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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
F28D20/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018094926
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019199993
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(72)【発明者】
【氏名】平田 一弘
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219234(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051951(WO,A1)
【文献】特開2018-105602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱材に対して熱を蓄熱する蓄熱装置であって、
蓄熱材が収納される蓄熱材容器と、
前記蓄熱材容器に対して熱流体を供給するための供給部と、
前記蓄熱材容器から熱流体を排出するための排出部と、
前記排出部と接続され、排出された熱流体によって前記蓄熱材容器を保温するための保温部と、を備えることを特徴とする、蓄熱装置。
【請求項2】
前記保温部は、前記蓄熱材容器の周囲を覆うジャケット状の部材であることを特徴とする、請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記保温部は、前記蓄熱材容器の周囲を囲む流路であることを特徴とする、請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項4】
前記保温部の温度は、前記蓄熱材の温度よりも低く、蓄熱装置の外部環境の温度よりも高く維持されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄熱装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱装置に関する。特に、化学反応を利用して蓄熱を行う化学蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場やごみ焼却場等においては、膨大な量の廃熱が発生するため、省エネルギー化や未利用エネルギーの有効活用の観点から、これらの廃熱を蓄熱して利用する蓄熱システムに関する研究開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、外部からの熱エネルギーを貯蔵する蓄熱材に蓄熱し、蓄熱した蓄熱材を保管又は熱エネルギーが必要な場所に移送して利用する化学蓄熱反応器が開示されている。特許文献1には、化学蓄熱の具体例として、400度を超える高温の廃熱を効率よく蓄熱するために、化学蓄熱材として水酸化カルシウム系蓄熱材を用いた系が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-118315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような蓄熱装置では、熱源から熱流体を介して蓄熱材に熱移動させ、蓄熱操作後、そのまま装置外へと熱放出される。しかしながら、蓄熱材を保持する容器から大気等への外部環境(常温部分)への熱放散による熱損失が起こる。特に、高温廃熱を蓄熱する場合、大気等への外部環境との温度差が大きいことから、熱放出による熱損失の影響が大きくなる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、蓄熱装置から外部環境への放熱を抑制し、より蓄熱効率を向上させることが可能な蓄熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題について鋭意検討した結果、蓄熱装置において、蓄熱操作を終えた熱流体を利用する保温部を設けることにより、蓄熱装置の蓄熱効率を向上させることができることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の蓄熱装置である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の蓄熱装置は、蓄熱材に対して熱を蓄熱する蓄熱装置であって、蓄熱材が収納される蓄熱材容器と、蓄熱材容器に対して熱流体を供給するための供給部と、蓄熱材容器から熱流体を排出するための排出部と、排出部と接続され、排出された熱流体によって蓄熱材容器を保温するための保温部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
