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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】光散乱検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20220105BHJP
   G01N 15/00 20060101ALI20220105BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01N21/01 B
G01N15/00 A
G01N21/47 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018143411
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020623
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(74)【代理人】
【識別番号】100191190
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 直文
(72)【発明者】
【氏名】山口 亨
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 敦
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151037(JP,A)
【文献】特開昭55-060838(JP,A)
【文献】特開2018-080925(JP,A)
【文献】特開平05-149870(JP,A)
【文献】特開平04-303738(JP,A)
【文献】特開平06-323991(JP,A)
【文献】米国特許第05054919(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 15/00 - G01N 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の微粒子を検出するための光散乱検出装置であって、
液体試料を保持する試料セルと、
前記試料セルにコヒーレント光を照射する光源と、
前記試料セルからの光を検出する検出器と、
前記試料セルの両端部を保持する一対のホルダのうち、少なくとも一方のホルダは二重フランジ構造を有し、
前記二重フランジ構造は、
前記試料セルを受ける第1フランジ部と、
前記試料セルに接続されるチューブを保持し、前記第1フランジ部に対し着脱可能に設けられた第2フランジ部と、
を備える、光散乱検出装置。
【請求項2】
前記試料セルは鉛直方向に沿って配置され、前記一対のホルダのうち、上部ホルダが前記二重フランジ構造に形成されている、請求項1に記載の光散乱検出装置
【請求項3】
前記第1フランジ部は、その下部に封止部材を介して、前記試料セルを保持するボス部を有すると共に、その上部に前記第2フランジ部に保持された前記チューブを収容するチューブ収納凹部を有し、
前記第2フランジ部は、前記第1フランジ部上に着脱可能に接続される、請求項1または請求項2に記載の光散乱検出装置
【請求項4】
前記第2フランジ部は、前記チューブのプローブ部を収容するためのチューブ収納凹部を有する、請求項3に記載の光散乱検出装置
【請求項5】
前記試料セルと前記検出器との間に配置され、前記試料セルから周囲に異なる散乱角を以て散乱する光を集光する結像光学系をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の光散乱検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料を通液する試料セルを保持するためのセルホルダ、および液体試料中に分散している微粒子の分子量や回転半径(サイズ)等を測定するための微粒子検出装置に利用される光散乱検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料中に分散しているタンパク質等の微粒子を分離するための手法として、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)やゲルろ過クロマトグラフィ(GPC)が知られている。近年、クロマトグラフィ検出装置としては、紫外線(UV)吸光度検出装置や示差屈折率検出装置に加え、多角度光散乱(MALS)検出装置が用いられている。MALS検出装置は、測定試料の分子量や粒子径が算出可能であるという特長がある(特許文献1および2参照)。
【0003】
