(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】仮止め用治具
(51)【国際特許分類】
F16B 5/00 20060101AFI20220105BHJP
F16B 21/00 20060101ALI20220105BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F16B5/00 D
F16B21/00 Z
B60R13/02 A
F16B5/00 E
(21)【出願番号】P 2018191726
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 亮平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕紀
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-059701(JP,U)
【文献】実開昭58-196274(JP,U)
【文献】実開昭55-140360(JP,U)
【文献】特開2004-108047(JP,A)
【文献】特開昭64-028081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00
F16B 21/00
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシート状のワークの仮止めに用いる仮止め用治具であって、
上記複数のワークのそれぞれにそれぞれが設けられた複数の位置決め孔に挿入可能なピンを有する位置決め部材と、
上記複数のワークを上記ピンの軸方向に重ねて挟み込むための挟み込み空間を有する治具本体と、
上記位置決め部材及び上記治具本体を、上記複数のワークが上記複数の位置決め孔に上記ピンが挿入された状態で上記挟み込み空間から外れる第1位置と上記挟み込み空間に導入される第2位置との間で相対移動可能にガイドするガイド部と、
を備える、仮止め用治具。
【請求項2】
上記ガイド部は、上記位置決め部材に設けられたスライド軸部と、上記治具本体に設けられたピン支持部と、によって構成されており、上記ピン支持部には、上記軸方向と直交する水平方向に上記スライド軸部がスライド可能に延びる長穴が設けられている、請求項1に記載の仮止め用治具。
【請求項3】
上記治具本体は、第1プレート部と、上記軸方向について上記第1プレート部と上記挟み込み空間を隔てて対向する第2プレート部と、を有し、上記ピン支持部は、上記第2プレート部を上記第1プレート部よりも上記水平方向に突出させることによって構成されている、請求項2に記載の仮止め用治具。
【請求項4】
上記位置決め部材は、上記第2プレート部に設けられた上記長穴から上記スライド軸部が上記軸方向に抜け出すのを阻止する抜け止め部を有する、請求項3に記載の仮止め用治具。
【請求項5】
上記位置決め部材は、上記ピンの軸周に設けられたストッパを有し、上記ストッパは、上記複数の位置決め孔における上記ピンの挿入停止位置を定め、上記位置決め部材及び上記治具本体が上記第2位置にあるときに上記複数のワークとともに上記第1プレート部と上記第2プレート部とで挟み込まれるように構成されている、請求項3または4に記載の仮止め用治具。
【請求項6】
上記治具本体の上記第1プレート部は、上記位置決め部材及び上記治具本体が上記第2位置にあるときに上記ピンに係合する係合凹部を有する、請求項3~5のいずれか一項に記載の仮止め用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシート状のワークを仮止めする仮止め用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、車両の天井内装ユニットにおいて、天井パネルに取付けられるルーフライニングが開示されている。このルーフライニングは、樹脂材料からなるシート状のルーフライニング部の複数によって構成されている。
【0003】
