(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】フィニッシャー
(51)【国際特許分類】
B65H 31/30 20060101AFI20220105BHJP
B65H 37/00 20060101ALI20220105BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20220105BHJP
B65H 31/26 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B65H31/30
B65H37/00
G03G21/16 104
B65H31/26
(21)【出願番号】P 2017204322
(22)【出願日】2017-10-23
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新野 達也
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-256731(JP,A)
【文献】特開平02-082268(JP,A)
【文献】特開2015-078031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00-31/40
G03G 15/00
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、画像形成装置から供給された用紙に後処理を施して外部に排出する処理ユニットと、
前記処理ユニットから排出された第1用紙を積載する積載部と、前記積載部に対して前記処理ユニットの側に位置する根元部と、前記積載部に対して前記処理ユニットとは反対側に位置する先端部とを含む、上トレイと、
前記上トレイの下方に配置され、前記処理ユニットから排出された第2用紙を積載する下トレイと、
前記上トレイのうちの前記根元部と前記先端部との間の中央位置よりも前記根元部の側の位置に設けられ、前記上トレイが起き上がる方向およびその反対方向に回動可能なように前記上トレイを軸支する軸支部と、
前記上トレイを回動させる駆動部と、を備え、
前記上トレイに前記第1用紙が排出されている際には、前記上トレイは水平方向に対して第1角度をなす第1状態で保持されており、
前記上トレイへ前記第1用紙が排出されていない状態が所定時間継続した時点で前記駆動部は、前記上トレイを回動させ、回動された前記上トレイは、水平方向に対して前記第1角度よりも大きい第2角度をなす第2状態で保持される、
フィニッシャー。
【請求項2】
前記上トレイの上方に配置され、前記上トレイの前記積載部に間隔を空けて対向する用紙押さえ部材をさらに備える、
請求項1に記載のフィニッシャー。
【請求項3】
前記用紙押さえ部材の位置または姿勢を変更させる調節機構をさらに備え、
前記上トレイに積載される前記第1用紙の枚数に応じて、前記用紙押さえ部材と前記積載部との間の前記間隔が前記調節機構によって調節される、
請求項2に記載のフィニッシャー。
【請求項4】
前記軸支部に対して直交し且つ水平方向に対して平行な方向において、前記上トレイのうちの前記軸支部により軸支されている部分は、前記下トレイの根元部の位置よりも前記処理ユニットの側の位置に設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィニッシャー。
【請求項5】
前記処理ユニットは、大きさの異なる複数種類の前記第2用紙に対して前記後処理を実施可能なように構成されており、
複数種類のうちの最も小さな前記第2用紙が前記下トレイに積載されている場合、前記軸支部に対して直交し且つ水平方向に対して平行な方向において、前記上トレイのうちの前記軸支部により軸支されている部分は、前記下トレイに載置された前記第2用紙の先端の位置よりも前記処理ユニットの側に位置している、
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィニッシャー。
【請求項6】
前記上トレイのうちの前記軸支部により軸支されている部分と前記上トレイの前記根元部との間の距離は、220mm以上である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のフィニッシャー。
【請求項7】
