(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】真空ポンプ起動制御装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/02 20060101AFI20220105BHJP
F04D 19/04 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F04B49/02 331D
F04D19/04 H
(21)【出願番号】P 2017171871
(22)【出願日】2017-09-07
【審査請求日】2019-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】小亀 正人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 春彦
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-254682(JP,A)
【文献】特表2008-510093(JP,A)
【文献】特開2004-339954(JP,A)
【文献】特開2007-071200(JP,A)
【文献】特開2012-127316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16、49/00-51/00
F04C 25/02
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプと前記真空ポンプの背圧側に接続されるバックポンプとを備える排気システムに用いられ、前記真空ポンプの起動停止を制御する真空ポンプ起動制御装置であって、
前記真空ポンプにより排気されるチャンバのバックポンプ起動後の吸気口圧力に関する情報に基づいて、前記真空ポンプの起動タイミングを設定する設定部を備え、
前記吸気口圧力に関する情報はチャンバ圧力推定値であり、
前記設定部は、前記チャンバの容積、前記バックポンプの排気速度および前記真空ポンプのポンプ吸気口からポンプ排気口までのコンダクタンスに基づいて前記チャンバ圧力推定値を算出し、前記チャンバ圧力推定値が前記真空ポンプの起動可能圧力上限値以下となるタイミングを前記起動タイミングに設定し、
前記設定部により設定された前記起動タイミングにおいて前記真空ポンプを起動する、
真空ポンプ起動制御装置。
【請求項2】
真空ポンプと前記真空ポンプの背圧側に接続されるバックポンプとを備える排気システムに用いられ、前記真空ポンプの起動停止を制御する真空ポンプ起動制御装置であって、
前記真空ポンプにより排気されるチャンバのバックポンプ起動後の吸気口圧力に関する情報に基づいて、前記真空ポンプの起動タイミングを設定する設定部を備え、
前記吸気口圧力に関する情報は、バックポンプ起動からの経過時間であり、
前記設定部は、前記チャンバの容積、前記バックポンプの排気速度および前記真空ポンプのポンプ吸気口からポンプ排気口までのコンダクタンスに基づいてチャンバ内圧力が前記真空ポンプの起動可能圧力上限値となる経過時間を算出し、算出された前記経過時間を前記起動タイミングに設定し、
前記設定部により設定された前記起動タイミングにおいて前記真空ポンプを起動する、
真空ポンプ起動制御装置。
【請求項3】
真空ポンプと前記真空ポンプの背圧側に接続されるバックポンプとを備える排気システムに用いられ、前記真空ポンプの起動停止を制御する真空ポンプ起動制御装置であって、
前記真空ポンプにより排気されるチャンバのバックポンプ起動後の吸気口圧力に関する情報に基づいて、前記真空ポンプの起動タイミングを設定する設定部を備え、
前記吸気口圧力に関する情報は、前記真空ポンプのポンプロータを回転駆動するモータのモータ電流値であり、
前記設定部は、前記起動タイミングとして、起動加速時の前記モータ電流値よりも低い一定モータ電流値で前記真空ポンプを起動する第1のタイミングと、前記一定モータ電流値のときのロータ回転数とポンプ吸気口圧力値との相関に基づいて推定される加速開始タイミングである第2のタイミングと、を設定し、
前記第1のタイミングで前記一定モータ電流値による前記真空ポンプの駆動を開始し、前記第2のタイミングで前記真空ポンプの回転速度の加速を開始する、真空ポンプ起動制御装置。
【請求項4】
真空ポンプと、前記真空ポンプの背圧側に接続されるバックポンプと、前記真空ポンプにより排気されるチャンバと、前記チャンバと前記真空ポンプとを接続する排気ラインと、前記排気ラインに設けられた第1のバルブと、前記チャンバと前記バックポンプとを接続するバイパスラインと、前記バイパスラインに設けられた第2のバルブと、を有する排気システムに用いられ、前記真空ポンプの起動停止を制御する真空ポンプ起動制御装置であって、
バックポンプ起動後に真空計により計測される前記チャンバの圧力計測値に基づいて、前記圧力計測値が前記真空ポンプの起動可能圧力上限値以下となるタイミングを、前記真空ポンプの起動タイミングに設定する設定部と、
前記第1のバルブを閉状態にすると共に前記第2のバルブを開状態に
して前記バイパスラインにより前記チャンバを排気し、
前記圧力計測値が前記真空ポンプの前記起動可能圧力となったタイミングで前記真空ポンプを起動し、
前記真空ポンプを起動後、前記第1のバルブを閉状態にすると共に前記第2のバルブを開状態にして前記バイパスラインによる前記チャンバの排気を継続し、
前記圧力計測値が前記真空ポンプの定常運転状態を維持できる定常運転可能圧力値以下
になったときに、前記第1のバルブを開状態にすると共に前記第2のバルブを閉状態
にして前記真空ポンプにより前記チャンバを排気するバルブ制御部と、
を備える真空ポンプ起動制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の真空ポンプ起動制御装置において、
前記排気システムは、前記チャンバと前記真空ポンプとを接続する排気ラインに設けられた第1のバルブと、前記チャンバと前記バックポンプとを接続するバイパスラインと、前記バイパスラインに設けられた第2のバルブとを有し、
前記設定部は、前記真空ポンプのポンプ吸気口からポンプ排気口までのコンダクタンスに代えて前記バイパスラインのコンダクタンスを使用し、前記バックポンプの排気速度および前記バイパスラインのコンダクタンスに基づいて前記チャンバ圧力推定値を算出し、
前記バイパスラインによる前記チャンバの排気時には前記第1のバルブを閉状態にすると共に前記第2のバルブを開状態にし、前記チャンバ圧力推定値が前記真空ポンプの定常運転状態を維持できる定常運転可能圧力値以下になると、前記第1のバルブを開状態にすると共に前記第2のバルブを閉状態にするバルブ制御部を備える、真空ポンプ起動制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の真空ポンプ起動制御装置において、
前記真空ポンプへ電源を供給する電源供給部と、
前記真空ポンプの少なくともモータ電流値およびロータ回転数を含むポンプ状態を表示する表示部と、を備える真空ポンプ起動制御装置。
【請求項7】
請求項4に記載の真空ポンプ起動制御装置において、
前記真空ポンプおよび前記真空計の少なくとも一方へ電源を供給する電源供給部と、
