IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エンジンの燃料供給装置 図1
  • 特許-エンジンの燃料供給装置 図2
  • 特許-エンジンの燃料供給装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】エンジンの燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20220105BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F02M55/02 350C
F02M37/00 321B
F02M55/02 350U
F02M55/02 360A
F02M55/02 360G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018016966
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019132248
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】住本 浩
(72)【発明者】
【氏名】砂田 知宏
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-54731(JP,A)
【文献】特開平3-185261(JP,A)
【文献】特開2012-158994(JP,A)
【文献】特開2011-231734(JP,A)
【文献】特開2008-75494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0023818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
F02M 37/00-37/54
F02F 1/00- 1/42
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列方向に配列された複数の気筒と、前記気筒の気筒軸方向に直交する方向に突出した複数の突出部が形成された表面を含むシリンダブロックと、を有するエンジンに燃料を供給する燃料供給装置であって、
前記複数の気筒に前記燃料を噴射する複数の燃料噴射弁と、
前記複数の突出部の上方で前記配列方向に延設されているとともに前記複数の燃料噴射弁の一部へ前記燃料を分配する第1分配管と、前記第1分配管に直列に延設されているとともに前記複数の燃料噴射弁の他の一部へ前記燃料を分配する第2分配管と、を含む燃料分配部と、
前記燃料を前記第1分配管へ案内する第1供給経路と前記燃料を前記第2分配管へ案内する第2供給経路とを独立に形成し、前記第1供給経路及び前記第2供給経路を通じて前記燃料を前記燃料分配部へ供給する燃料供給部と、
前記第1分配管及び前記第2分配管内の前記燃料の圧力を調整するために前記燃料分配部から流出された前記燃料を案内する案内管部と、を備え、
前記第1供給経路及び前記第2供給経路は、前記第1分配管及び前記第2分配管から下方に延設されているとともに前記複数の突出部の間の空隙に挿通され、
前記案内管部は前記第1供給経路と前記第2供給経路との間で前記複数の突出部の間の空隙に挿通されていることを特徴とする
エンジンの燃料供給装置。
【請求項2】
前記第1分配管内の余剰燃料をリターンするとともに前記案内管部を形成する複数の管部材が連結された連結部を更に備え、
前記案内管部の前記複数の管部材は、前記第1分配管内の前記余剰燃料を案内する第1リターン管と、前記第2分配管内の余剰燃料を案内する第2リターン管と、を含み、
前記第1リターン管は、前記連結部から下方に延設されているとともに前記複数の突出部の間の空隙に挿通されていることを特徴とする
請求項1に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項3】
前記連結部は、前記第1供給経路及び前記第1分配管の接続部位よりも前記第2分配管に近い側の前記第1分配管の端部に配置されていることを特徴とする
請求項2に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項4】
前記第1分配管内の圧力が所定の設定圧力を超えたときに開かれる第1減圧弁と、
前記第2分配管内の圧力が所定の設定圧力を超えたときに開かれる第2減圧弁と、を更に備え、
前記複数の燃料噴射弁は所定の順序で前記燃料を噴射し、
前記第1分配管を通じて前記燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁の燃料噴射順序は連続せず、
前記第2分配管を通じて前記燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁の燃料噴射順序は連続しないことを特徴とする
請求項2又は3に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項5】
前記複数の突出部は前記シリンダブロックに形成された複数のポートであることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項6】
前記複数の突出部は前記シリンダブロックに形成された複数の吸気ポートであることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジンの燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンへ燃料を供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2つの燃料分配管を有する燃料供給装置を開示している。これらの燃料分配管それぞれは複数の燃料噴射弁へ燃料を分配する。複数の燃料噴射弁は複数の気筒へ燃料を噴射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-170209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単数の燃料分配管を有する燃料供給装置に関して、燃料分配管へ燃料を供給するための燃料供給経路は1つで十分である。しかしながら、特許文献1の燃料供給装置のように複数の燃料分配管が用いられると、複数の燃料分配管へ燃料をそれぞれ供給するための複数の燃料供給経路が必要とされる。加えて、複数の燃料分配管それぞれの中の燃料の圧力を調整するためにこれらの燃料分配管から流出された燃料を案内するための複数の燃料流出経路も形成される必要がある。したがって、複数の燃料分配管が燃料供給装置に用いられるならば単数の燃料分配管を有する燃料供給装置よりも多くの燃料供給経路及び燃料流出経路が必要とされる。