前記上トレイの前記根元部の側から前記上トレイの前記先端部の側に向かう方向において、
前記上トレイに積載される前記第1用紙の長さが所定閾値を超える場合には、前記駆動部は、前記第2角度を所定角度よりも小さい値に設定し、
前記上トレイに積載される前記第1用紙の長さが前記所定閾値以下である場合には、前記駆動部は、前記第2角度を前記所定角度以上の値に設定する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のフィニッシャー。
【請求項8】
前記処理ユニットは、前記処理ユニットにパージ処理が行なわれた場合には前記上トレイに所定用紙を排出し、
前記上トレイに前記所定用紙が排出されている際には、前記上トレイは前記第1状態で保持されており、
前記上トレイへ前記所定用紙および前記第1用紙のいずれもが排出されていない状態が前記所定時間継続した時点で前記駆動部は、前記上トレイを回動させ、回動された前記上トレイは前記第2状態で保持されている、
請求項1から7のいずれか1項に記載のフィニッシャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に後処理を施すフィニッシャーに関する。
【背景技術】
【0002】
フィニッシャー(後処理装置ともいわれる)は用紙に、綴じ処理などの後処理を施す。フィニッシャーは近年、画像形成装置と一体化された状態で市販されている。画像形成装置により画像を形成することと、フィニッシャーにより用紙に後処理を施すこととが連続的に行なわれている。
【0003】
フィニッシャーは排紙トレイを備える。排紙トレイに関する発明を開示した文献として下記の特許文献1~6が知られている。特許文献1,2に開示された排紙トレイは、排紙トレイの長さを伸縮可能にするための伸縮機構を備えている。特許文献3,4に開示された排紙トレイは、その全体または一部分が回動可能に構成されている。特許文献5,6に開示された排紙トレイは、装置本体に対する角度が変更可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-298596号公報
【文献】特開2006-213467号公報
【文献】特開2000-072310号公報
【文献】特開2000-044107号公報
【文献】特開昭61-235352号公報
【文献】実開昭63-026663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上下に並ぶ少なくとも2つの排紙トレイを備えたフィニッシャーにおいて、上側に位置する排紙トレイを上トレイと称し、上トレイのすぐ下方に位置する排紙トレイを下トレイと称したとする。上トレイは固定式であることが多く、上トレイにはたとえば厚紙およびはがき等の特殊紙が積載される。下トレイは、上下に移動可能であることが多く、下トレイにはたとえば後処理された用紙が積載される。
【0006】
上トレイおよび下トレイをフィニッシャーに設けた場合、下トレイに排紙された用紙の取り出し容易性(以下単に取り出し性という)が上トレイの存在により損ねられる。各トレイにはより多くの用紙を積載可能であることが求められるが、下トレイに大量の用紙が積載されると、下トレイに積載された用紙と上トレイとの間の間隔が一層狭くなり、下トレイに排紙された用紙の取り出し性が低下する。
【0007】
下トレイに排紙された用紙の取り出し性を向上させるために、上トレイを先端側と根元側との2分割に構成するとともに、上トレイを使用しない時や小サイズの用紙を上トレイに排出する際に、上トレイの先端側を根元側に向けて収容するという対策が考えられる。しかしながら、大サイズの用紙を上トレイに積載する際には、上トレイの先端側が根元側から延出するように配置される。上トレイに大サイズの用紙が積載された状態ではやはり、下トレイに配置された用紙の取り出し性が上トレイの存在によって損ねられる。
【0008】
