(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】吸収性補助パッド
(51)【国際特許分類】
A61F 13/47 20060101AFI20220127BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20220127BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20220127BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
A61F13/47 100
A61F13/475 111
A61F13/53 300
A61F13/56 110
(21)【出願番号】P 2017207301
(22)【出願日】2017-10-26
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-055744(JP,A)
【文献】特開2006-218055(JP,A)
【文献】特開2009-219685(JP,A)
【文献】特開2001-096654(JP,A)
【文献】特開平11-156188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 ー 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有し、吸収性物品の端部に配置される吸収性補助パッドであって、
前記吸収性補助パッドは、前記吸収性補助パッドの幅方向の一方の側端部にのみ、撥水性又は液不透過性を有する二重のシートから構成される立体ギャザーを有し、
前記トップシートは、立体ギャザーを備えていない幅方向の側端部において、前記吸収体の一部及び前記バックシートの一部を巻き込むように、折り返された形状を有し、
前記バックシートは、前記立体ギャザーを備えている幅方向の側端部であって、前記立体ギャザーより幅方向内側において、前記吸収体の一部を前記トップシートの衣類側の位置で巻き込むように、折り返された形状を有し、
前記吸収体は、高吸収性シートと、該高吸収性シートの全体を包む親水性シートと、を有し、
前記高吸収性シートは、片側表面が起毛した基体不織布と、該基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を有し、
前記吸収体の、ハンディ圧縮試験機KES-G5による、圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm
2以上8.0gf・cm/cm
2以下であり、圧縮回復性RCが35%以上65%以下であり、
前記立体ギャザーの前記トップシートの身体側表面からの高さは、前記吸収性補助パッドの幅方向の寸法に対して、20%以上であり、
前記バックシートの衣類側表面には、吸収性物品との固定手段が形成されている、吸収性補助パッド。
【請求項2】
長手方向及び幅方向の寸法が、50mm以上300mm以下である、請求項1に記載の吸収性補助パッド。
【請求項3】
前記基体不織布がエアスルー不織布であり、前記基体不織布の坪量が、20g/m
2以上200g/m
2以下であり、前記基体不織布の厚さは0.3mm以上11.0mm以下であり、基体不織布を構成する繊維の太さが、1.6dtex以上14dtex以下である、請求項1又は2に記載の吸収性補助パッド。
【請求項4】
前記高吸収性ポリマーの坪量が200g/m
2以上1200g/m
2以下である、請求項1から3のいずれかに記載の吸収性補助パッド。
【請求項5】
前記親水性シートは、坪量が7g/m
2以上45g/m
2以下の親水性不織布である、請求項1から4のいずれかに記載の吸収性補助パッド。
【請求項6】
前記高吸収性ポリマーが、ホットメルト接着剤により、前記基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持されており、該ホットメルト接着剤の含有量が10g/m
2以下である、請求項1から5のいずれかに記載の吸収性補助パッド。
【請求項7】
前記立体ギャザーの前記トップシートの身体側表面からの高さが、15mm以上80mm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の吸収性補助パッド。
【請求項8】
前記立体ギャザーは、自由端側及び基端側に少なくとも一本ずつの伸縮弾性部材を有する、請求項1から7のいずれかに記載の吸収性補助パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用感が良好で、軟便の漏れを適切に防止することができる、低コストの吸収性補助パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に大人用紙おむつには、テープ止めタイプ、パンツタイプ等があり、これらの紙おむつは使用者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
ところで、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつ等の吸収性物品は、それ自体を単独で使用する場合と、その内側に尿取りパッドを併用する場合があるが、現在は、尿取りパッドと併用し、尿取りパッドを、トップシート上に重ねて使用する場合がほとんどである。これは、紙おむつ1枚当たりのコストが高いためで、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつに比して安価な尿取りパッドで排泄物を吸収して保持した後、尿取りパッドのみを交換することで、排泄後においても、よりコストの高いテープ止めタイプの紙おむつやパンツタイプの紙おむつを交換せずに済み、経済的に低いコストで吸収性物品を使用できるためである。