前記真空計で計測された圧力計測値、および前記真空ポンプの少なくともモータ電流値およびロータ回転数を含むポンプ状態を表示する表示部と、を備える真空ポンプ起動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ起動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプは真空容器を高真空に排気する真空ポンプであるが、ターボ分子ポンプ単体では排気したガスを大気に排出することができず、排気側に低真空ポンプをバックポンプとして接続する(例えば、特許文献1参照)。また、ターボ分子ポンプで真空容器を排気する場合、低真空ポンプを用いて真空容器を予め所定の真空度まで粗引きしてからターボ分子ポンプを起動する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、真空容器の容積によって所定の真空度まで粗引きする時間が異なるため、オペレータが誤って所定の真空度になる前にターボ分子ポンプを起動してしまうと、ターボ分子ポンプが定格回転まで加速できずに過負荷保護機能により停止してしまう場合がある。このように、バックポンプを備える真空ポンプにおいて、真空ポンプの適切な起動動作を行えないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい態様による真空ポンプ起動制御装置は、真空ポンプと前記真空ポンプの背圧側に接続されるバックポンプとを備える排気システムに用いられ、前記真空ポンプの起動停止を制御する真空ポンプ起動制御装置であって、前記真空ポンプにより排気されるチャンバのバックポンプ起動後の吸気口圧力に関する情報に基づいて、前記真空ポンプの起動タイミングを設定する設定部を備え、前記吸気口圧力に関する情報はチャンバ圧力推定値であり、前記設定部は、前記チャンバの容積、前記バックポンプの排気速度および前記真空ポンプのポンプ吸気口からポンプ排気口までのコンダクタンスに基づいて前記チャンバ圧力推定値を算出し、前記チャンバ圧力推定値が前記真空ポンプの起動可能圧力上限値以下となるタイミングを前記起動タイミングに設定し、前記設定部により設定された前記起動タイミングにおいて前記真空ポンプを起動する。
本発明の好ましい態様による真空ポンプ起動制御装置は、真空ポンプと前記真空ポンプの背圧側に接続されるバックポンプとを備える排気システムに用いられ、前記真空ポンプの起動停止を制御する真空ポンプ起動制御装置であって、前記真空ポンプにより排気されるチャンバのバックポンプ起動後の吸気口圧力に関する情報に基づいて、前記真空ポンプの起動タイミングを設定する設定部を備え、前記吸気口圧力に関する情報は、バックポンプ起動からの経過時間であり、前記設定部は、前記チャンバの容積、前記バックポンプの排気速度および前記真空ポンプのポンプ吸気口からポンプ排気口までのコンダクタンスに基づいてチャンバ内圧力が前記真空ポンプの起動可能圧力上限値となる経過時間を算出し、算出された前記経過時間を前記起動タイミングに設定し、前記設定部により設定された前記起動タイミングにおいて前記真空ポンプを起動する。
本発明の好ましい態様による真空ポンプ起動制御装置は、真空ポンプと前記真空ポンプの背圧側に接続されるバックポンプとを備える排気システムに用いられ、前記真空ポンプの起動停止を制御する真空ポンプ起動制御装置であって、前記真空ポンプにより排気されるチャンバのバックポンプ起動後の吸気口圧力に関する情報に基づいて、前記真空ポンプの起動タイミングを設定する設定部を備え、前記吸気口圧力に関する情報は、前記真空ポンプのポンプロータを回転駆動するモータのモータ電流値であり、前記設定部は、前記起動タイミングとして、起動加速時の前記モータ電流値よりも低い一定モータ電流値で前記真空ポンプを起動する第1のタイミングと、前記一定モータ電流値のときのロータ回転数とポンプ吸気口圧力値との相関に基づいて推定される加速開始タイミングである第2のタイミングと、を設定し、前記第1のタイミングで前記一定モータ電流値による前記真空ポンプの駆動を開始し、前記第2のタイミングで前記真空ポンプの回転速度の加速を開始する。
本発明の好ましい態様による真空ポンプ起動制御装置は、真空ポンプと、前記真空ポンプの背圧側に接続されるバックポンプと、前記真空ポンプにより排気されるチャンバと、前記チャンバと前記真空ポンプとを接続する排気ラインと、前記排気ラインに設けられた第1のバルブと、前記チャンバと前記バックポンプとを接続するバイパスラインと、前記バイパスラインに設けられた第2のバルブと、を有する排気システムに用いられ、前記真空ポンプの起動停止を制御する真空ポンプ起動制御装置であって、バックポンプ起動後に真空計により計測される前記チャンバの圧力計測値に基づいて、前記圧力計測値が前記真空ポンプの起動可能圧力上限値以下となるタイミングを、前記真空ポンプの起動タイミングに設定する設定部と、前記バイパスラインによる前記チャンバの排気時には前記第1のバルブを閉状態にすると共に前記第2のバルブを開状態にし、前記圧力計測値が前記真空ポンプの定常運転状態を維持できる定常運転可能圧力値以下になると、前記第1のバルブを開状態にすると共に前記第2のバルブを閉状態にするバルブ制御部と、を備える。
さらに好ましい態様では、前記排気システムは、前記チャンバと前記真空ポンプとを接続する排気ラインに設けられた第1のバルブと、前記チャンバと前記バックポンプとを接続するバイパスラインと、前記バイパスラインに設けられた第2のバルブとを有し、前記設定部は、前記真空ポンプのポンプ吸気口からポンプ排気口までのコンダクタンスに代えて前記バイパスラインのコンダクタンスを使用し、前記バックポンプの排気速度および前記バイパスラインのコンダクタンスに基づいて前記チャンバ圧力推定値を算出し、前記バイパスラインによる前記チャンバの排気時には前記第1のバルブを閉状態にすると共に前記第2のバルブを開状態にし、前記チャンバ圧力推定値が前記真空ポンプの定常運転状態を維持できる定常運転可能圧力値以下になると、前記第1のバルブを開状態にすると共に前記第2のバルブを閉状態にするバルブ制御部を備える。
さらに好ましい態様では、前記真空ポンプへ電源を供給する電源供給部と、前記真空ポンプの少なくともモータ電流値およびロータ回転数を含むポンプ状態を表示する表示部と、を備える。
