(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】端末装置、カメラシステムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20220105BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220105BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20220105BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20220105BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H04N5/232 220
H04N7/18 D
H04N7/18 U
H04N5/232 030
G08B25/00 510M
G08B25/04 E
H04M1/00 R
(21)【出願番号】P 2017185011
(22)【出願日】2017-09-26
【審査請求日】2020-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】西岡 正道
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0042767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
H04N 7/18
G08B 25/00
G08B 25/04
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の端末装置から緊急信号を受信する受信部と、
本端末装置と前記他の端末装置との距離を演算する演算部と、
前記受信部が前記緊急信号を受信し、且つ、前記演算部において演算された前記距離が所定の録画開始しきい値以下の場合に、本端末装置と接続したカメラに録画を開始させる比較部と、
情報を通知する通知部と、
を備え
、
前記比較部は、前記受信部が前記緊急信号を受信し、且つ、前記演算部において演算された前記距離が前記録画開始しきい値より大きい所定の通知しきい値以下の場合に、前記通知部に前記他の端末装置の位置に関する情報を通知させる、
ことを特徴とする端末装置。
【請求項2】
録画を行うカメラと、
前記カメラを制御する端末装置と、を備え、
前記端末装置は、
他の端末装置から緊急信号を受信する受信部と、
本端末装置と前記他の端末装置との距離を演算する演算部と、
前記受信部が前記緊急信号を受信し、且つ、前記演算部において演算された前記距離が所定の録画開始しきい値以下の場合に、前記カメラに録画を開始させる比較部と、
情報を通知する通知部と、
を備え
、
前記比較部は、前記受信部が前記緊急信号を受信し、且つ、前記演算部において演算された前記距離が前記録画開始しきい値より大きい所定の通知しきい値以下の場合に、前記通知部に前記他の端末装置の位置に関する情報を通知させる、
ことを特徴とするカメラシステム。
【請求項3】
前記カメラは、録画中の場合、前記演算部において演算された前記距離が前記録画開始しきい値を越えた場合であっても、録画停止指示を受け付けるまで録画を継続することを特徴とする請求項
2に記載のカメラシステム。
【請求項4】
端末装置における制御方法であって、
他の端末装置から緊急信号を受信するステップと、
本端末装置と前記他の端末装置との距離を演算するステップと、
前記緊急信号を受信し、且つ、演算された前記距離が所定の録画開始しきい値以下の場合に、本端末装置と接続したカメラに録画を開始させるステップと、
前記緊急信号を受信し、且つ、演算された前記距離が前記録画開始しきい値より大きい所定の通知しきい値以下の場合に、前記他の端末装置の位置に関する情報を通知するステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルカメラを制御する端末装置、カメラシステムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯通信装置からサーバに現在位置情報と非常時信号を送信し、サーバが、非常時信号を送信した携帯通信装置に最も近い位置に設置された固定の監視カメラを起動し、起動された監視カメラが、非常時信号を送信した携帯通信装置の周辺を撮影する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の警察官等のそれぞれがカメラを携帯し、カメラによって記録のための撮像がなされることがある。