【0005】
燃料供給経路及び燃料流出経路を形成する管部材はエンジンルーム内の部品の中で最も脆弱な部位のうちの1つである。管部材が破損されると燃料が破損部位から漏出するので、管部材は適切に保護される必要がある。上述の如く、複数の燃料分配管が燃料供給装置に用いられるならば単数の燃料分配管を有する燃料供給装置よりも多くの燃料供給経路及び燃料流出経路が必要とされるので、管部材を保護するための多くの保護部品が必要とされる。このことは、燃料供給装置の組立効率を悪化させるだけでなく、燃料供給装置の製造コストを増加させる。
【0006】
本発明は、多くの保護部品を用いることなく燃料が流れる経路を保護することを可能にする燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る燃料供給装置は、所定の配列方向に配列された複数の気筒と、前記気筒の気筒軸方向に直交する方向に突出した複数の突出部が形成された表面を含むシリンダブロックと、を有するエンジンに燃料を供給する。燃料供給装置は、前記複数の気筒に前記燃料を噴射する複数の燃料噴射弁と、前記複数の突出部の上方で前記配列方向に延設されているとともに前記複数の燃料噴射弁の一部へ前記燃料を分配する第1分配管と、前記第1分配管に直列に延設されているとともに前記複数の燃料噴射弁の他の一部へ前記燃料を分配する第2分配管と、を含む燃料分配部と、前記燃料を前記第1分配管へ案内する第1供給経路と前記燃料を前記第2分配管へ案内する第2供給経路とを独立に形成し、前記第1供給経路及び前記第2供給経路を通じて前記燃料を前記燃料分配部へ供給する燃料供給部と、前記第1分配管及び前記第2分配管内の前記燃料の圧力を調整するために前記燃料分配部から流出された前記燃料を案内する案内管部と、を備える。前記第1供給経路及び前記第2供給経路は、前記第1分配管及び前記第2分配管から下方に延設されているとともに前記複数の突出部の間の空隙に挿通されている。前記案内管部は前記第1供給経路と前記第2供給経路との間で前記複数の突出部の間の空隙に挿通されている。
【0008】
上記の構成によれば、第1供給経路及び第2供給経路はシリンダブロックの複数の突出部の間の空隙に挿通されているので、車両の衝突時においてエンジンルーム内の部品が第1供給経路及び第2供給経路に向かってきても、複数の突出部が第1供給経路及び第2供給経路に向かって移動する部品に衝突する。シリンダブロックは高い剛性を有するのでほとんど変形することなく第1供給経路及び第2供給経路への部品の移動を食い止めることができる。すなわち、第1分配管及び第2分配管へ向かう燃料の経路は複数の突出部によって保護される。同様に、案内管部もシリンダブロックの複数の突出部の間の空隙に挿通されているので、第1分配管及び第2分配管から流出した燃料の経路も複数の突出部によって保護される。シリンダブロックの表面から突出した複数の突出部が第1供給経路、第2供給経路及び案内管部の保護に用いられるので、これらの保護に利用される保護部品は少なくてもよい。
【0009】
燃料供給装置の配管に関して、案内管部は複数の突出部の上方に配置された燃料分配部から流出された燃料を案内するように形成され、且つ、燃料分配部の下方の複数の突出部の空隙に挿通されているので、第1供給経路及び第2供給経路と同様に、燃料分配部から下方に延設されている。加えて、案内管部は第1供給経路及び第2供給経路の間で配管されているので、第1供給経路及び第2供給経路の近くに配置される。作業者は、案内管部の配管を第1供給経路及び第2供給経路の形成と略同時に行うことができ、これらに対する配管作業は効率化される。
【0010】
燃料分配部の圧力調整に関して、燃料が第1供給経路及び第2供給経路を通じて第1分配管及び第2分配管へ供給されると、第1分配管及び第2分配管内の燃料の圧力は増加する。第1分配管及び第2分配管内の燃料の圧力が増加すると、第1分配管及び第2分配管によって燃料を分配された複数の燃料噴射弁からの燃料噴射量は増加する。燃料が案内管部を通じて第1分配管及び第2分配管から流出されると、第1分配管及び第2分配管内の燃料の圧力は低下する。第1分配管及び第2分配管内の燃料の圧力が低下すると、第1分配管及び第2分配管によって燃料を分配された複数の燃料噴射弁からの燃料噴射量は低下する。したがって、複数の燃料噴射弁それぞれからの燃料噴射量は第1分配管及び第2分配管への燃料の供給及び第1分配管及び第2分配管からの燃料の流出によって調整される。
【0011】
燃料分配部内の脈動の伝達に関して、燃料分配部は第1分配管と第2分配管とに分けられているので、第1分配管から燃料の分配を受けた燃料噴射弁からの燃料の噴射に起因して生じた脈動は第1分配管内に留まり第2分配管へ伝達されない。したがって、第2分配管からの燃料の分配を受ける燃料噴射弁からの燃料の噴射は、第1分配管からの燃料の分配を受ける燃料噴射弁からの燃料の噴射に起因して生じた脈動に影響されない。
【0012】
燃料分配部の位置及び構造に関して、燃料分配部は突出部の上方で複数の気筒の配列方向に延設されているので、突出部と干渉することなく配置される。加えて、燃料分配部の第1分配管及び第2分配管は気筒の配列方向において直列に延設されているので、燃料分配部は気筒の延設方向において大きな寸法を有さない。
【0013】
上記の構成に関して、燃料供給装置は前記第1分配管内の余剰燃料をリターンするとともに前記案内管部を形成する複数の管部材が連結された連結部を更に備えてもよい。前記案内管部の前記複数の管部材は、前記第1分配管内の前記余剰燃料を案内する第1リターン管と、前記第2分配管内の余剰燃料を案内する第2リターン管と、を含んでもよい。前記第1リターン管は、前記連結部から下方に延設されているとともに前記複数の突出部の間の空隙に挿通されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、第2分配管内の余剰燃料を案内する第2リターン管は連結部によって第1分配管内の余剰燃料を案内する第1リターン管に連結されているので、作業者は案内管部を単一の管部材として取り扱うことができる。したがって、作業者は案内管部を効率的に配管することができる。
【0015】
