(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】R-T-B系永久磁石
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20220127BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20220127BHJP
B22F 3/00 20210101ALN20220127BHJP
C22C 33/02 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
H01F1/057 170
C22C38/00 303D
B22F3/00 F
C22C33/02 J
(21)【出願番号】P 2018055283
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北岡 秀健
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 信
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-143817(JP,A)
【文献】特開2017-157832(JP,A)
【文献】特開2006-210893(JP,A)
【文献】特開2017-157833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
C22C 38/00
B22F 3/00
C22C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rが希土類元素であり、TがFeおよびCoであり、Bがホウ素であり、さらにMを含むR-T-B系永久磁石であって、
R
2-T
14-B相からなる主相粒子
、Zr-B相、Zr-C相およびR
6
-T
13
-Ga相を含み、
前記Zr-B相の長辺が平均300nm以上500nm以下であり、
Mは、Al、Si、P、Ti、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Biから選択される1種以上の元素であり、
Mとして少なくともGaおよびZrを含有し、
さらにCおよびOを含有し、
前記R-T-B系焼結磁石全体の質量を100質量%として、R、B、Ga、OおよびCの含有量がそれぞれ
R:29.0質量%~33.0質量%、
B:0.85質量%~1.05質量%、
Ga:0.30質量%~1.20質量%、
O:0.03質量%~0.20質量%、
C:0.03質量%~0.30質量%
であり、
さらにBの含有量をm(B)(質量%)、Zrの含有量をm(Zr)(質量%)として、
3.48m(B)-2.67≦m(Zr)≦3.48m(B)-1.87
であることを特徴とするR-T-B系永久磁石。
【請求項2】
Cの含有量をm(C)(質量%)として、
0.0979m(Zr)-0.44m(B)+0.39≦m(C)≦0.0979(Zr)-0.44(B)+0.49
である請求項1に記載のR-T-B系永久磁石。
【請求項3】
さらにR-O-C-N相を含む請求項
1または2に記載のR-T-B系永久磁石。
【請求項4】
R
2-T
17相を実質的に含まない請求項1~
3のいずれかに記載のR-T-B系永久磁石。
【請求項5】
23℃における残留磁束密度Brが1305mT以上、保磁力Hcjが1432kA/m以上、かつ、Hk/Hcjが95%以上である請求項1~
4のいずれかに記載のR-T-B系永久磁石。
【請求項6】
RとしてDy、TbまたはHoを含有し、Dy、TbおよびHoの合計含有量が1.0質量%以下である請求項1~
5のいずれかに記載のR-T-B系永久磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R-T-B系永久磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「R-T-B系永久磁石が、R2Fe14Bを主として含む主相と、主相よりRを多く含む粒界相とを備え、粒界相が、希土類元素濃度の高い粒界相(希土類元素であるRの合計原子濃度が70原子%以上の相)と、希土類元素濃度が低く遷移金属元素濃度が高い粒界相(希土類元素Rの合計原子濃度が25~35原子%含み、かつFeを必須とする遷移金属であるTを50~70原子%含むことが好ましい相)と、を含むことでDyの含有量を高くすることなく保磁力の高いR-T-B系永久磁石が得られる」旨が記載されている。また、「R-T-B系永久磁石は、特定のB濃度(Bの含有量)のときに保磁力が最大になる」旨が記載されている。特許文献1に記載されている特定のB濃度(Bの含有量)は、従来のR-T-B系永久磁石のBの含有量よりも少ない。
【0003】
特許文献2には、M-B系化合物、M-B-Cu系化合物およびM-C系化合物(MはTi、Zr、Hfのうち1種または2種以上)のうち少なくとも2種と、更にR酸化物とを磁石組織中に析出させることで異常粒成長を抑制し、最適焼結温度幅を広くすることができるNd-Fe-B系希土類永久磁石が記載されている。
【0004】
特許文献3には、R-T-B系永久磁石において、Tiの含有量を特定の範囲内に制御することで、Tiのホウ化物を生成させ、Tiのホウ化物とならないホウ素の量を少なくすることが記載されている。そして、Tiのホウ化物以外のホウ素の量を少なくすることにより、重希土類元素の含有量を少なくしても高い残留磁束密度、高い保磁力および高いHk/Hcjを有するR-T-B系永久磁石を得られる旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-216965号公報
【文献】特許第3891307号公報
【文献】特許第6090550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のR-T-B系永久磁石は、一般的なR-T-B系永久磁石と比べて角型比が低い。角型比が低いと減磁し易くなるため、高い残留磁束密度(Br)と高い保磁力(Hcj)を有すると共に、高い角型比を有するR-T-B系永久磁石が求められている。
【0007】
特許文献1では角型比としてSqを用いている。Sqの定義が特許文献1には記載されていないが、測定装置としてB-Hカーブトレーサー(東英工業TPM2-10)を用いていることから考えると、Sqは
図1に示すI-H曲線の第2象限において、Sq=(減磁カーブ1の内側領域3の面積)/理想面積によって求められる。なお、理想面積とはBr×Hcjであり、減磁カーブ1の外側領域2の面積と内側領域3の面積との和のことである。
【0008】
しかし、一般的には、角型比はHk/Hcjで表されることが多い。HkはI-H曲線の第2象限において、I=0.9Brとなる場合におけるHの大きさである。そして、Hk/HcjとはHkをHcjで割った値である。ここで、R-T-B系永久磁石においてR2-T17相などの軟磁性相が生じて減磁カーブ1が異常な偏曲点を有していなければSq≧Hk/Hcjとなると考えられる。したがって、角型比の評価方法としては、Hk/Hcjを用いる評価方法の方が厳しい評価方法であるといえる。
【0009】
また、角型比は焼結温度を上げると向上するが、焼結温度が高すぎると異常粒成長が生じて低下する。したがって、角型比が十分に向上し、かつ異常粒成長が生じない温度が最適な焼結温度となる。工業的な生産規模においては、焼結炉内の全域で加熱温度を均一にすることは困難である。したがって、最適な焼結温度の幅(以下、最適焼結温度幅)が広いほど製造安定性が高いといえる。
