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  • 特許-色素沈着抑制剤のスクリーニング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】色素沈着抑制剤のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20220207BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220207BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220207BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALN20220207BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALN20220207BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALN20220207BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220207BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12Q1/02
G01N33/50 P
A61Q19/02
A61K8/9789
A61K8/9728
C12N15/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017122736
(22)【出願日】2017-06-23
(65)【公開番号】P2019004746
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100168996
【弁理士】
【氏名又は名称】諌山 雅美
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼中 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々 祥子
(72)【発明者】
【氏名】錦織 秀
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512260(JP,A)
【文献】特開2013-044719(JP,A)
【文献】特開2015-204780(JP,A)
【文献】特開2008-029215(JP,A)
【文献】特表2011-515649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12Q 1/02
G01N 33/50
A61K 8/9728
A61K 8/9789
A61Q 19/02
C12N 15/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EHF遺伝子の活性を指標とする、色素沈着抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項2】
前記EHF遺伝子の活性が、該EHF遺伝子又は該EHF遺伝子によりコードされるタンパク質の発現量であり、
被験物質を細胞に添加する工程、及び
被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して増大する被験物質を選択する工程、
を含む、請求項に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量の110%以上となる被験物質を選択する、請求項に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記細胞がケラチノサイトである、請求項2又は3に記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のスクリーニング方法を行う工程、及び
前記工程により選択された物質を含有させる工程、
を含む、組成物の設計方法。
【請求項6】
前記組成物が、美白用化粧料である、請求項に記載の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素沈着抑制剤をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚における日焼け後の色素沈着、シミ、肝斑、老人性色素斑等は、皮膚に存在するメラノサイト(色素細胞)の活性化によりメラニン生成が著しく亢進した状態である。これらの皮膚色素沈着に関連するトラブルの発生や悪化は肌の美しさを妨げるものであるため、従来これらを予防又は改善する作用を有する成分に関する研究が盛んになされており、様々な作用機序に基づく美白成分が創出されている。
【0003】
例えば、アスコルビン酸類、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン、カテコール等(非特許文献1)が、美白成分としてよく知られている。さらに近年、新たな作用機序に基づいた美白成分が種々開発されている。メラニン生成抑制を標的とするものとしては、チロシナーゼ関連蛋白阻害剤(特許文献1)、エンドセリン作用抑制剤(特許文献2)、プロトンポンプ阻害剤(特許文献3)、ステムセルファクター結合阻害剤(特許文献4)等がある。また、生成したメラニンの表皮への移動抑制を標的とするものとしては、メラノサイトのデンドライト伸張抑制剤(特許文献5)、メラニン移送又は放出抑制剤(特許文献6)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-195732号公報
【文献】特開2012-020950号公報
【文献】特開2011-178760号公報
【文献】特開2008-031094号公報
