(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネスの配設構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/36 20060101AFI20220105BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220105BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20220105BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H02G3/36
B60R16/02 620A
H02G3/04 087
H02G3/30
(21)【出願番号】P 2017221679
(22)【出願日】2017-11-17
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】池田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】江端 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 龍太
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-93200(JP,A)
【文献】特開平9-23548(JP,A)
【文献】特開2011-240819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/36
B60R 16/02
H02G 3/04
H02G 3/30
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイレンサ本体部を含み、前記サイレンサ本体部の主面において厚み方向に凹む溝が形成されたサイレンサと、
少なくとも一部が前記溝内に収容されたワイヤーハーネスと、
前記溝内に収容された前記ワイヤーハーネスの両側方を覆う一対の脚部と、前記溝内に収容された前記ワイヤーハーネスの上方を覆うと共に前記一対の脚部を連結する蓋部とを含み、前記溝の底部側が開口しているカバーと、
を備え
、
前記カバーは前記サイレンサよりも硬く形成されており、
前記カバーは前記蓋部の主面に対する法線方向への力が前記蓋部にかけられた際に、前記蓋部が凹むように、かつ前記溝の底部側の開口が広がるように変形可能であり、
前記サイレンサは前記カバーの変形時に前記蓋部によって前記ワイヤーハーネスが押されたときに前記ワイヤーハーネスを支持する部分が撓むように変形可能である、ワイヤーハーネスの配設構造。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネスの配設構造であって、
前記サイレンサを覆うカーペットをさらに備え、
前記カバーは、硬質プラスチックを材料として、前記カーペットと別体で形成されている、ワイヤーハーネスの配設構造。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤーハーネスの配設構造であって、
前記蓋部が前記サイレンサのうち前記溝に隣接する部分の主面より低く形成されている、ワイヤーハーネスの配設構造。
【請求項4】
請求項1に記載のワイヤーハーネスの配設構造であって、
前記サイレンサを覆い、前記カバーと一体に形成されたカーペットをさらに備える、ワイヤーハーネスの配設構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの配設構造であって、
前記ワイヤーハーネスのうち前記溝内に収容される部分が偏平に形成されている、ワイヤーハーネスの配設構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスの配設構造であって、
前記ワイヤーハーネスが乗員の足元となる位置に配設される足元配設部を有し、
前記溝および前記カバーが前記足元配設部に設けられている、ワイヤーハーネスの配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に配設されるワイヤーハーネスの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、防音および凹凸形状の平滑化等を目的として自動車底部のボディとフロアマットとの間に配設されるウレタン材(サイレンサなどとして用いられる)にワイヤーハーネスを埋設する技術を開示している。この際、特許文献1においてワイヤーハーネスは、乗員に踏まれることのないように、ウレタン材のうちサイドシル(ロッカ部などとも呼ばれる)に沿って配設される部分又はクロスメンバに沿って配設される部分などに埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで近年、電線本数が増加する傾向にあり、ワイヤーハーネスが、上記サイドシルに沿った部分又はクロスメンバに沿った部分などといった従来の配設スペースに収まりきらない恐れが生じている。このため、当該ワイヤーハーネスについて配設自由度の向上が要請されている。