この場合、緊急時において、複数のカメラのうちの適切なカメラに自動的に録画を開始させることが望まれる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、緊急時において、適切にカメラに録画を開始させることができる端末装置、カメラシステムおよび制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の端末装置は、他の端末装置から緊急信号を受信する受信部と、本端末装置と他の端末装置との距離を演算する演算部と、受信部が緊急信号を受信し、且つ、演算部において演算された距離が所定の録画開始しきい値以下の場合に、本端末装置と接続したカメラに録画を開始させる比較部と、情報を通知する通知部と、を備える。比較部は、受信部が緊急信号を受信し、且つ、演算部において演算された距離が録画開始しきい値より大きい所定の通知しきい値以下の場合に、通知部に他の端末装置の位置に関する情報を通知させる。
【0007】
本発明の別の態様は、カメラシステムである。このカメラシステムは、録画を行うカメラと、カメラを制御する端末装置と、を備える。端末装置は、他の端末装置から緊急信号を受信する受信部と、本端末装置と他の端末装置との距離を演算する演算部と、受信部が緊急信号を受信し、且つ、演算部において演算された距離が所定の録画開始しきい値以下の場合に、カメラに録画を開始させる比較部と、情報を通知する通知部と、を備える。比較部は、受信部が緊急信号を受信し、且つ、演算部において演算された距離が録画開始しきい値より大きい所定の通知しきい値以下の場合に、通知部に他の端末装置の位置に関する情報を通知させる。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、制御方法である。この方法は、端末装置における制御方法であって、他の端末装置から緊急信号を受信するステップと、本端末装置と他の端末装置との距離を演算するステップと、緊急信号を受信し、且つ、演算された距離が所定の録画開始しきい値以下の場合に、本端末装置と接続したカメラに録画を開始させるステップと、緊急信号を受信し、且つ、演算された距離が録画開始しきい値より大きい所定の通知しきい値以下の場合に、他の端末装置の位置に関する情報を通知するステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、緊急時において、適切にカメラに録画を開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【
図4】
図1のカメラシステムの構成を示すブロック図である。
【
図5】
図1の端末装置の緊急信号の送信処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の端末装置の緊急信号の受信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
実施の形態を具体的に説明する前に、概要を述べる。第1の実施の形態は、複数の端末装置および複数のカメラを備える通信システムに関する。1組の端末装置とカメラは、無線または有線で互いに接続され、ペアリングされている。ペアリングされた端末装置とカメラは、主に警察官や警備員等のユーザが携帯する。カメラは、ウェアラブルカメラとも呼ばれ、ユーザに装着される。カメラは、ペアリングされた端末装置によって録画の開始および停止が制御される。
【0013】
本通信システムは、例えば、業務用無線システムに対応しており、複数の端末装置は、基地局装置を介さずに、互いに直接通信する。ここで、通信の形態には、1対1の場合もあれば、1対多の場合もあり、後者はグループ通信に相当する。業務用無線システムには、緊急通報(エマージェンシー)機能が備えられている。これは、緊急に連絡が必要である場合に、端末装置が他の端末装置に緊急通報を実行する機能である。端末装置は、緊急通報用のボタンがユーザによって押し下げられると、緊急信号を送信するとともにペアリングされたカメラに録画を開始させ、緊急信号の送信中にボタンが再度押し下げられると、緊急信号の送信を終了するとともにカメラに録画を終了させる。また、緊急通報用のボタンの代わりに、ユーザが倒れたとき、端末装置に内蔵しているセンサによって倒れたことを検知し、緊急信号を送信するとともにペアリングされたカメラに録画を開始させてもよい。ユーザは、追跡対象者を追跡する場合などに、緊急通報用のボタンを押し下げる。録画された映像は、証拠などとして利用できる。グループ内の端末装置は、緊急信号を受信した場合、音や表示で緊急事態の発生を知らせる。緊急事態の発生を知らされたユーザは、緊急通報を行ったユーザの応援に向かうことができる。