【文献】特開2003-113027号公報
【文献】特開2008-143796号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】メラニン色素の制御と美白剤の開発(フレグランスジャーナル社、臨時増刊)、No.14、P.118-126(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今なおより高い効果が得られる美白用化粧料の開発を目指して、色素沈着抑制に有効な新たな成分の探索や、色素沈着抑制剤の標的となり得る新たな作用機序の検討がなされている。
本発明は、色素沈着抑制剤として有効な成分を探索することを目的とし、そのための新たなスクリーニング法を確立することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、黄色人種においてシミ等の色素沈着と相関性の高い遺伝子群を見出し、それらのうちに複数のメラノサイト活性化因子を制御する因子が存在することをも見出した。
従来、メラノサイト活性化の機序に基づいて色素沈着抑制剤を探索しようとする場合は、個別のメラノサイト活性化因子ごとに試験系を組み、実験を行っていた。本発明者らが見出した複数のメラノサイト活性化因子の制御因子の活性を指標とすれば、より高い作用
を有し得るメラノサイト活性化を抑制することができる素材を、より効率的にスクリーニングできることに想到し、完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]複数のメラノサイト活性化因子の制御因子の活性を指標とする、色素沈着抑制剤のスクリーニング方法。
[2]前記複数のメラノサイト活性化因子が、エンドセリン1、IL-1α、GRO、NRG1、SCF、TNF、ADM、IL-6、及びGM-CSFからなる群から選択される、[1]に記載のスクリーニング方法。
[3]前記制御因子の活性が、該制御因子を構成するタンパク質をコードする遺伝子又は前記タンパク質の発現量であり、被験物質を細胞に添加する工程、及び被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して変化する被験物質を選択する工程、を含む、[1]又は[2]に記載のスクリーニング方法。
[4]前記制御因子がメラノサイト活性化因子を抑制する因子であり、前記変化が発現量の増大であり、被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量の110%以上となる被験物質を選択する、[3]に記載のスクリーニング方法。
[5]前記制御因子が、EHF遺伝子である、[4]に記載のスクリーニング方法。
[6]前記制御因子がメラノサイト活性化因子を亢進する因子であり、前記変化が発現量の減少であり、被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量の90%以下となる被験物質を選択する、[3]に記載のスクリーニング方法。
[7]前記細胞がケラチノサイトである、[3]~[6]のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[8][1]~[7]のいずれかに記載のスクリーニング方法を行う工程、及び前記工程により選択された物質を含有させる工程、を含む、組成物の設計方法。
[9]前記組成物が、美白用化粧料である、[8]に記載の設計方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、複数のメラノサイト活性化因子の制御因子の活性を指標とした、新たな色素沈着抑制剤のスクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】EHF遺伝子の発現を抑制したケラチノサイトの培養上清を添加したメラノサイトにおけるメラニン産生量を表すグラフ。
図2】EHF遺伝子の発現を亢進させる被験物質を添加したケラチノサイトの培養上清を添加したメラノサイトにおけるメラニン産生量を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のスクリーニング方法は、複数のメラノサイト活性化因子の制御因子の活性を指標とする。
一般に、メラノサイトが活性化されるとチロシナーゼによりメラニン産生が亢進することが知られており、メラノサイトを活性化する因子としては、エンドセリン1、IL-1α、GRO、NRG1、SCF、TNF、ADM、IL-6、GM-CSF等が知られており、これらはその発現亢進によりメラノサイトを活性化し、メラニン産生を促進することが知られている。本発明における複数のメラノサイト活性化因子を制御する因子は、前記メラノサイト活性化因子の2以上を抑制する方向に制御する因子又は亢進する方向に制御する因子のいずれでもよい。例えば、メラノサイト活性化因子の2以上を抑制する方向に制御する因子としては、本発明者らがシミとの関連を新たに見出した遺伝子である、EHF遺伝子が好ましい。しかしながらこれに限定されず、既知の遺伝子であって、複数の
メラノサイト活性化因子を制御する遺伝子は、本発明のスクリーニング方法においてその活性を指標として用いることができる。
なお、EHF遺伝子は、ヒトのケラチノサイトに発現することが知られており、その遺伝子のDNA塩基配列及びタンパク質のアミノ酸配列は公知であり(Gene ID:2
6298)、GenBank等に開示されている。
【0012】
本発明において、前記制御因子の活性とは、好ましくは該制御因子を構成するタンパク質をコードする遺伝子又は前記タンパク質の発現量をいう。
本発明のスクリーニング方法は、通常は、本発明の被験物質を細胞に添加する工程、及び被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して変化する被験物質を選択する工程、を含む。