【0010】
特許文献1に記載のR-T-B系永久磁石のようにBの含有量が従来のR-T-B系永久磁石のBの含有量よりも少ない場合には、上記の最適焼結温度幅が狭く、Hk/Hcjを安定的に向上させることが困難であった。
【0011】
異常粒成長を抑制し最適焼結温度幅を広くするために、特許文献2に記載の技術を特許文献1に記載のNd-Fe-B系希土類永久磁石に適用しようとすると、Bの含有量が少ないため、M-C系化合物の析出量が多く、M-B系化合物およびM-B-Cu系化合物の析出量が少なくなってしまう。そのため、特許文献2に記載の技術を特許文献1に適用して得られるNd-Fe-B系希土類永久磁石は異常粒成長を抑制する効果が十分ではなく、最適焼結温度幅も十分に広くない。
【0012】
また、特許文献3に記載のR-T-B系永久磁石と類似の組成で検討したところ、特許文献3に記載のR-T-B系永久磁石は異常粒成長を抑制する効果が十分ではなく、最適焼結温度幅が十分に広くないことが分かった。
【0013】
一方、R-T-B系永久磁石のBの含有量(永久磁石全体に対するBの含有量)が概ね1.0質量%以上である場合には、異常粒成長が発生しにくく最適焼結温度幅を広くしやすいものの、希土類元素Rとして重希土類元素を多く用いなければ十分に高い磁気特性が得られにくい。
【0014】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、残留磁束密度(Br)、保磁力(Hcj)および角形比(Hk/Hcj)が高いR-T-B系永久磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明のR-T-B系永久磁石は、
Rが希土類元素であり、TがFeおよびCoであり、Bがホウ素であり、さらにMを含むR-T-B系永久磁石であって、
R2-T14-B相からなる主相粒子を含み、
Mは、Al、Si、P、Ti、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Biから選択される1種以上の元素であり、
Mとして少なくともGaおよびZrを含有し、
さらにCおよびOを含有し、
前記R-T-B系焼結磁石全体の質量を100質量%として、R、B、Ga、OおよびCの含有量がそれぞれ
R:29.0質量%~33.0質量%、
B:0.85質量%~1.05質量%、
Ga:0.30質量%~1.20質量%、
O:0.03質量%~0.20質量%、
C:0.03質量%~0.30質量%
であり、
さらにBの含有量をm(B)(質量%)、Zrの含有量をm(Zr)(質量%)として、
3.48m(B)-2.67≦m(Zr)≦3.48m(B)-1.87
であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るR-T-B系永久磁石は、上記の特徴を有することにより、残留磁束密度Br、保磁力Hcjおよび角形比Hk/Hcjが高く、かつ、異常粒成長が発生しない焼結温度幅が広く製造安定性が高いR-T-B系永久磁石となる。
【0017】
本発明に係るR-T-B系永久磁石は、Cの含有量をm(C)(質量%)として、
0.0979m(Zr)-0.44m(B)+0.39≦m(C)≦0.0979(Zr)-0.44(B)+0.49
であってもよい。
【0018】
本発明に係るR-T-B系永久磁石は、Zr-B相、Zr-C相およびR6-T13-Ga相を含んでいてもよい。
【0019】
本発明に係るR-T-B系永久磁石は、前記Zr-B相の長辺が平均300nm以上500nm以下であってもよい。
【0020】
本発明に係るR-T-B系永久磁石は、さらにR-O-C-N相を含んでいてもよい。
【0021】
本発明に係るR-T-B系永久磁石は、R2-T17相を実質的に含まなくてもよい。
【0022】
本発明に係るR-T-B系永久磁石は、23℃における残留磁束密度Brが1305mT以上、保磁力Hcjが1432kA/m以上、かつ、Hk/Hcjが95%以上であってもよい。
【0023】
本発明に係るR-T-B系永久磁石は、RとしてDy、TbまたはHoを含有し、Dy、TbおよびHoの合計含有量が1.0質量%以下であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】本願の一実施形態に係る焼結磁石の断面の概略図である。
【
図3】R
2-T
14-B相とZr-C相との位置関係を示す概略図である。
【
図4】R
2-T
14-B相とZr-B相との位置関係を示す概略図である。
【
図5】実施例1における永久磁石の断面のSEM画像である。
【
図6】比較例7における永久磁石の断面のSEM画像である。
【
図7】比較例10における永久磁石の断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態である焼結磁石について図面を用いて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、R2T14B化合物からなる主相粒子および複数の主相粒子の間に存在する粒界相を含む。
【0027】
Rは1種以上の希土類元素である。TはFeまたはFeおよびCoである。Bはホウ素である。さらにMを含み、Mは、Al、Si、P、Ti、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Biから選択される1種以上の元素である。また、GaおよびZrは必須である。
【0028】
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の断面概略図を
図2に示す。
【0029】
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の断面をSEMの反射電子画像(以下、単にSEM画像と呼ぶことがある)で観察すると、例えば
図5に示すように主相粒子および粒界に存在する複数種の粒界相が見える。そして、複数種の粒界相は、それぞれ組成に応じた色の濃淡や結晶系に応じた形状を持つ。
【0030】
EPMAを用いて各粒界相を点分析し組成を明らかにすることで、それらがどのような粒界相であるかを特定することができる。
【0031】
さらに各粒界相の結晶構造をTEMにより確認することで、粒界相を明確に特定することができる。例えば
図5に示されたSEM画像について、各粒界相を特定し概略図としたものが
図2である。
【0032】
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16を含む。
【0033】
主相粒子は主にR2-T14-B相11からなる。しかし、主相粒子内部にZr-B相13および/またはZr-C相14を含む場合もある。
【0034】
R-O-C-N相12は、粒界相に含まれ、R原子に対するO原子の比率が、0.4<(O/R)<0.7の範囲である立方晶構造の化合物相である。なお、O、CおよびNの含有比には特に制限はないが、R原子に対するN原子の比率が0<(N/R)<1であることが好ましい。
【0035】
R-O-C-N相12は略円形または略楕円形の特徴的な形状をしている。さらに、
図5に示すようにSEM写真では他の相から浮かび上がるように見える形状となる。このことにより、SEM写真でも他の粒界相と見分けることができる。また、R-O-C-N相が粒界三重点に存在する場合には、耐食性を向上させる効果がある。
【0036】
Zr-B相13はZrおよびBからなるZr-B化合物を含む。Zr-B化合物の種類には特に制限はないが、主にZrB2化合物である。例えば、R-T-B系希土類焼結磁石の20μm×25μm以上の観察範囲においてZr-B相13の析出個数が10ヶ以上あってよい。
