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特許6992216排ガス後処理システムのための混合装置、排ガス後処理システム、及び、内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】排ガス後処理システムのための混合装置、排ガス後処理システム、及び、内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20220105BHJP
   F01N 1/02 20060101ALI20220105BHJP
   F01N 1/10 20060101ALI20220105BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F01N3/24 J
F01N1/02 B
F01N1/10 B
F01N3/24 N
F01N3/08 B
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017124935
(22)【出願日】2017-06-27
(65)【公開番号】P2018013121
(43)【公開日】2018-01-25
【審査請求日】2019-12-02
(31)【優先権主張番号】10 2016 113 389.2
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521261511
【氏名又は名称】アンドレアス・デーリング
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・デリング
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00779415(EP,A1)
【文献】特表2002-522703(JP,A)
【文献】特開2009-036041(JP,A)
【文献】実開昭52-54711(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00-13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス後処理システム、特にSCR排ガス後処理システムのための混合装置、すなわち、還元剤前駆物質、特に尿素等のアンモニア前駆物質と排ガスとを混合するための混合装置であって、触媒コンバータ、特にSCR触媒コンバータ(9)に至る、前記排ガスを誘導する排ガス供給導管(8)と、前記排ガス供給導管(8)に配設された、前記還元剤前駆物質を前記排ガスに導入するための導入装置(12)と、前記導入装置(12)の下流に配置され、前記排ガス供給導管(8)によって設けられた混合及び分解区間(14)であって、前記排ガスを前記還元剤前駆物質と混合し、前記触媒コンバータの上流において、前記還元剤前駆物質を分解し、還元剤を生成するための混合及び分解区間(14)と、を有する混合装置において、
前記排ガス供給導管(8)には、前記混合及び分解区間(14)の領域において、消音器(21)が配設されており、
前記消音器(21)が、少なくとも1つの消音チャンバを有しており、前記消音チャンバは、少なくとも1つの開口部を通じて、前記排ガス供給導管(8)に連結され、
少なくとも1つの前記消音チャンバが、少なくとも1つの前記開口部を通じて、前記導入装置(12)の下流で、前記混合及び分解区間(14)の領域において、前記排ガス供給導管(8)に連結されており、前記開口部の、前記導入装置(12)からの距離は、前記導入装置(12)の領域における、前記排ガス供給導管(8)の直径の最大で1倍又は最小で2倍に相当することを特徴とする混合装置。
【請求項2】
内燃機関の排ガス後処理システム、特にSCR排ガス後処理システムのための混合装置、すなわち、還元剤前駆物質、特に尿素等のアンモニア前駆物質と排ガスとを混合するための混合装置であって、触媒コンバータ、特にSCR触媒コンバータ(9)に至る、前記排ガスを誘導する排ガス供給導管(8)と、前記排ガス供給導管(8)に配設された、前記還元剤前駆物質を前記排ガスに導入するための導入装置(12)と、前記導入装置(12)の下流に配置され、前記排ガス供給導管(8)によって設けられた混合及び分解区間(14)であって、前記排ガスを前記還元剤前駆物質と混合し、前記触媒コンバータの上流において、前記還元剤前駆物質を分解し、還元剤を生成するための混合及び分解区間(14)と、を有する混合装置において、