本発明は上述のような実情に鑑みて創作されたものであって、下トレイに配置された用紙の取り出し性が上トレイの存在によって損ねられることを従来に比して抑制可能な構成を備えたフィニッシャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づくフィニッシャーは、筐体と、上記筐体の内部に設けられ、画像形成装置から供給された用紙に後処理を施して外部に排出する処理ユニットと、上記処理ユニットから排出された第1用紙を積載する積載部と、上記積載部に対して上記処理ユニットの側に位置する根元部と、上記積載部に対して上記処理ユニットとは反対側に位置する先端部とを含む、上トレイと、上記上トレイの下方に配置され、上記処理ユニットから排出された第2用紙を積載する下トレイと、上記上トレイのうちの上記根元部と上記先端部との間の中央位置よりも上記根元部の側の位置に設けられ、上記上トレイが起き上がる方向およびその反対方向に回動可能なように上記上トレイを軸支する軸支部と、上記上トレイを回動させる駆動部と、を備え、上記上トレイに上記第1用紙が排出されている際には、上記上トレイは水平方向に対して第1角度をなす第1状態で保持されており、上記上トレイへ上記第1用紙が排出されていない状態が所定時間継続した時点で上記駆動部は、上記上トレイを回動させ、回動された上記上トレイは、水平方向に対して上記第1角度よりも大きい第2角度をなす第2状態で保持される。
【0010】
上記フィニッシャーは好ましくは、上記上トレイの上方に配置され、上記上トレイの上記積載部に間隔を空けて対向する用紙押さえ部材をさらに備える。
【0011】
上記フィニッシャーは好ましくは、上記用紙押さえ部材の位置または姿勢を変更させる調節機構をさらに備え、上記上トレイに積載される上記第1用紙の枚数に応じて、上記用紙押さえ部材と上記積載部との間の上記間隔が上記調節機構によって調節される。
【0012】
上記フィニッシャーにおいて好ましくは、上記軸支部に対して直交し且つ水平方向に対して平行な方向において、上記上トレイのうちの上記軸支部により軸支されている部分は、上記下トレイの根元部の位置よりも上記処理ユニットの側の位置に設けられている。
【0013】
上記フィニッシャーにおいて好ましくは、上記処理ユニットは、大きさの異なる複数種類の上記第2用紙に対して上記後処理を実施可能なように構成されており、複数種類のうちの最も小さな上記第2用紙が上記下トレイに積載されている場合、上記軸支部に対して直交し且つ水平方向に対して平行な方向において、上記上トレイのうちの上記軸支部により軸支されている部分は、上記下トレイに載置された上記第2用紙の先端の位置よりも上記処理ユニットの側に位置している。
【0014】
上記フィニッシャーにおいて好ましくは、上記上トレイのうちの上記軸支部により軸支されている部分と上記上トレイの上記根元部との間の距離は、220mm以上である。
【0015】
上記フィニッシャーにおいて好ましくは、上記上トレイの上記根元部の側から上記上トレイの上記先端部の側に向かう方向において、上記上トレイに積載される上記第1用紙の長さが所定閾値を超える場合には、上記駆動部は、上記第2角度を所定角度よりも小さい値に設定し、上記上トレイに積載される上記第1用紙の長さが上記所定閾値以下である場合には、上記駆動部は、上記第2角度を上記所定角度以上の値に設定する。
【0016】
上記フィニッシャーにおいて好ましくは、上記処理ユニットは、上記処理ユニットにパージ処理が行なわれた場合には上記上トレイに所定用紙を排出し、上記上トレイに上記所定用紙が排出されている際には、上記上トレイは上記第1状態で保持されており、上記上トレイへ上記所定用紙および上記第1用紙のいずれもが排出されていない状態が上記所定時間継続した時点で上記駆動部は、上記上トレイを回動させ、回動された上記上トレイは上記第2状態で保持されている。
【発明の効果】
【0017】
上記構成を備えたフィニッシャーによれば、下トレイに配置された用紙の取り出し性が上トレイの存在によって損ねられることを従来に比して抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態における画像形成装置1およびフィニッシャー2の外観を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態におけるフィニッシャー2を示す図である。
【
図3】実施の形態におけるフィニッシャー2の上トレイ5に第1用紙P1が積載された状態を示す図である。
【
図4】実施の形態におけるフィニッシャー2の下トレイ6に第2用紙P2が積載された状態を示す図である。
【
図5】実施の形態の第2変形例におけるフィニッシャー2の上トレイ5が第2状態S2M(第2角度θ2M)を形成している様子を示す図である。
【