さらに好ましい態様では、前記真空ポンプおよび前記真空計の少なくとも一方へ電源を供給する電源供給部と、前記真空計で計測された圧力計測値、および前記真空ポンプの少なくともモータ電流値およびロータ回転数を含むポンプ状態を表示する表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、バックポンプが接続された真空ポンプの起動動作を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図2は、モニタモードにおける表示画面の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態における起動制御の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、起動制御中における圧力計測値の変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、t=taにおける表示画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、t=tbにおける表示画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態の変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態における表示部の表示例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施の形態における起動制御の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、起動動作中における圧力計測値の変化の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、t=tc、t=tdおよびt=teにおける表示画面の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第3の実施の形態における起動制御の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、変形例1における起動制御の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、変形例2における起動制御の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、時間t1,t2を推定する場合の起動制御を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、ロータ回転数と圧力値との相関の一例を示す模式図である。
【
図19】
図19は、第4の実施の形態における第1の制御例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、本実施の形態における第2の制御例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
-第1の実施の形態-
図1は本発明の第1の実施の形態を示す図であり、起動制御装置3を備える排気システム100の構成を示すブロック図である。排気システム100は、ターボ分子ポンプ1、バックポンプ2および起動制御装置3を備えている。ターボ分子ポンプ1は、真空排気を行うポンプ本体11とポンプ本体11を駆動制御するポンプ制御装置12とを備えている。ポンプ本体11の吸気側は排気対象である真空チャンバ4に接続される。真空チャンバ4には、チャンバ内圧力を計測するための真空計5が設けられている。
【0009】
ポンプ本体11は、タービン翼が形成されたポンプロータ110と、ポンプロータ110を回転駆動するモータ111と、ポンプロータ110の回転数を検出する回転センサ112とを備えている。ポンプ本体11の排気側にはバックポンプ2が接続される。ターボ分子ポンプ1は吸気口から流入した気体を大気圧まで圧縮して排気口から排出することができないので、ポンプ本体11の排気側にドライポンプ等のバックポンプ2を設けて、ターボ分子ポンプ1の排気側の気体をバックポンプ2で大気圧まで圧縮して排出するようにしている。
【0010】
起動制御装置3は、ターボ分子ポンプ1およびバックポンプ2の起動停止等を制御する装置であり、CPU,RAM,ROM等を備える制御演算部30、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリで構成される記憶部31、ポンプ状態や圧力値等を表示する表示部33、起動制御装置3への手動入力操作を行うための入力操作部32、および外部装置に電源を供給する電源供給部34を備えている。
【0011】
図1に示す例では、電源供給部34は、ポンプ制御装置12および真空計5に電源V1を供給している。ここでは、ポンプ制御装置12および真空計5に同電圧の電源V1を供給しているが、異なっていても構わない。また、起動制御装置3は、起動および停止をリモート操作により指示するTMP制御信号S1をポンプ制御装置12へ出力すると共に、バックポンプ2の起動停止を行うBP制御信号S3を出力する。起動制御装置3には、真空計5から圧力計測値Pcを表すアナログ電圧信号が入力され、ポンプ制御装置12からポンプ状態信号S2が入力され、バックポンプ2からアラーム通知信号S4が入力される。
【0012】
図2は、表示部33に表示される表示画面の一例を示す図である。
図2(a)~
図2(d)に示す表示画面は、ポンプ状態や圧力値に関するモニタモードの表示画面を示したものである。なお、説明は省略するが、
図2に示す表示画面以外にもアラームに関する表示画面、設定に関する表示画面等がある。表示形態をモニタモードに切り替えると、
図2(a)の表示画面が表示部33に表示される。
【0013】
図2(a)に示すモニタモードの第1画面では、画面上下方向に4種類のデータが表示される。上から順に、ターボ分子ポンプ1の運転状態(TMP STATUS)、バックポンプ2の運転状態(BP STATUS)、ターボ分子ポンプ1のロータ回転数(ROT. SPEED)、真空計5の圧力計測値(PRESS.)が表示されている。
図2(a)は、ターボ分子ポンプ1およびバックポンプ2が停止中の場合の表示であり、ターボ分子ポンプ1の運転状態およびバックポンプ2の運転状態は「STOP」と表示され、ロータ回転数は「0.0%」、圧力計測値は「1.0E+05 Pa」のように表示されている。ロータ回転数については「00rpm」のように表示を切り替えることができる。
【0014】
図2(a)に示す表示状態において入力操作部32を操作して画面を切り替えると、
図2(b)に示すようなモニタモードの第2画面が表示される。第2画面では、ターボ分子ポンプ1およびバックポンプ2の運転状態のみが大きく表示される。
【0015】
図2(b)に示す表示状態において入力操作部32を操作して画面を切り替えると、
図2(c)に示すようなモニタモードの第3画面が表示される。第3画面では、ターボ分子ポンプ1のロータ回転数のみが大きく表示される。
【0016】
図2(c)に示す表示状態において入力操作部32を操作して画面を切り替えると、
図2(d)に示すようなモニタモードの第4画面が表示される。第4画面では、圧力計測値のみが大きく表示される。
図2(d)の状態において入力操作部32を操作して画面を切り替えると、
図2(a)の第1画面に戻る。
【0017】
次に、起動制御装置3による起動制御について説明する。
図3は、起動制御装置3の制御演算部30によるターボ分子ポンプ1およびバックポンプ2の起動制御の一例を示すフローチャートである。また、
図4は起動制御中における圧力計測値Pcの変化を模式的に示す図であり、
図5,6は制御制御中における表示部33の表示の一例を示す図である。
【0018】
オペレータが起動制御装置3の入力操作部32を手動操作して排気システム100による排気動作を開始させると、
図3に示す処理がスタートする。ステップS10では、バックポンプ2の起動を指示するBP制御信号S3をバックポンプ2へ出力する。それによりバックポンプ2が起動され、ポンプ本体11を介した真空チャンバ4の排気が開始される。その結果、