この蓄熱装置によれば、蓄熱材を収納した蓄熱材容器の外側に保温部を設け、保温部に熱交換後の熱流体を導入することで、追加の熱源を用いることなく、熱交換後の熱流体が有する熱エネルギーを用いて保温部の温度を上げることが可能となる。これにより、蓄熱材容器と大気等の外部環境の間に高温の層を設けることで、蓄熱材容器からの熱損失を大幅に抑制することが可能となる。
【0010】
更に、本発明の蓄熱装置の一実施態様としては、保温部は、蓄熱材容器の周囲を覆うジャケット状の部材であることを特徴とするものである。
この特徴によれば、比較的簡易な構造で蓄熱材容器からの熱損失を大幅に抑制することが可能となる。
【0011】
更に、本発明の蓄熱装置の一実施態様としては、保温部は、蓄熱材容器の周囲を囲む流路であることを特徴とするものである。
この特徴によれば、熱流体を連続的に蓄熱材容器の周囲に導入することで、蓄熱材容器の温度維持効果を向上させ、蓄熱材容器からの熱損失を大幅に抑制することが可能となる。
【0012】
更に、本発明の蓄熱装置の一実施態様としては、保温部の温度は、蓄熱材の温度よりも低く、蓄熱装置の外部環境の温度よりも高く維持されることを特徴とするものである。
この特徴によれば、熱流体による蓄熱材への蓄熱効率を維持し、かつ蓄熱材の温度低下を抑制することができる。また、特に高温の蓄熱操作を行う際に、蓄熱材を収納する蓄熱材容器と保温部との温度差は、蓄熱材容器と大気等の外部環境との間の温度差よりもかなり小さくなることから、蓄熱材容器の温度低下を抑え、蓄熱材の熱損失を大幅に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、蓄熱装置から外部環境への放熱を抑制し、より蓄熱効率を向上させることが可能な蓄熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一の実施態様の蓄熱装置の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の第二の実施態様の蓄熱装置の構造を示す概略説明図である。
図3】本発明の第三の実施態様の蓄熱装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る好適な実施態様について詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する蓄熱装置については、本発明に係る蓄熱装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の蓄熱装置は、蓄熱材に対して熱を蓄熱する蓄熱装置に係るものである。このような蓄熱装置における蓄熱技術としては、物質の状態変化を伴わない温度差を利用した顕熱蓄熱、固体・液体・気体といった物質の相変化を利用した潜熱蓄熱、化学反応を利用した化学蓄熱が挙げられる。特に、物質の化学反応を利用した化学蓄熱は、顕熱蓄熱や潜熱蓄熱に比べて蓄熱密度が非常に大きく、化学反応前後の物質が安定であれば放熱ロスもほとんどなく、長期間の蓄熱において熱損失が生じないことが知られている。
なお、本実施態様における蓄熱装置としては化学蓄熱に係るものを例示しているが、これに限定されるものではなく、顕熱蓄熱や潜熱蓄熱に係るものであってもよい。
【0017】
[蓄熱装置]
本発明の蓄熱装置は、蓄熱時には、蓄熱材を加熱して蓄熱生成物と生成流体に分離し、放熱時には、前記蓄熱生成物と反応流体を反応させて前記蓄熱材を生成する化学蓄熱装置であり、工場やごみ焼却場等から発生する廃熱を蓄熱材に貯蔵して、熱を必要とする熱需要地まで輸送が可能な装置である。
【0018】
本発明の蓄熱装置の構成としては、蓄熱材と、蓄熱材が収容される蓄熱材容器と、前記蓄熱材容器に対して熱流体を供給するための供給部と、前記蓄熱材容器から熱流体を排出するための排出部と、前記排出部と接続され、排出された熱流体によって前記蓄熱材容器を保温するための保温部を備えている。
【0019】
〔第一の実施態様〕
図1は、本発明の第一の実施態様の蓄熱装置1aの構造を示す概略説明図である。この蓄熱装置1aは、蓄熱材4と、蓄熱材4を保持する保持部材5と、蓄熱材4及び保持部材5を収納する蓄熱材容器2を備え、蓄熱材容器2の内部には蓄熱材4と熱交換を行う外部からの熱流体Fが通過する熱交換部3が設けられている。また、蓄熱材容器2には、熱流体Fを外部から供給する供給部7として流体供給口71が設けられ、熱交換後の熱流体F′を外部に排出する排出部8として流体排出口81が設けられている。更に、蓄熱材容器2の外側には、排出部8から排出された熱交換後の熱流体F′によって蓄熱材容器2を保温する保温部6が配設されている。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0020】
(蓄熱材)
