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特許6992609記録媒体搬送装置、インクジェット記録装置及び供給熱量制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】記録媒体搬送装置、インクジェット記録装置及び供給熱量制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220105BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20220105BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B41J2/01 125
H05B3/00 310E
H05B3/00 335
B41J2/01 301
B41J2/01 401
G03G15/20 555
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018041436
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019155619
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雅至
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
(72)【発明者】
【氏名】志岐 卓信
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-006340(JP,A)
【文献】特開2015-074215(JP,A)
【文献】特開2016-005881(JP,A)
【文献】特開2009-187020(JP,A)
【文献】特開2014-098782(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0267644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
H05B 3/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に加熱源を有し、搬送される記録媒体の画像形成面に一部が接触するように設けられて、前記記録媒体を加熱する複数の加熱部と、
前記複数の各加熱部の表面温度を、前記複数の各加熱部に非接触で検出する複数の加熱部温度センサーと、
前記加熱部温度センサーによる検出結果に基づいて、前記複数の各加熱部内の各加熱源に供給する電力の量を制御する加熱制御部と、
前記複数の加熱部を通過後の前記記録媒体の温度を検出する加熱後記録媒体温度センサーと、
前記加熱後記録媒体温度センサーによる検出結果に基づいて、前記複数の各加熱部による前記記録媒体への供給熱量を制御する供給熱量制御部と、を備え
前記供給熱量制御部による前記記録媒体への供給熱量の制御は、前記加熱制御部による前記加熱源への電力供給量の制御、及び/又は、前記加熱部による前記記録媒体への熱伝導量の制御により実施され、
前記供給熱量制御部は、前記加熱後記録媒体温度センサーが検出した前記記録媒体の記録媒体温度と、前記記録媒体の目標温度である記録媒体目標温度との差分の情報に基づいて、前記加熱部による前記記録媒体への供給熱量を制御し、
前記複数の各加熱部には、それぞれ異なる熱容量、又は、それぞれ異なる熱伝導率が設定される
記録媒体搬送装置。
【請求項2】
前記複数の加熱部のうちの、前記加熱後記録媒体温度センサーの配置位置に最も近い位置に配置される加熱部には、最も小さい熱容量が設定される
請求項1に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項3】
前記複数の加熱部のそれぞれが有する熱容量又は熱伝導率には、前記複数の各加熱部と前記加熱後記録媒体温度センサーとの距離が近いほど小さな値が設定される
請求項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項4】
前記記録媒体の種類、前記記録媒体搬送装置の周囲温度環境のうち少なくとも1つに対応づけて選択又は計算される温度設定プロファイルをさらに有し、
前記供給熱量制御部は、前記複数の加熱部のそれぞれに設定される加熱部温度を、前記温度設定プロファイルに基づいて設定する
請求項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項5】
前記加熱後記録媒体温度センサーの検出値は、前記記録媒体の種類と対応づけて予め記憶される放射率に基づいて補正される
請求項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項6】
前記加熱部内の加熱源、及び、前記加熱後記録媒体温度センサーは、前記記録媒体の搬送方向と直交する方向における複数の箇所に配置され、
前記加熱部内の複数の加熱源の各配置位置、及び、複数の前記加熱後記録媒体温度センサーの配置位置は、互いに対応づけられる
請求項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項7】
内部に加熱源を有し、搬送される記録媒体の画像形成面に一部が接触するように設けられて、前記記録媒体を加熱する複数の加熱部と、
前記複数の各加熱部の表面温度を、前記複数の各加熱部に非接触で検出する複数の加熱部温度センサーと、
前記加熱部温度センサーによる検出結果に基づいて、前記複数の各加熱部内の各加熱源に供給する電力の量を制御する加熱制御部と、
前記複数の加熱部を通過後の前記記録媒体の温度を検出する加熱後記録媒体温度センサーと、
前記加熱後記録媒体温度センサーによる検出結果に基づいて、前記複数の各加熱部による前記記録媒体への供給熱量を制御する供給熱量制御部と、
前記複数の加熱部を通過後の前記記録媒体の温度を検出する加熱後記録媒体温度センサーと、
前記加熱後記録媒体温度センサーによる検出結果に基づいて、前記複数の各加熱部による前記記録媒体への供給熱量を制御する供給熱量制御部と、を有する記録媒体搬送部と、
前記複数の加熱部によって加熱された前記記録媒体の画像形成面に対して、画像データに基づいて画像を形成する画像形成部と、を備え、
前記供給熱量制御部による前記記録媒体への供給熱量の制御は、前記加熱制御部による前記加熱源への電力供給量の制御、及び/又は、前記加熱部による前記記録媒体への熱伝導量の制御により実施され、
前記供給熱量制御部は、前記加熱後記録媒体温度センサーが検出した前記記録媒体の記録媒体温度と、前記記録媒体の目標温度である記録媒体目標温度との差分の情報に基づいて、前記加熱部による前記記録媒体への供給熱量を制御し、
前記複数の各加熱部には、それぞれ異なる熱容量、又は、それぞれ異なる熱伝導率が設定される
インクジェット記録装置。
【請求項8】
内部に加熱源を有し、搬送される記録媒体の画像形成面に一部が接触するように設けられて、前記記録媒体を加熱する複数の加熱部が、前記記録媒体を加熱することと、
前記複数の各加熱部の表面温度を、前記複数の各加熱部に非接触で検出することと、
前記複数の各加熱部の表面温度の検出結果に基づいて、前記複数の各加熱部内の各加熱源に供給する電力の量を制御することと、
前記複数の加熱部を通過後の前記記録媒体の温度を検出することと、
前記検出された前記複数の加熱部を通過後の前記記録媒体の温度に基づいて、前記複数の各加熱部による前記記録媒体への供給熱量を制御することと、を含み、
前記記録媒体への供給熱量の制御は、前記加熱源への電力供給量の制御、及び/又は、前記加熱部による前記記録媒体への熱伝導量の制御により実施され、
非接触で検出された前記記録媒体の記録媒体温度と、前記記録媒体の目標温度である記録媒体目標温度との差分の情報に基づいて、前記加熱部による前記記録媒体への供給熱量が制御され、
前記複数の各加熱部には、それぞれ異なる熱容量、又は、それぞれ異なる熱伝導率が設定される
