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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】印刷物及びインク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20220105BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220105BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220105BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41J2/01 501
C09D4/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021069827
(22)【出願日】2021-04-16
(62)【分割の表示】P 2020183015の分割
【原出願日】2020-10-30
【審査請求日】2021-04-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】井島 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 史絵
(72)【発明者】
【氏名】小谷 亮介
(72)【発明者】
【氏名】安井 涼馬
【審査官】▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-076030(JP,A)
【文献】特開2019-218498(JP,A)
【文献】特開2017-052870(JP,A)
【文献】特開2013-001810(JP,A)
【文献】特開2012-102295(JP,A)
【文献】特表2020-525620(JP,A)
【文献】特表2019-532473(JP,A)
【文献】特開2013-241610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法によって吐出される活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、
前記インク組成物は、重合性化合物と、光輝性顔料と、を含有し、
前記光輝性顔料の含有量は、前記インク組成物全量中1.5質量%以上5.0質量%以下であり、
前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有し、
前記金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)が0.01μm以上3.0μm以下であり、
前記インク組成物のウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下であり、
前記インク組成物をPETフィルムの表面に吐出し、活性エネルギー線を照射して該PETフィルムの表面に光輝性層を形成し、該光輝性層から45°の入射角で入射光を前記光輝性層に対して入射させたときに、該入射光に対する正反射光の角度を0°、前記光輝性層に対する法線の角度を45°としたときの、L 表色系における反射角-15°、及び反射角15°のL 値の合計L1が200以上であって、L 表色系における反射角45°、反射角75°、及び反射角110°のL 値の合計L2が100以上であり、
L1-L2が90以上である
インク組成物。
【請求項2】
記金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D90)が4.5μm以下であり、
前記金属含有光輝性顔料の厚みが10nm以上1.0μm以下である
請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
インクジェット法によって請求項1又は2に記載のインク組成物を吐出する記録方法。
【請求項4】
インクジェット法によって請求項1又は2に記載のインク組成物を吐出する印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に光輝性加飾された印刷物、及びインクジェット法によって吐出される光輝性加飾印刷用のインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材(記録媒体)やその表面の一部又は全面に着色層が形成された印刷物等の被体に金属調を有する画像を表現することが行われることがある。このような金属調の光沢性を付与する手法として、真鍮、アルミニウム微粒子等から作製された金属粉を用いたインキの塗布や、金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写方式等が用いられてきた。
【0003】
そして、近年、金属光沢を有する塗膜を形成する上記の方法の他に、インクジェット方式の印刷方法への応用例が数多く見受けられ、その一つとして光輝性加飾印刷がある。インクジェット方式を用いた光輝性加飾印刷は、主としてインクジェットプリンター等を用いて行われる。
【0004】
例えば、特許文献1には、光輝性顔料と、所定量のラジカル重合性化合物と、重合開始剤と、を含有するインク組成物が開示されている。特許文献1には、このインク組成物は、硬化性に優れ、かつ、優れた柔軟性と高い膜硬度とが両立された金属調の光沢性を有する印刷物が得られるものであることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、所定の光輝性顔料と、有機溶剤と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有するインク組成物が開示されている。特許文献2には、このインク組成物は、金属光沢の良好な塗膜を形成することができるものであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-31284号公報