【0005】
しかしながら、サイレンサにワイヤーハーネスを配設するに当たり、サイレンサにおいて従来ワイヤーハーネスが配設されていないスペースは、乗員による足踏まれの影響が大きい部分である可能性が高く、その対策を新たに講じる必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、サイレンサに対して任意の位置にワイヤーハーネスを配設するに当たり、乗員による足踏まれ対策を簡易に施すことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、サイレンサ本体部を含み、前記サイレンサ本体部の主面において厚み方向に凹む溝が形成されたサイレンサと、少なくとも一部が前記溝内に収容されたワイヤーハーネスと、前記溝内に収容された前記ワイヤーハーネスの両側方を覆う一対の脚部と、前記溝内に収容された前記ワイヤーハーネスの上方を覆うと共に前記一対の脚部を連結する蓋部とを含み、前記溝の底部側が開口しているカバーと、を備える。前記カバーは前記サイレンサよりも硬く形成されており、前記カバーは前記蓋部の主面に対する法線方向への力が前記蓋部にかけられた際に、前記蓋部が凹むように、かつ前記溝の底部側の開口が広がるように変形可能であり、前記サイレンサは前記カバーの変形時に前記蓋部によって前記ワイヤーハーネスが押されたときに前記ワイヤーハーネスを支持する部分が撓むように変形可能である。
【0008】
第2の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第1の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記サイレンサを覆うカーペットをさらに備え、前記カバーは、硬質プラスチックを材料として、前記カーペットと別体で形成されている。
【0009】
第3の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第2の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記蓋部が前記サイレンサのうち前記溝に隣接する部分の主面より低く形成されている。
【0010】
第4の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第1の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記サイレンサを覆い、前記カバーと一体に形成されたカーペットをさらに備える。
【0011】
第5の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第1から第4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記ワイヤーハーネスのうち前記溝内に収容される部分が偏平に形成されている。
【0012】
第6の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第1から第5のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記ワイヤーハーネスが乗員の足元となる位置に配設される足元配設部を有し、前記溝および前記カバーが前記足元配設部に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
第1から第6の態様によると、カバーにおいて溝の底部側が開口しているため、ワイヤーハーネスが溝に収まった状態で、ワイヤーハーネスの上方からカバーをかぶせることができる。さらに、カバーにおいて溝の底部側が開口しているため、カバーの蓋部側が踏まれたときに、カバーの開口側が広がるように変形することができ、もって力を逃がしやすくなる。これらより、乗員による足踏まれ対策を簡易に施すことが可能となる。
【0014】
第2の態様によると、カバーの剛性を高めやすい。
【0015】
第3の態様によると、サイレンサのうち溝を含む領域が踏まれる際、溝に隣接する部分がカバーより先に踏まれるようになる。これにより、硬い部材を踏んだ時に生じる違和感を低減できる。
【0016】
第4の態様によると、組み付けが必要な部品点数を削減できる。
【0017】
第5の態様によると、溝の深さを浅くできる。これにより、サイレンサの防音性の低下を抑制できる。
【0018】
第6の態様によると、足踏まれが生じる部分にも簡易に足踏まれ対策を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造においてワイヤーハーネスの配設経路を示す概略平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿って切断された断面図である。
【
図3】ワイヤーハーネスの配設構造を製造する様子を示す説明図である。
【
