(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】回転連結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 1/025 20060101AFI20220105BHJP
B60N 2/235 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A47C1/025
B60N2/235
(21)【出願番号】P 2018099025
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 拓真
(72)【発明者】
【氏名】猪股 祐介
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-116352(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009201(US,A1)
【文献】特開2004-187867(JP,A)
【文献】特開2012-061096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/025
B60N 2/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の第1プレート、及び前記第1プレートの外縁部から当該第1プレートと直交する方向に延出した第1フランジ部を有する皿状の第1部材と、
前記第1プレートと空間を隔てて対向配置された円盤状の第2プレート、及び当該第2プレートの外縁部全周から前記第1プレート側に延出した第2フランジ部を有する皿状の第2部材と、
前記第2フランジ部と前記第2プレートとの境界部のうち、当該境界部を挟んで前記空間と反対側に設けられたテーパ部であって、径方向外側に近づくほど前記第1プレートに近づくように傾斜したテーパ部と、
前記第2プレートが前記第1プレートから離間することを規制する外周リングであって、環状のリング本体、前記リング本体から径方向内側に延出した第1リングフランジ部、及び前記リング本体から径方向内側に延出した第2リングフランジ部を有する外周リングとを備え、
前記第1リングフランジ部は、前記第1部材に外側から接触可能な部位であり、
前記第2リングフランジ部の延出方向中間部には、前記第1プレート側に向けて凸となるように屈曲した屈曲部が設けられている回転連結体
の製造方法において、
前記第1リングフランジ部、及び前記屈曲部が形成されていない前記外周リングをカシメ前リングとしたとき、
前記第1部材と前記第2部材とを接触させた状態で前記カシメ前リングを装着し、当該装着されたカシメ前リングに塑性加工を施して前記第1リングフランジ部を成形した後、
前記屈曲部が形成されていない前記第2リングフランジ部の先端を押圧用金型にて前記テーパ部に押し付けて当該第2リングフランジ部を塑性変形させて前記屈曲部を成形する
回転連結体の製造方法。
【請求項2】
シートバックをシートクッションに対して揺動可能に連結するための回転連結体において、
円盤状の第1プレート、及び前記第1プレートの外縁部から当該第1プレートと直交する方向に延出した第1フランジ部を有する皿状の第1部材であって、前記シートクッションに対して固定される第1部材と、
前記第1プレートと空間を隔てて対向配置された円盤状の第2プレート、及び当該第2プレートの外縁部全周から前記第1プレート側に延出した第2フランジ部を有する皿状の第2部材であって、前記シートバックに対して固定される第2部材と、
前記第2フランジ部と前記第2プレートとの境界部のうち、当該境界部を挟んで前記空間と反対側に設けられたテーパ部であって、径方向外側に近づくほど前記第1プレートに近づくように傾斜したテーパ部と、
前記第2プレートが前記第1プレートから離間することを規制する外周リングであって、環状のリング本体、前記リング本体から径方向内側に延出した第1リングフランジ部、及び前記リング本体から径方向内側に延出した第2リングフランジ部を有する外周リングとを備え、
前記第1リングフランジ部は、前記空間と反対側から前記第1部材に接触可能な部位であり、
前記第2リングフランジ部の延出方向中間部には、前記第1プレート側に向けて凸となるように屈曲した屈曲部が設けられている回転連結体
の製造方法において、
前記第1リングフランジ部、及び前記屈曲部が形成されていない前記外周リングをカシメ前リングとしたとき、
前記第1部材と前記第2部材とを接触させた状態で前記カシメ前リングを装着し、当該装着されたカシメ前リングに塑性加工を施して前記第1リングフランジ部を成形した後、