【0004】
ここで、尿取りパッドは、尿量に応じて様々なサイズや形状があり、排泄された尿を確実に吸収して漏れを防止することができる。しかしながら、軟便、水様便、下痢便(以下、軟便と称する)に対しては、吸収性が不十分であり、軟便が尿取りパッド及び吸収性物品の外部に漏れることがあったため、軟便の漏れを防止することを目的とした尿取りパッドについても検討がなされている。
【0005】
軟便の漏れを防止することを目的とした尿取りパッドとしては、例えば、特許文献1に、トップシート、バックシート、吸収体、立体ギャザーと、を備えたパッドタイプ使い捨ておむつにおいて、少なくとも股間部の前端よりも後側の範囲内における、立体ギャザーの突出部位より側方に延在する部分に、衣類側表面から見てカップ状に窪んだカップ部が設けられていることを特徴とするパッドタイプ使い捨ておむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の尿取りパッドにおいても、大量の軟便が排泄された場合には、尿取りパッドの漏れやすい箇所からテープ止めタイプの紙おむつ等の吸収性物品にまで軟便が漏れ、さらに、吸収性物品から軟便が衣服や寝具に漏れてしまう可能性があった。また、尿取りパッドは、テープ止めタイプの紙おむつ等の吸収性物品に補助的に用いられるものであるが、広範囲で軟便の漏れを防止しようとするが故に、必然的にサイズが大きくなることから、原材料コストが高くなり、使用者としては、コスト的に十分に満足できるものではなかったという問題もあった。
【0008】
また、吸収体として、フラッフパルプと高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、SAPとも称される)を併用した従来の一般的な吸収体を用いた場合、多量の軟便の漏れを防止するために、必然的に吸収体が厚くなりやすい傾向にあり、着用感においても十分に満足できるものではなかった。また、薄型化を目的として、基体となる不織布と高吸収性ポリマーからなる、いわゆる高吸収性シート(SAPシートとも称される)を吸収体として用いた場合にも、高吸収性ポリマーが高密度に存在することにより、肌触りが硬くなり着用感が低下するという問題があった。
【0009】
したがって、本発明は以上の点の課題に鑑みてなされたものであり、着用感が良好で、軟便の漏れを適切に防止することができる、低コストの吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、幅方向の一方の側端部にのみ、所定の立体ギャザーを有し、また、トップシート及びバックシートが所定の折り返し形状を有し、さらに、吸収体が所定の高吸収性シートを有する、吸収性補助パッドによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有し、吸収性物品の端部に配置される吸収性補助パッドであって、前記吸収性補助パッドは、前記吸収性補助パッドの幅方向の一方の側端部にのみ、撥水性又は液不透過性を有する二重のシートから構成される立体ギャザーを有し、前記トップシートは、立体ギャザーを備えていない幅方向の側端部において、前記吸収体の一部及び前記バックシートの一部を巻き込むように、折り返された形状を有し、前記バックシートは、前記立体ギャザーを備えている幅方向の側端部であって、前記立体ギャザーより幅方向内側において、前記吸収体の一部を前記トップシートの衣類側の位置で巻き込むように、折り返された形状を有し、前記吸収体は、高吸収性シートと、該高吸収性シートの全体を包む親水性シートと、を有し、前記高吸収性シートは、片側表面が起毛した基体不織布と、該基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を有し、前記吸収体の、ハンディ圧縮試験機KES-G5による、圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm2以上8.0gf・cm/cm2以下であり、圧縮回復性RCが35%以上65%以下であり、前記立体ギャザーの前記トップシートの身体側表面からの高さは、前記吸収性補助パッドの幅方向の寸法に対して、20%以上であり、前記バックシートの衣類側表面には、吸収性物品との固定手段が形成されている、吸収性補助パッドである。
【0012】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性補助パッドであって、長手方向及び幅方向の寸法が、50mm以上300mm以下であることを特徴とするものである。
【0013】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性補助パッドであって、前記基体不織布がエアスルー不織布であり、前記基体不織布の坪量が、20g/m2以上200g/m2以下であり、前記基体不織布の厚さは0.3mm以上11.0mm以下であり、基体不織布を構成する繊維の太さが、1.6dtex以上14dtex以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性補助パッドであって、前記高吸収性ポリマーの坪量が200g/m2以上1200g/m2以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性補助パッドであって、前記親水性シートは、坪量が7g/m2以上45g/m2以下の親水性不織布であることを特徴とするものである。