供給熱量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体搬送装置、インクジェット記録装置及び供給熱量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドに供給されるインクを、当該記録ヘッドに形成されたノズルから噴射することにより、記録媒体にインクを付着させて画像を形成(記録)するインクジェット記録装置が知られている。こうしたインクジェット記録装置においては、記録媒体上に着滴するインク液滴のドット径の安定を図るため、インクを付着させる前に記録媒体を予め所定温度に加熱することが行われている。
【0003】
記録媒体を加熱する機構の一つとして、例えば、特許文献1には、内部に発熱体を備えたベルト体と、加圧部材とのニップ部に記録媒体を通過させて、当該記録媒体を加熱する方式が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-97238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録媒体の温度を所定の一定温度とするためには、記録媒体に加熱を行う記録媒体加熱部の温度制御が行われる必要がある。記録媒体加熱部の加熱方式には様々な方式があるが、例えば、ローラー方式においては、内部に加熱源を有する加熱ローラーの表面を温度センサーで検出し、該検出結果に基づいて加熱源の温度を制御することが行われる。このような制御が行われることにより、加熱ローラーのローラー温度が適切に保たれる。
【0006】
加熱ローラーの表面温度を検知する温度センサーとして、例えば、接触方式のセンサーが用いられる場合、加熱ローラーの表面に傷がついたり、温度センサーの接触部分が磨耗したりすることが避けられない。それゆえ、温度センサー及び加熱ローラーの高寿命化を計ることが難しい。したがって、温度センサーには、非接触方式のものが使用されることが望ましい。
【0007】
ところで、非接触方式の温度センサーでは、温度の検出に赤外線が使用されることが一般的であるが、赤外線の放射率は、素材や表面状態等によって大きく変化する。例えば、加熱ローラーの素材として一般的に採用されるSUS(Steel Use Stainless)又はアルミニウムは、赤外線の放射率が低い。したがって、加熱ローラーの素材としてこれらの素材が用いられる場合には、温度センサーの検出値に誤差が生じやすい。
【0008】
SUSやアルミニウム等で構成される加熱ローラーの表面を、黒アルマイト処理等によって黒色に塗装又はコーティングすれば、赤外線放射率を高めることが可能であり、温度センサーの検出信号のSN比を高くすることができる。しかしながら、黒アルマイト処理を行うことにより、その分製造コストが高くなってしまうという問題がある。また、黒アルマイト処理を行った加熱ローラーにおいては、コーティング状態を維持することが難しく、コーティング層に傷がついた場合には部品の交換を行う必要がある。つまり、加熱ローラーの表面を黒色に塗装又はコーティングした場合にも、加熱ローラーの高寿命化を計ることは難しくなる。
【0009】
この分野では、記録媒体加熱部の素材や表面状態によって検出値に誤差が生じうる非接触方式の温度センサーを用いる場合にも、記録媒体加熱部の温度制御を適切に行うことを可能とする技術の提案が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一側面を反映した記録媒体搬送装置は、内部に加熱源を有し、搬送される記録媒体の画像形成面に一部が接触するように設けられて、記録媒体を加熱する複数の加熱部と、複数の各加熱部の表面温度を、複数の各加熱部に非接触で検出する複数の加熱部温度センサーと、加熱部温度センサーによる検出結果に基づいて、複数の各加熱部内の各加熱源に供給する電力の量を制御する加熱制御部と、複数の加熱部を通過後の記録媒体の温度を検出する加熱後記録媒体温度センサーと、加熱後記録媒体温度センサーによる検出結果に基づいて、複数の各加熱部による記録媒体への供給熱量を制御する供給熱量制御部と、複数の加熱部を通過後の記録媒体の温度を検出する加熱後記録媒体温度センサーと、加熱後記録媒体温度センサーによる検出結果に基づいて、複数の各加熱部による記録媒体への供給熱量を制御する供給熱量制御部と、を備え、供給熱量制御部による記録媒体への供給熱量の制御は、加熱制御部による加熱源への電力供給量の制御、及び/又は、加熱部による記録媒体への熱伝導量の制御により実施され、供給熱量制御部は、加熱後記録媒体温度センサーが検出した記録媒体の記録媒体温度と、記録媒体の目標温度である記録媒体目標温度との差分の情報に基づいて、加熱部による記録媒体への供給熱量を制御し、複数の各加熱部には、それぞれ異なる熱容量、又は、それぞれ異なる熱伝導率が設定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体加熱部の素材や表面状態によって検出値に誤差が生じうる非接触方式の温度センサーを用いる場合にも、記録媒体加熱部の温度制御を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成例を示す概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る加熱後用紙温度センサーの中央温度センサー及び端部温度センサーの配置例を示す説明図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る記録媒体における加熱源による加熱領域と加熱後用紙温度センサーの配置位置との対応を示す説明図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る用紙加熱部による記録媒体への供給熱量の制御の例を示す説明図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る加熱ローラー対の本数と、記録媒体の紙種と、加熱後の記録媒体の用紙温度と、加熱ローラー対のローラー温度との対応を示す表である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る加熱ローラー対の本数と、各加熱ローラー対におけるローラー温度の調整範囲との対応を示すグラフである。
図8】本発明の第2の実施形態にかかる用紙加熱部による記録媒体への供給熱量の制御の例を示す説明図である。
図9】本発明の第2の実施形態にかかる記録媒体の用紙温度と用紙温度上昇率との関係を示すグラフである。
図10】本発明の第5の実施形態にかかる用紙加熱部による記録媒体への供給熱量の制御の例を示す説明図である。
図11】本発明の第5の実施形態にかかる温度設定プロファイルの設定例を示す説明図である。
図12】変形例1に係るインクジェット記録装置の全体構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る記録媒体搬送装置を含むインクジェット記録装置について、添付図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0014】
<第1の実施形態>
[インクジェット記録装置の概要構成]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。図1に示すように、インクジェット記録装置1は、例えば、媒体供給部10、用紙加熱部20、媒体搬送部30、ヘッドユニット(画像形成部)40及び制御部100(図4参照)を備える。このうち、用紙加熱部20及び制御部100は、記録媒体搬送装置(記録媒体搬送部)を構成する。
【0015】
このインクジェット記録装置1では、媒体供給部10から供給された記録媒体Mは、用紙加熱部20により挟持搬送されつつ所定温度に加熱される。その後、媒体搬送部30により搬送されている記録媒体Mに対して、ヘッドユニット40により、紫外線硬化型(UV)インク等のインクが吐出されて、記録媒体Mに画像が形成(記録処理)される。画像が形成された記録媒体Mは、図示しない媒体排出部に排出される。
【0016】
