(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】培養装置
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20220105BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/12
(21)【出願番号】P 2020541099
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2019031921
(87)【国際公開番号】W WO2020049970
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018166647
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592031097
【氏名又は名称】PHC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 光
(72)【発明者】
【氏名】平井 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 愛美
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-017151(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169850(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/140854(WO,A1)
【文献】特開2010-007870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00
C12M 1/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養空間に面する内壁面と、
前記内壁面の被取付部に対面する取付面を有し、前記取付面が前記被取付部に取り付けられ、前記内壁面との間に空気の通路が形成されるダクトと、
前記通路内に設けられた殺菌用の光源と、を備え、
前記被取付部に、前記取付面に向かって凸となり前記取付面に密着する凸部が形成されているか、又は、前記取付面に、前記被取付部に向かって凸となり前記被取付部に密着する凸部が形成され
、
前記取付面は、幅方向に折り曲げられており、
前記取付面の先端は、前記被取付部に圧接されている、
培養装置。
【請求項2】
前記凸部と前記取付面の先端の間において前記ダクトを前記内壁面に固定するボルトをさらに備え、
前記取付面は、先端になるほど前記被取付部に対して近づくように傾斜している、
請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
前記凸部は、
前記ダクトが延在する第一方向に延在する凸条部である
、
請求項1又は2に記載の培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、培養装置では、培養室内に空気の気体通路を形成するダクトを設けると共にこのダクト内に紫外線ランプを設けている。この紫外線ランプから照射された紫外線により、培養室内を流通する空気と、ダクトの下方に設置された加湿皿内の水(以下「加湿水」という)とが殺菌される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダクト内から紫外線が漏れてしまうと、このダクトから漏れた紫外線が、細胞や微生物などの培養に影響を与えてしまう。このため、ダクト内から紫外線が漏れてしまう培養装置は、不適合品とされ出荷することができなかった。
【0005】
ダクト内から紫外線が漏れてしまう理由を説明する。ダクトは、側縁が内側に折り返されてなる取付面を、内箱の後壁内面に固定される。内箱は、溶接して製作されるため、その溶接時に後壁が熱を受けて湾曲することがある。この湾曲により、ダクトの取付面と内箱の後壁内面との間に部分的に隙間が生じることがあり、この隙間から紫外線が漏れてしまうことがある。
【0006】
このような紫外線の漏れを防止して、歩留まり率を向上させることが要望されている。
【0007】
本発明は、このような要望に鑑み創案されたものであり、歩留まり率を向上できるようにした培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、本発明の培養装置は、培養空間に面する内壁面と、前記内壁面の被取付部に対面する取付面を有し、前記取付面が前記被取付部に取り付けられ、前記内壁面との間に空気の通路が形成されるダクトと、前記通路内に設けられた殺菌用の光源と、を備え、前記被取付部に、前記取付面に向かって凸となり前記取付面に密着する凸部が形成されているか、又は、前記取付面に、前記被取付部に向かって凸となり前記被取付部に密着する凸部が形成され、前記取付面は、幅方向に折り曲げられており、前記取付面の先端は、前記被取付部に圧接されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、歩留まり率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の培養装置を、外扉及び内扉を取り外した状態で示す正面図。
【
図2】本発明の一実施形態の培養装置の構成を示す図であって、
図1のA-A断面矢視図。
【
図3】本発明の一実施形態の培養装置の要部の構成を示す図であって、
図2のB部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る培養装置ついて、図面を参照しながら説明する。以下に示す実施の形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施の形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除するものではない。また、実施の形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに、実施の形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