案内管部の第1リターン管及び第2リターン管の連結だけでなく第1分配管からの余剰燃料のリターンにも連結部は用いられるので、第1分配管に配置されている。第1分配管に配置された連結部から下方に延設された第1リターン管は燃料分配部の下方に位置する複数の突出部の間の空隙に挿通されているので、車両の衝突時においてエンジンルーム内の部品が第1リターン管に向かってきても、複数の突出部が第1リターン管に向かって移動する部品に衝突する。したがって、第1分配管及び第2分配管から流出された燃料の経路は複数の突出部によって保護される。シリンダブロックの表面から突出した複数の突出部が第1リターン管の保護に用いられるので、第1リターン管の保護に利用される保護部品は少なくてもよい。
【0016】
上記の構成に関して、前記連結部は、前記第1供給経路及び前記第1分配管の接続部位よりも前記第2分配管に近い側の前記第1分配管の端部に配置されていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、連結部は第1供給経路及び第1分配管の接続部位よりも第2分配管に近い側の第1分配管の端部に配置されているので、気筒の配列方向において略中央に位置する。この結果、作業者は案内管部を第1分配管へ繋がる第1供給経路及び第2分配管へ繋がる第2供給経路の両方に近い位置で配管することができる。したがって、作業者は案内管部の配管を第1供給経路及び第2供給経路の形成と略同時に行うことができ、これらに対する配管作業は効率化される。
【0018】
上記の構成に関して、燃料供給装置は、前記第1分配管内の圧力が所定の設定圧力を超えたときに開かれる第1減圧弁と、前記第2分配管内の圧力が所定の設定圧力を超えたときに開かれる第2減圧弁と、を更に備えてもよい。前記複数の燃料噴射弁は所定の順序で前記燃料を噴射してもよい。前記第1分配管を通じて前記燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁の燃料噴射順序は連続しなくてもよい。前記第2分配管を通じて前記燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁の燃料噴射順序は連続しなくてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、第1分配管を通じて燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁の燃料噴射順序は連続しないので、第1分配管を通じて燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁のうち1つが燃料を噴射してから第1分配管を通じて燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁のうち他のもう1つが燃料を噴射するまでの期間において、第1分配管からの燃料の分配を受けない燃料噴射弁からの燃料噴射が行われる。したがって、第1分配管を通じて燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁の中の2つが燃料を噴射する期間は長くなる。この結果、第1分配管を通じて燃料の分配を受ける複数の燃料噴射弁のうち1つからの燃料噴射に起因して生じた脈動が十分に減衰するための長い期間が得られることになる。第2分配管を通じて燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁の燃料噴射順序も連続しないので、第2分配管を通じて燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁も十分に減衰された脈動の環境の下で燃料を噴射することができる。
【0020】
上述の如く、第1分配管を通じて燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁及び第2分配管を通じて燃料の供給を受ける複数の燃料噴射弁内での燃料噴射順序は連続しないので、設計者は第1減圧弁及び第2減圧弁が同時には開かれないように複数の燃料噴射弁からの燃料の噴射順序を決定することができる。したがって、第1リターン管及び第2リターン管が連結部に連結され、余剰の燃料が案内される経路が1つの管路に集約されても、余剰の燃料は円滑に流動することができる。
【0021】
上記の構成に関して、前記複数の突出部は前記シリンダブロックに形成された複数のポートであってもよい。
【0022】
上記の構成によれば、複数の突出部はシリンダブロックに形成された複数のポートであるので、第1供給経路、第2供給経路及び案内管部を保護するための特別の設計は、シリンダブロックに必要とされない。
【0023】
上記の構成に関して、前記複数の突出部は前記シリンダブロックに形成された複数の吸気ポートであってもよい。
【0024】
上記の構成によれば、複数の突出部はシリンダブロックに形成された複数の吸気ポートであるので、第1供給経路、第2供給経路及び案内管部は過度の高温に曝されない。
【発明の効果】
【0025】
上述の燃料供給装置は、多くの保護部品を用いることなく燃料が流れる経路を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】エンジンへ燃料を供給する例示的な燃料供給装置の概略的な斜視図である。
図2】吸気ポートに沿う仮想的な水平面でのエンジンの概略的な断面図である。
図3】燃料供給装置の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、エンジン200へ燃料を供給する例示的な燃料供給装置100の概略的な斜視図である。燃料供給装置100の前に、エンジン200が図1を参照して概略的に説明される。「上流」及び「下流」との用語は、燃料の流れ方向を基準に用いられている。「前」、「後」、「右」、「左」、「上」や「下」といった方向を表す用語は、説明の明瞭化のみを目的として用いられており、限定的に解釈されるべきものではない。
【0028】
<エンジン>
エンジン200は、直列6気筒エンジンである。エンジン200は、シリンダブロック211とシリンダヘッド212とを含む。シリンダブロック211内には、上方に開口するとともに鉛直方向に延設された中心軸を有する6つの気筒が配置されている。シリンダヘッド212は、6つの気筒の開口端を閉じている。6つの気筒は、前後方向に配列されている。
【0029】