前記屈曲部が形成されていない前記第2リングフランジ部の先端を押圧用金型にて前記テーパ部に押し付けて当該第2リングフランジ部を塑性変形させて前記屈曲部を成形する
回転連結体の製造方法。
【請求項3】
前記屈曲部の頂部は、前記テーパ部の外縁より径方向外側に位置している請求項1又は2に記載の回転連結体
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リクライナ等の回転連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
リクライナは、例えば、特許文献1に記載されているように、クッションフレームに対して固定される皿状のガイド部材、及びバックフレームに対して固定される皿状のラチェット等を少なくとも備え、バックフレームをクッションフレームに対して回転可能に連結する。
【0003】
ラチェットの外周に設けられた突条のフランジ部には、ポールに設けられた凹凸部に噛み合う凹凸部が設けられている。ポールは、フランジ部に対して離接変位可能である。当該ポールは、ガイド部材とラチェットとに挟まれた空間内に収納されている。
【0004】
ガイド部材は、ポールが当該ガイド部材の径方向に変位することを案内し、かつ、当該ポールが円周方向に変位することを規制する。ガイド部材とラチェットとは、外周リングにより連結されている。
【0005】
外周リングは、ガイド部材がラチェットに対して相対的に回転することを許容した状態で、当該ガイド部材がラチェットから離間することを規制する。外周リングは、環状のリング本体、第1リングフランジ部及び第2リングフランジ部を有し、断面形状が概ねU字状又はコの字状に構成されている。
【0006】
具体的には、第1リングフランジ部及び第2リングフランジ部は、環状のリング本体から径方向内側に延出した部位である。第1リングフランジ部は、外側からガイド部材に接触している。
【0007】
第2リングフランジ部は、外側からラチェットに接触している。外側とは、ガイド部材とラチェットとに挟まれた空間を内側としたとき、当該内側と反対側をいう。つまり、外側とは、回転連結体(リクライナ)外表面側をいう。
【0008】
第1リングフランジ部及び第2リングフランジ部のうちいずれか一方のフランジ部(例えば、第1リングフランジ部)は、通常、ガイド部材がラチェットに対して組み付けられた後に、カシメ加工等の塑性加工により成形される。
【0009】
具体的には、当該カシメ加工が施される前、つまり第1リングフランジ部が成形される前の外周リングは、リング本体及び第2リングフランジ部を有し、断面形状が概ねL字状に構成されている。
【0010】
そして、ラチェットの外表面に第2リングフランジ部が接触した状態で、リング本体のガイド部材側が絞られるようなカシメ加工が当該リング本体に施されることにより、第1リングフランジ部がリング本体に一体成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ラチェットは、ガイド部材に対して回転可能である必要がある。そして、第1リングフランジ部とガイド部材との接触面圧、及び第2リングフランジ部とラチェットとの接触面圧のうち少なくとも一方の接触面圧が過度に大きい場合には、ラチェットがガイド部材に対して回転し難くなる、という問題が発生するおそれがある。
【0013】
第1リングフランジ部とガイド部材とが接触しておらず、第1リングフランジ部とガイド部材との間に大きな隙間が存在する状態、及び第2リングフランジ部とラチェットとが接触しておらず、第2リングフランジ部とラチェットとの間に大きな隙間が存在する状態のうち少なくとも一方の状態が発生すると、ラチェットがガイド部材に対して回転したときに、ラチェットがガイド部材に衝突して異音が発生する、という問題が発生するおそれがある。
【0014】
本開示は、上記点に鑑み、上記2の問題のうち少なくとも1つの問題を解決可能な回転連結体の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
回転連結体は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、
円盤状の第1プレート(11)、及び第1プレート(11)の外縁部から当該第1プレート(11)と直交する方向に延出した第1フランジ部(12)を有する皿状の第1部材(10)と、
第1プレート(11)と空間(A1)を隔てて対向配置された円盤状の第2プレート(21)、及び当該第2プレート(21)の外縁部全周から第1プレート(11)側に延出した第2フランジ部(22)を有する皿状の第2部材(20)と、