前記排ガス供給導管(8)には、前記混合及び分解区間(14)の領域において、消音器(21)が配設されており、
前記消音器(21)が、少なくとも1つの消音チャンバを有しており、前記消音チャンバは、少なくとも1つの開口部を通じて、前記排ガス供給導管(8)に連結され、
前記消音器(21)の少なくとも1つの前記消音チャンバが、少なくとも1つの前記開部を通じて、前記導入装置(12)の下流で、前記混合及び分解区間(14)の領域において、前記排ガス供給導管(8)に連結されており、前記開部の、前記導入装置(12)からの距離は、前記導入装置(12)の領域における、前記排ガス供給導管(8)の直径の最大で1倍又は最小で2倍に相当することを特徴とする混合装置。
【請求項3】
内燃機関の排ガス後処理システム、特にSCR排ガス後処理システムのための混合装置、すなわち、還元剤前駆物質、特に尿素等のアンモニア前駆物質と排ガスとを混合するための混合装置であって、触媒コンバータ、特にSCR触媒コンバータ(9)に至る、前記排ガスを誘導する排ガス供給導管(8)と、前記排ガス供給導管(8)に配設された、前記還元剤前駆物質を前記排ガスに導入するための導入装置(12)と、前記導入装置(12)の下流に配置され、前記排ガス供給導管(8)によって設けられた混合及び分解区間(14)であって、前記排ガスを前記還元剤前駆物質と混合し、前記触媒コンバータの上流において、前記還元剤前駆物質を分解し、還元剤を生成するための混合及び分解区間(14)と、を有する混合装置において、
前記排ガス供給導管(8)には、前記混合及び分解区間(14)の領域において、消音器(21)が配設されており、
前記消音器(21)が、少なくとも1つの消音チャンバを有しており、前記消音チャンバは、少なくとも1つの開口部を通じて、前記排ガス供給導管(8)に連結され、
前記混合及び分解区間(14)の、前記導入装置(12)からの距離が、前記導入装置(12)の領域における前記排ガス供給導管(8)の直径の1倍と、前記導入装置(12)の前記排ガス供給導管(8)の直径の2倍との間に相当する領域には、前記消音器(21)の前記消音チャンバを前記排ガス供給導管(8)に連結しているような開口部は形成されていないことを特徴とする混合装置。
【請求項4】
内燃機関の排ガス後処理システム、特にSCR排ガス後処理システムのための混合装置、すなわち、還元剤前駆物質、特に尿素等のアンモニア前駆物質と排ガスとを混合するための混合装置であって、触媒コンバータ、特にSCR触媒コンバータ(9)に至る、前記排ガスを誘導する排ガス供給導管(8)と、前記排ガス供給導管(8)に配設された、前記還元剤前駆物質を前記排ガスに導入するための導入装置(12)と、前記導入装置(12)の下流に配置され、前記排ガス供給導管(8)によって設けられた混合及び分解区間(14)であって、前記排ガスを前記還元剤前駆物質と混合し、前記触媒コンバータの上流において、前記還元剤前駆物質を分解し、還元剤を生成するための混合及び分解区間(14)と、を有する混合装置において、
前記排ガス供給導管(8)には、前記混合及び分解区間(14)の領域において、消音器(21)が配設されており、
前記消音器(21)が、少なくとも1つの消音チャンバを有しており、前記消音チャンバは、少なくとも1つの開口部を通じて、前記排ガス供給導管(8)に連結され、
前記消音器(21)の少なくとも1つの前記消音チャンバが、少なくとも1つの前記開部を通じて、前記排ガス供給導管(8)に、前記導入装置(12)の上流において連結されていることを特徴とする混合装置。
【請求項5】
前記消音器(21)が、ヘルムホルツ共鳴器、及び/又は、λ/4共鳴器、及び/又は、吸音形消音器を構成していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の混合装置。
【請求項6】
前記消音器(21)の少なくとも1つの前記前記消音チャンバが、λ/4共鳴器を構成していることを特徴とする、請求項4に記載の混合装置。
【請求項7】