図4に示すように、大気圧P0であった真空チャンバ4の圧力計測値PcはラインL1のように低下する。
【0019】
ステップS10が実行された後の
図4のt=taにおいては、表示部33には
図5に示すような表示画面が表示される。
図5(a)に示す第1画面においては、バックポンプ2の状態(BP STATUS)は「ON(起動)」状態となっており、真空計5による真空チャンバ4の圧力計測値Pc(PRESS.)は「7.0E+04 Pa」に低下している。そのため、第2画面および第4画面は、
図5(b)および
図5(d)のようになる。一方、ターボ分子ポンプ1は停止しているので、
図5(a)に示す第1画面において、TMP STATUSは「STOP」と表示され、ROT.SPEEDは「0.0」と表示されている。ロータ回転数を示す第3画面は、
図5(c)のようになる。
【0020】
ステップS20では、真空計5からの圧力計測値Pcに基づいて、真空チャンバ4の圧力がターボ分子ポンプ1の起動可能圧力値P1以下に低下したか否かを判定する。起動可能圧力値P1は、ターボ分子ポンプ1が定常回転状態まで運転可能な吸気口圧力の上限値である。Pc≦P1と判定されるとステップS30へ進み、ポンプ制御装置12に対してターボ分子ポンプ1の起動を指示するTMP制御信号S1を出力する。すなわち、制御演算部30は、ターボ分子ポンプ1が定常回転状態まで運転可能な起動タイミング(起動可能圧力値P1)を設定し、その起動タイミングにおいてターボ分子ポンプ1を起動する。
【0021】
一般に、ターボ分子ポンプ1で真空チャンバ4を排気する場合、予めバックポンプ2により起動可能圧力値P1まで真空チャンバ4を粗引きしてから、ターボ分子ポンプ1を起動するようにしている。チャンバ内の圧力計測値Pcが起動可能圧力値P1に低下する前にターボ分子ポンプ1を起動すると、ポンプロータ110を定常回転状態まで加速できないおそれがある。このような場合、ポンプ制御装置12に備えられた保護機能(過負荷保護機能)により、ポンプロータ110の回転は停止する。
【0022】
ステップS30の処理によりターボ分子ポンプ1のモータ111によるポンプロータ110の回転駆動が開始され、ターボ分子ポンプ1による真空チャンバ4の排気が開始される。その結果、
図4のラインL2で示すように、真空チャンバ4の圧力計測値Pcは起動可能圧力値P1からさらに低下する。
【0023】
ステップS30でターボ分子ポンプ1が起動された後の
図4のt=tbにおいては、表示部33には
図6に示すような表示画面が表示される。t=tbにおいては、ターボ分子ポンプ1は起動後の加速状態にあって、ロータ回転数は定格回転数の60.5%になっている。定格回転数でなくても排気作用が発生するので、圧力計測値Pcは起動可能圧力値P1よりも低い1.2E-0.2Paに低下している。そのため、第1画面としては、
図6(a)に示すような表示画面が表示部33に表示される。
【0024】
すなわち、第1画面においては、ターボ分子ポンプ1の状態(TMP STATUS)は加速中を表す「ACC.」と表示され、バックポンプ2の状態(BP STATUS)は「ON」と表示され、圧力計測値Pc(PRESS.)は「1.2E-02 Pa」と表示されている。そのため、第2画面、第3画面、第4画面は
図6(b)~(d)のようになる。
【0025】
なお、
図2ではポンプ停止動作について省略したが、オペレータによる入力操作部32の操作により、ターボ分子ポンプ1による排気動作を停止する指令が入力されると、起動制御装置3による一連の停止動作が実行される。例えば、ターボ分子ポンプ1の駆動を停止した後に、バックポンプ2の駆動を停止する。
【0026】
(変形例)
図7は、
図1に示した排気システム100の変形例を示す図である。
図1に示す排気システム100では起動制御装置3をターボ分子ポンプ1およびバックポンプ2に対して独立した構成として設けたが、
図7に示す例では、ポンプ制御装置12内に起動制御装置3を内蔵する構成とした。ポンプ制御装置12には、モータ制御部120が設けられ、このモータ制御部120によってポンプ本体11のモータ111が駆動制御される。なお、図示を省略したが、
図1に記載のポンプ制御装置12にもモータ制御部120が設けられている。また、図示は省略したが、起動制御装置3の内部構成は、
図1に示した起動制御装置3と同様の構成となっており、起動制御装置3の制御動作も上述した第1の実施の形態と同様である。なお、例えば、
図1の記憶部31や制御演算部30を、モータ制御部120あるいはポンプ制御装置12に実装したメモリやプロセッサなどを用いて実施しても良い。
【0027】
起動制御装置3は、モータ制御部120および真空計5に電源V1を供給する。また、起動制御装置3は、TMP制御信号S1をモータ制御部120へ出力すると共にBP制御信号S3をバックポンプ2へ出力する。起動制御装置3には、真空計5から圧力計測値Pcを表すアナログ電圧信号が入力され、モータ制御部120からポンプ状態信号S2が入力され、バックポンプ2からアラーム通知信号S4が入力される。ポンプ状態信号S2は、例えば、ロータ回転数やモータ電流値等である。
【0028】
-第2の実施の形態-
図8は、第2の実施の形態を示す図である。第2の実施の形態では、排気システム100に、バックポンプ2と真空チャンバ4とを連通するバイパス配管8が設けられている。バイパス配管8にはバルブ7が設けられている。また、ポンプ本体11と真空チャンバ4との間、すなわち主排気ラインにはバルブ6が設けられている。なお、
図8では、
図7に示した場合と同様に起動制御装置3がポンプ制御装置12に内蔵されている構成としたが、
図1に場合と同様に起動制御装置3が独立に設けられる構成としても良い。
【0029】
図8では図示は省略したが、起動制御装置3の構成は
図1に示した起動制御装置3と同様である。起動制御装置3の制御演算部30は、バルブ6およびバルブ7に開閉制御信号S5、S6をそれぞれ出力する。制御演算部30の表示部33には、バルブ6,7の開閉状態も表示される。なお、例えば、
図1の記憶部31や制御演算部30を、モータ制御部120あるいはポンプ制御装置12に実装したメモリやプロセッサなどを用いて実施しても良い。
【0030】
図9は表示部33に表示される表示画面の一例を示す図であり、
図2に示した表示形態に対してバルブ6,7の開閉状態に対する表示が追加されている。
図9(a)に示すモニタモードの第1画面では、圧力計測値の表示の下側に、バルブ6の開閉状態「VALVE1 STATUS」に関する表示、バルブ7の開閉状態「VALVE2 STATUS」に関する表示が表示されている。第2画面、第3画面、第4画面の表示は
図2(b)~(d)に示したものと同様であり、
図9では記載を省略した。
図9(b)は、バルブ6,7の開閉状態を示す第5画面の表示例である。
【0031】
図10は、起動制御装置3の制御演算部30(
図1参照)によるターボ分子ポンプ1、バックポンプ2、バルブ6およびバルブ7の制御の一例を示すフローチャートである。なお、
図10に示すフローチャートでは、
図3に示すフローチャートの処理と同一処理を行うステップには同一符号を付した。
【0032】
オペレータが起動制御装置3の入力操作部32を手動操作して排気システム100による排気動作を開始させると、