図5は、原点に散乱光発生光源を配置した場合の散乱光放射方向の座標系を示している。図5に示すように、XY面上においてX方向正方向に光が入射し、XY面上における光の進行方向からの散乱角度をθ、XY面上からの角度をφと定義する。
【0004】
次に、図6は、MALS検出装置の基本構成例の平面図を、図7は側面図を示している。図6および図7において、310は試料セル、311は液体試料、320は光源、321は集光レンズ、340はスリット板、350は結像レンズ、360はアパーチャ板、370は検出器である。
【0005】
図6および図7に示すように、円筒体状の試料セル310の内部に液体試料311を通液し、試料セル310および流路中心を通るように光源320から光を照射する。光源としては、通常、可視レーザ光が用いられる。光の進行方向からの角度θが水平面上(XY平面上)の散乱角として定義され、異なる散乱角を検出するように試料セル310および流路中心を通る水平面上(XY平面上)に検出器370が複数配置される。図6は、θ1,θ2の配置角度で検出器370を2個配置した例である。
【0006】
図8は、従来構造のセルホルダの模式図である。図8に示すように、試料セル310は、下部ホルダ420と上部ホルダ430とで固定される。下部ホルダ420および上部ホルダ430の内部には流路470が形成されており、チューブ440と試料セル310の流路312とを接続する。チューブ440は、フィッティング450により、下部ホルダ420および上部ホルダ430に固定される。XY面上での試料セル310の流路312の中心軸と入射光の光軸中心とを一致させるとともに、チューブ440と流路312の中心軸とを一致させために、下部ホルダ420および上記ホルダ430のそれぞれの保持部にはOリング460が装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平07-72068号公報、
【文献】特開2015-111163号公報
【文献】「光散乱法によるタンパク質の絶対分子量と複合体形成の解析」、尾高雅文、生物工学89巻
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
MALS検出装置は、測定を重ねるごとに試料セルの流路内面に試料が付着し、バックグラウンド信号が増加する。バックグラウンド信号の増加量は、検出器配置角度により異なり、低散乱角に配置した検出器ほど顕著である。バックグラウンド信号の増加は、測定精度を低下させる。流路内面に付着した試料の除去は、ブラッシングで洗浄することが効果的である。セルホルダ内の流路内径がφ1.0mm~φ1.5mmと小さいため、セルホルダを介した状態で、内径がφ1.5mm~φ2.0mmのセル流路をブラッシングすることはできない。そのため、ブラッシング洗浄する際には、セルホルダから試料セルを取り外す必要があった。しかし、一旦、試料セルを取り外すと、光学系を再度調整する必要があり、光学系の再度調整に非常に手間が掛かるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、試料セルを取り外すことなく、試料セルの流路内面を良好かつ効率よく洗浄することができるセルホルダ、およびこれを備えた光散乱検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る液体試料中の微粒子を検出するための光散乱検出装置であって、 液体試料を保持する試料セルと、前記試料セルにコヒーレント光を照射する光源と、前記試料セルからの光を検出する検出器と、前記試料セルの両端部を保持する一対のホルダのうち、少なくとも一方のホルダは二重フランジ構造を有し、前記二重フランジ構造は、前記試料セルを受ける第1フランジ部と、前記試料セルに接続されるチューブを保持し、前記第1フランジ部に対し着脱可能に設けられた第2フランジ部と、を備える、光散乱検出装置。
【0011】
上記光散乱検出装置の構成において、上記試料セルは鉛直方向に沿って配置され、上記一対のホルダのうち、上部ホルダが上記二重フランジ構造に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記第1フランジ部は、その下部に封止部材を介して、前記試料セルを保持するボス部を有すると共に、その上部に前記第2フランジ部に保持された前記チューブを収容するチューブ収納凹部を有し、前記第2フランジ部は、前記第1フランジ部上に着脱可能に接続されることが好ましい。
【0013】
さらに、上記第2フランジ部は、上記チューブのプローブ部を収容するためのチューブ収納凹部を有することが好ましい。
【0014】