図6】実施の形態の第2変形例におけるフィニッシャー2の上トレイ5が第2状態S2S(第2角度θ2S)を形成している様子を示す図である。
【
図7】実施の形態の第2変形例におけるフィニッシャー2の上トレイ5が第2状態S2L(第2角度θ2L)を形成している様子を示す図である。
【
図8】実施の形態の第3変形例におけるフィニッシャー2Aを示す図である。
【
図9】実施の形態の第4変形例におけるフィニッシャー2Bを示す図である。
【
図10】実施の形態の第5変形例におけるフィニッシャー2Cを示す図である。
【
図11】実施の形態の第6変形例におけるフィニッシャー2Dを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明を実施するための形態について、以下、図面を参照しながら説明する。以下の説明において同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0020】
(画像形成装置1およびフィニッシャー2)
図1は、実施の形態における画像形成装置1およびフィニッシャー2の外観を模式的に示す図である。画像形成装置1は、用紙に対して印刷を行なう。フィニッシャー2は、画像形成装置1と一体化されており、用紙に対して後処理を行なう。フィニッシャー2は、筐体3、処理ユニット4、上トレイ5、下トレイ6、軸支部7および駆動部8を備える。
【0021】
筐体3はフィニッシャー2の外殻を構成している。筐体3の内部には複数のガイド部材3a,3b,3c、処理ユニット4、および図示しない複数の搬送ローラーなどが設けられる。処理ユニット4は処理機構4a,4bを含む。処理機構4a,4bの各々は、たとえば、綴じ機能、穴あけ機能、折り機能、製本機能、および仕分け機能のうちのいずれか1つを有することができる。処理機構4a,4bは、画像形成装置1から供給された用紙に、これらの後処理を施して外部(次述する上トレイ5または下トレイ6)に排出する。
【0022】
上トレイ5および下トレイ6は、筐体3の外部に設けられている。上トレイ5の下方に下トレイ6が配置されている。上トレイ5および下トレイ6の各々は、画像形成装置1から遠ざかる方向に向かって筐体3の外表面から延出しており、いわゆるウィング型の排紙トレイを構成している。
【0023】
図2は、実施の形態におけるフィニッシャー2を示す図である。
図3は、実施の形態におけるフィニッシャー2の上トレイ5に第1用紙P1が積載された状態を示す図である。
図4は、実施の形態におけるフィニッシャー2の下トレイ6に第2用紙P2が積載された状態を示す図である。
【0024】
図2~
図4を参照して、処理ユニット4により後処理が施された用紙の一部は、第1用紙P1(
図3)として上トレイ5に排出される。第1用紙P1は、1枚の第1用紙P1として上トレイ5に排出される場合もあるし、綴じ処理や製本処理が施された状態で複数の第1用紙P1からなる束として上トレイ5に排出される場合もある。
【0025】
同様に、処理ユニット4により後処理が施された用紙の他の一部は、第2用紙P2(
図4)として下トレイ6に排出される。第2用紙P2も、1枚の第2用紙P2として下トレイ6に排出される場合もあるし、綴じ処理や製本処理が施された状態で複数の第2用紙P2からなる束として下トレイ6に排出される場合もある。
【0026】
処理ユニット4により後処理が施された用紙は、用紙の種類、用紙のサイズ、および用紙に施された後処理の内容などに応じて、第1用紙P1として上トレイ5に排出されたり、第2用紙P2として下トレイ6に排出されたりする。
【0027】
(上トレイ5)
図2,
図3に示すように、上トレイ5は、ガイド部材3a,3bの間の開口部分を通して排出された第1用紙P1を積載する。上トレイ5は、積載部5a、根元部5rおよび先端部5tを含む。積載部5aは、上トレイ5の上面に相当しており、処理ユニット4から排出された第1用紙P1(
図3)を積載する。
【0028】
根元部5rは、積載部5aに対して処理ユニット4(筐体3)の側に位置する。根元部5rは、上トレイ5の上面のうちの最も処理ユニット4(筐体3)の近くに位置する部分であり、たとえば1枚の第1用紙P1が積載部5a上に配置された状態では、第1用紙P1における筐体3の側に位置する用紙端部の位置は、根元部5rの位置に一致する。先端部5tは、積載部5aに対して処理ユニット4とは反対側に位置する。先端部5tは、上トレイ5の上面のうちの最も処理ユニット4(筐体3)から遠くに位置する部分に相当している。詳細は後述するが、上トレイ5は軸支部7によって回動可能に軸支されている。
