(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20220105BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220105BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20220105BHJP
C08F 236/04 20060101ALI20220105BHJP
C08F 240/00 20060101ALI20220105BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220105BHJP
C08L 1/08 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 B
C08K5/103
C08F236/04
C08F240/00
C08K3/04
C08L1/08
(21)【出願番号】P 2017149326
(22)【出願日】2017-08-01
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 澄子
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-231177(JP,A)
【文献】特開2001-253973(JP,A)
【文献】特開2011-140628(JP,A)
【文献】国際公開第2015/075971(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0135424(US,A1)
【文献】特開2007-291347(JP,A)
【文献】特開2009-007435(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02733168(EP,A1)
【文献】特開2005-263956(JP,A)
【文献】特開2003-213039(JP,A)
【文献】特開2009-084564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
B60C 1/00
C08F 236/04
C08F 240/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムを含むゴム成分と、
補強性充填剤と、
植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルと、
軟化点が30~160℃の樹脂とを含有し、
前記ジエン系ゴムとしてイソプレン系ゴムを含み、
前記グリセロール脂肪酸トリエステルが、構成脂肪酸100質量%中の、飽和脂肪酸の含有量が10~25質量%、不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%未満であり、
ゴム成分100質量部に対して、前記補強性充填剤を50質量部以下含有
し、
前記樹脂が、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、及び/又はC5C9系石油樹脂であるゴム組成物。
【請求項2】
前記グリセロール脂肪酸トリエステルが、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記グリセロール脂肪酸トリエステルが、下記式(A)を満たす請求項1又は2記載のゴム組成物。
80≦構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×1(不飽和結合数)+構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を2個有する2価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×2(不飽和結合数)+構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を3個有する3価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×3(不飽和結合数)≦200 式(A)
【請求項4】
ゴム成分100質量部に対して、前記グリセロール脂肪酸トリエステルを2~20質量部含有する請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
ゴム成分100質量%中の、共役ジエン系単量体と下記式(1)で表される化合物とを共重合して合成される共重合体の含有量が5質量%以上である請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、R
11及びR
12は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。)
【請求項6】
前記共重合体は、構成単位100質量%中、前記共役ジエン系単量体単位の含有量が5~95質量%、前記式(1)で表される化合物単位の含有量が5~95質量%である請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
振幅±0.25%歪みで測定した正接損失(tanδ)の温度分布曲線において、tanδが最大値となる時の温度が-46℃以下であり、温度20℃、振幅±0.25%歪みで測定した正接損失(20℃tanδ)と温度0℃、振幅±0.25%歪みで測定した正接損失(0℃tanδ)との比が下記式(X)を満たす請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物。
20℃tanδ/0℃tanδ≧0.80 式(X)
【請求項8】
前記補強性充填剤として、カーボンブラック及びミクロフィブリル化植物繊維を含む請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記樹脂がC5系石油樹脂である請求項1~8のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
ブタジエンゴムを含む請求項1~9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
可塑剤と補強性充填剤の配合比率が下記式(B)を満たす請求項1~10のいずれかに記載のゴム組成物。
0.04≦可塑剤の配合量(質量部)/補強性充填剤の配合量(質量部)≦0.80 式(B)
【請求項12】
可塑剤と補強性充填剤の配合比率が下記式(B)を満たす請求項1~10のいずれかに記載のゴム組成物。
0.30≦可塑剤の配合量(質量部)/補強性充填剤の配合量(質量部)≦0.50 式(B)
【請求項13】
補強性充填剤100質量%中のカーボンブラックの含有量が50質量%以上である請求項1~12のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項14】
タイヤ用ゴム組成物である請求項1~13のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載のゴム組成物から作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の対策として二酸化炭素放出を抑制した取り組みが様々な製造産業にて取り組まれている。タイヤ産業においては、タイヤ製品の低燃費化の取組や石油資源から製造するゴムや可塑剤に替えて天然ゴムや天然資源の単量体を用いて合成したゴム、或いは植物油を使用するなど、製品及び原材料の両面で二酸化炭素排出を抑制する取り組みがなされてきた。
【0003】
特に植物油の活用は、二酸化炭素排出量削減だけではなく、タイヤのウェットグリップ性能向上といったタイヤ機能面での性能改善にも寄与する。例えば、特許文献1では、植物由来の高オレイン酸含有植物油を配合することでウェットグリップ性能が改善することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石油由来の可塑剤を植物油(グリセロール脂肪酸トリエステル)など非石油由来の材料に置換する発明が提案されているが、タイヤ用ゴム組成物にエステルのような親水部を有する可塑剤を多量に配合した場合、配合した可塑剤が製品使用中に表面にブリードして外観が悪化する問題が起こるおそれがある。また、植物油に含まれる不飽和結合によりゴムと硫黄の架橋効率が低下し、ゴムの強度が低下してしまうおそれがある。
本発明は、良好な外観を維持しつつ、良好な低燃費性能、ゴム強度を有するゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、補強性充填剤と、植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルとを含有し、上記ジエン系ゴムとしてイソプレン系ゴムを含み、上記グリセロール脂肪酸トリエステルが、構成脂肪酸100質量%中の、飽和脂肪酸の含有量が10~25質量%、不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%未満であり、ゴム成分100質量部に対して、上記補強性充填剤を50質量部以下含有するゴム組成物に関する。
【0007】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルが、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上であることが好ましい。
【0008】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルが、下記式(A)を満たすことが好ましい。
80≦構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×1(不飽和結合数)+構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を2個有する2価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×2(不飽和結合数)+構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を3個有する3価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×3(不飽和結合数)≦200 式(A)