また、前記試料セルと前記検出器との間に配置され、前記試料セルから周囲に異なる散乱角を以て散乱する光を集光する結像光学系をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、試料セルを取り外すことなく、試料セルの流路内面を良好かつ効率よく洗浄することができるセルホルダ、およびこれを備えた光散乱検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る光散乱検出装置の側面図である。
図2】本実施形態に係るセルホルダの組立状態の模式図である。
図3】本実施形態に係るセルホルダの分解状態の模式図である。
図4】本実施形態において、試料セルの流路内面の洗浄前後の状態の説明図である。
図5】原点に散乱光発生光源を配置した場合の散乱光放射方向の座標系である。
図6】MALS検出装置の基本構成例の平面図である。
図7】MALS検出装置の基本構成例の側面図である。
図8】従来構造のセルホルダの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るセルホルダおよび光散乱検出装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0018】
〔光散乱検出装置の構成〕
まず、図1を参照して、本実施形態に係るセルホルダを組み込む光散乱検出装置について説明する。図1は、本実施形態に係る光散乱検出装置の側面図である。図1に示すように、本実施形態に係る光散乱検出装置1は、液体試料中に分散しているタンパク質等の微粒子の分子量や回転半径(サイズ)を検出する装置である。光散乱検出装置1は、試料セル10、光源20、スリット板40、結像光学系50、アパーチャ板60および検出器70を備える。以下、各構成要素ごとに説明する。
【0019】
試料セル10は、内部の流路に液体試料を保持する透明な円筒体状のセルである。試料セル10は、例えば、無色透明な石英ガラスによって形成されている。この試料セル10は、後述する本実施形態のセルホルダ100によって保持されている。
【0020】
光源20は、試料セル10にコヒーレント光を照射する。「コヒーレント光」とは、光束内の任意の2点における光波の位相関係が時間的に不変で一定に保たれており、任意の方法で光束を分割した後、大きな光路差を与えて再び重ね合わせても完全な干渉性を示す光をいう。光源20としては、例えば、可視光レーザを照射するためのレーザ光源が採用される。自然界には完全なコヒーレント光は存在せず、シングルモードで発振するレーザ光はコヒーレント状態に近い光である。
【0021】
光源20から試料セル10に至る入射光の光路L1には、集光光学系21が配置されている。集光光学系21としては、例えば、単一の集光レンズが採用されている。この集光レンズは、平凸レンズであり、光源20からの光の入射側が凸面で、出射側が平面に形成されている。本実施形態では、集光光学系21として、単一の集光レンズを採用しているが、集光光学系21は複数の複合レンズや集光ミラーを組み合わせて構成してもよい。
【0022】
光源20および集光光学系21は、光源20から試料セル10に入射するコヒーレント光の光軸が、試料セル10及び検出器70を含む平面(XY平面)から所定の角度(チルト角度α)で傾斜するように配置されている。具体的には、試料セル10に対して入射光が斜め上方から入射するように、光源20および集光光学系21が配置されている。試料セル10に対して入射光をチルト(角度α)させることによって、試料セル10のガラスと空気との界面及びガラスと流路との界面(以下、「セル界面」と総称する。)での反射光による迷光を低減させることができる。光源20から照射されたレーザ光は、集光光学系21を通過した後、試料セル10の中心軸付近に集光する。
【0023】
試料セル10からの出射光の光路L2上には、検出光学系30が配置されている。本実施形態の検出光学系30は、スリット板40、結像光学系50、アパーチャ板60および検出器70から構成されている。
【0024】
結像光学系50は、試料セル10から周囲に異なる散乱角を以て散乱する光を集光する。結像光学系50としては、例えば、単一の結像レンズが採用されている。この結像レンズは、平凸レンズであり、試料セル10からの散乱光の入射側が平面で、出射側が凸面に形成されている。本実施形態では、結像光学系50として、単一の結像レンズを採用したが、結像光学系50は複数の複合レンズや結像ミラーを組み合わせて構成してもよい。
【0025】
