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  • 特許-金型装置及びガラス物品の製造方法 図1
  • 特許-金型装置及びガラス物品の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】金型装置及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 11/12 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
C03B11/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017241965
(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公開番号】P2019108240
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕次
(72)【発明者】
【氏名】中井 容基
(72)【発明者】
【氏名】木下 稔
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-278632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B11/00-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品のプレス成形用の金型装置であって、
成形凹部を有する第1金型と、前記成形凹部との間にキャビティを形成する第2金型とを備え、
前記第1金型におけるプレス方向と直交する方向の周縁部に冷却路を備えており、
前記冷却路は、冷媒を導入可能に構成され、且つ前記周縁部の周方向の一部に設けられ、
前記冷却路の前記冷媒を導入可能な深さを調整可能とすべく、前記冷却路の内部を移動可能な深さ調整部材を備えたことを特徴とする金型装置。
【請求項2】
前記冷却路は、内周面に雌ねじを有する断面円形の穴であり、
前記深さ調整部材は、外周面に雄ねじを有する円柱状をなし、前記冷却路に対して螺着されていることを特徴とする請求項に記載の金型装置。
【請求項3】
ガラス物品のプレス成形用の金型装置であって、
成形凹部を有する第1金型と、前記成形凹部との間にキャビティを形成する第2金型とを備え、
前記第1金型におけるプレス方向と直交する方向の周縁部に冷却路を備えており、
前記ガラス物品は、周方向に部分的に設けられた取っ手部を有するガラス容器であり、
前記冷却路は、前記周縁部の周方向において、前記成形凹部における前記取っ手部を成形する取っ手部成形面に対応する位置に設けられていることを特徴とする金型装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の金型装置を用いたガラス物品の製造方法であって、
前記第1金型の前記成形凹部に供給されたガラスゴブを前記第2金型でプレスしてガラス物品を成形するプレス成形工程を備えることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【請求項5】
前記プレス成形工程において、前記冷却路の開口に対向する位置に配置されたノズルから冷媒を出射して前記冷却路内に供給することを特徴とする請求項に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項6】
前記冷却路が前記ガラスゴブの広がり特性方向に対応して設けられていることを特徴とする請求項又はに記載のガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品のプレス成形用の金型装置及びガラス物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス物品の製造方法としては、例えば特許文献1に示されるように、金型内に供給した溶融ガラスの塊(ガラスゴブ)を所定のガラス物品の形状にプレス成形する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-40431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の製造方法に用いる金型において、プレス方向と直交する方向の周縁部における温度分布のばらつきが顕著になると、熱歪みによって金型に割れなどの不具合が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、金型の割れを抑制可能とした金型装置及びガラス物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する金型装置は、ガラス物品のプレス成形用の金型装置であって、成形凹部を有する第1金型と、前記成形凹部との間にキャビティを形成する第2金型とを備え、前記第1金型におけるプレス方向と直交する方向の周縁部に冷却路を備えている。
【0007】
上記態様によれば、第1金型におけるプレス方向と直交する方向の周縁部に備えた冷却路によって、該周縁部における温度分布のばらつきを抑えることが可能となり、その結果、第1金型の割れを抑制することが可能となる。
【0008】