第2フランジ部(22)と第2プレート(21)との境界部のうち、当該境界部を挟んで空間(A1)と反対側に設けられたテーパ部(23)であって、径方向外側に近づくほど第1プレート(11)に近づくように傾斜したテーパ部(23)と、
第2プレート(21)が第1プレート(11)から離間することを規制する外周リング(30)であって、環状のリング本体(31)、リング本体(31)から径方向内側に延出した第1リングフランジ部(32)、及びリング本体(31)から径方向内側に延出した第2リングフランジ部(33)を有する外周リング(30)とを備え、
第1リングフランジ部(32)は、外側から第1部材(10)に接触可能な部位であり、第2リングフランジ部(33)の延出方向中間部には、第1プレート(11)側に向けて凸となるように屈曲した屈曲部(25)が設けられていることである。
【0016】
これにより、第1部材(10)及び第2部材(20)は、第1リングフランジ部(32)と第2リングフランジ部(33)の屈曲部(25)とにより挟まれた構成となる。
そして、当該回転連結体を製造する者(以下、製造者)は、屈曲部(25)が成形されていない第2リングフランジ部(33)を押圧用金型(Pm)にてテーパ部(23)に押し当てるような塑性加工(プレス加工)を施すことにより、当該第2リングフランジ部(33)の一部を塑性変形させて屈曲部(25)を成形することができる。
【0017】
このため、屈曲部(25)の頂部(25A)よりリング本体(31)側の部位は、当該屈曲部(25)を成形する際のスプリングバック現象によって、テーパ部(23)から僅かに離間する向きに戻る。屈曲部(25)の頂部(25A)より先端側の部位は、当該屈曲部(25)を成形する際のスプリングバック現象によってテーパ部(23)に近接する向きに戻る。
【0018】
したがって、第1部材(10)と第2部材(20)との接触面圧が過度に大きくなることが抑制されるとともに、第1部材(10)と第2部材(20)との間に大きな隙間が発生することが抑制される。延いては、上記2の問題のうち少なくとも1つの問題が解決され得る。
【0019】
なお、シートバックをシートクッションに対して揺動可能に連結するための回転連結体においては、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えていてもよい。
すなわち、当該構成要件は、
円盤状の第1プレート(11)、及び第1プレート(11)の外縁部から当該第1プレート(11)と直交する方向に延出した第1フランジ部(12)を有する皿状の第1部材(10)であって、シートクッションに対して固定される第1部材(10)と、
第1プレート(11)と空間(A1)を隔てて対向配置された円盤状の第2プレート(21)、及び当該第2プレート(21)の外縁部全周から第1プレート(11)側に延出した第2フランジ部(22)を有する皿状の第2部材(20)であって、シートバックに対して固定される第2部材(20)と、
第2フランジ部(22)と第2プレート(21)との境界部のうち、当該境界部を挟んで空間(A1)と反対側に設けられたテーパ部(23)であって、径方向外側に近づくほど第1プレート(11)に近づくように傾斜したテーパ部(23)と、
第2プレート(21)が第1プレート(11)から離間することを規制する外周リング(30)であって、環状のリング本体(31)、リング本体(31)から径方向内側に延出した第1リングフランジ部(32)、及びリング本体(31)から径方向内側に延出した第2リングフランジ部(33)を有する外周リング(30)とを備え、
第1リングフランジ部(32)は、空間(A1)と反対側から第1部材(10)に接触可能な部位であり、第2リングフランジ部(33)の延出方向中間部には、第1プレート(11)側に向けて凸となるように屈曲した屈曲部(25)が設けられていることである。
【0020】
これにより、第1部材(10)と第2部材(20)との接触面圧が過度に大きくなることが抑制されるとともに、第1部材(10)と第2部材(20)との間に大きな隙間が発生することが抑制される。延いては、上記2の問題のうち少なくとも1つの問題が解決され得る。
【0021】
当該回転連結体は、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えていてもよい。
屈曲部(25)の頂部(25A)は、テーパ部(23)の外縁(23A)より径方向外側に位置していることが望ましい。これにより、上記2の問題のうち少なくとも1つの問題が確実に解決され得る。
【0022】
上記回転連結体の製造方法においては、以下のように製造することが望ましい。