従来、ルーフライニングを構成する複数のルーフライニング部を、以下の手順にしたがって固定する方法が知られている。この方法において、複数のルーフライニング部は、互いに位置決めされ、それぞれの縁部を厚み方向に重ねて仮止めされた後に、縁部同士がタッカー等の固定工具を使用して固定される。仮止めには、複数のルーフライニング部のそれぞれに設けられた位置決め孔に挿入される位置決め用のピンと、バネの弾性力を利用して縁部同士を挟み込むクリップなどの留め具と、が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法は、ルーフライニング部のようなシート状のワークの複数を位置決めして仮止めするのに有効であるが、ユーザは位置決め用のピンと留め具を個別に操作する作業が必要であり面倒である。とりわけ、複数のワークの仮止め箇所が増えると、同様の一連の作業を繰り返し行う必要があり作業負担が高くなる。そこで、このような問題に対処できる仮止め用治具の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、複数のシート状のワークの仮止め時の作業負担を軽減できる仮止め用治具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
複数のシート状のワークの仮止めに用いる仮止め用治具であって、
上記複数のワークのそれぞれにそれぞれが設けられた複数の位置決め孔に挿入可能なピンを有する位置決め部材と、
上記複数のワークを上記ピンの軸方向に重ねて挟み込むための挟み込み空間を有する治具本体と、
上記位置決め部材及び上記治具本体を、上記複数のワークが上記複数の位置決め孔に上記ピンが挿入された状態で上記挟み込み空間から外れる第1位置と上記挟み込み空間に導入される第2位置との間で相対移動可能にガイドするガイド部と、
を備える、仮止め用治具、
にある。
【発明の効果】
【0008】
上記の仮止め用治具によれば、位置決め部材及び治具本体がガイド部によって第1位置に配置されているときに、複数のワークの複数の位置決め孔に位置決め部材のピンを挿入することができる。これにより、複数のワークを互いに位置決めする位置決め操作が可能になる。このとき、ピンの軸方向と交差する方向について複数のワークの動きを規制できる。
【0009】
そして、この仮止め用治具において、位置決め部材及び治具本体をガイド部によって定められた第1位置から第2位置にガイドすることで、複数のワークは、複数の位置決め孔に位置決め部材のピンが挿入された状態で治具本体の挟み込み空間に導入される。これにより、複数のワークを治具本体の挟み込み空間で軸方向に重ねて挟み込む挟み込み操作が可能になる。このとき、ピンの軸方向と交差する方向に加えてピンの軸方向についても複数のワークの動きを規制できる。
【0010】
上述のように、仮止め用治具を使用して位置決め操作に引き続いて挟み込み操作を行うことにより、複数のワークを仮止めできる。このとき、位置決め部材のピンを複数のワークの複数の位置決め孔に挿入した後は、位置決め部材及び治具本体を第1位置から第2位置まで相対移動させるのみで複数のワークを挟み込むことができ、このときの挟み込み操作が簡単になる。
【0011】
なお、仮止めされた複数のワークは、必要に応じて固定工具を使用して固定される。その後、位置決め部材及び治具本体をガイド部によって第2位置から第1位置へとガイドし、さらに位置決め部材のピンを複数のワークの複数の位置決め孔から抜き出すことによって、複数のワークから仮止め用治具を取り外すことができる。
【0012】
以上のごとく、上記の態様によれば、複数のシート状のワークの仮止め時の作業負担を軽減できる仮止め用治具を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1の仮止め用治具を位置決め部材及び治具本体が第1位置にあるときの状態にて示す斜視図。
【
図2】
図1の仮止め用治具を矢印A方向から視た側面図。
【
図4】2つのルーフライニングを縁部にて重ねた状態の斜視図。
【
図5】
図1の仮止め用治具を位置決め部材及び治具本体が第2位置にあるときの状態にて示す斜視図。
【
図6】
図5の仮止め用治具を矢印B方向から視た側面図。
【
図7】
図1の仮止め用治具を位置決め部材のピンが2つのルーフライニングの2つの位置決め孔に挿入された状態にて示す斜視図。
【
図9】
図5の仮止め用治具を位置決め部材のピンが2つのルーフライニングの2つの位置決め孔に挿入され且つ2つのルーフライニングの縁部が治具本体の挟み込み空間で挟み込まれた状態にて示す斜視図。
【
図11】実施形態2の仮止め用治具を位置決め部材及び治具本体が第1位置にあるときの状態にて示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0015】
上記の仮止め用治具において、上記ガイド部は、上記位置決め部材に設けられたスライド軸部と、上記治具本体に設けられたピン支持部と、によって構成されており、上記ピン支持部には、上記軸方向と直交する水平方向に上記スライド軸部がスライド可能に延びる長穴が設けられているのが好ましい。
【0016】