【0014】
ここで、緊急信号を受信した端末装置にペアリングされたカメラにも録画を開始させることが考えられる。しかし、緊急通報を行ったユーザから比較的離れた位置のユーザは、カメラの撮像範囲に追跡対象者が入らない場合もあれば、異なる指令に基づいて異なる業務を行っているため応援に向かうことができない場合もある。そのため、これらのユーザのカメラに録画させることは望ましくない。つまり、既述のように、緊急時において、複数のカメラのうちの適切なカメラに自動的に録画を開始させることが望まれる。そこで、実施の形態に係る端末装置では、他の端末装置から緊急信号を受信し、且つ、本端末装置と他の端末装置との距離が所定の録画開始しきい値以下の場合に、本端末装置とともにユーザに携帯されるカメラに録画を開始させる。
【0015】
図1は、第1の実施の形態に係る通信システム200の構成を示す図である。通信システム200は、カメラシステム100と総称される第1カメラシステム100a、第2カメラシステム100b、第3カメラシステム100c、第4カメラシステム100dを備える。第1カメラシステム100aは、第1端末装置10a、第1カメラ20aを備える。第2カメラシステム100bは、第2端末装置10b、第2カメラ20bを備える。第3カメラシステム100cは、第3端末装置10c、第3カメラ20cを備える。第4カメラシステム100dは、第4端末装置10d、第4カメラ20dを備える。第1端末装置10a、第2端末装置10b、第3端末装置10c、第4端末装置10dは、端末装置10と総称される。第1カメラ20a、第2カメラ20b、第3カメラ20c、第4カメラ20dは、カメラ20と総称される。カメラシステム100の数は、「4」に限定されない。
【0016】
第1端末装置10aと第1カメラ20aは、ペアリングされており、第1のユーザに携帯される。第2端末装置10bと第2カメラ20bは、ペアリングされており、第2のユーザに携帯される。第3端末装置10cと第3カメラ20cは、ペアリングされており、第3のユーザに携帯される。第4端末装置10dと第4カメラ20dは、ペアリングされており、第4のユーザに携帯される。このように、同一のユーザに携帯される端末装置10とカメラ20は、ペアリングされており、無線で接続されている。ペアリングされた端末装置10とカメラ20は、有線で接続されてもよい。
【0017】
端末装置10は、他の端末装置10と業務用無線による通信を実行可能な無線端末である。この通信は、通話であったり、データ通信であったりする。業務用無線については公知の技術が使用されればよいので、ここでは詳細な説明を省略する。4つの端末装置10は、グループを形成する。グループに含まれたひとつの端末装置10から、当該グループに含まれた残りの端末装置10への通信がなされる。
【0018】
カメラ20は、録画を行うことが可能である。カメラ20では、ユーザによって、または、ペアリングされた端末装置10によって、録画の開始および停止が制御される。
【0019】
図1は、複数の端末装置10の位置関係も示している。第1端末装置10aと第2端末装置10bの直線距離を、距離d1とする。第1端末装置10aと第3端末装置10cの直線距離を、距離d2とする。第1端末装置10aと第4端末装置10dの直線距離を、距離d3とする。距離d1は、距離d2より短い。距離d2は、距離d3より短い。
【0020】
図2(a)は、
図1の端末装置10の正面図であり、
図2(b)は、
図1の端末装置10の側面図である。端末装置10は、正面において、表示部12と、スピーカ14とを備え、側面において、緊急通報のための緊急ボタン16を備える。表示部12は、各種情報を表示する。スピーカ14は、音声や報知音等を出力する。緊急ボタン16は、エマージェンシーボタンとも称され、緊急事態が発生した場合にユーザにより押し下げられ、緊急事態が終了した場合に再度押し下げられる。また、緊急ボタン16の代わりに、ユーザが倒れたとき、端末装置10に内蔵しているセンサによって倒れたことを検知し、緊急信号を送信するとともにペアリングされたカメラ20の録画を開始させてもよい。端末装置10の外観は、
図2の例に限定されない。
【0021】
図3は、
図1のカメラ20の正面図である。カメラ20は、正面において、レンズ22と、録画ボタン24とを備える。レンズ22は、後述する撮像部に映像光を入射させる。録画ボタン24は、手動操作に用いられ、録画を開始するときにユーザにより押し下げられ、録画を停止するときに再度押し下げられる。カメラ20の外観は、
図3の例に限定されない。
【0022】
図4は、