エンジン200は、6つの気筒内で鉛直方向に往復動する6つのピストン(図示せず)、6つのピストンの往復動を所定の回転軸周りの回転として出力するクランクシャフト(図示せず)及びクランクシャフトと6つのピストンそれぞれとを連結する連結機構(図示せず)を更に含む。クランクシャフトは、6つのピストンの下方で前後方向に延設されている。連結機構は、コネクティングロッド、ピストンロッド及びクロスヘッドを含むことができる。エンジン200の構造に対して、一般的な車両用エンジンの設計技術が適用されてもよい。したがって、本実施形態の原理は、エンジン200の特定の構造に限定されない。
【0030】
エンジン200のシリンダブロック211は、左側面220と左側面220から左方に(すなわち、6つの気筒の配列方向及び気筒軸方向に対して直交する方向に)突出した6つの吸気ポート231~236とを含む。左側面220は燃料供給装置100の取付に利用されている。6つの吸気ポート231~236はシリンダブロック211内に形成された6つの気筒へ空気を送り込むために利用される。
【0031】
吸気ポート231は吸気ポート231~236の中で最も前方に形成されている。吸気ポート231は最も前方の気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート232は吸気ポート231の後方に位置し、吸気ポート231から空気を送り込まれる気筒の後ろの気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート233は吸気ポート232の後方に位置し、吸気ポート232から空気を送り込まれる気筒の後ろの気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート234は吸気ポート233の後方に位置し、吸気ポート233から空気を送り込まれる気筒の後ろの気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート235は吸気ポート234の後方に位置し、吸気ポート234から空気を送り込まれる気筒の後ろの気筒への吸気経路を形成している。吸気ポート236は吸気ポート231~236の中で最も後方に位置している。吸気ポート236は最も後方の気筒への吸気経路を形成している。
【0032】
吸気ポート232,233の間、吸気ポート233,234の間及び吸気ポート234,235の間には鉛直方向に延びる空隙が形成されている。これらの空隙は燃料供給装置100の配管に利用されている。燃料供給装置100の構造が以下に概略的に説明される。
【0033】
<燃料供給装置の構造>
燃料供給装置100は、エンジン200へ燃料を送り出す部位と、エンジン200の6つの気筒へ燃料を分配する部位と、6つの気筒へ燃料を噴射する部位と、を有する。燃料供給装置100は、エンジン200へ燃料を送り出す部位として、エンジン200の左側面220に沿って燃料の供給経路を形成する燃料供給部110を有する。燃料供給装置100は、6つの気筒へ燃料を分配する部位として、吸気ポート231~236の上方で前後方向(すなわち、気筒の配列方向)に延設された燃料分配部120と、燃料分配部120からシリンダヘッド212の上方で延設された管群130と、を有する。燃料供給装置100は、6つの気筒へ燃料を噴射する部位として、シリンダヘッド212の上面に取り付けられた弁群140を有する。燃料供給部110は燃料を燃料分配部120へ供給する。燃料分配部120は燃料を管群130が形成した複数の分配経路に分配する。管群130は弁群140へ燃料を案内する。弁群140は6つの気筒へ燃料を噴射する。
【0034】
弁群140へ燃料分配部120及び管群130を通じて燃料を送り出す燃料供給部110は、エンジン200の左側面220の後部に固定された燃料ポンプ部111と、燃料ポンプ部111に連結された2つの供給管112,113と、を含む。燃料ポンプ部111は、燃料タンク(図示せず)から燃料を吸引し、吸引された燃料を供給管112,113へ吐出する。供給管112は燃料を前方且つ上方に案内する第1供給経路を形成する。供給管112と同様に、供給管113は燃料を前方且つ上方に案内する第2供給経路を形成する。第2供給経路は第1供給経路から独立した経路である。
【0035】
供給管112,113へ燃料を吐出する燃料ポンプ部111は、鉛直方向に整列した2つのポンプ114,115を含む。上側のポンプ114は燃料ポンプ部111が燃料タンクから吸引した燃料が吐出される吐出部116を含む。上側のポンプ114の吐出部116には供給管112が連結されている。下側のポンプ115は燃料ポンプ部111が燃料タンクから吸引した燃料が吐出される吐出部117を含む。下側のポンプ115の吐出部117には供給管113が連結されている。
【0036】
供給管113は下側のポンプ115の吐出部117から上方且つ前方に延設され、燃料分配部120に連結されている。供給管113と同様に、供給管112は上側のポンプ114の吐出部116から上方且つ前方に延設されている。供給管112は、供給管113と立体的に交差している。供給管113は、供給管112が燃料分配部120に連結された連結部位より後方で燃料分配部120に連結されている。
【0037】
燃料分配部120はシリンダヘッド212の左方(すなわち、シリンダブロック211の上方)で気筒の配列方向(すなわち、前後方向)に延設された略円筒状の部位である。燃料分配部120は供給管112,113を通じて燃料ポンプ部111から供給された燃料を一時的に貯留し、管群130へ分配するために用いられる。
【0038】
燃料分配部120は略水平に配列された第1分配管121及び第2分配管122を含む。第1分配管121は3つの気筒へ燃料を分配するために用いられる。第1分配管121の後方に配置された第2分配管122は、第1分配管121によって燃料を分配される3つの気筒の後方で配列された3つの気筒に燃料を分配するために用いられる。第1分配管121及び第2分配管122の中心軸に略一致する延設軸EXAが図1に示されている。延設軸EXAは6つの気筒の配列方向に延設され、6つの気筒が形成する気筒列に略平行である。延設軸EXAに沿って第1分配管121及び第2分配管122は延設されている。
【0039】
第1分配管121は、延設軸EXAに沿って延設された略円筒状の主管161と主管161から上方に突出した3つの分配コネクタ162,163,164とを含む。主管161の周面には、上側のポンプ114から延設された供給管112が連結されている。主管161は供給管112を通じて供給された燃料が一時的に貯留される貯留空間(図示せず)を形成している。主管161内の燃料の圧力は上側のポンプ114が燃料を送り出すにつれて増加する。したがって、主管161は高圧の燃料を貯留するように設計されている。主管161内の高圧の燃料は分配コネクタ162,163,164から流出する。