蓄熱材4とは、加熱時に蓄熱生成物と生成流体に分離され、また、この逆の反応により熱を放出する化学物質である。例えば、蓄熱生成物と生成流体として、酸化カルシウム(CaO)と水蒸気(HO)、塩化カルシウム(CaCl)と水蒸気(HO)、臭化カルシウム(CaBr)と水蒸気(HO)、ヨウ化カルシウム(CaI)と水蒸気(HO)、酸化マグネシウム(MgO)と水蒸気(HO)、塩化マグネシウム(MgCl)と水蒸気(HO)、塩化亜鉛(ZnCl)と水蒸気(HO)、塩化ストロンチウム(SrCl)とアンモニア(NH)、臭化ストロンチウム(SrBr)とアンモニア(NH)、酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO)、酸化マグネシウム(MgO)と二酸化炭素等(CO)が挙げられる。取り扱いが容易であるという観点から、蓄熱材4は、生成流体及び反応流体として水蒸気を利用するものであることが好ましい。
また、本発明における蓄熱装置は、高温での化学蓄熱時に特に効果を発揮する構成であるため、本発明における蓄熱材4としては、高温での化学蓄熱が可能な蓄熱生成物と生成流体として、酸化カルシウムと水蒸気の組み合わせ(400~500度)や酸化マグネシウムと水蒸気の組み合わせ(300~400度)を用いることが好ましい。
【0021】
本発明における蓄熱材4の構造及び形状については、特に限定するものではなく、粉体、粉体を成形した成形体、または蓄熱材4を多孔質体に担持させたものであってもよい。
【0022】
蓄熱材4を保持する保持部材5の構造は、蓄熱材容器2内で蓄熱材4を保持し、かつ蓄熱材4と熱交換部3との間で熱交換を可能とする構造のものであれば、特に限定されない。図1には、1つの容器内に蓄熱材4を収納した構造を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、蓄熱材4を収納した箱状容器やトレイ状容器を複数積み重ねる構成としてもよい。
また、保持部材5の材質は、高温処理に耐えられるものであれば、特に限定されない。
【0023】
(蓄熱材容器)
蓄熱材容器2は、蓄熱材4を収納するための構成であり、密閉可能な構造物からなる。蓄熱材容器2には、内部に収納された蓄熱材4と外部との熱の伝達を行うための熱流体Fが通過する熱交換部3、該熱交換部3に外部からの熱流体Fを供給するための流体供給口71、熱交換部3から熱交換後の流体F′を排出するための流体排出口81を有する。なお、蓄熱材容器2は、耐圧性を有することが好ましい。これにより、蓄熱材容器2内を減圧し、蓄熱材4から発生する生成流体や蓄熱生成物と反応する反応流体の移動を容易にするとともに、蓄熱材容器2の蓄熱効果を高めることが可能となる。
また、蓄熱材容器2の形状は、特に限定されず、例えば箱状や筒型とすることが挙げられる。
【0024】
熱交換部3は、保持部材5内部に収納された蓄熱材4と外部からの熱流体Fとの熱の伝達を行うことができれば、どのような形状のものでもよく、例えば、保持部材5の内部に蛇行して設置された熱交換チューブや、保持部材5に対する2重円筒型の内筒部などにより構成される。
【0025】
流体供給口71と流体排出口81は、それぞれ蓄熱材容器2に対して異なる面に配置してもよいし、同一面に配置してもよい。例えば、図1に示すように、蓄熱材容器2の中心軸に沿って、蓄熱材容器2の下方部には流体供給口71を設け、蓄熱材容器2の上方部には流体排出口81を設ける構成としてもよい。また、蓄熱材容器2の同一面に流体供給口71と流体排出口81を設ける構成とし、熱流体の供給、排出を1つの面で行うものとしてもよい。
【0026】
また、蓄熱材容器2には、蓄熱時に蓄熱材4から発生した生成流体を大気に放出するための大気開放口9、放熱時に蓄熱生成物と反応する反応流体を供給するための給気口10を備えている。また、図1に示すように、大気開放口9と給気口10は、後述する保温部6を貫通し、大気(外部環境)に連通するものである。なお、第一の実施態様の蓄熱装置1aでは、大気開放口9と給気口10は同一の通気口を使用しているが、別の位置に設けてもよい。
【0027】
大気開放口9は、蓄熱時に開放され、蓄熱材4から発生した生成流体を蓄熱材容器2の外部に排出するための構成であるが、生成流体を凝集して回収する受液槽(不図示)を設ける構成としてもよい。該大気開放口9を有することにより、生成流体は外部に放出されるため、生成流体を凝集して回収する受液槽を設ける必要がなく、また、生成流体を熱供給地から熱需要地に輸送する必要もない。そのため、装置のコンパクト化、輸送コストの低下等の利点がある。
【0028】
給気口10は、放熱時に開放され、反応流体を蓄熱材容器2に供給するための構成であり、放熱時には、反応流体を供給するための供給部(不図示)と連結する。
【0029】
熱流体Fとしては、蓄熱材4に熱を供給することができる温度のものであればよく、気体や液体等の流体が好ましい。更に取り扱い性に優れるという観点から、気体を使用することが特に好ましい。
【0030】
(保温部)