【0029】
上トレイ5は、上トレイ5のうちの根元部5rと先端部5tとの間に、中央位置5cを有している。中央位置5cは、根元部5rと先端部5tとの間で積載部5aを二等分するように位置している。積載部5aの表面上における長さを距離と定義すると、中央位置5cと根元部5rとの間の距離(ここでは直線距離)と、中央位置5cと先端部5tとの間の距離(ここでは直線距離)とは、同じ値である。
【0030】
(下トレイ6)
図2,
図4に示すように、下トレイ6は、ガイド部材3cの上方に設けられた開口部分を通して排出された第2用紙P2を積載する。下トレイ6は、積載部6a、根元部6rおよび先端部6tを含む。積載部6aは、下トレイ6の上面に相当しており、処理ユニット4から排出された第2用紙P2(
図4)を積載する。
【0031】
根元部6rは、積載部6aに対して処理ユニット4(筐体3)の側に位置する。根元部6rは、下トレイ6の上面のうちの最も処理ユニット4(筐体3)の近くに位置する部分であり、たとえば1枚の第2用紙P2が積載部6a上に配置された状態では、第2用紙P2における筐体3の側に位置する用紙端部の位置は、根元部6rの位置に一致する。先端部6tは、積載部6aに対して処理ユニット4とは反対側に位置する。先端部6tは、下トレイ6の上面のうちの最も処理ユニット4(筐体3)から遠くに位置する部分に相当している。下トレイ6は、スライダー機構によって上下方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0032】
(軸支部7・駆動部8)
上トレイ5は、軸支部7を介して筐体3(または筐体3の内部に設けられた構造部材)により支持される。軸支部7は、上トレイ5のうちの根元部5rと先端部5tとの間の中央位置5cよりも、根元部5rの側の位置に設けられる。軸支部7は、水平方向に延びるとともに、上トレイ5に向けて第1用紙P1が排出される方向に対して直交する方向に延びている。軸支部7は、上トレイ5が起き上がる方向およびその反対方向に回動可能なように上トレイ5を軸支している。駆動部8は、モーターおよび歯車(減速機構)などから構成される。駆動部8は、軸支部7によって軸支された上トレイ5を、図示しない制御部からの制御信号を受けて回動させる。
【0033】
(第1状態S1)
図3に示すように、上トレイ5に第1用紙P1が排出されている際には、上トレイ5は水平方向に対して第1角度θ1をなす第1状態S1で保持される。制御部はたとえば、第1用紙P1を上トレイ5に排出させるという動作を行なわせるための指示信号を処理ユニット4や各種のローラーなどに送出する。
【0034】
上トレイ5が第1状態S1を形成していない場合、たとえば上トレイ5が後述する第2状態S2を形成していた場合には、制御部は上記指示信号の送出に併せて、駆動部8にも指示信号を送出する。上トレイ5は駆動部8によって軸支部7の位置を中心として回動され、第1状態S1を形成する。上トレイ5(積載部5a)が水平方向に対してなす第1角度θ1は、たとえば0°以上20°以下である。この状態で、上トレイ5に第1用紙P1が排出されることとなる。
【0035】
(第2状態S2)
図2および
図4を参照して、上トレイ5へ第1用紙P1が排出されていない状態が所定時間継続した時点で、制御部は駆動部8に指示信号を送出する。駆動部8は、上トレイ5を下トレイ6から遠ざかる方向に回動させ、回動された上トレイ5は、水平方向に対して第1角度θ1よりも大きい第2角度θ2をなす第2状態S2で保持されることとなる。上トレイ5の先端部5tと下トレイ6の先端部6tとの間の間隔(直線距離)は、第2状態S2(
図2,
図4)の場合の方が、第1状態S1(
図3)の場合に比べて広い。
【0036】
(作用および効果)
冒頭で述べたように特許文献1~6は、排紙トレイに関する種々の発明を開示している。しかしながら、上下に並ぶ少なくとも2つの排紙トレイ(上トレイ5および下トレイ6)を備えたフィニッシャーにおいて、上トレイ5へ第1用紙P1が排出されていない状態が所定時間継続した時点で上トレイ5を回動させ、回動された上トレイ5が、水平方向に対して第1角度θ1よりも大きい第2角度θ2をなす第2状態S2で保持されるという技術的思想は特許文献1~6に開示された発明の中には存在しておらず、下トレイ6に配置された用紙の取り出し性が上トレイ5の存在によって損ねられることを抑制したいという解決課題に対して十分な解決手段は、特許文献1~6に開示された発明は提供できていない。