【0009】
ゴム成分100質量部に対して、上記グリセロール脂肪酸トリエステルを2~20質量部含有することが好ましい。
【0010】
ゴム成分100質量%中の、共役ジエン系単量体と下記式(1)で表される化合物とを共重合して合成される共重合体の含有量が5質量%以上であることが好ましい。
【化1】
(式(1)中、R
11及びR
12は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。)
【0011】
上記共重合体は、構成単位100質量%中、上記共役ジエン系単量体単位の含有量が5~95質量%、上記式(1)で表される化合物単位の含有量が5~95質量%であることが好ましい。
【0012】
振幅±0.25%歪みで測定した正接損失(tanδ)の温度分布曲線において、tanδが最大値となる時の温度が-46℃以下であり、温度20℃、振幅±0.25%歪みで測定した正接損失(20℃tanδ)と温度0℃、振幅±0.25%歪みで測定した正接損失(0℃tanδ)との比が下記式(X)を満たすことが好ましい。
20℃tanδ/0℃tanδ≧0.80 式(X)
【0013】
上記補強性充填剤として、カーボンブラック及びミクロフィブリル化植物繊維を含むことが好ましい。
【0014】
上記ゴム組成物がタイヤ用ゴム組成物であることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ゴム組成物から作製したサイドウォールを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、補強性充填剤と、植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルとを含有し、前記ジエン系ゴムとしてイソプレン系ゴムを含み、前記グリセロール脂肪酸トリエステルが、構成脂肪酸100質量%中の、飽和脂肪酸の含有量が10~25質量%、不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%未満であり、ゴム成分100質量部に対して、前記補強性充填剤を50質量部以下含有するゴム組成物であるので、良好な外観を維持しつつ、良好な低燃費性能、ゴム強度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、補強性充填剤と、植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルとを含有し、上記ジエン系ゴムとしてイソプレン系ゴムを含み、上記グリセロール脂肪酸トリエステルが、構成脂肪酸100質量%中の、飽和脂肪酸の含有量が10~25質量%、不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%未満であり、ゴム成分100質量部に対して、上記補強性充填剤を50質量部以下含有する。
【0018】
本発明では、以下の作用効果により、良好な外観を維持しつつ、良好な低燃費性能、ゴム強度を有するものと推察される。
本発明者らの検討の結果、植物油(グリセロール脂肪酸トリエステル)を配合することで低燃費性能を向上させることが可能となる。一方、疎水性材料を主成分とするタイヤ用ゴム組成物にエステルのような親水部を有する植物油を多量に配合した場合、タイヤ使用中に植物油が表面にブリードする問題が起こり、タイヤの外観が悪化することが明らかとなった。また、植物油に含まれる不飽和結合によりゴムと硫黄の架橋効率が低下し、ゴムの強度が低下してしまうおそれがあることも明らかとなった。このように、植物油を配合した場合、良好な外観を維持しつつ、良好な低燃費性能、ゴム強度が得られないという問題を本発明者らが見出した。
本発明者らは、新たに見出した課題について鋭意検討した結果、植物油(グリセロール脂肪酸トリエステル)中の不飽和結合、更には飽和脂肪酸の含有量、不飽和脂肪酸の含有量に着目し、不飽和結合数が特定量の(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の含有量が特定量の)植物油(グリセロール脂肪酸トリエステル)をゴム組成物に配合することで、グリセロール脂肪酸トリエステルの不飽和結合部(グリセロール脂肪酸トリエステルを構成する脂肪酸が有する不飽和結合部)と、ジエン系ゴム(ジエン系ゴムが有する不飽和結合)とを適度に反応(加硫剤による加硫反応)させることが可能となり、グリセロール脂肪酸トリエステルによるゴム組成物のガラス転移温度の低温化効果を得て良好な低燃費性能を得つつ、グリセロール脂肪酸トリエステルをゴムに適度に拘束してグリセロール脂肪酸トリエステルの表面析出を抑制でき、良好な外観、低燃費性能、ゴム強度が得られることを見出して、本発明を完成した。
グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数が多すぎると、反応点が多くなりすぎて、ジエン系ゴムの架橋効率が低下し、ゴム強度が低下するおそれがある。一方、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数が少なすぎると、グリセロール脂肪酸トリエステルを適度にゴムに拘束できず、グリセロール脂肪酸トリエステルの表面析出を充分に抑制できず、外観、低燃費性能、ゴム強度が低下するおそれがある。これに対して、グリセロール脂肪酸トリエステルが、構成脂肪酸100質量%中の、飽和脂肪酸の含有量が10~25質量%、不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%未満である場合、グリセロール脂肪酸トリエステルの不飽和結合部(グリセロール脂肪酸トリエステルを構成する脂肪酸が有する不飽和結合部)と、ジエン系ゴムとを適度に反応させることが可能となり、グリセロール脂肪酸トリエステルによるゴム組成物のガラス転移温度の低温化効果を得て良好な低燃費性能を得つつ、グリセロール脂肪酸トリエステルをゴムに適度に拘束してグリセロール脂肪酸トリエステルの表面析出を抑制でき、良好な外観、低燃費性能、ゴム強度が得られるものと推測される。これにより、本発明では、補強性充填剤を50質量部以下とした場合であっても良好なゴム強度が得られ、良好な外観を維持しつつ、良好な低燃費性能、ゴム強度を有する。この効果は、ジエン系ゴムとしてイソプレン系ゴムを使用した場合に特に顕著に得られる。
このように、本発明では、ジエン系ゴム(イソプレン系ゴム)とグリセロール脂肪酸トリエステルの相互作用により、良好な外観を維持しつつ、低燃費性能、ゴム強度の性能バランスを相乗的に改善できる。
また、化石資源ではなく、植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルを使用することで、低炭素社会にも貢献したタイヤを提供できる。よって、本発明により、より安全でより環境負荷の低いタイヤを提供することができる。
更に、植物油(グリセロール脂肪酸トリエステル)を配合することで、常温時と低温時とにおける転がり抵抗の変動を低減して低燃費性能の温度依存性を低減でき、気温の低い冬場でも低燃費性能の悪化を抑制することができ、低燃費タイヤ用ゴム組成物として好適に使用することが可能となる。
また、本明細書に記載の本願発明のメカニズムは、あくまでも推測されるメカニズムである。
【0019】
本発明のゴム組成物には、植物由来の特定のグリセロール脂肪酸トリエステルが配合される。
グリセロール脂肪酸トリエステルは、脂肪酸とグリセリンとのエステル体であり、トリグリセリド、トリ-O-アシルグリセリンともいう。
植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルを構成する脂肪酸としては、通常、パルミチン酸(炭素数16、不飽和結合数0)、ステアリン酸(炭素数18、不飽和結合数0)、オレイン酸(炭素数18、不飽和結合数1)、リノール酸(炭素数18、不飽和結合数2)が主成分をなすことが知られており、構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸の合計含有量は、通常、80質量%以上、好ましくは90質量%以上である。
【0020】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、飽和脂肪酸の含有量が10~25質量%であり、下限は好ましくは12質量%以上であり、上限は好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。飽和脂肪酸の含有量が10質量%以上であると、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数が多すぎることを防止でき、反応点が多くなりすぎずに良好な軟化効果が得られ、良好な低燃費性能が得られる。また、ジエン系ゴムの架橋効率が低下することも防止でき、良好なゴム強度が得られる。また、飽和脂肪酸の含有量が25質量%以下であると、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数が少なすぎることを防止でき、グリセロール脂肪酸トリエステルを適度にゴムに拘束でき、グリセロール脂肪酸トリエステルの表面析出を充分に抑制でき、良好な外観、低燃費性能、ゴム強度が得られる。また、融点の比較的高い飽和脂肪酸量が少ないため、グリセロール脂肪酸トリエステルの融点が低くなり、エネルギーロスが小さくなり、良好な低燃費性能が得られる。
【0021】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%未満であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数を適正化でき、効果が充分に得られる。下限は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは8質量%以上、より好ましくは14質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。