【0040】
分配コネクタ162は、分配コネクタ162,163,164の中で最も前方に形成されている。分配コネクタ164は、分配コネクタ162,163,164の中で最も後方に形成されている。分配コネクタ163は、分配コネクタ162,164の間に形成されている。
【0041】
分配コネクタ162,163,164には、管群130の一部が連結されている。管群130は、6つの連結管131~136を含む。連結管131,132,133は第1分配管121の分配コネクタ162,163,164に連結され、第1分配管121から弁群140への燃料の分配経路を形成している。連結管131,132,133の後方で配管された連結管134,135,136は第2分配管122に連結され、第2分配管122から弁群140への燃料の分配経路を形成している。第2分配管122は形状及び構造において第1分配管121に略等しい。したがって、第1分配管121の形状及び構造に関する説明は第2分配管122に援用される。
【0042】
第2分配管122は、第1分配管121の主管161の後方で延設軸EXAに沿って延設された主管165と3つの分配コネクタ166,167,168とを含む。主管165は第1分配管121の主管161と直列に延設されている。主管165の周面には、下側のポンプ115から延設された供給管113が連結されている。供給管113を通じて供給された燃料が一時的に貯留される貯留空間(図示せず)を、主管165は、第1分配管121の主管161が形成している貯留空間とは独立して形成している。主管165内の燃料の圧力は下側のポンプ115が燃料を送り出すにつれて増加する。したがって、主管165は高圧の燃料を貯留するように設計されている。主管165内の高圧の燃料は分配コネクタ166,167,168から流出する。
【0043】
分配コネクタ166は、分配コネクタ166,167,168の中で最も前方に形成されている。分配コネクタ168は、分配コネクタ166,167,168の中で最も後方に形成されている。分配コネクタ167は、分配コネクタ166,168の間に形成されている。分配コネクタ166,167,168には連結管134,135,136がそれぞれ連結され、弁群140への燃料の分配経路を形成している。
【0044】
6つの連結管131~136に対応して6つの燃料噴射弁141~146が弁群140としてシリンダヘッド212の上面に固定されている。燃料噴射弁141~146は燃料噴射弁141~146の下方に配置された6つの気筒に燃料をそれぞれ噴射するために用いられる。燃料噴射弁141~146から6つの気筒への燃料噴射のタイミングは、ECU(Electronic Control Unit:図示せず)によって制御される。
【0045】
燃料噴射弁141は、燃料噴射弁141~146の中で最も前方に配置されている。燃料噴射弁142は、燃料噴射弁141の後方に配置されている。燃料噴射弁143は、燃料噴射弁142の後方に配置されている。燃料噴射弁144は、燃料噴射弁143の後方に配置されている。燃料噴射弁145は、燃料噴射弁144の後方に配置されている。燃料噴射弁146は、燃料噴射弁141~146の中で最も後方に配置されている。
【0046】
燃料噴射弁141は、分配コネクタ162から延設された連結管131と連結されている。燃料噴射弁142は、分配コネクタ164から延設された連結管133と連結されている。燃料噴射弁143は、連結管133と立体的に交差するように分配コネクタ162,164の間の分配コネクタ163から延設された連結管132と連結されている。分配コネクタ162,163,164及び連結管131,133,132を通じて、第1分配管121の主管161内の燃料は燃料噴射弁141,142,143へ分配される。
【0047】
燃料噴射弁144は、分配コネクタ167から延設された連結管135と連結されている。燃料噴射弁145は、連結管135と立体的に交差するように分配コネクタ167の前方の分配コネクタ166から延設された連結管134と連結されている。燃料噴射弁146は、分配コネクタ167の後方の分配コネクタ168から延設された連結管136と連結されている。分配コネクタ166,167,168及び連結管135,134,136を通じて、第2分配管122の主管165内の燃料は燃料噴射弁144,145,146へ分配される。
【0048】
燃料噴射弁141~146からの燃料の噴射量を超えた量の燃料を燃料ポンプ部111は吐出し、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力を高い値に設定する。この結果、燃料は燃料噴射弁141~146から勢いよく噴射される。燃料の噴射量を超えた量の燃料が燃料ポンプ部111から第1分配管121及び第2分配管122へ供給される結果、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力は所定の設定圧力を超えることもある。したがって、第1分配管121及び第2分配管122内の圧力を低減するための圧力調整機構が第1分配管121及び第2分配管122に設けられている。圧力調整機構が以下に説明される。
【0049】
圧力調整機構は燃料分配部120内の燃料の圧力が低減されるように燃料分配部120から燃料を流出させ、燃料分配部120から流出した燃料を下方に案内する。燃料分配部120から燃料を流出させる部位として、燃料供給装置100は、第1分配管121に取り付けられた第1減圧弁171と、第2分配管122に取り付けられた第2減圧弁172と、第1分配管121の周壁から上方に突出した連結部173と、第2分配管122の周壁から上方に突出した流出部174と、を含む。燃料分配部120から流出した燃料を下方に案内する部位として、燃料供給装置100は案内管部180を含む。
【0050】
第1減圧弁171は、第1分配管121の主管161の後端に取り付けられている。第1減圧弁171は第1分配管121内の燃料の圧力に応じて、第1分配管121の内部空間と分配コネクタ164の後方で第1分配管121の主管161の周壁の後端部から突出した連結部173によって形成された流路とを連通させたり、第1分配管121及び連結部173の連通部位を閉じたりする機械的な弁体である。同様に、第2減圧弁172は第2分配管122内の燃料の圧力に応じて、第2分配管122の内部空間と分配コネクタ168の後方で第2分配管122の主管165の周壁から突出した流出部174によって形成された流路とを連通させたり、第2分配管122及び流出部174の連通部位を閉じたりする機械的な弁体である。