スリット板40は、試料セル10からの出射光の光路L2上において、試料セル10と結像光学系50との間に配置されている。スリット板40は、結像光学系50に入射する散乱角範囲を制限する。すなわち、スリット板40に開口されたスリット41は、水平方向の散乱角を制限し、且つ、鉛直方向の光束を多く取り込むために、鉛直方向に縦長であって、少なくとも鉛直方向に沿った辺が直状である。具体的には、スリット41は、鉛直方向に縦長の長方形状や長孔形状を呈している。
【0026】
アパーチャ板60は、試料セル10からの出射光の光路L2上において、検出器70よりも結像光学系側に配置されている。アパーチャ板60は、その開口部61の開口幅で迷光を制限する機能を有する。アパーチャ板60の開口部61は、検出器70の受光面前で開口している。
【0027】
検出器70は、結像光学系50からの集光を受光する。すなわち、結像光学系50の焦点に、検出器70の受光面が位置している。本実施形態の検出器70としては、例えば、フォトダイオード(PD)を採用しているが、2次元CMOS等のアレイ検出器を採用してもよい。
【0028】
〔セルホルダの構成〕
次に、図2を参照して、本実施形態に係るセルホルダ100の構成について説明する。図2は、本実施形態に係るセルホルダの組立状態の模式図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係るセルホルダ100は、光散乱検出装置1の試料セル10を保持するための装置である。本実施形態に係るセルホルダ100は、一対のホルダ110、210、第1フランジ部120、第2フランジ部130および第3フランジ部220を備える。以下、各構成要素ごとに説明する。
【0030】
一対のホルダ110、210は、試料セル10の両端部を保持する。本実施形態の試料セル10は、内部の流路12に液体試料を保持する透明な円筒体状のセルである。この試料セル10は、鉛直方向に沿って配置される。したがって、本実施形態に係るセルホルダ1は、試料セル10の下端部を保持する下部ホルダ210と、試料セル10の上端部を保持する上部ホルダ110と、の一対を備える。
【0031】
下部ホルダ210は、例えば、ステンレス鋼等の金属により形成されている。第3フランジ部220は、径方向外方に張り出したリング状張出部であって、下ボス部230および上ボス部240が一体形成されている。第3フランジ部220には、その周方向に沿って等間隔に複数のボルト挿通孔221が穿孔されている。
【0032】
下ボス部230には、チューブ収納凹部231およびフィッティング装着凹部232が上下に形成されている。フィッティング装着凹部232は、チューブ収納凹部231よりも内径が拡径して形成されている。チューブ収納凹部231およびフィッティング装着凹部232は、それぞれの鉛直方向の中心軸が一致しており、連通している。チューブ収納凹部231内には、フィッティングFを介して、チューブTのプローブ部Pが装着される。チューブ収納凹部231内にチューブTのプローブ部Pが装着された状態で、フィッティング装着凹部232内にフィッティングFが装着される。
【0033】
上ボス部240には、試料セル10の下端部を収容するためのセル保持部241が形成されている。セル保持部241は、円柱状の凹部として形成されている。セル保持部241の内径は、試料セル10の外径よりも若干大きく形成されている。セル保持部241の内周壁には、OリングORを装着するためのリング溝242が形成されている。OリングORは、試料セル10の流路12の中心軸と入射光の光軸中心とを一致させるとともに、チューブTと流路12の中心軸とを一致させために、試料セル10を周囲から付勢する。セル保持部241のセル当接面には、チューブ収納凹部231と連通する流路243が形成されている。セル保持部241のセル当接面と試料セル10の下端面との間には、パッキンPKが装着される。
【0034】
第3フランジ部220は、下部架台250に着脱可能に固定される。下部架台250には、円柱状の貫通孔251が開口されている。貫通孔251の周囲には、第3フランジ部220のボルト挿通孔221に対応する部位に雌ねじ部253が形成されている。貫通孔251内に下ボス部230を落とし込み、第3フランジ部220を下部架台250上に配置する。第3フランジ部220のボルト挿通孔221と下部架台250の雌ねじ部253とを位置合わせして、ボルトBを締結することにより、第3フランジ部220が下部架台250上に固定される。
【0035】
他方、上部ホルダ110は、試料セル10を保持する第1フランジ部120と、試料セル10に接続されるチューブTを保持する第2フランジ部130と、の二重フランジ構造140に形成されている。上部ホルダ110は、下部ホルダ210と同様に、例えば、ステンレス鋼等の金属により形成されている。
【0036】