【0022】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸の含有量が好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、効果がより好適に得られる。上限は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0023】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を2個有する2価不飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、効果がより好適に得られる。
【0024】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を3個有する3価不飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、効果がより好適に得られる。
【0025】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和脂肪酸の合計含有量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは82質量%以上、特に好ましくは85質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは88質量%以下である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、効果がより好適に得られる。
【0026】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、下記式(A)を満たすことが好ましい。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、効果がより好適に得られる。
効果がより好適に得られるという理由から、下記式(A)の下限は、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、更に好ましくは140以上、特に好ましくは150以上であり、下記式(A)の上限は、好ましくは190以下、より好ましくは180以下、更に好ましくは170以下である。
80≦構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×1(不飽和結合数)+構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を2個有する2価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×2(不飽和結合数)+構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を3個有する3価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×3(不飽和結合数)≦200 式(A)
【0027】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルであるため、構成脂肪酸が有する不飽和結合は、通常、二重結合である。
【0028】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸の平均炭素数が、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは15以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは17以上であり、好ましくは21以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは19以下である。
本明細書において、構成脂肪酸の平均炭素数は、以下の式(D)により算出される。
構成脂肪酸の平均炭素数=Σ 構成脂肪酸100質量%中の炭素数nの脂肪酸の含有量(質量%)×n(炭素数)/100 式(D)
【0029】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、常温(25℃)で液体であることが好ましい。グリセロール脂肪酸トリエステルの融点は、好ましくは20℃以下、より好ましくは17℃以下、更に好ましくは0℃以下、特に好ましくは-10℃以下である。これにより、より良好な低燃費性能、ウェットグリップ性能が得られる。
下限は特に限定されないが、良好なドライグリップ性能が得られるという理由から、好ましくは-100℃以上、より好ましくは-90℃以上である。
なお、グリセロール脂肪酸トリエステルの融点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定できる。
【0030】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルのヨウ素価は、好ましくは60以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上、特に好ましくは100以上、最も好ましくは120以上である。また、上記ヨウ素価は、好ましくは160以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは135以下である。ヨウ素価が上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、ヨウ素価とは、グリセロール脂肪酸トリエステル100gにハロゲンを反応させたとき、結合するハロゲンの量をヨウ素のグラム数に換算したものであり、電位差滴定法(JIS K0070)により測定した値である。
【0031】
本発明で使用されるグリセロール脂肪酸トリエステルは、植物由来で、構成脂肪酸100質量%中の、飽和脂肪酸の含有量が10~25質量%、不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%未満であれば特に限定されず、例えば、大豆油、ごま油、米油、紅花油、コーン油、オリーブ油、菜種油等が挙げられる。なかでも、安価かつ大量に入手可能であり、性能の向上効果も高いという理由から、大豆油、ごま油、米油、菜種油が好ましく、大豆油、ごま油、米油がより好ましく、大豆油が更に好ましい。
【0032】
なお、上記脂肪酸組成は、GLC(気-液クロマトグラフィー)により測定できる。
【0033】
グリセロール脂肪酸トリエステルとしては、例えば、日清オイリオ(株)、J-オイルミルズ(株)、昭和産業(株)、不二製油(株)、ミヨシ油脂(株)、ボーソー油脂(株)等の製品を使用できる。
【0034】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、特に好ましくは15質量部以上である。2質量部以上であると、効果がより好適に得られる。上記グリセロール脂肪酸トリエステルの含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。40質量部以下であると、効果がより好適に得られる。
【0035】
上記グリセロール脂肪酸トリエステル(本願特定のグリセロール脂肪酸トリエステル)と共に、上記グリセロール脂肪酸トリエステル以外の可塑剤(オイル)を配合してもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、上記グリセロール脂肪酸トリエステル以外の植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0037】
オイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは35質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0038】
上記グリセロール脂肪酸トリエステルに加えて、上記グリセロール脂肪酸トリエステル以外の可塑剤(オイル)を配合する場合、上記グリセロール脂肪酸トリエステル、上記グリセロール脂肪酸トリエステル以外の可塑剤(オイル)の合計含有量(可塑剤の合計含有量)は、上記グリセロール脂肪酸トリエステルを単独で用いる場合の含有量と同様の量を好適に使用できる。
【0039】
本発明では、ゴム成分として、ジエン系ゴムが使用される。
使用できるジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記以外に使用できるゴム成分としては、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ここで、本明細書では、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が30万以上(好ましくは35万以上)のゴムを意味する。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは150万以下、より好ましくは100万以下である。
なお、本明細書において、Mw、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0041】
効果がより好適に得られるという理由から、ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0042】
ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴムが使用される。イソプレン系ゴム以外のジエン系ゴムとしては、BR、SBRが好ましく、イソプレン系ゴム、BRを併用することがより好ましい。
【0043】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0044】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは40質量%以上である。また、上記イソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0045】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴム強度が向上するという理由から、BRのシス含量は97質量%以上が好ましい。