記録媒体Mとしては、例えば、紙、プラスチック、金属、布、ゴムなどの様々な種類の媒体を用いることができる。紙としては、普通紙、板紙、段ボール紙、塗工紙、レジンコート紙、合成紙等を挙げることができる。画像形成に使用するインクとして、UVインクを使用する場合、記録媒体Mの温度によってインクの粘度が変化するため、記録媒体Mの温度を、液滴のドット径の安定性確保のために必要となる所定の用紙目標温度に予め加熱しておく必要がある。用紙目標温度には、例えば、35℃±5℃以内等の温度が設定される。
【0017】
媒体供給部10は、例えば、媒体収容部11、供給ローラー12、初期媒体温度センサー13等を備える。媒体収容部11は、一枚又は重ねられた複数枚の記録媒体Mを収容可能な箱体であり、収容された記録媒体Mの量に応じて上下動する。供給ローラー12は、媒体収容部11に収容された記録媒体Mのうち一番上のものを用紙加熱部20に送り出す。初期媒体温度センサー13は、例えば、媒体収容部11の上部に設けられ、媒体収容部11に収容された記録媒体Mのうち一番上のものの温度を検知する。
【0018】
用紙加熱部20は、加熱ローラー対R_1~R_5(加熱部の一例)、ローラー温度センサー61_1U,61_1D,61_2U,61_2D,61_3U,61_3D,61_4U,61_4D,61_5U,61_5D,(加熱部温度センサーの一例)、加熱後用紙温度センサー62(加熱後記録媒体温度センサーの一例)等を有する。なお、以下の説明において、ローラー温度センサー61_1U,61_1D等を個別に区別する必要がない場合には、これらを総称してローラー温度センサー61と称する。
【0019】
加熱ローラー対R_1~R_5は、媒体供給部10から供給された記録媒体Mを上ローラー及び下ローラーで挟持して搬送しつつ、当該記録媒体Mを所定温度に加熱するローラーである。加熱ローラー対R_1~R_5は、記録媒体Mの搬送方向上流側から加熱ローラー対R_1,R_2,R_3,R_4,R_5の順に所定の間隔で並ぶように配列される。
【0020】
加熱ローラー対R_1~R_5の構成はすべて同一であるため、ここでは加熱ローラー対R_1を例に挙げてその構成について説明する。また、以下の説明において、加熱ローラー対R_1~R_5を個別に区別する必要がない場合には、これらを総称して加熱ローラーRと称する。
【0021】
加熱ローラー対R_1は、上ローラーR_1U及び下ローラーR_1Dを有し、上ローラーR_1U及び下ローラーR_1Dは、記録媒体Mを挟んでそれぞれ対向する位置に配置される。
【0022】
上ローラーR_1Uは、例えば、回転自在なスリーブSl_1U、スリーブSl_1Uの内部に設けられた加熱源H_1Uc及び加熱源H_1Ue等を有する。スリーブSl_1Uは、SUSやアルミニウム等の伝導性の素材で構成される。加熱源H_1Uc及び加熱源H_1Ueは、ハロゲンヒーター等で構成される加熱源である。加熱源H_1UcはスリーブSl_Uの軸方向における中央部に設けられ、加熱源H_1UeはスリーブUの軸方向における端部近傍に設けられる。
【0023】
下ローラーR_1Dも同様に、例えば、回転自在なスリーブSl_1D、スリーブSl_1Dの内部に設けられた加熱源H_1Dc及び加熱源H_1De等を有する。以下の説明において、スリーブSl_1D、スリーブSl_1D等を個別に区別する必要がない場合には、これらを総称してスリーブSlと称する。また、加熱源H_1Uc、加熱源H_1Ue、加熱源H_1Dc及び加熱源H_1De等を個別に区別する必要がない場合には、これらを総称して加熱源Hと称する。
【0024】
なお、本実施形態では、スリーブSlの内部に、2つの加熱源Hが設けられる例を挙げたが、本発明はこれに限定されず、3つ以上の加熱源が設けられてもよい。
【0025】
上ローラーR_1Uの近傍には、ローラー温度センサー61_1Uが設けられ、下ローラーR_1Dの近傍には、ローラー温度センサー61_1Dが設けられる。ローラー温度センサー61_1Uは、上ローラーR_1Uの表面温度を検知し、ローラー温度センサー61_1Dは、下ローラーR_1Dの表面温度を検知する。ローラー温度センサー61_1U及び61_1Dには、例えば、赤外線を用いて非接触で検知対象物の温度を測定するセンサー等が用いられる。なお、ローラー温度センサーは、加熱ローラー対R_2~加熱ローラー対R_5を構成する各上ローラー及び下ローラーの近傍のそれぞれの位置にも設けられる。
【0026】
加熱後用紙温度センサー62は、記録媒体Mの搬送方向の最下流に位置する加熱ローラー対R_5の下流に配置され、用紙加熱部20を通過後の記録媒体Mの温度を測定する。加熱後用紙温度センサー62は、記録媒体Mの用紙幅方向(搬送方向と直交する方向)における中心部近傍の温度を検知する中央温度センサー62cと、記録媒体Mの用紙幅方向における端部近傍の温度を検知する端部温度センサー62e(図2参照)とを備える。加熱後用紙温度センサー62の詳細については、図2及び図3を参照して後述する。
【0027】
かかる構成の用紙加熱部20においては、加熱ローラー対R_1~R_5が記録媒体Mを挟持した状態で、加熱ローラー対R_1~R_5が同一速度で回転することにより、記録媒体Mは、加熱ローラー対R_1~R_5の回転方向に搬送される。このとき、加熱ローラー対R_1~R_5は加熱されているため、記録媒体Mは、加熱ローラー対R_1~R_5によって挟持搬送される際に、加熱される。
【0028】
媒体搬送部30は、ヘッドユニット40と対向して設けられ、用紙加熱部20から供給された記録媒体Mを一定速度で搬送する機構である。媒体搬送部30は、例えば、駆動ローラー31、従動ローラー32、テンションローラー33及び搬送ベルト34等を備える。
【0029】
駆動ローラー31は、図示しない搬送モーターの駆動によって回転軸31aを中心に回転する。駆動ローラー31の回転軸31aにはエンコーダー(ロータリーエンコーダー)が設けられ、該エンコーダーの検出信号に基づいて、搬送ベルト34の周回移動距離を計測可能である。従動ローラー32は、駆動ローラー31から所定距離離間して配され、駆動ローラー31の回転軸31aと平行な回転軸32aを中心に、搬送ベルト34の周回移動に伴って回転する。テンションローラー33は、駆動ローラー31及び従動ローラー32と共に搬送ベルト34の内側を支持し、搬送ベルト34の弛みを吸収する。
【0030】
搬送ベルト34は、駆動ローラー31、従動ローラー32及びテンションローラー33に架け渡された無端ベルトであり、駆動ローラー31の回転動作に従って一定速度で周回移動する。搬送ベルト34としては、駆動ローラー31及び従動ローラー32との接触部で柔軟に屈曲し、かつ確実に記録媒体Mを支持する材質のものが用いられ、例えば、ゴムなどの樹脂製のベルトや、スチールベルト等を用いることができる。この搬送ベルト34は、記録媒体Mが吸着される材質及び/又は構成を有することも好ましく、このようにすることで、記録媒体Mをより安定して載置可能とすることができる。
【0031】
このような媒体搬送部30において、搬送ベルト34の搬送面上に記録媒体Mが載置された状態で、駆動ローラー31の回転速度に応じた速度で搬送ベルト34が周回移動することにより、記録媒体Mは、ヘッドユニット40の下方を、搬送ベルト34の移動方向に搬送される。
【0032】
なお、記録媒体Mの搬送は、例えば、ヘッドユニット40によるインク吐出が行われる期間一時停止させるといった態様で間欠的に行われてもよい。即ち、媒体搬送部30による記録媒体Mの搬送動作は、上記のように搬送を一時停止させる動作を含むものとする。
【0033】
ヘッドユニット40は、媒体搬送部30により搬送される記録媒体Mの上面(画像形成面)に対して、画像データに基づいてノズルからインクを吐出して、記録媒体M上に画像を形成するための機構である。
【0034】
ヘッドユニット40は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット40Y,40M,40C,40Kを有する。ヘッドユニット40Y,40M,40C,40Kは、記録媒体Mの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列される。なお、ヘッドユニット40の数、及びヘッドユニット40から吐出されるインクの色はこれらの数及び色に限定されるものではない。
【0035】
