2貫通孔は、一般には、液晶移相器製品のエッジ位置に設置され、
図5には、大寸法基板の第1基板11の模式図が示され、この大寸法基板は、複数の独立したユニットを含み、第1貫通孔111は、大寸法基板のエッジにある。
図5には、4個の独立したユニットを含む場合が模式的に示され、各々のユニットは、個別の封止材40を有するが、その数は、それに制限されない。後で小片裁断をするときに、第1位置合わせマーク212、第2位置合わせマーク、第1貫通孔111、及び第2貫通孔は、一般には切り取られ、液晶移相器製品にはない。
【0095】
従来技術に比べて、本発明は、下記有益な効果を有する。
本発明では、PCB基板を基板として液晶パネルの製造方法によって液晶移相器を量産する方法が提供され、PCB基板の誘電率及び誘電損失が液晶パネルによく使用されるガラス基板よりも低く、誘電損失が小さいほど、超高周波帯用途での液晶移相器の性能向上に有利である。
本発明では、また、従来の非透明PCB基板では液晶パネルの光透過性を用いた位置合わせ・貼り合わせ機構で2枚の基板を正確に貼り合わせることができないという問題をさらに解決し、第1金属膜層と第2金属膜層のそれぞれに位置合わせマークを設置し、第1基板と第2基板のそれぞれに位置合わせマークの位置に対応する貫通孔を設置するように改良することによって、光透過性を用いたマーク検知で2枚を位置合わせして貼り合わせることを可能にする。
フロー及びプロセスを簡素化するために、位置合わせマークは、対応する金属膜層を露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークであり、金属位置合わせマークの寸法が貫通孔の寸法未満であり、金属膜層と対応する基板との間に光透過性のキャリア層を設置することで、光透過性のキャリア層が光透過性を用いたマーク検知による位置合わせ・貼り合わせへ影響を与えずに、露光してエッチングすることで得られた金属位置合わせマークを支持する。
【0096】
なお、以上の実施例は、本発明の実施例の技術案を説明するものに過ぎず、制限するものではなく、好適実施例を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の実施例の技術案を修正したり同等置換を行ったりすることができ、これら修正又は同等置換により、修正された技術案が本発明の実施例の技術案の範囲を逸脱することはない。
【符号の説明】
【0097】
11-第1基板、21-第1金属膜層、31-第1配向層、12-第2基板、22-第2金属膜層、32-第2配向層、111-第1貫通孔、211-金属パターン、212-第1位置合わせマーク、40-封止材、50-液晶層、61-第1接着剤層、611-第1孔、71-第1キャリア層。