【0037】
これに対して本実施の形態のフィニッシャー2によれば、上下に並ぶ少なくとも2つの排紙トレイ(上トレイ5および下トレイ6)を備えたフィニッシャー2において、上トレイ5へ第1用紙P1が排出されていない状態が所定時間継続した時点で上トレイ5を回動させ、回動された上トレイ5が、水平方向に対して第1角度θ1よりも大きい第2角度θ2をなす第2状態S2で保持される。上トレイ5の先端部5tと下トレイ6の先端部6tとの間の間隔(直線距離)は、第2状態S2(
図2,
図4)の場合の方が、第1状態S1(
図3)の場合に比べて広くなる。
【0038】
したがってフィニッシャー2によれば、下トレイ6に配置された用紙の取り出し性が上トレイ5の存在によって損ねられることを従来に比して効果的に抑制することができる。フィニッシャー2の使用者は、下トレイ6に積載された第2用紙P2(
図4)を容易に視認できるとともに、下トレイ6に積載された第2用紙P2を下トレイ6から容易に取り出すことができる。フィニッシャー2や画像形成装置1がスリープ状態に遷移する際に上記のような角度変更動作が行なわれてもよい。上トレイ5への用紙排出時には、水平あるいは水平に近い第1角度θ1で上トレイ5が保持されることにより、上トレイ5は適切に排出された用紙(第1用紙P1)を保持することができる。
【0039】
また、大サイズの用紙(第1用紙P1)が上トレイ5に積載されている場合であっても、本実施の形態のフィニッシャー2によれば、上トレイ5へ第1用紙P1が排出されていない状態が所定時間継続した時点で上トレイ5が大サイズの用紙を持ち上げるように回動し、上トレイ5の先端部5tと下トレイ6の先端部6tとの間の間隔が広げられる。したがって上トレイ5に大サイズの用紙が積載されている状態であっても、下トレイ6に配置された用紙の取り出し性が上トレイ5の存在によって損ねられることを従来に比して効果的に抑制することができる。
【0040】
(第1変形例)
図2に示すように、軸支部7に対して直交し且つ水平方向に対して平行な方向において、上トレイ5のうちの軸支部7により軸支されている部分は、下トレイ6の根元部6rの位置よりも処理ユニット4の側の位置に設けられていることが好ましい。
【0041】
この構成は必須ではないが、本実施の形態においては、上トレイ5のうちの軸支部7により軸支されている部分(上トレイ5の回転中心)は、下トレイ6の根元部6rの位置よりも寸法A(A>0)の分だけ処理ユニット4の側の位置に設けられている。当該構成によれば、上トレイ5が回動した際に上トレイ5の先端部5tと下トレイ6の先端部6tとの間の間隔が効果的に広がることとなり、下トレイ6に配置された用紙の取り出し性をより一層向上させることが可能となり、フィニッシャー2の使用者が下トレイ6に積載された第2用紙P2(
図4)をより容易に視認することも可能となる。
【0042】
(第2変形例)
図5~
図7を参照して、実施の形態における第2変形例について説明する。上トレイ5の根元部5rの側から上トレイ5の先端部5tの側に向かう方向において、上トレイ5に積載される第1用紙P1の長さが所定閾値を超える場合には、駆動部8は、第2角度θ2を所定角度よりも小さい値に設定し、上トレイ5に積載される第1用紙P1の長さが所定閾値以下である場合には、駆動部8は、第2角度θ2を所定角度以上の値に設定するように構成されてもよい。
【0043】
この第2変形例においては、第1用紙P1として、第1用紙P1S,P1M,P1Lの3種類が上トレイ5に排出される。駆動部8は、上トレイ5が水平方向に対して第2角度θ2M(
図5)、第2角度θ2S(
図6)、および第2角度θ2L(
図7)をなすように上トレイ5を回動させる。第2角度θ2L(
図7)、第2角度θ2M(
図5)、および第2角度θ2S(
図6)は、この順に値が大きくなる。
【0044】
図5,