【0016】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性補助パッドであって、前記高吸収性ポリマーが、ホットメルト接着剤により、前記基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持されており、該ホットメルト接着剤の含有量が10g/m2以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載の吸収性補助パッドであって、前記立体ギャザーの前記トップシートの身体側表面からの高さが、15mm以上80mm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(8)本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載の吸収性補助パッドであって、前記立体ギャザーは、自由端側及び基端側に少なくとも一本ずつの伸縮弾性部材を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吸収性補助パッドは、吸収性補助パッドの幅方向の一方の側端部にのみ、撥水性又は液不透過性を有する二重のシートから構成される所定の高さの立体ギャザーを有する。このため、吸収性補助パッドを、テープ止めタイプの紙おむつ等の吸収性物品の端部に、立体ギャザーが吸収性物品の外周方向となるようにして、配置することにより、吸収性補助パッドの吸収性を維持しつつ、軟便の漏れを効果的に防止することができる。また、トップシートは、立体ギャザーを備えていない幅方向の側端部において、吸収体の一部及びバックシートの一部を巻き込むように、折り返された形状を有している。このため、吸収性物品のトップシート上から移行してきた軟便を、吸収性補助パッドの身体側表面だけでなく、立体ギャザーを備えていない側端部からも吸収することができ、より効率的に軟便を吸収することができる。さらに、バックシートは、立体ギャザーを備えている幅方向の側端部であって、立体ギャザーより幅方向内側において、吸収体の一部をトップシートの衣類側の位置で巻き込むように、折り返された形状を有している。このため、吸収体に移行した軟便が吸収性補助パッド及び吸収性物品の外側に漏れることを効果的に防止することができる。
【0020】
また、吸収性補助パッドの吸収体に用いる高吸収性シートには、片側表面が起毛した基体不織布が用いられている。このため、不織布本来の嵩高さに加えて、適度な厚みとやわらかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、着用時のフィット感を向上させることができる。また、基体不織布の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマーが分散して固着担持されることにより、高吸収性ポリマー周辺の基体不織布に軟便が適度に拡散又は保持され、吸収性能も向上させることができる。また、吸収体がフラッフパルプを含まないため、薄型にすることができる。このため、吸収性及び着用感を向上させることができる。
【0021】
また、本発明の吸収性補助パッドは、吸収性物品の漏れやすい部分に対して局所的に用いることができるため、従来の吸収性補助パッドと比較して、サイズを小さくすることができる。このため、原材料コストを抑えることができ、低コストの吸収性補助パッドを提供することができる。以上により、本発明によれば、着用感が良好で、軟便の漏れを適切に防止することができる、低コストの吸収性補助パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】本発明の吸収性補助パッドの使用例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明の実施形態の説明の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
【0024】
本明細書の説明において、吸収性補助パッド1の着用時とは、吸収性補助パッド1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。吸収性補助パッド1の長手方向とは、後述する立体ギャザー50に平行な方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性補助パッド1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、身体側表面とは、吸収体40等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、吸収体40等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。
【0025】
<吸収性補助パッド>
図1は本発明の吸収性補助パッド1の平面図、
図2は
図1におけるX
1-X
1断面図、
図3は本発明の吸収性補助パッド1の使用例を示す図面、である。吸収性補助パッド1は、
図1及び
図2に示すように、液透過性のトップシート20と、液不透過性のバックシート30と、トップシート20及びバックシート30の間に配置された吸収体40と、吸収性補助パッド1の幅方向の一方の側端部にのみ、後述する立体ギャザー50と、を有し、テープ止めタイプの紙おむつ等の吸収性物品100の端部に配置されるものである。吸収性補助パッド1は、幼児又は成人用を問わず、吸収性物品100と併用して用いることに適している。