【0037】
Zr-B化合物、特にZrB
2化合物はAlB
2系の六方晶の結晶構造を有する。
したがって、Zr-B化合物は主に板状の形状となる。
図2および
図5に示すように、SEM写真におけるZr-B相13は略長方形の形状をとり、主に二粒子粒界相に含まれる。そして、R
2-T
14-B相11とZr-B相13との位置関係を示す概略図を
図4に示す。
図4に示すようにZr-B相13は略長方形の形状をとるため、Zr-B相13とR
2T
14B相11とが接する部分が大きくなる。このため、Zr-B相13は主相粒子の異常粒成長を抑制するピン止め効果が大きくなる。
【0038】
また、Zr-B相13は長辺が平均300nm以上500nm以下であることが好ましく、長辺の長さが上記の範囲内であることにより、異常粒成長を抑制する効果が大きくなる。さらに、Zr-B相13は主相粒子に含まれていても良い。この場合、SEM画像ではR2-T14-B相11の内部に含まれる形でZr-B相が存在する。
【0039】
なお、Zr-B相13の代わりにTiB2化合物を含むTi-B相やHfB2化合物を含むHf-B相を含んでいても異常粒成長を抑制する効果はある。しかし、Ti-B相やHf-B相はZr-B相13と比較して小さくなりやすいため、長辺の長さを平均300nm以上とすることが困難である。そして、Ti-B相やHf-B相は長辺の長さが短いため、異常粒成長を抑制する効果がZr-B相13と比較して小さい。
【0040】
Zr-C相14はZrおよびCからなるZr-C化合物を含む。Zr-C化合物の種類には特に制限はないが、主にZrC化合物である。例えば、R-T-B系希土類焼結磁石の20μm×25μm以上の観察範囲においてZr-C相14の析出個数が20ヶ以上あってよい。
【0041】
Zr-C相14は、面心立方構造(NaCl構造)を有する結晶相である。粒界にZr-C相14を含むことにより、異常粒成長を抑制できる。しかし、異常粒成長抑制効果はZr-B相13よりも小さいと考えられる。Zr-C相14はR
2-T
14-B相11の内部および二粒子粒界相にも析出し得るが、主に粒界三重点に析出する傾向がある。そして、R
2-T
14-B相11とZr-C相14との位置関係を示す概略図を
図3に示す。
図3に示すようにZr-C相14はCubicな形状をとるため、Zr-C相14とR
2T
14B相11とが接する部分が小さくなりやすい。このため、Zr-C相14は主相粒子の異常粒成長を抑制するピン止め効果がZr-B相13と比較して小さくなる。
【0042】
Zr-C相14は、
図5では濃い黒色部として観察される。また、
図2および
図5に示すように形状が非常に小さな多角形となっている。
【0043】
R
6-T
13-Ga相15は、
図5では、後述するRリッチ相16よりも濃色部として粒界に観察される。また、R
6-T
13-Ga相には、La
6Co
11Ga
3型の結晶構造を有する化合物であるR
6T
13Gaが含まれる。例えば、R-T-B系希土類焼結磁石の20μm×25μm以上の観察範囲においてR
6-T
13-Ga相の面積割合が1.0%以上10%以下であってもよく、3.0%以上7.0%以下であってもよい。また、R
6-T
13-Ga相15には、R
6T
13Ga化合物以外のR
6T
13M´化合物が含まれていてもよい。上記R
6T
13M´化合物のM´としては例えばAl,Cu,Zn,In,P,Sb,Si,Ge,Sn,Bi等が挙げられる。ただし、R
6-T
13-Ga相15をEPMAで分析した場合におけるGaの含有量が3.0at%以上8.0at%以下であることが好ましい。
【0044】
R6-T13-Ga相15が粒界に含まれることで、主相粒子間の磁気分離を大きくし、焼結磁石の特性(特に保磁力)を著しく向上させることができる。また、R6-T13-Ga相15に含まれる化合物がLa6Co11Ga3型の結晶構造を有する化合物であることは、例えばTEMを用いて確認することができる。
【0045】
また、
図2および
図5には記載されていないが、R
6-T
13-Ga相15に似た構成元素を持つが、結晶構造が体心立方構造である化合物からなる体心立方相が粒界相に生成されていてもよい。体心立方相におけるTの含有量は10at%以上50at%以下である。体心立方相も粒界相に含まれることで、主相粒子間の磁気分離を大きくし、焼結磁石の特性(特に保磁力)を著しく向上させることができる。なお、当該体心立方相が体心立方構造を有することはTEMにより確認することができる。
【0046】
Rリッチ相16はRの含有量が50at%以上である相である。R6-T13-Ga相15と比較して淡色部として粒界に観察される。例えば、R-T-B系希土類焼結磁石の20μm×25μm以上の観察範囲においてRリッチ相16の面積割合が1.0%以上10%以下であってもよく、3.5%以上8.0以下であってもよい。
【0047】
さらに、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、R2T17化合物からなるR2-T17相を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、R-T-B系希土類焼結磁石の20μm×25μm以上の観察範囲においてR2-T17相の面積割合が0.5%以下であることが好ましい。R2-T17相が生成してしまうと磁気特性、特に残留磁束密度(Br)が低下しやすく、角型比(Hk/Hcj)も低下する。また、R2-T17相であるか否かはEPMAにより確認することができる。
【0048】
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、R-T-B系焼結磁石全体の質量を100質量%として、R、B、Ga、OおよびCの含有量がそれぞれ
R:29.0質量%~33.0質量%、
B:0.85質量%~1.05質量%、
Ga:0.30質量%~1.20質量%、
O:0.03質量%~0.20質量%、
C:0.03質量%~0.30質量%
であり、
さらにBの含有量をm(B)(質量%)、Zrの含有量をm(Zr)(質量%)として、
3.48m(B)-2.67≦m(Zr)≦3.48m(B)-1.87…式(1)
であることを特徴とする
【0049】
Rの含有量は29.0質量%以上33.0質量%以下である。好ましくは30.0質量%以上32.0質量%以下である。Rの含有量が少なすぎる場合には、合金鋳造時にα-Feが発生し易くなるため好ましくない。さらに、焼結時における液相成分が少なくなるため、焼結時の雰囲気の制御が困難となる。具体的には酸素量の変化による焼結時の収縮度合いの変化が大きくなり生産性が低下する。Rの含有量が多すぎる場合にはR2-T14-B相11の体積率が減少してしまい、Brが低下する。
【0050】
また、Rとして重希土類元素を含有してもよく、特にDy、Tb、Hoから選択される1種以上を含有してもよい。重希土類元素の含有量が多くなるほど保磁力Hcjが向上するがBrは低下する。また、重希土類元素は採掘可能な地域の偏りが大きい。そのため、重希土類元素を含有するとコストが高くなり、かつ、資源枯渇に対する調達リスクも大きい。したがって、重希土類元素の含有量は少ない方がよく、用いないことが好ましい。具体的には、重希土類元素の含有量は希土類磁石全体に対して1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、重希土類元素を実質的に含まないことが最も好ましい。すなわち、重希土類元素の含有量が0.1質量%以下であることが最も好ましい。