前記消音器(21)の少なくとも1つの前記消音チャンバが、ヘルムホルツ共鳴器を構成していることを特徴とする、請求項4又は5に記載の混合装置。
【請求項8】
前記消音器(21)の少なくとも1つの前記消音チャンバが、吸音形消音器を構成していることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の混合装置。
【請求項9】
少なくとも1つの、前記排ガス供給導管(8)内部の横断面を急増させるための装置(18a、18b)が、前記混合装置の領域に配置されていることを特徴とする、請求項4から7のいずれか一項に記載の混合装置。
【請求項10】
少なくとも1つの、前記横断面を急増させるための装置(18a、18b)が、前記導入装置(12)の上流又は下流に取り付けられており、前記横断面を急増させるための装置(18a、18b)が、前記導入装置の下流に取り付けられている場合、前記横断面を急増させるための装置(18a、18b)の前記導入装置(12)からの距離は、前記導入装置(12)の領域における前記排ガス供給導管(8)の直径の最小で2倍に相当することを特徴とする、請求項9に記載の混合装置。
【請求項11】
前記混合及び分解区間(14)と前記消音器(21)と、又は、前記排ガス供給導管(8)と前記消音器(21)とが、共通のアセンブリに統合されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の混合装置。
【請求項12】
内燃機関(1)のための排ガス後処理システム(3)、特に重油又は残油で運転される内燃機関のためのSCR排ガス後処理システムであって、反応チャンバ(10)内に配置された少なくとも1つの触媒コンバータ(9)、特にSCR触媒コンバータと、前記反応チャンバ(10)に至る排ガス供給導管(8)と、前記反応チャンバ(10)から延在する排ガス排出導管(11)と、を有する排ガス後処理システムにおいて、
請求項1から8のいずれか一項に記載の混合装置を特徴とする排ガス後処理システム(3)。
【請求項13】
前記混合及び分解区間(14)並びに前記消音器(21)と共に、共通のアセンブリに統合されている排ガスマニホールド(7)を特徴とする、請求項12に記載の排ガス後処理システム。
【請求項14】
前記SCR触媒コンバータ(9)又は前記反応チャンバ(10)から最も離れた、シリンダ側の排ガスマニホールド(7)への排ガス開口位置(16)と、前記SCR触媒コンバータ(9)又は前記反応チャンバ(10)と、の間の距離が、前記SCR触媒コンバータ(9)又は前記反応チャンバ(10)から最も離れた、シリンダ側の前記排ガスマニホールド(7)への排ガス開口位置(16)と、前記SCR触媒コンバータ(9)又は前記反応チャンバ(10)に最も近い、シリンダ側の前記排ガスマニホールド(7)への排ガス開口位置(16)と、の間の距離の、最大で4倍、好ましくは最大で3倍、特に好ましくは最大で2倍に相当するように、共通のアセンブリが構成されていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の排ガス後処理システム。
【請求項15】
複数のシリンダ(4)と、一群の前記シリンダ(4)に共通の少なくとも1つの排ガスマニホールド(7)と、請求項12から14のいずれか一項に記載の排ガス後処理システム(3)と、を有する内燃機関(1)であって、排ガスが、前記排ガスマニホールド(7)から、前記排ガス後処理システム(3)を通って、及び、前記排ガス後処理システム(3)の下流において、内燃機関(1)の排ガス過給システム(2)の少なくとも1つの排ガスターボチャージャ(5)を通って、誘導され得る内燃機関(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス後処理システムのための混合装置、内燃機関の排ガス後処理システム、及び、排ガス後処理システムを有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電所において用いられるような固定された内燃機関における燃焼プロセス、及び、例えば船舶において用いられるような固定されていない内燃機関における燃焼プロセスでは、窒素酸化物が発生し、これらの窒素酸化物は、典型的には、石炭、瀝青炭、褐炭、石油、重油、又は、ディーゼル燃料のような硫黄を含有する、化石燃料の燃焼に際して発生する。従って、このような内燃機関には、内燃機関から排出される排ガスの浄化、特に脱窒に用いられる排ガス後処理システムが配設されている。