図1のカメラシステム100の構成を示すブロック図である。端末装置10は、第1通信部30、位置判定部32、通知部34、第1操作部36、制御部38、測位部40、第2通信部44、緊急信号判定部48を含む。第1通信部30は、送信部42、受信部46を含み、業務用無線による通信を実行する。位置判定部32は、演算部50、しきい値記憶部52、比較部54を含む。通知部34は、表示部12、地図情報記憶部56、通知生成部58を含む。説明を明瞭にするために、端末装置10において通話に関する構成は図示を省略している。カメラ20は、第3通信部70、撮像部72、画像記憶部74、第2操作部76を含む。
図1に示された第1端末装置10aから第4端末装置10dの構成は共通であり、第1カメラ20aから第4カメラ20dの構成は共通である。
【0023】
ここでは、説明を明瞭にするために、処理の順番にしたがって、(1)端末装置10が緊急信号を送信する場合、(2)端末装置10が緊急信号を受信する場合の順に説明する。
【0024】
(1)端末装置10が緊急信号を送信する場合
ここでは、端末装置10は、
図1の第1端末装置10aに対応し、カメラ20は、第1カメラ20aに対応する。第1操作部36は、
図2の緊急ボタン16を備えており、当該緊急ボタン16が押し下げられると、緊急通報の指示を制御部38に出力する。この緊急通報の指示は、当該緊急ボタン16が次に押し下げられるまで有効である。
【0025】
測位部40は、GPS(Global Positioning System)の測位機能を有し、本端末装置10の位置を測位し、測位した結果である位置情報を定期的に取得する。位置情報は、緯度と経度によって示される。位置情報は、高度の情報を含んでもよい。測位部40は、位置情報を制御部38、演算部50、通知生成部58に出力する。
【0026】
第1操作部36から緊急通報の指示が出力された場合、制御部38は、グループ内の端末装置10、即ち
図1の第2端末装置10bから第4端末装置10dに対して、緊急信号と、本端末装置10の位置情報と、本端末装置10の個別IDとを送信部42に送信させる。個別IDは、緊急信号を送信した端末装置10を識別するための識別情報に相当する。これらの信号は、通話に用いられる周波数と同じ周波数で送信されてもよいし、異なる周波数で送信されてもよい。
【0027】
第1操作部36からの緊急通報の指示の出力が停止された場合、制御部38は、緊急信号と、位置情報と、個別IDとの送信を送信部42に停止させる。緊急ボタン16が押し下げられてから、緊急ボタン16が再度押し下げられるまで、緊急信号と個別IDは継続して送信され、位置情報は定期的に送信される。なお、位置情報は、緊急ボタン16の操作とは無関係に、定期的に送信され続けてもよい。
【0028】
また、第1操作部36から緊急通報の指示が出力された場合、制御部38は、ペアリングされたカメラ20に録画を開始させる。具体的には、制御部38は、録画開始指示を第2通信部44に出力する。第2通信部44は、カメラ20の第3通信部70に録画開始指示を送信する。第2通信部44と第3通信部70は、近距離無線通信、例えば、Bluetooth(登録商標)による通信を実行する。第3通信部70は、撮像部72に録画指示を出力する。撮像部72は、録画指示に応じて動画の撮像を行い、撮像データを画像記憶部74に出力する。画像記憶部74は、撮像データを記憶する。第1操作部36からの緊急通報の指示の出力が停止された場合、制御部38は、録画指示の出力を停止して、ペアリングされたカメラ20に録画を停止させる。
【0029】
(2)端末装置10が緊急信号を受信する場合
ここでは、端末装置10は、
図1の第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対応し、カメラ20は、第2カメラ20bから第4カメラ20dのそれぞれに対応する。
【0030】
受信部46は、他の端末装置10から受信信号を受信する。ここでは「他の端末装置」とは、緊急信号を送信した
図1の第1端末装置10aに対応する。受信信号は、緊急信号と、当該他の端末装置10の位置情報と、当該他の端末装置10の個別IDとを含む。受信部46は、受信信号を緊急信号判定部48に出力する。
【0031】
緊急信号判定部48は、受信信号に基づいて、緊急信号が受信されたか否か判定する。緊急信号判定部48は、緊急信号が受信された場合、緊急信号が受信されたことを示す情報と、受信信号に含まれる他の端末装置10の位置情報とを演算部50と通知生成部58に出力し、受信信号に含まれる他の端末装置10の個別IDを通知生成部58に出力する。緊急信号判定部48は、緊急信号が受信されていない場合、これらの情報を出力しない。
【0032】