この仮止め用治具によれば、位置決め部材のスライド軸部を、治具本体のピン支持部に設けられた長穴にしたがってスライドさせるスライド構造によって、位置決め部材及び治具本体を第1位置と第2位置との間でガイドすることができる。このようなスライド構造は、位置決め部材と治具本体の相対移動量を小さく抑えることによって仮止め用治具を小型化するのに有効である。
【0017】
上記の仮止め用治具において、上記治具本体は、第1プレート部と、上記軸方向について上記第1プレート部と上記挟み込み空間を隔てて対向する第2プレート部と、を有し、上記ピン支持部は、上記第2プレート部を上記第1プレート部よりも上記水平方向に突出させることによって構成されているのが好ましい。
【0018】
この仮止め用治具によれば、第1プレート部と、長穴が設けられた第2プレート部と、を治具本体の主要要素にすることによって、治具本体の構造を簡素化できる。
【0019】
上記の仮止め用治具において、上記位置決め部材は、上記第2プレート部に設けられた上記長穴から上記スライド軸部が上記軸方向に抜け出すのを阻止する抜け止め部を有するのが好ましい。
【0020】
この仮止め用治具によれば、位置決め部材のスライド軸部がピン支持部の長穴から抜け出すのを抜け止め部によって阻止することで、位置決め部材と治具本体のスライド動作を円滑に行うことが可能になる。
【0021】
上記の仮止め用治具において、上記位置決め部材は、上記ピンの軸周に設けられたストッパを有し、上記ストッパは、上記複数の位置決め孔における上記ピンの挿入完了位置を定め、上記位置決め部材及び上記治具本体が上記第2位置にあるときに上記複数のワークとともに上記第1プレート部と上記第2プレート部とで挟み込まれるように構成されているのが好ましい。
【0022】
この仮止め用治具によれば、複数のワークの複数の位置決め孔に位置決め部材のピンを挿入するのみで、ピンをストッパによって予定の挿入完了位置で停止させることができる。このため、複数のワークの位置決め操作が簡単になる。また、位置決め部材及び治具本体を第1位置から第2位置へとスライドさせることによって、ストッパが複数のワークとともに治具本体の第1プレート部と第2プレート部とで挟み込まれる。このとき、ストッパの軸方向の寸法を適宜に変更すれば、挟み込むワークの厚みや数の変更に対応できるため、仮止め用治具の汎用性を高めることができる。
【0023】
上記の仮止め用治具において、上記治具本体の上記第1プレート部は、上記位置決め部材及び上記治具本体が上記第2位置にあるときに上記ピンに係合する係合凹部を有するのが好ましい。
【0024】
この仮止め用治具によれば、位置決め部材及び治具本体を第2位置にスライドさせるのみで、治具本体の第1プレート部に設けられた係合凹部が位置決め部材のピンに係合するため、位置決め部材及び治具本体を予定のスライド完了位置で停止させることができる。また、ピンの動きを治具本体の第1プレート部によって規制することで複数のワークの挟み込み状態を維持し易い。このため、複数のワークの挟み込み操作が簡単になる。
【0025】
以下、シート状のワークとしての車両用のルーフライニングについて、複数のルーフライニングの仮止めに用いる仮止め用治具の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
この実施形態を説明するための図面において、特にことわらない限り、仮止め用治具のピンの軸方向を矢印Xで示し、軸方向Xと直交する水平方向を矢印Yで示し、軸方向X及び水平方向Yの両方に直交する左右方向を矢印Zで示すものとする。
【0027】
(実施形態1)
図1~
図3に示されるように、実施形態1の仮止め用治具1は、2つのシート状のルーフライニング2,3(
図4参照)の仮止めに用いるものである。この仮止め用治具1は、ルーフライニング2,3の仮止めに必要な必要数が予め準備される。ここでいう「仮止め」とは、複数のワークを互いに固定される前の段階で固定できる状態に一時的に保持する態様をいう。
【0028】
この仮止め用治具1は、位置決め部材10と、治具本体20と、を備えている。
【0029】
位置決め部材10は、2つの位置決め孔2b,3b(
図4参照)に挿入可能な円柱形状のピン11と、ピン11に連接して設けられた円柱形状のスライド軸部12と、スライド軸部12から延出するネジ軸部13と、ネジ軸部13の螺合可能なネジ穴15を有する円柱形状のキャップ14と、ピン11の軸周に設けられたストッパ16と、を備えている。ストッパ16は、その外径がピン11及びスライド軸部12の外径を上回り、スライド軸部12とともにピン11の軸線L上に設けられている。