上記金型装置において、前記冷却路は、冷媒を導入可能に構成され、且つ前記周縁部の周方向の一部に設けられ、前記冷却路の前記冷媒を導入可能な深さを調整可能とすべく、前記冷却路の内部を移動可能な深さ調整部材を備えた。
【0009】
上記態様によれば、冷却路内における深さ調整部材の位置を調節することで、冷却路内への冷媒の導入量を調整できる。これにより、周縁部の周方向における温度均一化がより図りやすくなり、その結果、第1金型の割れをより一層抑制することが可能となる。
【0010】
上記金型装置において、前記冷却路は、内周面に雌ねじを有する断面円形の穴であり、前記深さ調整部材は、外周面に雄ねじを有する円柱状をなし、前記冷却路に対して螺着されている。
【0011】
上記態様によれば、冷却路内における深さ調整部材の位置を容易に調節可能となり、周縁部の周方向における温度均一化がより図りやすい。
上記金型装置において、前記ガラス物品は、周方向に部分的に設けられた取っ手部を有するガラス容器であり、前記冷却路は、前記周縁部の周方向において、前記成形凹部における前記取っ手部を成形する取っ手部成形面に対応する位置に設けられている。
【0012】
上記態様によれば、周方向に部分的に設けられた取っ手部を有するガラス容器を成形する金型装置においては、取っ手部を成形する部位(取っ手部成形面)付近の温度が高くなりやすいため、取っ手部成形面に対応する位置に冷却路を設けることで、周縁部における温度分布のばらつきをより好適に抑えることが可能となる。
【0013】
上記課題を解決するガラス物品の製造方法は、上記金型装置を用いたガラス物品の製造方法であって、前記第1金型の前記成形凹部に供給されたガラスゴブを前記第2金型でプレスしてガラス物品を成形するプレス成形工程を備える。
【0014】
上記態様によれば、第1金型におけるプレス方向と直交する方向の周縁部に部分的に設けられた冷却路によって、該周縁部における温度分布のばらつきを抑えることが可能となり、その結果、第1金型の割れを抑制することが可能となる。
【0015】
上記ガラス物品の製造方法の前記プレス成形工程において、前記冷却路の開口に対向する位置に配置されたノズルから冷媒を出射して前記冷却路内に供給する。
上記態様によれば、ノズルから冷媒を冷却路内に供給することで、周縁部の対象部位の温度上昇を好適に抑えることができ、その結果、第1金型の割れをより好適に抑制することが可能となる。
【0016】
上記ガラス物品の製造方法において、前記冷却路が前記ガラスゴブの広がり特性方向に対応して設けられている。
上記態様によれば、ガラスゴブの広がり特性方向(広がりやすい方向)に対する第1金型の部位(周縁部の一部位)では温度が相対的に高くなりやすい。このため、冷却路の形成位置をガラスゴブの広がり特性方向に対応させることで、周縁部における温度分布のばらつきをより好適に抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金型装置及びガラス物品の製造方法によれば、金型の割れを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の金型装置で成形されるガラス物品の斜視図。
図2】同形態の金型装置における第1金型を示す模式平面図。
図3】同形態の金型装置を用いたガラス物品の製造方法を説明するための模式断面図。
図4】同形態の金型装置を用いたガラス物品の製造方法を説明するための模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、金型装置及びガラス物品の製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の金型装置Mにて製造されるガラス物品Gは、例えば、赤外線加熱方式やガス加熱方式の調理器で加熱可能なガラス容器(両手鍋)である。ガラス物品Gに用いる耐熱ガラスとしては、例えば、30~750℃における平均線熱膨張係数が-10~+30×10-7/℃程度の極めて低膨張な結晶化ガラス(ガラスセラミックス)が用いられる。ガラス物品Gに用いる耐熱ガラスの組成は、質量%で、SiO:55~75%、Al:20.5~27%、LiO:2%以上、TiO:1.5~3%、TiO+ZrO:3.8~5%、SnO:0.1~0.5%を含むことが好ましい。
【0021】
なお、上記は一例であり、ガラス物品Gに用いる耐熱ガラスとしては、硼珪酸ガラス等を用いても良い。この場合、ガラス組成として質量%で、SiO:70~85%、Al:0~5%、B:10~20%、NaO:2~10%、KO:0~5%を含有する硼珪酸ガラスを用いることが好ましい。
【0022】
ガラス物品Gは、略円板状の底部11と、底部11の外周縁から上側に延びる周壁部12とを有している。周壁部12は、開口側(上側)に向かうにつれて拡径するテーパ状に形成されている。周壁部12の上端部(開口端部)には、外周側に互いに相反する方向に延びる一対の取っ手部13が形成されている。各取っ手部13は、上下方向(底部11と直交する方向)に対して直交する板状に形成されている。
【0023】
次に、ガラス物品Gのプレス成形に用いる金型装置Mについて説明する。
図3及び図4に示すように、金型装置Mは、内面が成形面をなす成形凹部21を有する第1金型20(下型)と、第1金型20の成形凹部21の内面との間にキャビティを形成する第2金型30(上型)とを備える。プレス成形時において、第1金型20の成形凹部21内にはガラスゴブGa(溶融ガラスの塊)が供給され、その成形凹部21内のガラスゴブGaを第2金型30のプレスにてガラス物品Gの形状に成形するようになっている。なお、図面中のXYZ軸におけるZ軸は、金型装置Mのプレス方向Pに沿った方向を表し、X軸は、Z軸と直交する水平方向を表し、Y軸はXZ平面に対して直交する水平方向を表している。