測位部40は、本端末装置10の位置を測位し、測位した結果である位置情報を定期的に取得する。測位部40は、位置情報を制御部38、演算部50、通知生成部58に出力する。
【0033】
演算部50は、受信部46が緊急信号を受信した場合、本端末装置10の位置情報と、他の端末装置10の位置情報とに基づいて、本端末装置10と他の端末装置10との距離dを演算する。距離dは、直線距離であり、例えば、三平方の定理などを用いて演算できる。三平方の定理を用いる場合、他の端末装置10の位置情報から位置座標(a,b)を導出し、本端末装置10の位置情報から位置座標(c,d)を導出し、d=√((c-a)2+(d-b)2)により演算する。
【0034】
しきい値記憶部52は、メモリなどから構成され、所定の録画開始しきい値Th1と、所定の通知しきい値Th2とを記憶している。通知しきい値Th2は、録画開始しきい値Th1より大きい。録画開始しきい値Th1と、通知しきい値Th2は、計算機シミュレーションまたは実験等により予め設定される。
図1の例では、第1端末装置10aと第2端末装置10bの距離d1は、録画開始しきい値Th1より小さい。第1端末装置10aと第3端末装置10cの距離d2は、録画開始しきい値Th1より大きく、通知しきい値Th2より小さい。第1端末装置10aと第4端末装置10dの距離d3は、通知しきい値Th2より大きい。
【0035】
図4に戻る。比較部54は、演算部50において演算された本端末装置10と他の端末装置10との距離dと、録画開始しきい値Th1と、通知しきい値Th2とを比較する。比較部54は、受信部46が緊急信号を受信し、且つ、距離dが録画開始しきい値Th1以下の場合に、本端末装置10とともにユーザに携帯されるカメラ20、すなわちペアリングされたカメラ20に録画を開始させる。具体的には、比較部54は、録画指示を第2通信部44に出力する。第2通信部44は、カメラ20の第3通信部70に録画指示を送信する。第3通信部70は、撮像部72に録画指示を出力する。撮像部72は、録画指示に応じて動画の撮像を行い、撮像データを画像記憶部74に出力する。画像記憶部74は、撮像データを記憶する。このような動作は、
図1の第2端末装置10b、第2カメラ20bで行われる。
【0036】
また、比較部54は、受信部46が緊急信号を受信し、且つ、距離dが通知しきい値Th2以下の場合に、通知部34に、他の端末装置10の位置に関する情報を通知させる。具体的には、比較部54は、位置通知指示を通知部34に出力する。通知部34は、位置通知指示に応じて、本端末装置10の位置情報と、他の端末装置10の位置情報とに基づいて、他の端末装置10の位置に関する情報を本端末装置10のユーザに通知する。他の端末装置10の位置に関する情報は、距離d、他の端末装置10の方向、他の端末装置10との高度差、他の端末装置10までの経路を含む。このような通知は、
図1の第2端末装置10b、第3端末装置10cで行われる。
【0037】
また、通知部34は、受信部46が緊急信号を受信している場合に、比較部54での比較結果によらず、受信部46で受信された個別IDに基づいて、他の端末装置10を識別する情報および緊急信号の受信を本端末装置10のユーザに通知する。このような通知は、
図1の第2端末装置10b、第3端末装置10c、第4端末装置10dで行われる。
【0038】
通知部34における情報の通知は、例えば、次のように行われる。地図情報記憶部56は、地図情報を記憶している。通知生成部58は、地図情報記憶部56に記憶された地図情報と、本端末装置10の位置情報と、他の端末装置10の位置情報とに基づいて、地図データを作成する。地図データは、距離d、他の端末装置10の方向、他の端末装置10との高度差、本端末装置10の位置から他の端末装置10の位置までの経路を含む。また、通知生成部58は、個別IDに基づいて他の端末装置10を識別する情報を作成し、この情報を地図データに含ませる。通知生成部58は、作成された地図データを表示部12に出力する。表示部12は、地図データに基づいて、各種情報が含まれた地図を表示する。
【0039】
なお、通知部34は、地図の表示に代えて、他の端末装置10の方向を矢印または文字で表示部12に表示させ、距離d、高度差、他の端末装置10を識別する情報、および、緊急信号の受信を文字で表示部12に表示させてもよい。また、通知部34は、これらの情報をスピーカ14に音声で出力させてもよい。
【0040】
通知部34は、受信部46が緊急信号を受信していない場合、他の端末装置10を識別する情報および緊急信号の受信を非通知とする。また、比較部54は、受信部46が緊急信号を受信していない場合、録画指示の出力を停止して、カメラ20に録画を非実行とさせ、位置通知指示の出力を停止して、通知部34に他の端末装置10の位置に関する情報を非通知とさせる。