例えば、本発明のスクリーニング方法の指標とする複数のメラノサイト活性化因子の制御因子がEHF遺伝子であった場合、EHF遺伝子の発現亢進と色素沈着抑制とが相関する。そのため、被験物質を細胞に添加することで、EHF遺伝子の発現亢進が生じた被験物質は、色素沈着抑制作用を有する成分として選択できる。
【0013】
前記制御因子がメラノサイト活性化因子を抑制する因子である場合、本発明のスクリーニング方法において前記変化は発現量の増大である。ここで発現量の増大の程度は、被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して大きければよく、好ましくは被験物質添加後12または24時間経過後に110%以上に増大した場合に変化したとすることができ、より好ましくは115%以上に増大であり、さらに好ましくは120%以上に増大である。
前記制御因子がメラノサイト活性化因子を抑制する因子である場合、例えば、前記制御因子がEHF遺伝子である場合、前記制御因子の遺伝子の発現亢進によりメラノサイト活性化因子が抑制され、メラニン産生が抑制されるので、該発現亢進は結果的に色素沈着抑制と相関する。そのため、被験物質を細胞に添加することで、前記制御因子の遺伝子の発現亢進が生じた被験物質は、色素沈着抑制作用を有する成分として選択できる。
【0014】
前記制御因子がメラノサイト活性化因子を亢進する因子である場合、本発明のスクリーニング方法において前記変化は発現量の減少である。ここで発現量の減少の程度は、被験物質を添加した細胞における前記発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における発現量と比較して小さければよく、好ましくは被験物質添加後12または24時間経過後に90%以下に減少した場合に変化したとすることができ、より好ましくは85%以下に減少であり、さらに好ましくは80%以下に減少である。
前記制御因子がメラノサイト活性化因子を亢進する因子である場合、前記制御因子の遺伝子の発現抑制によりメラノサイト活性化因子が抑制され、メラニン産生が抑制されるので、該発現抑制は結果的に色素沈着抑制と相関する。そのため、被験物質を細胞に添加することで、前記制御因子の遺伝子の発現抑制が生じた被験物質は、色素沈着抑制作用を有する成分として選択できる。
【0015】
本明細書において、「色素沈着抑制」作用とは、通常はメラニン産生を抑制することにより、皮膚におけるシミ等の色素沈着を予防又は改善する作用をいい、結果として肌に対して美白作用をもたらすものである。
【0016】
複数のメラノサイト活性化因子の制御因子の発現量は、任意の方法を用いて測定することができる。例えば、該遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、定量的な検出を行う。なお、既知の複数のメラノサイト活性化因子の制御因子の遺伝子の塩基配列はそれぞれ公開されており、当業者は適宜プライマーを設計してPCRに供することができる。
また、例えば、前記遺伝子によりコードされるタンパク質の細胞内存在量を、常法によ
り定量的に測定して、前記遺伝子の発現量としてもよい。
【0017】
本発明のスクリーニング方法において、被験物質を添加する細胞は、複数のメラノサイト活性化因子の制御因子の遺伝子が存在する細胞であれば特段限定されないが、通常はケラチノサイトである。
【0018】
本発明のスクリーニング方法が対象とする被験物質は、純物質、動植物由来の抽出物、又はそれらの混合物等のいずれであってもよい。
動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとし、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することができる。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却し後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0019】
本発明のスクリーニング方法により選択された色素沈着抑制剤は、メラニン産生抑制作用を介して、色素沈着抑制作用を有する。
そのため、本発明のスクリーニング方法により選択された色素沈着抑制剤は、化粧料等の美白用組成物に有効成分として好適に配合することができる。
【0020】
すなわち、本明細書は、本発明のスクリーニング方法を行い、それにより選択された物質(色素沈着抑制剤)を含有させる工程を含む、組成物の設計方法も提供する。そして、かかる組成物は、経皮投与される組成物(例えば、化粧料、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤)や、経口投与/摂取される組成物(例えば、飲食品、医薬部外品、医薬品等の経口組成物)などの態様とすることができる。
また、組成物の剤型は特に限定されない。例えば、化粧料として設計される場合の剤型は、通常知られているローション剤型、乳液剤型、エッセンス剤型、クリーム剤型、粉体含有剤型等が挙げられる。
【0021】
本発明のスクリーニング方法により選択された色素沈着抑制剤を含有する組成物を設計する際、色素沈着抑制剤の含有量(配合量)は、通常、0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。上記範囲とすることで、好適に色素沈着抑制効果を奏する組成物とすることができる。
また、該組成物に含有させる色素沈着抑制剤の種類は、1種類のみでなく2種類以上であってもよい。
【0022】
本発明のスクリーニング方法により選択された色素沈着抑制剤を含有する組成物を設計する際は、前述した態様や用途に応じて、適宜必要な成分を配合するよう、設計してよい。
例えば、化粧料組成物として設計する場合は、通常化粧料に使用される成分を広く配合