図6を参照して、上トレイ5の根元部5rの側から上トレイ5の先端部5tの側に向かう方向(ここでは用紙排出方向)において、第1用紙P1Mの長さは第1用紙P1Sの長さ(所定閾値)よりも長い。上トレイ5に積載される第1用紙P1の長さが所定閾値(第1用紙P1Sの長さ)を超える場合、すなわち第1用紙P1Mが排出される場合には、駆動部8は、第2角度θ2を所定角度よりも小さい値(ここでは
図5に示す第2角度θ2M)に設定する(第2状態S2M)。上トレイ5に積載される第1用紙P1の長さが所定閾値以下(第1用紙P1Sの長さ以下)である場合(ここでは第1用紙P1Sが排出される場合)には、駆動部8は、第2角度θ2を所定角度(ここでは
図6に示す第2角度θ2S)以上の値に設定する(第2状態S2S)。
【0045】
図5,
図7を参照して、上トレイ5の根元部5rの側から上トレイ5の先端部5tの側に向かう方向(ここでは用紙排出方向)において、第1用紙P1Lの長さは第1用紙P1Mの長さ(所定閾値)よりも長い。上トレイ5に積載される第1用紙P1の長さが所定閾値(第1用紙P1Mの長さ)を超える場合、すなわち第1用紙P1Lが排出される場合には、駆動部8は、第2角度θ2を所定角度よりも小さい値(ここでは
図7に示す第2角度θ2L)に設定する(第2状態S2L)。上トレイ5に積載される第1用紙P1の長さが所定閾値以下(第1用紙P1Mの長さ以下)である場合(ここでは第1用紙P1Mが排出される場合)には、駆動部8は、第2角度θ2を所定角度(ここでは
図5に示す第2角度θ2M)以上の値に設定する(第2状態S2M)。
【0046】
水平面に対して急峻に立ち上がるような状態で大サイズの用紙(第1用紙P1)を上トレイ5に積載すると、用紙が有する自重および腰、ならびに用紙の枚数(積載量)によっては用紙に座屈が生じたり用紙が位置ずれしたりしやすくなる可能性がある。上記のように、用紙の長さに応じて第2角度θ2の値を適切に変更することによって、座屈および位置ずれといった事象が発生する可能性を低減できる。
【0047】
(第3変形例)
図8は、実施の形態の第3変形例におけるフィニッシャー2Aを示す図である。第3変形例のフィニッシャー2Aは、用紙押さえ部材9をさらに備えている。
【0048】
用紙押さえ部材9は、上トレイ5の上方に配置され、上トレイ5の積載部5aに間隔を空けて対向している。本変形例における用紙押さえ部材9は、レバー状(片状)の形状を呈しており、ガイド部材3aの前端部から積載部5aに向かって斜め下方向に延びている。上トレイ5へ用紙(第1用紙P1)が排出されて積載量が多くなってきた場合であっても、用紙が膨らんで位置ずれなどが生じてしまうことは用紙押さえ部材9の付勢力によって効果的に抑制することが可能となる。
【0049】
上トレイ5が用紙を積載したまま第1状態S1から第2状態S2に遷移したとしても、用紙に座屈が生じたり用紙が位置ずれしたりすることは用紙押さえ部材9の付勢力によって効果的に抑制することが可能となる。
【0050】
図8に示すように、フィニッシャー2Aは、調節機構9dをさらに備えていてもよい。調節機構9dは、用紙押さえ部材9の位置または姿勢を変更させる。上トレイ5に積載される用紙の枚数(積載量)に応じて、用紙押さえ部材9と積載部5aとの間の間隔が調節機構9dによって調節される。
【0051】
たとえば上トレイ5に排出される用紙の枚数が積算され、積算値に基づいて制御部は調節機構9dに指示信号を送出する。上トレイ5に積載されている用紙の枚数を光センサーや力センサー等を用いて測定し、測定値に基づいて制御部は調節機構9dに指示信号を送出してもよい。用紙押さえ部材9から用紙に付与される付勢力が最適化されることで、用紙に座屈が生じたり用紙が位置ずれしたりすることをより一層抑制することが可能となる。
【0052】
(第4変形例)
図9は、実施の形態の第4変形例におけるフィニッシャー2Bを示す図である。第4変形例においては、上トレイ5が、先端部5tの側の部位と、根元部5rの側の部位とからなる2分割構成を備えている。軸支部7は、これら2つの部位の間に設けられており、先端部5tの側の部位を回動可能に軸支している。
【0053】
第4変形例においても、軸支部7は、上トレイ5のうちの根元部5rと先端部5tとの間の中央位置5cよりも、根元部5rの側の位置に設けられる。好適な形態として第4変形例の軸支部7は、上記の第1変形例の場合と同様に、上トレイ5のうちの軸支部7により軸支されている部分(ここでは先端部5tの側の部位の回転中心)が、下トレイ6の根元部6rの位置よりも寸法A(A>0)の分だけ処理ユニット4の側の位置に設けられている。