【文献】特開2017-2162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、良好な金属調の光沢性を有する意匠性の高い印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、所定の入射角で入射光を光輝性層に対して入射させたときの所定の反射角でのL値の合計値が所定の関係にある印刷物であれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1)光輝性顔料を含有する光輝性層を備えた印刷物であって、前記印刷物の前記光輝性層から45°の入射角で入射光を前記光輝性層に対して入射させたときに、該入射光に対する正反射光の角度を0°、前記光輝性層に対する法線の角度を45°としたときの、L表色系における反射角-15°、及び反射角15°のL値の合計L1が200以上であって、L表色系における反射角45°、反射角75°、及び反射角110°のL値の合計L2が100以上であり、L1-L2が90以上である印刷物。
【0010】
(2)インクジェット法によって吐出される活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、前記インク組成物は、重合性化合物と、光輝性顔料と、を含有し、前記光輝性顔料の含有量は、前記インク組成物全量中1.0質量%以上であり、前記インク組成物のウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下であるインク組成物。
【0011】
(3)前記光輝性顔料は、金属含有光輝性顔料を含有する(2)に記載のインク組成物。
【0012】
(4)前記金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)が0.01μm以上3.0μm以下であり、前記金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D90)が4.5μm以下であり、前記金属含有光輝性顔料の厚みが10nm以上1.0μm以下である(3)に記載のインク組成物。
【0013】
(5)インクジェット法によって(2)から(4)のいずれかに記載のインク組成物を吐出する記録方法。
【0014】
(6)インクジェット法によって(2)から(4)のいずれかに記載のインク組成物を吐出する印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、良好な金属調の光沢性を有する印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】入射光に対する正反射光の角度を0°、光輝性層に対する法線の角度を45°としたときの各反射角を模式的に示す図である。
図2】インク組成物の表面張力の計算値(X座標)と接触角の実測値(Y座標)との相関を表す近似直線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<1.印刷物>
本実施の形態に係る印刷物は、基材(記録媒体)と、この基材(記録媒体)の表面に光輝性顔料を含有する光輝性層を備えた印刷物である。そして、図1に示すように、印刷物の光輝性層から45°の入射角で入射光を光輝性層に対して入射させたときに、入射光に対する正反射光を0°、光輝性層に対する法線の角度を45°としたときの、L表色系(JISZ 8729に基づく)における反射角-15°、及び反射角15°のL値の合計L1が200以上である。また、L表色系における反射角45°、反射角75°、及び反射角110°のL値の合計L2が100以上である。さらに、反射角-15°、及び反射角15°のL値の合計L1と、反射角45°、反射角75°、及び反射角110°のL値の合計L2との差(L1-L2)が90以上であることを特徴とする。なお、本明細書では、これらのL値の合計L1、L2を単にL1、L2と表記することがある。
【0019】
ここで、L1は光輝性層に入射された入射光の角度から見て正反射光が存在する方向(15°、-15°)での明度の合計値を意味する。L1が200以上の光輝性層を備えた印刷物であれば、光輝性顔料による反射光が強くなる。これにより、印刷物の光輝性層側の表面の明るさが向上する。
【0020】
そしてL2は光輝性層に入射された入射光の角度から見て正反射光の影響の受けない方向(45°、75°、110°)での明度の合計値を意味する。L2が100以上の光輝性層を備えた印刷物であれば、光輝性顔料による散乱光が強くなる。これにより、印刷物の光輝性層側の表面がより白くなる。
【0021】
反射光の強さに起因するL1と散乱光の強さに起因するL2との関係を、L1≧200、L2≧100、L1-L2≧90の関係を満たすことで良好な金属調の光沢性を有し、これまでインクジェット方式の印刷方法では表現できなかった広角度に光って見える意匠性の高い印刷物が得られることが本発明者らの研究により見出された。L1<200であると、印刷物の光輝性層側の表面の明るさが低下し、金属調の光沢性が低下する。L2<100であると、光輝性層側の表面が黒味を帯び従来のインクジェット印刷物同様の鏡面調の印刷物となる。L1-L2<90であると、印刷物の光輝性層側の表面の明るさが低下するか、光輝性層側の表面が十分に明るくても金属特有の光沢感(観察角度により明度が変化する性質)がなくなってしまう。
【0022】
なお、L1は、L1≧215が好ましく、L1≧230がより好ましい。L2は、L2≧105が好ましく、L2≧110がより好ましい。L1-L2は、L1-L2≧100が好ましく、L1-L2≧110がより好ましい。
【0023】
次に、この印刷物を構成する各層について説明する。
【0024】
[基材(記録媒体)]
基材(記録媒体)としては、特に限定はされず、樹脂基材、金属板ガラスなどの非吸収性基材であっても、紙や布帛などの吸収性基材であっても、受容層を備える基材のような表面塗工が施された基材であってもよく、種々の基材を使用することができる。