【0051】
第2減圧弁172が開いたときに第2分配管122から流出した燃料及び第1減圧弁171が開いたときに第1分配管121から流出した燃料を、案内管部180は下方へ案内する。案内管部180は、連結部173から延設された第1リターン管181と、流出部174から延設された第2リターン管182と、第1分配管121及び第2分配管122の下方に配置された接続部材183と、を含む。第2減圧弁172が開いたときに第2分配管122から流出した燃料を連結部173に案内するように、第2リターン管182は流出部174と連結部173とに連結されている。連結部173に流入した燃料及び第2減圧弁172が開いたときに第1分配管121から連結部173を通じて流出した燃料を接続部材183へ案内するように、第1リターン管181は連結部173と接続部材183とに連結されている。接続部材183は、燃料タンクに連なる管部材(図示せず)に接続されている。
【0052】
<燃料供給装置の動作>
燃料供給装置100の概略的な動作が以下に説明される。
【0053】
燃料ポンプ部111が作動すると、燃料タンク内の燃料は燃料ポンプ部111によって吸引され燃料ポンプ部111に到達する。燃料ポンプ部111は、燃料を吐出部116,117から吐出する。燃料は、吐出部116,117から延設された供給管112,113によって第1分配管121及び第2分配管122へそれぞれ案内される。燃料はその後、第1分配管121及び第2分配管122内で一時的に貯留される。燃料ポンプ部111は燃料噴射弁141~146からの燃料噴射量より多い量の燃料を吐出するので、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力は高くなる。
【0054】
第1分配管121及び第2分配管122内の高圧の燃料は、燃料噴射弁141~146が開くとエンジン200内の6つの気筒へ噴射される。燃料噴射弁141~146はECUの制御下で、互いに異なるタイミングで開かれる。燃料噴射弁141,142,143が開かれると、第1分配管121内の燃料は連結管131,133,132を通じて燃料噴射弁141,142,143へ流れ、燃料噴射弁141,142,143から3つの気筒へ噴射される。燃料噴射弁144,145,146が開かれると、第2分配管122内の燃料は連結管134,135,136を通じて燃料噴射弁144,145,146へ流れ、燃料噴射弁144,145,146から3つの気筒へ噴射される。
【0055】
第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力が所定の設定圧力を超えると、第1減圧弁171及び第2減圧弁172は開かれる。第1減圧弁171が開かれると、第1分配管121内の燃料は、連結部173から流出し第1リターン管181に流入する。第2減圧弁172が開かれると、第2分配管122内の燃料は流出部174から流出し第2リターン管182に流入する。第2リターン管182に流入した燃料は、第2リターン管182及び連結部173を順次通過し第1リターン管181に流入する。第1リターン管181に流入した燃料は、第1リターン管181に沿って流下し第1分配管121及び第2分配管122の下方の接続部材183に到達する。燃料はその後、接続部材183から燃料タンクに連なる管部材に流入し燃料タンクに戻る。
【0056】
<燃料ポンプ部と燃料分配部との間での管路を保護するための構造>
第1リターン管181及び供給管112,113といった管部材がエンジン200の左側面220に沿って配置されている。これらの管部材は燃料供給装置100の中でも脆弱である。脆弱な管部材を保護するために、燃料供給装置100は、エンジン200の形状を利用した配管構造を有する。管部材が効果的に保護される配管構造が以下に説明される。
【0057】
図2は、吸気ポート231~236に沿う仮想的な水平面でのエンジン200の概略的な断面図である。図1及び図2を参照して、燃料供給装置100の配管構造の前に吸気ポート231~236の構造が説明される。
【0058】
エンジン200のシリンダブロック211は、吸気ポート231~236を形成するように左側面220から左方に突出したポート壁240を含む。ポート壁240の左端面から右方にそれぞれ延設された6つの空房はエンジン200に流入する空気の経路になる。6つの空房の形成の結果、シリンダブロック211の左側面220から左方に突出した6つの吸気ポート231~236が形成される。
【0059】
吸気ポート231~236を仕切る5つの仕切壁241~245がポート壁240の一部として図2に示されている。仕切壁241は、吸気ポート231内の空房を吸気ポート232内の空房から仕切る。仕切壁242は、吸気ポート232内の空房を吸気ポート233内の空房から仕切る。仕切壁243は、吸気ポート233内の空房を吸気ポート234内の空房から仕切る。仕切壁244は、吸気ポート234内の空房を吸気ポート235内の空房から仕切る。仕切壁245は、吸気ポート235内の空房を吸気ポート236内の空房から仕切る。
【0060】
仕切壁241,245には、吸気ポート231~236に連結される吸気マニホールド(図示せず)を位置決めするための位置決め穴246,247がそれぞれ形成されている。仕切壁241,245の間の仕切壁242,243,244には、位置決め穴246,247より広い空隙251,252,253がそれぞれ形成されている。空隙251は鉛直方向に延び、吸気ポート233を吸気ポート232から区画している。空隙251と同様に、空隙252は鉛直方向に延び、吸気ポート233を吸気ポート234から区画している。空隙252と同様に、空隙253は鉛直方向に延び、吸気ポート234を吸気ポート235から区画している。空隙251,253は、空隙252よりも深いスロットである。
【0061】
空隙251,253に挿通されるように、供給管112,113は第1分配管121及び第2分配管122から下方に延設されている。供給管112,113の横断面は、空隙251,253が形成された鉛直区間において空隙251,253内に完全に埋設されている。
【0062】
空隙251,253の間の空隙252に挿通されるように、第1リターン管181は連結部173から下方に延設されている。第1リターン管181は直径において供給管112,113それぞれよりも大きいけれども、第1リターン管181の横断面の大部分は空隙252が形成された鉛直区間において空隙252内に埋設されている。