【0041】
比較部54は、距離dが録画開始しきい値Th1より大きい場合、録画指示の出力を停止して、カメラ20に録画を非実行とさせる。比較部54は、距離dが通知しきい値Th2より大きい場合、位置通知指示の出力を停止して、通知部34に他の端末装置10の位置に関する情報を非通知にさせる。
【0042】
なお、端末装置10が緊急信号を送信も受信もしていない場合に、カメラ20の第2操作部76に含まれる
図3の録画ボタン24がユーザにより押し下げられると、撮像部72は動画の撮像を行い、画像記憶部74は、撮像データを記憶する。つまり、手動で録画を行うこともできる。
【0043】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0044】
以上の構成による通信システム200の動作を説明する。
図5は、
図1の端末装置10の緊急信号の送信処理を示すフローチャートである。緊急ボタン16が操作された場合(S10のY)、送信部42は、緊急信号と、個別IDと、位置情報とを送信する(S12)。制御部38は、ペアリングされたカメラ20に録画を開始させる(S14)。この処理は、
図1の第1端末装置10aにおいて行われる。緊急ボタン16が操作されない場合(S10のN)、待機する。
【0045】
図6は、
図1の端末装置10の緊急信号の受信処理を示すフローチャートである。
図6の処理は、緊急信号を受信する端末装置10、即ち
図1の第2端末装置10b、第3端末装置10c、第4端末装置10dのそれぞれにおいて行われる。
【0046】
受信部46は、緊急信号、緊急信号を送信した他の端末装置10の個別ID、および、他の端末装置10の位置情報を受信する(S22)。測位部40は、本端末装置10の位置情報を取得する(S24)。演算部50は、他の端末装置10と本端末装置10との距離dを演算する(S26)。比較部54は、距離d、録画開始しきい値Th1、通知しきい値Th2を比較する(S28)。
【0047】
距離dが通知しきい値Th2より大きい場合、通知部34は、緊急信号の受信を通知し、他の端末装置10の位置に関する情報を非通知とし、比較部54は、カメラ20に録画を非実行とさせる(S30)。この処理は、
図1の第4端末装置10dで行われる。
【0048】
距離dが、録画開始しきい値Th1より大きく、通知しきい値Th2以下の場合、通知部34は、緊急信号の受信を通知し、他の端末装置10の位置に関する情報を通知し、比較部54は、カメラ20に録画を非実行とさせる(S32)。この処理は、
図1の第3端末装置10cで行われる。
【0049】
距離dが録画開始しきい値Th1以下の場合、通知部34は、緊急信号の受信を通知し、他の端末装置10の位置に関する情報を通知し、比較部54は、カメラ20に録画を開始させる(S34)。この処理は、
図1の第2端末装置10bで行われる。
【0050】
このように本実施の形態によれば、他の端末装置10から緊急信号を受信し、且つ、本端末装置10と他の端末装置10との距離dが録画開始しきい値Th1以下の場合に、カメラ20に録画を開始させるので、撮影対象に接近したカメラ20のみが録画を開始する。これにより、撮像範囲に追跡対象者が入らないカメラ20による不必要な録画を防ぐことができる。
【0051】
また、撮影対象から離れており、緊急通報を行ったユーザとは異なる指令に基づいて異なる業務を行っており応援に向かうことができないユーザのカメラ20で録画が開始されてしまうと、このユーザの行動に支障をきたす恐れがある。このようなユーザのカメラ20に録画を開始させないようにできるので、ユーザの行動を妨げないようにできる。
よって、緊急時において、適切にカメラ20に録画を開始させることができる。
【0052】
また、他の端末装置10から緊急信号を受信し、且つ、本端末装置10と他の端末装置10との距離dが通知しきい値Th2以下の場合に、他の端末装置10の位置に関する情報を本端末装置10のユーザに通知するので、ユーザが進むべき方向や撮影対象の方向を示すことができる。よって、ユーザに緊急通報に対する的確な行動を行わせることができる。また、撮影対象から離れており、異なる指令に基づいて異なる業務を行っており応援に向かうことができないユーザに他の端末装置10の位置に関する情報を通知しないようにできるので、不必要な通知を抑制できる。
【0053】