【0030】
キャップ14は、そのネジ穴15においてネジ軸部13に螺合することによってピン11に固定される。このキャップ14は、ユーザが位置決め部材10を手指で操作するときの操作レバーとなる。
【0031】
治具本体20は、第1プレート部21と、ピン11の軸方向Xについて第1プレート部21と挟み込み空間25を隔てて対向する第2プレート部22と、第1プレート部21と第2プレート部22とを接続する第3プレート部23と、を有する。
【0032】
第1プレート部21及び第2プレート部22は、いずれも軸方向Xを板厚方向として互いに平行に延在している。第3プレート部23は、水平方向Yを板厚方向として延在している。
【0033】
挟み込み空間25は、第1プレート部21と第2プレート部22との間に形成される。この挟み込み空間25の軸方向Xの大きさは、第1プレート部21と第2プレート部22との間の軸方向Xの間隔dによって定まる(
図2参照)。この間隔dは、ストッパ16の軸方向Xの厚みと、2つのルーフライニング2,3を重ねたときの厚みと、を加算した値に概ね一致するように設定されている。
【0034】
第1プレート部21は、水平方向Yについてピン11の外表面に対向する位置に係合凹部21aを有する。この係合凹部21aは、その円弧凹面の半径がピン11の外径と概ね一致するように構成されている。このため、この係合凹部21aは、位置決め部材10及び治具本体20が第2位置P2,Q2(
図5参照)にあるときに、ピン11の外表面に係合するようになっている。
【0035】
第2プレート部22は、水平方向Yの寸法が第1プレート部21の同方向の寸法を上回るように構成されている。この第2プレート部22は、第1プレート部21よりも水平方向Yに突出してなるピン支持部24を有する。即ち、ピン支持部24は、第2プレート部22の一部によって構成されている。なお、このピン支持部24を第2プレート部22とは別の部材によって構成し、後加工で第2プレート部22に固定するようにしてもよい。
【0036】
ピン支持部24には、軸方向Xと直交する水平方向Yに位置決め部材10のスライド軸部12がスライド可能に延びる長穴24aが設けられている。この長穴24aは、左右方向Zの開口幅がスライド軸部12の外径を僅かに上回り且つキャップ14の外径を下回り、また水平方向Yの開口長さが予定のスライド量に相当するように構成されている。なお、この長穴24aは、水平方向Yに直線的に延びているが、必要に応じて曲線的に延びるように変更可能である。
【0037】
ピン支持部24の長穴24aには、キャップ14が取り外された状態の位置決め部材10がネジ軸部13から挿入される。そして、キャップ14は、位置決め部材10のネジ軸部13が長穴24aを貫通した後で、このネジ軸部13にネジ穴15を螺合させて取付けられる。これにより、仮止め用治具1の組立てが完了する。このとき、ピン支持部24が軸方向Xについてキャップ14とストッパ16の間に介在し、位置決め部材10のスライド軸部12が長穴24aに配置される。
【0038】
位置決め部材10は、キャップ14の取付けによってピン支持部24の長穴24aからスライド軸部12が軸方向Xに抜け出すのを阻止する抜け止め部を有する。この抜け止め部は、ネジ軸部13と、このネジ軸部13にネジ穴15において螺合するキャップ14と、によって構成されている。
【0039】
なお、位置決め部材10のスライド軸部12自体がピン支持部24に対する抜け止め機能を有しているときには、ネジ軸部13及びキャップ14を省略することもできる。
【0040】
位置決め部材10のスライド軸部12と、治具本体20のピン支持部24と、によってガイド部が構成されている。このガイド部は、位置決め部材10及び治具本体20を、予め定められた第1位置P1,Q1と第2位置P2,Q2(
図5参照)との間でスライド可能にガイドする機能を果たす。
【0041】
ここで、第1位置P1及び第2位置P2は、治具本体20に対する位置決め部材10の相対的な位置として定義される。即ち、位置決め部材10に対して治具本体20が移動するか否かにかかわらず位置決め部材10自体が移動することによって、或いは位置決め部材10が移動せずに治具本体20が移動することによって、位置決め部材10の位置が第1位置P1と第2位置P2との間で変更され得る。
【0042】
同様に、第1位置Q1及び第2位置Q2は、位置決め部材10に対する治具本体20の相対的な位置として定義される。即ち、治具本体20に対して位置決め部材10が移動するか否かにかかわらず治具本体20自体が移動することによって、或いは治具本体20が移動せずに位置決め部材10が移動することによって、治具本体20の位置が第1位置Q1と第2位置Q2との間で変更され得る。