【0063】
<燃料ポンプ部と燃料分配部との間での管路を保護する効果>
第1リターン管181が空隙252に挿通され、且つ、供給管112,113が空隙251,253に挿通されている。第1リターン管181及び供給管112,113の横断面の大部分及び/又は全体は空隙252,251,253に埋設されているので、これらの管部材は吸気ポート232~235によって車両の衝突時においてこれらの管部材に向けて移動する部品から保護される。
【0064】
第1リターン管181及び供給管112,113に向けて移動する部品は吸気ポート232~235に衝突し、吸気ポート232~235の間の空隙252,251,253に埋設された第1リターン管181及び供給管112,113に過度に大きな衝撃力を与えない。吸気ポート232~235は、エンジン200が収容されたエンジンルーム内の部品の中でも特に高い剛性を有するシリンダブロック211の一部であるので、部品との衝突下でもほとんど変形しない。このことも、第1リターン管181及び供給管112,113の保護に貢献する。
【0065】
第1リターン管181が連結された連結部173は、第1分配管121の主管161の後端部から突出している。一方、第1分配管121の主管161の長手方向における中間位置に供給管112が連結されている。したがって、供給管112が主管161に連結された連結部位よりも、連結部173は第1分配管121の後方の第2分配管122の近くに位置する。第2分配管122の主管165の長手方向における中間位置に供給管113が連結されている。したがって連結部173は、供給管112が第1分岐管121の主管161に連結された連結部位と供給管113が第2分岐管122の主管162に連結された連結部位との間に位置している。連結部173と同様に、第1リターン管181が挿通されている空隙252も供給管112,113の間で形成されている。したがって、第1リターン管181は連結部173から空隙252へ鉛直方向に略真っ直ぐ延設され、第1リターン管181は過度に長くならない。この結果、第1リターン管181は第1リターン管181に沿って流れる燃料に対して過度に大きな圧力損失を生じさせない。
【0066】
<燃料分配部内での脈動の低減のための制御>
第1リターン管181の隣で配管された供給管112は上述の如く、燃料ポンプ部111の上側のポンプ114から延設され第1分配管121に連結されている。第1分配管121の後方に配置された第2分配管122には、下側のポンプ115から延設された供給管113が連結されている。第2分配管122が形成する第2供給経路は第1分配管121が形成する第1供給経路とは独立しており、且つ、第2分配管122は第1分配管121から離れているので、燃料ポンプ部111に由来する脈動は、第1分配管121と第2分配管122との間で伝播されない。しかしながら、脈動は燃料噴射弁141~146によって引き起こされることもある。燃料噴射弁141~146に由来する脈動を低減する制御が以下に説明される。
【0067】
図3は、燃料供給装置100の概略的な斜視図である。図1及び図3を参照して、燃料噴射弁141~146に由来する脈動を低減する制御が説明される。
【0068】
図3は燃料供給装置100に加えて、上述の6つの気筒として第1気筒261~第6気筒266を示す。加えて、図3は燃料噴射弁141~146を制御するECU300を示す。
【0069】
燃料噴射弁141は燃料噴射弁141の下方の第1気筒261にECU300の制御下で燃料を噴射する。燃料噴射弁142は燃料噴射弁142の下方の第2気筒262にECU300の制御下で燃料を噴射する。燃料噴射弁143は燃料噴射弁143の下方の第3気筒263にECU300の制御下で燃料を噴射する。燃料噴射弁144は燃料噴射弁144の下方の第4気筒264にECU300の制御下で燃料を噴射する。燃料噴射弁145は燃料噴射弁145の下方の第5気筒265にECU300の制御下で燃料を噴射する。燃料噴射弁146は燃料噴射弁146の下方の第6気筒266にECU300の制御下で燃料を噴射する。
【0070】
燃料噴射弁141,142,143は、連結管131,133,132によって第1分配管121に連結されている。したがって、燃料噴射弁141,142,143の作動に起因して生じた脈動は第1分配管121へ伝播される。同様に、燃料噴射弁141,142,143の後方の燃料噴射弁144,145,146は、連結管135,134,136によって第2分配管122に連結されている。燃料噴射弁144,145,146の作動に起因して生じた脈動は第2分配管122へ伝播される。
【0071】
第1分配管121及び第2分配管122へ伝播された脈動が低減されるように、ECU300は燃料噴射弁141~146からの燃料の噴射タイミングを定める。ECU300は、第1分配管121に連なる燃料噴射弁141,142,143の燃料噴射順序が連続しないように、且つ、第2分配管122に連なる燃料噴射弁144,145,146の燃料噴射順序が連続しないように、作動指令を燃料噴射弁141~146へ出力する。燃料噴射弁141~146は作動指令に応じて作動する。以下の表1は、燃料噴射弁141~146の例示的な燃料噴射順序を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
燃料噴射弁141,142,143(すなわち第1分配管121に連なる弁群)は、奇数の噴射順序で噴射する。燃料噴射弁144,145,146(すなわち第2分配管122に連なる弁群)は、偶数の噴射順序で噴射する。
【0074】
<燃料分配部内での脈動の低減の効果>
燃料噴射弁141,142,143の噴射順序は奇数順序であり連続しない。燃料噴射弁141は表1に示されるように、燃料噴射弁141~146の中で最初に燃料を噴射する。燃料噴射弁142は、燃料噴射弁141~146の中で5番目に燃料を噴射する。燃料噴射弁143は、燃料噴射弁141~146の中で3番目に燃料を噴射する。燃料噴射弁141が燃料を噴射する時刻から燃料噴射弁143が燃料を噴射する時刻までの間に、燃料噴射弁145は燃料を噴射する。燃料噴射弁143が燃料を噴射する時刻から燃料噴射弁142が燃料を噴射する時刻までの間に燃料噴射弁146が燃料を噴射する。したがって、燃料噴射弁141,143が燃料を噴射する時間間隔及び燃料噴射弁143,142が燃料を噴射する時間間隔は長くなる。燃料噴射弁141の作動に起因する脈動は、燃料噴射弁143が燃料を噴射するまでの長い期間の間に十分に減衰され、燃料噴射弁143からの燃料噴射量にほとんど影響しない。燃料噴射弁143の作動に起因する脈動は、燃料噴射弁142が燃料を噴射するまでの長い期間の間に十分に減衰され、燃料噴射弁142からの燃料噴射量にほとんど影響しない。