【0051】
Bの含有量は0.85質量%以上1.05質量%以下である。0.88質量%以上1.05質量%以下でもよい。好ましくは0.88質量%以上0.95質量%以下である。Bの含有量が少なすぎる場合にはZr-B相13が十分に生成されにくく、異常粒成長抑制効果が小さくなる。Bの含有量が多すぎる場合には、Zr-B相13が増えすぎてしまい、R2-T14-B相11の体積率が減少し、Brが低下しやすくなる。また、異常粒成長が発生しない焼結温度幅を広くするためにはBの含有量が0.88質量%以上であることが好ましい。さらに、Brを向上させるためにはBの含有量が0.95質量%以下であることが好ましい。
【0052】
なお、重希土類元素の含有量を低減しつつBの含有量を1.00質量%以上とするR-T-B系焼結磁石を得ることは磁気特性が低下し易いため困難であった。本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は重希土類元素の含有量を低減しつつ、Bの含有量を1.00質量%以上1.05質量%以下としても高い磁気特性が得られる。
【0053】
Gaの含有量は0.30質量%以上1.20質量%以下である。Gaの含有量が少なすぎる場合にはR6-T13-Ga相15が十分に生成せず、保磁力Hcjが低下しやすくなる。Gaの含有量が多すぎる場合にはR2-T14-B相11の体積率が減少し、Brが低下しやすくなる。なお、Gaの含有量は好ましくは0.40質量%以上1.00質量%以下である。
【0054】
Oの含有量は0.03質量%以上0.20質量%以下である。0.05質量%以上0.10質量%以下であることがより好ましい。Oは不可避的不純物であるため、低減することが難しい。0.03質量%未満に低減するためにはR-T-B系焼結磁石の製造時における雰囲気中の酸素濃度を低減する必要があり、コストが増大する。一方、酸素の含有量が多すぎると保磁力Hcjが低下しやすくなる。
【0055】
Cの含有量は0.03質量%以上0.30質量%以下である。さらに、Cの含有量をm(C)(質量%)として、
0.0979m(Zr)-0.44m(B)+0.39≦m(C)≦0.0979(Zr)-0.44(B)+0.49…式(2)
を満たすことが好ましい。
【0056】
Cの含有量はZr-B相13とZr-C相14との生成割合に影響する。Cの含有量が少なすぎる場合には、Zr-B相13が過剰となる。この場合、Zr-B相以外のBの含有量が少なくなり、主にR2-T17化合物を含むR2-T17相が生成しやすくなる。一方、Cの含有量が多すぎる場合には、RおよびCの化合物からなるR-C相が生成しやすくなる。R-C相が多く存在する場合にはRリッチ相16が減少しやすくなり、保磁力Hcjが低下しやすくなる。
【0057】
Zrの含有量は上記の式(1)を満たす。Zrの含有量が少なすぎる場合には、異常粒成長が発生しやすくなり、保磁力Hcjが低下しやすくなる。Zrの含有量が多すぎる場合には、R2-T17相が生成しやすくなり、磁気特性、特にBrが低下しやすく、角型比Hk/Hcjも低下する。
【0058】
Zrの含有量は、好ましくは下記の式(1)´を満たす。
3.48m(B)-2.67≦m(Zr)≦3.48m(B)-2.07…式(1)´
式(1)´を満たす場合にはZr-B相13およびZr-C相14が共に多くなる。さらに、R-C相を還元してRリッチ相16とする反応も進行する。したがって、保磁力Hcjをさらに高くすることができる。
【0059】
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、上記以外の元素を含有してもよい。例えば、Co、Cu、Alを含有してもよい。
【0060】
Coの含有量には特に制限はない。例えば、R-T-B系焼結磁石全体を100質量%として0質量%以上3.0質量%以下、含んでもよい。特にCoの含有量が0.5質量%以上2.5質量以下、含む場合には、耐食性および温度特性を共に良好としやすいため好ましい。
【0061】
Cuの含有量には特に制限はない。例えば、R-T-B系焼結磁石全体を100質量%として0.1質量%以上0.6質量%以下、含んでもよい。Cuの含有量が大きいほど耐食性が良好になる傾向にあるが、Brは低下する傾向にある。耐食性とBrとのバランスを考慮して、Cuの含有量は0.2質量%以上0.4質量%以下とすることが好ましい。
【0062】
Alの含有量には特に制限はない。また、Alは不可避的不純物として含まれる場合もある。Alの含有量はR-T-B系焼結磁石全体を100質量%として0.07質量%以上1.0質量%としてもよい。また、0.3質量%以上0.6質量%以下とすることが好ましい。Alの含有量が大きいほど保磁力Hcjが増加する傾向にあるが、Brは低下する傾向にある。さらに、R2T14B相11のキュリー温度が低下し、温度特性が低下する傾向にある。
【0063】
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、さらにNを含んでもよい。また、Nは不可避的不純物として含まれる場合もある。Nの含有量はR-T-B系焼結磁石全体を100質量%として0.03質量%以上0.20質量%以下である。また、0.05質量%以上0.12質量%以下であることが好ましい。Nの含有量が上記の範囲内である場合には、異常粒成長を抑制しやすくなる。
【0064】
上記以外の元素をさらに不可避的不純物として含有してもよい。R-T-B系焼結磁石全体を100質量%として不可避的不純物の含有量は合計で0.2質量%以下とすることが好ましい。
【0065】
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、磁気特性に優れた磁石となる。すなわち、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ)および角形比(Hk/HcJ)がいずれも高い磁石となる。また、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は、磁気特性に加えて、さらに、最適焼結温度幅が広く、製造安定性が高い。
【0066】
以下、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の製造方法の一例を説明する。本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の製造方法は下記の製造方法に特定されないが、下記の製造方法とすることにより、本発明の目的を達成しやすくなる。
【0067】
本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石は通常の粉末冶金法により製造することができる。粉末冶金法は、原料合金を調製する調製工程、原料合金を粉砕して原料微粉末を得る粉砕工程、原料微粉末を成型して成型体を作製する成型工程、成型体を焼成して焼結体を得る焼結工程、及び焼結体に時効処理を施す熱処理工程を有する。
【0068】
調製工程は、本実施形態に係る希土類磁石に含まれる各元素を有する原料合金を調製する工程である。まず、所定の元素を有する原料金属を準備する。これらにストリップキャスティング法等を用い、溶解、凝固させることによって原料合金を調製することができる。原料金属としては、例えば、希土類金属や希土類合金、純鉄、純コバルト、フェロボロン、またはこれらの合金が挙げられる。これらの原料金属を用い、所望の組成を有する希土類磁石が得られるような原料合金を調製する。
【0069】
