(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】リレー装置
(51)【国際特許分類】
H01H 1/66 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
H01H1/66
(21)【出願番号】P 2018175491
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】下川 琢也
(72)【発明者】
【氏名】谷水 徹
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-12349(JP,B1)
【文献】特開2014-238917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から隔離された空間を内部に形成する絶縁容器と、
前記絶縁容器に固定される共通電極端子と、
前記絶縁容器内に設けられ、前記共通電極端子の先端部が差し込まれる筒状の可動電極と、
前記絶縁容器に固定され、前記共通電極端子と前記可動電極を介して電気的に接離可能な、第1、第2接点電極端子と、
前記可動電極を駆動させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
前記可動電極を動作させる絶縁棒を備え、
前記絶縁棒は、
前記可動電極に形成された穴を貫通して備えられた、ことを特徴とするリレー装置。
【請求項2】
前記可動電極は、金属板を折り曲げて形成された、ことを特徴とする請求項1に記載のリレー装置。
【請求項3】
外部から隔離された空間を内部に形成する絶縁容器と、
前記絶縁容器に固定される共通電極端子と、
前記絶縁容器内に設けられ、前記共通電極端子に電気的に接続される可動電極と、
前記絶縁容器に固定され、前記共通電極端子と前記可動電極を介して電気的に接離可能な、第1、第2接点電極端子と、
前記可動電極を駆動させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
前記可動電極を動作させる絶縁棒を備え、
前記可動電極は、
前記共通電極端子の上端部に設けられ、前記共通電極端子の端部から当該共通電極端子の軸方向に延在する上側板部と、
前記上側板部の側端部にそれぞれ設けられ、前記上側板部の側端部から下方に延在する一対の側板部と、を備え、
前記上側板部には、前記絶縁棒が貫通して設けられる穴が形成され、
前記側板部のうち、一方の側板部は、前記第1接点電極端子に接離可能に設けられ、他方の側板部は、前記第2接点電極端子に接離可能に設けられた、ことを特徴とするリレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレー装置に関する。例えば、本発明は、高電圧電源ラインを切り替える真空リレー(スイッチ)に関する。
【背景技術】
【0002】
真空リレーは、高電圧、大電流切替回路の小型化と高速スイッチングを実現し、高電圧機器全般、半導体製造装置、各種放電回路等に用いられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
例えば、SPDT構造(Sigle Pole、Double Throw)真空リレーは、NO(ノーマリーオープン)端子と、NC(ノーマリークローズ)端子と、NO端子とNC端子に対し共通の相手端子であるCOM電極端子を備える。NO端子とNC端子の間には可動電極が設けられ、可動電極を介してNO端子とCOM電極端子の間やNC端子とCOM電極端子の間が電気的に接続される。可動電極は、絶縁棒に支持され、絶縁棒の動作に応じて、スイッチの切替えが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁棒および可動電極は、封止された容器内に備えられるため、スイッチの切替え動作に支障がないように、可動電極を絶縁棒に支持することが困難であった。
【0006】
例えば、従来の真空リレーでは、板状の可動電極が、止め輪等の固定部品を用いて絶縁棒に固定されており、可動電極の位置を決めたり固定したりする作業が困難であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、可動電極の取付作業が容易なリレー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のリレー装置の一態様は、
外部から隔離された空間を内部に形成する絶縁容器と、
前記絶縁容器に固定される共通電極端子と、
前記絶縁容器内に設けられ、前記共通電極端子の先端部が差し込まれる筒状の可動電極と、
前記絶縁容器に固定され、前記共通電極端子と前記可動電極を介して電気的に接離可能な、第1、第2接点電極端子と、