【0043】
位置決め部材10のストッパ16は、2つのルーフライニング2,3の2つの位置決め孔2b,3bにおけるピン11の挿入完了位置を定める機能を果たす。また、このストッパ16は、位置決め部材10及び治具本体20が第2位置P2,Q2にあるときに2つのルーフライニング2,3とともに第1プレート部21と第2プレート部22とで挟み込まれるように構成されている。
【0044】
図4に示されるように、2つのルーフライニング2,3は、上記の仮止め用治具1によって仮止めされ、タッカー等の固定工具を使用して互いに固定された状態で、車体の組立時に車両天井パネル(図示省略)に取付けられる。
【0045】
2つのルーフライニング2,3は、同種の樹脂材料によって構成されている。なお、ここでいう「樹脂材料」には、1又は複数の樹脂によって構成された材料のみならず、1又は複数の樹脂を主材料としてこの主材料に別材料(例えば、ガラス繊維、植物繊維などの繊維材料)を組み合わせた複合材料が含まれる。
【0046】
一方のルーフライニング2の縁部2aには、複数の位置決め孔2bが貫通状に設けられている。同様に、他方のルーフライニング3の縁部3aには、複数の位置決め孔3bが貫通状に設けられている。2つのルーフライニング2,3は、厚み方向に互いに重ねられたときに、複数の位置決め孔2bのそれぞれを複数の位置決め孔3bのそれぞれに位置合わせできるように構成されている。
【0047】
なお、仮止め用治具1の各要素の素材は、特に限定されないが、この仮止め用治具1の繰り返し使用を考慮した場合、樹脂材料からなるルーフライニング2,3の素材よりも硬質であり、これらルーフライニング2,3との間の生じる摩擦によって削れにくい素材によって構成されるのが好ましい。
【0048】
図1及び
図2に示されるように、位置決め部材10の第1位置P1と、治具本体20の第1位置Q1は、2つのルーフライニング2,3が2つの位置決め孔2b,3bに位置決め部材10のピン11が挿入された状態で挟み込み空間25から外れる位置である。
【0049】
第2位置P2,Q2にある位置決め部材10及び治具本体20は、ピン11と第2プレート部22が互いに遠ざかる方向に操作されることによって、その位置が第1位置P1,Q1へと切り替わる。このとき、位置決め部材10のスライド軸部12は、その径方向の外表面が治具本体20のピン支持部24の長穴24aの水平方向Yの一方の穴縁に当接する。
【0050】
これに対して、
図5及び
図6に示されるように、位置決め部材10の第2位置P2と、治具本体20の第2位置Q2は、2つのルーフライニング2,3が2つの位置決め孔2b,3bに位置決め部材10のピン11が挿入された状態で挟み込み空間25に導入される位置である。
【0051】
第1位置P1,Q1にある位置決め部材10及び治具本体20は、ピン11と第2プレート部22が互いに近づく方向に操作されることによって、その位置が第2位置P2,Q2へと切り替わる。このとき、位置決め部材10のスライド軸部12は、その径方向の外表面が治具本体20のピン支持部24の長穴24aの水平方向Yの他方の穴縁に当接する。また、位置決め部材10のピン11は、係合凹部21aに係合して嵌り込み、予定のスライド完了位置で停止する。
【0052】
次に、
図7~
図10を参照しながら、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0053】
図7及び
図8に示されるように、上記の仮止め用治具1によれば、位置決め部材10及び治具本体20がガイド部12,24によって第1位置P1,Q1に配置されているときに、2つのルーフライニング2,3が2つの位置決め孔2b,3bに位置決め部材10のピン11を挿入することができる。
【0054】
これにより、2つのルーフライニング2,3を互いに位置決めする位置決め操作が可能になる。このとき、ピン11の軸方向Xと交差する方向について2つのルーフライニング2,3の動きを規制できる。
【0055】
そして、
図9及び
図10に示されるように、仮止め用治具1において、位置決め部材10及び治具本体20をガイド部12,24によって定められた第1位置P1,Q1から第2位置P2,Q2にガイドすることで、2つのルーフライニング2,3は、2つの位置決め孔2b,3bに位置決め部材10のピン11が挿入された状態で治具本体20の挟み込み空間25に導入される。
【0056】