図10に示す処理がスタートする。ステップS10では、バックポンプ2の起動を指示するBP制御信号S3をバックポンプ2へ出力する。次いで、ステップS100では、バルブ6を閉じる開閉制御信号S5およびバルブ7を開く開閉制御信号S6を出力する。その結果、真空チャンバ4がバイパス配管8を介してバックポンプ2により排気される。
【0033】
図11は、起動動作中における圧力計測値Pcの変化を模式的に示す図であり、バックポンプ2による排気により真空チャンバ4の圧力計測値PcはラインL3で示すように低下する。t=tcにおいて表示部33に表示される第1画面は、
図12(a)のようになる。ターボ分子ポンプ1は停止状態(STOP)であって、バックポンプ2はON状態であり、バルブ6の開閉状態(VALVE1 STATUS)は「CLOSE」であり、バルブ7の開閉状態(VALVE2 STATUS)は「OPEN」である。また、真空チャンバ4の圧力計測値Pc(PRESS.)は、バイパス配管8を介した排気により「7.0E+04 Pa」に低下している。
【0034】
ステップS20では、圧力計測値Pcに基づいて、真空チャンバ4の圧力がターボ分子ポンプ1の起動可能圧力値P1まで低下したか否かを判定する。ステップS20でPc≦P1と判定されるとステップS30へ進み、モータ制御部120に対してターボ分子ポンプ1の起動を指示するTMP制御信号S1を出力する。それによりポンプロータ110の回転駆動が開始される。
【0035】
このとき、真空チャンバ4とポンプ本体11との間のバルブ6は閉状態なので、ポンプロータ110の回転を開始しても真空チャンバ4はバックポンプ2のみによる排気が継続される。その結果、真空チャンバ4の圧力計測値Pcは引き続き
図11のラインL3のように低下する。一方、ポンプ本体11の直上の圧力すなわちポンプ吸気口圧力は、ポンプ本体11による排気作用によって、破線で示すラインL4のように低下する。
【0036】
t=tdにおいて表示部33に表示される第1画面は、
図12(b)のようになる。t=t1においてスタートされたターボ分子ポンプ1は、t=tdにおいては加速状態から定常運転状態へと移行しているとする。定常運転状態では、ロータ回転数が定格回転数を含む所定回転数範囲に維持される。そのため、
図12(b)では、ターボ分子ポンプ1の運転状態(TMP STATUS)は定常運転状態を示す「NORMAL」と表示され、ロータ回転数(ROT.SPEED)は「100%」と表示されている。真空チャンバ4の圧力計測値Pc(PRESS.)は起動可能圧力値P1よりも低下し、「8.0E-01 Pa」のように表示されている。
【0037】
その後、バックポンプ2による排気により真空チャンバ4の圧力計測値Pcがターボ分子ポンプ1の定常運転可能圧力値P2以下となると、ステップS110でPc≦P2と判定されてステップS120へ進む。ステップS120では、バルブ6を開く開閉制御信号S5およびバルブ7を閉じる開閉制御信号S6を出力する。その結果、ターボ分子ポンプ1による真空チャンバ4の排気が開始され、真空チャンバ4の圧力計測値Pcは
図11のラインL5のように低下する。
【0038】
ところで、ステップS120においてバルブ6が開状態とされると、
図11の破線で示すラインL4のようにポンプ本体11の直上の圧力は圧力値P2まで急激に上昇することになる。そのため、定格回転数においてバルブ6を開くタイミングにおける圧力値P2が高すぎると、高速回転しているポンプロータ110に過剰な負荷がかかるという問題が生じる。特に、磁気浮上式のターボ分子ポンプの場合、急激な圧力上昇によりポンプロータ110の軸方向位置が大きく変化してタッチダウンするおそれがある。そのため、本実施の形態では、圧力値P2を過負荷やタッチダウンが発生しない圧力値、すなわち定常運転可能圧力値に設定し、定常運転中(
図11のt=t2のタイミング)にバルブ6を開く場合には、定常運転可能圧力値P2までチャンバ内圧力が低下してからバルブ6を開くようにする。
【0039】
t=teにおいて表示部33に表示される第1画面は、
図12(c)のようになる。バルブ6の開閉状態(VALVE1 STATUS)は「OPEN」と表示され、バルブ7の開閉状態(VALVE2 STATUS)は「CLOSE」と表示される。真空チャンバ4の圧力計測値Pc(PRESS.)はターボ分子ポンプ1の排気によりさらに低下して、「5.0E-03 Pa」のように表示されている。
【0040】
-第3の実施の形態-
図13は、本発明の第3の実施の形態を示す図である。上述した第1の実施の形態では、真空計5によって計測された真空チャンバ4の圧力計測値Pcに基づいて、
図3に示すような起動制御を行った。一方、
図13に示す構成では、ポンプ制御装置12に圧力計測値Pcが入力されない構成となっている。第3の実施の形態では、このように圧力計測値Pcが入力されない場合の起動制御について説明する。
図13では、
図1の場合と同様に起動制御装置3を独立して設ける構成としたが、
図7の場合と同様にポンプ制御装置12に内蔵する構成としても良い。
【0041】
起動制御装置3の記憶部31には、ターボ分子ポンプ1の起動制御に必要な情報(詳細は後述する)が記憶されている。起動制御装置3は、圧力計測値Pcの入力がある場合には第1の実施の形態で説明したような制御を行い、圧力計測値Pcの入力が無い場合には後述する本実施形態における制御を行う。もちろん、圧力計測値Pcの入力が無い場合の起動制御のみを実行するような構成であっても良い。
【0042】
記憶部31に記憶されている起動制御に必要な情報には、バックポンプ2の排気速度Sbp、真空チャンバ4の容積Vc、ターボ分子ポンプ1のポンプロータ110が停止している状態におけるポンプ本体11の吸気口から排気口までのコンダクタンスCp等が含まれる。制御演算部30は、記憶部31に記憶されている上記情報に基づいて、後述する圧力推定値Pe(t)を推定演算する。
【0043】
図14は、第3の実施の形態における起動制御の一例を示すフローチャートである。
図14のフローチャートは、
図3のフローチャートにステップS200を追加すると共にステップS20をステップS210に置き換えたものである。以下ではステップS200,S210を中心に説明する。
【0044】
図14のステップS10の処理によってバックポンプ2が起動されると、真空チャンバ4はポンプロータ110が停止した状態のポンプ本体11を介してバックポンプ2により排気される。この場合のポンプ本体11の吸気口における排気速度(以下では、実効排気速度と呼ぶことにする)Seffは、ポンプ本体11のコンダクタンスCpとバックポンプ2の排気速度Sbpを用いて次式(1)のように表される。
1/Seff=1/Cp+1/Sbp …(1)
【0045】
真空チャンバ4の圧力推定値Peは、次式(2)に示す排気の式を満足する。式(2)から、圧力推定値Peは式(3)のように求まる。
図4のラインL1で示す圧力の時間変化は、式(3)によって算出される圧力推定値Pe(t)によって推定することができる。なお、ラインL1における排気開始時の圧力は大気圧P0なので、式(3)の右辺の係数をP0とした。
Vc・(dPe/dt)=-Seff・Pe …(2)