前記可動電極を駆動させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
前記可動電極を動作させる絶縁棒を備え、
前記絶縁棒は、
前記可動電極に形成された穴を貫通して備えられた、ことを特徴としている。
【0009】
また、上記目的を達成する本発明のリレー装置の他の態様は、上記リレー装置において、
前記可動電極は、金属板を折り曲げて形成された、ことを特徴としている。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明のリレー装置の他の態様は、
外部から隔離された空間を内部に形成する絶縁容器と、
前記絶縁容器に固定される共通電極端子と、
前記絶縁容器内に設けられ、前記共通電極端子に電気的に接続される可動電極と、
前記絶縁容器に固定され、前記共通電極端子と前記可動電極を介して電気的に接離可能な、第1、第2接点電極端子と、
前記可動電極を駆動させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
前記可動電極を動作させる絶縁棒を備え、
前記可動電極は、
前記共通電極端子の上端部に設けられ、前記共通電極端子の端部から当該共通電極端子の軸方向に延在する上側板部と、
前記上側板部の側端部にそれぞれ設けられ、前記上側板部の側端部から下方に延在する一対の側板部と、を備え、
前記上側板部には、前記絶縁棒が貫通して設けられる穴が形成され、
前記側板部のうち、一方の側板部は、前記第1接点電極端子に接離可能に設けられ、他方の側板部は、前記第2接点電極端子に接離可能に設けられた、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
以上の発明によれば、リレー装置の可動電極の取付作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)本発明の実施形態に係る真空リレーの断面図、(b)
図1(a)に示した真空リレーのA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るリレー装置について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る真空リレー1は、絶縁容器2と、絶縁容器2に固定されるCOM(コモン)電極端子3、A接点電極端子4およびB接点電極端子5と、COM電極端子3に備えられる可動電極6と、可動電極6を動作させる駆動部7と、を備える。
【0015】
絶縁容器2は、例えば、セラミックにより形成される。絶縁容器2は、例えば、円筒状の側壁と、この側壁に連接して一体的に形成された端部と、を有する有底筒状の容器である。絶縁容器2の開口端部には、駆動部7がろう付け等により気密に設けられ、絶縁容器2の内部が真空(例えば、真空度が0.1Pa以下)に封止される。絶縁容器2の内部を真空にすることで、小ギャップで高耐圧を得ることができる。
【0016】
COM電極端子3は、A接点電極端子4とB接点電極端子5に対し共通の相手端子であり、絶縁容器2の側壁を貫通して設けられる。COM電極端子3の絶縁容器2内に突出した端部には、可動電極6が設けられる。
【0017】
A接点電極端子4は、後に詳述するコイル8に電圧がかけられたときに、COM電極端子3に接続される電極端子(N/O:ノーマリーオープン端子)であり、絶縁容器2の側壁を貫通して設けられる。
【0018】
B接点電極端子5は、コイル8に電圧がかけられていないときにCOM電極端子3に接続される電極端子(N/C:ノーマリークローズ端子)であり、絶縁容器2の側壁を貫通して設けられる。
【0019】
可動電極6は、例えば、導電性の板材(例えば、モリブデン板等)を折り曲げて形成される角筒状の部材である。可動電極6を筒状(例えば、正四角筒)とすることで、可動電極6の強度が向上する。可動電極6の一方の開口端部には、COM電極端子3の端部が挿入して設けられ、COM電極端子3と電気的に接続される。また、可動電極6の上下面には、後に詳述する絶縁棒9が貫通する穴が形成され、可動電極6に絶縁棒9が挿通して設けられる。これにより、可動電極6は、COM電極端子3の端部と絶縁棒9によりA接点電極端子4とB接点電極端子5の間を揺動可能に支持される(揺動方向を図中矢印Xで示す)。そして、絶縁棒9の動きに応じて、可動電極6の側壁部分が、A接点電極端子4(または、B接点電極端子5)の先端部に接触して、A接点電極端子4(または、B接点電極端子5)とCOM電極端子3が可動電極6を介して電気的に接続される。
【0020】
駆動部7は、可動電極6を動作させるコイル8と、可動電極6を支持する絶縁棒9と、絶縁棒9を支持する支持板10と、支持板10を押圧するばね11と、を備える。
【0021】
絶縁棒9は、支持板10に立った状態で設けられる。絶縁棒9の一端は、支持板10に固定される。絶縁棒9の他端部は、絶縁容器2内に延在し、可動電極6を貫通して設けられる。