図4】カバーに踏まれる力がかかった時のカバーの動作を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造を示す断面図である。
【
図6】第3実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造について説明する。
図1は、第1実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造10においてワイヤーハーネス30の配設経路を示す概略平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿って切断された断面図である。
図3は、ワイヤーハーネスの配設構造10を製造する様子を示す説明図である。
【0021】
ワイヤーハーネスの配設構造10は、サイレンサ20と、ワイヤーハーネス30と、カバー50とを備える。ワイヤーハーネスの配設構造10は、カーペット60をさらに備える。
【0022】
サイレンサ20は、サイレンサ本体部22を含む。例えばサイレンサ本体部22は、無数の繊維状部材が圧縮されて形成される。この場合、無数の繊維状部材は絡み合って結合されていてもよいし、接着剤等によって固着されていてもよい。係る繊維状部材は、天然繊維であってもよいし、化学繊維であってもよい。もっとも、サイレンサ本体部22の製造方法は上記したものに限られない。例えば、サイレンサ本体部22は、ポリウレタン等の樹脂材料を発泡させつつモールド成形して形成されるものであってもよいし、不織布を材料として形成されるものであってもよい。また例えばサイレンサ本体部22は、発泡ポリウレタン等の樹脂発泡体のチップに、接着剤(バインダ)を塗布するなどして混在させたものを蒸気雰囲気下で圧縮させつつ一体に固着させることによって形成されるものであってもよい。かかる接着剤としてはウレタンチップ用接着剤などチップの素材に応じた周知の接着剤を用いることができる。サイレンサ本体部22は、例えば、車体80のフロアパネル82上に敷設される。サイレンサ本体部22のうちフロアパネル82側の主面には、フロアパネル82に形成された凹凸形状を吸収可能に図示省略の凹凸形状又は厚みの異なる形状などが形成される場合がある。また、サイレンサ本体部22の主面24(フロアパネル82側とは反対側の主面24)において厚み方向に凹む溝26が形成されている。
【0023】
溝26は、ワイヤーハーネス30を収容可能に形成されている。当該溝26はワイヤーハーネス30の配設経路に応じて延在するように形成されている。
図2に示す例では、溝26は、横断面が方形状を呈するように形成されているが、溝26の横断面の形状はこれに限られるものではない。例えば、溝26は、横断面が台形状を呈するように形成されていてもよい。この場合、溝26は、底側から開口側に向けて徐々に幅広となるように形成されていてもよいし、底側から開口側に向けて徐々に幅狭となるように形成されていてもよい。また、
図3に示す例では、溝26は、延在方向に沿ってその横断面の形状又は大きさ等が変わらないように形成されているが、変わるように形成されていてもよい。例えば、溝26は、比較的太いワイヤーハーネス30を収容する部分において横断面が大きく形成されて、比較的細いワイヤーハーネス30を収容する部分において横断面が小さく形成されていることも考えられる。また、
図3に示す例では、溝26は直線部のみを有するように形成されているが、曲がった部分である曲部のみを有するように形成されていてもよいし、直線部と曲部とを両方有するように形成されていてもよい。また、溝26は分岐部分を有していてもよい。
【0024】
ワイヤーハーネス30は、複数の電線36を含む。各電線36は、例えば、導体芯線と、導体芯線の周囲を覆う絶縁被覆とを含む絶縁電線36である。ワイヤーハーネス30は、例えば電線36の端部に接続されたコネクタを介して、車両に配設される機器又は別のワイヤーハーネス等に接続される。ワイヤーハーネス30は、少なくとも一部が溝26内に収容されている。
【0025】
図1に示す例では、ワイヤーハーネス30は、車両の中央の位置および両側方の位置において、前後方向に延びる部分を有する。以下では、これらの部分を中央延在部31および側方延在部32と称することがある。また、ワイヤーハーネス30は、車両において前方中央から後方側方に向けて、斜めに延びる部分を有する。以下では、この部分を斜方延在部33と称することがある。ここでワイヤーハーネス30は、乗員の足元となる位置に配設される足元配設部34を有する。ここで、乗員の足元となる位置とは、乗員が座席に通常の姿勢で着座した場合の足元の位置を言う。ここでは斜方延在部33の一部が足元配設部34とされる。より詳細には、
図1に示す例では、斜方延在部33のうち前部座席90と後部座席92との間の部分に配設される部分が乗員の足元となる位置に配設される部分である。サイレンサ本体部22には、足元配設部34を収容可能な溝26が形成されている。そして当該溝26にカバー50が取付けられている。
【0026】