Pe(t)=P0・exp{(-Seff/Vc)・t} …(3)
【0046】
図14のステップS200では、制御演算部30において圧力推定値Pe(t)の推定演算が行われる。なお、時間tは、バックポンプ2の起動からの経過時間である。ステップS210では、圧力推定値Pe(t)がターボ分子ポンプ1の起動可能圧力値P1以下か否かを判定する。Pe(t)≦P1と判定されるとステップS30へ進み、ポンプ制御装置12に対してターボ分子ポンプ1の起動を指示するTMP制御信号S1を出力する。その結果、ポンプロータ110の回転駆動が開始される。一方、Pe(t)>P1と判定された場合には、ステップS200へ戻って再び圧力推定値Pe(t)の推定演算を実行する。
【0047】
なお、実効排気速度Seffは、式(1)で示すように記憶部31に記憶されている真空チャンバ4の容積Vc、バックポンプの排気速度Sbpに応じた値となる。記憶部31における容積Vcおよび排気速度Sbpの設定変更は、例えば、オペレータが
図13に示す入力操作部32を操作して、真空チャンバ4の容積Vcおよびバックポンプ2の排気速度Sbpを入力すると実行される。これにより、
図14の起動制御のステップS200において、入力された容積Vcおよび排気速度Sbpに応じた圧力推定値Pe(t)が推定演算される。
【0048】
(変形例1)
上述した第3の実施の形態では、
図13の構成において、制御演算部30で圧力推定値Pe(t)を推定し、
図14のフローチャートに示すような起動制御を行った。一方、以下に説明する変形例1では、
図13の構成において、圧力推定値Pe(t)が起動可能圧力値P1となる時間t1、すなわちPe(t)=P1となる時間t1を制御演算部30で推定し、その推定された時間t1を用いて
図14の場合と同様の起動制御を行うようにした。
【0049】
起動制御装置3は、真空チャンバ4の容積Vc、バックポンプの排気速度Sbpが入力されると、式(1)~(3)の演算を行い圧力推定値Pe(t)を求める。さらに、その圧力推定値Pe(t)を用いて、次式(4)によりPe(t)=P1となる時間t1を算出する。入力された真空チャンバ4の容積Vcおよびバックポンプ2の排気速度Sbpと、算出された時間t1は、記憶部31に記憶される。
t1=(Vc/Seff)・ln(P0/P1) …(4)
【0050】
図15は、変形例1における起動制御を説明するフローチャートである。ステップS10の処理によってバックポンプ2が起動されると、ステップS220において起動制御装置3の制御演算部30はタイマによる計時を開始する。ステップS230では、タイマによる計時時間tが、Pe(t)=P1となる時間t1に対してt≧t1を満足するか否かを判定する。ステップS230でt≧t1と判定されると、ステップS30へ進んで、ポンプ制御装置12に対してターボ分子ポンプ1の起動を指示するTMP制御信号S1を出力する。その結果、ポンプロータ110の回転駆動が開始される。
【0051】
なお、式(4)における実効排気速度Seffは式(1)で表されるので、式(4)によって算出される推定時間t1は、記憶部31に記憶されている真空チャンバ4の容積Vc、バックポンプの排気速度Sbpに応じた値となる。記憶部31における容積Vcおよび排気速度Sbpの設定変更は、例えば、オペレータが
図13に示す入力操作部32を操作して、真空チャンバ4の容積Vcおよびバックポンプ2の排気速度Sbpを入力すると実行される。そして、制御演算部30において、入力された容積Vcおよび排気速度Sbpに応じた推定時間t1が、自動的に算出され記憶部31に記憶される。
【0052】
(変形例2)
変形例2では、
図13の構成に、
図8に示す場合と同様のバイパス配管8、バルブ6およびバルブ7を設けた場合の制御について説明する。
図8の構成の場合、
図11のラインL3で示す排気は、バイパス配管8を介したバックポンプ2によって行われる。この場合、真空チャンバ4に対する実効排気速度Seffは、上述した式(1)の右辺第1項のCp(ポンプ本体11のコンダクタンス)を、バルブ7も含むバイパス配管8のコンダクタンスCbyで置き換えることによって算出される。その実効排気速度Seffを式(4)に適用した圧力推定値Pe(t)を用いることで、チャンバ内圧力を推定することができる。
【0053】
図16は、変形例2における起動制御を示すフローチャートであり、
図14の場合と同様に圧力推定値Pe(t)を用いる場合の起動制御を示す。
図16に示すフローチャートでは、
図10のフローチャートのステップS20を
図14に示すステップS200およびS210で置き換え、ステップS300を追加した。
【0054】
ステップS10の処理によりバックポンプ2を起動し、ステップS100においてバルブ6を閉状態、バルブ7を開状態としたならば、ステップS200における圧力推定値Pe(t)の推定およびステップS210における判定処理が繰り返し実行される。そして、ステップS210においてPe≦P1と判定されるとステップS30へ進み、ポンプ制御装置12に対してターボ分子ポンプ1の起動を指示するTMP制御信号S1を出力する。その結果、ポンプロータ110の回転駆動が開始される。
【0055】
ポンプロータ110の回転駆動を開始してからの圧力推定は、ステップS300によって行われる。次いで、ステップS110において、ステップS300で推定された圧力推定値Pe(t)が定常運転可能圧力値P2に対してPe(t)≦P2か否かを判定する。圧力推定値Pe(t)が定常運転可能圧力値P2まで低下していない場合には、ステップS110からステップS300へ進んで再び圧力推定値Pe(t)の推定演算を行う。一方、ステップS110でPe(t)≦P2と判定されると、ステップS120へ進んでバルブ6を開状態にすると共にバルブ7を閉状態にする信号を出力し、ターボ分子ポンプ1による真空チャンバ4の排気を開始する。
【0056】
図17は、
図15の推定時間t1を用いる場合と同様にバックポンプ2の起動時間で起動制御を行う場合のフローチャートである。すなわち、制御演算部30においてチャンバ内圧力が起動可能圧力値P1となる時間t1および定常運転可能圧力値P2となる時間t2を推定し、それらに基づいて起動制御を行う。
図17に示すフローチャートでは、
図16におけるステップS200およびS210を
図15に示すステップS220およびS230で置き換え、ステップS300およびS110をステップS400で置き換えた。
【0057】
上述したように、式(1)の右辺第1項のCpをバイパス配管8のコンダクタンスCbyで置き換えることによって算出される実効排気速度Seffを用いることにより、
図8の装置構成における圧力推定値Pe(t)を算出することができる。そして、この圧力推定値Pe(t)を用いることで、チャンバ内圧力が
図11のP1、P2となる推定時間t1,t2を算出することができる。
【0058】
図17のステップS10の処理によりバックポンプ2を起動したならば、ステップS100でバルブ6を閉じてバルブ7を開き、ステップS220において計時を開始する。次いで、ステップS230において計時時間tがt≧t1を満足すると判定されると、ステップS30へ進んで、ポンプ制御装置12に対してターボ分子ポンプ1の起動を指示するTMP制御信号S1を出力する。その結果、ポンプロータ110の回転駆動が開始される。