保温部6は、蓄熱材容器2から排出された熱流体F′を用いて蓄熱材容器2を保温するための構成であり、蓄熱材容器2の周囲を覆うように設けられるものである。
図1に示すように、保温部6は、蓄熱材容器2の排出部8と接続し、排出部8から排出される熱流体F′を導入するための空間を有するジャケット状の部材からなる排熱流体導入容器61を備え、熱流体F′を外部に放出する放出口62を備えている。
【0031】
排熱流体導入容器61と排出部8の接続手段は、特に限定されない。例えば、流体排出口81から排熱流体導入容器61内に熱流体F′を直接排出する構成としてもよく、流体排出口81にラインLを設け、排熱流体導入容器61内の任意の位置から熱流体F′が導入されるように構成するものであってもよい。
【0032】
蓄熱材容器2から排出される熱流体F′の温度は、熱交換前の熱流体Fの温度よりも低くなるが、蓄熱材4の温度よりは高く、さらに蓄熱装置1aの外部環境(大気)より十分高い温度にある。したがって、この熱流体F′を保温部6に導入することで保温部6内を外部環境よりも高温とすることができる。これにより、蓄熱材容器2から大気等の外部環境への熱放出が抑制され、追加の熱源を用いることなく蓄熱材容器2内の蓄熱材4を高温に維持することが可能となる。特に、化学蓄熱においては反応速度の向上にも寄与することが可能となる。
【0033】
排熱流体導入容器61の形状としては、蓄熱材容器2から排出された熱流体F′を導入する空間を有するものであればよく、特に制限されない。例えば、箱状や筒型であってもよく、蓄熱材容器2の形状に合わせたものとしてもよい。これにより、保温部6の機能を有するものとして、比較的簡易な構造を用いることが可能となる。
【0034】
保温部6に設ける放出口62の位置は、特に限定されない。例えば、排熱流体導入容器61の側面又は底面に設けることとしてもよく、蓄熱材容器2の流体供給口71と同一面に設けることとしてもよい。なお、放出口62を蓄熱材容器2への流体供給口71と同一面に設けた場合、蓄熱装置1a全体としての構造がコンパクトになるため、蓄熱装置1aの設置箇所の選択肢を広げることが可能となる。また、放出口62を排熱流体導入容器61の側面下方部又は底部に設けた場合、熱流体Fとして液体を用いた際に、蓄熱装置1a内からの熱流体F′の排出が容易となる。
【0035】
排熱流体導入容器61の側面に、断熱材又は熱反射部材のような放熱抑制材63を設けるものとしてもよい。また、放熱抑制材63は、排熱流体導入容器61の内側面あるいは外側面のいずれに設けてもよい。これにより、蓄熱装置1aから外部への放熱をより一層抑制し、蓄熱効率を高めることが可能となる。
なお、断熱材としては、排熱流体導入容器61内の熱を外部に放出させることを抑制する材質からなるものであれば、特に限定されない。例えば、発泡ポリエチレンや発泡スチロールなどの発泡樹脂、合成樹脂、無機材などが挙げられる。また、断熱材を用いる場合、排熱流体導入容器61の外側面に設けることで、蓄熱装置1a全体を断熱材で覆うことができ、蓄熱装置1a全体の蓄熱効率を向上させることができる。
一方、熱反射部材としては、蓄熱材容器2から放出される輻射熱や排熱流体導入容器61内の熱を反射可能な材質からなるものであれば、特に限定されない。このような材質は、例えば、金属としては、アルミニウム、鉄、銅、黄銅、銀、金、白金、ニッケル、ステンレス、クロム、タングステンなどが挙げられる。また、非金属としては、石英ガラス、アルミナセラミクス、マグネシアセラミクス、耐火レンガなどが挙げられる。また、熱反射部材を用いる場合、排熱流体導入容器61の内側面に設けることで蓄熱材容器2から放出される熱の反射を効率よく行うことができ、蓄熱材容器2の熱損失を大幅に抑制することが可能となる。
【0036】
以上のように、本実施態様における蓄熱装置1aにおいては、蓄熱材4を収納した蓄熱材容器2の外側に設けた保温部6に、蓄熱材4と熱交換後の熱流体F′を導入することで、他の熱源を必要とすることなく、保温部6内の温度を高めることができる。このとき、大気等の外部環境温度をT0、蓄熱材容器2内の蓄熱材4の温度をT1、保温部6内の温度をT2とした場合、T0<T2<T1が成り立つことで、熱流体Fによる蓄熱材4への蓄熱効率を維持し、かつ蓄熱材4の温度低下を抑制することができる。特に、化学蓄熱のように蓄熱材4の温度T1が数百度となるような高温である場合、熱交換後の熱流体F′の温度も数百度を超えるため、保温部6の温度T2も100度を超える高温となる。したがって、T0<<T2<T1となる。これにより、蓄熱材4を収納した蓄熱材容器2と、蓄熱材容器2外側に備えた保温部6との温度差は、蓄熱材容器2と大気等の外部環境との間の温度差よりもかなり小さくなることから、蓄熱材容器2の温度低下を抑え、蓄熱材4の熱損失を大幅に抑制することが可能となる。
【0037】
[蓄熱装置のその他の態様]
以下に、蓄熱装置の別の態様について例示する。
〔第二の実施態様〕