これにより、2つのルーフライニング2,3を治具本体20の挟み込み空間25で軸方向Xに重ねて挟み込む挟み込み操作が可能になる。このとき、ピン11の軸方向Xと交差する方向に加えてピン11の軸方向Xについても2つのルーフライニング2,3の動きを規制できる。
【0057】
なお、この仮止め用治具1では、ユーザは、一方の手で位置決め部材10のキャップ14つ掴み、他方の手で治具本体20を掴んで、位置決め部材10と治具本体20との相対位置を変更するのが好ましい。このとき、ユーザは、位置決め部材10に対して治具本体20を動かしてもよいし、治具本体20に対して位置決め部材10を動かしてもよいし、更には、位置決め部材10及び治具本体20の両方を動かしてもよい。
【0058】
上述のように、仮止め用治具1を使用して位置決め操作に引き続いて挟み込み操作を行うことにより、2つのルーフライニング2,3を仮止めできる。このとき、位置決め部材10のピン11を2つのルーフライニング2,3の2つの位置決め孔2b,3bに挿入した後は、位置決め部材10及び治具本体20を第1位置P1,Q1から第2位置P2,Q2まで相対移動させるのみで2つのルーフライニング2,3を挟み込むことができ、このときの挟み込み操作が簡単になる。
【0059】
なお、仮止めされた2つのルーフライニング2,3は、タッカー等の固定工具を使用して固定される。その後、位置決め部材10及び治具本体20をガイド部12,24によって第2位置P2,Q2から第1位置P1,Q1へとガイドし、さらに位置決め部材10のピン11を2つのルーフライニング2,3の2つの位置決め孔2b,3bから抜き出すことによって、2つのルーフライニング2,3から仮止め用治具1を取り外すことができる。取り外された仮止め用治具1は、別の部位の仮止めに使用される。
【0060】
以上のように、実施形態1によれば、2つのシート状のルーフライニング2,3の仮止め時の作業負担を軽減できる仮止め用治具1を提供することが可能になる。
【0061】
上記の仮止め用治具1によれば、位置決め部材10のスライド軸部12を、治具本体20のピン支持部24に設けられた長穴24aにしたがってスライドさせるスライド構造によって、位置決め部材10及び治具本体20を第1位置P1,Q1と第2位置P2,Q2との間でガイドすることができる。このようなスライド構造は、位置決め部材10と治具本体20の相対移動量を小さく抑えることによって仮止め用治具1を小型化するのに有効である。
【0062】
上記の仮止め用治具1によれば、第1プレート部21と、長穴24aが設けられた第2プレート部22と、を治具本体20の主要要素にすることによって、治具本体20の構造を簡素化できる。
【0063】
上記の仮止め用治具1によれば、位置決め部材10のスライド軸部12がピン支持部24の長穴24aから抜け出すのを抜け止め部13,14によって阻止することで、位置決め部材10と治具本体20のスライド動作を円滑に行うことが可能になる。
【0064】
上記の仮止め用治具1によれば、2つのルーフライニング2,3の2つの位置決め孔2b,3bに位置決め部材10のピン11を挿入するのみで、ピン11をストッパ16によって予定の挿入完了位置で停止させることができる。このため、2つのルーフライニング2,3の位置決め操作が簡単になる。
【0065】
また、位置決め部材10及び治具本体20を第1位置P1,Q1から第2位置P2,Q2へとスライドさせることによって、ストッパ16が2つのルーフライニング2,3とともに治具本体20の第1プレート部21と第2プレート部22とで挟み込まれる。このとき、ストッパ16の軸方向Xの寸法を適宜に変更すれば、挟み込むワークの厚みや数の変更に対応できるため、仮止め用治具1の汎用性を高めることができる。
【0066】
上記の仮止め用治具1によれば、位置決め部材10及び治具本体20を第2位置P2,Q2にスライドさせるのみで、治具本体20の第1プレート部21に設けられた係合凹部21aが位置決め部材10のピン11に係合するため、位置決め部材10及び治具本体20を予定のスライド完了位置で停止させることができる。また、ピン11の動きを治具本体20の第1プレート部21によって規制することで2つのルーフライニング2,3の挟み込み状態を維持し易い。このため、2つのルーフライニング2,3の挟み込み操作が簡単になる。
【0067】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0068】
(実施形態2)
図11に示されるように、実施形態2の仮止め用治具101は、位置決め部材10及び治具本体20を相対移動させるためのガイド部の構造について実施形態1の仮止め用治具1のものと相違している。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0069】