各ヘッドユニット40は、複数の記録素子が記録媒体Mの搬送方向と直交する記録媒体Mの幅方向(以下、単に「幅方向」という)に各々配列された複数の記録ヘッド41(図4参照)と、記録ヘッド41によるインク吐出動作を制御するヘッド制御部42(図4参照)とを備える。
【0036】
各記録ヘッド41は、ノズルの開口部が設けられたインク吐出面を有し、当該インク吐出面が搬送ベルト34の搬送面と対向する位置に配置される。
【0037】
記録ヘッド41に含まれる記録素子の各々は、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、インクを吐出するノズルとを含む。記録ヘッド41内の駆動回路から圧電素子に駆動信号が印加されると、この駆動信号に応じて圧電素子が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクが吐出される。
【0038】
ヘッドユニット40に含まれる記録素子の幅方向についての配置範囲は、媒体搬送部30により搬送される記録媒体Mのうち画像が形成可能な領域の幅方向についての幅をカバーしており、ヘッドユニット40は、画像の形成時には媒体搬送部30に対して位置が固定されて用いられる。即ち、インクジェット記録装置1は、シングルパス方式で画像を形成する。
【0039】
なお、本発明は、記録媒体Mが媒体搬送部30により搬送され、インクを吐出する記録ヘッド41が記録媒体Mの面に沿って幅方向に走査することで記録媒体Mに画像を形成するスキャン方式のインクジェット記録装置にも適用可能である。
【0040】
ヘッド制御部42は、制御部100(図4参照)からの制御信号や、駆動ローラー31に取り付けられたエンコーダーから入力されたパルス信号のカウント数に応じた適切なタイミングで、記録ヘッド41のヘッド駆動部に対して各種制御信号や画像データを出力する。記録ヘッド41のヘッド駆動部は、ヘッド制御部42から入力された制御信号及び画像データに応じて、記録ヘッド41の記録素子に対して圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給し、各ノズルの開口部からインクを吐出させる。
【0041】
[加熱後用紙温度センサーの配置]
次に、図2を参照して、加熱後用紙温度センサー62の配置例について説明する。図2は、加熱後用紙温度センサー62の中央温度センサー62c及び端部温度センサー62eの配置例を示す説明図である。
【0042】
本実施形態では、上述のように、加熱後用紙温度センサー62が、記録媒体Mの用紙幅方向における中心部近傍の温度を検知する中央温度センサー62cと、記録媒体Mの用紙幅方向における端部の温度を検知する端部温度センサー62eとで構成される。中央温度センサー62c及び端部温度センサー62eは、記録媒体Mの用紙サイズに応じてその位置を用紙幅方向で変更可能に構成される。このように構成されることにより、記録媒体Mの用紙サイズが異なる場合であっても、中央温度センサー62c及び端部温度センサー62eによって、記録媒体Mの用紙幅方向における中心部近傍の温度と、端部近傍の温度とを適切に検出することが可能となる。
【0043】
図3は、記録媒体Mにおける加熱源Hによる加熱領域と加熱後用紙温度センサー62の配置位置との対応を示す説明図である。図3の横軸は、記録媒体Mの幅方向における位置を示し、縦軸は、中央温度センサー62c又は端部温度センサー62eによる温度検知率(%)を示す。
【0044】
図3の上段に示すように、記録媒体Mの用紙幅方向における中心部の領域Ar1の温度は、中央温度センサー62cによって検知される。この中心部の領域Ar1は、加熱源Hのうちの、スリーブSlの軸方向における中央近傍に配置される加熱源H_nc(“n”は加熱ローラーRの数に対応する1~5までの整数)によって熱が印加される領域である。
【0045】
一方、図3の下段に示すように、記録媒体Mの幅方向における端部の領域Ar2の温度は、端部温度センサー62eによって検知される。この端部の領域Ar2は、スリーブSlの軸方向における端部近傍に配置される加熱源H_neによって熱が印加される領域である。
【0046】
つまり、本実施形態では、加熱後用紙温度センサー62による記録媒体Mの温度の検出位置(領域Ar1及びAr2)と、加熱源Hの配熱位置(中央温度センサー62c及び端部温度センサー62eの配置位置)とが対応している。これにより、記録媒体Mの面内の温度が適切に検知され、その検知結果に基づいて、中央温度センサー62c及び端部温度センサー62eの設定温度が変更される。それゆえ、本実施形態によれば、記録媒体Mの面内温度が均一に保たれる。
【0047】
[インクジェット記録装置の制御系の構成]
次に、図4を参照して、本実施形態に係るインクジェット記録装置1の制御系の構成例について説明する。図4は、インクジェット記録装置1の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。図4に示すように、インクジェット記録装置1は、制御部100を備える。
【0048】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部100のCPUは、記憶部101に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラム等を読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って、インクジェット記録装置1の各部の動作を集中制御する。
【0049】
制御部100は、例えば、記憶部101、通信部102、操作表示部103、環境温度センサー104、媒体供給部10、媒体搬送部30及びヘッドユニット40等に接続される。また、制御部100は、例えば、ローラー温度センサー61、加熱後用紙温度センサー62、加熱制御部110、温度差分検出制御部111(供給熱量制御部の一例)等に接続される。
【0050】
そして、制御部100は、例えば、不図示の外部装置や操作表示部103等から画像形成ジョブの実行指令が入力されると、当該ジョブを実行し、媒体供給部10に記録媒体Mを媒体収容部11から給紙させる。また、制御部100は、媒体搬送部30により記録媒体Mを搬送させながら、画像データに基づいてヘッドユニット40により記録媒体M上に画像を形成させる。また、制御部100は、上記の記録媒体Mに対する画像の形成に先立って、用紙加熱部20により記録媒体Mを所定温度に加熱させる。
【0051】
記憶部101は、不揮発性の半導体メモリーやHDD(Hard Disk Drive)等により構成され、制御部100で実行される各種プログラムの他、各部で必要なパラメータやデータ等を記憶する。記憶部101には、例えば、記録媒体Mの温度として好ましい温度である用紙目標温度、加熱ローラー対Rのローラー目標温度、加熱ローラー対Rのローラー目標温度の環境温度に応じた補正値等が記憶される。
【0052】
通信部102は、外部装置との間で、画像形成ジョブ及び画像データ等のデータの送受信を行う手段であり、例えば、各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか又はこれらの組み合わせで構成される。
【0053】
操作表示部103は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等よりなる表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネル等で構成される入力装置とを備える。操作表示部103は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部100に出力する。ユーザーは、この操作表示部103を通じて、記録媒体Mの種類、画像の濃度、倍率などの画像形成条件を設定することができる。また、ユーザーは、操作表示部103を通じて、画像形成ジョブの実行指令や各種モードでの動作指示を入力することができる。
【0054】
環境温度センサー104は、インクジェット記録装置1の設置環境の温度(環境温度)を検知し、検知結果を制御部100に出力する。
【0055】