【0003】
排ガス中の窒素酸化物を還元するために、実践から知られた排ガス後処理システムでは、まず、いわゆるSCR触媒コンバータが使用される。SCR触媒コンバータでは、窒素酸化物の選択的接触還元が行われ、窒素酸化物の還元のために、還元剤としてアンモニア(NH)が必要とされる。このために、アンモニア前駆物質である尿素又はカルバミド等は、SCR触媒コンバータの上流で、液体の形状において排ガスに導入され、アンモニア前駆物質は、SCR触媒コンバータの上流において排ガスと混合され、分解されて還元剤を生成する。このために、実践によると、アンモニア前駆物質の導入装置とSCR触媒コンバータとの間に、混合及び分解区間が設けられている。
【0004】
SCR触媒コンバータを含む、実践から知られた排ガス後処理システムを用いて、排ガス後処理、特に窒素酸化物の還元が、すでに成功裏に実施可能ではあるが、排ガス後処理システムをさらに改善する必要性が存在する。特に、構造を小型化した場合に、低騒音の排ガス後処理を可能にすることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような必要性を基点にして、本発明の課題は、構造が小型化された場合に、低騒音の排ガス後処理を可能にするような、排ガス後処理システムのための新型の混合装置、排ガス後処理システム、及び、排ガス後処理システムを有する内燃機関を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1に記載の混合装置によって解決される。本発明によると、排ガス供給導管には、混合及び分解区間の領域において、消音器が配設されている。小型化された構造において、低騒音の排ガス後処理が可能になる。
【0007】
好ましくは、混合及び分解区間を構成する排ガス供給導管の部分と消音器と、又は、排ガス供給導管と消音器とは、共通のアセンブリに統合されている。特に小型化された構造において、低騒音の排ガス後処理が可能になる。
【0008】
有利なさらなる発展形態によると、消音器は、複数の消音チャンバを有しており、これらの消音チャンバは、それぞれ少なくとも1つの開口部を通じて、排ガス供給導管に連結されている。小型化された構造において、低騒音の排ガス後処理が可能になる。
【0009】
別の有利なさらなる発展形態によると、消音器の第1の消音チャンバは、少なくとも1つの第1の開口部を通じて、及び/又は、消音器の第2の消音チャンバは、少なくとも1つの第2の開口部を通じて、排ガス供給導管に連結されており、導入装置の上流に配置された1つ又はそれぞれの開口部の距離は、導入装置の領域における排ガス供給導管の直径の最大で3倍であり、導入装置の下流に配置された1つ又はそれぞれの開口部の距離は、導入装置の領域における排ガス供給導管の直径の最大で1倍、又は、少なくとも2倍である。混合及び分解区間の領域であって、導入装置からの距離が、導入装置の領域における排ガス供給導管の直径の1倍と導入装置の領域における排ガス供給導管の直径の2倍との間に相当する領域では、消音器の消音チャンバを排ガス供給導管に連結しているような開口部は形成されていない。小型化された構造において、低騒音の排ガス後処理が可能になる。特に、尿素等の、液状の還元剤前駆物質が、消音チャンバを排ガス供給導管に連結する開口部の領域に到達すること、及び、当該開口部を詰まらせる、又は、塞ぐことが防止される。
【0010】
好ましくは、消音器の第3の消音チャンバは、少なくとも1つの第3の開口部を通じて、排ガス供給導管に、導入装置の上流において連結されている。小型化された構造において、低騒音の排ガス後処理が可能になる。混合及び分解区間の端部の導入装置からの距離は、有利には、導入装置の領域における排ガス導管の直径の2倍から6倍の間である。
【0011】
本発明に係る排ガス後処理システムは、請求項11に規定されている。
【0012】
本発明に係る内燃機関は、請求項14に規定されている。