また、原料合金に対して、組織・組成均一化を目的として熱処理(溶体化処理)を施しても良い。原料合金全体に含まれるCは500ppm以下、好ましくは300ppm以下である。原料合金に含有されるC量が多すぎると、最終的に得られるR-T-B系焼結磁石の保磁力が低下する。原料合金に含有されるC量が少なすぎると原料合金が高価となる。
【0070】
ここで、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石の製造方法は、原料合金として1種類の合金を用いる1合金法でもよく、原料合金して2種類の合金を用いる2合金法としてもよい。原料合金におけるBの含有量が少なすぎる場合には原料合金中にα-Feが析出しやすくなり、磁気特性が低下する傾向にある。また、2合金法では、主に主相であるR2-T14-B相を形成する主相合金、および、主に粒界相であるその他の相を形成する粒界相合金に分けて鋳造することが可能である。この場合、主相合金のみにBを含有させて粒界相合金がBを含まないようにすれば、相対的に主相合金のBを高くしやすくなり、好適である。この場合、粒界相合金においてα-Feが析出しやすくなるが、主相合金と粒界相合金との混合比率を制御することでα-Feの影響を小さくすることができる。
【0071】
粉砕工程は、調製工程で得られた原料合金を粉砕して原料粉末を得る工程である。この工程は、粗粉砕工程及び微粉砕工程の2段階で行うことが好ましいが、1段階としても良い。粗粉砕工程は、例えばスタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中で行うことができる。水素を吸蔵させた後に粉砕を行う水素吸蔵粉砕を行うこともできる。粗粉砕工程においては、原料合金の粒径が数百μmから数mm程度となるまで粉砕を行う。水素吸蔵粉砕を行う場合には、例えば300~650℃、アルゴンフロー中または真空中で脱水素を行う。
【0072】
微粉砕工程は、粗粉砕工程で得られた粉末に粉砕助剤を添加し、混合した後に粉砕して、平均粒径D50が数μm程度の原料粉末を調製する工程である。原料粉末の平均粒径は、焼結後の粒径を勘案して設定すればよい。微粉砕は、例えば、ジェットミルを用いて行うことができる。ジェットミルにて用いるガスの種類には特に制限はなく、例えば、ヘリウムガス、窒素ガスまたはアルゴンガスが挙げられる。微粉砕後の原料粉末の粒径には特に制限はないが、D50が2.0μm以上、4.5μm以下となるように微粉砕することが好ましく、D50が2.5μm以上3.5μm以下となるように微粉砕することが最も好ましい。D50が小さいほど最終的に得られるR-T-B系焼結磁石の保磁力Hcjが向上する傾向にあるが、異常粒成長も発生しやすくなる。また、D50が大きいほど異常粒成長が発生しにくく、異常粒成長が発生しない焼結温度幅が広がる傾向にあるが、保磁力Hcjが低下する傾向にある。また、微粉砕時の雰囲気は低酸素雰囲気とすることが好ましい。具体的には、酸素濃度が100ppm以下となるように雰囲気を制御することが好ましい。
【0073】
また、粉砕助剤の種類には特に制限はないが、例えば、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛等の有機物潤滑剤やグラファイト、窒化ホウ素(BN)などの固体潤滑剤を用いることができる。特に窒化ホウ素やグラファイトなどは上記の元素を含んでいるため、添加量を制御することで最終的に得られるR-T-B系焼結磁石組成を制御することができる。また、粉砕助剤が成型助剤を兼ねていてもよい。有機物潤滑剤および固体潤滑剤は単独で使用してもよいが、混合使用することがより好ましい。特に固体潤滑剤単独で使用する場合には配向度が低下する場合がある。
【0074】
成型工程は、原料粉末を磁場中で成型して成型体を作製する工程である。具体的には、原料粉末を電磁石中に配置された金型内に充填した後、電磁石により磁場を印加して原料粉末の結晶軸を配向させながら、原料粉末を加圧することにより成型を行う。この磁場中成型は、例えば、1000kA/m以上1600kA/m以下の磁場を印加し、30MPa以上300MPa以下程度の圧力で加圧すればよい。
【0075】
焼結工程は、成型体を焼結して焼結体を得る工程である。磁場中成型後、焼結を行い、焼結体を得ることができる。焼結条件は、成型体の組成、原料粉末の粉砕方法、粒度等の条件に応じて適宜設定することができる。まず、焼結時の保持温度まで昇温させるときの昇温速度は10℃/分以下とすることが好ましく、3℃/分以上5℃/分以下とすることがより好ましい。また、昇温時の雰囲気には特に制限はないが真空中または不活性ガス雰囲気としてもよい。保持温度は、例えば1000℃以上1150℃以下としてもよい。また、1050℃以上1130℃以下とすることが好ましい。保持温度は異常粒成長が生じず、かつ、角型比Hk/Hcjが高い温度とすることが好ましい。保持温度で保持する保持時間は2時間以上10時間以下に設定すればよい。また、2時間以上5時間以下とすることが生産性を考慮すれば好ましい。保持時の雰囲気は100Pa未満の真空雰囲気とすることが好ましく、10Pa未満の真空雰囲気とすることがより好ましい。なお、焼結後の冷却は、30℃/分以上の速度で急冷してもよい。
【0076】
熱処理工程は、焼結体を時効処理する工程である。この工程により、最終的に各相の有無や組成など決定される。しかしながら、各相の有無や組成は熱処理工程のみで制御されるのではなく、上記した焼結工程の諸条件及び原料微粉末の状況との兼ね合いで制御される。従って、熱処理条件と粒界相の構造との関係を勘案しながら、熱処理温度(時効処理温度)および熱処理時間(時効処理時間)を設定すればよい。本実施形態では第1時効処理と第2時効処理の2段階に分けて熱処理する場合について説明する。
【0077】
第1時効処理は800℃以上900℃以下の保持温度で行ってよい。雰囲気は大気圧以上の圧力の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガスの種類としては例えばヘリウムガス、アルゴンガスが挙げられる。第1時効処理における昇温速度は5℃/分以上50℃/分以下であってよい。保持時間は0.5時間以上4時間以下としてもよい。第1時効処理後の冷却は、30℃/分以上の速度で急冷してもよい。
【0078】
第2時効処理は450℃以上550℃以下の保持温度で行ってよい。雰囲気は大気圧以上の圧力の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガスの種類としては例えばヘリウムガス、アルゴンガスが挙げられる。第1時効処理における昇温速度は5℃/分以上50℃/分以下であってよい。保持時間は0.5時間以上4時間以下としてもよい。第2時効処理後の冷却は、30℃/分以上の速度で急冷してもよい。
【0079】
以上の方法により、本実施形態に係るR-T-B系焼結磁石が得られるが、R-T-B系焼結磁石の製造方法は上記に限定されず、適宜変更してよい。
【0080】
また、本発明に係るR-T-B系永久磁石は上記の本実施形態のように焼結を行うことにより製造されるR-T-B系焼結磁石に限定されない。例えば、焼結の代わりに熱間成型および熱間加工を行い製造されるR-T-B系永久磁石であってもよい。
【0081】
室温にて原料粉末を成型することにより得られる冷間成型体に対して、加熱しながら加圧する熱間成型を行うと、冷間成型体に残存する気孔が消滅し、焼結によらずに緻密化させることができる。さらに、熱間成型により得られた成型体に対して熱間加工として熱間押出し加工を行うことにより、所望の形状を有し、かつ、磁気異方性を有するR-T-B系永久磁石を得ることができる。
【0082】