【0075】
燃料噴射弁141,143,142の後に燃料をそれぞれ噴射する燃料噴射弁145,146,144は第1分配管121から分離して配置された第2分配管122に連なるので、燃料噴射弁141,143,142の作動に由来する脈動から影響されない。燃料噴射弁145は表1に示されるように、燃料噴射弁141~146の中で2番目に燃料を噴射する。燃料噴射弁146は、燃料噴射弁141~146の中で4番目に燃料を噴射する。燃料噴射弁144は、燃料噴射弁141~146の中で最後に燃料を噴射する。すなわち、燃料噴射弁145,146,144の噴射順序は偶数順序であり連続しない。
【0076】
燃料噴射弁145が燃料を噴射する時刻から燃料噴射弁146が燃料を噴射する時刻までの間に、燃料噴射弁143は燃料を噴射する。燃料噴射弁146が燃料を噴射する時刻から燃料噴射弁144が燃料を噴射する時刻までの間に燃料噴射弁142が燃料を噴射する。したがって、燃料噴射弁145,146が燃料を噴射する時間間隔及び燃料噴射弁146,144が燃料を噴射する時間間隔は長くなる。燃料噴射弁145の作動に起因する脈動は、燃料噴射弁146が燃料を噴射するまでの長い期間の間に十分に減衰され、燃料噴射弁146からの燃料噴射量にほとんど影響しない。燃料噴射弁146の作動に起因する脈動は、燃料噴射弁144が燃料を噴射するまでの長い期間の間に十分に減衰され、燃料噴射弁144からの燃料噴射量にほとんど影響しない。
【0077】
燃料噴射弁144,145,146に燃料を分配する第2分配管122は、燃料噴射弁141,142,143に燃料を分配する第1分配管121から分離して配置されている。第1分配管121は、供給管112が形成する第1供給経路を通じて燃料の供給を受ける一方で、第2分配管122は、供給管113が第1供給経路とは独立して形成した第2供給経路を通じて燃料を受ける。この結果、第1供給経路及び第2供給経路に燃料を吐出する燃料ポンプ部111の動作に起因する脈動は、第1分配管121と第2分配管122との間で伝播されない。
【0078】
脈動の伝播を防止するために、燃料分配部120は第1分配管121と第2分配管122とに分けられているので、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力の低減時に第1分配管121及び第2分配管122から流出した燃料を案内する複数の管部材が必要とされる。燃料供給装置100はこれらの管部材として第1リターン管181と第2リターン管182とを有する。第1リターン管181及び第2リターン管182はともに第1分配管121から突出した連結部173に連結されているので、作業者は第1リターン管181及び第2リターン管182を1つの管部材として取り扱うことができ、燃料供給装置100を効率的に組み立てることができる。
【0079】
第1リターン管181及び第2リターン管182が連結部173で連結されているので、第1分配管121及び第2分配管122内の余剰の燃料をリターンするための経路は1つの管路に集約される。この場合、第1減圧弁171及び第2減圧弁172が同時に開かれると第1リターン管181及び第2リターン管182内での燃料の円滑な流動が妨げられることもある。しかしながら、第1分配管121から燃料を分配される燃料噴射弁141,142,143内での燃料噴射順序及び第2分配管122から燃料を分配される燃料噴射弁144,145,146内での燃料噴射順序は連続せず、燃料噴射弁141,142,143の群及び燃料噴射弁144,145,146の群からの燃料噴射が交互に行われるので、第1分配管121及び第2分配管122内の燃料の圧力が同時に設定圧力を超えることはない。すなわち、第1減圧弁171及び第2減圧弁172は同時に開かない。したがって、第1分配管121及び第2分配管122内の余剰の燃料は第1リターン管181及び第2リターン管182を通じて燃料タンクに円滑に戻ることができる。
【0080】
上述の実施形態に関して、エンジン200は6つの気筒を有するので、燃料供給装置100は6つの気筒へ燃料を噴射するように形成されている。しかしながら、燃料供給装置は6未満の気筒又は6を越える気筒に燃料を噴射するように形成されてもよい。
【0081】
上述の実施形態に関して、燃料供給装置100の吸気ポート231~236はシリンダブロック211の左側面220から突出している。しかしながら、吸気ポート231~236はシリンダブロック211の右側面から突出していてもよい。
【0082】
上述の実施形態に関して、燃料供給装置100の管路を保護する突出部として吸気ポートが用いられている。しかしながら、燃料供給装置100の管路を保護する突出部はシリンダブロック211の側面から突出した他の突出部であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
上述の実施形態の原理は、様々な車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0084】
100・・・・・・・・・・燃料供給装置
110・・・・・・・・・・燃料供給部
112・・・・・・・・・・供給管(第1供給経路)
113・・・・・・・・・・供給管(第2供給経路)
120・・・・・・・・・・燃料分配部
121・・・・・・・・・・第1分配管
122・・・・・・・・・・第2分配管
141~146・・・・・・燃料噴射弁
171・・・・・・・・・・第1減圧弁
172・・・・・・・・・・第2減圧弁
173・・・・・・・・・・連結部
180・・・・・・・・・・案内管部
181・・・・・・・・・・第1リターン管
182・・・・・・・・・・第2リターン管
211・・・・・・・・・・シリンダブロック
231~236・・・・・・吸気ポート
251~253・・・・・・空隙
261・・・・・・・・・・第1気筒(複数の気筒のうち1つ)
262・・・・・・・・・・第2気筒(複数の気筒のうち1つ)
263・・・・・・・・・・第3気筒(複数の気筒のうち1つ)
264・・・・・・・・・・第4気筒(複数の気筒のうち1つ)
265・・・・・・・・・・第5気筒(複数の気筒のうち1つ)
266・・・・・・・・・・第6気筒(複数の気筒のうち1つ)
図1
図2
図3