図3に示すように、吸収性補助パッド1を、吸収性物品100の端部に、立体ギャザー50が吸収性物品100の外周方向となるようにして、配置することにより、軟便の漏れを効果的に防止することができる。
【0026】
吸収性補助パッド1の形状は、特に限定されないが、吸収性補助パッド1は、吸収性物品100の端部に配置し、軟便の漏れを効果的に防止するものであるから、略長方形又は略正方形であることが好ましい。また、吸収性補助パッド1の長手方向及び幅方向の寸法は、50mm以上300mm以下であることが好ましく、100mm以上250mm以下であることがより好ましい。吸収性補助パッド1の長手方向及び幅方向の寸法を上記の範囲にすることにより、吸収性補助パッド1を、吸収性補助パッド1を固定させる吸収性物品100のタイプや大きさに適合させることができ、必要に応じて低コスト化も図ることができる。
【0027】
[トップシート]
トップシート20は、吸収体40に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体40を挟んで、バックシート30と対向して配置されている。トップシート20は、肌と当接するシートとなることから、やわらかな感触で、肌に刺激を与えないような基材、例えば、エアスルー不織布を代表とするサーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、又はこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。トップシート20は、単層であっても、複数層積層していてもよく、ドライタッチ性を付与するために多数の透孔が形成されていてもよい。
【0028】
不織布としては、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維やレーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、サーマルボンド法のほか、スパンレース法やスパンボンド法等の公知の加工法によって得られたものも用いることができる。トップシート20の坪量は、加工性及び強度の点から、15g/m2以上200g/m2以下であることが好ましい。トップシート20には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。トップシート20の形状は、特に限定されないが、吸収性補助パッド1の形状に合わせて、略長方形又は略正方形であることが好ましい。
【0029】
本発明において、トップシート20は、立体ギャザー50を備えていない幅方向の側端部において、吸収体40の一部及びバックシート30の一部を巻き込むように、折り返された形状を有している。トップシート20が、このような折り返し形状を有することにより、吸収性物品100のトップシート上から移行してきた軟便を、吸収性補助パッド1の身体側表面だけでなく、立体ギャザー50を備えていない側端部からも吸収することができ、より効率的に軟便を吸収することができる。
【0030】
[バックシート]
バックシート30は、吸収性補助パッド1の外部に体液が漏れないよう、液不透過性を有し、遮水性を有するシート材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。このような特性を有するバックシート30の材料としては、例えば、ポリエチレンシートやポリエチレンラミネート不織布等の厚みの薄いプラスチックシートを挙げることができる。バックシート30の形状は、特に限定されないが、吸収性補助パッド1の形状に合わせて、略長方形又は略正方形であることが好ましい。
【0031】
本発明において、バックシート30は、立体ギャザー50を備えている幅方向の側端部であって、立体ギャザー50より幅方向内側において、吸収体40の一部をトップシート20の衣類側の位置で巻き込むように、折り返された形状を有している。バックシート30がこのような折り返し形状を有することにより、吸収体40に移行した軟便が吸収性補助パッド1及び吸収性物品100の外側に漏れることを効果的に防止することができる。
【0032】
(固定手段)
吸収性補助パッド1は、バックシート30の衣類側表面に、吸収性補助パッド1の装着時に、吸収性物品100と固定するための固定手段31が形成されている。固定手段31の基材としては、特に限定されないが、メカニカルフックテープ、粘着テープ、粘着剤を用いることができる。また、固定手段31を保護するための剥離シートを有していてもよく、この剥離シートは、吸収性補助パッド1の包装シートと一体となっていてもよい。
【0033】
[吸収体]
吸収体40は、
図2に示すように、高吸収性シート410と、高吸収性シート410の全体を包む親水性シート420と、を有する。なお、吸収体40は、フラッフパルプを含まないため、吸収性補助パッド1の厚さが薄く、着用感を向上させることができる。なお、着用感を損なわないように、吸収体40の厚みは、1.0mm以上12.0mm以下であることが好ましく、4.0mm以上9.0mm以下であることがより好ましい。
【0034】
(高吸収性シート)
吸収体40に用いる高吸収性シート410は、
図2に示すように、片側表面が起毛した基体不織布411と、基体不織布411の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマー412と、を有する。基体不織布411の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー412が分散して固着担持されることにより、高吸収性ポリマー412周辺の基体不織布411に軟便が適度に拡散又は保持されることにより吸収性能が向上し、フラッフパルプを有さなくても十分な吸収性能を確保することができる。