図2は、本発明の第二の実施態様の蓄熱装置1bの構造を示す概略説明図である。
この蓄熱装置1bは、第一の実施態様の蓄熱装置1aにおいて、保温部6を蓄熱材容器2の周囲を囲む流路64としたものである。ここで、流路64は排出部8と直接接続されており、流路64内に熱交換後の熱流体F′が導入される。なお、本実施態様における蓄熱装置1bの構成のうち、第一の実施態様における蓄熱装置1aの構造と同じものについては説明を省略する。
この蓄熱装置1bによれば、保温部6内を熱交換後の熱流体F′が連続的に通過していくため、熱流体F′が有する熱エネルギーを効率的に蓄熱材容器2の温度維持に利用することが可能となる。
【0038】
第二の実施態様の蓄熱装置1bにおける保温部6としての流路64の具体的な構成の一例として、図2に示すように、蓄熱材容器2の周囲を螺旋状に囲む流路とする構成や、蓄熱材容器2の上方部から下方部に向けて直線状の流路を複数設ける構成などが挙げられる。
特に、本実施態様における保温部6としては、図2に示すような蓄熱材容器2の周囲を螺旋状に囲む流路とする構成とすることが好ましい。この構成とすることで、蓄熱材容器2と保温部6との接触面が広くなるため、保温部6による温度維持効果を高めることで、蓄熱材容器2内の蓄熱材4からの熱損失をより一層抑制することが可能となる。
【0039】
〔第三の実施態様〕
図3は、本発明の第三の実施態様の蓄熱装置1cの構造を示す概略説明図である。
この蓄熱装置1cは、第一の実施態様の蓄熱装置1aにおいて、複数の蓄熱材容器を備え、それぞれに蓄熱材を収納するものである。また、このとき、最も外側にある蓄熱材容器の周囲に保温部6を設けるものとする。図3には、本実施態様における蓄熱装置1cの一例として、複数の蓄熱材容器2a、2bを備え、それぞれに蓄熱材4a、4bを収納するものを示している。なお、本実施態様における蓄熱装置1cの構成のうち、第一の実施態様における蓄熱装置1aの構造と同じものについては説明を省略する。
この蓄熱装置1cによれば、最も内側にある蓄熱材容器と大気等の外部環境との間に複数の温度帯からなる層が形成され、蓄熱材容器内の蓄熱材からの放熱による熱損失をより一層抑制することが可能となる。
【0040】
第三の実施態様における蓄熱装置1cにおける蓄熱材容器の具体的構造の例としては、図3に示すように、蓄熱材容器2aの外側に蓄熱材容器2bを設け、蓄熱材容器2bの外側に保温部6を設けるものが挙げられる。また、蓄熱材容器2a内に収納された蓄熱材4aと蓄熱材容器2b内に収納された蓄熱材4bは、同一材質からなるものであってもよく、異なる材質からなるものであってもよいが、それぞれの蓄熱材の蓄熱可能な温度が異なるものとすることが好ましい。このとき、蓄熱装置1cにおいてより内側に配されている蓄熱材4aのほうが蓄熱材4bよりも蓄熱可能な温度が高い材質からなることが好ましい。これにより、蓄熱装置1cの最内側にある蓄熱材4aの温度を高く維持し、かつ蓄熱装置1cの外部環境に至るまでの熱損失を大幅に抑制することが可能となる。
【0041】
なお、上述した実施態様は蓄熱装置の一例を示すものである。本発明に係る蓄熱装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る蓄熱装置を変形してもよい。
【0042】
例えば、本実施態様における蓄熱装置において、保温部だけではなく、蓄熱材容器内においても、断熱材や熱反射部材などの放熱抑制材を設けることとしてもよい。これにより、蓄熱材容器自体の熱損失を抑制することで、保温部による温度維持効果をより一層高めることができ、蓄熱装置全体としての熱損失を大幅に抑制することが可能となる。
【0043】
また、例えば、本実施態様における蓄熱装置において、複数の保温部を設け、段階的に保温部の温度を下げていくような構成とするものであってもよい。これにより、蓄熱材容器と大気等の外部環境との間に複数の温度帯の層を形成し、蓄熱材容器内の蓄熱材の熱損失を抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の蓄熱装置は、工場やごみ焼却場等から発生する廃熱の有効利用することに用いられる。例えば、廃熱が発生する熱供給地において本発明の蓄熱装置を蓄熱し、熱が必要な熱需要地に蓄熱装置を輸送して放熱することに利用する。また、昼に蓄熱して、夜に放熱するというように、同一の設置場所において、廃熱が発生する時間帯に蓄熱して、熱が要求される時間帯に放熱することに利用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1a,1b,1c…蓄熱装置、2,2a,2b…蓄熱材容器、3…熱交換部、4,4a,4b…蓄熱材、5…保持部材、6…保温部、61…排熱流体導入容器、62…放出口、63…放熱抑制材、64…流路、7…供給部、71…流体供給口、8…排出部、81…流体排出口、9…大気開放口、10…給気口、F…熱流体、F′…熱交換後の熱流体、L…ライン
図1
図2
図3