【0024】
図2及び図3に示すように、第1金型20の成形凹部21の内面は、ガラス物品Gの底部11を成形する底部成形面22と、ガラス物品Gの周壁部12を成形する周壁部成形面23と、ガラス物品Gの一対の取っ手部13をそれぞれ成形する一対の取っ手部成形面24とを有している。一対の取っ手部成形面24は、成形凹部21におけるX軸方向の両端部に形成されている。
【0025】
第1金型20におけるプレス方向Pと直交する方向の周縁部25(第1金型20における成形凹部21の外周を囲う部分)には、ノズル40から供給されるエアーや霧状の水などの冷媒Cを導入可能な冷却路26が設けられている。冷却路26は、周縁部25の周方向における一部分に設けられている。
【0026】
図2に示すように、本実施形態の第1金型20は、複数の冷却路26からなる冷却路群26aを、各取っ手部成形面24に対応する位置に備える。つまり、冷却路群26aは、周縁部25におけるX軸方向の両端部位(周縁部25の周方向における180度対称位置)にそれぞれ設けられている。
【0027】
本実施形態では、各冷却路群26aは2つの冷却路26からなる。冷却路群26aの2つの冷却路26の各々は、第1金型20におけるX軸方向の外側面20aからX軸方向に沿って形成された断面円形の穴であり、該外側面20aに開口を有している。また、冷却路群26aの2つの冷却路26は、平面視(Z軸方向視)において、取っ手部成形面24のY軸方向の幅内に収まる位置に設けられている。また、各冷却路26は、X軸方向における成形凹部21(周壁部成形面23)の側方位置に設けられている。また、各冷却路26は、成形凹部21(取っ手部成形面24)とZ軸方向に重ならないように形成されている。
【0028】
各冷却路26内には、冷却路26における冷媒Cを導入可能な深さ(X軸方向の長さ)を調整するための深さ調整部材27が設けられている。深さ調整部材27は、冷却路26のX軸方向の一部を閉塞する略円柱状をなし、冷却路26内をX軸方向に移動可能、かつ、X軸方向における任意の位置で留まることが可能に構成されている。本実施形態では、深さ調整部材27は外周面に雄ねじを有し、各冷却路26の内面に形成された雌ねじに対して螺着されている。そして、冷却路26の開口からその内部に導入された冷媒Cは、深さ調整部材27の位置まで到達するものの、深さ調整部材27よりも奥側の密閉空間には入り込まないようになっている。
【0029】
次に、本実施形態の金型装置Mを用いたガラス物品Gの製造方法をその作用と共に説明する。
ガラス物品Gは、第1金型20及び第2金型30によるプレス成形工程を経て成形される。プレス成形工程では、図3に示すように、ガラスゴブGaを第1金型20の成形凹部21内に供給する。第2金型30は、典型的には、プランジャおよびシェルを備えて構成される。
【0030】
次に、図4に示すように、成形凹部21内のガラスゴブGaに対して第2金型30をプレス方向Pにプレスすることによって、該ガラスゴブGaをガラス物品Gの形状に成形する。このとき、プレスした溶融ガラスの周方向における体積分布に応じて、周縁部25の周方向における温度のばらつきが生じるおそれがある。すなわち、本実施形態では、ガラス物品Gの取っ手部13でガラス体積が多くなるため、周縁部25において取っ手部成形面24のあるX軸方向の両側部位が、取っ手部成形面24の無いY軸方向の両側部位に比べて温度が高くなりやすい。
【0031】
また、ガラスゴブGaの特性として、プレスで押し潰されたときに広がりやすい方向(図2中の広がり特性方向D)があり、プレス時にガラスゴブGaを成形凹部21の中心部から最も遠い取っ手部成形面24まで安定して広げるために、ガラスゴブGaの広がり特性方向Dを取っ手部成形面24の位置に合わせる(すなわちX軸方向と略平行とする)ことが好ましい。こうすることで、プレス時に溶融ガラスをより早く各取っ手部成形面24に到達させることができ、取っ手部13の形状を確実に成形できる。しかしながら、成形凹部21の周方向において取っ手部成形面24に溶融ガラスがより早く到達するため、このことも取っ手部成形面24付近の周縁部25の温度が相対的に高くなってしまう要因となる。
【0032】
そこで、上記のプレス成形工程を実施する過程において、取っ手部成形面24付近の周縁部25の温度を下げるために、第1金型20のX軸方向の両側にそれぞれ配されたノズル40から各冷却路26に対して冷媒Cを噴射して供給する。これにより、取っ手部成形面24付近の周縁部25の温度上昇が抑えられ、その結果、周縁部25の周方向における温度分布のばらつきが抑えられるようになっている。なお、各ノズル40は、各冷却路26の開口に対向する位置に配置される。
【0033】
また、前述したように、冷媒Cは冷却路26内の深さ調整部材27の位置まで導入されるようになっており、深さ調整部材27は冷却路26内をその深さ方向(X軸方向)に移動可能に構成されている。このため、冷却路26の深さ方向における深さ調整部材27の位置を調節することで、冷却路26内への冷媒Cの導入量を調整することができる。これにより、取っ手部成形面24付近の周縁部25に対する冷却度合いを調整することができるため、周縁部25の温度均一化がより図りやすくなっている。