仮止め用治具101は、位置決め部材110と、治具本体120と、リンク機構130と、を備えている。
【0070】
位置決め部材110は、位置決め部材10と同様のピン11、キャップ14及びストッパ16(
図2参照)と、ピン支持部124と、を有する。ピン11は、ピン支持部124に設けられた貫通穴(図示省略)をネジ軸部13が貫通し、このネジ軸部13にキャップ14のネジ穴15が螺合することによってピン支持部124に固定されている。
【0071】
治具本体120において、治具本体20と同様に、第1プレート部21、第2プレート部22及び第3プレート部23を有する一方で、第2プレート部22の水平方向Yの寸法が第1プレート部21の同方向の寸法を下回るように構成されている。
【0072】
リンク機構130は、リンクアーム131を有する。このリンクアーム131は、一端部が第1回動軸132を介して位置決め部材110のピン支持部124に回動可能に連結され、且つ他端部が第2回動軸133を介して治具本体120の第2プレート部22に回動可能に連結されている。
【0073】
上記の仮止め用治具101において、第1位置P1,Q1にある位置決め部材110及び治具本体120は、ピン支持部124と第2プレート部22が互いに近づく方向に操作されることによって、2つの回動軸132,133まわりに回動するリンクアーム131を介してその位置が第2位置P2,Q2へと切り替わる。
【0074】
一方で、第2位置P2,Q2にある位置決め部材110及び治具本体120は、ピン支持部124と第2プレート部22が互いに遠ざかる方向に操作されることによって、2つの回動軸132,133まわりに回動するリンクアーム131を介してその位置が第1位置P1,Q1へと切り替わる。
【0075】
このように、リンク機構130は、位置決め部材110及び治具本体120を、2つのルーフライニング2,3が2つの位置決め孔2b,3bにピン11が挿入された状態で挟み込み空間25から外れる第1位置P1,Q1と挟み込み空間25に導入される第2位置P2,Q2との間で回動可能にガイドするガイド部としての機能を果たす。
【0076】
実施形態2の仮止め用治具101によれば、位置決め部材110及び治具本体120がリンク機構130によって回動可能に連結された構造を利用して、2つのルーフライニング2,3の仮止めを行うことができる。
【0077】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0078】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0079】
上述の実施形態では、ピン11の軸周にストッパ16を設ける場合について例示したが、これに代えて、このストッパ16と同様の機能を有するストッパをピン11以外の要素に設けるようにしてもよい。また、必要に応じてこのストッパ16を省略することもできる。
【0080】
上述の実施形態では、第1プレート部21に係合凹部21aを設ける場合について例示したが、これに代えて、この係合凹部21aと同様の機能を有する係合凹部を第1プレート部21以外の要素に設けるようにしてもよい。また、必要に応じてこの係合凹部21aを省略することもできる。
【0081】
上述の実施形態では、位置決め部材10及び治具本体20をスライド或いは回動を利用して相対移動させるガイド部について例示したが、必要に応じてスライド及び回動を組み合わせるようにしてもよい。
【0082】
上述の実施形態では、車体の組立において樹脂材料からなるシート状の2つのルーフライニング2,3を仮止めする仮止め用治具1,101について例示したが、仮止めの対象となるシート状のワークの用途、種類、材質、数などについては、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1,101 仮止め用治具
2,3 ルーフライニング(シート状のワーク)
2b,3b 位置決め孔
10 位置決め部材
11 ピン
12 スライド軸部(ガイド部)
13 ネジ軸部(抜け止め部)
14 キャップ(抜け止め部)
16 ストッパ
20 治具本体
21 第1プレート部
21a 係合凹部
22 第2プレート部
24 ピン支持部(ガイド部)
24a 長穴
25 挟み込み空間
110 位置決め部材
120 治具本体
130 リンク機構(ガイド部)
P1,Q1 第1位置
P2,Q2 第2位置
X 軸方向
Y 水平方向