【0025】
非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基材や、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を挙げることができる。
【0026】
吸収性基材としては、更紙、中質紙、上質紙、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を挙げることができる。
【0027】
表面塗工が施された基材としてはコート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙等を挙げることができる。
【0028】
[プライマー層]
印刷物はプライマー層を備えていてもよい。プライマー層は、基材(記録媒体)の表面に形成され、着色層や光輝性層との接着性を向上させる機能を有する。
【0029】
プライマー層を形成することのできるプライマー剤としては活性エネルギー線硬化型のインク組成物であっても、溶剤を含有する溶剤型のインク組成物であっても、水を含有する水性型のインク組成物であってもよい。プライマー剤は、例えば、後述する着色層を形成するインク組成物であって、樹脂成分や重合性化合物を主成分とし、色材を除外又は減量して色彩を視認しないように調整したようなインク組成物であってもよい。着色層と同様の組成のプライマー剤を使用することで着色層との密着性を向上させることができる。また、プライマー剤は、例えば、従来公知のプライマー剤であってもよい。
【0030】
プライマー剤を基材(記録媒体)の表面を塗布する方法としてはどのような方法であってもよく、例えば、スプレー塗布、タオル、スポンジ、不織布、ティッシュ等を用いた塗布、ディスペンサー、刷毛塗り、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット、熱転写方式等のいずれであってもよい。
【0031】
[着色層]
印刷物は着色層を備えていてもよい。着色層とは、光輝性顔料とは異なる通常のインク組成物の使用されるような色材(染料・顔料)を含有する層であり、主に基材の表面又は基材の表面に形成された層(プライマー層、コーティング層や受理溶液の層等)の表面に塗布されたインク組成物により形成される層である。又、この着色層を形成するインク組成物は、活性エネルギー線硬化型のインク組成物であっても、色材を含有し、溶剤を含有する溶剤型のインク組成物であっても、色材を含有し、水を含有する水性型のインク組成物であってもよい。
【0032】
着色層には樹脂が含有されていてもよい。着色層に樹脂が含有される場合、この樹脂は、インク組成物に含まれるバインダー樹脂や高分子分散剤がそのままこのインク層の樹脂となってもよいし、インク組成物に含まれる重合性化合物が基材(記録媒体)の表面に吐出された後に活性エネルギー線を照射して重合されて形成された硬化物であってもよい。
【0033】
又、この着色層を形成するためのインク組成物の塗布方法は、特に限定されるものではない。例えば、スプレー法、コーター法、インクジェット法、グラビア法、フレキソ法等を挙げることができる。中でもインクジェット法により吐出(塗布)されることが好ましい。インクジェット法であれば、基材の任意の場所に吐出(塗布)することも、基材全面に吐出(塗布)することも容易である。
【0034】
着色層を形成するインク組成物の色材は、特に限定されるものではなく、染料系であってもよいし、顔料系であってもよい。着色層の耐水性や耐光性等の耐性が良好である顔料系インク組成物を使用することが好ましい。着色層を形成するインク組成物に用いることのできる顔料は特に限定されない。従来のインク組成物に使用されている有機顔料又は無機顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料等、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛等、その他の顔料として、カーボンブラック等が挙げられる。インク組成物に用いることのできる顔料は、複数の有機顔料や無機顔料を併用してもよく、顔料分散剤によって水溶性溶媒中に分散させた顔料分散体と自己分散型顔料を併用したものであってもよい。
【0035】
[光輝性層]
光輝性層は、光輝性顔料を含有するインク組成物により形成される層である。具体的には、光輝性顔料を含有するインク組成物が被体の表面にインクジェット法によって吐出されることにより形成される層である。
【0036】
光輝性層は、光輝性顔料を光輝性層全量中5.0質量%以下の割合で含有することが好ましく、4.5質量%以下の割合で含有することがより好ましく、4.0質量%以下の割合で含有することが好ましい。この光輝性層は、光輝性顔料を光輝性層全量中1.0質量%以上の割合で含有することが好ましく、1.5質量%以上の割合で含有することがより好ましく、2.0質量%以上の割合で含有することが好ましい。
【0037】
[オーバーコート層]
印刷物はオーバーコート層を備えていてもよい。オーバーコート層は、印刷物の最上面(例えば光輝性層や着色層の表面)に形成され、印刷物の耐久性を向上させる機能を有する。
【0038】
オーバーコート層を形成することのできるオーバーコート剤としては活性エネルギー線硬化型のインク組成物であっても、溶剤を含有する溶剤型のインク組成物であっても、水を含有する水性型のインク組成物であってもよい。オーバーコート剤は、例えば、上述した着色層を形成するインク組成物であって、樹脂成分や重合性化合物を主成分とし、色材を除外又は減量して色彩を視認しないように調整したようなインク組成物であってもよい。着色層と同様の組成のオーバーコート剤を使用することで着色層との密着性を向上させることができる。また、オーバーコート剤は、例えば、従来公知のオーバーコート剤であってもよい。
【0039】