第1フランジ部120は、その中央下部に突き出した試料セル10を保持する第1ボス部121を有する。第1ボス部121の下部には、試料セル10の上端部を保持するためのセル保持部122が形成されている。セル保持部122は、円柱状の凹部であって、試料セル10の外径よりも若干大きな内径に形成されている。セル保持部122の内周壁には、OリングORを装着するためのリング溝123が形成されている。OリングORは、試料セル10の流路12の中心軸と入射光の光軸中心とを一致させるとともに、チューブTと流路12の中心軸とを一致させるために、試料セル10を周囲から付勢する。セル保持部122のセル当接面には、不図示の貫通孔が形成されている。セル保持部122のセル当接面と試料セル10の上端面との間には、パッキンPKが装着される。
【0037】
第1ボス部121の上部には、第2フランジ部130の下部に突き出した第2ボス部131を収容するための凹部125が形成されている。この凹部125の下方部分は縮径され、凹部125とセル保持部122とは、連通している。
【0038】
上述したように、第2フランジ部130の中央下部には第2ボス部131が突き出すように形成されている。第2ボス部131内には、チューブTのプローブ部Pを収容するためのチューブ収納凹部132が形成されている。チューブ収納凹部132の底面には、チューブTを挿通させるための流路133が開口されている。フィッテッングFは、チューブTのプローブ部P上に配置される。
【0039】
第1フランジ部120の外径は、第2フランジ部130の外径よりも大きく設定されている。第1フランジ部120には、その周方向に沿って等間隔に2列のボルト挿通孔127、128が複数穿孔されている。外側のボルト挿通孔128は、上部架台150に第1フランジ部120を着脱可能に固定するための孔である。内側のボルト挿通孔127は、第2フランジ部130を第1フランジ部120に着脱可能に接続するための孔である。
【0040】
第1フランジ部120は、下部架台150に着脱可能に固定される。下部架台150には、円柱状の貫通孔151が開口されている。貫通孔151の周囲には、第1フランジ部120のボルト挿通孔127、128に対応する部位に雌ねじ部153、154が形成されている。貫通孔151内に第1フランジ部120の第1ボス部121を落とし込み、第1フランジ部120を下部架台150上に配置する。第1フランジ部120のボルト挿通孔128と下部架台150の雌ねじ部154とを位置合わせして、ボルトBを締結することにより、第1フランジ部120が下部架台150上に固定される。
【0041】
他方、第2フランジ部130には、その周方向に沿って等間隔に複数のボルト挿通孔135が数形成されている。第2フランジ部130のボルト挿通孔135は、第1フランジ部120内側のボルト挿通孔127に対応する部位に穿孔されている。第2フランジ部130のボルト挿通孔135と、第1フランジ部120内側のボルト挿通孔127と、下部架台150の雌ねじ部153と、を位置合わせして、ボルトBを締結することにより、第2フランジ部130が第1フランジ部120および下部架台150上に固定される。
【0042】
下部ホルダ210、試料セル10、上部ホルダ110、チューブTおよびフィッティングFの組立に際しては、試料セル10の流路12の中心軸と入射光の光軸中心とを一致させるとともに、チューブTと流路12の中心軸とを一致させるように、試料セル10および光学系が芯出し調整される。
【0043】
〔光散乱検出装置およびセルホルダの作用〕
次に、図1から図3を参照して、本実施形態に係る光散乱検出装置1およびセルホルダ100の作用について説明する。図1に示すように、円筒体状の試料セル10の流路12に液体試料が通液される。液体試料の通液が完了すると、光源20から集光光学系21を介してコヒーレント光である可視レーザ光が照射される。可視レーザ光は、光路L1に沿って進むことにより、レーザ光が試料セル10の流路内の液体試料に入射する。液体試料にレーザ光が入射されると、その光は液体試料に含まれる微粒子に当たって所定の散乱角を以て散乱する。そして、試料セル10から出射した散乱光は、スリット板40のスリット41を通過した後、結像光学系50およびアパーチャ板60を経て、検出器70の受光面上に受光される。
【0044】
試料セル10から散乱光が出射する際、試料セル10のセル界面において、反射光が迷光として生じる。結像光学系50の入射側にはスリット板40が設けられているので、スリット板40の板部分で反射光(迷光)を制限することができる。また、アパーチャ板60がさらに迷光を制限するので、分析に必要な散乱光が検出器70の受光面に受光される。
【0045】