【0035】
(基体不織布)
図2に示すように、基体不織布411の片側表面は起毛した状態である。そのため、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート410に適度な厚みとやわらかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、着用時のフィット感を向上させることができる。また、基体不織布411を上記のように起毛させることにより、基体不織布411の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー412を分散させて固着担持させることができる。基体不織布411の片側表面を起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチが挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃により毛羽立たせる方法を用いることが好ましい。なお、基体不織布411を起毛させる面は、身体側及び衣類側のいずれでもよいが、より効果的に軟便を吸収できるため、身体側を起毛させることが好ましい。
【0036】
基体不織布411としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布を挙げることができる。これらの不織布のうち、嵩高さの得やすいエアスルー不織布を用いることが好ましい。
【0037】
基体不織布411の厚さは、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以上9.0mm以下であることがより好ましく、4.0mm以上9.0mm以下であることが更に好ましい。また、基体不織布411の坪量は、20g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、30g/m2以上160g/m2以下であることがより好ましい。
【0038】
さらに、基体不織布411を構成する繊維の太さは、1.6dtex以上14dtex以下であることが好ましく、1.8dtex以上9.0dtex以下であることがより好ましく、2.0dtex以上6.0dtex以下であることが更に好ましい。このように上記の範囲で基体不織布411を構成する繊維の太さを調整することにより、基体不織布411の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー412を分散させて固着担持しやすくすることができる。
【0039】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー412としては、軟便を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。また、高吸収性ポリマー412の坪量は、各種の吸収性物品に要求される吸収性能を確保するために、200g/m2以上1200g/m2以下とすることが好ましい。また、吸収性能、吸収後の肌触り及び着用者の動きやすさをより向上させる観点から、高吸収性ポリマー412の坪量は、300g/m2以上900g/m2以下とすることがより好ましい。
【0040】
また、粉体としての流動性が悪い微粉末を避けることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、高吸収性シート410が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減する観点から、高吸収性ポリマー412の中位粒子径は、50μm以上600μm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0041】
高吸収性ポリマー412は、ホットメルト接着剤により、基体不織布411の起毛した部分の繊維間に固着担持されていることが好ましく、基体不織布411の坪量が比較的低い場合に、高吸収性ポリマー412の固着担持を補強するために、ホットメルト接着剤は特に有効に機能する。なお、高吸収性ポリマー412の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないように、ホットメルト接着剤の含有量は10g/m2以下であることが好ましい。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下の、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体やスチレン-イソプレン-スチレン系共重合体など合成ゴム系、又は、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系のホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法など公知の方法が利用できる。
【0042】
(親水性シート)
吸収体40は、
図2に示すように、高吸収性シート410の全体を包む親水性シート420を有する。高吸収性シート410の全体を親水性シート420で包むことにより、高吸収性ポリマー412が吸収体40の外へ漏れることを防止することができ、着用時の肌触りも向上させることができる。親水性シート420としては、ティシュ、吸収紙、スパンボンド不織布やエアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができ、入手性やコストの観点から親水性不織布を用いることが好ましく、親水性シート420の坪量は、7g/m