【0059】
ステップS400では、バックポンプ2による排気を開始してからからの計時時間tが推定時間t2に対してt≧t2を満足するか否かを判定する。ステップS400でt≧t2と判定されると、ステップS120へ進んで、バルブ6を開く開閉制御信号S5およびバルブ7を閉じる開閉制御信号S6を出力する。その結果、ターボ分子ポンプ1による真空チャンバ4の排気が開始される。
【0060】
-第4の実施の形態-
上述した第3の実施形態およびその変形例1では、圧力計測値Pcが取得できない場合に、バックポンプ2の排気速度Sbp、真空チャンバ4の容積Vc、ポンプ本体11のコンダクタンスCp等に基づいて圧力推定値Pe(t)や推定時間t1を推定し、ターボ分子ポンプ1の起動タイミングの制御を行うようにした。
【0061】
一方、第4の実施の形態では、ポンプ本体11のポンプロータ110を回転駆動するモータ111の電流値(モータ電流値)に基づいて、ポンプ本体11の起動制御を行うようにした。なお、排気システム100の構成は
図13に示すものと同様であるが、起動制御装置3をポンプ制御装置12に内蔵する構成であっても良い。
図13に示すように、ポンプ本体11にはロータ回転数(すなわちモータ111の回転数)を検出する回転センサ112が設けられている。回転センサ112で検出されたロータ回転数はポンプ制御装置12に送信され、ロータ回転数に基づいてモータ制御部120(不図示)によるモータ111の駆動制御が行われる。
【0062】
ところで、ポンプロータ110を回転駆動するモータ111のモータ電流値Imを一定電流値I0に保持した場合、チャンバ内圧力(すなわちロータ負荷)に応じて回転可能なロータ回転数が異なる。例えば、チャンバ内圧力が大気圧付近では10(回転/秒)程度であるが、チャンバ内圧力が低下するにつれて回転可能なロータ回転数は10(回転/秒)よりも大きくなる。すなわち、
図18の模式図に示すような相関がロータ回転数Nと圧力値Pとの間に成り立つ。そこで、本実施の形態では、所定のモータ電流値I0におけるロータ回転数Nと圧力値Pとの相関データに基づいて、ターボ分子ポンプ1の起動制御を行うようにした。なお、大気圧付近で回転可能なロータ回転数、ターボ分子ポンプ1の機種によって異なる。
【0063】
図19は、第4の実施の形態における第1の制御例を示すフローチャートである。第1の制御例の場合には、相関データが記憶部31に記憶され、その相関データと回転センサ112より検出されるロータ回転数とに基づいて、真空チャンバ4の圧力推定値Peを制御演算部30で推定するようにした。
【0064】
ステップS500では、バックポンプ2の起動を指示するBP制御信号S3をバックポンプ2へ出力する。ステップS500の処理によってバックポンプ2が起動される。次いで、ステップS510においてポンプロータ110の回転駆動を開始する。ただし、ステップS510ではモータ電流値を通常の起動加速動作時の電流値よりも低い値、例えば、
図18に示すモータ電流値I0に設定する。ステップS520では、回転センサ112によりロータ回転数Nを検出する。
【0065】
ステップS530では、検出したロータ回転数Nと
図18の相関関係とに基づいて圧力推定値Peを推定する。起動制御装置3の記憶部31には、
図18に示すようなモータ電流値ImがI0の場合の相関データL6が記憶されている。相関データL6はロータ回転数Nと圧力推定値Peとの相関を示したものであり、検出したロータ回転数Nと相関データL6とからそのときの圧力推定値Peが求まる。
【0066】
ステップS540では、ステップS530で推定した圧力推定値Peが起動可能圧力値P1以下か否かを判定する。ステップS540でPe>P1と判定されると、ステップS530へ戻る。一方、ステップS540でPe≦P1と判定されると、ステップS550へ進んで、一定の電流値I0でモータ111を駆動させる制御から通常の起動時の加速制御へ移行させる加速制御信号を、ポンプ制御装置12へ出力する。
【0067】
図20は、本実施の形態における第2の制御例を説明するフローチャートである。
図20のフローチャートは、
図19に示すフローチャートのステップS530およびS540をステップS600で置き換えたものである。第2の制御例においては、モータ電流値I0で駆動した場合の起動可能圧力値P1における回転数、すなわち
図18の回転数N1が記憶部31に記憶されている。
【0068】
ステップS520でロータ回転数Nを検出したならば、ステップS600において、検出したロータ回転数Nが記憶部31に記憶されている回転数N1以上であるか否かを判定する。
図18から、N≧N1の場合にはチャンバ内圧力はP1以下であることが分かる。すなわち、ステップS600の処理は、チャンバ内圧力が起動可能圧力値P1以下になったか否かを判定していることと同等である。ステップS600でN≧N1と判定されると、ステップS550へ進んで加速制御信号をポンプ制御装置12へ出力する。
【0069】
なお、上述した説明では、ポンプ本体11にロータ回転数を検出する回転センサ112を設ける構成としたが、モータ制御部120においてモータ回転数(すなわちロータ回転数)を推定するような構成としても良い。
【0070】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(C1)
図1に示すように、起動制御装置3は、ターボ分子ポンプ1とターボ分子ポンプの背圧側に接続されるバックポンプ2とを備える排気システム100に用いられ、ターボ分子ポンプ1の起動停止を制御する。起動制御装置3は、ターボ分子ポンプ1により排気される真空チャンバ4のバックポンプ起動後の吸気口圧力に関する情報に基づいて、ターボ分子ポンプ1の起動タイミングを設定する制御演算部30を備え、制御演算部30により設定された起動タイミングにおいてターボ分子ポンプ1を起動する。なお、吸気口圧力に関する情報は、圧力計測値Pc、圧力推定値Pe、バックポンプ起動からの経過時間などである。
【0071】
バックポンプ起動後の吸気口圧力に関する情報に基づくことで、ターボ分子ポンプ1が定常運転状態まで運転可能な起動タイミングを設定することが可能となり、ターボ分子ポンプ1とバックポンプ2の起動を行う場合における誤操作を防止することができ、例えば、ターボ分子ポンプ1が定常運転状態とならずに保護機能が作動するという現象の発生や、ターボ分子ポンプ1に過大な負荷がかかってターボ分子ポンプ1にダメージを与えるという不都合の発生を防止できる。
【0072】
(C2)なお、
図1(第1の実施の形態)に示すように、圧力情報が真空計5により計測される真空チャンバ4の圧力計測値Pcである場合、制御演算部30は、圧力計測値Pcがターボ分子ポンプ1の起動可能圧力上限値である起動可能圧力値P1以下となるタイミングを、ターボ分子ポンプ1を起動する起動タイミングに設定する。起動可能圧力値P1以下でターボ分子ポンプ1を起動させることでロータ回転時の負荷が低減され、ターボ分子ポンプ1が定常運転状態まで加速できないという不都合の発生を防止できる。
【0073】
(C3)また、
図13(第3の実施の形態)に示すように圧力計測値Pcが取得できない場合には、制御演算部30は、真空チャンバ4の容積、バックポンプ2の排気速度およびターボ分子ポンプ1のポンプ吸気口からポンプ排気口までのコンダクタンスに基づく圧力推定値Peを吸気口圧力に関する情報として推定する。そして、