【0013】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、下位請求項及び以下の説明から明らかになる。図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明するが、それに限定されるものではない。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る排ガス後処理システムを有する内燃機関の概略的な斜視図である。
図2】本発明に係る混合装置の領域における、図1に係る排ガス後処理システムの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、例えば発電所の固定された内燃機関、又は、船舶で用いられる固定されていない内燃機関等の内燃機関の排ガス後処理システムに関する。
【0016】
特に、本発明は、重油又は残油によって運転される、好ましくは2サイクル船舶用ディーゼル内燃機関として構成された船舶用ディーゼル内燃機関のSCR排ガス後処理システムに関する。
【0017】
図1は、排ガス過給システム2と排ガス後処理システム3とを有する内燃機関1の配置を示している。
【0018】
内燃機関1は、固定されていない、又は、固定された内燃機関、特に固定せずに運転される船舶用内燃機関であり得る。内燃機関1のシリンダ4から排出される排ガスは、排ガス過給システム2において、排ガスの熱エネルギーから、内燃機関1に供給されるべき過給空気を圧縮するための力学的エネルギーを得るために用いられる。
【0019】
図1は、排ガス過給システム2を有する内燃機関1を示しており、当該排ガス過給システムは、少なくとも1つの排ガスターボチャージャ5を含んでいる。内燃機関1のシリンダ4から排出される排ガスは、排ガスターボチャージャ5のタービン6を通って流れ、当該タービン内で膨張し、その際に得られたエネルギーは、過給空気を圧縮するために、排ガスターボチャージャ5の圧縮機(図示せず)内で利用される。内燃機関1は、高圧ターボチャージャと低圧ターボチャージャとを備えた2段排ガス過給システム2を有し得る。
【0020】
排ガス過給システム2に加えて、内燃機関1は、SCR排ガス後処理システムを含んでいる。排ガス後処理システム3は、好ましくは、内燃機関1のシリンダ4と排ガス過給システム2との間に接続されているので、内燃機関1のシリンダ4から排出される排ガスは、まず排ガス後処理システム3を通り、その後で初めて、排ガス過給システム2を通るように誘導される。
【0021】
図1は、排ガス供給導管8を示しており、当該排ガス供給導管を通って、排ガスは、内燃機関1のシリンダ4から、反応チャンバ10内に配置されたSCR触媒コンバータ9の方向に誘導され得る。さらに、図1は、排ガス排出導管11を示しており、当該排ガス排出導管は、排ガスをSCR触媒コンバータ9から、排ガスターボチャージャ5のタービン6の方向に排出するために用いられる。
【0022】
図1の内燃機関1は、全てのシリンダ4に共通の排ガスマニホールド7を有している。内燃機関1のシリンダ4から排出される排ガスは、排ガスマニホールド7から、排ガス供給導管8を通って、排ガス後処理システム3、すなわちそれぞれの反応チャンバ10及びそれぞれのSCR触媒コンバータ9の方向に誘導可能であり、排ガス後処理システム3の下流では、排ガス過給システム2の排ガスターボチャージャ5を通るように誘導可能である。
【0023】
反応チャンバ10ひいては反応チャンバ10の内部に配置されたSCR触媒コンバータ9に至るまで延伸している排ガス供給導管8、及び、反応チャンバ10ひいてはSCR触媒コンバータ9から離隔するように延伸している排ガス排出導管11、又は、排ガスマニホールド7及び排ガス排出導管11は、好ましくは、遮断要素を内蔵するバイパス(図示せず)を介して連結されている。遮断要素が閉じられている場合には、バイパスも閉じられているので、排ガスがバイパスを介して流通することはできない。対照的に、遮断要素が開いている場合には、排ガスはバイパスを介して通過する、すなわち、排ガス供給導管8から排ガス排出導管11へ、反応チャンバ10ひいては反応チャンバ10の内部に配置されたSCR触媒コンバータ9を迂回して、直接流通することが可能である。
【0024】