加熱制御部110は、ローラー温度センサー61で検出された加熱ローラー対R_1~R_5の各表面温度に基づいて、加熱ローラー対R_1~R_5の各加熱源Hへの電力供給量(加熱ローラー対R_1~R_5のローラー温度)を制御する。
【0056】
温度差分検出制御部111は、加熱後用紙温度センサー62から供給される検出結果に基づいて、加熱制御部110を制御する。より詳細には、加熱後用紙温度センサー62で検出される加熱後の記録媒体Mの温度が、用紙目標温度になるように、加熱後用紙温度センサー62での検出温度と用紙目標温度との差分を、加熱制御部110にフィードバックする。
【0057】
[用紙加熱部による記録媒体への供給熱量の制御]
次に、図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る用紙加熱部20による記録媒体Mへの供給熱量の制御の例について説明する。図5は、用紙加熱部20による記録媒体Mへの供給熱量の制御の例を示す説明図である。
【0058】
図5において、加熱ローラー対R_1~R_5の構成及び供給熱量の制御形態はすべて同一であるため、加熱ローラー対R_1を例に挙げて説明する。
【0059】
図5に示すように、加熱ローラー対R_1の上ローラーR_1Uの近傍にはローラー温度センサー61_1Uが配置され、下ローラーR_1Dの近傍にはローラー温度センサー61_1Dが配置される。
【0060】
ローラー温度センサー61_1Uは、加熱ローラー対R_1の上ローラーR_1Uの表面温度を検知して、検知結果を加熱制御部110_1Uに供給する。ローラー温度センサー61_1Dは、加熱ローラー対R_1の下ローラーR_1Dの表面温度を検知して、検知結果を加熱制御部110_1Dに供給する。
【0061】
加熱制御部110_1Uは、ローラー温度センサー61_1Uが検知した上ローラーR_1Uの表面温度に基づいて、加熱ローラー対R_1内の加熱源H_1Uc及び加熱源H_1Ueに供給する電力を調整する。加熱制御部110_1Dは、ローラー温度センサー61_1Dが検知した下ローラーR_1Dの表面温度に基づいて、加熱ローラー対R_1内の加熱源H_1Dc及び加熱源H_1Deに供給する電力を調整する。
【0062】
温度差分検出制御部111は、加熱後用紙温度センサー62で検出される加熱後の記録媒体Mの温度が、用紙目標温度になるように、加熱制御部110を制御する。具体的には、温度差分検出制御部111は、加熱後用紙温度センサー62で検出された、加熱後の記録媒体Mの温度と、用紙目標温度との差分を、加熱制御部110にフィードバックする。
【0063】
温度差分検出制御部111によってこのような制御が行われることにより、加熱ローラー対R_1~R_5を通過後(加熱後)の記録媒体Mの温度が、用紙目標温度に収束する。
【0064】
上述の第1の実施形態では、用紙加熱部20に複数の加熱ローラー対R_1~R_5が設けられる。これにより、加熱後の記録媒体Mの温度を用紙目標温度にするために必要となる供給熱量が、複数本の加熱ローラー対Rによって分担される。したがって、一本の加熱ローラー対が分担するローラー温度を低く抑える(高温側に余裕を持たせる)ことが可能となるため、各加熱ローラー対の表面温度の検出精度に求められる要求を、加熱ローラー対が一本である場合と比べて低くすることができる。
【0065】
また、一本の加熱ローラー対Rが分担するローラー温度の高温側に余裕があることにより、何らかの要因によって加熱ローラー対Rの表面における赤外線の放射率が変化した場合にも、ローラー温度センサー61の検出結果が異常な値に至ることがなくなる。
【0066】
ここで、図6を参照して、複数本の加熱ローラー対のそれぞれが分担するローラー温度の例について説明する。図6は、加熱ローラー対の本数と、記録媒体Mの紙種と、加熱後の記録媒体Mの用紙温度と、加熱ローラー対Rのローラー温度との対応を示す表である。
【0067】
図6に示す表は、用紙加熱部20に突入後5秒が経過した時点における記録媒体Mの温度が、記録媒体Mの紙種毎に設けられた用紙目標温度に収まるための条件を推定した結果のデータを示すものである。記録媒体Mが用紙加熱部20に突入後5秒が経過した時点は、記録媒体Mに対してヘッドユニット40(図4参照)によって画像形成(作像)が行われる時点と対応する。
【0068】
用紙目標温度は、紙種がインバーコート紙(260g)である場合には30℃±5℃、Gフルート紙である場合には40℃±5℃に設定される。用紙加熱部20に通紙される前の記録媒体Mの用紙初期温度は23℃であり、複数本の加熱ローラー対のローラー温度は、すべて同一であるものとする。また、一本の加熱ローラー対Rのローラー温度の上限は200℃であるものとする。
【0069】
加熱ローラー対Rが1本である場合、インバーコート紙(260g)の用紙温度を用紙目標温度まで加熱するためには、加熱ローラー対のローラー温度は常に70℃以上に保たれる必要がある。また、Gフルート紙の温度を用紙目標温度まで加熱するためには、加熱ローラー対のローラー温度は300℃以上とされる必要があるが、ローラー温度の上限温度である200℃を超えるため、実現が不可能である。つまり、インクジェット記録装置1において、記録媒体MとしてGフルート紙を扱う場合には、加熱ローラー対Rを一本で構成することは不可能となる。
【0070】
加熱ローラー対Rが3本である場合、各加熱ローラー対Rのローラー温度を160℃に設定することにより、Gフルート紙の用紙温度を、用紙目標温度である40℃±5℃とすることが可能となる。しかしながら、各加熱ローラー対Rのローラー温度を160℃に設定した場合、ローラー温度の上限温度である200℃までの余裕が少なくなる。したがって、ローラー温度の上限温度を超える高温異常の発生を防ぐために、加熱ローラー対Rの表面温度を高精度に検出する必要がある。
【0071】
加熱ローラー対Rが4本である場合、各加熱ローラー対Rのローラー温度を60℃に設定することにより、Gフルート紙の用紙温度を用紙目標温度である40℃±5℃とすることが可能となる。つまり、インクジェット記録装置1において、記録媒体MとしてGフルート紙を扱う場合には、加熱ローラー対Rを少なくとも4本備える構成とすることにより、加熱ローラー対Rの表面温度の検出精度をそれほど高くしなくても、用紙目標温度への加熱を実現することができる。
【0072】
図7は、加熱ローラー対Rの本数と、各加熱ローラー対Rにおけるローラー温度の調整範囲との対応を示すグラフである。図7の縦軸は各加熱ローラー対Rにおけるローラー温度の調整範囲(℃)を示し、横軸は加熱ローラー対Rの本数を示す。
【0073】
図7に示すように、通常の使用環境において、加熱ローラー対Rが1本である場合には、ローラー温度の上限は300℃、下限は60℃となり、一本の加熱ローラー対Rが調整する必要のある温度の範囲が非常に広くなる。一方、加熱ローラー対Rが5本である場合には、ローラー温度の上限は50℃、下限は20℃となり、一本の加熱ローラー対Rが調整する必要のある温度の範囲を非常に狭くすることができる。これにより、各加熱ローラー対Rに求められるローラー温度調整精度も、ある程度低くすることができる。
【0074】
また、上述の第1の実施形態では、加熱後用紙温度センサー62によって検知された、用紙加熱部20を通過後の記録媒体Mの温度と、用紙目標温度との差分に基づいて、温度差分検出制御部111が、加熱制御部110へのフィードバック制御を行う。そして、この温度差分検出制御部111によるフィードバック制御により、記録媒体Mの温度が適正な温度(用紙目標温度)に保たれる。
【0075】
したがって、本実施形態によれば、非接触方式のローラー温度センサー61によって検出された各加熱ローラーの表面温度が誤差を含む(精度が高くない)ものであった場合にも、記録媒体Mの温度を適正な温度に保つことが可能となる。それゆえ、非接触方式のローラー温度センサー61の検知精度を向上させるために、加熱ローラーの表面を黒く塗装したり、黒アルマイト処理を施したりする必要がなくなる。これにより、装置の製造コストを低減できるとともに、黒塗装又は黒アルマイト処理等が施されたローラー表面に傷がついた場合等に必要となる部品交換も、行う必要がなくなるため、部品の高寿命化を計ることができる。
【0076】