することが可能であり、また、その剤型や用途についても、何ら限定されない。以下、主に化粧料に適用される場合に化粧料中に含有させることができる成分について説明する。
【0023】
有効成分としては、他の美白成分、シワ改善成分、抗炎症成分、動植物由来の抽出物等が挙げられる。なお、本発明のスクリーニング方法により選択された色素沈着抑制剤と重複して配合してもよい。
他の美白成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、エラグ酸、コウジ酸、リノール酸、ニコチン酸アミド、5,5'-ジプロピルビフェニル-2,2'-ジオール、5'-アデニル酸
二ナトリウム、トラネキサム酸セチル、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、ハイドロキノン、パントテン酸等が挙げられる。
化粧料における美白成分の含有量は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、0.3~5質量%がより好ましい。
【0024】
シワ改善成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム、ニコチン酸アミド、ビタミンA又はその誘導体(レチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等)、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステルが挙げられる。
化粧料におけるシワ改善成分の含有量は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0025】
動植物由来の抽出物としては、一般的に医薬品、化粧料、食品等に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、インドキノエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エイジツエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オタネニンジンエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オレンジエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クジンエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、紅茶エキス、ゴボウエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コケモモエキス、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、タンポポエキス、茶エキス、チョウジエキス、チンピエキス、甜茶エキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチ
ャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ種子エキス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マヨナラエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、緑茶エキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
化粧料中における動植物由来抽出物の含有量は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
食品中における動植物由来抽出物の含有量は、通常0.01~80質量%であり、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0026】
抗炎症成分としては、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール等が挙げられ、好ましくは、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩である。
化粧料中における抗炎症成分の含有量は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0027】
油性成分としては、極性油、揮発性炭化水素油等が挙げられる。
極性油としては、合成エステル油として、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、イソノナン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンを挙げることができる。
【0028】
さらに、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、オクチルメトキシシンナメート等も挙げられる。
【0029】
また、天然油として、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等が挙げられる。
【0030】
揮発性炭化水素油としては、イソドデカン、イソヘキサデカン等が挙げられる。
【0031】
界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、
ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等) 、グリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸グリセリル等)、プロピレ
ングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、等が挙げられる。
