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特許6992254サイドウォール用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】サイドウォール用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20220105BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20220105BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20220105BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/36
C08K3/04
C08K5/17
C08L91/00
C08K5/548
B60C1/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017000554
(22)【出願日】2017-01-05
(65)【公開番号】P2018109126
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 洋敏
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-215832(JP,A)
【文献】特開2013-166913(JP,A)
【文献】特開2011-140613(JP,A)
【文献】特開2013-224391(JP,A)
【文献】特開2012-193307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び/又はイソプレンゴム、並びに、ブタジエンゴムを含むゴム成分と、BET比表面積が200m/g以上のシリカと、カーボンブラックとを含有し、
前記ゴム成分100質量%中、前記天然ゴム及び前記イソプレンゴムの含有量が45質量%以上、前記ブタジエンゴムの含有量が25質量%以上であり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が20~70質量部、前記カーボンブラックの含有量が4~50質量部であり、
新品時の引張強度が24MPa以上で、かつ、温度80℃、オゾン濃度100pphm、動的伸張歪10%、周波数0.5Hzで24時間暴露後の引張強度の低下度が10MPa以下であるサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分100質量部に対して、老化防止剤を0.2~5質量部含有し、
前記老化防止剤がフェニレンジアミン系老化防止剤である請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積が25~160m/gのカーボンブラックを5質量部以上含有する請求項1又は2記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項4】
アロマ系プロセスオイルを含む請求項1~3のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項5】
シリカ100質量部に対するシランカップリング剤の含有量が3~15質量部であり、
前記シランカップリング剤が下記式(S1)で表されるチオエステル系シランカップリング剤を含む請求項1~4のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【化1】
(式中、R1001は-Cl、-Br、-OR1006、-O(O=)CR1006、-ON=CR10061007 、-NR10061007及び-(OSiR10061007(OSiR100610071008)から選択される一価の基(R1006、R1007及びR1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R1002はR1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R1003 は-[O(R1009O) ]-基(R1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイドウォールは、タイヤ使用開始から摩耗寿命まで同じゴム面が使用されるため、長期に渡り、使用における劣化因子(酸素、熱、オゾン、大気汚染、酸性雨、タイヤ洗浄による老化防止剤流出など)の影響に耐えうる事が要求される。オゾンの攻撃等によってサイドウォールに発生した微小亀裂が成長し、内部ケーシング部材まで到達すると、走行中にタイヤ内部の充填空気が急激に抜ける故障が発生したり、一気にタイヤが破壊するバースト現象を起こす場合がある。よって、サイドウォールにおける亀裂の発生や成長の抑制は、タイヤ耐久性能を保障する上で重要である。
【0003】
亀裂の発生や成長を抑制する手法としては、フェニレンジアミン系老化防止剤などの老化防止剤やワックスを、使用条件に応じて適量使用する技術が主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-166913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
老化防止剤は、タイヤ製造後3~4年で急激に減少する傾向があるため、5年を超えるような長期使用においても良好なタイヤ耐久性能を確保しようとすると、老化防止剤を多量に配合することが必要となる。しかしながら、老化防止剤を多量に配合すると、タイヤの外観変色が発生しやすくなったり、高コストになるという点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、老化防止剤を増量することなくタイヤ耐久性能を向上させることができるサイドウォール用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
老化防止剤を増量することなくタイヤ耐久性能を向上させる手法について、本発明者が種々検討したところ、新品時の引張強度と、オゾン劣化後の引張強度との差、すなわち、オゾン劣化後の引張強度の低下度が小さいゴム組成物をサイドウォール部に使用した場合に、良好なタイヤ耐久性能が得られることを発見した。
【0008】
そして、本発明者が更に検討を進めた結果、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムと、ブタジエンゴムと、BET比表面積が200m/g以上のシリカとをそれぞれ所定量含有し、かつ、新品時の引張強度と、オゾン劣化後の引張強度の低下度とが特定の範囲内であるゴム組成物をサイドウォール部に使用した場合に、特に良好なタイヤ耐久性能が得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム、並びに、ブタジエンゴムを含むゴム成分と、BET比表面積が200m/g以上のシリカとを含有し、前記ゴム成分100質量%中、前記天然ゴム及び前記イソプレンゴムの含有量が45質量%以上、前記ブタジエンゴムの含有量が25質量%以上であり、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が20~70質量部であり、新品時の引張強度が24MPa以上で、かつ、温度80℃、オゾン濃度100pphm、動的伸張歪10%、周波数0.5Hzで24時間暴露後の引張強度の低下度が10MPa以下であるサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【0009】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、老化防止剤を0.2~5質量部含有し、前記老化防止剤がフェニレンジアミン系老化防止剤であることが好ましい。
【0010】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積が25~160m/gのカーボンブラックを5質量部以上含有することが好ましい。