第1リングフランジ部(32)、及び屈曲部(25)が形成されていない外周リング(30)をカシメ前リング(30A)としたとき、第1部材(10)と第2部材(20)とを接触させた状態でカシメ前リング(30A)を装着し、当該装着されたカシメ前リング(30A)に塑性加工を施して第1リングフランジ部(32)を成形した後、屈曲部(25)が形成されていない第2リングフランジ部(33)の先端(33A)を押圧用金型(Pm)にてテーパ部(23)に押し付けて当該第2リングフランジ部(33)を塑性変形させて屈曲部(25)を成形することが望ましい。これにより、製造者は、上記回転連結体を製造でき得る。
【0023】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係るリクライナの分解図である。
【
図2】第1実施形態に係るリクライナの構造を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るリクライナの構造を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るリクライナの製造方法を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係るリクライナの製造方法を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るリクライナの製造方法を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係るリクライナの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0026】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0027】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係る回転連結体(以下、リクライナともいう。)が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載されたものである。
【0028】
したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。
【0029】
(第1実施形態)
1.リクライナの概要
リクライナ1は、例えば、
図1に示されるように、ガイド部材10、ラチェット20、外周リング30及びポール41~43等を少なくとも備える。つまり、リクライナ1の概略構成は、特許文献1に記載の発明と同じである。
【0030】
<ガイド部材>
ガイド部材10は、第1部材の一例であって、クッションフレーム(図示せず。)に対して固定される部材である。クッションフレームはシートクッションの骨格を構成する部材である。シートクッションは、着席者の臀部を支持する部位である。
【0031】
ガイド部材10は、
図2に示されるように、円盤状の第1プレート11及び第1フランジ部12を有する皿状の部材である。第1フランジ部12は、第1プレート11の外縁部から当該第1プレート11と直交する方向に延出し突条である。
【0032】
第1フランジ部12は、金属板にプレス加工等の塑性加工が施されて第1プレート11と共に一体成形されている。なお、第1プレート11の外縁部であって、第1フランジ部12に対応する部位には、当該第1フランジ部12側に陥没した段付き部13が形成されている。
【0033】
<ラチェット>
ラチェット20は、第2部材の一例であって、バックフレーム(図示せず。)に対して固定される部材である。バックフレームはシートバックの骨格を構成する部材である。シートバックは、着席者の背部を支持する部位である。
【0034】
ラチェット20は、円盤状の第2プレート21及び第2フランジ部22を有する皿状の部材である。第2プレート21は、第1プレート11と空間A1を隔てて対向配置された部位である。
【0035】
第2フランジ部22は、
図1に示されるように、第2プレート21の外縁部全周から第1プレート11側に延出した突条である。第2フランジ部22は、金属板にプレス加工等の塑性加工が施されて第2プレート21と共に一体成形されている。
【0036】
第2フランジ部22と第2プレート21との境界部には、
図2に示されるように、テーパ部23が設けられている。テーパ部23は、境界部のうち当該境界部を挟んで空間A1と反対側、つまり境界部の外側に設けられている。
【0037】
当該テーパ部23は、ラチェット20の径方向外側に近づくほど第1プレート11に近づくように傾斜した円錐テーパ状の部位である。なお、テーパ部23の外縁23Aとは、テーパ部23のうち最も径方向外側に位置する部位をいう。