【0032】
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられる。
【0033】
増粘剤としては、グアーガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸,キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。
【0034】
粉体類としては、表面を処理されていてもよい、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていてもよい、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていてもよい、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていてもよい赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素
類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、が挙げられる。
【0035】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類
、等が挙げられる。
【実施例
【0036】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
<参考例1>EHF遺伝子の発現抑制によるメラノサイト活性化因子の遺伝子発現への影響
以下の手順で、ケラチノサイトにおけるEHF遺伝子の発現をsiRNAで阻害することにより、種々のメラノサイト活性化因子の発現へのEHF遺伝子の影響を検討した。
正常ヒトケラチノサイト(NHEK, クラボウ社製、Lot. 00702)を24ウェルプレートに播種し(4.0×10 cells/ウェル)、HuMediaKG2(
クラボウ社製)で24時間37℃、5%CO条件下で培養した。
培養後に抗生物質不含のHuMedia KG2培地に交換し(450μL/ウェル)
、siRNA mixを50μL/ウェル添加して、37℃、5%CO条件下にて24
時間培養した。なお、siRNA mixは、Opti-mem 25μLに対してLipofectamine3000 1μLとなるように必要量を混合したものと、Opti-mem 25μLに対してsiRNA(20μM)1.5μLとなるように必要量を混
合したものとを等量ずつ混合し、さらに室温にて5分間静置することにより調製した。siRNA試薬は、Hs_EHF_5_ Flexi Tube siRNA(QIAGEN
社製、Cat No. SI03171077)又はAllstars Negative Control siRNA(N.C. siRNA)(QIAGEN社製、Cat No
. SI0365031)を用いた。
siRNA導入48時間後にQIAshredder (QIAGEN社製)及びRN
easy Mini Kit (QIAGEN社製)を用いて細胞を回収し、QIAcub
e (QIAGEN社製)にてRNAを抽出した。
得られたRNA及に対して、Agilent社製マイクロアレイ(8×60K)を用いて一色法にてマイクロアレイ解析を実施し、N.C. siRNAを導入したケラチノサ
イトをコントロールとした場合のEHF siRNAを導入したケラチノサイトにおける
各種遺伝子の発現変動を評価した。
【0038】
表1に、N.C. siRNAを導入したケラチノサイトにおける遺伝子発現量を10
0%とした場合の、EHF siRNAを導入したケラチノサイトにおける各種遺伝子の
発現量を示す。
EHF遺伝子の遺伝子発現を抑制したケラチノサイトにおいて、メラノサイト活性化因子の遺伝子発現促進が認められた。
【0039】
【表1】
【0040】
<参考例2>EHF遺伝子の発現抑制によるメラニン産生量への影響
以下の手順で、ケラチノサイトにおけるEHF遺伝子の発現をsiRNAで阻害することにより、メラノサイトにおけるメラニン産生量への影響を検討した。
(ケラチノサイトの培養)
正常ヒトケラチノサイト(NHEK, クラボウ社製、Lot. 00702)を24ウ
ェルプレートに播種(4.0×10 cells/ウェル)し、HuMediaKG2
(クラボウ社製)で24時間37℃、5%CO条件下で培養した。
培養後に、評価培地(HuMediaKG2からHC、hEGF、BPE、抗生物質、フェノールレッドを除いたもの)に置換し(900 μL/ウェル)、siRNA mix
を添加した(100μL/ウェル)。なお、siRNA mixは、Opti-mem 50μLに対してLipofectamine3000 2μLとなるように必要量を混合
したものと、Opti-mem 50μLに対してsiRNA(20μM)3μLとなる
ように必要量を混合したものとを等量ずつ混合し、さらに室温にて5分間静置することにより調製した。siRNA試薬は、Hs_EHF_5_ Flexi Tube siRN
A(QIAGEN社製、Cat No. SI03171077)又はAllstars Negative Control siRNA(N.C. siRNA)(QIAGEN
社製、Cat No. SI0365031)を用いた。
48時間培養後、回収した培養上清に対して遠心分離(1,000 rpm, 3 mi
n, 25 ℃)を行い、上清を回収した。
【0041】
(メラノサイトの培養)
ヒト正常メラノサイト細胞(NHEM, ライフテクノロジーズ社製、Lot. 122
3150)を24ウェルプレートに播種(8.0×10 cells/ウェル)し、24時間37℃、5%CO条件下で培養した。なお、培地は、Medium254(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製)にHMGS(Thermo Fish