もっとも、ワイヤーハーネス30の配設経路は上記したものに限られない。ワイヤーハーネス30は、例えば、車両において前方側方から後方中央に向けて、斜めに延在するように配設される部分を有していてもよいし、車両の幅方向に真っ直ぐ横断するように配設される部分を有していてもよいし、中央延在部31および側方延在部32以外の位置で車両の前後方向に真っ直ぐ縦断するように配設される部分を有していてもよい。また、サイレンサ本体部22には足元配設部34以外の部分を収容可能な溝26が形成されていてもよく、さらにその溝26にカバー50が取付けられていてもよい。
【0027】
なお、ワイヤーハーネス30のうち側方延在部32は、例えばロッカ部に配設される。この際、側方延在部32は、サイレンサ20上に配設される部分とされていない。もっとも、側方延在部32もサイレンサ20上に配設されていてもよい。
【0028】
ここで、側方延在部32に多くの電線36が配設されると、側方延在部32が太くなる。この太くなった側方延在部32をロッカ部に配設するためには、側方延在部32を収容するロッカ部を広くする必要が生じる。この場合、ロッカ部の高さを高くするなどしてロッカ部を広くすることが考えられる。しかしながら、ドア部周辺においてロッカ部の高さが高くなると、乗員の乗降性が悪化する恐れがあった。
【0029】
これに対して、ここではワイヤーハーネス30に中央延在部31および斜方延在部33が設けられているため、ドア部周辺の側方延在部32に電線36が多く配設されることが抑制可能である。この結果、ロッカ部の高さを低くすることができ、乗降性の向上を図ることが可能となる。
【0030】
なお、サイレンサ20上に配設されるワイヤーハーネス30のうち、平面視で例えば前部座席90、後部座席92またはセンターコンソール94などと重なる位置に配設される部分は、足踏まれの可能性が低いため、溝26とカバー50を用いた保護構造は不要とされる。もっとも、この部分についても溝26とカバー50を用いた保護構造が採用されていてもよい。
【0031】
ここで
図2に示す例では、ワイヤーハーネス30は溝26に収められる部分において、図示省略の結束部材によって横断面円形状を呈するように束ねられているが、このことは必須の構成ではない。例えば、ワイヤーハーネス30は、カバー50が被せられる部分以外の部分で結束部材によって束ねられ、カバー50が被せられる部分においては結束部材によって束ねられていない場合もあり得る。また例えば、ワイヤーハーネス30は偏平に形成されている場合もあり得る。偏平なワイヤーハーネスについて詳しくは後述する。
【0032】
溝26に収められる部分においてワイヤーハーネス30が図示省略の結束部材によって束ねられるに当たり、例えば、ワイヤーハーネス30は、粘着テープがいわゆる二重巻き又は荒巻きされることによって束ねられることが考えられる。この際、ワイヤーハーネス30は溝26に収められる部分において緩めに結束されているとよい。これにより、ワイヤーハーネス30が側方から押された際に、偏平となる向きに、換言すると横断面が楕円状となるように変形でき、局所的に強い力がかかることが抑制される。
【0033】
カバー50は溝26内に配設されたワイヤーハーネス30を覆うように溝26内に配設されている。具体的には、カバー50は、一対の脚部52と、蓋部54とを含む。
【0034】
一対の脚部52は、溝26内に収容されたワイヤーハーネス30の両側方を覆う。
図2に示す例では一対の脚部52は、平行に延びている。もっとも脚部52は、溝26の底部側に行くにつれて一対の脚部52の間の間隔が狭まるように延びていてもよいし、広がるように延びていてもよい。好ましくは、各脚部52は、蓋部54の主面に対する法線方向に沿って形成されている、又は蓋部54から離れるに従って外側に広がるように形成されているとよい。これにより、蓋部54に力が加わった際に脚部52が外側に広がるように変形しやすくなり、もって力を逃がしやすくなる。
【0035】
また、
図2に示す例では、一対の脚部52の外向き面の間の間隔は溝26の幅寸法と同じに設定されている。これにより、一対の脚部52は、溝26の側面と密着している。これにより、溝26に収められたカバー50ががたつくことが抑制される。特にここでは、一対の脚部52の外向き面が全面的に溝26の側面に密着している。このように一対の脚部52は、溝26の側面と密着していても、サイレンサ本体部が撓むことによって蓋部54に力が加わった際に脚部52が外側に広がるように変形可能とされる。もっとも、一対の脚部52は、溝26の側面と密着していなくてもよい。一対の脚部52が、溝26の側面と隙間をあけて配設されていると、蓋部54に力が加わった際に脚部52が外側に広がるように変形しやすくなり、もって力を逃がしやすくなる。
【0036】
蓋部54は、溝26内に収容されたワイヤーハーネス30の上方を覆う。蓋部54は、一対の脚部52を連結している。蓋部54がサイレンサ20のうち溝26に隣接する部分の主面24より低く形成されている。
【0037】
ここでカバー50は、斜方延在部33を収容する溝26に設けられている。特にここではカバー50は、斜方延在部33のうち足元配設部34を収容する溝26に設けられている。