以下では、培養装置において、使用時にユーザが正対する側(後述の培養空間20の開口21のある側)を前、その反対側を後とする。また、前から後に向かって視た場合を基準に左右を定める。また、左右の両方向を総称して幅方向という。
【0013】
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一要素は原則として同一の符号を付し、その説明を省略することもある。
【0014】
[1.構成]
本実施形態における培養装置1について
図1~
図3を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態の培養装置を、外扉及び内扉を取り外した状態で示す正面図である。
図2は、本発明の一実施形態の培養装置の構成を示す図であって、
図1のA-A断面矢視図である。
図3は、本発明の一実施形態の培養装置の要部の構成を示す図であって、
図2のB部拡大図である。
【0015】
培養装置1は、細胞や微生物などの培養物を培養する装置である。この培養装置1は、培養空間20が内部に形成され前面に開口21が形成された略箱状の断熱箱2と、開口21を開閉する外扉(図示省略)及び内扉(図示省略)と、を備えて構成される。
【0016】
培養空間20は、細胞や微生物などの培養に適切な環境となるように、温度、湿度及びCO2濃度がそれぞれ適切な範囲に保持されるように制御される。
【0017】
断熱箱2は、培養空間20が内部に形成された略箱状の内箱2aと、内箱2aの外側を覆う略箱状の外箱2bと、内箱2aと外箱2bとの間に設けられた断熱材2cとを有して構成される。
【0018】
培養空間20には、内箱2aの後壁内面(内壁面)に上下(第一方向)に延在するダクト5が配置されている。ダクト5の内部にはCO2等を含む空気の通路Kが形成され、この通路Kには循環用送風機(図示省略)が設置されている。循環用送風機を作動させることで、空気の強制循環が行われ、培養空間20のCO2等を含む空気が、ダクト5の上部に形成された吸込口5aから吸い込まれ、ダクト5の下部に設けられた吹出口5bから培養空間20に吹き出される。また、ダクト5内には、通路Kを流れる空気のCO2濃度を検出するCO2センサ(図示略)が設置されている。
【0019】
さらに、ダクト5内には、紫外線ランプ7が設置されている。
【0020】
また、ダクト5の下部と内箱2aの底壁と間には、加湿用水を貯溜する加湿皿6が設置される。加湿皿6は、内箱2aの底壁に設けられたヒータ線(図示省略)により加熱され、これにより加湿皿6に貯留された水が蒸発する。
【0021】
上述のダクト5内の紫外線ランプ7により、ダクト5内ひいては培養空間20の空気と、ダクト5下方の加湿皿6内の加湿水が殺菌される。
【0022】
図1及び
図3に示されるように、ダクト5には、幅方向に折り曲げられた取付面50,50が設けられている。本実施形態では、各取付面50は内側(すなわち通路K側)に折り曲げられているが、外側に折り曲げられていてもよい。また、各取付面50は、取付面50が取り付けられる内箱2aの後壁内面の各被取付部Pに対し傾斜し、曲げ部50aよりも先端50bの方が被取付部Pに近くなるように傾斜している。すなわち、各取付面50は、先端50bに近くなるほど被取付部Pに近くなるように傾斜している。
【0023】
また、内箱2aの後壁内面の各被取付部Pには、凸部が設けられている。
図2及び
図3には、凸部として、内箱2aの後壁内面の各被取付部Pにそれぞれ上下方向に延在する凸条3が設けられている。
【0024】
ダクト5は、取付面50が、曲げ部50a寄りの箇所で凸条3に当接した状態で、凸条3よりも幅方向中心側をボルトBによって内箱2aに固定されている。
【0025】
[2.作用効果]
(1)内箱2aの後壁内面の各被取付部Pにはダクト5の取付面50に向かって凸となる凸条3が形成されている。被取付部Pが湾曲して、被取付部Pとダクト5の取付面50との距離が場所によって相異しても、被取付部Pに設けられた凸条3がこの相異を吸収して、内箱2aの各被取付部Pとダクト5の取付面50とが安定して密着するようになる。したがって、ダクト5と内箱2aとの間に隙間が生じることが抑制され、ダクト5内から紫外線の漏れを抑制できる。これにより、培養装置1の歩留まり率を向上することができる。
【0026】
(2)取付面50は、その先端50bに近づくほど被取付部Pに近くなるように傾斜し、曲げ部50a寄りで凸条3に当接している。このため、ボルトBにより内箱2aに取り付けられ状態では、取付面50の先端50bが被取付部Pに圧接しやすくなる。したがって、ダクト5と内箱2aとの間に隙間が生じることが一層抑制され、ダクト5内から紫外線の漏れを効果的に抑制できる。これにより、歩留まり率をさらに向上することができる。
【0027】
(3)凸条3が、ダクト5の延在方向に沿って延在する形状なので、ダクト5の延在方向すなわち長手方向に亘ってダクト5内から紫外線の漏れを抑制でき、歩留まり率をさらに向上することができる。また、凸条3が、ダクト5の延在方向に沿って延在する形状なので、内箱2aの被取付部Pの湾曲を抑制することができる。
【0028】
[3.変形例]
被取付部Pに凸条3を形成する替わりに、取付面50に、被取付部Pに向かって凸となり被取付部Pに密着する凸条を形成してもよい。この構成でも、ダクト5と内箱2aとの間に隙間が生じることが抑制され、ダクト5内から紫外線の漏れを抑制でき、培養装置1の歩留まり率を向上できる。
【0029】
2018年9月6日出願の特願2018-166647の日本出願に含まれる明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、歩留まり率を向上することができるようにした培養装置を提供できる。よって、その産業上の利用可能性は多大である。
【符号の説明】
【0031】
1 培養装置
2 断熱箱
2a 内箱
2b 外箱
2c 断熱材
3 凸条
5 ダクト
5a 吸込口
5b 吹出口
6 加湿皿
7 紫外線ランプ
20 培養空間
21 開口
50 側縁(取付面)
50a 曲げ部
50b 先端
B ボルト
K 通路
P 被取付部