オーバーコート剤を光輝性層や着色層の表面に塗布する方法としてはどのような方法であってもよく、例えば、スプレー塗布、タオル、スポンジ、不織布、ティッシュ等を用いた塗布、ディスペンサー、刷毛塗り、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット、熱転写方式等のいずれであってもよい。
【0040】
次に、光輝性層を形成することのできるインク組成物の一例について説明する。
【0041】
<2.インク組成物>
本実施の形態に係るインク組成物は、インクジェット法によって吐出される活性エネルギー線硬化型のインク組成物である。そして、このインク組成物は、重合性化合物と、光輝性顔料と、を含有しており、活性エネルギー線が照射されると、被体の表面に光輝性顔料を含有する光輝性層が形成されて、被体に金属調の光沢性を付与することができる。なお、本明細書において被体とは、記録媒体の表面そのものであっても、記録媒体の表面の一部又は全面に着色層やプライマー層、オーバーコート層が形成されたものであってもよく、特に限定されるものではない。また、詳しくは後述するが、本明細書において「着色層」とは、光輝性顔料とは異なる通常のインク組成物の使用されるような色材(染料・顔料)を含有する層を意味する。
【0042】
このインク組成物に含まれる光輝性顔料の含有量は1.0質量%以上である。これにより、良好な金属調の光沢性を付与することができる。
【0043】
そして、インク組成物のウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下であることを特徴とする。インク組成物のウェット膜に対する接触角によって、光輝性層に含まれる光輝性顔料の配向性が変化することが本発明者らの研究により見出された。具体的には、インク組成物のウェット膜に対する接触角が小さいと光輝性層に含まれる光輝性顔料の配向性が低下して光輝性顔料による反射光及び散乱光が弱くなる。すなわち、光輝性層のL1・L2は低下する。一方、インク組成物のウェット膜に対する接触角が大きいと、光輝性層に含まれる光輝性顔料の配向性が上昇して光輝性顔料による反射光及び散乱光が強くなる。すなわち、光輝性層のL1及びL2は上昇する。
【0044】
インク組成物のウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下にすることにより、光輝性層に含まれる光輝性顔料が適度に配向して、L1≧200、L2≧100、L1-L2≧90の関係を満たす光輝性層を備える印刷物を得ることが可能となる。
【0045】
なお、インク組成物のウェット膜に対する接触角の下限は、29.7°以上にすることが好ましく、30.0°以上にすることがより好ましい。インク組成物のウェット膜に対する接触角の上限は、60.0°以下にすることが好ましく、50.0°以下にすることがより好ましい。
【0046】
インク組成物のウェット膜に対する接触角は、自動接触角測定装置を用い、25℃の条件下で、インク組成物の未硬化状態のウェット膜の状態で平板上に塗布して、そのウェット膜の上にインク組成物の液滴2.0μlを付着させ、100ms後の接触角を測定により求めることができる。
【0047】
ウェット膜に対する接触角を調整されたインク組成物を得る方法としては、インク組成物に含有される重合性化合物の種類や含有量を調整すればよい。例えば、重合性化合物の表面張力と接触角には相関があるので、各重合性化合物の表面張力を求めて、そのインク組成物の重量平均で表面張力の計算値を求めて換算する方法が挙げられる。例えば、重合性化合物の種類や含有量を変化させたインク組成物を複数作成し、その各重合性化合物の表面張力から求めたインク組成物の表面張力の計算値と、そのインク組成物のウェット膜に対する接触角と、についてプロットして、そのプロットの近似式からウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下となるように各重合性化合物の種類や含有量を選択すればよい。
【0048】
次に、本実施の形態に係るインク組成物に含まれる各成分について各々説明する。
【0049】
[光輝性顔料]
光輝性顔料は、被体に金属調の光沢性を付与する機能を有する。光輝性顔料としては、たとえばパール顔料や金属含有光輝性顔料を含むものが挙げられる。中でも光輝性顔料は金属含有光輝性顔料を含有することが好ましい。被体により好適な金属調の光沢性を付与することができる。
【0050】
なお、光輝性顔料は金属含有光輝性顔料を含有する場合、金属含有光輝性顔料の含有量が光輝性顔料全量中30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70量%以上であることがさらに好ましい。
【0051】
パール顔料としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス、二酸化ケイ素、金属酸化物、およびそれらの積層等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
【0052】
金属含有光輝性顔料としては、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の単体金属;金属化合物;合金およびそれら混合物の少なくとも1種を挙げることができる。金属含有光輝性顔料としてはアルミニウムを含むものを使用することが好ましい。光輝性顔料としてアルミニウムを含むものを用いることで、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができる。
【0053】
光輝性顔料の含有量は、インク組成物全量中1.0質量%以上であれば特に限定されないが、光輝性顔料の含有量の下限は、インク組成物全量中1.5質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましい。これにより、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができるようになる。光輝性顔料の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、インク組成物や分散液中での光輝性顔料の分散性が向上する。