排ガス後処理システム3の排ガス供給導管8には、導入装置12が配設されており、当該導入装置を通じて、排ガス流れに、還元剤前駆物質、すなわち尿素又はカルバミド等のアンモニア前駆物質が導入され得る。還元剤前駆物質は、排ガスと混合され、分解されて、本来の還元剤であるアンモニア(NH)を生成する。当該還元剤は、SCR触媒コンバータ9の領域において、排ガスの窒素酸化物を所定の通り変換するために必要とされる。排ガス後処理システム3の導入装置12は、好ましくは噴射ノズルであり、当該噴射ノズルを通じて、アンモニア前駆物質が、排ガス供給導管8内で排ガス流れに注入される。図2では、円錐13によって、排ガス供給導管8の領域における排ガス流れへの還元剤前駆物質の注入が示されている。
【0025】
排ガスの流れる方向に見て、導入装置12の下流及びSCR触媒コンバータ9の上流に位置している排ガス後処理システム3又は排ガス供給導管8の区間は、混合及び分解区間14と称される。特に、排ガス供給導管8は、導入装置12の下流において、混合及び分解区間14を設けており、当該混合及び分解区間においては、還元剤前駆物質が分解されて還元剤を生成し、排ガスが、SCR触媒コンバータ9の上流において、当該還元剤と混合され得る。
【0026】
導入装置12及び排ガス供給導管8、すなわち、導入装置12の下流に延在する、混合及び分解区間14を供給する排ガス供給導管8の部分は、排ガス後処理システム3の混合装置のアセンブリであり、当該アセンブリは、還元剤前駆物質を分解して還元剤を生成し、導入装置12を通じて排ガスに導入された還元剤と排ガスとを混合するために用いられる。
【0027】
排ガス供給導管8には、混合及び分解区間14の領域において、消音器21が配設されている。従って、混合及び分解区間14と消音器21とは、空間的に統合されている。それによって、小型化された構造において、低騒音の排ガス後処理が確実化され得る。消音器21は、好ましくは、複数の消音チャンバ22、23及び24を有している。各消音チャンバ22、23及び24は、それぞれ少なくとも1つの開口部25、26、27を通じて、排ガス供給導管8に連結されている。
【0028】
図2によると、第1の消音チャンバ22は、少なくとも1つの開口部25を通じて、導入装置12の上流に取り付けられている。消音器21の第2の消音チャンバ23は、少なくとも1つの別の開口部26を通じて、排ガス供給導管8に、導入装置12の下流において、混合及び分解区間14の領域において連結されている。1つ又は各第1の開口部26の導入装置12からの距離X1は、導入装置12の領域における排ガス供給導管8の直径dの最大で1倍に相当する。
【0029】
さらに、図2によると、消音器21の第3の消音チャンバ24は、少なくとも1つの別の開口部27を通じて、やはり導入装置12の下流で、混合及び分解区間14の領域において、排ガス供給導管8に連結されている。1つ又は各第2の開口部27の導入装置12からの距離は、導入装置12の領域における排ガス供給導管8の直径dの最小で2倍に相当する。
【0030】
混合及び分解区間14の領域であって、導入装置12からの距離が、導入装置12の領域における排ガス供給導管8の直径dの1倍と導入装置12の領域における排ガス供給導管8の直径dの2倍との間に相当する領域では、消音器21の消音チャンバ23、24を、排ガス供給導管8に連結しているような開口部は形成されていない。従って、距離X1の下流及び距離X2の上流では、消音器21の消音チャンバを排ガス供給導管8に連結しているような開口部は形成されていない。
【0031】
上述の、消音器21の消音チャンバ22、23、24を排ガス供給導管8に連結する開口部25、26、27の位置決めによって、液状の還元剤前駆物質、すなわち液状の尿素が、開口部25、26、27の領域に到達せず、これらの開口部を塞がないことが確実化され得る。
【0032】
距離X1まで、還元剤前駆物質の液滴が、第1の開口部26の領域に到達することはできない。遅くとも距離X2において、還元剤前駆物質、すなわち尿素は、アンモニア(NH)とCOとに分解されるので、距離X2の下流では、液状の還元剤前駆物質が開口部27を詰まらせる危険は生じない。
【0033】
消音器21は、ヘルムホルツ共鳴器及び/又はλ/4共鳴器及び/又は吸音形消音器として構成されている。吸音形消音器は、さらに、ガラス繊維又はセラミック繊維等の吸音材料で充填されている。
【0034】