【0011】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムと、ブタジエンゴムと、BET比表面積が200m/g以上のシリカとをそれぞれ所定量含有し、かつ、新品時の引張強度と、オゾン劣化後の引張強度の低下度とが特定の範囲内であるゴム組成物であるので、該ゴム組成物をタイヤのサイドウォールに使用することで、良好なタイヤ耐久性能が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム、並びに、ブタジエンゴムを含むゴム成分と、BET比表面積が200m/g以上のシリカとを含有し、前記ゴム成分100質量%中、前記天然ゴム及び前記イソプレンゴムの含有量が45質量%以上、前記ブタジエンゴムの含有量が25質量%以上であり、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が20~70質量部であり、新品時の引張強度が24MPa以上で、かつ、温度80℃、オゾン濃度100pphm、動的伸張歪10%、周波数0.5Hzで24時間暴露後の引張強度の低下度が10MPa以下であるサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【0014】
上記配合において、新品時の引張強度と、オゾン劣化後の引張強度の低下度とを特定の範囲内にすることで、良好なタイヤ耐久性能が得られる。ここでいうタイヤ耐久性能とは、実車ロードテストによるサイドウォール外側表面のクラック発生有無の評価によって求められるものである。
【0015】
本発明のゴム組成物は、天然ゴム(NR)及び/又はイソプレンゴム(IR)を含有する。NR、IRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0016】
ゴム成分100質量%中のNR及びIRの合計含有量は、45質量%以上である。この範囲であれば、良好な引張強度が得られる。また、上限は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。この範囲であれば、良好な耐オゾン性が得られる。
【0017】
本発明のゴム組成物は、ブタジエンゴム(BR)を含有する。BRとしては特に限定されず、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150Bなどの高シス含量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617などのシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できるが、タイヤ耐久性能の観点から、シス含量が97質量%以上のハイシスBRが好ましい。
【0018】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、25質量%以上であり、好ましくは40質量%以上である。この範囲であれば、良好な耐オゾン性が得られる。また、上限は、好ましくは65質量%以下である。この範囲であれば、良好な引張強度が得られる。
【0019】
本発明のゴム組成物は、上述のNR、IR、BR以外に、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)など、他のゴム成分を含有してもよい。
【0020】
本発明のゴム組成物は、シリカを含有する。シリカとしては特に限定されず、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0021】
シリカのBET比表面積は、200m/g以上であり、好ましくは210m/g以上である。この範囲であれば、新品時に良好な引張強度が得られるとともに、オゾン劣化後においても良好な引張強度が得られる。また、上限は、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。この範囲であれば、ゴムが硬くなり過ぎることによる引張強度の低下を抑制できる。
なお、シリカのBET比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法(多点窒素吸着法)で測定される値である。
【0022】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、20質量部以上であり、好ましくは30質量部以上である。この範囲であれば、オゾン劣化後においても良好な引張強度が得られる。また、上限は、70質量部以下であり、好ましくは50質量部以下である。この範囲であれば、ゴムが硬くなり過ぎることによる引張強度の低下を抑制できる。
【0023】
本発明のゴム組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されず、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤など、タイヤ工業において一般的なものを使用できるが、タイヤ耐久性能の観点から、下記式(S1)で表されるチオエステル系シランカップリング剤が好ましい。
【化1】
(式中、R1001は-Cl、-Br、-OR1006、-O(O=)CR1006、-ON=CR10061007、-ON=CR10061007、-NR10061007及び-(OSiR10061007(OSiR100610071008)から選択される一価の基(R1006、R1007及びR1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R1002はR1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R1003はR1001、R1002、水素原子又は-[O(R1009O)0.5-基(R1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【0024】
上記式(S1)において、R1005、R1006、R1007及びR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖、環状又は分枝のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び枝分かれ状のいずれであってもよく、前記シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基などの官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0025】
上記式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007及びR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
上記式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基などが挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基などが挙げられる。
【0026】
上記式(S1)で表されるチオエステル系シランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance Materials社製のNXTシラン)が特に好ましい。3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランは、アルコキシシリル基が分子中に複数存在しないため、カップリング剤同士の凝集が少なく、また、ポリマー部との反応性が高いメルカプト基が脂肪酸チオエステルとなることにより、急激な反応に伴う不均一化が防止されるため、シリカとポリマーの化学結合を均一に形成することができる。
【0027】
シリカ100質量部に対するシランカップリング剤の含有量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。この範囲であれば、良好な引張強度が得られる。また、同様の理由から、上限は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0028】
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含有することが好ましい。老化防止剤としては特に限定されず、ナフチルアミン系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤など、タイヤ工業において一般的なものを使用できるが、タイヤ耐久性能の観点から、フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)がより好ましい。