<第2の実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は、第2の実施形態にかかる用紙加熱部20Aによる記録媒体Mへの供給熱量の制御の例を示す説明図である。
【0077】
第2の実施形態では、用紙搬送方向における最上流に配置された加熱ローラー対R_1′の、上ローラーR_1U′及び下ローラーR_1D′の外周部に、ゴム製のローラーが配置される。また、第2の実施形態に係る用紙加熱部20Aは、駆動部112及びローラー圧着・離間制御部113を備える。
【0078】
駆動部112は、上ローラーR_1U′及び下ローラーR_1D′を記録媒体Mの方向に対して圧着(圧接)又は離間する方向に移動させるモーターである。ローラー圧着・離間制御部113は、駆動部112による上ローラーR_1U′及び下ローラーR_1D′の駆動方向及び駆動量を制御する。
【0079】
ローラー圧着・離間制御部113は、上ローラーR_1U′及び下ローラーR_1D′を圧着又は離間させることにより、上ローラーR_1U′及び下ローラーR_1D′間に形成されるニップ部の幅であるニップ幅を調整する。ニップ幅を大きくするほど記録媒体Mへの熱伝導率は高くなり、小さくするほど記録媒体Mへの熱伝導率は小さくなる。
【0080】
そして、温度差分検出制御部111は、加熱後用紙温度センサー62による加熱後の記録媒体Mの用紙温度と用紙目標温度との差分を、各加熱制御部110、及び、ローラー圧着・離間制御部113にフィードバックする。つまり、本実施形態では、加熱後の記録媒体Mの検出温度と用紙目標温度との差分の情報に基づいて、最上流に配置された加熱ローラー対R_1′のニップ量と、加熱ローラー対R_2~R_5のローラー温度とが制御される。
【0081】
上述の第2の実施形態によっても、第1の実施形態により得られる効果と同様の効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、熱伝導量の可変が構造的に容易であり、用紙温度や周囲環境等の急激な変化を吸収する制御を行うことが可能となる。なお、第2の実施形態では、ニップ幅の調整が可能な加熱ローラー対Rが、用紙搬送方向における最上流に配置された加熱ローラー対R_1のみである例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。加熱ローラー対R_1以外の加熱ローラー対Rも、ニップ幅の調整が可能な加熱ローラー対Rとして構成してもよい。ただし、ニップ幅の調整が可能な加熱ローラー対Rは、用紙搬送方向における上流側に配置されることが望ましい。
【0082】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、各加熱ローラー対R内の加熱源Hに設定される熱容量が、加熱後用紙温度センサー62からの距離に比例して大きく設定される。つまり、用紙搬送方向における上流に位置する加熱ローラー対Rほど、加熱源Hに設定される熱容量は大きくなり、下流に位置する加熱ローラー対Rほど、加熱源Hに設定される熱容量は小さくなる。加熱ローラー対R_1~R_5内の各加熱源Hに設定される熱容量をHc_1~Hc_5とすると、各熱容量Hcの大小関係は、以下の式(1)により表される。
【0083】
熱容量Hc_5<熱容量Hc_4<熱容量Hc_3<熱容量Hc_2<熱容量Hc_1…式(1)
【0084】
また、加熱ローラー対R_1~25の熱伝導率をHn_1~Hn_5とすると、各熱伝導率Hnの大小関係は、以下の式(2)により表される。
【0085】
熱伝導率Hn_5<熱伝導率Hn_4<熱伝導率Hn_3<熱伝導率Hn_2<熱伝導率Hn_1…式(2)
【0086】
発明者らは、記録媒体Mの用紙温度の高さによって、各加熱ローラー対Rを通過後の記録媒体Mの用紙温度の上昇率が異なることに着目し、下流に熱容量Hcが高い加熱ローラー対Rを配置した方が、記録媒体Mへの熱供給効率がよいことを発見した。
【0087】
ここで、図9を参照して、記録媒体Mの用紙温度と用紙温度上昇率との関係について説明する。図9は、記録媒体Mの用紙温度と用紙温度上昇率との関係を示すグラフである。グラフを生成するシミュレーションにおいて、使用された加熱ローラー対Rの数は3本であり、加熱が行われる記録媒体Mの用紙種類はフルートG紙であり、用紙初期温度は23℃である。図9図9A及び図9B)の縦軸は用紙温度(%)を示し、横軸は記録媒体Mの搬送路における用紙搬送方向における位置を示す。横軸に示される数字が大きくなる方向が、用紙搬送方向と対応する。
【0088】
まず、図9Aを参照して、3本の加熱ローラー対Rのローラー温度がすべて同一の温度に設定された場合における、記録媒体Mの用紙温度と用紙温度上昇率との関係について説明する。図9Aは、3本の加熱ローラー対Rのローラー温度が一律に120℃に設定された場合における、記録媒体Mの用紙温度と用紙温度上昇率との関係を示すグラフである。
【0089】
図9Aには、最上段(最上流)の加熱ローラー対Rを通過後(横軸の“1200”近傍)の用紙温度の上がり幅が非常に大きく(23℃から28.5℃近辺)、それ以降の用紙温度の上がり幅は、下流に行くにつれて徐々に小さくなることが示されている。つまり、図9Aに示す例によれば、用紙温度が低い記録媒体Mが通紙する上流側に、加熱温度が高い加熱ローラー対Rを配置した方が、記録媒体Mをより効率よく加熱することができることが分かる。
【0090】
次に、図9Bを参照して、3本の加熱ローラー対Rのローラー温度を、上流に配置される加熱ローラー対Rほど高く(下流に配置される加熱ローラー対Rほど低く)設定した場合における、記録媒体Mの用紙温度と用紙温度上昇率との関係について説明する。図9Bは、3本の加熱ローラー対Rのローラー温度が、上流に配置されたものから順にそれぞれ180℃、120℃、60℃に設定された場合における、記録媒体Mの用紙温度と用紙温度上昇率との関係を示すグラフである。
【0091】
図9Bには、3本の加熱ローラー対Rのローラー温度を、上流に配置される加熱ローラー対Rほど高く(下流に配置される加熱ローラー対Rほど低く)設定した場合においても、図9Aに示す用紙温度の上昇率と類似した用紙温度上昇率が得られていることが示されている。そして、ヘッドユニット40(図4参照)によって記録媒体Mに画像形成(作像)が行われる時点と対応する“1203”と“1204”との間の時点において、用紙温度が、用紙目標温度(図9A及び図9Bに示す例では35℃)±5℃の範囲内の34℃に収まっていることが示されている。つまり、3本の加熱ローラー対Rのローラー温度を、上流に配置される加熱ローラー対Rほど高く(下流に配置される加熱ローラー対Rほど低く)設定することにより、このような配熱調整を行わない場合(図9Aに示す例)と比較して、より効率よく(用紙温度が上がり過ぎたりすることがなく)、記録媒体Mを加熱できることが分かる。
【0092】
したがって、本実施形態によれば、上述の第1及び第2の実施形態により得られる効果と同様の効果を得られる他、上述の第1及び第2の実施形態と比較して、記録媒体Mへの熱供給効率をより向上させることができる。つまり、本実施形態によれば、上述の第1及び第2の実施形態と比較して、記録媒体Mの用紙温度の応答性をより高めることができる。
【0093】
また、例えば、最上流(最上段)に配置される加熱ローラー対R_1の熱容量Hc_1が十分でない場合、用紙初期温度が低い記録媒体Rが通紙することにより、加熱ローラー対R_1の表面温度が低下してしまう。この場合、加熱ローラー対R_1の表面温度が設定温度に到達するまでの待ち時間が発生してしまう。また、加熱ローラー対R_1の表面温度が低下する、すなわち、印刷中に温度変動が生じることにより、記録媒体Rにおいて温度ムラが生じてしまう。
【0094】
これに対して、本実施形態では、最上流(最上段)に配置される加熱ローラー対R_1の熱容量Hc_1が一番大きく設定されるため、加熱ローラー対Rを記録媒体Mが通過することにより発生する温度変動を、防ぐことができる。