【0022】
支持板10は、駆動部7の絶縁容器2の内側に備えられる。支持板10のB接点電極端子5に近い側の端部は回動可能に支持されており、この支持部を中心として支持板10が駆動部7に対して回動する(回動方向を、図中矢印Yで示す)。また、支持板10とコイル8との間には、ばね11が設けられ、ばね11により支持板10が押圧される。
【0023】
コイル8は、図示省略の電源に接続されており、コイル8に電圧をかけることで、電磁力にて支持板10がコイル8側に引き寄せられる。
【0024】
コイル8に電圧がかけられていない場合、ばね11が支持板10を押圧することで、可動電極6は、一定の接点圧力でB接点電極端子5の先端部に押し付けられる。その結果、可動電極6は、可動電極6の内周面がCOM電極端子3と電気的に接続され、可動電極6外周面がB接点電極端子5と電気的に接続される。これにより、COM電極端子3とB接点電極端子5が可動電極6を介して電気的に接続される。
【0025】
また、コイル8に電圧をかけた場合、電磁力にて支持板10がコイル8側に引き寄せられ、可動電極6は、一定の接点圧力でA接点電極端子4の先端部に押し付けられる。その結果、可動電極6は、可動電極6の内周面がCOM電極端子3と電気的に接続され、可動電極6の外周面がA接点電極端子4と電気的に接続される。これにより、COM電極端子3とA接点電極端子4が可動電極6を介して電気的に接続される。
【0026】
以上のような、本発明の実施形態に係る真空リレー1によれば、COM電極端子3の先端部を可動電極6内に差し込むことで、可動電極6をCOM電極端子3の上に載せて、可動電極6の位置(COM電極端子3、A接点電極端子4およびB接点電極端子5を含む平面に対する垂直方向の位置)を固定することができる。これにより、可動電極6の位置出しが容易になり、可動電極6の取付作業が容易となる。
【0027】
すなわち、COM電極端子3の端部に筒状の可動電極6を差し込み、可動電極6に絶縁棒9を貫通して備えることで、A接点電極端子4とB接点電極端子5間に可動電極6を容易に備えることができる。
【0028】
従来のリレー装置では、絶縁棒に可動電極を固定する際に、可動電極が絶縁棒の軸方向に移動しないように、可動電極は止め輪等を用いて固定されていた。これに対して、本発明の実施形態に係る真空リレー1では、COM電極端子3の上に可動電極6の内側面が載るように可動電極6をCOM電極端子3に支持することで、可動電極6を絶縁棒9に固定する止め輪が不要となる。止め輪が不要となることで、使用時に止め輪がずれたり、外れたりする懸念がなくなり、真空リレー1の信頼性が向上する。
【0029】
また、可動電極6を金属製の薄板材を折り曲げて製作することで、容易に可動電極6を製造することができる。また、可動電極6を構成する金属の重量を低減することができるので、真空リレー1のコストを低減することができる。
【0030】
また、可動電極6に絶縁棒9を貫通して備えることで、絶縁棒9を揺動させた際に、可動電極6を回転方向(A接点電極端子4とB接点電極端子5の間を往復する方向)に移動させることができる。このとき、絶縁棒9が可動電極6に対して摺動可能に設けられていることで、絶縁棒9に対する可動電極6の相対位置が変化し、円滑にスイッチの切替え動作が行われる。
【0031】
以上、具体的な実施形態を示して本発明のリレー装置について説明したが、本発明のリレー装置は、実施形態に限定されるものではなく、その特徴を損なわない範囲で適宜設計変更が可能であり、設計変更されたものも、本発明の技術的範囲に属する。
【0032】
例えば、実施形態の説明では、真空リレーを例示して説明したが、本発明のリレー装置は、絶縁容器2内に絶縁ガスを封入するリレー装置も含まれる。
【0033】
また、可動電極6は、角筒状に限定されるものではなく、円筒状またはCOM電極端子3の端部が差し込まれる支持部と、A接点電極端子4またはB接点電極端子5のいずれかに接離可能な接触部を備える形状とすることもできる。また、可動電極6は、少なくとも、COM電極端子3の上端部に設けられ、COM電極端子3の端部からCOM電極端子3の軸方向に延在する上側板部と、上側板部の側端部から下方に延在して設けられA接点電極端子4と接離可能な第1側板部と、上側板部の側端部から下方に延在して設けられB接点電極端子5と接離可能な第2側板部と、を備え、上側板部に絶縁棒9が貫通される穴が形成されているものであれば、その形状は、実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
1…真空リレー(リレー装置)
2…絶縁容器
3…COM電極端子(共通電極端子)
4…A接点電極端子(第1接点電極端子)
5…B接点電極端子(第2接点電極端子)
6…可動電極
7…駆動部
8…コイル
9…絶縁棒
10…支持板
11…ばね