【0029】
ゴム成分100質量部に対する老化防止剤の含有量は、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。この範囲であれば、オゾン劣化による引張強度の低下を抑制できる。また、上限は、好ましくは5質量部以下である。この範囲であれば、タイヤの外観変色の発生を抑制することができる。
【0030】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックとしては特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0031】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは25m/g以上、より好ましくは50m/g以上である。この範囲であれば、良好な引張強度が得られる。また、上限は、好ましくは160m/g以下、より好ましくは90m/g以下である。この範囲であれば、ゴムが硬くなり過ぎることによる引張強度の低下を抑制できる。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217-2:2001によって求められる。
【0032】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。この範囲であれば、良好な引張強度が得られる。また、上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。この範囲であれば、ゴムが硬くなり過ぎることによる引張強度の低下を抑制できる。
【0033】
本発明に係るゴム組成物には、上記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、ワックス、酸化亜鉛、ステアリン酸、離型剤加硫促進剤、硫黄などの材料を適宜配合してもよい。
【0034】
本発明のゴム組成物は、新品時の引張強度が24MPa以上(好ましくは25MPa以上)で、かつ、温度80℃、オゾン濃度100pphm、動的伸張歪10%、周波数0.5Hzで24時間暴露後(オゾン劣化後)の引張強度の低下度が10MPa以下である。新品時の引張強度の上限は特に限定されず、高ければ高いほど好ましい。同様に、オゾン劣化後の引張強度の低下度の下限は特に限定されず、低ければ低いほど好ましい。
なお、本発明において、引張強度は、加硫ゴム組成物を用いて、JIS K6251に準じて、標準試験温度(23±2℃)で測定した値である。また、新品時の引張強度とは、加硫後、72時間以内に測定した引張強度を意味する。
【0035】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのサイドウォールの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧すればよい。
【0036】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤなどに使用可能であり、乗用車用タイヤに特に好適である。
【実施例
【0037】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0038】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量:98質量%)
シリカ(1):SOLVAY SILICA製のZEOSIL115GR(BET比表面積:110m/g)
シリカ(2):Evonic Wellink Silica製のウルトラジルVN3Gr(BET比表面積:175m/g)
シリカ(3):SOLVAY SILICA製のZEOSIL200MP(BET比表面積:220m/g)
シリカ(4):東ソーシリカ製のニプシルAQ(BET比表面積:200m/g)
シリカ(5):Evonic Wellink Silica製のウルトラジル9000Gr(BET比表面積:240m/g)
カーボンブラック(1):キャボットジャパン(株)製のショウブラックN330(NSA:75m/g)
カーボンブラック(2):キャボットジャパン(株)製のショウブラックN110(NSA:142m/g)
カーボンブラック(3):キャボットジャパン(株)製のショウブラックN660(NSA:28m/g)
カーボンブラック(4):キャボットジャパン(株)製のショウブラックN762(NSA:22m/g)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD))
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
オイル:ジャパンエナジー社製のプロセスX-140(アロマ系プロセスオイル)
シランカップリング剤(1):Momentive Performance Materials社製のNXTシラン(3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)
シランカップリング剤(2):EVONIK-DEGUSSA社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS))
【0039】
(実施例及び比較例)
表1、2に示す配合処方に従い、神戸製鋼(株)製1.7L小型バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の配合材料をミキサー充填率70%、回転数100rpmにて150℃に達するまで混合した後、排出した。
得られた混練り物を冷却してシート状にした後、硫黄及び加硫促進剤とともに再度ミキサーに投入し、ミキサー充填率70%、回転数50rpmにて100℃に達するまで混合した後、排出した。
得られた未加硫ゴム組成物を冷却して2mm厚のシート状に成形し、150℃、30分の加硫条件で加硫し、2mm厚の加硫シートを得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をサイドウォールの形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせ、150℃で30分間加硫することにより、試験用タイヤを得た。
【0040】
得られた加硫シート及び試験用タイヤを使用して、以下の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0041】
(引張強度)
上記加硫シートを用いて3号ダンベル型のゴム試験片を作製し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、標準試験温度(23±2℃)で引張試験を行い、新品時の引張強度(引張破断強度:TB〔MPa〕)を測定した。
また、上記ゴム試験片を、温度80℃、オゾン濃度100pphm、動的伸張歪10%、周波数0.5Hzで24時間暴露後、同様の条件で引張試験を行い、オゾン劣化後の引張強度を測定し、引張強度の低下度(新品時の引張強度-オゾン劣化後の引張強度)を算出した。
【0042】
(タイヤ耐久性能(クラック性能))
上記試験用タイヤを用いて、下記条件で、トラック車両での実車評価を実施した。
トラック車両の後輪外側に試験用タイヤ(タイヤサイズ:275/80R22.5)を装着し、1日1回タイヤのサイドウォール外側を水洗し、1ヶ月間実車使用した後、タイヤのサイドウォール外側表面のクラック発生有無を確認した。クラックが発生しなかったものを0とし、0.5~1mmのクラックが発生したものを1(許容内)とし、1mmを超えるクラックが発生したものを2(許容外)とした。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1、2より、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムと、ブタジエンゴムと、BET比表面積が200m/g以上のシリカとをそれぞれ所定量含有し、かつ、新品時の引張強度と、オゾン劣化後の引張強度の低下度とが特定の範囲内である実施例は、良好なタイヤ耐久性能が得られた。