光散乱検出装置1は、測定を重ねるごとに試料セル10の流路12の内面に試料が付着し、バックグラウンド信号が増加する。上述したように、流路12の内面に付着した試料の除去は、ブラッシング洗浄することが効果的である。セルホルダ100内の流路133の内径がφ1.0mm~φ1.5mmと小さいため、セルホルダ100を介した状態で、内径がφ1.5mm~φ2.0mmの流路12をブラッシングすることはできない。
【0046】
図2に示すように、本実施形態に係るセルホルダ100は、上部ホルダ110が試料セル10を保持する第1フランジ部120と、試料セル10に接続されるチューブTを保持する第2フランジ部130と、の二重フランジ構造140に構成されている。したがって、試料セル10の流路12の内面をブラッシング洗浄する際には、第2フランジ部130に締結されたボルトBを取り外して、第1フランジ部120から第2フランジ部130を脱離させる。第1フランジ部120の凹部125には、第2フランジ部130の第2ボス部131が収容されている。第2フランジ部130の第2ボス部131内にチューブ収納部135が形成されており、このチューブ収納部135内にはチューブTのプローブ部Pが収容されている。
【0047】
よって、図2および図3に示すように、第1フランジ部120から第2フランジ部130を取り外すと、当該第2フランジ部130とともに、チューブTのプローブ部PおよびフィッティングFを取り外すことができる。
【0048】
図3は、本実施形態に係るセルホルダの分解状態の模式図である。図3に示すように、試料セル10は、下部ホルダ210のセル保持部241と、上部ホルダ110における第1フランジ部120のセル保持部122との間に保持されている。上述したように、第2フランジ部130の第2ボス部131に形成された流路133の内径はφ1.0mm~φ1.5mmであるが、第2ボス部131は第2フランジ部130と一体形成されているので、図3の分解状態では存在しない(図2参照)。
【0049】
よって、第1フランジ部120の凹部125を介して、試料セル10の流路12の内面をブラッシング洗浄することができる。試料セル10をセルホルダ100から取り外さずに、流路12の内面をブラッシング洗浄することができるので、光学系を再度調整し直す必要がない。
【0050】
〔洗浄実験〕
本実施形態の作用効果を確認すべく、洗浄実験を実施した。図4は、本実施形態において、試料セルの流路内面の洗浄前後の状態の説明図である。図4に示すように、本実施形態に係るセルホルダに試料セルを保持したまま図3の状態で、洗浄前と洗浄後の検出器出力(mV)を検出器配置角度(θ)ごとに測定した。30度未満の低配置角度では検出器出力の若干の低下が観られたが、配置角度が30度を超えると検出器出力は洗浄前後で一致しており、高い洗浄効果を確認することができた。このように、セルホルダに試料セルを保持した状態で洗浄状態の確認実験を行うことができる。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態に係るセルホルダ100によれば、試料セルを取り外すことなく、試料セルの流路内面を良好かつ効率よく洗浄することができる。
【0052】
また、当該セルホルダ100を備えた光散乱検出装置1によれば、試料セル10の流路12に付着物が生じてバックグラウンド信号が増加した場合に、上記ホルダ110においてチューブTを保持する第2フランジ部130を取り外すだけで、流路12の内面をブラッシング洗浄することが可能となる。試料セル10の内部は、気密性が担保されている。したがって、溶媒の封入状態でブラッシング洗浄することが可能となり、付着物を除去してバックグラウンド信号を低下させることができる。
【0053】
洗浄時、試料セル10を保持するセルホルダ100は架台150、250に固定されているため、試料セル10の位置が変動することはなく、光学系の調整し直しは不要である。また、光学系の調整が不要であるため、背景光を確認することで洗浄効果を確認することができる。さらに、洗浄時に、洗浄効果が高まる界面活性剤等の溶液を試料セル10の流路12に封入することにより、効率的に洗浄することができる。
【0054】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…光散乱検出装置
10…試料セル
12…流路
20…光源
50…結像光学系
70…検出器
100…セルホルダ
110…上部ホルダ
120…第1フランジ部
121…第1ボス部
130…第2フランジ部
135…チューブ収納凹部
140…二重フランジ構造
210…下部ホルダ
T…チューブ
P…プローブ部
PK…パッキン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8