【0054】
金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)が0.01μm以上3.0μm以下であり、体積平均粒子径(D90)が4.5μm以下であり、厚みが10nm以上1.0μm以下であることが好ましい。このような形状であることで、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができる。
【0055】
金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)の下限は、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましい。金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)の上限は、2.7μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることがさらに好ましい。金属含有光輝性顔料の体積平均粒子径(D90)は、4.0μm以下であることがより好ましく、3.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0056】
金属含有光輝性顔料の厚みが10nm以上であることで、金属含有光輝性顔料の反射性、光輝性が向上し、被体により好適な金属調の光沢性を付与することができるようになる。金属含有光輝性顔料の厚みが1.0μm以下であることで、インク組成物や分散液中での金属含有光輝性顔料の分散性が向上する。
【0057】
金属含有光輝性顔料の厚みの下限は、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。金属含有光輝性顔料の厚みの上限は、0.8μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0058】
なお、光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)、体積平均粒子径(D90)及び厚みは、例えばシスメックス(株)製の「FPIA-3000S」、(株)島津製作所製レーザー回折式粒度分布計「SALD 7500nano」等を使用して測定することができる。
【0059】
光輝性顔料は、金属含有粒子を機械的に造形することによって、たとえばボールミルまたはアトリションミルの中で磨砕することによって得ることができる。金属含有粒子は、公知のアトマイズ法によって得ることもできる。
【0060】
また、光輝性顔料を製造する別な方法として、基材上に形成された金属含有薄膜を微粉砕することもまた可能である。そのような方法として、例えば、剥離用樹脂層を被覆した平坦な基材の上に、真空蒸着、イオンプレーティングまたはスパッタリング法等によって10nm以上1.0μm以下程度の金属含有薄膜を形成して金属含有薄膜を基材から剥離させて微粉砕する方法が挙げられる。なお、金属含有薄膜との文言は、金属酸化物等の金属化合物含有薄膜も含む概念で使用される。
【0061】
光輝性顔料の製造に用いられる基材の具体例は、ポリテトラフルオロエチレンフィルム;ポリエチレンフィルム;ポリプロピレンフィルム;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム;66ナイロン、6ナイロン等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;トリアセテートフィルム;ポリイミドフィルムである。好ましい基材は、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体のフィルムである。
【0062】
光輝性顔料の製造に用いられる基材の好ましい厚さの下限は、特に限定されるものではないが10μm以上であることが好ましい。基材の厚みが10μm以上であることで取り扱い性が良好となる。シート状基材の好ましい厚さの上限は、特に限定されるものではないが、150μm以下であることが好ましい。基材の厚みが150μm以下であれることで、印刷物の柔軟性を向上させて、ロール化や剥離が容易となる。
【0063】
基材に被覆される剥離用樹脂層に用いる樹脂の具体例は、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、ポリビニルアセタール、アクリル酸共重合体、変性ナイロン樹脂である。剥離用樹脂層に用いる樹脂を樹脂層とするには、樹脂溶液をシート状基材上にグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート塗布等の塗布により、剥離用樹脂層を形成する。
【0064】
剥離用樹脂層の厚さの下限は、特に限定されるものではないが、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。0.1μm以上であることで金属含有薄膜を基材から容易に剥離させることが可能となる。剥離用樹脂層の厚さの上限は、特に限定されるものではないが、50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。50μm以下であることで金属含有薄膜を基材から容易に剥離させることが可能となる。
【0065】
なお、基材の上に金属含有薄膜が形成された印刷物から、インク組成物やインク組成物の製造に用いられる分散液を製造してもよい。剥離用樹脂を溶解しうると共に光輝性顔料と反応しない溶媒中に浸漬するか、または浸漬と同時に超音波処理を行うとよい。このような溶媒としてはインク組成物を構成する重合性化合物や溶媒等が挙げられる。剥離用樹脂が光輝性顔料を分散させる分散剤としての機能を有し光輝性顔料の分散性が向上する。この場合、光輝性顔料の粒径及び膜厚は、金属含有薄膜を形成したときの条件や超音波分散時間により調整される。なお、剥離用樹脂溶解溶液から光輝性顔料を遠心分離により沈降分離させて光輝性顔料を回収し、インク組成物を構成する重合性化合物や溶媒等に光輝性顔料を分散させてもよい。