【0046】
BRの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万以上、より好ましくは35万以上である。上記Mwは、好ましくは55万以下、好ましくは50万以下、より好ましくは45万以下である。上記Mwが上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0047】
また、BRとしては、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。
変性BRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するBRであればよく、例えば、BRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR(末端に上記官能基を有する末端変性BR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性BRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性BR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性BR等が挙げられる。
【0048】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0049】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0050】
BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは40質量%以上である。また、上記BRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0051】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。下限以上にすることで、優れたウェットグリップ性能が充分に得られる傾向がある。また、該スチレン含量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上限以下にすることで、優れたゴム強度、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H1-NMR測定により算出される。
【0053】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0054】
また、SBRとしては、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性BRと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0055】
SBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは40質量%以上である。また、上記SBRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0056】
イソプレン系ゴム、BRの合計含有量は、効果がより好適に得られるという理由から、ゴム成分100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0057】
また、ジエン系ゴムとして、共役ジエン系単量体と下記式(1)で表される化合物とを共重合して合成される共重合体を使用することが好ましい。すなわち、ジエン系ゴムとして、共役ジエン系単量体に基づく単位と下記式(1)で表される化合物に基づく単位とを有する共重合体を使用することが好ましい。
上記共重合体が有するエステル構造と、グリセロール脂肪酸トリエステルが有するトリエステル構造とは、親和性が高く、グリセロール脂肪酸トリエステルの表面析出速度を抑制でき、より良好な外観、低燃費性能、ゴム強度が得られる。
【化2】
(式(1)中、R
11及びR
12は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。)
【0058】
前記共重合体は、構成単位として、共役ジエン系単量体に基づく単量体単位を有している。共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられ、なかでも、低燃費性能、ゴム強度の観点から、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記共重合体において、共役ジエン系単量体単位の含有量は、該共重合体を構成する構成単位100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。5質量%以上であると、良好なゴム強度が得られる傾向があり、95質量%以下であると、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0060】
前記共重合体は、構成単位として、下記式(1)で表される化合物に基づく単量体単位を有する。
【化3】
(式(1)中、R
11及びR
12は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。)
【0061】
R11及びR12の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。
【0062】
R11及びR12の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20のものが好ましく、1~10のものがより好ましい。好ましい例として、アルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。なかでも、良好な加工性を得ながら、低燃費性能、ゴム強度の性能バランスを顕著に改善できる点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基がより好ましく、エチル基が更に好ましい。
【0063】
脂環式炭化水素基としては、炭素数3~8のものが好ましく、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。
【0064】
芳香族炭化水素基としては、炭素数6~10のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル(tolyl)基、キシリル(xylyl)基、ナフチル基等が挙げられる。なお、トリル基及びキシリル基におけるベンゼン環上のメチル基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置でもよい。
【0065】
上記式(1)で表される化合物として、具体的には、例えば、イタコン酸、イタコン酸1-メチル、イタコン酸4-メチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸1-エチル、イタコン酸4-エチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸1-プロピル、イタコン酸4-プロピル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸1-ブチル、イタコン酸4-ブチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸1-エチル4-メチル等が挙げられる。なかでも、良好な加工性を得ながら、低燃費性能、ゴム強度の性能バランスを顕著に改善できる点から、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸1-プロピルが好ましく、イタコン酸ジエチルがより好ましい。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記共重合体において、上記式(1)で表される化合物単位の含有量は、該共重合体を構成する構成単位100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。5質量%以上であると、良好な低燃費性能が得られる傾向があり、95質量%以下であると、良好なゴム強度が得られる傾向がある。
【0067】
前記共重合体は、構成単位として、下記式(2)で表される化合物に基づく単量体単位を有することが好ましい。上記共重合体が、上記構成単位に加えて、下記式(2)で表される化合物に基づく単量体単位(好ましくはスチレン)を有することにより、良好な加工性を得ながら、低燃費性能、ゴム強度の性能バランスをより顕著に改善できる。
【化4】
(式(2)中、R
21は、水素原子、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基、炭素数3~8の脂環式炭化水素基、又は炭素数6~10の芳香族炭化水素基を表し、R
22は、水素原子又はメチル基を表す。)
【0068】
上記式(2)で表される化合物において、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1~3のアルキル基が挙げられ、なかでもメチル基が好ましい。
【0069】
上記式(2)で表される化合物において、炭素数3~8の脂環式炭化水素基としては、上記式(1)で表される化合物と同様のものが挙げられる。
【0070】
上記式(2)で表される化合物において、炭素数6~10の芳香族炭化水素基としては、上記式(1)で表される化合物と同様のものが挙げられ、反応性が高い点で、フェニル基、トリル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0071】
R21としては、炭素数6~10の芳香族炭化水素基が好ましく、R22としては、水素原子が好ましい。
【0072】