本発明に係るR-T-B系永久磁石は、磁気特性に優れた磁石となる。すなわち、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ)および角形比(Hk/HcJ)がいずれも高い磁石となる。
【実施例】
【0083】
次に、本発明を具体的な実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0084】
(実施例1~3、比較例1)
31.2R-1.00B-0.45Ga-xZr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Fe(0.92≦x≦1.81)の組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した。なお、xは最終的に得られる焼結磁石におけるZr量が、表1に示すZr量となるように適宜制御した。そして、ストリップキャスティング法により原料合金を作製した。
【0085】
次に、粗粉砕を行った。まず、上記の原料合金に対して1時間、水素吸蔵を行った。次に、アルゴンをフローしながら8℃/分の昇温速度で昇温し、600℃で1時間保持して脱水素処理した。その後、室温まで冷却し、平均粒径100μm程度の粗粉を作製した。
【0086】
次に、微粉砕を行った。上記の粗粉に対して粉砕・成型助剤としてラウリン酸アミドを0.15wt%添加した。そして、ジェットミル粉砕法により微粉砕を行った。微粉砕では窒素ガスを粉砕ガスとして用い、雰囲気中の酸素濃度を100pp未満に制御した。
【0087】
次に、磁場中成型を行い、成型体を作製した。磁場中成型は、配向磁場1200kA/m、成型圧力40MPaで行い、成型時の雰囲気は酸素濃度100ppm未満の窒素雰囲気で行った。
【0088】
次に、上記の成型体を9個用意した。そして、用意した成型体に対して、それぞれ異なる焼結温度で焼結を行った。具体的には、焼結時の保持温度を1070~1150℃の間において10℃刻みで変化させてそれぞれ焼結温度の異なる焼結体を作製した。
【0089】
焼結は、上記の成型体を4℃/分の速度で昇温させ、上記の保持温度で4時間保持することにより行った。そして、4時間の保持後に50℃/分以上の速度で50℃まで急冷して焼結体を得た。
【0090】
次に、得られた焼結体を8℃/分の速度で昇温させ、900℃で1時間保持した後に50℃/分以上の速度で50℃まで急冷して第1時効処理を行った。さらに、第1時効処理後の焼結体を8℃/分の速度で昇温させ、500℃で1時間保持した後に50℃/分以上の速度で50℃まで急冷して第2時効処理を行った。
【0091】
次に、各実施例および比較例の最適焼結温度幅を決定した。具体的には、異常粒成長が存在せず、角型比Hk/Hcjが95%以上である焼結体の焼結温度の幅を最適焼結温度幅とした。なお、最適焼結温度幅の大きさは量産上20℃以上あることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。また、最適焼結温度幅に含まれる焼結温度のうち、最も磁気特性が良好になる温度を最適焼結温度とした。
【0092】
異常粒成長の有無については、具体的には、粒径が100μm超の粒子が存在する場合には異常粒成長があるとした。まず、10mm×10mm以上の測定範囲が確保できるように焼結体の一部を破断し、破断面を目視および倍率20倍の光学顕微鏡にて観察した。そして、粒径が100μm超の可能性がある粗大粒がある場合には、さらにSEMを用いて観察し、当該粗大粒の粒径が100μm超か否かを確認した。
【0093】
各焼結体の磁気特性(Br、HcjおよびHk/Hcj)はBHカーブトレーサー(東英工業製 TRF)にて測定した。結果を表2に示す。なお、表2に記載した磁気特性は最適焼結温度にて焼結した焼結体の磁気特性である。Brは1305mT以上を良好とした。Hcjは1432kA/m以上を良好とした。Hk/Hcjは95%以上を良好とした。
【0094】
また、各焼結体の組成を蛍光X線分析およびICP発光分析により測定した。Bの含有量のみICP発光分析により測定し、その他の元素は蛍光X線分析により測定した。結果を表1に示す。なお、表1に記載した組成は最適焼結温度にて焼結した焼結体の組成である。最適焼結温度幅が0である比較例では、最も角型比Hk/Hcjが大きくなる焼結温度で焼結した焼結体の組成および磁気特性を記載した。
【0095】
さらに、上記の破断面とは別に、最適焼結温度にて焼結した焼結体を破断した後に研磨して得た研磨断面をSEMおよびEPMAにて倍率5000倍で観察した。そして、研磨断面に存在する各相の種類を同定した。具体的には、SEMの反射電子画像における濃淡から複数の相に分類した。そして、分類された各相についてEPMAマッピングの結果と照合して各相の種類を同定した。
【0096】
実施例1のSEM画像が
図5である。なお、
図2は
図5の一部を模式図化したものである。
図5では、R
2-T
14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R
6-T
13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R
2-T
17相は確認されなかった。Zr-B相13は板状または針状の形状をしており、Zr-C相14は立方体状の形状をしていた。また、Zr-B相13およびZr-C相14はR
2-T
14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。R-O-C-N相12およびR
6-T
13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、少なくとも10個のZr-B相13の長辺の長さより平均長さを算出した。実施例1では440nmであった。
【0097】
また、実施例2および実施例3についても実施例1と同様に、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R2-T17相は確認されなかった。また、Zr-B相13およびZr-C相14はR2-T14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。R-O-C-N相12およびR6-T13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、Zr-B相13の長辺の平均長さを算出した結果、300nm~500nmの範囲内となった。
【0098】
これに対し、Zrの含有量が多すぎる比較例1では全ての焼結温度でR2-T17相が確認され、BrおよびHk/Hcjが低下した。
【0099】
(実施例4~6、比較例2)
31.2R-0.98B-0.45Ga-xZr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Fe(0.82≦x≦1.72)の組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点以外は、実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。
【0100】
実施例4~6は実施例1~3と同様に磁気特性が良好であり、最適焼結温度幅も良好であった。さらに、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R2-T17相は確認されなかった。また、Zr-B相13およびZr-C相14はR2-T14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。R-O-C-N相12およびR6-T13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、Zr-B相13の長辺の平均長さを算出した結果、300nm~500nmの範囲内となった。