【0095】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、加熱後用紙温度センサー62に最も近い位置に配置された加熱ローラー対R_5の加熱源H_5(加熱源H_5Ue,H_5Uc,H_5De,H_5Dc;図1参照)の熱容量が、他の加熱源Hと比較して小さく設定される。そして、温度差分検出制御部111は、加熱ローラー対R_5の加熱源H_5の供給熱量のみを制御する。
【0096】
第4の実施形態では、温度差分検出制御部111がすべての加熱ローラー対Rに対してフィードバック制御を行う第1~第3の実施形態と比較して、記録媒体Mの用紙温度の応答性をさらに高めることができる。
【0097】
<第5の実施形態>
次に、図10を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。図10は、第5の実施形態にかかる用紙加熱部20Bによる記録媒体Mへの供給熱量の制御の例を示す説明図である。第5の実施形態では、温度差分検出制御部111が、予め記憶部101(図4参照)等に記憶される温度設定プロファイルPFに基づいて、加熱ローラー対R_1~R_5の供給熱量(設定温度)を選択又は計算する。
【0098】
温度設定プロファイルPFは、記録媒体Mの種類(紙種や厚み等)、インクジェット記録装置1の環境温度、用紙初期温度、加熱ローラー対Rのローラー温度の補正値等に対応付けられた、各加熱ローラー対の設定温度である。各加熱ローラー対の設定温度は、これらの各条件のすべてに対応づけられてよく、これらのうちのいずれか1つ又はそれ以上の複数の条件に対応付けられてもよい。
【0099】
また、図10に示す用紙加熱部20Bは、加熱ローラー対Rに通紙される前の記録媒体Mの用紙初期温度を計測する用紙初期温度センサー63(記録媒体初期温度センサーの一例)を備える。用紙初期温度センサー63は、記録媒体Mの搬送方向の最上流に位置する加熱ローラー対R_1の上流に配置される。
【0100】
ここで、図11を参照して、温度設定プロファイルPFの設定例について説明する。図11は、温度設定プロファイルPFの設定例を示す説明図である。
【0101】
図11Aは、加熱ローラー対Rが4本である場合における、各加熱ローラーRの用紙搬送方向における配置位置を示す説明図である。図11Bは、記録媒体Mの用紙初期温度が温度TAである場合に適用される温度設定プロファイルPF1を示し、図11Cは、記録媒体Mの用紙初期温度が温度TAより高い、温度TA+αである場合に適用される温度設定プロファイルPF2を示す。図11Dは、記録媒体Mの用紙初期温度が温度TAよりも低い温度TA-αである場合に適用される温度設定プロファイルPF3を示す。図11B図11Dの縦軸は加熱ローラー対Rの設定温度及び用紙目標温度を示し、横軸は記録媒体Mの搬送路における用紙搬送方向における位置を示す。
【0102】
図11A図11Cに示すいずれの例においても、加熱後用紙温度センサー62の配置位置に記録媒体Mが到達する段階で、記録媒体Mの用紙温度が用紙目標温度Tdに到達するような温度に、各加熱ローラー対Rの設定温度は設定される。また、最下段(加熱後用紙温度センサー62の配置位置に最も近い位置)に配置される加熱ローラー対R_4が、減温ではなく必ず加温を行えるように、加熱ローラー対R_4の前段にある各加熱ローラー対Rの設定温度が設定される。
【0103】
図11Cに示すように、記録媒体Mの用紙初期温度が温度TA+αである場合、図11Bに示す温度設定プロファイルPF1が適用されると、記録媒体Mの用紙温度を用紙目標温度Tdとするために、最下段に配置される加熱ローラー対R_4において減温を行わなければならなくなる。このような事態を避けるため、記録媒体Mの用紙初期温度が温度TA+αである場合に適用される温度設定プロファイルPF2においては、各加熱ローラー対Rの設定温度も、記録媒体Mの用紙初期温度が温度TAである場合と比較してそれぞれ低く設定される。
【0104】
図11Dに示すように、記録媒体Mの用紙初期温度が温度TA+αである場合、図11Bに示す温度設定プロファイルPF1が適用されると、加熱後用紙温度センサー62の配置位置に記録媒体Mが到達する段階での用紙温度が、用紙目標温度Tdより低い温度となってしまう。このような事態を避けるため、記録媒体Mの用紙初期温度が温度TA+αである場合に適用される温度設定プロファイルPF3においては、各加熱ローラー対Rの設定温度も、記録媒体Mの用紙初期温度が温度TAである場合と比較してそれぞれ高く設定される。
【0105】
また、図11A図11Cに示すいずれの例においても、前段の加熱ローラー対Rとのローラー温度の差分Δが、最下段の加熱ローラー対R_4及びその前段の加熱ローラー対R_3との間において最小となるように、各加熱ローラー対Rの設定温度が設定される。
【0106】
このように、本実施形態では、用紙初期温度に応じて適切な温度設定プロファイルPFが適用されることにため、記録媒体Mの用紙温度が用紙目標温度に収束するまでの時間を短くすることができる。
【0107】
また本実施形態では、このような温度設定プロファイルPFが、用紙初期温度だけでなく、インクジェット記録装置1の環境温度、記録媒体Mの用紙種類、記録媒体Mの厚み、加熱ローラー対Rのローラー温度の補正値等に基づいて適宜選択又は計算される。それゆえ、本実施形態によれば、記録媒体Mの用紙温度が用紙目標温度に収束するまでの時間はより短くなる。つまり、用紙加熱部20の起動から印刷開始までの待ち時間を、最短の時間とすることができる
【0108】
なお、各加熱ローラー対Rのローラー温度が加熱されすぎた場合には、冷却を行う必要があり、この場合、必要な冷却が行われるまでに多くの時間を要する。しかしながら、本実施形態によれば、各加熱ローラー対Rのローラー温度の過加熱が起きることがないため、用紙加熱部20の起動から印刷開始までの待ち時間が不要に長くなることを防ぐことができる。
【0109】
また、記録媒体Mの用紙温度が用紙目標温度に収束するまでの時間が短くなることにより、用紙温度が用紙目標温度に到達するまでの間行われるテスト印刷の実施回数も、大幅に減らすことが可能となる。それゆえ、テスト印刷時に不要にヤレ紙が消費されることを防ぐことができる。
【0110】
なお、図10に示す例では、温度差分検出制御部111が、温度設定プロファイルPFに基づいて、加熱ローラー対R_1~R_5の供給熱量(ローラー温度)を選択又は計算する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本実施形態は、ニップ幅の調整が可能な加熱ローラー対R_1′を有する第2の実施形態に適用することも可能である。この場合、温度差分検出制御部111は、加熱ローラー対R_1′のニップ幅(ニップ量)を規定したローラーニップ量設定プロファイルに基づいて、加熱ローラー対R_1′のニップ幅(ニップ量)を選択又は計算する。
【0111】
<各種変形例>
以上、本発明のインクジェット記録装置の各実施形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明のインクジェット記録装置は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0112】
上述した各実施形態では、UVインクを用いて画像形成を行うインクジェット記録装置を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。水性インクや溶剤インク等のその他のインクを用いて画像形成を行うインクジェット記録装置に本発明を適用してもよい。また、本発明のインクジェット記録装置は、複写機に限らず、プリンタやファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機等に適用されてもよい。
【0113】
[変形例1]
また、図1では、インクジェット記録装置1の用紙加熱部20が、記録媒体Mの搬送方向に複数個配置される加熱ローラー対R_1~R_5で構成される例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。加熱ローラー対R_1~加熱ローラー対R_5のうちのいずれか1つ以上に換えて、加熱ベルトを設ける構成としてもよい。
【0114】