【0066】
[重合性化合物]
重合性化合物とは、活性エネルギー線を照射することにより重合されるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。活性エネルギー線とは、遠紫外線、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線等の電磁波が含まれる。
【0067】
重合性化合物としては、エチレン性不飽和二重結合が化合物中に1個有する単官能重合性化合物であってもよいし、エチレン性不飽和二重結合が化合物中に2個以上有する多官能重合性化合物であってもよい。なお、重合性化合物は、その分子量によってはオリゴマーやポリマーとも称される化合物をも含む概念である。
【0068】
重合性化合物は、本実施の形態に係るインク組成物において大部分を占めるので、インク組成物のウェット膜に対する接触角に大きく影響する。このため、インク組成物のウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下となるように各重合性化合物の種類や含有量を選択することが好ましい。
【0069】
単官能モノマーの例として、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(CTFA)、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)アクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)(メタ)アクリレート、(シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル))(メタ)アクリレート、アルキルシクロアルキルアクリレートであるt-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、クレゾールアクリレート、2-アクリロイロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-アクリロイロキシプロピルフタレート、パラクミルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、1-アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3-3-5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルカプロラクタム、イミドアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及び、これらのアクリレートにアルコキシ変性、及びカプロラクトン変性等の各種変性を有するもの、を挙げることができる。
【0070】
多官能モノマーの例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート及びこれらの変性数違い、変性種違い、構造違いの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
[重合開始剤]
本実施の形態に係るインク組成物は必要に応じて重合開始剤を含有してもよい。重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりインク組成物中の重合性化合物の重合反応を促進するものであれば特に限定されない。なお、本実施の形態に係るインク組成物においては、重合開始剤は必ずしも必須でなく、例えば活性エネルギー線として電子線を用いる場合には重合開始剤は用いなくてもよい。
【0072】
重合開始剤の具体例として、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジルケタール類、チオキサントン等を含むジアリルケトン類、α-アミノアルキルフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、アミノベンゾエート類、α-ヒドロキシケトン類、香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0073】
重合開始剤の量は、重合性化合物の重合反応を適切に開始できる量であればよく、インク組成物全量中1.0質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。又、重合開始剤の量は、インク組成物全量中20.0質量%以下であることが好ましく、18.0質量%以下であることがより好ましく、15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0074】
[重合禁止剤]
本実施の形態に係るインク組成物は、必要に応じて重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、特に限定されず、例えば、ジフェニルピクリルヒドラジド、トリ-p-ニトロフェニルメチル,p-ベンゾキノン、p-tert-ブチルカテコール、ピクリン酸、塩化銅、メチルハイドロキノン、メトキノン、tert-ブチルハイドロキノン、フェノチアジン類、ニトロソアミン類等の重合禁止剤を用いることができる。
【0075】
[表面調整剤]
本実施の形態に係るインク組成物は、例えば、インク組成物のウェット膜に対する接触角が高い場合に必要に応じて表面調整剤を含有してもよい。表面調整剤としては特に限定されないが、具体例としては、ジメチルポリシロキサンを有するビックケミー社製「BYK-306」、「BYK-333」、「BYK-371」、「BYK-377」、エボニックデグサジャパン社製「TegoRad2010」「TegoRad2100」、「TegoRad2200N」、「TegoRad2300」等が挙げられる。