【0034】
プレス成形工程で成形したガラス物品Gは、図示しない焼成炉で焼成して結晶化させる結晶化工程などを経て、製品として完成する。
本実施形態の効果について説明する。
【0035】
(1)第1金型20におけるプレス方向Pと直交する方向の周縁部25の周方向の一部に、冷媒Cを導入可能な冷却路26が設けられている。このため、冷却路26によって第1金型20の周縁部25の周方向における温度分布のばらつきを抑えることが可能となり、その結果、第1金型20の割れを抑制することが可能となる。
【0036】
また、結晶化ガラスからなるガラス物品Gは、プレス成形時の温度分布のばらつきが顕著になると、例えば焼成後(結晶化後)に部分的な白濁現象が生じるおそれがある。その点、本実施形態では、冷却路26によって第1金型20の周縁部25の周方向における温度分布のばらつきが抑えられることから、プレス成形するガラス物品Gにおいても周方向における温度分布のばらつきを抑えることができ、その結果、白濁現象の発生を抑制できる。
【0037】
(2)金型装置M(第1金型20)は、冷却路26の冷媒Cを導入可能な深さ(X軸方向の長さ)を調整可能とすべく、冷却路26の内部を移動可能な深さ調整部材27を備える。このため、冷却路26内における深さ調整部材27のX軸方向の位置を調節することで、冷却路26内への冷媒Cの導入量を調整できる。これにより、周縁部25の周方向における温度均一化がより図りやすくなり、その結果、第1金型20の割れをより一層抑制することが可能となる。
【0038】
(3)冷却路26は、内周面に雌ねじを有する断面円形の穴である。そして、深さ調整部材27は、外周面に雄ねじを有する円柱状をなし、冷却路26の内周面(雌ねじ)に対して螺着されている。この態様によれば、冷却路26内における深さ調整部材27の位置を容易に調節可能となり、周縁部25の周方向における温度均一化がより図りやすい。
【0039】
(4)金型装置Mでプレス成形するガラス物品Gは、周方向に部分的に設けられた取っ手部13を有するガラス容器である。そして、第1金型20の冷却路26は、周縁部25の周方向において、成形凹部21における取っ手部13を成形する取っ手部成形面24に対応する位置に設けられている。第1金型20の周縁部25においては、取っ手部成形面24付近の温度が高くなりやすいため、取っ手部成形面24に対応する位置に冷却路26を設けることで、周縁部25における温度分布のばらつきをより好適に抑えることが可能となる。
【0040】
(5)プレス成形工程において、冷却路26の開口に対向する位置に配置されたノズル40から冷媒Cを出射して冷却路26内に供給する。この態様によれば、ノズル40から冷媒Cを冷却路26内に供給することで、周縁部25の対象部位の温度上昇を好適に抑えることができ、その結果、第1金型20の割れをより好適に抑制することが可能となる。
【0041】
(6)冷却路26がガラスゴブGaの広がり特性方向D(広がりやすい方向)に対応して設けられている。第1金型20の周方向において、ガラスゴブGaの広がり特性方向Dに対する部位(本実施形態では取っ手部成形面24付近の部位)では、プレスされたガラスゴブGaがいち早く到達するため、当該部位の温度が相対的に高くなりやすい。このため、冷却路26の形成位置をガラスゴブGaの広がり特性方向Dに対応させることで、周縁部25における温度分布のばらつきをより好適に抑えることが可能となる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、冷却路26が取っ手部成形面24の各々に対応して2つずつ設けられたが、これに限らず、取っ手部成形面24の各々に対応して1つずつ、又は3つ以上ずつ設けてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、冷却路26が成形凹部21のX軸方向の側方に設けられたが、これに限らず、成形凹部21よりも下方の位置(成形凹部21とX軸方向に重ならない位置)に設けてもよい。
【0044】
・上記実施形態の冷却路26に対する深さ調整部材27の構造は例示であり、深さ調整部材27によって冷却路26の冷媒Cを導入可能な深さを調整可能な構成であれば、上記実施形態以外の構成に変更してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、第1金型20の周縁部25の周方向の一部に冷却路26を設けたが、これに特に限定されるものではなく、周縁部25の周方向において全体的に冷却路を備えてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、鍋型のガラス容器をプレス成形する金型装置Mに適用したが、これ以外に例えば、ガラス製の食器皿や電子レンジのターンテーブルなどをプレス成形する金型装置に適用することも可能である。また、例えば、平板状の板ガラスをプレス成形する金型装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
M…金型装置、Ga…ガラスゴブ、G…ガラス物品、13…取っ手部、20…第1金型、21…成形凹部、24…取っ手部成形面、25…周縁部、26…冷却路、27…深さ調整部材、30…第2金型、40…ノズル、C…冷媒。
図1
図2
図3
図4