er SCIENTIFIC社製)を添加したものを用いた。
培養後に、メラノサイト細胞をPBSにて洗浄し、前述の正常ヒトケラチノサイトの培養上清を800μL/ウェルずつ添加し、2-[2-14C]チオウラシルを1.0 μ
Ci/ウェルずつ添加した。
約48時間37℃、5%CO条件下にて培養した後、WST-8試薬を40 μL添
加し、2時間培養後、プレートリーダーで450nm及び650nmの吸光度を測定し、
該測定値の差(Abs.450-Abs.650)を細胞数として%/コントロールを算
出した。
培地を除去し、メラノサイト細胞をPBSで洗浄した後、各ウェルに100%トリクロロ酢酸を120μL/ウェルずつ添加して細胞を溶解した。各ウェルに500 μLの氷
冷水を添加し、1.5 mLチューブに移した。さらに各ウェルに500 μLの氷冷水を添加し、ウェルを洗浄後、この溶液も前記1.5 mLチューブに移した。前記1.5 mLチューブを冷蔵庫にて30分以上静置後、遠心分離(15,000 rpm, 5 mi
n, 4 ℃)を行い、上清を除去した。各1.5 mLチューブに10%トリクロロ酢酸
溶液を1mL添加後、遠心分離(15,000 rpm, 5 min, 4 ℃)し、上清
を除去した。各1.5 mLチューブに液体シンチレーションカクテル1mLを添加し、
攪拌後、放射活性を測定し、メラニン産生量として%/コントロールを算出した。さらに、算出した細胞数値およびメラニン産生量値を用い、細胞当りのメラニン量(=メラニン産生量/細胞数)を算出した。
【0042】
図1に、N.C. siRNAを導入したケラチノサイトの培養上清を添加したメラノ
サイトにおける細胞当りのメラニン産生量をコントロール(100%)としたときの、EHF siRNAを導入したケラチノサイトの培養上清を添加したメラノサイトにおける
細胞当りのメラニン産生量を示す。
EHF遺伝子の発現を抑制したケラチノサイトにおいて、メラノサイト活性化因子の発現が促進されたため、メラノサイトにおけるメラニン産生の促進が認められた。
【0043】
<実施例1>培養正常ヒトケラチノサイトを用いたEHF遺伝子のmRNA発現量を指標とするスクリーニング
以下の手順で、ケラチノサイトにおけるEHF遺伝子のmRNA発現量を指標として色素沈着抑制剤のスクリーニングを行った。
正常ヒトケラチノサイト(NHEK, クラボウ社製、Lot. 00702)を24ウ
ェルプレートに播種(4.0×10 cells/ウェル)し、HuMediaKG2
(クラボウ社製)で24時間37℃、5%CO条件下で培養した。
培養後に、評価培地(HuMediaKG2からHC、hEGF、BPE、抗生物質、フェノールレッドを除いたもの)に置換した(900 μL/ウェル)。
さらに、各ウェルに、被験物質を最終濃度1.0又は0質量%になるように添加し、24時間37℃、5%CO条件下で培養した。
培養後、QIAshredder(QIAGEN社製)及びRNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて細胞を回収し、QIAcube(QIAGEN社製)を用いてRNAを抽出した。
SuperScript VILO cDNA Synthesis Kit (Ther
mo Fisher SCIENTIFIC社製)を用いて合成したcDNAを用いて、リアルタイムPCRにてEHF遺伝子の発現量を解析した。
【0044】
表2に、ケラチノサイトにおけるEHF遺伝子のmRNA発現量を、被験物質非添加(コントロール)のケラチノサイトにおけるEHF遺伝子のmRNA発現量を100%とした場合の相対値で示した。
酵母エキス及びチンピエキスにおいて、コントロールの110%以上のEHF遺伝子の発現が認められ、これらのエキスがメラニン産生抑制作用を有することが示唆された。
【0045】
【表2】
【0046】
<実施例2>メラニン産生抑制作用評価
以下の手順で、EHF遺伝子の発現を亢進させる物質の、メラニン産生抑制効果を評価した。
正常ヒトケラチノサイト(2.0×10 cells/ウェル)及び正常ヒトメラノ
サイト(1.0×10 cells/ウェル)をRI評価用24ウェルプレート(Vi
siPlate-24TC、WallAC社製)の同一ウェルに播種した。培地は、HuMediaKG2:Medium254+HMGS=2:1で混合したものを1.5 m
L/ウェル使用した。24時間37℃、5%CO条件下で培養後、評価培地に置換した(900 μL/ウェル)。
さらに、各ウェルに、実施例1と同じ被験物質を最終濃度1.0又は0質量%になるように添加し、24時間37℃、5%CO条件下で培養した。
培養後に、評価培地に置換(1.0 mL/ウェル)し、2-[2-14C]チオウラ
シルを1.0 μCi/ウェルずつ添加した。
約48時間37℃にて培養した後、WST-8試薬を50 μL添加し、2時間培養後
、プレートリーダーで450nm及び650nmの吸光度を測定し、該測定値の差(Abs.450-Abs.650)を細胞数として%/コントロールを算出した。
培地を除去し、細胞をPBSにて洗浄した後、各ウェルに液体シンチレーションカクテル1mLを添加し、15分間攪拌後、放射活性を測定し、メラニン産生量として%/コントロールを算出した。さらに、算出した細胞数値およびメラニン産生量値を用い、細胞当りのメラニン量(=メラニン産生量/細胞数)を算出した。
【0047】
図2に、被験物質非添加(コントロール)の場合を100%としたときの細胞当りのメラニン産生量を示す。
酵母エキス及びチンピエキスにおいて、有意なメラニン産生抑制作用が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、複数のメラノサイト活性化因子の制御因子の活性を指標とした、新たな色素沈着抑制剤のスクリーニング方法が提供される。これにより、美白用化粧料等の設計・製造に有用となり得る素材の探索が可能になるので、産業上有用である。
図1
図2