【0076】
[その他の添加剤]
本実施の形態に係るインク組成物は、その他の添加剤として、溶剤、可塑剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、配向剤等、種々の添加剤を含有していても良い。なお、インク組成物であっても樹脂を含有していてもよい。
【0077】
なお、本実施の形態に係るインク組成物は、光輝性顔料とは異なる通常のインクジェット用のインク組成物の使用されるような色材(染料・顔料)は含有してもよい。色材はインク組成物全量中3.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、0.2質量%以下であることが更になお好ましい。
【0078】
(インク組成物の粘度)
本実施の形態に係るインク組成物の粘度は、インクジェット吐出性、吐出安定性の点から、吐出温度(例えば40℃)での粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることがさらに好ましい。又、本実施形態のインク組成物の粘度は、3mPa・s以上であることが好ましく、5mPa・s以上であることがより好ましい。なお、本実施の形態に係るインク組成物の粘度は、そのインク組成物が吐出される温度に応じて、インクジェット記録装置に使用されているインクジェットヘッドの適正範囲に調整されることが好ましい。粘度は、振動式粘度計、レオメーター、落球式粘度計等で測定することができる。
【0079】
(インク組成物の製造方法)
インク組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。インク組成物には、分散機を用いて、重合性化合物、光輝性顔料、分散剤等で分散し、その後、必要に応じて重合開始剤、重合禁止剤、レベリング剤等を添加して均一に撹拌することにより、混合物を得て、その後光輝性顔料を添加して更にフィルターで濾過することによってインク組成物が得られる。
【0080】
次に、本実施の形態に係るインク組成物を使用した記録方法及び印刷物の製造方法について説明する。
【0081】
<3.記録方法>
上記の実施形態に係るインク組成物を用いて基材(記録媒体)の表面に記録する記録方法は、インクジェット法によって活性エネルギー線硬化型のインク組成物を吐出する記録方法である。インクジェット法によってインク組成物を吐出することで小ロットの印刷物の製造に対応可能となる。
【0082】
インクジェット記録装置は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれのインクジェット記録装置にも適用することができる。
【0083】
そして、インクジェット法によって吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線は、遠紫外線、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線の活性エネルギー線を挙げることができる。活性エネルギー線を照射する光源は特に限定されるものではなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。省エネルギーであり、印刷装置の設計設備の自由度が高いという観点から光源としてLEDランプを用いることがより好ましい。
【0084】
上記の実施形態に係るインク組成物は、ウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下の範囲に制御されている。これにより、L1≧200、L2≧100、L1-L2≧90の関係となるように、光輝性層に含まれる光輝性顔料が適切に配向するようになって、被体に良好な金属調の光沢性を付与することができる。
【0085】
<4.印刷物の製造方法>
上記の実施形態に係るインク組成物を基材の表面に吐出する記録方法は、印刷物の製造方法として定義することもできる。
【0086】
上記の実施形態に係るインク組成物は、ウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下の範囲に制御されている。これにより、L1≧200、L2≧100、L1-L2≧90の関係となるように、光輝性層に含まれる光輝性顔料が適切に配向するようになって、良好な金属調の光沢性を有する印刷物が得られる。
【実施例
【0087】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0088】
1.光輝性顔料の作成
(1)光輝性顔料
下記組成の塗工液1を厚み100μmのPETフィルム上にバーコート法で均一に塗布し、60℃で10分間乾燥し、剥離樹脂層を形成した。
【0089】
塗工液1
・セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35~39%、関東化学社製) 3%
・イソプロパノール 97%
【0090】
次に、(株)真空デバイス製「VE-1010方真空蒸着装置」を使用して、剥離樹脂層上に膜厚20nmの金属含有薄膜を形成して積層体を作製した。得られた積層体をジイソプロパノール中に浸漬すると共に、(株)アズワン製「VS-150超音波分散機」を用いて剥離、粉砕、微分散処理を同時に12時間行い、光輝性顔料(アルミニウムからなる金属含有光輝性顔料)を含有する光輝性顔料分散液を得た。
【0091】
得られた光輝性顔料分散液を開き目5μmのSUSメッシュフィルターで濾過し、粗大粒子を除去した。次いで、イソプロパノールをエバポレーターにより濾液から留去した。その後、イソプロパノールをフェノキシエチルアクリレートに置き換え、光輝性顔料の濃度を調整し、光輝性顔料を5質量%含有する光輝性顔料分散液を調製した。この光輝性顔料の体積平均粒子径(D50)は2.5μm、体積平均粒子径(D90)は3.5μm、厚みは40nmであった。