【0101】
これに対し、Zrの多すぎる比較例2は比較例1と同様に全ての焼結温度でR2-T17相が確認され、BrおよびHk/Hcjが低下した。
【0102】
(実施例7~9、比較例3)
31.2R-0.95B-0.45Ga-xZr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Fe(0.71≦x≦1.63)の組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点以外は、実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。
【0103】
実施例7~9は実施例1~3と同様に磁気特性が良好であり、最適焼結温度幅も良好であった。さらに、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R2-T17相は確認されなかった。また、Zr-B相13およびZr-C相14はR2-T14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。R-O-C-N相12およびR6-T13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、Zr-B相13の長辺の平均長さを算出した結果、300nm~500nmの範囲内となった。
【0104】
これに対し、Zrの多すぎる比較例3は比較例1と同様に全ての焼結温度でR2-T17相が確認され、BrおよびHk/Hcjが低下した。
【0105】
(実施例10~12および比較例4)
31.2R-0.90B-0.45Ga-xZr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Fe(0.50≦x≦1.42)の組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点以外は、実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。
【0106】
実施例10~12は実施例1~3と同様に磁気特性が良好であり、最適焼結温度幅も良好であった。さらに、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R2-T17相は確認されなかった。また、Zr-B相13およびZr-C相14はR2-T14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。R-O-C-N相12およびR6-T13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、Zr-B相13の長辺の平均長さを算出した結果、300nm~500nmの範囲内となった。
【0107】
これに対し、Zrの多すぎる比較例4は比較例1と同様に全ての焼結温度でR2-T17相が確認され、BrおよびHk/Hcjが低下した。
【0108】
(実施例13、14および比較例6)
31.2R-0.95B-0.45Ga-xZr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Fe(0.71≦x≦1.63)の組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点、および、ラウリン酸アミドの添加量を0.10wt%に変更した点以外は実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。
【0109】
実施例13および14は実施例1~3と同様に磁気特性が良好であり、最適焼結温度幅も良好であった。さらに、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R2-T17相は確認されなかった。また、Zr-B相13およびZr-C相14はR2-T14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。R-O-C-N相12およびR6-T13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、Zr-B相13の長辺の平均長さを算出した結果、300nm~500nmの範囲内となった。
【0110】
これに対し、Zrの多すぎる比較例5は比較例1と同様に全ての焼結温度でR2-T17相が確認され、BrおよびHk/Hcjが低下した。また、Zr-C相14は粒界相のみに存在し、R2-T14-B相11からなる主相粒子内部に存在しなかった。
【0111】
(実施例15)
31.2R-0.95B-0.45Ga-0.87Zr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Feの組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点、および、粉砕・成型助剤をラウリン酸アミド0.08wt%および窒化ホウ素(BN)0.06wt%に変更した点以外は実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。
【0112】
実施例15は実施例1~3と同様に磁気特性が良好であり、最適焼結温度幅も良好であった。さらに、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R2-T17相は確認されなかった。また、Zr-B相13はR2-T14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していたがZr-C相14は粒界相のみに存在し、R2-T14-B相11からなる主相粒子内部に存在しなかった。R-O-C-N相12およびR6-T13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、Zr-B相13の長辺の平均長さを算出した結果、300nm~500nmの範囲内となった。
【0113】
(比較例6~9)
31.2R-0.98B-0.45Ga-0.20Zr-yTi-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Fe(0.38≦y≦0.85)の組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点、および、ラウリン酸アミドの添加量を0.10wt%に変更した点以外は実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。なお、比較例7についてはSEM観察結果も
図6に記載した。
【0114】
Zrの少なすぎる比較例6~9はZr-B相13およびZr-C相14の存在が確認されず、その代わりにTi-B相21およびTi-C相22の存在が確認された。Ti-B相21およびTi-C相22はR
2-T
14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。また、比較例7についてTi-B相21の長辺の平均長さを算出した結果、203nmとなった。また、その他の比較例についてもTi-B相の長辺の平均長さは比較例7と同程度となり、300nmを下回る結果となった。また、