上記式(2)で表される化合物としては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、α-ビニルナフタレン、β-ビニルナフタレン、ビニルキシレン等が挙げられ、なかでも反応性が高い点で、スチレン、α-メチルスチレン、α-ビニルナフタレン、β-ビニルナフタレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0073】
前記共重合体中において、上記式(2)で表される化合物単位の含有量は、前記共重合体を構成する構成単位100質量%中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0074】
上記共重合体中において、上記式(1)で表される化合物単位及び上記式(2)で表される化合物単位の合計含有量は、上記共重合体を構成する構成単位100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0075】
なお、前記共重合体において、上記共役ジエン系単量体単位、上記式(1)又は(2)で表される化合物単位等、各種単量体単位の含有量は、NMR(ブルガー社製)により測定できる。
【0076】
前記共重合体の共重合方法としては、特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、気相重合法、バルク重合法などが挙げられるが、高収率で共重合体が得られるという点で、乳化重合が好ましい。前記共重合体は、WO2015/075971号公報等を参考に調製できる。
【0077】
前記共重合体は、連鎖移動剤の存在下で乳化重合を行って調製されるものが好ましい。これにより、加工性、低燃費性能及びゴム強度が更に改善される。
なお、連鎖移動剤とは、ポリマー生長末端に作用してポリマーの生長を停止するとともに、新たな重合開始ラジカルを発生することができるラジカル重合の制御剤である。これにより、ポリマーの分子量、分子量分布の制御(低分子量化、狭分子量分布化)や、ポリマー末端構造の制御などが可能となる。
【0078】
上記連鎖移動剤としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ノニルメルカプタン、n-デシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでも分子量の制御が容易という点で、t-ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0079】
また、上記連鎖移動剤としては、補強性充填剤と親和性のある官能基及びメルカプト基を有する化合物を好適に用いることができる。連鎖移動剤として、メルカプト基と共に、更に、補強性充填剤と親和性のある官能基を有する化合物を使用することにより、ポリマー末端に補強性充填剤と親和性のある官能基を導入でき、低燃費性能、ゴム強度をより顕著に改善できる。補強性充填剤と親和性のある官能基としては、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基などが挙げられる。なかでも、アルコキシシリル基、エステル基が好ましく、アルコキシシリル基がより好ましい。
【0080】
エステル基を有する化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸エチル、3-メルカプトプロピオン酸プロピル、3-メルカプトプロピオン酸ブチル、3-メルカプトプロピオン酸ペンチル、3-メルカプトプロピオン酸ヘキシル、3-メルカプトプロピオン酸ヘプチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、メルカプトエタン酸2-エチルヘキシル、メタン酸2-メルカプトエチル、エタン酸2-メルカプトエチル、プロピオン酸2-メルカプトエチル、ブタン酸2-メルカプトエチル、ペンタン酸2-メルカプトエチル、ヘキサン酸2-メルカプトエチル、ヘプタン酸2-メルカプトエチル、オクタン酸2-メルカプトエチル、オクタン酸2-メルカプトメチルを好適に用いることができる。な
かでも、3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-メルカプトエチルが好ましい。
【0081】
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000以上、より好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上、特に好ましくは300,000以上、最も好ましくは450,000以上である。また、該重量平均分子量は、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,500,000以下、更に好ましくは1,000,000以下である。5,000以上であると、良好な低燃費性能及びゴム強度が得られる傾向があり、2,000,000以下であると、良好な加工性が得られる傾向がある。
【0082】
前記共重合体の数平均分子量(Mn)に対するMwの比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3.0以上である。また、該分子量分布は、好ましくは11以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは5.0以下である。2.1以上であると、良好な加工性が得られる傾向があり、11以下であると、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0083】
前記共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-100℃以上、より好ましくは-80℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは0℃以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、Tgは、JIS-K7121:1987に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
【0084】
前記共重合体のムーニー粘度ML1+4(130℃)は、好ましくは30以上、より好ましくは40以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
なお、ムーニー粘度(ML1+4、130℃)は、JIS-K6300に従い、130℃でムーニー粘度を測定することにより得られる値である。
【0085】
前記共重合体を含有する場合、ゴム成分100質量%中の前記共重合体の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、上記共重合体の含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0086】
上記ゴム組成物は、補強性充填剤を含む。
補強性充填剤としては、特に限定されないが、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。その他にも1粒子の幅若しくは厚みが50nm以下のものであれば好適に使用でき、グラフェン、マイカのような板状充填剤やモンモリオナイトやセピオライトといった無機鉱物、パルプやミクロフィブリル化植物繊維といった有機繊維などが使用できる。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、シリカ、カーボンブラック、ミクロフィブリル化植物繊維が好ましく、カーボンブラック、ミクロフィブリル化植物繊維がより好ましく、カーボンブラック、ミクロフィブリル化植物繊維を併用することが更に好ましい。
【0087】
補強性充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、特に好ましくは35質量部以上である。下限以上にすることで、十分な補強性を得ることができ、より良好なゴム強度、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、50質量部以下であり、好ましくは40質量部以下である。上限以下にすることで、より良好な低燃費性能が得られる傾向がある。本発明では、特定のグリセロール脂肪酸トリエステルを配合することにより、補強性充填剤の含有量を比較的少量の上記量としても、良好なゴム強度が得られ、良好な外観を維持しつつ、良好な低燃費性能、ゴム強度を有する。
【0088】
効果がより好適に得られるという理由から、可塑剤と補強性充填剤の配合比率が下記式(B)を満たすことが好ましい。
効果がより好適に得られるという理由から、式(B)の下限は、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、特に好ましくは0.30以上であり、式(B)の上限は、好ましくは0.70以下、より好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.50以下、最も好ましくは0.40以下である。
0.04≦可塑剤の配合量(質量部)/補強性充填剤の配合量(質量部)≦0.80 式(B)
【0089】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、5m2/g以上が好ましく、30m2/g以上がより好ましく、50m2/g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、より良好なゴム強度、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記N2SAは、300m2/g以下が好ましく、180m2/g以下がより好ましく、120m2/g以下が更に好ましく、100m2/g以下が特に好ましく、90m2/g以下が最も好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られやすく、より良好なゴム強度、ウェットグリップ性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0091】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、50ml/100g以上が好ましく、100ml/100g以上がより好ましい。下限以上にすることで、より良好なゴム強度、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、カーボンブラックのDBPは、200ml/100g以下が好ましく、150ml/100g以下がより好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られやすく、より良好なゴム強度、ウェットグリップ性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217-4:2001に準拠して測定される。