導入装置12の下流で、開口部26、27を通じて、混合及び分解区間14の領域において、排ガス供給導管8に連結されている消音チャンバ23、24は、λ/4共鳴器として構成されており、それに対して、開口部25を通じて、導入装置12の上流で、排ガス供給導管8に連結されている消音チャンバ22は、ヘルムホルツ共鳴器として構成されている、と規定することが可能である。これは好ましいけれども、強制的ではない。全ての消音チャンバを、λ/4共鳴器として、又は、ヘルムホルツ共鳴器として、又は、吸音形共鳴器として構成することも可能である。さらに、導入装置12の下流で、混合及び分解区間14の領域において、排ガス供給導管8に連結されている消音チャンバ23、24は、ヘルムホルツ共鳴器として、又は、吸音形消音器として構成可能であり、導入装置12の上流で、開口部25を通じて、排ガス供給導管8に連結された消音チャンバ22は、λ/4共鳴器として、又は、吸音形消音器として構成され得る。
【0035】
さらに、排ガス供給導管8に組込物(Einbauten)18a、18bを設けることも有利であると明らかになっており、当該組込物を設けた結果、横断面が急増し、それによって、さらなる騒音放射の削減が可能になる。組込物は、最も単純な場合、平面的な態様(18a)で、しかしまた角度を有する態様(18b)で配置又は構成され得るプレートであり、加えて、当該プレートは、主要流れ方向に対して様々な角度において位置合わせされ得る。当該組込物は、導入装置12の上流に、及び/又は、導入装置12の領域における排ガス供給導管8の直径dの少なくとも2倍に相当する距離に配置され得る。
【0036】
消音器21及び排ガス供給導管8、すなわち図2において、排ガス供給導管8の、少なくとも消音器21が配置されている部分は、好ましくは共通のアセンブリに統合され、部材に組み込まれている。これは、特に構造の小型化にとって有利である。
【0037】
好ましくは、排ガスマニホールド7も、混合及び分解区間14又は排ガス供給導管8及び消音器21と共に、共通のアセンブリに統合されている。その際、図1に示された実施形態によると、混合及び分解区間14を少なくとも部分的に構成している排ガス排出導管8は、排ガスの流れる方向に見て、排ガスマニホールド7の下流に同軸に配置されているので、排ガスは、排ガスマニホールド7から混合及び分解区間14へ、方向転換を行わずに供給可能である、ということが規定されている。
【0038】
図1では、排ガスは、シリンダ側の排ガス開口位置16の領域で排ガスマニホールド7に流入する際、及び、SCR触媒コンバータ9の上流で、排ガス供給導管8の下流側端部15の領域において反応チャンバ10に流入する際にのみ、方向転換を経験する。これは、低騒音の排ガス後処理を確実化するために有利である。
【0039】
図1及び図2は、矢印17で、排ガスの流れを示している。図1からは、排ガス7が、シリンダ側の排ガス開口位置16の領域において、約90°又は略90°の方向転換を行い、排ガスマニホールド7に流入することがわかる。排ガスは、排ガスマニホールド7を出発して、方向転換を経ずに、排ガス供給導管8を通り、反応チャンバ10の領域に開口する排ガス供給導管8の下流側端部15まで流れる。排ガス供給導管8の当該端部15の領域において、流れは、約180°又は略180°の方向転換を行い、排ガスは、この流れの方向転換の後、SCR触媒コンバータ9を通るように誘導される。
【0040】
排ガス供給導管8は、下流側端部15で、反応チャンバ10に開口している。好ましい態様によると、排ガス供給導管8は、その下流側端部15の領域において、漏斗状に拡幅し、ディフューザ18を形成している。それによって、排ガス供給導管8の流れ断面が、下流側端部15の領域において拡大しており、排ガスの流れる方向に見て、排ガス供給導管8の下流側端部15のディフューザ18の上流において、その流れ断面がまず減少することを規定し得る。
【0041】
排ガス供給導管8と排ガス排出導管11とは、反応チャンバ10の共通の第1の面19で接続されている。その際、排ガス供給導管8は、その下流側端部15が、反応チャンバ10の第1の面19に向かい合う反応チャンバ10の第2の面20に隣接して位置するように、第1の面19から反応チャンバ10内に延在している。排ガス供給導管8は、触媒コンバータ9を貫通する。
【0042】