また、他の端末装置10は、緊急信号を送信中、定期的に自身の位置情報も送信するので、他の端末装置10のユーザと本端末装置10のユーザの双方が移動中の場合でも、本端末装置10のユーザは他の端末装置10のユーザに対して的確に近づくことができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、カメラは、録画を開始した場合に、ユーザから録画停止指示を受け付けるまで録画を継続することが、第1の実施の形態と異なる。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0055】
端末装置10の構成と機能、カメラ20の構成は、第1の実施の形態と同一であり、カメラ20の機能が第1の実施の形態と異なる。緊急信号を送信した端末装置10では、第1の実施の形態で説明したように、緊急信号を送信中に第1操作部36の緊急ボタン16が再度押し下げられ、第1操作部36からの緊急通報の指示の出力が停止された場合、制御部38は、緊急信号の送信を送信部42に停止させ、録画指示の出力を停止する。よって、この場合、カメラ20への録画指示の供給が停止する。また、緊急信号を受信した端末装置10では、第1の実施の形態で説明したように、比較部54は、緊急信号の受信が停止した場合、および、本端末装置10と他の端末装置10との距離dが録画開始しきい値Th1より大きい場合、録画指示の出力を停止する。よって、この場合、カメラ20への録画指示の供給が停止する。
【0056】
カメラ20は、録画を開始した場合に、端末装置10の制御によらず、ユーザから録画停止指示を受け付けるまで録画を継続する。具体的には、撮像部72は、第3通信部70を介した録画指示の供給を契機として撮像を開始した場合、第3通信部70を介した録画指示の供給が停止しても、撮像を継続する。撮像部72が撮像を行っている間に、第2操作部76に含まれる録画ボタン24がユーザにより押し下げられると、第2操作部76は録画停止指示を撮像部72に出力する。撮像部72は、録画停止指示を受け付けると、撮像を停止する。これにより、録画は停止される。
【0057】
このように、本実施の形態によれば、カメラ20は、録画を開始した場合に、ユーザから録画停止指示を受け付けるまで録画を継続するので、重要証拠を撮り逃すことを抑制できる。例えば、追跡対象者等の第3者が、緊急信号を送信中の端末装置10の緊急ボタンを故意に再度押し下げて、緊急信号の送信を切断した場合であっても、緊急信号を送信したユーザおよび緊急信号を受信したユーザの録画中のカメラ20は録画を停止しない。よって、重要証拠を撮り逃すことを抑制でき、手動で録画を再開させる必要もない。
【0058】
また、緊急信号を送信したユーザが追跡対象者の追跡行動を継続中に、緊急信号を受信した、カメラ20で録画中のユーザとの距離dが離れてしまい、距離dが録画開始しきい値Th1より大きくなっても、緊急信号を受信したユーザの録画中のカメラ20は録画を停止しない。そのため、重要証拠を撮り逃すことを抑制できる。これは、距離dが録画開始しきい値Th1より大きくなっても、追跡対象者が録画されている可能性があるためである。また、録画が中断されないため、録画が中断された場合と比較して、映像の証拠能力を高めることもできる。
また、第1の実施の形態の効果も得ることができる。
【0059】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0060】
例えば、演算部50は、直線距離の演算に代えて、本端末装置10の位置情報と、他の端末装置10の位置情報と、地図情報記憶部56の地図情報とに基づいて、本端末装置10から他の端末装置10までの経路の距離を演算してもよい。この変形例では、ユーザが実際に移動する経路の距離に基づいてカメラ20の動作を制御できる。
【0061】
また、演算部50は、本端末装置10の位置情報と他の端末装置10の位置情報とに代えて、他の端末装置10から受信した緊急信号の電界強度に基づいて、本端末装置10と他の端末装置10との直線距離を演算してもよい。この変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【0062】
また、端末装置10が測位部40を備える一例について説明したが、カメラ20が測位部を備え、この測位部が位置情報を端末装置10に供給してもよい。また、他の端末装置10の位置に関する情報が端末装置10の表示部12に表示される一例について説明したが、カメラ20が表示部を備え、通知部34は、他の端末装置10の位置に関する情報をカメラ20の表示部に表示させ、この表示部を介して情報をユーザに通知してもよい。これらの変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0063】
10…端末装置、20…カメラ、34…通知部、46…受信部、50…演算部、54…比較部、60…受付部、100…カメラシステム。