【0092】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0093】
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上、最も好ましくは35質量部以上である。下限以上にすることで、十分な補強性を得ることができ、より良好なゴム強度、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。上限以下にすることで、より良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0094】
補強性充填剤100質量%中のカーボンブラックの含有量は好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上であり、最も好ましくは60質量%以上、より最も好ましくは70質量%以上、更に最も好ましくは80質量%以上、特に最も好ましくは85質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0095】
ミクロフィブリル化植物繊維としては、特に制限されないが、良好な補強性が得られ、効果がより好適に得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、再生パルプ、古紙、バクテリアセルロース、ホヤセルロース等の天然物に由来するものが好ましい。
ミクロフィブリル化植物繊維と、グリセロール脂肪酸トリエステルが有するトリエステル構造とは、親和性が高く、グリセロール脂肪酸トリエステルの表面析出速度を抑制でき、より良好な外観、低燃費性能、ゴム強度(特に、低燃費性能)が得られる。
【0096】
上記ミクロフィブリル化植物繊維の製造方法としては特に制限されないが、例えば、上記セルロースミクロフィブリルの原料を水酸化ナトリウム等の薬品で化学処理した後、リファイナー、二軸混錬機(二軸押出機)、二軸混錬押出機、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等により機械的に磨砕ないし叩解する方法が挙げられる。この方法では、化学処理によって原料からリグニンが分離されるため、リグニンを実質的に含有しないミクロフィブリル化植物繊維が得られる。
【0097】
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径は、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下であり、更に好ましくは0.03μm以下である。ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径がこのように非常に小さいことによって、ゴム中でネットワーク構造を好適に形成することができ、これにより良好なゴム強度を維持しながら良好な低燃費性能が得られる傾向がある。また、ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径の下限は特に制限されないが、ミクロフィブリル化植物繊維の絡まりがほどけやすく、分散しやすいという理由から、4nm以上であることが好ましい。
【0098】
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維長は、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下であり、また、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上、特に好ましくは50μm以上である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0099】
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡写真の画像解析、透過型顕微鏡写真の画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。
【0100】
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、例えば、ダイセルファインケム(株)、(株)スギノマシン、第一工業製薬(株)、日本製紙(株)等の製品を使用できる。
【0101】
上記ミクロフィブリル化植物繊維を含有する場合、上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8質量部以下、最も好ましくは7質量部以下である。上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量が上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0102】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0103】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは120m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上である。下限以上にすることで、より良好なゴム強度、ウェットグリップ性能が得られる。上記N2SAは、好ましくは400m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下、更に好ましくは180m2/g以下である。上限以下にすることで、より良好な低燃費性能が得られる。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0104】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0105】
シリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。
【0106】
上記ゴム組成物は、シリカを含む場合、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系又はメルカプト系が好ましい。
【0107】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0108】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。3質量部以上であると、シランカップリング剤を配合したことによる効果が得られる傾向がある。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。20質量部以下であると、配合量に見合った効果が得られ、良好な混練時の加工性が得られる傾向がある。
【0109】
上記ゴム組成物は、樹脂を含有することが好ましい。これにより、効果がより好適に得られる。
【0110】
樹脂のガラス転移温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくは120℃以下である。これにより、効果がより好適に得られる。
【0111】
樹脂の軟化点は、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。30℃以上であると、より良好なゴム強度、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記軟化点は、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。160℃以下であると、樹脂の分散性が良好となり、より良好なゴム強度、ウェットグリップ性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0112】
樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、C5系石油樹脂が好ましい。
【0113】
C5系石油樹脂は、C5(炭素数5)系石油炭化水素を重合して得られる。C5系石油炭化水素とは、ナフサの熱分解により得られるC5留分(炭素数5の留分)のことをいい、具体的には、イソプレン、1,3-ペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ピペリレンなどのジオレフィン類や2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、シクロペンテンなどのモノオレフィン類が挙げられる。
【0114】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
【0115】
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
【0116】
なかでも、前記性能バランスの観点から、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましい。
【0117】
クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0118】
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。
ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂及びそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0119】
ポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。
テルペンフェノールとしては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びホルマリンを縮合させた樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
【0120】
p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂としては、p-t-ブチルフェノールとアセチレンとを縮合反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0121】
アクリル系樹脂としては特に限定されないが、不純物が少なく、分子量分布がシャープな樹脂が得られるという点から、無溶剤型アクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0122】
無溶剤型アクリル系樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0123】
上記アクリル系樹脂は、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないことが好ましい。また、上記アクリル系樹脂は、連続重合により得られる組成分布や分子量分布が比較的狭いものが好ましい。
【0124】
上述のように、上記アクリル系樹脂としては、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないもの、すなわち、純度が高いものが好ましい。上記アクリル系樹脂の純度(該樹脂中に含まれる樹脂の割合)は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。
【0125】
上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
【0126】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
【0127】
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良い。
また、上記アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよい。
【0128】
スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂等の樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0129】
上記樹脂を含有する場合、上記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記含有量が上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0130】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。
【0131】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0132】
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0133】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0134】
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、効果が良好に得られる傾向がある。
【0135】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0136】
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0137】
上記ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0139】
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記数値範囲内であると、効果が良好に得られる傾向がある。
【0140】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0141】
加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、効果が良好に得られる傾向がある。
【0142】
上記ゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0143】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0144】
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0145】
前記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物);等を例示できる。
【0146】
上記ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0147】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を配合する場合、混練温度は、通常50~200℃であり、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分であり、好ましくは1分~30分である。
加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0148】
上記ゴム組成物(加硫後)は、振幅±0.25%歪みで測定した正接損失(tanδ)の温度分布曲線において、tanδが最大値となる時の温度(T)が、好ましくは-46℃以下、より好ましくは-50℃以下、更に好ましくは-54℃以下である。これにより、より良好な低燃費性能が得られる。これは以下のように推測される。
一般的にエステル化合物は石油由来の可塑剤に比べてガラス転移温度が低く、上記グリセロール脂肪酸トリエステルをゴム組成物に配合した場合、上記温度(T)は石油由来の可塑剤を配合した場合に比べて低下し、エネルギーロスが低下する。同時に上記温度(T)が低下することにより、ゴム組成物の持つエネルギーロスの温度度依存性が小さくなり、低温でも低いエネルギーロスを維持できる。
上記温度(T)の下限は特に限定されないが、良好なゴム強度が得られるという理由から、好ましくは-80℃以上、より好ましくは-70℃以上、更に好ましくは-60℃以上である。
上記温度(T)は、実施例に記載の方法により測定される。
なお、一般的に、ゴム組成物に使用される樹脂、スチレンブタジエンゴムやイソプレンゴム等を配合することで、上記温度(T)を上昇できる。
また、エステル化合物やエーテル化合物のような可塑剤を配合することで、上記温度(T)を低下できる。
【0149】
上記ゴム組成物(加硫後)は、温度20℃、振幅±0.25%歪みで測定した正接損失(20℃tanδ)と温度0℃、振幅±0.25%歪みで測定した正接損失(0℃tanδ)との比が下記式(X)を満たすことが好ましい。これにより、常温時と低温時とにおける転がり抵抗の変動が小さく低燃費性能の温度依存性が低く、気温の低い冬場でも低燃費性能の悪化を抑制することができ、低燃費タイヤ用ゴム組成物として好適に使用できる。
式(X)の下限は、好ましくは0.82以上、より好ましくは0.85以上、特に好ましくは0.90以上であり、式(X)の上限は特に限定されないが、良好な低燃費性能(特に、夏場の低燃費性能)が得られるという理由から、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.92以下である。
20℃tanδ/0℃tanδ≧0.80 式(X)
20℃tanδ、0℃tanδは、実施例に記載の方法により測定される。
なお、植物油(グリセロール脂肪酸トリエステル)を配合することで、20℃tanδ/0℃tanδを増大でき、上記範囲内とすることが可能となる。また、ポリブタジエンゴムのようなガラス転移温度が-60℃以下のゴムを配合することで、20℃tanδ/0℃tanδを低下できる。
【0150】
上記ゴム組成物は、タイヤ、靴底ゴム、産業用ベルト、パッキン、免震ゴム、薬栓等に使用でき、なかでも、タイヤに好適に使用できる。
【0151】
上記ゴム組成物は、サイドウォールに好適に用いられるが、サイドウォール以外のタイヤ部材、例えば、トレッド(キャップトレッド)、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層に用いてもよい。
【0152】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でサイドウォールなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0153】
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、ランフラットタイヤ、競技用タイヤ、冬用タイヤに好適に使用可能である。特に、乗用車用タイヤとしてより好適に使用できる。
【実施例】
【0154】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0155】
以下に製造例で用いた各種薬品について説明する。
イオン交換水:自社製
ロジン酸カリウム石鹸:ハリマ化成(株)製
脂肪酸ナトリウム石鹸:和光純薬工業(株)製
塩化カリウム:和光純薬工業(株)製
ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物:花王(株)製
スチレン:和光純薬工業(株)製のスチレン