【0054】
水平面に対して急峻に立ち上がるような状態で用紙(第1用紙P1)を上トレイ5に積載すると、用紙が有する自重および腰、ならびに用紙の枚数(積載量)によっては用紙に座屈が生じたり用紙が位置ずれしたりしやすくなる可能性がある。フィニッシャー2Bにおいては、第1用紙P1が、屈曲または湾曲した状態で上トレイ5に積載されることとなるため、座屈および位置ずれといった事象が発生する可能性を低減できる。
【0055】
(第5変形例)
図10は、実施の形態の第5変形例におけるフィニッシャー2Cを示す図である。フィニッシャー2Cにおいては、処理ユニット4が、大きさの異なる複数種類の第2用紙P2に対して後処理を実施可能なように構成されている。
図10に示されるように、複数種類のうちの最も小さな第2用紙P2が下トレイ6に積載されている場合において、軸支部7に対して直交し且つ水平方向に対して平行な方向(
図10紙面内の左右方向)において、上トレイ5のうちの軸支部7により軸支されている部分は、下トレイ6に載置された第2用紙P2の先端Ptの位置よりも処理ユニット4の側に位置している。
【0056】
この構成は必須ではないが、本変形例においては、上トレイ5のうちの軸支部7により軸支されている部分(ここでは先端部5tの側の部位の回転中心)は、下トレイ6に載置された第2用紙P2の先端Ptの位置よりも寸法B(B>0)の分だけ処理ユニット4の側に位置している。当該構成によれば、最も小さな第2用紙P2が下トレイ6に積載された場合であっても、フィニッシャー2の使用者は、下トレイ6に積載された第2用紙P2をより容易に視認することができるとともに、下トレイ6に配置された第2用紙P2を容易に取り出することができる。
【0057】
(第6変形例)
図11は、実施の形態の第6変形例におけるフィニッシャー2Dを示す図である。フィニッシャー2Dにおいては、上トレイ5のうちの軸支部7により軸支されている部分と上トレイ5の根元部5rとの間の距離Cが、220mm以上の値に設定される。上トレイ5のうちの軸支部7により軸支されている部分と上トレイ5の根元部5rとの間の部分は、固定されており回動しない。
【0058】
当該構成が採用されていることによって、上トレイ5に、たとえばA4横サイズの用紙(
図11に示す寸法D=210mm)が排出されたり、レター横サイズの用紙(
図11に示す寸法D=216mm)が排出されたりした場合であっても、これらの用紙は屈曲したり湾曲したりしない状態で上トレイ5に積載されるため、フィニッシャー2の使用者は、それらの用紙(第1用紙P1)を上トレイ5から容易に取り出すことが可能となる。
【0059】
(第7変形例)
上述の実施の形態および各変形例は、上トレイ5や下トレイ6に通常の画像が形成された用紙(第1用紙P1および第2用紙P2)が排出されるという例に基づいて説明した。このような例に限られず、フィニッシャーの処理ユニット4は、処理ユニット4にパージ処理が行なわれた場合には上トレイ5に所定用紙を排出し、上トレイ5にこのようなパージ処理に関する所定用紙が排出されている際には、上トレイ5は第1状態S1で保持され、上トレイ5へ所定用紙および第1用紙P1のいずれもが排出されていない状態が所定時間継続した時点で、駆動部8は、上トレイ5を回動させ、回動された上トレイ5が第2状態S2で保持されるように構成されてもよい。上トレイ5がいわゆるエスケープトレイとして機能するような当該構成であっても、下トレイ6に配置された用紙の取り出し性が上トレイ5の存在によって損ねられることを従来に比して効果的に抑制することができる。
【0060】
以上、実施の形態および各変形例について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置、2,2A,2B,2C,2D フィニッシャー、3 筐体、3a,3b,3c ガイド部材、4 処理ユニット、4a,4b 処理機構、5 上トレイ、5a,6a 積載部、5c 中央位置、5r,6r 根元部、5t,6t 先端部、6 下トレイ、7 軸支部、8 駆動部、9 用紙押さえ部材、9d 調節機構、A,B,D 寸法、C 距離、P1,P1L,P1M,P1S 第1用紙、P2 第2用紙、Pt 先端、S1 第1状態、S2,S2L,S2M,S2S 第2状態。