【0038】
第2フランジ部22の内周面には、
図1に示されるように、凹凸部41A~43Aに噛み合う凹凸部24が設けられている。凹凸部41A~43Aそれぞれは、ポール41~43それぞれに設けられている。
【0039】
ポール41~43は、ガイド部材10とラチェット20とに挟まれた空間A1内に収納されている。ポール41~43は、第2フランジ部22に対して離接変位可能である。そして、凹凸部41A~43Aが凹凸部24に噛み合った状態では、ガイド部材10はラチェット20に対して回転不可な状態となる。
【0040】
<外周リング及びその他>
外周リング30は、ガイド部材10とラチェット20とを連結する。具体的には、外周リング30は、ガイド部材10がラチェット20に対して相対的に回転することを許容した状態で、当該ガイド部材10がラチェット20から離間することを規制する。
【0041】
ヒンジカム44は、ポール41~43を変位させるための部材である。当該ヒンジカム44は、外部から操作力を受けて回転すると、ポール41~43の凹凸部41A~43Aを凹凸部24から離間させる。
【0042】
当該操作力が消失すると、ポール41~43は、スパイラルばね45の弾性力によって凹凸部41A~43Aが凹凸部24に嵌り込む位置まで変位した後、当該弾性力によって当該位置に保持される。
【0043】
2.外周リングの詳細
2.1 外周リングの構成
外周リング30は、
図3に示されるように、環状のリング本体31、第1リングフランジ部32及び第2リングフランジ部33を有し、ガイド部材10及びラチェット20を挟み込むような略U字状又はコの字状の断面形状に構成されている。
【0044】
具体的には、第1リングフランジ部32及び第2リングフランジ部33は、リング本体31から径方向内側に延出した部位である。「径方向内側に延出」とは、円環状のリング本体31の中心側に向かう向きに延出する意味である。
【0045】
第1リングフランジ部32部は、ガイド部材10の外側において、当該ガイド部材10の外周側(本実施形態では、段付き部13)と対向している。第2リングフランジ部33は、ラチェット20の外側において、当該ラチェット20の外周側(本実施形態では、第2フランジ部22及びテーパ部23)と対向している。
【0046】
なお、第1リングフランジ部32とガイド部材10との隙間、及び第2リングフランジ部33とラチェット20との隙間は、設計中心寸法において1mmに満たない微少な寸法である。
【0047】
このため、第1リングフランジ部32は、ガイド部材10の外側と接触可能である。第2リングフランジ部33部は、ラチェット20と接触可能である。外側とは、ガイド部材10とラチェット20とに挟まれた空間を内側としたとき、当該内側と反対側をいう。
【0048】
第2リングフランジ部33の延出方向中間部には、屈曲部25が設けられている。屈曲部25は、第1プレート11側に向けて凸となるように屈曲した部位である。なお、第2リングフランジ部33の延出方向先端は、テーパ部23に外側から接触可能である。
【0049】
つまり、第2リングフランジ部33の断面形状は、第2フランジ部22側に凸となるように、略L字状又は略「ヘ」の字状に屈曲した形状である。そして、屈曲部25の頂部25Aは、テーパ部23の外縁23Aより径方向外側に位置している。
【0050】
2.1 リクライナ(特に外周リング)の製造方法
リクライナ1を製造する製造者(製造機械及び製造メーカ等の法人も含む。)は、先ず、
図4に示されるように、第1リングフランジ部32及び屈曲部25が形成されていない外周リング30(以下、カシメ前リング30Aという。)をガイド部材10の外周面(第1フランジ部12)側に装着する。
【0051】
そして、製造者は、当該装着されたカシメ前リング30Aにカシメ加工等の塑性加工を施して第1リングフランジ部32を成形する。このとき、リング本体31のガイド部材10側が絞られるようなカシメ加工が当該リング本体に施されるため、第1リングフランジ部32部がリング本体31に一体成形される。
【0052】
次に、製造者は、
図5及び
図6に示されるように、屈曲部25が形成されていない第2リングフランジ部33を、押圧用金型Pmを用いてテーパ部23に押し付けることにより、当該第2リングフランジ部33を塑性変形させて屈曲部25を成形する。
【0053】
すなわち、屈曲部25が形成されていない第2リングフランジ部33がテーパ部23に押し付けられると、当該第2リングフランジ部33は、
図5に示されるように、当該第2リングフランジ部33の根元部(リング本体31)側を起点として屈曲し、当該第2リングフランジ部33の先端33Aがテーパ部23に接触する。