図1に示す例では、カバー50は、乗員が後部座席92に着座したときの足元の位置に配置されている。もっとも、カバー50は、ワイヤーハーネス30のうち足元配設部34以外の部分に設けられていてもよい。
【0038】
カバー50は、サイレンサ20およびカーペット60と別体で形成されている。カバー50は、サイレンサ20およびカーペット60よりも硬い。カバー50は、例えば、硬質プラスチックを材料とした一体成形品である。
【0039】
カバー50において、溝26の底部側が開口している。このため、
図3に示すように、溝26にワイヤーハーネス30を収めた状態で、ワイヤーハーネス30の上にカバー50を被せることができる。もちろん、カバー50を取り付けたワイヤーハーネス30を溝26に収めてもよい。
【0040】
図3に示す例では、カバー50は、延在方向に沿ってその横断面の形状又は大きさ等が変わらないように形成されているが、変わるように形成されていてもよい。この際、溝26の横断面の形状又は大きさ等の変化に応じて、カバー50の横断面の形状又は大きさ等が変わるように形成されていてもよいし、溝26とは関係なく、カバー50の横断面の形状又は大きさ等が変わるように形成されていてもよい。また、
図3に示す例では、カバー50は溝26の延在方向に沿って全体に亘って設けられているが、溝26の一部にはカバー50が設けられていない場合もあり得る。例えば、溝26が直線部と曲部とを両方有するように形成されている場合、カバー50は直線部のみに設けられていてもよい。
【0041】
カーペット60は、サイレンサ20を覆う。カーペット60を構成する材料、製法等は特に限定されるものではなく、周知の材料、製法等によって形成される。カーペット60は、車室内に露出する意匠面を有する内装部材である。なお、カーペット60のうち摩耗しやすい部分又は汚れやすい部分などでは、カーペット60の上にさらにフロアマット等が敷設される場合もあり得る。
【0042】
カーペット60は溝26およびカバー50も覆っている。この際、蓋部54がサイレンサ20のうち溝26に隣接する部分の主面24より低く形成されているため、カーペット60のうち蓋部54を覆う部分が室内側に突出しにくくなり、意匠面への影響が抑制されている。
【0043】
<動作>
図4は、カバー50に踏まれる力Fがかかった時のカバー50の動作を示す説明図である。
図4において二点鎖線で示されるカバー50は踏まれる力Fがかかる前、つまり変形前の状態を示しており、実線で示されるカバー50は踏まれる力Fがかかって変形した後の状態を示している。
【0044】
カバー50において、溝26の底部側が開口している。このため、カバー50は、踏まれる力Fがかかると、
図4に示すように開口が開くように変形する。これにより、蓋部54が大きく凹むような変形をする代わりに、全体に下がるように変形しやすい。さらに、カバー50において、溝26の底部側が開口しているため、ワイヤーハーネス30がサイレンサ本体部22上に配置されている。このため、ワイヤーハーネス30が蓋部54によって押されても、サイレンサ本体部22が撓むことによって、ワイヤーハーネス30に大きな力がかかりにくい。特に、ワイヤーハーネス30がサイレンサ本体部22を押す際に、力が分散されにくいため、サイレンサ本体部22が大きく撓むことができる。これらより、蓋部54がワイヤーハーネス30を一部で強く押すことが起こりにくい。
【0045】
これに対してカバー50における溝26の底部側が開口していない場合、つまり、カバー50が一対の脚部52の先端同士をつなぎ、蓋部54と対向する底部を有している場合、当該カバー50に踏まれる力がかかると、一対の脚部52が広がるように変形しにくいことによって、蓋部54が局所的に下がってしまう恐れがある。またワイヤーハーネス30がカバー50における底部上に配置されているため、蓋部54とカバー50における底部とで挟まれることになる。さらに、カバー50の底部がサイレンサ本体部22を押す際に、力が分散されるため、サイレンサ本体部22が大きく撓むことが難しい。これらより、ワイヤーハーネス30が一部で強く押されることがあり得る。
【0046】
<効果等>
本実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造10によると、カバー50において溝26の底部側が開口しているため、ワイヤーハーネス30が溝26に収まった状態で、ワイヤーハーネス30の上方からカバー50をかぶせることができる。さらに、カバー50において溝26の底部側が開口しているため、カバー50の蓋部54側が踏まれたときに、カバー50の開口側が広がるように変形することができ、もって力を逃がしやすくなる。これらより、乗員による足踏まれ対策を簡易に施すことが可能となる。特に、着座した乗員の足元となる位置に溝26及びカバー50が設けられているため、足踏まれが常時生じうる部分にも簡易に足踏まれ対策を施すことができる。
【0047】
また、乗員による足踏まれ対策を施すことができることによって、ワイヤーハーネス30の経路の自由度の向上を図ることができる。この結果、ロッカ部に配設する電線36を少なくでき、乗降性の向上を図ることができる。また、ワイヤーハーネス30のうち従来迂回するように配設していた部分を短くでき、軽量化を図ることができる。