図5と
図6とを比較して見ても明らかなようにTi-B相21およびTi-C相22はZr-B相13およびZr-C相14と比較して小さい。
【0115】
また、Tiの量が多い比較例9では、全ての焼結温度でR2-T17相の存在が確認され、BrおよびHk/Hcjが低い結果となった。
【0116】
比較例6~8は磁気特性が良好であった。しかし、最適焼結温度幅が10℃と狭く、異常粒成長が発生し易い結果となった。
【0117】
特に比較例6~8で実施例と比較して異常粒成長が発生しやすくなったのは、Ti-B相21およびTi-C相22が実施例のZr-B相13およびZr-C相14と比較して微細であり、かつ、粒界での存在量が少なかったためであると考えられる。Ti-B相21およびTi-C相22のサイズが小さいことで異常粒成長の発生を抑制する効果が小さくなってしまったと考えられる。
【0118】
(比較例10~12)
31.2R-0.83B-0.45Ga-xZr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Fe(0.20≦x≦1.00)の組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点以外は、実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。なお、比較例10のSEM観察結果を
図7に示した。
【0119】
Bの少なすぎる比較例10~12はZr-B相13の存在が確認されなかった。また、比較例10は
図7にも示されるようにZr-C相14が粒界のみに存在していた。さらに、Zrが多すぎる比較例12はR
2-T
17相の存在が確認された。
【0120】
比較例10は全ての焼結温度で異常粒成長が発生し、角型比Hk/Hcjが低下した。また、比較例11は磁気特性が良好であった。しかし、最適焼結温度幅が10℃と狭く、異常粒成長が発生し易い結果となった。比較例12は全ての焼結温度でR2-T17相が存在する為、角型比Hk/Hcjが低い結果となった。
【0121】
(比較例13)
31.2R-1.01B-0.45Ga-1.22Zr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Feの組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点、および、粉砕・成型助剤を窒化ホウ素(BN)0.12wt%に変更した点以外は実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。
【0122】
Bの含有量が多すぎる比較例13では、Zr-C相は粒界のみに存在していた。全ての焼結温度で異常粒成長は見られなかったが、BrおよびHk/Hcjが低い結果となった。比較例13では、Bの含有量が過剰であるためにZr-B相が過剰に生成された。そして、Zr-B相が過剰に生成されたために主相体積率が減少した。さらに、比較例13では固体潤滑剤として窒化ホウ素(BN)のみを使用している。上記の主相体積率の減少および固体潤滑剤としての窒化ホウ素(BN)のみの使用のため、配向度が低下した。配向度が低下した結果、BrおよびHk/Hcjが低下したものと考えられる。
【0123】
(実施例16および17)
zR-0.95B-0.45Ga-1.02Zr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Fe(31.6≦z≦32.1)であり、RとしてDyを0.5~1.0wt%含有する組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点以外は、実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。
【0124】
実施例16および17は実施例1~3と同様に磁気特性が良好であり、最適焼結温度幅も良好であった。さらに、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R2-T17相は確認されなかった。また、Zr-B相13およびZr-C相14はR2-T14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。R-O-C-N相12およびR6-T13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、Zr-B相13の長辺の平均長さを算出した結果、300nm~500nmの範囲内となった。
【0125】
(実施例18~25、比較例14)
31.2R-αB-0.45Ga-βZr-2Co-0.3Cu-0.37Al-bal.Fe(0.94≦α≦1.05、1.02≦β≦2.04)である組成を有する原料合金が得られるように、各元素を含む原料を秤量した点、および、各焼結体におけるCの含有量が表1に記載の値となるようにラウリン酸アミドの添加量を制御した点以外は実施例1~3および比較例1と同様にして焼結体を作製し、各種測定を行った。結果を表1および表2に示す。
【0126】
Cの含有量以外がほぼ同条件である実施例18~22は全てZrの含有量が上記(1)式を満たし、Cの含有量が上記(2)式を満たす。実施例18~22は実施例1~3と同様に磁気特性が良好であり、最適焼結温度幅も良好であった。さらに、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R2-T17相は確認されなかった。また、Zr-B相13およびZr-C相14はR2-T14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。R-O-C-N相12およびR6-T13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、Zr-B相13の長辺の平均長さを算出した結果、300nm~500nmの範囲内となった。
【0127】
Zrの含有量以外がほぼ同条件である実施例23~25は、全てZrの含有量が上記(1)式を満たし、Cの含有量が上記(2)式を満たす。実施例23~25は、実施例1~3と同様に磁気特性が良好であり、最適焼結温度幅も良好であった。さらに、R2-T14-B相11、R-O-C-N相12、Zr-B相13、Zr-C相14、R6-T13-Ga相15およびRリッチ相16の存在が確認できた。一方、R2-T17相は確認されなかった。また、Zr-B相13およびZr-C相14はR2-T14-B相11からなる主相粒子内部および主相粒子間に存在する粒界の両方に存在していた。R-O-C-N相12およびR6-T13-Ga相15は粒界のみに存在していた。さらに、Zr-B相13の長辺の平均長さを算出した結果、300nm~500nmの範囲内となった。
【0128】
これに対し、Zrの含有量が多すぎて上記(1)式および上記(2)式を満たさない比較例14はR2-T17相が確認された。そして、全ての焼結温度でBrおよびHk/Hcjが低下した。
【0129】
実施例26~31は実施例1について主にGaの含有量を変化させた実施例である。Gaの含有量を本発明の範囲内で変化させても最適焼結温度幅が広く、良好な特性となることが確認された。
【0130】
【0131】
【符号の説明】
【0132】
1…減磁カーブ
2…(減磁カーブの)外側領域
3…(減磁カーブの)内側領域
11…R2-T14-B相
12…R-O-C-N相
13…Zr-B相
14…Zr-C相
15…R6-T13-Ga相
16…Rリッチ相
21…Ti-B相
22…Ti-C相