【0054】
当該状態においては、第2リングフランジ部33の先端33Aがテーパ部23に接触しているため、当該先端33Aは不動状態である。そして、第2リングフランジ部33が第2フランジ部22側に更に押圧されると、
図6に示されるように、当該先端33Aからリング本体31側にずれた部位を起点として第2リングフランジ部33が座屈するように更に屈曲する。
【0055】
このとき、当該部位が第2フランジ部22に接触するように、第2リングフランジ部33が更に屈曲するため、当該部位を頂部25Aとする屈曲部25が成形される。これにより、第2リングフランジ部33の断面形状は、第2フランジ部22側に凸となるような略L字状又は略「ヘ」の字状に屈曲した形状となるとともに、屈曲部25の頂部25Aがテーパ部23の外縁23Aより径方向外側に形成される。
【0056】
3.本実施形態に係るリクライナ及び製造方法の特徴(
図7参照)
製造者は、屈曲部25が成形されていない第2リングフランジ部33を押圧用金型Pmにてテーパ部23に押し当てるような塑性加工(プレス加工)を施すことにより、当該第2リングフランジ部33の一部を塑性変形させて屈曲部25を成形することができる。
【0057】
このため、屈曲部25の頂部25Aよりリング本体31側の部位33Bは、当該屈曲部25を成形する際のスプリングバック現象によって、テーパ部23及び第2フランジ部22から僅かに離間する向き(矢印SB1参照)に戻る。屈曲部25の頂部25Aより先端側の部位33Cは、当該屈曲部25を成形する際のスプリングバック現象によってテーパ部23に近接する向き(矢印SB2参照)に戻る。
【0058】
すなわち、第2リングフランジ部33がテーパ部23に押し当てられても、リング本体31側の部位33Bのスプリングバック現象により、当該部位33Bは、テーパ部23及び第2フランジ部22から離間する。
【0059】
しかし、先端側の部位33Cは、リング本体31側の部位33Bと反対向きに屈曲しているので、先端側の部位33Cに発生するスプリングバック現象により、第2リングフランジ部33の先端33Aは、テーパ部23に近づく。
【0060】
したがって、製造者は、第2リングフランジ部33とテーパ部23との隙間が微少となるリクライナ1を得ることが可能となる。これにより、ガイド部材10とラチェット20との接触面圧が過度に大きくなることが抑制されるとともに、ガイド部材10とラチェット20との間に大きな隙間が発生することが抑制される。
【0061】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ガイド部材10がクッションフレームに対して固定され、かつ、ラチェット20がバックフレームに対して固定されるリクライナであった。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
すなわち、当該発明は、例えば、ガイド部材10がバックフレームに対して固定され、かつ、ラチェット20がクッションフレームに対して固定されるリクライナであってもよい。
【0063】
上述の実施形態では、第1リングフランジ部32が成形された後、第2リングフランジ部33に屈曲部25が成形される製造方法であった。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではなく、その他の製造方法であってもよい。
【0064】
上述の実施形態では、リクライナ1に回転連結体が適用された例であって。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、当該発明は、その他の回転連結体にも適用可能である。
【0065】
上述の実施形態では、乗物用シートに回転連結体を適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されるものではなく、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0066】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態に示された発明の構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0067】
1… リクライナ 10… ガイド部材 11… 第1プレート
12… 第1フランジ部 20… ラチェット 21… 第2プレート
22… 第2フランジ部 23… テーパ部 25… 屈曲部
30… 外周リング 31… リング本体 32… 第1リングフランジ部
33… 第2リングフランジ部