【0048】
また、カバー50がサイレンサ20およびカーペット60と別部材であるため、カバー50の剛性を高めやすい。
【0049】
また、蓋部54が溝26に隣接する部分の主面24よりも低く形成されているため、サイレンサ20のうち溝26を含む領域が踏まれる際、溝26に隣接する部分がカバー50より先に踏まれるようになる。これにより、硬い部材を踏んだ時に生じる違和感を低減できる。
【0050】
{第2実施形態}
第2実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造について説明する。
図5は、第2実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造110を示す断面図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造110においては、カーペットがカバーと一体に形成されている点で、第1実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造10とは異なる。
【0052】
カーペットとカバーとが一体となった一体品140は、カバー部分150を構成する材料と、カーペット部分160を構成する材料とが同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。また一体品140は、一体成形品であってもよいし、カバー部分150とカーペット部分160とが別に成形された後に貼り合わされるなどして形成されてもよい。例えば、一体品140が一体成形品であり、かつカバー部分150を構成する材料とカーペット部分160を構成する材料とが異なる材料である場合、係る一体品140は例えば二色成形を用いて形成されることが考えられる。
【0053】
カーペットがカバーと一体に形成されている場合、特に一体品140が一体成形品である場合、カーペット部分160がカバー50における蓋部54を兼ねていることもあり得る。
【0054】
本実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造110によると、カーペットがカバーと一体に形成されているため、車両に対して組付けが必要な部品点数を削減できる。すなわち、第1実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造10では、カバー50と、カーペット60とをそれぞれ管理し、組付ける必要が有ったのに対して、本実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造110によると、カバーとカーペットとが一体となった一体品140を管理し、組付けるだけで済む。
【0055】
{第3実施形態}
第3実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造について説明する。
図6は、第3実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造210を示す断面図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
本実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造210において、ワイヤーハーネス230のうち溝226内に収容される部分の形状が、上記ワイヤーハーネスの配設構造10におけるワイヤーハーネス30のうち溝26内に収容される部分の形状とは異なる。
【0057】
具体的には、ワイヤーハーネス230のうち溝226内に収容される部分が偏平に形成されている。ここでは、ワイヤーハーネス230はシート材38を用いて偏平にされている。即ち、複数の電線36がシート材38に対して並べられた状態で、シート材38に対して固定されることによって、ワイヤーハーネス230が偏平とされている。この際、シート材38に対する電線36の固定方法は特に限られるものではなく、縫い付け、溶着、両面粘着テープ又は接着剤等による接着など、適宜選択可能である。また、ワイヤーハーネス230は、シート材238を用いずに偏平にされる場合もあり得る。
【0058】
ここでは、偏平にされたワイヤーハーネス230に合わせて、溝226およびカバー250も偏平とされている。すなわち、溝226は、上記溝26に比べて浅く形成されている。また、カバー250における一対の脚部252が、上記脚部52よりも短く形成されると共に、遠い位置に配置されている。このため、カバー250における蓋部254が、上記蓋部54よりも大きく形成されている。
【0059】
本実施形態に係るワイヤーハーネスの配設構造210によると、ワイヤーハーネス230のうち溝226内に収容される部分が偏平に形成されているため、溝226の深さを浅くできる。これにより、サイレンサ本体部222のうち溝226とフロアパネル82との間の部分の厚みが薄くなることを抑制でき、もってサイレンサ220の防音性の低下を抑制できる。