【0092】
2.インク組成物の製造
上記の「光輝性顔料分散液」を使用して実験例のインク組成物を製造した。具体的には、上記の光輝性顔料分散液、重合性化合物と、光輝性顔料と、を用いて下記表の割合になるように実施例、比較例のインク組成物を調整した。単位は質量%である。
【0093】
【表1】
【0094】
3.評価
(1)L1、L2値の算出
実施例及び比較例のインク組成物を用いて得られた印刷物の各反射角でのL値を求め、L1、L2値を算出した。具体的には、具体的には、実施例及び比較例のインク組成物をインクジェット記録装置、富士フイルム(株)製「マテリアルプリンター DMP-2850」によって、PETフィルム(東洋紡(株)コスモシャインA4360)の表面に吐出し、活性エネルギー線として波長385nmのLEDランプを照射することにより、印刷物を製造した。得られた印刷物について、コニカミノルタ社製マルチアングル測色系CM-M6で45°の入射角で入射光を光輝性層に対して入射させたときに、入射光に対する正反射光の角度を0°、光輝性層に対する法線を45°として、反射角-15°、15°、25°、45°、75°、110°のL表色系におけるL(明度指数)を測定し、反射角-15°、及び反射角15°のL値の合計L1及び反射角45°、反射角75°、及び反射角110°のL値の合計L2を算出した。
【0095】
(3)表面張力
実施例、比較例のインク組成物に含まれる各重合性モノマーの表面張力を測定温度25℃にてWilhelmy法(協和界面科学製 DY-300)により測定した。そして、以下の計算式により、インク組成物の重量平均で表面張力の計算値Nを求めた。
【0096】
【数1】
式中、Niは各重合性化合物の表面張力、nは各重合性化合物の種類、Mはインク組成物中の重合性化合物の総重量、miは各重合性化合物の重量を意味する。
【0097】
(4)接触角の測定
実施例、比較例のインク組成物のウェット膜に対する接触角を求めた。具体的には、自動接触角測定装置(協和界面科学製「Dropmaster SA-301」)を用い、25℃の条件下で、実施例、比較例のインク組成物の未硬化状態のウェット膜の状態でPETフィルム(東洋紡(株)コスモシャインA4360)に塗布して、そのウェット膜の上に実施例、比較例のインク組成物の液滴2.0μlを付着させ、100ms後の接触角を求めた(表中、「接触角」と表記)。
【0098】
(5)メタリック感
実施例及び比較例のインク組成物を用いて得られた印刷物のメタリック感を評価した。具体的には、上記で得られた印刷物について、目視でメタリック感を確認した(表中、「メタリック感」と表記)。
評価基準
〇:優れた金属光沢の外観を有している
△:金属光沢の外観を有している
×:金属光沢の外観を有していない
〇、△が実使用可能範囲内である。
【0099】
(6)白色度
実施例及び比較例のインク組成物を用いて得られた印刷物の白色度を評価した。具体的には、上記で得られた印刷物について、目視で白色度を確認した(表中、「白色度」と表記)。
評価基準
〇:優れた白色度の外観を有している
△:実用上問題ない白色度の外観を有している
×:グレー味を帯びている
〇、△が実使用可能範囲内である。
【0100】
上記表から分かるように、L1≧200、L2≧100、L1-L2≧90の関係を満たす実施例のインク組成物を用いて得られた印刷物であれば、メタリック感及び白色度が良好であり、良好な金属調の光沢性を有する印刷物であることが分かる。
【0101】
また、実施例のインク組成物は、光輝性顔料の含有量がインク組成物全量中1.0質量%以上であって、インク組成物のウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下であった。このことから、光輝性顔料の含有量がインク組成物全量中1.0質量%以上であって、インク組成物のウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下であれば、光輝性層に含まれる光輝性顔料が適度に配向してL1≧200、L2≧100、L1-L2≧90の関係を満たすような印刷物が得られることが分かる。
【0102】
そして、インク組成物の表面張力の計算値(X座標)と接触角の実測値(Y座標)との相関を表す近似直線を図2に示す。この近似直線における相関係数の二乗Rを求めたところ0.90であった。このことから、各重合性化合物の表面張力から求めたインク組成物の表面張力の計算値と、そのインク組成物のウェット膜に対する接触角と、の間には相関があり、そのインク組成物のウェット膜に対する接触角と、についてプロットして、そのプロットの近似式からウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下となるように各重合性化合物の種類や含有量を選択すれば、ウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下であるインク組成物が得られることがわかる。
【0103】
このことから、本明細書に接した当業者であれば、ウェット膜に対する接触角が29.5°以上70.0°以下であるインク組成物を得ることは容易であり、実施例の組成のインク組成物のみならず、実施例の組成のインク組成物から、重合性化合物の種類や含有量に適宜変更を加えて実施することは容易である。
【符号の説明】
【0104】
1 印刷物
【要約】
【課題】良好な金属調の光沢性を有する意匠性の高い印刷物を提供する。
【解決手段】光輝性顔料を含有する光輝性層を備えた印刷物であって、印刷物の光輝性層から45°の入射角で入射光を光輝性層に対して入射させたときに、入射光に対する正反射光の角度を0°、前記光輝性層に対する法線の角度を45°としたときの、L表色系における反射角-15°、及び反射角15°のL値の合計L1が200以上であって、L表色系における反射角45°、反射角75°、及び反射角110°のL値の合計L2が100以上であり、
L1-L2が90以上である印刷物である。
【選択図】図1
図1
図2