図14の起動制御のように、推定された圧力推定値Peに基づいて、圧力推定値Peがターボ分子ポンプ1の起動可能圧力値P1以下となるタイミングをターボ分子ポンプ1の起動タイミングに設定する。その結果、圧力計測値Pcが得られない場合でも、圧力推定値Peに基づいてターボ分子ポンプ1の起動を適切に行うことができる。
【0074】
(C4)また、
図15(第3の実施の形態の変形例1)に示す起動制御のように、圧力推定値Peに基づいて推定される時間t1を起動タイミングとして設定する場合には、吸気口圧力に関する情報をバックポンプ起動からの経過時間tとする。バックポンプ起動からの経過時間tがt1以上となったならばターボ分子ポンプ1を起動させることで、圧力計測値Pcを用いる場合と同様の起動制御を行うことができ、ターボ分子ポンプ1の起動を適切に行うことができる。
【0075】
(C5)また、
図19(第4の実施の形態)に示す起動制御のように、ターボ分子ポンプ1のポンプロータ110を回転駆動するモータ111のモータ電流値を吸気口圧力に関する情報としても良い。制御演算部30は、起動タイミングとして、起動加速時のモータ電流値よりも低い一定モータ電流値I0でターボ分子ポンプ1を起動する第1のタイミングと、一定モータ電流値I0のときのロータ回転数とポンプ吸気口圧力値との相関(例えば、
図18に示す相関関係)に基づいて推定される加速開始タイミングである第2のタイミングと、を設定する。
【0076】
ここで、加速開始タイミング(第2のタイミング)は、
図18の相関関係において起動可能圧力値P1に対応する回転数N1である。このように、ロータ回転数とポンプ吸気口圧力値との相関を利用して加速開始タイミングを設定することで、ポンプ吸気口側(真空チャンバ4)の圧力計測値が得られない場合であっても、ターボ分子ポンプ1の加速開始タイミングを適切に設定することができる。その結果、ターボ分子ポンプ1の加速動作に失敗して保護機能が動作するような状況を防止することができる。また、第1のタイミングとしては、例えば、バックポンプ2の起動と同時のタイミングや、それよりもやや遅延させたタイミングを用いることができる。
【0077】
(C6)また、
図8(第2の実施の形態)に示すように、排気システム100が、真空計5が設けられた真空チャンバ4とターボ分子ポンプ1とを接続する排気ラインに設けられた第1のバルブ6と、真空チャンバ4とバックポンプ2とを接続するバイパス配管8に設けられた第2のバルブ7とを有する構成の場合、以下に記載のような起動動作を行うのが好ましい。
【0078】
すなわち、
図10に示す起動動作のように、制御演算部30は、バイパス配管8による真空チャンバ4の排気時には第1のバルブ6を閉状態にすると共に第2のバルブ7を開状態にする。そして、圧力計測値Pcがターボ分子ポンプ1の起動可能圧力値P1以下となるタイミングでターボ分子ポンプ1を起動し、圧力計測値Pcが真空チャンバ4の定常運転状態を維持できる定常運転可能圧力値P2以下になると、第1のバルブ6を開状態にすると共に第2のバルブ7を閉状態にする。
【0079】
ターボ分子ポンプ1の起動は、圧力計測値Pcがポンプロータ110の起動可能圧力値P1以下のときに行われるので、ターボ分子ポンプ1が定格回転まで加速できなくなるのを防止することができる。さらに、圧力推定値Peが定常運転可能圧力値P2以下になった場合に、バルブ6を開状態にすると共にバルブ7を閉状態にするようにしたので、ターボ分子ポンプ1が定格回転中に過負荷がかかるのを防止することができる。
【0080】
なお、
図10のフローチャートにおいてステップS110の処理を削除し、ステップS30でターボ分子ポンプ1を起動したならばステップS120の処理を実行し、ターボ分子ポンプ1による真空チャンバ4の排気を開始するようにしても良い。これは、バイパス配管8およびバルブ6,7を備える構成において、
図4(第1の実施の形態)のようにターボ分子ポンプ1をPc=P1となったタイミングで起動させる場合に相当する。
【0081】
(C7)また、
図13(第3の実施の形態)のように真空チャンバ4の真空計5が設けられない構成で、かつ、
図8(第2の実施の形態)に示すように、排気システム100が、真空チャンバ4とターボ分子ポンプ1とを接続する排気ラインに設けられた第1のバルブ6と、真空チャンバ4とバックポンプ2とを接続するバイパス配管8に設けられた第2のバルブ7とを有する構成の場合には、圧力推定値Peを吸気口圧力に関する情報とし、以下に記載のような起動動作を行うのが好ましい。
【0082】
すなわち、制御演算部30は、真空チャンバ4の容積、バックポンプ2の排気速度およびバイパス配管8のコンダクタンスに基づく圧力推定値Peに基づいて、圧力推定値Peがターボ分子ポンプ1の起動可能圧力値P1以下となるタイミングをターボ分子ポンプ1の起動タイミングに設定する。そして、バイパス配管8による真空チャンバ4の排気時には第1のバルブ6を閉状態にすると共に第2のバルブ7を開状態にし、圧力推定値Peがターボ分子ポンプ1の定常運転状態を維持できる定常運転可能圧力値P2以下になると、第1のバルブ6を開状態にすると共に第2のバルブ7を閉状態にする。
【0083】
ターボ分子ポンプ1の起動は、圧力計測値Pcがポンプロータ110の起動可能圧力値P1以下のときに行われるので、ターボ分子ポンプ1が定格回転まで加速できなくなるのを防止することができる。さらに、圧力推定値Peが定常運転可能圧力値P2以下になった場合に、バルブ6を開状態にすると共にバルブ7を閉状態にするようにしたので、ターボ分子ポンプ1が定格回転中に過負荷がかかるのを防止することができる。このように、真空チャンバ4の圧力計測値Pcが得られない場合でも、ターボ分子ポンプ1の起動動作やバルブ6,7の開閉動作を適切に行うことができる。
【0084】
なお、
図17(第3の実施の形態の変形例2)の起動制御のように、制御演算部30において圧力推定値Peに基づいて時間t1,t2を設定してもよい。時間t1は圧力推定値Peが起動可能圧力値P1となる時間であって、時間t2は圧力推定値Peが定常運転可能圧力値P2となる時間である。
【0085】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、また、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、上述の実施の形態ではターボ分子ポンプを例に説明したが、例えば、ねじ溝ポンプ段のみを備えるドラッグポンプのように、ポンプロータをモータで回転駆動して真空排気を行う真空ポンプでバックポンプを必要とするものであれば、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…ターボ分子ポンプ、2…バックポンプ、3…起動制御装置、4…真空チャンバ、5…真空計、8…バイパス配管、6…バルブ、7…バルブ、11…ポンプ本体、12…ポンプ制御装置、30…制御演算部、31…記憶部、32…入力操作部、33…表示部、34…電源供給部、100…排気システム、110…ポンプロータ、111…モータ、112…回転センサ、120…モータ制御部