【0060】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0061】
例えば、一の車両において、ワイヤーハーネス30が丸断面形状である上記ワイヤーハーネスの配設構造10、110と、ワイヤーハーネス230が偏平形状である上記ワイヤーハーネスの配設構造210とが併用されている場合もあり得る。この場合、例えば、サイレンサ本体部22、222のうち比較的厚みの厚い部分にワイヤーハーネス30が丸断面形状である上記ワイヤーハーネスの配設構造10を採用し、比較的厚みの薄い部分にワイヤーハーネス230が偏平形状である上記ワイヤーハーネスの配設構造210を採用することが考えられる。
【0062】
また例えば、一の車両において、カバー50、250とカーペット60とが別体である上記ワイヤーハーネスの配設構造10、210と、カバーとカーペットとが一体品140である上記ワイヤーハーネスの配設構造110とが併用されている場合もあり得る。この場合、例えば、比較的カバーを溝に収めにくい場所にカバー50、250とカーペット60とが別体である上記ワイヤーハーネスの配設構造10、210を採用し、比較的カバーを溝に収めやすい場所にカバーとカーペットとが一体品140である上記ワイヤーハーネスの配設構造110を採用することが考えられる。
【0063】
本明細書及び図面には下記の各態様が開示される。
第1の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、サイレンサ本体部を含み、前記サイレンサ本体部の主面において厚み方向に凹む溝が形成されたサイレンサと、少なくとも一部が前記溝内に収容されたワイヤーハーネスと、前記溝内に収容された前記ワイヤーハーネスの両側方を覆う一対の脚部と、前記溝内に収容された前記ワイヤーハーネスの上方を覆うと共に前記一対の脚部を連結する蓋部とを含み、前記溝の底部側が開口しているカバーと、を備える。
第2の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第1の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記サイレンサを覆うカーペットをさらに備え、前記カバーは、硬質プラスチックを材料として、前記カーペットと別体で形成されている。
第3の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第2の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記蓋部が前記サイレンサのうち前記溝に隣接する部分の主面より低く形成されている。
第4の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第1の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記サイレンサを覆い、前記カバーと一体に形成されたカーペットをさらに備える。
第5の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第1から第4のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記ワイヤーハーネスのうち前記溝内に収容される部分が偏平に形成されている。
第6の態様に係るワイヤーハーネスの配設構造は、第1から第5のいずれか1つの態様に係るワイヤーハーネスの配設構造であって、前記ワイヤーハーネスが乗員の足元となる位置に配設される足元配設部を有し、前記溝および前記カバーが前記足元配設部に設けられている。
第1から第6の態様によると、カバーにおいて溝の底部側が開口しているため、ワイヤーハーネスが溝に収まった状態で、ワイヤーハーネスの上方からカバーをかぶせることができる。さらに、カバーにおいて溝の底部側が開口しているため、カバーの蓋部側が踏まれたときに、カバーの開口側が広がるように変形することができ、もって力を逃がしやすくなる。これらより、乗員による足踏まれ対策を簡易に施すことが可能となる。
第2の態様によると、カバーの剛性を高めやすい。
第3の態様によると、サイレンサのうち溝を含む領域が踏まれる際、溝に隣接する部分がカバーより先に踏まれるようになる。これにより、硬い部材を踏んだ時に生じる違和感を低減できる。
第4の態様によると、組み付けが必要な部品点数を削減できる。
第5の態様によると、溝の深さを浅くできる。これにより、サイレンサの防音性の低下を抑制できる。
第6の態様によると、足踏まれが生じる部分にも簡易に足踏まれ対策を施すことができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0064】
10 ワイヤーハーネスの配設構造
20 サイレンサ
22 サイレンサ本体部
24 主面
26 溝
30 ワイヤーハーネス
36 電線
38 シート材
50 カバー
52 脚部
54 蓋部
60 カーペット
80 車体
82 フロアパネル