排ガス排出導管11は、第1の面19において、反応チャンバ10に開口している。排ガス供給導管8を通じて供給された排ガスは、排ガス供給導管8の下流側端部15に向かい合う反応チャンバ10の第2の面20の領域において方向転換した後、SCR触媒コンバータ9を通り、引き続いて第1の面19を通り、排ガス排出導管11の領域へと流れる。排ガス排出導管11は、排ガス供給導管8を、反応チャンバ10の第1の面19に隣接して、部分的に外側で、好ましくは同心に包囲している。
【0043】
図1の実施例では、排ガスマニホールド7、混合及び分解区間14、排ガス供給導管8、及び、付加的に消音器21も供給する共通のアセンブリは、排ガスが、排ガスマニホールド7から、方向転換を経ずにそれぞれの混合及び分解区間14に供給され得るように構成されている。これは、上述のように好ましいことである。それに対して、排ガスが、排ガスマニホールド7から混合及び分解区間14の領域へ、ひいては排ガス供給導管8の領域へと流れる際に、単一の方向転換を経る実施例、すなわち、方向転換が、好ましくは最大90°の角度で行われ、排ガスマニホールド7から排ガス供給導管8へ、従って混合及び分解区間14の領域へと移行する際に行われる実施例もあり得る。内燃機関における建設空間の理由から、排ガスの複数回の方向転換が必要である場合、本発明によると、排ガスマニホールド7、排ガス供給導管8、混合及び分解区間14、及び、補償要素21を供給するアセンブリは、排ガスが、排ガスマニホールド7から、最大で3回の方向転換、又は、排ガスマニホールド7と混合及び分解区間14との間における排ガスの最大270°の方向転換を経て、好ましくは、最大で2回の方向転換、又は、排ガスマニホールド7と混合及び分解区間14との間における排ガスの最大180°の方向転換を経て、混合及び分解区間14に供給されるように構成されている。しかしながら、排ガスマニホールド7と混合及び分解区間14との間における排ガスの最大90°の方向転換が好ましい。
【0044】
排ガスが、排ガスマニホールド7から、混合及び分解区間14の方向へ、方向転換を経ずに供給されることが最も好ましい。
【0045】
排ガスマニホールド7、混合及び分解区間14、及び、消音器21を構成する共通のアセンブリは、好ましくは、SCR触媒コンバータ9又は反応チャンバ10から最も離れた、シリンダ側のそれぞれの排ガスマニホールド7への排ガス開口位置16と、SCR触媒コンバータ9又は反応チャンバ10との間の距離が、SCR触媒コンバータ9又は反応チャンバ10から最も離れた、シリンダ側の排ガスマニホールド7への排ガス開口位置16と、SCR触媒コンバータ9又は反応チャンバ10に最も近い、シリンダ側の排ガスマニホールド7への排ガス開口位置16との間の距離の、最大で4倍、好ましくは最大で3倍、特に好ましくは最大で2倍に相当するように構成されている。
【0046】
図示された実施例では、反応チャンバ10と、それに伴ってSCR触媒コンバータ9とは、排ガス流れ側において、排ガスターボチャージャ5の上流に配置されている。反応チャンバ10と、それに伴ってSCR触媒コンバータ9とは、排ガス流れ側において、排ガスターボチャージャの下流に配置されていても良い。さらに、反応チャンバ10と、それに伴ってSCR触媒コンバータ9とは、排ガス流れ側において、高圧排ガスターボチャージャと低圧排ガスターボチャージャとの間に接続されていても良い。
【0047】
上述した詳細は、特に、残油、重油、又は、天然ガスによっても運転可能な2サイクル内燃機関での適用に適している。しかしながら、本発明は、4サイクル内燃機関でも利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 内燃機関
2 排ガス過給システム
3 排ガス後処理システム
4 シリンダ
5 排ガスターボチャージャ
6 タービン
7 排ガスマニホールド
8 排ガス供給導管
8a 部分
8b 部分
9 SCR触媒コンバータ
10 反応チャンバ
11 排ガス排出導管
12 導入装置
13 注入円錐
14 混合及び分解区間
15 端部
16 排ガス開口位置
17 流れ
18 ディフューザ
19 面
20 面
21 消音器
22 消音チャンバ
23 消音チャンバ
24 消音チャンバ
25 開口部
26 開口部
27 開口部
図1
図2