1,3-ブタジエン:高千穂商事(株)製の1,3-ブタジエン
t-ドデシルメルカプタン:和光純薬工業(株)製のtert-ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)
ハイドロサルファイドナトリウム:和光純薬工業(株)製
FeSO4:和光純薬工業(株)製の硫酸第二鉄
EDTA:和光純薬工業(株)製のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム
ロンガリット:和光純薬工業(株)製のソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート
重合開始剤:日油(株)製のパラメンタンヒドロペルオキシド
重合停止剤:和光純薬工業(株)製のN,N-ジエチルヒドロキシルアミン
2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール:住友化学(株)製のスミライザーBHT
イタコン酸ジブチル(IDB):東京化成工業(株)製
【0156】
(乳化剤の調製)
イオン交換水9356g、ロジン酸カリウム石鹸1152g、脂肪酸ナトリウム石鹸331g、塩化カリウム51g、ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物30gを添加し70℃で2時間撹拌、乳化剤を調製した。
【0157】
(製造例1)
内容積50リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後に1,3-ブタジエン4650g、イタコン酸ジブチル(IDB)350g、t-ドデシルメルカプタン5.74g、上記乳化剤9688g、ハイドロサルファイドナトリウム6.3ml(1.8M)、活性剤(FeSO4/EDTA/ロンガリット)各6.3ml、重合開始剤6.3ml(2.3M)を添加し、攪拌下に10℃で3時間重合を行った。重合完了後、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン2.9g添加し、30分反応させ重合反応容器の内容物を取り出し、10gの2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールを加え、水の大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、共重合体1を得た。
【0158】
(製造例2)
製造例1の1,3-ブタジエン4650g、イタコン酸ジブチル(IDB)350gを、1,3-ブタジエン4300g、イタコン酸ジエチル(IDE)700gとした点以外は製造例1と同様の方法により製造し、共重合体2を得た。
【0159】
上記製造例で製造された共重合体について、ブタジエン(共役ジエン系単量体)の含有量、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル(上記式(1)で表される化合物)の含有量、スチレン(上記式(2)で表される化合物)の含有量、Mw、Mw/Mn、Tg、ムーニー粘度を表1に示す。なお、これらの測定方法について、以下にまとめて説明する。
【0160】
(各単量体単位の含有量)
23℃にてブルカー社製NMR装置を用いて1H-NMRを測定し、そのスペクトルより求めた6.5~7.2ppmのスチレン単位に基づくフェニルプロトンと、4.9~5.4ppmのブタジエン単位に基づくビニルプロトンと、3.9~4.2ppmのイソブチルビニルエーテル単位に基づくピークの比から各単量体単位の含有量を決定した。
【0161】
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定)
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0162】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、ガラス転移開始温度として求めた。
【0163】
(ムーニー粘度(ML1+4、130℃))
JIS-K6300に従い、(株)島津製作所製のムーニー粘度計(SMV-200)を使用して、130℃で1分間予熱したのち、4分間測定してゴムのムーニー粘度(ML1+4、130℃)を測定した。
【0164】
【0165】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
BR:ハイシスBR(シス含量:97質量%、Mw:40万)
共重合体1、2:上記製造例1、2で製造された共重合体
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシーストNH(N2SA:74m2/g、DBP:127ml/100g)
CNF:ダイセルファインケム(株)製のセリッシュKY-100G(セルロースミクロフィブリル、平均繊維長:0.5mm、平均繊維径:0.02μm、固形分:10質量%)なお、表3中のCNFの含有量は固形分量を示す。
シリカ:ローディア社製のZEOSIL 1115MP(N2SA:115m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi75(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
プロセスオイル:ジャパンエナジー社製のプロセスX-140(アロマオイル)
グリセロール脂肪酸トリエステル1~6:日清オイリオ(株)製の植物油(各特性を表2に示す。なお、表2中の脂肪酸の含有量は、構成脂肪酸100質量%中の各脂肪酸の含有量(質量%)を意味する。)
樹脂:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT-100AS(C5系脂肪族系石油樹脂、軟化点:100℃)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:フレキシス(株)製のサントフレックス13(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
【0166】
【0167】
<実施例及び比較例>
表3に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を4分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をサイドウォールの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で20分間加圧加熱を行って、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて下記の評価を行い、結果を表3に示した。
【0168】
(20℃tanδ/0℃tanδ)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動的歪振幅0.25%、周波数10Hz、温度20℃及び0℃で加硫ゴム組成物のtanδを測定した。測定値を式(X)=20℃tanδ/0℃tanδに代入し、式(X)値を求めた。数値が大きいほど、常温時と低温時とにおける転がり抵抗の変動が小さく低燃費性能の温度依存性が低く、気温の低い冬場でも低燃費性能の悪化を抑制することができ、低燃費タイヤ用ゴム組成物として好適に使用できることを示す。
【0169】
(温度(T))
得られた加硫ゴム組成物について、(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動的歪振幅0.25%、周波数10Hzおよび昇温速度2℃/minの条件下で、-120℃から70℃までの温度範囲で、tanδの温度分布曲線を測定した。そして、tanδが最大値となる時の温度(T)を算出した。
【0170】
(外観評点)
雨水がかからない屋根付きの屋外に60日間放置した試験用タイヤの状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:変色がほとんどなく黒色が保たれている
○:大きな変色はないが、黒色が薄れている部分がある
△:局所的に変色部分があり、外観が損なわれている
×:明らかに変色しており、著しく外観が損なわれている
◎、○、△、×の順でタイヤ外観が良好で、タイヤの黒色度が保たれていることを示し外観品質性能が高い。
【0171】
(ゴム強度指数)
得られた加硫ゴム組成物を用いて、JIS K6251に準じて引張試験を行い、破断時の強さ(TB)と伸び(EB)を測定した。測定値を(式)=TB×EB/2に代入し、破壊エネルギーを求めた。比較例1の破壊エネルギーを100とした場合の各ゴム組成物の破壊エネルギーを指数で示した。指数が大きい程、破壊強度が大きくゴム強度が高いことを示す。
【0172】
(低燃費性能指数)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動的歪振幅0.25%、周波数10Hz、温度50℃で加硫ゴム組成物のtanδを測定した。tanδの逆数の値について比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性能に優れることを示す。
【0173】
【0174】
表3から、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、補強性充填剤と、植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルとを含有し、前記ジエン系ゴムとしてイソプレン系ゴムを含み、前記グリセロール脂肪酸トリエステルが、構成脂肪酸100質量%中の、飽和脂肪酸の含有量が10~25質量%、不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%未満であり、ゴム成分100質量部に対して、前記補強性充填剤を50質量部以下含有する実施例は、良好な外観を維持しつつ、良好な低燃費性能、ゴム強度を有した。
【0175】
実施例1、比較例1、6、7の対比により、イソプレン系ゴムと、特定のグリセロール脂肪酸トリエステルを併用することにより低燃費性能、ゴム強度を相乗的に改善できることが分かった。