2以上45g/m
2以下とすることが好ましく、8g/m
2以上15/m
2以下とすることがより好ましい。なお、高吸収性シート410の全体を親水性シート420で包む際には、高吸収性シート410と親水性シート420とを、ホットメルト接着剤や熱エンボス加工により固定することが好ましい。
【0043】
(圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RC)
吸収体40の、ハンディ圧縮試験機KES-G5(カトーテック株式会社製)による、圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm2以上8.0gf・cm/cm2以下であり、2.4gf・cm/cm2以上6.6gf・cm/cm2以下であることが好ましい。吸収体40の圧縮エネルギーWCを上記の範囲に調整することにより、良好なクッション性を得ることができる。なお、圧縮エネルギーWCは、数値が高いほど圧縮されやすいことを示す。
【0044】
また、吸収体40の、ハンディ圧縮試験機KES-G5による、圧縮回復性RCが35%以上65%以下であり、40%以上58%以下であることが好ましい。吸収体40の圧縮回復性RCを上記の範囲に調整することにより、適度な弾力性を持ち着用感を向上させることができる。なお、圧縮回復性RC(%)は、圧縮に対する弾性を示すもので、数値が高いほど圧縮に対する反発性を有することを意味する。
【0045】
吸収体40の、ハンディ圧縮試験機KES-G5による、圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCの測定方法は、以下のとおりである。まず、試験台に試料(10cm×10cm)を置き、面積2cm2の円形平面をもつ銅製の加圧子を試料上方から、速度0.01cm/秒、最大圧縮応力20gf/cm2の条件で試料に押し込み圧縮する。測定データをもとに数値処理により圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCを算出した。
【0046】
[立体ギャザー]
吸収性補助パッド1は、吸収性補助パッド1の幅方向の一方の側端部にのみ、撥水性又は液不透過性を有する二重のシートから構成される立体ギャザー50を有する。
図3に示すように、吸収性補助パッド1を吸収性物品100の端部に、立体ギャザー50が吸収性物品100の外周方向となるようにして、配置することにより、吸収性補助パッド1の吸収性を維持しつつ、軟便の漏れを効果的に防止することができる。
【0047】
立体ギャザー50としては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性のシート、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポリエチレンフィルムを用いることができ、本発明においては、選択した一種又は二種のシートを二重に接合したものが使用される。また、立体ギャザー50の坪量は、加工性及び強度の点から、15g/m
2以上100g/m
2以下であることが好ましい。このように形成された二重のシートから構成される立体ギャザー50は、
図2に示すように配置される。具体的には、立体ギャザー50の外側のシートはバックシート30に固定され、立体ギャザー50の内側のシートはトップシート20に固定され、トップシート20及びバックシート30に固定されない部分は自由端となるように、立体ギャザー50は、吸収性補助パッド1に配置される。
【0048】
本発明において、立体ギャザー50のトップシート20の身体側表面からの高さは、吸収性補助パッド1の幅方向の寸法に対して、20%以上であり、この範囲を満たすことを前提として、15mm以上80mm以下であることが好ましい。立体ギャザー50のトップシート20からの高さが上記の条件を満たすことで、吸収性補助パッド1からの軟便の漏れを効果的に防止することができる。
【0049】
(伸縮弾性部材)
また、立体ギャザー50は、自由端側及び基端側に少なくとも一本ずつの伸縮弾性部材51を長手方向に沿って有することが好ましい。伸縮弾性部材51を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー50が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなり、フィット性が向上することで、軟便の漏れを効果的に防止することができる。伸縮弾性部材51としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用される。
【0050】
なお、吸収性補助パッド1の長手方向両端部域においては、立体ギャザー50は、その自由端がトップシート20上に固定されていることが好ましく、このため、立体ギャザー50の内側側面が、トップシート20の身体側表面と接合していることが好ましい。これにより、立体ギャザー50は、長手方向両端部部域を除く部位においてのみ起立することとなる。
【符号の説明】
【0051】
1 吸収性補助パッド
20 トップシート
30 バックシート
31 固定手段
40 吸収体
410 高吸収性シート
411 基体不織布
412 高吸収性ポリマー
420 親水性シート
50 立体ギャザー
51 伸縮弾性部材
100 吸収性物品