ここで、図12を参照して、本発明の変形例1に係るインクジェット記録装置1′の構成例について説明する。図12は、本発明の変形例1に係るインクジェット記録装置1′の概略構成を示す図である。図12において、図1と実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素は、同一の符号を付し、構成要素の重複説明は省略する。
【0115】
図12に示すインクジェット記録装置1′の用紙加熱部20′は、例えば、加熱ベルト200、加熱ローラー対R_2~R_5等を備える。加熱ベルト200は、下側挟持部210と、上側挟持部220とを備える。
【0116】
下側挟持部210は、例えば、駆動ローラー211、従動ローラー212、加熱ローラー213及び加熱ベルト214等を備える。駆動ローラー211は、図示しない搬送モーターの駆動によって回転軸(図示略)を中心に回転する。従動ローラー212は、駆動ローラー211から所定距離離間して配され、駆動ローラー211の回転軸と平行な自身の回転軸(図示略)を中心に、加熱ベルト214の周回移動に伴って回転する。
【0117】
加熱ローラー213は、例えば、回転自在なアルミニウム製等の伝熱性のスリーブSl_1D′の内部に加熱源H_1Dc′及び加熱源H_1De′が配置されたローラーである。加熱ローラー213は、駆動ローラー211及び従動ローラー212の下方に設けられ、加熱ベルト214の周回移動に伴って回転する。
【0118】
加熱ベルト214は、駆動ローラー211、従動ローラー212及び加熱ローラー213に架け渡された無端ベルトであり、駆動ローラー211の回転動作に従って一定速度で周回移動する。また、この周回移動に伴って、加熱ベルト214は加熱ローラー213により加熱される。加熱ベルト214の材質としては、媒体搬送部30の搬送ベルト34と同様のものを用いることができる。この加熱ベルト214における、上側挟持部220の加熱ベルト224(後述)との対向部分が、上側挟持部220の加熱ベルト224と共に、記録媒体Mを挟持搬送しつつ記録媒体Mを加熱する接触面として機能する。
【0119】
上側挟持部220は、例えば、第1ローラー221、第2ローラー222、加熱ローラー223、及び加熱ベルト224等を備える。
【0120】
第1ローラー221は、図示しない搬送モーターの駆動によって回転軸(図示略)を中心に回転する駆動ローラーである。第2ローラー222は、第1ローラー221よりも搬送方向の下流側において、第1ローラー221から所定距離離間して配される従動ローラーである。第2ローラー222は、第1ローラー24の回転軸と平行な自身の回転軸(図示略)を中心に、加熱ベルト224の周回移動に伴って回転する。第1ローラー221と第2ローラー222とは、同一水平面内で、下側挟持部210の加熱ベルト214に対向する位置に設けられ、加熱ベルト224を介して記録媒体Mに圧接される。
【0121】
加熱ローラー223は、例えば、回転自在なアルミニウム製等の伝熱性のスリーブSl_1U′の内部に、加熱源H_1Uc′及び加熱源H_1Ue′が配置されたローラーである。加熱ローラー223は、第1ローラー221及び第2ローラー222の上方に設けられ、加熱ベルト224の周回移動に伴って回転する。
【0122】
加熱ベルト224は、記録媒体Mの画像形成面に一部が接触するように設けられている。加熱ベルト224は、第1ローラー221、第2ローラー222及び加熱ローラー223に架け渡された無端ベルトであり、第1ローラー221の回転動作に従って一定速度で周回移動する。また、この周回移動に伴って、加熱ベルト224は加熱ローラー223により加熱される。加熱ベルト224の材質としては、媒体搬送部30の搬送ベルト34と同様のものを用いることができる。
【0123】
この加熱ベルト224における、下側挟持部210の加熱ベルト214との対向部分が、下側挟持部210の加熱ベルト214の接触面と共に記録媒体Mを挟持搬送しつつ記録媒体Mを加熱する接触面として機能する。
【0124】
上側挟持部220の加熱ローラー223の近傍には、ローラー温度センサー61_1U′が設けられ、下側挟持部210の加熱ローラー213の近傍には、ローラー温度センサー61_1D′が設けられる。ローラー温度センサー61_1U′は、加熱ローラー223の表面温度を検知し、ローラー温度センサー61_1D′は、加熱ローラー213の表面温度を検知する。
【0125】
かかる構成の用紙加熱部20′においては、下側挟持部210の加熱ベルト224と、上側挟持部220の加熱ベルト224とが記録媒体Mを挟持した状態で、加熱ベルト214及び加熱ベルト224が同一速度で周回移動することにより、記録媒体Mは、加熱ベルト214及び加熱ベルト224の移動方向に搬送される。
【0126】
また、加熱ローラー対R_2~R_4が記録媒体Mを挟持した状態で、加熱ローラー対R_2~R_4が同一速度で回転することにより、記録媒体Mは、加熱ローラー対R_2~R_4の回転方向に搬送される。
【0127】
このとき、下側挟持部210の加熱ベルト224及び上側挟持部220の加熱ベルト224、並びに、加熱ローラー対R_2~R_4は加熱されているため、記録媒体Mは、これらの機構によって挟持搬送される際に加熱される。
【0128】
このように構成した場合にも、上述の各実施形態により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0129】
[変形例2]
加熱後用紙温度センサー62の検出値を、記録媒体Mの用紙種類(素材や表面状態等)に対応させて予め記憶される放射率に応じて、制御部100等が補正する構成としてもよい。このように構成することにより、用紙加熱部20を通過後の記録媒体Mの用紙温度の検出精度を、より向上させることができる。
【0130】
[変形例3]
また、上述の第5の実施形態に係る温度設定プロファイルPFを用いた制御と、第2の実施形態に係る、ニップ幅を変更可能な加熱ローラー対R_1′に対する、ニップ量変更制御とを、両方行う構成としてもよい。
【0131】
例えば、加熱後用紙温度センサー62が検知した加熱後の記録媒体Mの用紙温度及び用紙目標温度間の差分が小さい場合には、温度差分検出制御部111は、最下段に配置された加熱ローラー対R_5の加熱制御部110_U5のみを対象としてフィードバック制御を行う。一方、加熱後の記録媒体Mの用紙温度及び用紙目標温度間の差分が大きい場合には、温度差分検出制御部111は、各種設定温度プロファイルPFを対象としてフィードバック制御を行う。あるいは、温度差分検出制御部111は、ニップ幅を変更可能な加熱ローラー対R_1′のニップ量の制御を行うローラー圧着・離間制御部113(図8参照)を対象として、フィードバック制御を行う。
【0132】
このように構成することにより、記録媒体Mへの供給熱量をより適切に制御することが可能となる。
【0133】
[変形例4]
また、上述の各実施形態及び各変形例では、温度差分検出制御部111が、加熱後の記録媒体Mの温度と用紙目標温度との差分を各加熱制御部110にフィードバックする(加熱ローラー対Rのローラー温度を制御する)行う例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。温度差分検出制御部111が、加熱後の記録媒体Mの温度と用紙目標温度との差分の情報に基づいて、記録媒体Mの目標温度や、記録媒体Mの用紙温度そのもの等をオフセットさせる制御を行ってもよい。このような制御を行うことによっても、上述の各実施形態によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0134】
1,1′…インクジェット記録装置、20,20′,20A,20B…用紙加熱部、40…ヘッドユニット、61…ローラー温度センサー、62…加熱後用紙温度センサー、62c…中央温度センサー、62e…端部温度センサー、63…用紙初期温度センサー、100…制御部、101…記憶部、102…通信部、103…操作表示部、104…環境温度センサー、110…加熱制御部、111…温度差分検出制御部、112…駆動部、113…ローラー圧着・離間制御部、PF1,PF2,PF3…温度設定プロファイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12